JP2022072375A - 金属マグネシウムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度の上昇を抑制することができる金属マグネシウムの製造方法を提供する。【解決手段】この発明の金属マグネシウムの製造方法は、塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む溶融塩浴で、前記塩化マグネシウムを電気分解し、該電気分解により金属マグネシウムを製造する方法であって、前記溶融塩浴に含まれる前記塩化ナトリウムとは別の新たな塩化ナトリウムを、前記溶融塩浴に補給する塩化ナトリウム補給工程を含むものである。【選択図】なし

Description

この発明は、溶融塩浴で塩化マグネシウムを電気分解する溶融塩電解により、金属マグネシウムを製造する方法に関するものである。
たとえば、クロール法による金属チタンの製造に際し、副次的に生成される塩化マグネシウムは、溶融塩電解により金属マグネシウムと塩素ガスとに分解されることがある。この場合、金属マグネシウムと塩素ガスはそれぞれ四塩化チタンの還元及びチタン鉱石の塩化に用いて再利用することができる。
この種の溶融塩電解を行うには一般に、たとえば隔壁によって回収室と電解室とに区画された電解槽内に、塩化マグネシウムの他に塩化ナトリウム等の支持塩を含む溶融塩を溜めて溶融塩浴を構成し、電気分解を実施する。溶融塩浴の溶融塩は電解槽内の回収室から電解室へと流動し、該電解室内にて溶融塩に含まれる塩化マグネシウムが電気分解されて金属マグネシウムと塩素とが生成される。電解室で生成された金属マグネシウムは電解槽内で回収室へとさらに循環して、溶融塩との密度差によって溶融塩浴の浴面上に浮上した後に回収される。これにより、金属マグネシウムを製造することができる。なお、塩素は電解槽に設けられたガス排出通路等を経て電解槽の外部に排出される。
上述したような溶融塩電解では、塩化マグネシウムが電気分解されて金属マグネシウムが生成されると、それに伴って溶融塩浴中の塩化マグネシウムが減少する。それ故に、溶融塩電解を継続して行うには、電気分解で消費される塩化マグネシウムを溶融塩浴に補給することが必要になる。
これに関連して、特許文献1には、「溶融塩浴の温度上昇を抑制しながら、電気分解の継続に伴って消費される塩化マグネシウムを溶融塩浴に補給すること」を目的として、「塩化マグネシウム及び支持塩を含む溶融塩の溶融塩浴で、電極への通電に基いて前記塩化マグネシウムを電気分解し、該電気分解により金属マグネシウムを得る溶融塩電解方法であって、溶融塩浴に塩化マグネシウムを補給するに当り、前記溶融塩浴から、塩化マグネシウム及び支持塩を含む溶融塩の一部を抜き取る浴抽出工程と、浴抽出工程で抜き取った溶融塩を補給用塩化マグネシウムと混合し、前記溶融塩と補給用塩化マグネシウムとの混合物とする混合物生成工程と、前記混合物を塩化マグネシウムの融点以下の温度で、前記溶融塩浴に供給する混合物供給工程とを含む溶融塩電解方法」が提案されている。
特開2019-214773号公報
ところで、溶融塩電解では、たとえば、溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度がある程度一定に維持されるように、溶融塩浴に塩化マグネシウムを補給する場合がある。
しかしながら、この場合であっても、塩化マグネシウムの補給を繰り返し行うに伴い、溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度が次第に上昇する場合があった。溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度が高くなると、電気分解により一旦生成された金属マグネシウムと塩素とが塩化マグネシウムに戻る再反応が起きやすくなって、電気分解で消費した電流量に対する製造歩留まりが低下する。なお、この再反応は電気分解により生成した金属マグネシウムが回収室に循環する前に発生してしまう可能性がある。
