JP7166086B2 - 溶融塩中の水量推定方法及び、溶融金属の製造方法 - Google Patents

溶融塩中の水量推定方法及び、溶融金属の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、溶融塩中の水量を推定する方法及び、それを用いる溶融金属の製造方法に関するものである。特にこの発明は、溶融塩電解に悪影響を及ぼし得る溶融塩中の水の量を有効に推定することのできる技術を提案するものである。
たとえば、クロール法による金属チタンの製造に際し、副次的に生成される塩化マグネシウムは、電解槽を用いて、電気分解により金属マグネシウムと塩素ガスとに分解されることがある。この場合、金属マグネシウム及び塩素ガスはそれぞれ、四塩化チタンの還元およびチタン鉱石の塩素化に用いられて再利用される。
この種の電気分解では一般に、たとえば、隔壁によって貯留室と電解室とに区画された電解槽内で、塩化マグネシウム等の電気分解される特定の金属塩化物を含有する溶融塩を貯留させて溶融塩浴とする。この溶融塩浴では、電解槽内の溶融塩が貯留室から電解室へ流れて、ここで電極への通電に基き、金属塩化物が金属マグネシウム等の溶融金属と塩素等のガスとに分解される。電解室で生成された溶融金属は電解槽内で貯留室へとさらに循環して、溶融塩との密度差によって溶融塩浴の液面上に浮上した後に回収される。また、ガスは電解槽に設けられたガス排出通路を経て電解槽の外部に排出される。
かかる溶融塩電解では、たとえば電解槽内に存在し得る水が溶融塩浴に混入すること等によって、溶融塩に水が含まれる場合、電極の消耗に起因する電解槽の短命化や、電気分解の開始初期の電流効率の低下といった問題が生じる。これはすなわち、電極への通電により、水の電気分解で生じた酸素が黒鉛電極と反応して電極の酸化を促進させ、電極を早期に消耗させるからである。また、溶融塩中の水が、溶融塩の電気分解により生成した金属マグネシウム等と反応して、酸化マグネシウム等を形成する。この酸化マグネシウムはさらに塩素ガス等と反応し、再び塩化マグネシウム等に戻る。このような余分な反応に電流が消費されることにより、電流効率の低下を招く。
このような問題に対処するため、電気分解の開始に先立って電解槽内の水を減らすための電解槽の乾燥方法が、たとえば特許文献1、2等で提案されている。
特許文献1には、電解槽を溶融塩で満たす前に、加熱した大気等のガスを電解槽内に送り込むとともに電解槽の外部へ排出し、電解槽内を100℃以上に保持するガス加熱乾燥法が記載されている。また、この特許文献1には、電解槽を溶融塩で満たした後に、通電を行わずに溶融塩を溶融状態に保持する浴保持乾燥法も記載されている。
特許文献2には、上記の浴保持乾燥法に関し、浴保持乾燥の開始から48時間以内の乾燥初期に、その48時間以内における槽内浴塩の平均温度上昇率が0.75~2.5℃/hrとなるように槽内浴塩を昇温することが開示されている。
特開2006-328450号公報 特開2014-224288号公報
電解開始前の電解槽内に保持された溶融塩中の水量は、どのような条件の電解槽(電解槽の容積、新規耐火煉瓦の使用有無、電解浴の新規製作の有無等)を準備するかにより異なると考えられる。だが、溶融塩中の水量を直接測定することが困難であったため、溶融塩中の水量の低減が達成されたか否かを電解開始前において良好に把握する手段が無く、浴温度が基準値を超過した段階で直ちに電解を開始する場合もあった。従前の基準では、溶融塩中の残存水量が多い状態で金属塩化物の電気分解を開始していた可能性もあり、その影響による電流効率の低下は依然として改善の対象であった。
この発明の目的は、溶融塩中の水の量を推定することができる水量推定方法および、溶融金属の製造方法を提供することにある。
発明者は、溶融塩に浸漬した電極に電圧を印加した際に、そこに含まれ得る水と塩とで、その電気分解が起こり始める電圧の大きさが異なることに着目した。そして、水の電気分解は起こるが塩の電気分解は起こらない電圧を印加した際の電流の大きさに基いて、溶融塩中の水の量を推定できると考えた。
