本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂とビスナフチルフルオレン類とを含んでいる。
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂は、透明であれば特に制限されず、例えば、オレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂などのハロゲン含有樹脂;酢酸ビニル系樹脂;スチレン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリスルホン系樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
好ましい熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂であり、さらに好ましくはオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、特にオレフィン系樹脂である。
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂などの鎖状オレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂などの環状オレフィン系樹脂などが挙げられ、これらの環状オレフィン系樹脂のうち、透明性、耐熱性及び低複屈折の観点から、環状オレフィン系樹脂が特に好ましい。
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを少なくとも重合成分とする樹脂である。また、環状オレフィンは、単環式オレフィンであってもよく、多環式オレフィンであってもよい。
単環式オレフィンとしては、シクロアルケン、シクロアルカジエンなどが挙げられる。シクロアルケンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロC3-10アルケン;シクロアルカジエンとしては、シクロペンタジエンなどのシクロC3-10アルカジエンなどが挙げられる。
多環式オレフィンとしては、二環乃至四環式オレフィンが挙げられる。二環式オレフィンとしては、2-ノルボルネンなどのノルボルネン類、2,5-ノルボルナジエンなどのノルボルナジエン類などが挙げられる。三環式オレフィンとしては、ジヒドロジシクロペンタジエンなどのトリシクロアルケン類、ジシクロペンタジエンなどのトリシクロアルカジエン類などが挙げられる。四環式オレフィンとしては、テトラシクロドデセンなどのテトラシクロアルケンなどが挙げられる。
これらの環状オレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
これらの環状オレフィンは、置換基を有していてもよく、置換基は、非極性基であっても、極性基であってもよい。
非極性基としては、アルキル基、アルキリデン基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルケニル基、アラルキル基などの炭化水素基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基が挙げられる。アルキリデン基としては、エチリデン基などのC1-10アルキリデン基が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基などのC6-12アリール基が挙げられる。シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのC5-10シクロアルケニル基が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリールC1-4アルキル基が挙げられる。
極性基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基が挙げられる。アシル基としては、アセチル基などのC1-10アルカノイル基が挙げられる。アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基などのC1-10アシルオキシ基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基などのC1-10アルコキシ-カルボニル基が挙げられる。置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基などのモノ又はジC1-6アルキルアミノ基、アセチルアミノ基などのモノ又はジC1-10アシルアミノ基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロアルキル基としては、フルオロメチル基、ジクロロメチル基などの(モノ乃至トリ)ハロC1-4アルキル基が挙げられる。ハロアルコキシ基としては、フルオロメトキシ基、クロロエトキシ基などの(モノ乃至トリ)ハロC1-4アルコキシ基が挙げられる。
環状オレフィンは、これらの置換基を単独で又は二種以上組みあわせて有していてもよい。環状オレフィンの好ましい置換基は炭化水素基、さらに好ましくはメチル基、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基、シクロペンチル基などのC5-10シクロアルキル基、特に直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基である。
これらの環状オレフィンのうち、多環式オレフィンが好ましく、さらに好ましくは二環式オレフィン、特にノルボルネン類が好ましく、具体的には、下記式(2)で表されるノルボルネン類が好ましい。
(式中、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基を示す)。
R3及びR4で表される炭化水素基としては、環状オレフィンの置換基として例示の炭化水素基が挙げられ、好ましいR3及びR4は、メチル基、エチル基などのC1-10アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。なお、R3及びR4は、互いに同一又は異なっていてもよい。
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンの単独重合体であっても、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体であってもよい。
共重合性単量体は、鎖状オレフィンであってよく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどのC2-12アルケンが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。好ましい共重合性単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどのC2-10α-オレフィン、さらに好ましくはC2-4α-オレフィン、特にエチレンである。
環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体は、前記ノルボルネン類とC2-6α-オレフィンとの共重合体、具体的には、少なくとも下記式(2a)及び(2b)で表される構成単位を有する共重合体が好ましい。