この発明の目的は、溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度の上昇を抑制することができる金属マグネシウムの製造方法を提供することにある。
発明者は鋭意検討の結果、溶融塩電解を継続していると、溶融塩浴中の塩化マグネシウムだけでなく塩化ナトリウムも減少するとの新たな知見を得た。溶融塩電解の間、溶融塩浴の減少する成分として、これまでは電気分解で分解されて消費される塩化マグネシウムしか着目されていなかったが、発明者は、溶融塩浴から発生する塩素を含むガスや電解槽の底面上に堆積するスラッジ等に、気体もしくは固体の塩化ナトリウムが無視しえない量で含まれることを見出した。これにより、溶融塩浴の塩化ナトリウム濃度が、溶融塩電解の進行とともに低下すると推測される。従来は、電気分解による塩化マグネシウムの減少分だけ、溶融塩浴に補給される塩化マグネシウムで補われていたことから、当該補給に伴って塩化マグネシウム濃度が上昇していたと考えられる。
このことから発明者は、溶融塩浴に塩化マグネシウムのみならず塩化ナトリウムを補給すれば、溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度の上昇を抑制できると考えた。
この発明の金属マグネシウムの製造方法は、塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む溶融塩浴で、前記塩化マグネシウムを電気分解し、該電気分解により金属マグネシウムを製造する方法であって、前記溶融塩浴に含まれる前記塩化ナトリウムとは別の新たな塩化ナトリウムを、前記溶融塩浴に補給する塩化ナトリウム補給工程を含むものである。
塩化ナトリウム補給工程では、前記新たな塩化ナトリウムを、固体状態で、又は、溶融状態で前記溶融塩浴に補給することが好ましい。
この場合、塩化ナトリウム補給工程で、前記新たな塩化ナトリウムを単独で前記溶融塩浴に補給することが好適である。
また、塩化ナトリウム補給工程では、前記新たな塩化ナトリウムを、塩化マグネシウムと混合させて溶融状態で補給することが好ましい。
この発明の金属マグネシウムの製造方法では、塩化ナトリウム補給工程で1回当たりに補給する前記新たな塩化ナトリウムと、当該補給時の前記溶融塩浴との質量比として、溶融塩浴:塩化ナトリウム=200:1~1500:1を満たすようにすることが好ましい。
この発明の金属マグネシウムの製造方法では、塩化ナトリウム補給工程での前記溶融塩浴への前記新たな塩化ナトリウムの補給を、1回/月~10回/月の頻度で行うことが好ましい。
この発明の金属マグネシウムの製造方法は、前記溶融塩浴に塩化マグネシウムを補給する塩化マグネシウム補給工程をさらに含むことがある。
また、この発明の金属マグネシウムの製造方法は、前記溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度及び/又は塩化ナトリウム濃度を測定する濃度測定工程をさらに含むことがある。
この発明の金属マグネシウムの製造方法では、前記電気分解の間、前記溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度を、10質量%~25質量%の範囲内に維持することが好ましい。
この発明の金属マグネシウムの製造方法によれば、溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度の上昇を抑制することができる。
この発明の一の実施形態に係る金属マグネシウムの製造方法に用いることができる電解槽の一例を示す、電解槽内の溶融塩浴の深さ方向に沿う断面図である。 図1のII-II線に沿う断面図である。
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態に係る金属マグネシウムの製造方法では、図1に断面図で例示するような電解槽1等を用いる。電解槽1を用いる溶融塩電解では、塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む溶融塩浴で塩化マグネシウムを電気分解し、その電気分解により金属マグネシウムを生成させて製造する。そしてここでは、電解槽1を用いて金属マグネシウムを製造するに当り、溶融塩浴に含まれる塩化ナトリウムとは別の新たな塩化ナトリウムを、溶融塩浴に補給する塩化ナトリウム補給工程を行う。