このような知見の下、この発明の溶融塩中の水量推定方法は、溶融塩に電極を浸漬し、1.2V以上かつ2.75V未満の電圧を印加し、当該電圧の印加により流れる電流の大きさを測定する電流測定工程を含むものである。
この発明の溶融塩中の水量推定方法では、電流測定工程で、前記溶融塩の温度を450℃以上かつ700℃以下とすることが好ましい。
また、この発明の溶融塩中の水量推定方法では、電流測定工程で、印加する電圧を2.2V以上とすることが好ましい。
この発明の溶融塩中の水量推定方法では、前記溶融塩が、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含むものとすることができる。
この発明の溶融金属の製造方法は、金属塩化物を含有する溶融塩中の前記金属塩化物を電気分解する電解工程を含み、前記溶融塩から溶融金属を製造する方法であって、電解工程の開始前に、上述したいずれかの溶融塩中の水量推定方法を実施し、前記電流測定工程で前記電圧を印加して測定された電流の大きさが、予め定めた基準値以下である場合に、当該溶融塩に対して前記電解工程を開始するというものである。
この発明の溶融金属の製造方法では、前記電解工程で、溶融塩の温度を651℃以上かつ700℃以下とすることが好ましい。
また、この発明の溶融金属の製造方法では、前記金属塩化物が塩化マグネシウムであり、前記溶融金属が金属マグネシウムであることが好ましい。
この発明の溶融塩中の水量推定方法は、溶融塩に浸漬した電極に1.2V以上かつ2.75V未満の電圧を印加し、それによって流れる電流の大きさを測定する電流測定工程を含むものである。このことによれば、溶融塩に含まれる水の量に応じた大きさの電流が測定され、それにより、溶融塩中の水の量を推定することができる。
この発明の一の実施形態に係る水量推定方法の対象とすることができる溶融塩の電解槽の一例を示す縦断面図である。 図1の電解槽を用いて電気分解を行う状態を示す部分拡大断面図である。 溶融塩に含まれ得る水の量が異なる場合の印加電圧と電解電流の各関係を例示するグラフである。 実施例1及び2の保持時間の経過に伴う電解電流量の変化を示すグラフである。
図1に例示する電解槽1は、たとえば主としてAl23等の耐火煉瓦その他の適切な材料からなる容器形状の外壁2を有する。この電解槽1は、その内部に供給された金属塩化物を含む溶融塩からなる溶融塩浴で、溶融塩中の特定の金属塩化物を電気分解して、該電気分解により溶融金属を生成するためのものである。ここで、図示の例では、電解槽1の内部に、溶融塩浴の深さ方向(図1では上下方向)と平行に並べて配置した部分を有する陽極3a及び陰極3bを含む電極3と、電解槽1内の温度調整を行う熱交換器としての温度調整管4とが配置されている。
なおここでは、溶融塩に含まれる電気分解対象たる特定の金属塩化物を塩化マグネシウム(MgCl2)とした場合を例として説明する。この場合、塩化マグネシウムの電気分解により、図1に示すように、溶融金属として金属マグネシウム(Mg)が生成されるとともに、ガスとして塩素ガス(Cl2)が発生する。溶融塩には、上記の塩化マグネシウム(MgCl2)の他、支持塩として、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)、フッ化マグネシウム(MgF2)、及び/又は、フッ化カルシウム(CaF2)等を含ませる場合がある。金属マグネシウムは、金属チタンを製造するクロール法における四塩化チタンの還元に、また塩素ガスは、同法におけるチタン鉱石の塩素化にそれぞれ用いることができる。この電気分解の原料とする塩化マグネシウムとしては、クロール法で副次的に生成されるものを使用可能である。
但し、この電解槽1は、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化アルミニウム(AlCl3)もしくは塩化亜鉛(ZnCl2)等の金属塩化物の電気分解にも用いることができる。電気分解される金属塩化物の分解電圧は、水の分解電圧より高いこととする。