(式中、R3及びR4は前記に同じ)。
なお、これらの共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
環状オレフィンと共重合性単量体との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=99/1~5/95程度の範囲から選択でき、好ましくは、以下段階的に、95/5~20/80、90/10~30/70、85/15~50/50、83/17~60/40、80/20~70/30である。環状オレフィンの割合が少なすぎると、耐熱性(又はガラス転移温度)が低下する虞がある。なお、前記式(2a)及び(2b)で表される構成単位を有する共重合体において、前記式(2a)と(2b)とで表される構成単位の割合(前者/後者(モル比))は、好ましい態様も含め、前記環状オレフィンと共重合性単量体との割合と同様である。
なお、これらの環状オレフィン系樹脂は、極性基(又は官能基)を有さず、炭素原子及び水素原子のみから形成されていることが好ましい。後述のビスナフチルフルオレン類が極性基を有していないためか、極性基を有していない環状オレフィン系樹脂は、ビスナフチルフルオレン類との相溶性をより高めることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのC2-4アルキレンC6-12アリレート単位を有するホモ又は共重合ポリエステル;ポリ(1,4-シクロヘキシルジメチレンテレフタレート)などのC5-10シクロアルキレンジC1-4アルキレンC6-12アリレート、ポリアリレート;ジオール成分及びジカルボン酸成分の少なくとも一方が、フルオレン骨格を含む成分で形成されたフルオレン骨格を有するポリエステル系樹脂などが挙げられる。
これらのポリエステル系樹脂のうち、耐熱性及び低複屈折の観点から、フルオレン骨格を有するポリエステル系樹脂が好ましい。
フルオレン骨格を有するポリエステル系樹脂において、前記ジオール成分は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を含むジオール(フルオレン系ジオール)及び/又は9,9-ビスアリールフルオレン骨格を含まないジオール(非フルオレン系ジオール)を含んでいる。
前記フルオレン系ジオールとしては、例えば、下記式(A)で表されるジオールが挙げられる。
(式中、Z1はアレーン環を示し、R5及びR6はそれぞれ置換基を示し、A1はアルキレン基を示し、pは0~4の整数を示し、q及びrはそれぞれ0又は1以上の整数を示す)。
前記式(A)において、環Z1で表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環、環集合アレーン環などが挙げられる。
多環式アレーン環としては、ナフタレン環などの縮合二環式アレーン環、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式アレーン環が挙げられる。これらの多環式アレーン環のうち、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10-14アレーン環が好ましく、特にナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環などのビC6-12アレーン環が挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
なお、2つの環Z1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。
好ましい環Z1としては、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環が挙げられる。
フルオレン環の9位に結合する環Z1の置換位置は、特に限定されず、例えば、環Z1がナフタレン環の場合、1位又は2位のいずれかの位置であってもよい。
前記式(A)において、R5で表される置換基としては、アルキル基やアリール基などの炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられる。前記アリール基としては、フェニル基などのC6-10アリール基などが挙げられる。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環において、それぞれのR5の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。好ましい基R5は、アルキル基、シアノ基、ハロゲン原子、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
R5の置換数pは、0~4の整数、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0である。なお、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環において、それぞれの置換数pは、互いに同一又は異なっていてもよい。置換数pが2以上である場合、同一のベンゼン環に置換する2以上のR5の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(A)において、R6で表される置換基としては、ハロゲン原子;アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基;アルコキシ基;アシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基などが挙げられる。
ハロゲン原子、アルキル基、アリール基としては、前記R5と同様のハロゲン原子、アルキル基及びアリール基が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基などが挙げられる。アシル基としては、アセチル基などのC1-6アシル基などが挙げられる。置換アミノ基としては、ジアルキルアミノ基、ジアシルアミノ基が挙げられ、ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基、ジアシルアミノ基としては、ジアセチルアミノ基などのジC1-4アシルアミノ基などが挙げられる。なお、異なる環Z1にそれぞれ結合するR6の種類は、同一又は異なっていてもよい。
好ましいR6は、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基、C6-14アリール基、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基、さらに好ましくはメチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基である。なお、R6がアリール基であるとき、R6は、Z1とともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換数mが2以上である場合、同一の環Z1に置換する2以上のR6の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