(溶融塩電解)
電解槽1は、たとえば主としてAl23等の耐火煉瓦その他の適切な材料からなる容器形状を有する。電解槽1の内部には、塩化マグネシウム及び、支持塩の一つとしての塩化ナトリウムを含む溶融塩を貯留させ、これにより溶融塩浴を構成する。
ここで、図示の電解槽1は内部に、図1の右側に位置して電気分解が行われる電解室2aと、図1の左側に位置し、電解室2aでの電気分解により得られた金属マグネシウムが流れ込んで該金属マグネシウムが溶融塩との密度差により上方側に溜まる回収室2bと、実質的に深さ方向(図1の上下方向)に沿って配置されて、それらの電解室2aと回収室2bとを区画する隔壁3とを備えるものである。隔壁3は、図示の例では、電解槽1の上方側開口を覆蓋するための蓋部材4に近接させて配置されている。これにより、隔壁3と電解槽1の下方側の底面2cとの間に、回収室2bから電解室2aへの溶融塩浴の移動を可能にする溶融塩循環路3aを形成する。また、隔壁3の上方側の部分に設けた溶融金属流路3bにより、電解室2aから回収室2bへの金属マグネシウムの流入が可能になる。隔壁3は、図1では左右二箇所に分かれて設置されているが、溶融塩循環路3a及び溶融金属流路3bを設けることができれば、その形状や個数等の構成を適宜変更することができる。
またここで、この電解槽1は内部の電解室2aに、溶融塩浴の深さ方向と平行に並んで配置される部分を有する電極5を備える。電極5には、図示しない電源等に接続される陽極5a及び陰極5bが含まれる。
電極5は、少なくとも陽極5a及び陰極5bを有するものであれば、溶融塩浴中の塩化マグネシウムの電気分解を行うことができる。他方、電気分解の金属マグネシウム生成効率向上等の観点からは、図2に示すところから解かるように、陽極5aと陰極5bとの間に、電源に接続されておらず陽極5a及び陰極5b間への電圧の印加によって分極する一枚以上、たとえば二枚のバイポーラ電極5cをさらに有することが好ましい。但し、このようなバイポーラ電極5cは必ずしも必要ではない。
なお、電解槽1はさらに、図示しないが、回収室2b等に配置されて、溶融塩浴の温度調整を行う熱交換器としての温度調整管等を備えることがある。
溶融塩浴を構成する溶融塩には、塩化マグネシウム(MgCl2)の他、支持塩が含まれ得る。この支持塩は、塩化マグネシウムと混合した際に晶出温度を低下させ、かつ、粘度を低下させる電解質を意味する。支持塩は具体的には、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)、フッ化マグネシウム(MgF2)及びフッ化カルシウム(CaF2)からなる群から選択される少なくとも一種とすることができる。なお、本実施形態では、溶融塩浴は支持塩として少なくとも塩化ナトリウムを含む。晶出温度とは、二種類以上の電解質からなる溶融塩を液体の状態から温度を下げたときに、ある一種類の電解質成分が固体として析出し始める晶出という現象が起きる温度をいう。仮に溶融塩が一種類だけである場合、液体の状態から温度を下げたときに、凝固点で全体が固体となるため、晶出温度は凝固点、すなわち融点に相当する。なお、電気分解で塩化マグネシウムを優先的に分解させるため、支持塩としては、塩化マグネシウムより分解電圧が高い電解質を用いることが一般的である。
電解槽1を用いて行う溶融塩電解では、電解室2aでの塩化マグネシウムの電気分解により、MgCl2→Mg+Cl2の反応に基づいて、陰極5bの表面で還元反応により溶融金属である金属マグネシウム(Mg)が生成されるとともに、陽極5aの表面で酸化反応により塩素(Cl2)ガスが発生する。
より詳細には、溶融塩浴の対流により、図1に示すように、溶融塩が回収室2bから底面2c側の溶融塩循環路3aを経て電解室2aに流動する。電解室2aでは、溶融塩中の塩化マグネシウムが電気分解され、金属マグネシウムが生成される。そして、この金属マグネシウムは、隔壁3の浴面側の溶融金属流路3bを通って回収室2bに流入する。その後、溶融塩に対する比重の小さい金属マグネシウムは、回収室2bの浅い箇所に浮上してそこに溜まることになる。回収室2bで浮上した金属マグネシウムは、図示しないポンプ等により回収することができる。したがって、これによれば、溶融塩から金属マグネシウムを製造することができる。また、それとともに塩素ガスが得られる。