ここで、図示の電解槽1は内部に、図1に示すところでは図の中央からやや左寄りに配置された隔壁5をさらに備えるものである。かかる隔壁5により、電解槽1の内部が、図1では右側に位置して電極3が配置された電解室2aと、左側に位置し、電解室2aでの電気分解により得られた溶融金属が流れ込んで該溶融金属が溶融塩との密度差により上方側に溜まる貯留室2bとに区画される。具体的には、この隔壁5は、電解槽1の上方側開口を覆蓋するための図示しない蓋部材に近接させて配置される。電解槽1の下方側の底部との間に、貯留室2bから電解室2aへの溶融塩の移動を可能にする溶融塩循環路5aが形成される。また、隔壁5自体に貫通させて設けた溶融金属流路5bにより、電解室2aから貯留室2bへの溶融金属の流入が可能になる。
電解室2aに配置された電極3は、少なくとも、図示しない電源等に接続された陽極3a及び陰極3bを有する。これらの陽極3a及び陰極3bでは、たとえばMgCl2→Mg+Cl2等といった所定の反応に基いて、陽極3aの表面で酸化反応により塩素等のガスが生じるとともに、陰極3bの表面で還元反応により金属マグネシウム等の溶融金属が生成される。
電極3は、少なくとも陽極3a及び陰極3bを有するものであれば、溶融塩中の特定の金属塩化物の電気分解を行うことができる。一方、電気分解の効率向上等の観点より、電極3は、図2に示すように、陽極3aと陰極3bとの間に、陽極3a及び陰極3b間への電圧の印加によって分極する一枚以上のバイポーラ電極3c、3dをさらに有することが好ましい。この例では、バイポーラ電極3c、3dは、陽極3aと陰極3bとの間に二枚配置している。但し、このようなバイポーラ電極は必ずしも必要ではない。
上述したような電解槽1を用いた溶融塩電解方法では、溶融塩浴の対流により、図1に示すように、溶融塩が、貯留室2bから底部側の溶融塩循環路5aを経て電解室2aに流動する。電解室2aでは、溶融塩中の特定の金属塩化物が電気分解されて、電解室2aで溶融金属が生成される。そしてこの溶融金属は、隔壁5の浴面側の溶融金属流路5bを通って貯留室2bに流入可能である。その後、溶融塩に対する比重の小さい溶融金属は、貯留室2bの浅い箇所に浮上してそこに溜まる。貯留室2bで浮上した溶融金属は、図示しないポンプ等により回収することができる。したがって、これによれば、溶融塩から溶融金属を製造することができる。
このような特定の金属塩化物の電気分解の過程を、ここでは電解工程ともいう。但し、電解工程は、そこで溶融塩中の特定の金属塩化物の電気分解が行われているものであればよく、上述したような具体的な態様に限定されるものではない。
ところで、上記のような溶融塩電解では、溶融塩に水が含まれると、溶融塩中の特定の金属塩化物を電気分解する際に、該金属塩化物とともに水が電気分解されて酸素が発生する。陽極3aの材質は耐塩素性を有するグラファイトとすることが一般的であるところ、水の電気分解による酸素はこのグラファイト製陽極3aと反応する。この反応が、グラファイト製陽極3aの酸化による消耗を促進させ、グラファイト製陽極3a、ひいては電解槽1の寿命を短くする。
また、溶融塩中の水が、電気分解により生成した溶融金属の金属マグネシウム等と反応すると、酸化マグネシウムが生成される。この酸化マグネシウムの一部は塩素ガスと反応して、再び元の塩化マグネシウムに戻る。それにより、このような水との反応は電流効率を低下させる。なお、一部の酸化マグネシウムはスラッジとなって回収不可能となることもある。
したがって、電解工程を開始する前に、溶融塩中の水の量を予め確認することができれば、たとえば当該水の量に応じて更なる水の低減作業ないし処理を行うこと等によって、上述した電極3の酸化消耗や電流効率の低下を未然に抑制できるので望ましい。
そこで、この発明の実施形態では、溶融塩に浸漬した電極に1.2V以上かつ2.75V未満の電圧を印加し、当該電圧の印加により流れる電流の大きさを測定する電流測定工程を行う。この電流測定工程は、電解槽1内の溶融塩浴の溶融塩に対して電極3を用いて行うこともできるが、電解槽1内で又は電解槽1とは異なる場所で、別個の電極を用いて行うことも可能である。