R6の置換数qは、0又は1以上の整数、例えば0~8の整数から選択でき、好ましくは、以下段階的に、0~4、0~3、0~2、0又は1であり、特に0である。なお、異なるZ1における置換数qは、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(A)において、A1としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基が挙げられる。なお、異なる環Z1において、それぞれのA1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。好ましいA1は、直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基、特にエチレン基である。
オキシアルキレン基(OA1)の繰り返し数(付加モル数)rは、0又は1以上の整数であればよく、例えば0~15、好ましくは0~8、さらに好ましくは0~4の整数である。さらに、rは、1以上がより好ましく、例えば1~10、好ましくは1~6、さらに好ましくは1~2の整数、特に1である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)」は、平均値(算術平均値、相加平均値)又は平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、好ましい整数の範囲と同様である。繰り返し数rが大きすぎると、屈折率が低下するおそれがある。異なる環Z1において、それぞれの繰り返し数rは、それぞれ同一又は異なっていてもよい。また、rが2以上の場合、2以上のオキシアルキレン基(OA1)は、同一又は異なっていてもよい。
前記式(A)において、基[-O-(A1O)r-H]の置換位置は、特に限定されず、Z1の適当な置換位置にそれぞれ置換していればよい。基[-O-(A1O)r-H]の置換位置は、環Z1がベンゼン環である場合、フルオレン環の9位に結合するフェニル基の2位、3位、4位のいずれか、好ましくは3位又は4位、特に4位の位置に置換している場合が多い。環Z1がナフタレン環である場合、フルオレン環の9位に対して、1位又は2位で結合するナフチル基の5~8位のいずれかの位置に置換している場合が多く、フルオレン環の9位に対して、ナフタレン環の1位又は2位が置換し(1-ナフチル又は2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位の関係で置換しているのが好ましく、2,6位で置換しているのが特に好ましい。
前記式(A)で表される具体的な9,9-ビスアリールフルオレン骨格を含むジオールとしては、9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類が挙げられ、例えば、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレンが挙げられる。
非フルオレン系ジオールとしては、鎖状脂肪族ジオール、脂環族ジオールなどの脂肪族ジオール成分、芳香族ジオール成分が挙げられる。
鎖状脂肪族ジオールとしては、アルカンジオール、ポリアルカンジオールなどが挙げられ、脂環族ジオールとしては、シクロアルカンジオール、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカンなどが挙げられる。
アルカンジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2-10アルカンジオールなどが挙げられる。ポリアルカンジオールとしては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2-4アルカンジオールなどが挙げられる。
シクロアルカンジオールとしては、シクロヘキサンジオールなどのC5-8シクロアルカンジオールなどが挙げられ、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカンとしては、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1-4アルキル)C5-8シクロアルカンなどが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、ヒドロキノンなどのジヒドロキシアレーン;ベンゼンジメタノールなどの芳香脂肪族ジオール;ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;p,p’-ビフェノールなどのビフェノール類;及びこれらのジオール成分のC2-4アルキレンオキシド付加体などが挙げられる。
これらの非フルオレン系ジオールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
これらの非フルオレン系ジオールのうち、C2-10アルカンジオール、C5-8シクロアルカンジオール、特にエチレングリコール、シクロヘキサンジオールが使用される場合が多い。
前記ジカルボン酸成分は、フルオレン骨格を含むジカルボン酸(フルオレン系ジカルボン酸)及び/又はフルオレン骨格を含まないジカルボン酸(非フルオレン系ジカルボン酸)を含んでいる。
フルオレン系ジカルボン酸としては、例えば、下記式(B1)、(B2)及び(B3)で表されるジカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
(式中、A2及びA3は置換基を有していてもよいアルキレン基を示し、sは0~4の整数を示し、Z1、R5、R6、p、qは前記に同じ)。
前記式(B2)及び(B3)において、A2及びA3で表されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2-エチルエチレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-8アルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基は直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキレン基、さらに好ましくはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキレン基である。アルキレン基の置換基としては、フェニル基などのアリール基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基などが挙げられる。なお、前記式(B2)において、フルオレン環の9,9位にそれぞれ結合するA2の種類は、同一又は異なっていてもよい。
A2は、エチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基である場合が多く、A3は、メチレン基、エチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキレン基である場合が多い。置換基を有するアルキレン基は、1-フェニルエチレン基、1-フェニルプロパン-1,2-ジイル基などであってもよい。
前記式(B3)において、係数sは0~4の整数から選択でき、通常、0~2、好ましくは0又は1である。