溶融塩電解で生成された金属マグネシウムは、金属チタンを製造するクロール法における四塩化チタンの還元に、また塩素ガスは、チタン鉱石の塩化にそれぞれ用いることができる。溶融塩電解の原料とする塩化マグネシウムとしては、クロール法で副次的に生成されるものを使用可能である。
(塩化ナトリウム補給工程)
上述したような電解槽1を用いた溶融塩電解では、塩化マグネシウムの電気分解が進むにつれて、溶融塩浴中の塩化マグネシウムが消費されて減少するが、それだけでなく溶融塩浴中の塩化ナトリウムも減少することが新たに分かった。
溶融塩電解の間、塩化マグネシウムの電気分解で生成する塩素ガスが電解槽1の外部に漏洩するのを防止する目的で、電解槽1の内部は若干の負圧に維持される。また、高温に維持される溶融塩浴中の塩化ナトリウムの一部は蒸発し、電解室2aでの電気分解により発生する塩素とともにガスとして、図示しないガス排出通路から電解槽1の外部に排出され得る。このことは、電解槽1から排出されて回収されるガス中の微粉を回収して調べることにより確認することができる。すなわち、高温且つ減圧条件下で蒸発した塩化ナトリウムは電解槽1から塩素とともに排出された後に微粉(固体)となるため、例えばバグフィルタ等のフィルタを使用することで前記微粉を回収できる。この微粉の成分を調べることにより、電解槽1内の溶融塩浴から塩化ナトリウムが蒸発することを確認可能である。また、電解槽1の底面2c上には、溶融塩電解の進行に伴って該底面2cに固着しながら形成される堆積物、いわゆるスラッジが成長することがある。このスラッジに、溶融塩浴中の塩化ナトリウムの一部が含まれる場合がある。
溶融塩電解が進むと、このようにして溶融塩浴中の塩化ナトリウムが減量され、溶融塩浴の塩化ナトリウム濃度が低下する。
そして、従来の方法では、溶融塩浴の塩化ナトリウム濃度の低下が考慮されていなかったことから、たとえば溶融塩浴中の溶融塩の減少分に応じた量の塩化マグネシウムを補給すると、電気分解による塩化マグネシウムの消費分だけでなく塩化ナトリウムの減少分をも含む過剰な量の塩化マグネシウムが溶融塩浴に供給されることになる。このような過剰量の塩化マグネシウムの補給は、その補給の度に溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度を上昇させる。溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度が上昇すると、金属マグネシウム及び塩素から塩化マグネシウムへの再反応が促され、消費電流量に対する金属マグネシウムの生成量が低下する。これにより、金属マグネシウムの製造における歩留まりが低下する。
これに対し、この実施形態では、塩化ナトリウム補給工程を行い、溶融塩浴に含まれる塩化ナトリウムとは別の新たな塩化ナトリウムを溶融塩浴に補給する。塩化ナトリウム補給工程で新たな塩化ナトリウムを補給すれば、後述の塩化マグネシウム補給工程にて、適切な量の塩化マグネシウムを溶融塩浴に補給することで溶融塩浴中の塩化マグネシウム濃度を適切な範囲内に維持することが可能になる。その結果として、溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度の上昇を抑制することができる。
ここで、「溶融塩浴に含まれる塩化ナトリウムとは別の新たな塩化ナトリウム」とは、溶融塩浴に既に含まれている塩化ナトリウムではなく、電解槽1の外部から内部の溶融塩浴に持ち込まれる塩化ナトリウムを意味する。したがって、溶融塩浴に含まれていて当該溶融塩浴から取り出した塩化ナトリウムは、ここでいう「新たな塩化ナトリウム」に該当しない。