水の電気分解が起こるのは1.2V以上であるのに対し、溶融塩中の塩化マグネシウムの電気分解が起こるのは2.75V以上であることから、溶融塩に浸漬した電極に1.2V以上かつ2.75V未満の電圧を印加すると、溶融塩は電気分解されず、水のみが電気分解される。これにより、図3にグラフで例示するように、当該電圧の印加によって流れる電流は、水のみの電気分解に対応しており、該電流量は、溶融塩に含まれ得る水の量に対応する大きさになる。電圧の印加によって流れる電流の大きさを測定することで、溶融塩に含まれ得る水の量を推定することができる。なお、図3は電圧の上昇と電解電流の上昇を直線関係で図示しているがこれは説明の便宜上の表現に過ぎず、他の表現となる場合もある。
実際には予め、電流測定工程で対象とする溶融塩と同じものに、所定量の水を含ませた一又は複数の溶融塩サンプルにおいて、所定の大きさの電圧を印加し、その際に流れる電流の大きさを測定して、印加電圧と電解電流の関係を調べておくことができる。この関係を用いて電流測定工程を行うことにより、より高い精度で溶融塩に含まれ得る水の量を推定することが可能になる。
特に電流測定工程で溶融塩に浸漬した電極に印加する電圧は2.2V以上とすることが好ましい。この下限値以上とすることにより、電流量が増えてノイズ影響が少なくなる。
電流測定工程では、溶融塩の温度を450℃以上かつ700℃以下として、上記のような電圧を印加することが好適である。溶融塩の固化を抑制して溶融状態の溶融塩に対して有効な電流測定を行うとの観点から、この際の溶融塩の温度は450℃以上とすることができる。また、この際の溶融塩の温度を700℃以下とすることにより、電解槽1への負荷を軽減することができる。
溶融塩は、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含むもの、さらには、これら以外の塩等の物質を含まないものであれば、上記の電流測定工程を特に有効に行うことができる。
以上に述べたような電流測定工程による溶融塩中の水量の推定は、溶融塩中の特定の金属塩化物を電気分解する先述の電解工程の開始前に行うことが好ましい。先に述べたように、溶融塩中の特定の金属塩化物を電気分解する前に、その溶融塩に含まれ得る水の量を推定することにより、電解槽1の短命化や電流効率の低下等といった問題の発生を未然に抑制できる可能性があるからである。
ここでは、事前に、所定の溶融塩について、その溶融塩サンプルを用いて電圧を印加すること等により、電流測定工程で当該電圧の印加により流れる電流の大きさの基準値を定めておくことが有効である。この基準値は、電極3の消耗や電流効率の低下が看過できなくなる量の水を含む溶融塩で、1.2V以上かつ2.75V未満の範囲内の所定の電圧を印加した際に流れる電流の大きさとすることができる。
電解工程の開始前に溶融塩中の水の量を推定するため電流測定工程を行い、この際に測定された電流の大きさが上記の基準値以下であれば電解工程を開始する実施形態も好ましい。一方、当該電流の大きさが上記の基準値を超える場合は、種々の手法により溶融塩中の水を低減する作業を行うことができる。このようにすることで、電解工程で電極3が短期間で大きく消耗することや、電解工程の開始初期の電流効率の大幅な低下を有効に抑制することができる。
新規耐火煉瓦を使用する場合を考えると、当該耐火煉瓦や目地材であるモルタル等由来の水が溶融塩に混合されてしまう。この水の挙動は必ずしも明らかではないが、比較的長期間にわたり前記耐火煉瓦およびモルタルから溶融塩に水が混合されうる。よって、電解電流量が前の測定値に対し低下傾向を示すことを確認後、かつ、前記基準値を満たしてから金属塩化物の電気分解を開始してもよい。この場合、基準値は前記低下傾向に先立って満たされてよいし、低下傾向確認後に基準値が満たされてもよい。
なお、このようにして電流測定工程を行って、電解工程を開始した場合、その電解工程では溶融塩の温度を651℃以上かつ700℃以下とすることが好適である。電解工程での溶融塩温度を651℃以上とすることにより、たとえば電解工程で金属マグネシウムを得る場合、溶融塩が金属マグネシウムの融点以上になって、金属マグネシウムの回収を有効に実施することができる。また、ここでの溶融塩温度を700℃以下とすることにより、金属マグネシウムと塩素の反応で再び塩化マグネシウムに戻る程度を低減することができる。