前記式(B1)で表される具体的な9,9-ビスアリールフルオレン骨格を含むジカルボン酸としては、9,9-ビス(カルボキシアリール)フルオレン類が挙げられ、例えば、9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシフェニル)フルオレン;9,9-ビス(4-カルボキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシ-C1-4アルキルフェニル)フルオレン;9,9-ビス(4-カルボキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシ-C6-10アリールフェニル)フルオレン;9,9-ビス(6-カルボキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシ-1-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
前記式(B2)で表される具体的な9,9-ビスアルキルフルオレン骨格を含むジカルボン酸としては、A2がC2-6アルキレン基である化合物、例えば、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)フルオレンなどが挙げられる。
前記式(B3)で表される具体的な9-(ジカルボキシアルキル)フルオレン骨格を含むジカルボン酸としては、s=0であり、かつA3がC1-6アルキレン基である化合物、9-(1,2-ジカルボキシエチル)フルオレン、s=1であり、かつA3がC1-6アルキレン基である化合物、例えば、9-(2,3-ジカルボキシプロピル)フルオレンなどの9-(ジカルボキシC2-6アルキル)フルオレンなどが挙げられる。
非フルオレン系ジカルボン酸としては、アルカンジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロアルカンジカルボン酸、シクロアルケンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
アルカンジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などのC1-20アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
シクロアルカンジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸などのC4-12シクロアルカン-ジカルボン酸などが挙げられ、シクロアルケンジカルボン酸としては、シクロペンテンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などのC6-10アリールジカルボン酸;ビフェニルジカルボン酸などのジC6-10アリールジカルボン酸が挙げられる。
これらの非フルオレン系ジカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの非フルオレン系ジカルボン酸のうち、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-8シクロアルカン-ジカルボン酸、特にイソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が使用される場合が多い。
前記ジオール成分及び前記ジカルボン酸成分は、ジオール成分及びジカルボン酸成分のうち少なくとも一方が、フルオレン骨格を含んでいればよい。フルオレン骨格を含む成分(フルオレン系ジオール成分及びフルオレン系ジカルボン酸成分の総量)の割合は、ジオール成分及びジカルボン酸成分の全体に対して、例えば、1~99モル%、好ましくは5~99モル%、さらに好ましくは、以下段階的に、10~90モル%、20~88モル%、30~85モル%、40~83モル%、特に50~80モル%である。フルオレン骨格を含む成分の割合が少なすぎると、耐熱性及び屈折率が低下する虞があり、多すぎると、成形性が低下する虞がある。
フルオレン系ジオールの割合は、全ジオール成分中、例えば、0~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは、以下段階的に、5~99モル%、10~97モル%、30~95モル%、50~93モル%、60~92モル%、特に70~90モル%である。
フルオレン系ジカルボン酸の割合は、全ジカルボン酸成分中、例えば、0~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは、以下段階的に、5~99モル%、10~95モル%、20~90モル%、30~80モル%、特に40~70モル%である。
ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールAとホスゲン又は炭酸エステルとから形成されるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂;少なくとも前記式(A)で表されるジオールを含むジオール成分と、ホスゲン又は炭酸エステルとから形成されるフルオレン含有ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。なお、前記式(A)中のrは、ポリエステル系樹脂の項に記載の数値が挙げられ、好ましくは0~4の整数、さらに好ましくは0又は1である。また、前記式(A)中のZ1、R5、R6、A1、p、qは、好ましい態様も含め、ポリエステル系樹脂の項に記載のものと同様である。
なお、環状オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂は、透明性の観点から、非晶性樹脂であることが好ましい。
環状オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、例えば、100~200℃程度、好ましくは110~180℃、さらに好ましくは120~170℃、特に好ましくは130~160℃である。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定でき、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
環状オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂の重量平均分子量(単位:×104)は、例えば、0.1~50、好ましくは0.5~40、さらに好ましくは0.8~30、特に1~20である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で測定できる。
環状オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂のアッベ数は、温度20℃において、例えば、40~65程度であってもよく、好ましくは45~60、さらに好ましくは、以下段階的に、47~57、50~55、51~54である。なお、アッベ数は、C線(656nm)、D線(589nm)及びF線(456nm)のスペクトルに対する屈折率から算出することができる。具体的には、実施例に記載の方法で算出できる。
環状オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂の波長589nmにおける屈折率は、温度20℃において、例えば、1.3~1.8程度であってもよく、好ましくは、1.4~1.7、さらに好ましくは、1.5~1.6である。なお、屈折率は屈折率測定器などにより測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
[ビスナフチルフルオレン類]