なお、溶融塩浴には塩化カルシウムも含まれることがあり、この塩化カルシウムも上記のスラッジ等に含まれて減少する場合がある。それ故に、新たな塩化カルシウムを溶融塩浴に補給する塩化カルシウム補給工程をさらに行うことも可能である。但し、先述したように塩化ナトリウムは溶融塩電解の間に塩化カルシウムよりも優先的に蒸発し、溶融塩浴中での減少量は、塩化カルシウムよりも塩化ナトリウムのほうが多い傾向がある。また、塩化ナトリウムは塩化カルシウムよりも比較的高純度のものを入手しやすい他、塩化ナトリウムは塩化カルシウムに比して電気伝導度が高い。また、塩化カルシウムに比して吸湿性の低い塩化ナトリウムを溶融塩浴に補給することにより、電気分解で生成した金属マグネシウムの酸化を抑えることができる。そのような理由から、塩化ナトリウムの補給のほうが重要であり、塩化カルシウムよりも塩化ナトリウムの補給量ないし頻度を多くするほうが望ましい。
新たな塩化ナトリウムを補給するに当り、具体的には、固体状態の塩化ナトリウムを溶融塩浴に投入し、又は、溶融状態の塩化ナトリウムを溶融塩浴に送り込むことができる。固体状態の塩化ナトリウムは、その補給時に溶融塩浴の温度に対して低温にすることができるので、溶融塩浴の温度上昇を抑制するとの観点から好ましい。補給時等における溶融塩浴の温度の一時的な上昇は上記再反応を促進する要因となるため、金属マグネシウムの製造効率を低下させるおそれがある。
あるいは、塩化ナトリウムを溶融状態で溶融塩浴に補給する場合は、新たな塩化ナトリウムを塩化マグネシウムと混合させてこれを溶融状態で溶融塩浴に補給することもできる。より具体的には、固体状態もしくは溶融状態等の塩化ナトリウムを塩化マグネシウムと混合させ、その混合物を溶融状態で溶融塩浴に送り込むことができる。また、塩化マグネシウムと塩化ナトリウムを混合してから溶融させ、その後溶融状態の混合物を溶融塩浴に送り込むことができる。このように塩化ナトリウムと塩化マグネシウムの混合物を溶融塩浴に補給する場合、塩化ナトリウム補給工程の際に、後述の塩化マグネシウム補給工程も行われることになる。それにより、高温の溶融状態の塩化ナトリウム及び塩化マグネシウムの総補給回数が少なくなるので、溶融塩浴の温度が上昇する頻度を低下させることができる。
塩化ナトリウム補給工程での塩化ナトリウムの補給量に関し、塩化ナトリウム補給工程で1回当たりに補給する新たな塩化ナトリウムと、当該補給時(つまり補給直前)の溶融塩浴との質量比(溶融塩浴:塩化ナトリウム)としては、溶融塩浴:塩化ナトリウム=200:1~1500:1の関係を満たすことが好ましい。1回当たりの塩化ナトリウムの補給量をある程度多くすることにより、溶融塩電解が進むにつれて減少する塩化ナトリウムを適切に補うことができる。この一方で、1回当たりの塩化ナトリウムの補給量を多くし過ぎないことにより、塩化ナトリウムを固体状態で補給した場合における溶融塩浴中での溶け残り、それのスラッジへの混入を抑制することができる。このような観点から、新たな塩化ナトリウムと溶融塩浴との質量比は、溶融塩浴:塩化ナトリウム=1000:1~1500:1の関係を満たすことがより一層好ましい。溶融塩浴の質量は、電解槽1の容積、溶融塩浴の浴面高さ、及び、溶融塩浴を構成する溶融塩の密度から求めることができる。この溶融塩浴の質量に、電気分解により生成される金属マグネシウムの質量は含まれない。浴面高さは、電解槽1の回収室2bにおける底面2cから溶融塩浴の浴面までの深さ方向の距離を意味し、金属マグネシウムを含まない溶融塩浴の浴面の高さである。
塩化ナトリウム補給工程では、溶融塩浴への新たな塩化ナトリウムの補給を、好ましくは1回/月~10回/月、より好ましくは3回/月~7回/月の頻度で行う。塩化ナトリウムの補給の頻度をこのような範囲内とすることにより、溶融塩浴の塩化ナトリウム濃度を安定させつつ、補給に要する作業の負荷の増大を抑えることができる。このような頻度で塩化ナトリウムは溶融塩浴に、定期的に、あるいは塩化ナトリウムもしくは塩化マグネシウム濃度等に応じて不定期的に補給することができる。他方、塩化マグネシウム濃度の過度上昇を検知してから一度に多量の塩化ナトリウムを溶融塩浴に投入しても、金属マグネシウム回収量が好適に向上しないことがある。例えば、新たな塩化ナトリウムの補給頻度を1回/2か月(2か月に1回の補給)のような頻度とすると、上記のような頻度の場合に比べ、金属マグネシウム回収量が好適に向上しないことがある。