この発明の溶融塩中の水量測定方法を試験的に適用し、その測定時点での水の電気分解に伴う電解電流量を基に、電解槽内を溶融塩浴とした後の保持時間(金属塩化物電気分解の開始タイミング)を変えた場合の効果を確認したので、以下に説明する。なお、電解槽内を溶融塩浴とした後の保持時間とは、電解槽内に溶融塩を供給して電解槽の内部を溶融塩浴としたときから、その溶融塩浴で溶融塩中の金属塩化物の電気分解を開始するまでの時間を意味する。
(事前試験:電解電流量の基準値の取得)
塩化マグネシウムの電気分解開始から1ヶ月以上経過し、水量が十分安定していると考えられる電解槽内の溶融塩を採取し、高さ250mm、内径37mmの容器内に、採取した溶融塩のうち240gを入れて、溶融塩温度を660℃に保った状態で、陽極及び陰極からなる電極を設置し、水量の程度を推定した。より具体的には、水の分解電圧(1.2V)より大きく且つMgCl2の分解電圧(2.75V)未満である2.5Vの定電圧を電極に1分間印加し、その際の電解電流量を測定した。
なおここで、水量の確認に用いた電極の材質、形状及びその他の条件は次のとおりである。
溶融塩組成:MgCl2が15~20質量%、CaCl2が30~35質量%、NaClが49~54質量%、MgF2が0.5~1.5質量%(但し、各成分の合計が100質量%であることが前提である。)
電極材質:グラファイト(比抵抗:8.0μΩ・m)
電極断面形状:半月型(全長590mm、幅30.4mm、厚さ11mm)
溶融塩への電極浸漬深さ:120mm
対向電極間距離:7mm
上記のような電解電流量の測定を、塩化マグネシウムの電気分解開始から1ヶ月、25ヶ月、および37ヶ月経過した電解槽(溶融塩中の水量が定常的に少ない電解槽)内の溶融塩に対し、各々実施した。その結果を表1に示す。
Figure 0007166086000001
表1の測定結果1~3より、前述測定条件における電解電流量が1A程度となることで溶融塩の脱水が十分達成できている状態であると推察した。
この結果より、以下の実施例1及び2においては、電解槽内を溶融塩浴とした後の保持期間中に適宜電解電流量を測定し、その電解電流量が直前の測定値に対し低下傾向を示し、且つ約3A以下(測定結果1~3における1Aの3倍)となることを、塩化マグネシウムの電気分解開始時の溶融塩中の水量基準とした。この水量基準を満たしたうえで、溶融塩の温度が600℃超であることを確認後、溶融塩電解槽の電気分解を開始した。
(実施例1)
電気分解を開始するまでの間に複数回にわたって水量の推定を実施した。その結果を図4に示す。なお、電解工程では溶融塩浴の温度は660℃で保持した。なお、実施例1の電解槽の炉壁煉瓦は新品であり、かつ新規に製作した溶融塩量は22tonであった。
ここでは、電解槽内を溶融塩浴とし、浸管バーナーを用い、溶融塩の温度が600℃超となるように昇温する過程で、概略20時間弱の間隔毎に、電解槽内の溶融塩を採取した。採取した溶融塩のうち240gを、高さ250mm、内径37mmの容器内に入れて、溶融塩温度を660℃に保った状態で、陽極及び陰極からなる電極を設置し、水量の程度を推定した。より具体的には、2.5Vの定電圧を電極に1分間印加し、その際の電解電流量を測定した。なおここで、水量の確認に用いた電極の材質、形状及びその他の条件は次のとおりである。
溶融塩組成:MgCl2が15~20質量%、CaCl2が30~35質量%、NaClが49~54質量%、MgF2が0.5~1.5質量%(但し、各成分の合計が100質量%であることが前提である。)
電極材質:グラファイト(比抵抗:8.0μΩ・m)
電極断面形状:半月型(全長590mm、幅30.4mm、厚さ11mm)
溶融塩への電極浸漬深さ:120mm
対向電極間距離:7mm
なお、後述の実施例2でも、これと同様の条件で溶融塩の採取、水量の推定等を行った。