ビスナフチルフルオレン類は、熱可塑性樹脂に対する相溶性が高く、かつ屈折率及び耐熱性が高い。そのため、ビスナフチルフルオレン類を熱可塑性樹脂に添加すると、熱可塑性樹脂と相溶して、熱可塑性樹脂の屈折率を向上できる。
ビスナフチルフルオレン類は、下記式(1)で表される。
(式中、R1は炭化水素基を示し、R2は炭化水素基、シアノ基又はハロゲン原子を示し、mは1~7の整数を示し、nは0~4の整数を示す)。
前記式(1)において、フルオレン環の9位に結合するナフタレン環の置換位置は、特に限定されず、1位又は2位のいずれかの位置であってもよいが、高い収率及び選択率でビスナフチルフルオレン類が得られる点から、2位である場合が多い。
R1で表される炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロへキシル基などのC5-8シクロアルキル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などのC6-12アリール基などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基などが挙げられる。異なるナフタレン環に置換する炭化水素基R1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよいが、通常、同一である。
好ましい炭化水素基R1は、C1-6アルキル基、C6-10アリール基、さらに好ましくはC1-3アルキル基、特にメチル基である。
前記式(1)において、ナフタレン環に置換したR1の個数を示すm(又は置換数m)は、1~7の整数であり、例えば、1~4の整数、好ましくは1~3の整数、さらに好ましくは1又は2、特に1である。なお、異なるナフタレン環において、それぞれの置換数mは、同一又は異なっていてもよいが、通常、同一である。
R1の置換位置は、特に限定されず、置換数mが1である場合、フルオレン環の9位に対して、1位又は2位で結合するナフチル基の5~8位のいずれかの位置に置換している場合が多く、フルオレン環の9位に対して、ナフタレン環の1位又は2位が置換し(1-ナフチル又は2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位の関係で置換しているのが好ましく、2,6位で置換しているのが特に好ましい。また、置換数mが2以上である場合、置換位置は特に制限されず、フルオレン環の9位に対して、1位又は2位で結合するナフチル基の4~8位のいずれであってもよく、フルオレン環の9位に対して、ナフタレン環の1位又は2位が置換し(1-ナフチル又は2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5,8位、1,6,7位、2,6,7位、2,5,7位、2,5,8位で置換している場合が多い。
R2で表される炭化水素基としては、R1で例示した炭化水素基が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。なお、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環において、それぞれのR2の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。これらのうち、好ましいR2はシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、ハロゲン原子、特にシアノ基、ハロゲン原子である。
R2の置換数nは、0~4の整数であり、例えば0~3の整数、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0である。なお、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環において、それぞれの置換数nは、互いに同一又は異なっていてもよい。また、nが2以上である場合、同一のベンゼン環に置換する2以上のR2の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、R2の置換位置は特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位乃至7位であってもよく、好ましくは2位、3位、7位である。
ビスナフチルフルオレン類としては、9,9-ビス(6-メチル-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-エチル-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-メチル-1-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(C1-6アルキル-ナフチル)フルオレン;9,9-ビス(6-シクロへキシル-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(C5-8シクロアルキル-ナフチル)フルオレン;9,9-ビス(6-フェニル-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-10アリール-ナフチル)フルオレンなどが挙げられる。これらのビスナフチルフルオレン類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
好ましいビスナフチルフルオレン類は、9,9-ビス(C1-6アルキル-ナフチル)フルオレン、さらに好ましくは9,9-ビス(C1-3アルキル-ナフチル)フルオレン、特に9,9-ビス(6-メチル-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(6-C1-3アルキル-2-ナフチル)フルオレンである。
ビスナフチルフルオレン類の製造方法は、特に限定されず、下記式(3a)で表されるフルオレノン化合物と、下記式(3b)で表されるナフタレン化合物とを反応させる方法により製造してもよい。本発明では、前記ナフタレン化合物が反応性基を有していないにも拘わらず、ビスナフチルフルオレン類を製造できるため、生産性が高い。
(式中、R1、R2、m及びnは前記に同じ)。
前記式(3a)で表されるフルオレノン化合物としては、前記ビスナフチルフルオレン類のフルオレン骨格に対応するフルオレノンを利用でき、通常、9-フルオレノンである。
前記式(3b)で表されるナフタレン化合物としては、前記ビスナフチルフルオレン類のナフタレン骨格に対応するナフタレン化合物を利用でき、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1,3-ジメチルナフタレン、1,4-ジメチルナフタレン、2,3,5-トリメチルナフタレンなどのモノ乃至ヘプタアルキルナフタレン;2-シクロへキシルナフタレンなどのモノ乃至ヘプタシクロアルキルナフタレン;2-フェニルナフタレンなどのモノ乃至ヘプタアリールナフタレンなどが挙げられる。好ましいナフタレン化合物は、ビスナフチルフルオレン類の収率及び選択率を向上できる点から、2位に炭化水素基を有するナフタレン化合物、さらに好ましくは2-C1-3アルキルナフタレン、特に2-メチルナフタレンである。
前記式(3b)で表されるナフタレン化合物の割合は、前記式(3a)で表されるフルオレノン化合物1モルに対して1.5~10モル程度の範囲から選択でき、ビスナフチルフルオレン類の選択率を向上できる点から、例えば1.8~6モル程度であってもよく、好ましくは2~5モル、さらに好ましくは2.2~4モル、特に好ましくは2.5~3.5モルである。ナフタレン化合物の割合が少なすぎると、選択率が低下する虞がある。