(塩化マグネシウム補給工程)
上記の塩化ナトリウム補給工程に加えて、塩化マグネシウム補給工程を行うことがある。塩化マグネシウム補給工程では、電解槽1の外部から新たな塩化マグネシウムを持ち込んで、当該塩化マグネシウムを電解槽1内に補給する。
塩化マグネシウムの補給では、溶融塩浴に塩化マグネシウムを、それ単独で送り込むことができる他、先に述べたように溶融状態の塩化ナトリウムと混合させた溶融塩の混合物として送り込むこともできる。多くの場合、塩化マグネシウムは溶融状態で補給する。
塩化マグネシウム補給工程での塩化マグネシウムの1回当たりの補給量として、塩化マグネシウム補給工程で1回当たりに補給する塩化マグネシウムと、その補給時の溶融塩浴との質量比は、溶融塩浴:塩化マグネシウム=60:1~10:1の範囲内とすることができる。また、塩化マグネシウムの補給の頻度は、5回/日~20回/日とすることがある。
(濃度測定工程)
必要に応じて、溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度及び/又は塩化ナトリウム濃度を測定する濃度測定工程を行うことができる。濃度測定工程では、たとえば、溶融塩浴を構成する溶融塩をサンプルとして溶融塩浴から採取する。そして、そのサンプルに対して、例えばマグネシウム及びカルシウムについては誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法を使用し、ナトリウムについては原子吸光光度法を使用することにより各濃度を測定することができる。これによってマグネシウム及び/又はナトリウムの濃度がわかれば、すべて塩化物であるとみなして、塩化マグネシウム濃度及び/又は塩化ナトリウム濃度を求めることができる。なお、塩化マグネシウムの電気分解を長期間行っても、例えば、溶融塩浴に含まれるフッ化マグネシウムはその量が維持されやすいため、塩化マグネシウムの製造においてフッ化マグネシウム等支持塩であるフッ化物は量が変動しないとして取り扱うことができる。
このような塩化マグネシウム濃度及び塩化ナトリウム濃度のうちの少なくとも一方の濃度は、上述した塩化ナトリウム補給工程や塩化マグネシウム補給工程での塩化ナトリウムや塩化マグネシウムの補給量ないし補給頻度を決定する際の基準ないし目安等として使用され得る。
電気分解の間は、溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度は、10質量%~25質量%の範囲内、さらには11質量%~23質量%の範囲内に維持されることが好ましい。これにより、金属マグネシウムと塩素とが塩化マグネシウムに戻る再反応及び、金属マグネシウムの生成効率の低下が抑えられて、歩留まりの低下を抑制することができる。溶融塩浴の塩化ナトリウム濃度は、40質量%~65質量%の範囲内に維持されることがある。
次に、この発明の金属マグネシウムの製造方法を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
図1に示すような電解槽を用いて、当該電解槽内の溶融塩浴で塩化マグネシウムの電気分解を行い、金属マグネシウムを製造した。この電解槽としては、内壁がAl23の含有率が95%以上の煉瓦からなり、電解室が2m3、回収室が1m3であるものを用いた。電解室には、黒鉛製の陽極及び陰極を設置し、前記陽極と陰極の間には二枚のバイポーラ電極を配置した。その結果、図2に示すような断面視にて陽極となる面と陰極となる面がそれぞれ3であり、すなわち電気分解回数NはN=3とした。溶融塩浴形成時の浴組成については、MgCl2、CaCl2、NaCl、MgF2がそれぞれ質量比で20%、30%、49%、1%からなる溶融塩とし、5か月の期間にわたって操業を行った。
下記の実施例及び比較例のいずれにおいても、5か月の操業の間、300回/月の頻度で塩化マグネシウムを溶融塩浴に補給した。