実施例1では、電解電流量が約3A以下になるまでの時間は162時間であり、そのときの電解電流量は3.1Aであった。なお、電解槽への溶融塩の供給完了から溶融塩の電気分解開始までの保持時間は、電解電流量が約3A以下になるまでの時間と同様に、162時間である。
(実施例2)
電気分解を開始するまでの間に複数回にわたって水量の推定を実施した。その結果を図4に示す。なお、実施例2の電解槽の炉壁煉瓦は再利用品であり、かつ新規に製作した溶融塩量は0tonであった。
実施例2では、電解電流量が3Aに到達することはなかったが、電解槽内を溶融塩浴とした後は電解電流量が増加傾向を示した。このため、たとえ電解電流量が3A以下であっても、溶融塩浴の加熱状態を維持しつつすぐには溶融塩の電気分解を開始しなかった。なお、電解電流量の低下傾向を確認したのは保持時間39時間であり、そのときの電解電流量は1.1Aであった。この電解電流量の低下傾向をさらに確認し、電解槽への溶融塩の供給完了から溶融塩の電気分解開始までの保持時間は63時間であった。
電解槽への溶融塩の供給完了から溶融塩の電気分解開始までの保持時間は、実施例1では162時間、実施例2では63時間となった。実施例2が塩化マグネシウムの電気分解開始時の溶融塩中の水量基準を短時間で達成できた要因は、再利用品の炉壁煉瓦を使用し、かつ溶融塩に関しても新規に固体原料から製作した浴量が0tonであったため、それらからの溶融塩中への水の混入が非常に少なかったためと考えられる。
実施例1および実施例2の電解槽に対し、溶融塩電解槽の電気分解を開始してから7日間の平均電流効率を算出した。なお電流効率は、以下の式により算出し、「平均電流効率」は、実施例1の電流効率を100(基準)とし、実施例2の電流効率を実施例1の電流効率に対する相対値で示したものである。
電流効率=電解槽から回収したMg質量/理論生成Mg質量
実施例1の通電開始から7日間の平均電流効率が100%であったのに対し、実施例2の通電開始から7日間の平均電流効率は127%であった。溶融塩中の水量が少ないと思われる実施例2は実施例1より電流効率が優れており、本発明の溶融塩中の水量推定方法は有効な手段であると考えられる。
1 電解槽
2 外壁
2a 電解室
2b 貯留室
3 電極
3a 陽極
3b 陰極
3c、3d バイポーラ電極
4 温度調整管
5 隔壁
5a 溶融塩循環路
5b 溶融金属流路

Claims (7)

  1. 溶融塩に固体の電極を浸漬し、1.2V以上かつ2.75V未満の電圧を印加し、当該電圧の印加により流れる電流の大きさを測定する電流測定工程を含み、
    電流測定工程で、前記溶融塩の温度を450℃以上かつ700℃以下と
    前記溶融塩が、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む、溶融塩中の水量推定方法。
  2. 電流測定工程で、印加する電圧を2.2V以上かつ2.75V未満とする、請求項1に記載の溶融塩中の水量推定方法。
  3. 金属塩化物を含有する溶融塩中の前記金属塩化物を電気分解する電解工程を含み、前記溶融塩から溶融金属を製造する方法であって、
    電解工程の開始前に、請求項1又は2に記載の溶融塩中の水量推定方法を実施し、前記電流測定工程で前記電圧を印加して測定された電流の大きさが、予め定めた基準値以下である場合に、当該溶融塩に対して前記電解工程を開始する、溶融金属の製造方法。
  4. 前記電解工程で、溶融塩の温度を651℃以上かつ700℃以下とする、請求項に記載の溶融金属の製造方法。
  5. 前記金属塩化物が塩化マグネシウムであり、前記溶融金属が金属マグネシウムである請求項又はに記載の溶融金属の製造方法。
  6. 前記電解工程で、煉瓦及び/又はモルタルを含む電解槽を使用する、請求項のいずれか一項に記載の溶融金属の製造方法。
  7. 電解工程の開始前に、前記電流測定工程を複数回行い、
    前記電流の大きさが前回の測定値に対して低下する傾向を確認した後、かつ、前記電流の大きさが前記基準値以下になった後、前記電解工程を開始する、請求項のいずれか一項に記載の溶融金属の製造方法。
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