さらに、本発明では、前記フルオレノン化合物と前記ナフタレン化合物とは、酸触媒及び助触媒としてのチオール類の共存下で反応させるのが好ましい。
酸触媒は、無機酸であってもよく、有機酸であってもよく、無機酸と有機酸との組み合わせであってもよい。
無機酸としては、硫酸、硝酸、亜硝酸、塩酸、ヨウ化水素、臭化水素、フッ化水素、クロム酸;ホスフィン酸、ホスホン酸、リン酸、二リン酸、トリポリリン酸などのリン酸類;ヘキサフルオロリン酸、H[(CF3CF2)3PF3]、H[(CF3CF2CF2)3PF3]などのハロゲン化リン酸;過塩素酸、過臭素酸などの過ハロゲン酸;過マンガン酸;チオシアン酸;塩化スルホン酸、フルオロスルホン酸などのハロゲン化スルホン酸;テトラフルオロホウ酸、H[(C6F5)4B]などのハロゲン化ホウ酸;ヘキサフルオロアンチモン酸などのハロゲン化アンチモン酸;H[(C6F5)4Ga]などのハロゲン化ガリウム酸;H[(CF3SO2)3C];H[(CF3SO2)2N]などが挙げられる。これらの無機酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
有機酸としては、ギ酸などの脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸などの芳香族ジカルボン酸;グリコール酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸;メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸;トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸などのフルオロアルカンスルホン酸などのハロアルカンスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸;メチオニン、オルニチン、ロイシン、リシン、アスパラギン、アスパラギン酸、アミノ安息香酸などのアミノ酸;プロトン化エタノールなどが挙げられる。これらの有機酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
酸触媒の酸解離定数pKa(25℃)は、-11以上であってもよく、例えば-10~4、好ましくは-8~2、さらに好ましくは-5~0、特に好ましくは-3~-1である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、酸触媒が複数の解離段を有する場合、pKaは第1段目の解離段の値を意味する。
特に、酸触媒として、前記pKaが-8~2の酸触媒を含むのが好ましく、さらに好ましくはpKaが-8~2の酸触媒と他の酸触媒との組み合わせ、pKaが-5~0の酸触媒と他の酸触媒との組み合わせである。pKaが-5~0の酸触媒は、メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸であってもよい。pKaが-8~2の酸触媒の割合は、酸触媒中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に100質量%(メタンスルホン酸などのpKaが-8~2の酸触媒のみ)である。
酸触媒の割合は、前記式(3a)で表されるフルオレノン化合物1モルに対して1モル以上であればよいが、ビスナフチルフルオレン類への転化率(収率)を向上できる点から、例えば1.2~10モル、好ましくは2~6モル、さらに好ましくは2.5~5.5モル、特に好ましくは3~5モルである。酸触媒の割合が少なすぎると、収率が低下する虞がある。
助触媒であるチオール類としては、助触媒として機能する慣用のチオール類を利用できる。慣用のチオール類としては、メルカプト酢酸(チオグリコール酸)、β-メルカプトプロピオン酸、α-メルカプトプロピオン酸、チオシュウ酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸などのメルカプトカルボン酸;チオ酢酸、チオプロピオン酸などのチオカルボン酸;メルカプトエタノールなどのチオグリコール;メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、1-オクチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;ベンジルメルカプタンなどのアラルキルメルカプタンなどが挙げられる。アルキルメルカプタンとしては、C1-16アルキルメルカプタンが好ましく、C1-4アルキルメルカプタンが特に好ましい。これらのチオール類は塩の形態であってもよい。塩としては、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩などが挙げられる。これらのチオール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのチオール類の中でも、メルカプトC1-6カルボン酸が好ましく、メルカプトC2-6カルボン酸が特に好ましい。さらに、メルカプトC2-6カルボン酸の中でも、メルカプトC2-4カルボン酸が好ましく、β-メルカプトプロピオン酸などのメルカプトC2-3カルボン酸が特に好ましい。
チオール類の割合は、前記式(3a)で表されるフルオレノン化合物1モルに対して0.01モル以上であればよいが、例えば0.01~0.5モル、好ましくは0.03~0.3モル、さらに好ましくは0.05~0.2モル、最も好ましくは0.1~0.15モルである。チオール類の割合は、酸触媒1モルに対して0.01モル以上であればよいが、例えば0.01~1モル、好ましくは0.02~0.5モル、さらに好ましくは0.03~0.3モル、特に好ましくは0.05~0.15モルである。チオール類の割合が少なすぎると、収率及び選択率が低下する虞がある。
反応は、前記フルオレノン化合物及び前記ナフタレン化合物を反応器に仕込み、酸触媒及びチオール類の存在下、攪拌することにより行うことができる。酸触媒は、全量を反応系に仕込んでもよく、連続的又は間欠的に反応系に滴下してもよい。例えば、反応は、前記フルオレノン化合物、前記ナフタレン化合物及びチオール類を反応器に仕込み、攪拌しつつ酸触媒を滴下した後、さらに加熱しながら攪拌することにより行ってもよい。
酸触媒を滴下する場合、滴下に要する時間は使用する酸触媒の量によっても異なるが、通常1分以上であり、例えば5~30分であってもよい。滴下の際の温度は、例えば10~100℃、好ましくは20~70℃、さらに好ましくは40~65℃である。
滴下終了後、加熱しながら、さらに攪拌することにより反応を進行させるのが好ましい。反応温度は、使用するナフタレン化合物や酸触媒の種類によって異なるが、例えば70~200℃、好ましくは80~150℃、さらに好ましくは85~130℃、最も好ましくは90~110℃である。反応温度が低すぎると、収率が低下する虞があり、高すぎると、選択率が低下する虞がある。反応時間は、例えば1~20時間、好ましくは3~15時間、さらに好ましくは5~10時間である。
反応は、加圧下で行ってもよいが、常圧化又は減圧下で行う場合が多い。さらに、収率及び選択率を向上できる点から、減圧下で行うのが好ましく、圧力は、例えば10000~10Pa、好ましくは5000~10Pa、さらに好ましくは1000~10Paである。