実施例では、5か月の操業の間、溶融塩浴に塩化マグネシウムだけでなく、固体状態の塩化ナトリウム(新たな塩化ナトリウム)も補給した。塩化ナトリウムは単独補給とし、補給頻度を4回/月とし、1回当たりの補給量を溶融塩浴の質量に対する比で1250:1とした。
その結果、5か月の操業の間に溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度が11質量%~23質量%の範囲内に維持されていた。塩化ナトリウム濃度は40~65質量%の範囲内に維持されていた。また、フッ化マグネシウム量は維持されていた。
比較例では、塩化ナトリウムを補給せず、その分、溶融塩浴中の減少分に応じた量の塩化マグネシウムが補給されたことを除いて、実施例とほぼ同様とした。
この比較例では、溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度が、操業開始から4か月目で25質量%を上回り、さらに5か月目に26質量%を超えた。
実施例の金属マグネシウムの製造量を質量基準の100とした場合、比較例の金属マグネシウムの製造量は97であった。5か月の操業で金属マグネシウムの製造量が実施例よりも15tоn以上少なかった。
以上より、この発明によれば、溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度の上昇を抑制できることが解かった。
1 電解槽
2a 電解室
2b 回収室
2c 底面
3 隔壁
3a 溶融塩循環路
3b 溶融金属流路
4 蓋部材
5 電極
5a 陽極
5b 陰極
5c バイポーラ電極

Claims (9)

  1. 塩化マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む溶融塩浴で、前記塩化マグネシウムを電気分解し、該電気分解により金属マグネシウムを製造する方法であって、
    前記溶融塩浴に含まれる前記塩化ナトリウムとは別の新たな塩化ナトリウムを、前記溶融塩浴に補給する塩化ナトリウム補給工程を含む、金属マグネシウムの製造方法。
  2. 塩化ナトリウム補給工程にて、前記新たな塩化ナトリウムを、固体状態で、又は、溶融状態で前記溶融塩浴に補給する、請求項1に記載の金属マグネシウムの製造方法。
  3. 塩化ナトリウム補給工程で、前記新たな塩化ナトリウムを単独で前記溶融塩浴に補給する、請求項2に記載の金属マグネシウムの製造方法。
  4. 塩化ナトリウム補給工程で、前記新たな塩化ナトリウムを、塩化マグネシウムと混合させて溶融状態で補給する、請求項1に記載の金属マグネシウムの製造方法。
  5. 塩化ナトリウム補給工程で1回当たりに補給する前記新たな塩化ナトリウムと、当該補給時の前記溶融塩浴との質量比として、溶融塩浴:塩化ナトリウム=200:1~1500:1を満たすようにする、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属マグネシウムの製造方法。
  6. 塩化ナトリウム補給工程での前記溶融塩浴への前記新たな塩化ナトリウムの補給を、1回/月~10回/月の頻度で行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属マグネシウムの製造方法。
  7. 前記溶融塩浴に塩化マグネシウムを補給する塩化マグネシウム補給工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属マグネシウムの製造方法。
  8. 前記溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度及び/又は塩化ナトリウム濃度を測定する濃度測定工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属マグネシウムの製造方法。
  9. 前記電気分解の間、前記溶融塩浴の塩化マグネシウム濃度を、10質量%~25質量%の範囲内に維持する、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属マグネシウムの製造方法。
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