反応は、不活性溶媒、例えば、トルエン、キシレンなどの溶媒の存在下で行ってもよいが、通常、溶媒の非存在下で行うことができる。また、過剰量のナフタレン化合物を用いる場合には、加熱下では溶媒としても機能し、反応をよりスムーズに行うことができる。反応は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
反応の進行は、液体クロマトグラフィーなどの分析手段により追跡でき、反応混合物中に未反応のフルオレノン化合物が0.5質量%以下となった時点を終点とすることができる。得られたビスナフチルフルオレン類は、慣用の方法で精製してもよい。
ビスナフチルフルオレン類は、フルオレン骨格と2つのナフタレン環とを有しているため、屈折率が高い。ビスナフチルフルオレン類の波長589nmにおける屈折率は、例えば1.5~1.7程度の範囲から選択でき、好ましくは、以下段階的に、1.55~1.70、1.57~1.695、1.60~1.69、1.62~1.68、1.63~1.67、1.64~1.66である。なお、ビスナフチルフルオレン類の屈折率は、アッベ屈折計を用いて、ビスナフチルフルオレン類溶液のD線(波長589nm)の屈折率を測定し、得られた検量線からの外挿法により算出でき、詳細には実施例に記載の方法で測定できる。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、ビスナフチルフルオレン類とを含んでおり、高い屈折率と高いアッベ数とを両立できる。さらに、ビスナフチルフルオレン類は、熱可塑性樹脂に対する相溶性が高いため、熱可塑性樹脂と相溶して、屈折率及びアッベ数を向上できる。
環状オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂とビスナフチルフルオレン類との質量割合は、例えば、前者/後者=99/1~30/70程度の範囲から選択でき、好ましくは98/2~50/50、さらに好ましくは、以下段階的に、95/5~60/40、93/7~70/30、90/10~80/20である。
樹脂組成物のアッベ数は、温度20℃において、例えば、35~60程度であってもよく、好ましくは38~58、さらに好ましくは、以下段階的に、40~55、42~53、特に43~50である。なお、アッベ数は、C線(656nm)、D線(589nm)及びF線(456nm)のスペクトルに対する屈折率から算出することができる。具体的には、実施例に記載の方法で算出できる。
樹脂組成物の波長589nmにおける屈折率は、温度20℃において、例えば、1.5~1.6程度であってもよく、好ましくは、以下段階的に、1.51~1.60、1.52~1.59、1.53~1.58、1.54~1.57、特に1.55~1.56である。なお、屈折率は屈折率測定器などにより測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
樹脂組成物は、高いアッベ数と高い屈折率とを両立できるため、光学設計の自由度を向上でき、光学材料として有用である。樹脂組成物のアッベ数及び屈折率は、熱可塑性樹脂に対して添加するビスナフチルフルオレン類の割合により調整でき、樹脂組成物のアッベ数と屈折率との組み合わせは、例えば、屈折率1.54では、アッベ数45~60、好ましくは48~60、さらに好ましくは52~58;屈折率1.55では、アッベ数40~60、好ましくは43~55、さらに好ましくは45~53;屈折率1.56では、アッベ数37~48、好ましくは39~46、さらに好ましくは40~44である。なお、上記の屈折率とアッベ数との関係は、屈折率とアッベ数との近似式などの関係式に基づいて求めることができる。
本発明の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は高く、高い耐熱性を有している。樹脂組成物のガラス転移温度は、100~200℃程度の範囲から選択でき、例えば、110~180℃、好ましくは120~160℃、さらに好ましくは125~150℃である。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定でき、詳細には実施例に記載の方法で測定できる。
また、樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、充填剤又は補強剤;染顔料などの着色剤;導電剤;難燃剤;可塑剤;滑剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などの安定剤;離型剤;帯電防止剤;分散剤;流動調整剤;レベリング剤;消泡剤;表面改質剤;低応力化剤;炭素材などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の総量の割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂と、前記ビスナフチルフルオレン類とを混合することにより製造できる。混合方法は、特に制限されず、例えば、溶融混練により混合してもよく、溶媒に各成分を溶解させることで混合してもよい。
本発明は、さらに前記樹脂組成物で形成された成形体も含まれる。前記成形体としては、光学レンズ、光学フィルム、光学シートなどの光学部材が挙げられる。成形体の形状は、特に制限されず、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造;棒状、管状又はチューブ状、中空状、レンズ状などの三次元的構造などが挙げられる。
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などにより製造することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各評価方法及び使用した原料は以下のとおりである。
[評価方法]
(屈折率及びアッベ数)
樹脂組成物の屈折率及びアッベ数はカルニュー精密屈折計[(株)島津デバイス製、KPR2000]を用いて測定温度20℃、D線(波長589nm)に対する屈折率nDを測定した。なお、アッベ数(vD)は、vD=(nD-1)/(nF-nC)の式を用いて算出した。nFは、F線(波長486nm)に対する屈折率、nCは、C線(波長656nm)に対する屈折率を示す。
(ガラス転移温度(Tg))
示差走査熱量計(パーキンエルマー(株)製、DSC 8500)を用いて、JIS K 7121に準拠して測定した。
(転化率及び選択率)
転化率及び選択率は、HPLCの各シグナルの面積比から求めた。転化率(%)は、{1-[フルオレノンの面積比/(メチルナフタレンの面積比+目的物の面積比)]}×100、また選択率(%)は、[目的物の面積比/(1-メチルナフタレンの面積比-フルオレノンの面積比)]×100で求めた。
(HPLC条件)
使用機器:(株)島津製作所製「LCMS-2010Aシリーズ」
カラム:TSKgel ODS-80TM 250×4.5mm
溶出液(体積比):アセトニトリル/水=55/45~95/5(グラジェント)。
[原料]
(熱可塑性樹脂)
樹脂A:環状オレフィン系樹脂、三井化学(株)製、「APEL 5014DP」
樹脂B:ポリエチレン系樹脂、三井化学(株)製、「L5000」
樹脂C:ポリプロピレン系樹脂、プライムポリマー(株)製、「プライムポリプロ」
樹脂D:フルオレン含有ポリエステル系樹脂(ジオール成分:BPEF85モル%、エチレングリコール15モル%;ジカルボン酸成分:9,9-ビス(2-メトキシカルボニルエチル)フルオレン(FDP-m)70モル%、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル30モル%)
樹脂E:環状オレフィン系樹脂、JSR(株)製、「ARTON-F4520」、ガラス転移温度164℃、重量平均分子量60000。
(フルオレン化合物)
ビスナフチルフルオレン:9,9-ビス(6-メチル-2-ナフチル)フルオレン
9,9-ビス(6-メチル-2-ナフチル)フルオレンの合成
メカニカルスターラーを備えた2リットルの三口フラスコ中に、9-フルオレノン(FLN)1.08g(6mmol)、2-メチルナフタレン2.56g(18mmol)、β-メルカプトプロピオン酸0.08g(0.75mmol)を加え、50℃で加熱攪拌した。攪拌した混合液に、メタンスルホン酸1.33g(14mmol)を15分かけて滴下した後、常圧で1時間かけて100℃まで昇温した。その後、原料の成分が揮散しない程度に、100~10000Paの範囲で調整して減圧しながら加熱撹拌を3時間実施した。液体クロマトグラフィー(LC)にてフルオレノンの消失を確認し、80℃まで冷却した。反応溶液にトルエン(10g)及びイオン交換水(10g)を加え分液操作によって有機層を取り出し、さらに10質量%のNaOH水溶液(10g)で洗浄した後、イオン交換水(10g×3)を使用して洗浄操作を行った。得られた有機層を減圧留去によって濃縮し、HPLC分析を使用して得られた濃縮液の選択率、転化率を求めたところ、転化率98.68%、選択率は約69.77%であった。得られた濃縮液にメタノール15gを加えてクレアミクス処理を施すことで塊状の粗生成物(1.71g、LC純度90.1%)を得た。得られた粗生成物をテトラヒドロフラン3mlに溶解した後、シリカゲル3gを添加して5分間攪拌し、次いで加熱減圧下(60℃バス;油回転ポンプ)によって濃縮乾固することにより粗体吸着済シリカゲルを得た。ガラスカラムにシリカゲル50g、粗体吸着済シリカゲル及び硫酸ナトリウムをこの順序で仕込み、ヘキサン/テトラヒドロフランを移動相として分取することにより白色固体を得た。NMR分析(ブルカー(株)製「AVANCEIII、300MHz」により、得られた白色固体が目的物である9,9-ビス(6-メチル-2-ナフチル)フルオレンであることを確認した。また、9,9-ビス(6-メチル-2-ナフチル)フルオレンのD線(波長589nm)における屈折率は1.65であった。なお、ビスナフチルフルオレンの屈折率は、前記ビスナフチルフルオレンのジメチルスルホキシド溶液を4水準(5質量%、10質量%、15質量%及び20質量%)調製し、アッベ屈折計((株)アタゴ製、「多波長アッベ屈折計 DR-M4」)を用いてD線(波長589nm)の屈折率を測定し、得られた検量線からの外挿法により算出したビスナフチルフルオレン100質量%の屈折率である。
以下に得られた9,9-ビス(6-メチル-2-ナフチル)フルオレンの1H NMRスペクトルデータを示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ(ppm)=7.82(2H、d)、7.65(2H、d)、7.51(6H、m)、7.40(4H、m)、7.28(2H、m)、7.18(4H、m)、2.43(6H、m)。
BPEF:9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BNEF:9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製。
[実施例1]
バッチ式ラボブラストミル((株)東洋精機製作所製、「4M150」)を用いて、樹脂A95質量部と、ビスナフチルフルオレン5質量部とを温度250℃、スクリュー回転数90rpmで3分間混練したところ、樹脂組成物の外観が無色透明であり、樹脂Aとビスナフチルフルオレンとが相溶することを確認した。
[実施例2]
樹脂Aに代えて、樹脂Bを用い、混練温度を200℃にした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製したところ、樹脂組成物の外観が無色透明であり、樹脂Bとビスナフチルフルオレンとが相溶することを確認した。
[実施例3]
樹脂Aに代えて、樹脂Cを用い、混練温度を200℃にした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製したところ、樹脂組成物の外観が無色透明であり、樹脂Cとビスナフチルフルオレンとが相溶することを確認した。
[実施例4]
樹脂Aに代えて、樹脂Dを用い、混練温度を260℃にした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を調製したところ、樹脂組成物の外観が無色透明であり、樹脂Dとビスナフチルフルオレンとが相溶することを確認した。
実施例1~4の結果から明らかなように、ビスナフチルフルオレンは、熱可塑性樹脂に対する高い相溶性を有しており、透明性を有する樹脂組成物が調製できた。
[比較例1]
ビスナフチルフルオレンを添加することなく、樹脂Aのペレット100質量部をバッチ式ラボブラストミル((株)東洋精機製作所製、「4M150」)を用いて、温度250℃、スクリュー回転数90rpmで3分間混練し、試料を調製した。
[実施例5]
樹脂Aを90質量部、ビスナフチルフルオレン類を10質量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
[実施例6]
樹脂Aを85質量部、ビスナフチルフルオレン類を15質量部とした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
[比較例2]
樹脂Aに代えて、樹脂E、ビスナフチルフルオレンに代えて、BPEFを用いた以外は、実施例6と同様にして、樹脂組成物を得た。
[比較例3]
樹脂Eを90質量部、BPEFを10質量部用いた以外は、比較例2と同様にして、樹脂組成物を得た。
[比較例4]
樹脂Eを80質量部、BPEFを20質量部用いた以外は、比較例2と同様にして、樹脂組成物を得た。
[比較例5]
BPEFに代えて、BNEFを用いた以外は、比較例4と同様にして、樹脂組成物を得た。
[比較例6]
樹脂Eを70質量部、BPEFを30質量部用いた以外は、比較例2と同様にして、樹脂組成物を得た。
[比較例7]
ビスナフチルフルオレンに代えて、BPEFを用いたこと以外は、実施例6と同様にして、樹脂組成物のペレットを作製したが、白濁のペレットが得られた。樹脂組成物の物性及び光学特性は測定不能であった。
実施例1、5~6及び比較例1~7の物性及び光学特性の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例では、比較例に対して、高い屈折率と高いアッベ数とを両立した樹脂組成物が得られた。特に、同等のアッベ数を有する実施例1と比較例3、実施例5と比較例4とをそれぞれ対比すると、比較例3及び比較例4に対し、実施例1及び実施例5では、屈折率が0.02以上も高かった。また、実施例の樹脂組成物は、比較的高いガラス転移温度を有していた。
比較例7では、樹脂AとBPEFとが相溶せずに白濁したが、実施例1~6では、樹脂Aとビスナフチルフルオレンとの相溶性(又は混和性)が高く、いずれも高い透明性を有していた。