JP7127984B2 - 溶融塩電解槽の操業方法及び、溶融金属の製造方法 - Google Patents

溶融塩電解槽の操業方法及び、溶融金属の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、電解槽の内部を溶融塩浴とし、電解槽の内部で溶融塩を貯留室から電解室へ流動させ、電解室で当該溶融塩を電気分解して得られる溶融金属を貯留室に流入させる溶融塩電解槽の操業方法及び、それを用いる溶融金属の製造方法に関するものであり、特には、電流効率の向上に寄与することのできる技術を提案するものである。
たとえば、クロール法による金属チタンの製造に際し、副次的に生成される塩化マグネシウムは、溶融塩電解槽を用いて、電気分解により金属マグネシウムと塩素ガスとに分解され、それぞれ四塩化チタンの還元およびチタン鉱石の塩素化に用いられて再利用されることがある。
この種の電気分解では一般に、隔壁によって貯留室と電解室とに区画された電解槽の内部で、塩化マグネシウム等の溶融塩を貯留させて溶融塩浴とし、電解槽の内部の溶融塩が貯留室から電解室へ流れて、ここで電極への通電に基き、金属マグネシウム等の溶融金属と塩素等のガスとに分解される。電解室で生成された溶融金属は電解槽の内部で貯留室へとさらに循環して、溶融塩との密度差によって溶融塩浴の液面上に浮上した後または底部に沈降した後に回収され、また、ガスは電解槽に設けられたガス排出通路を経て電解槽の外部に排出される。このような技術としては従来、特許文献1~4に記載されたもの等がある。
特開2005-089801号公報 特開2005-171357号公報 特開2007-231388号公報 特開2015-140459号公報
ところで、上述したような溶融塩の電気分解では、電解槽に供給される微量の溶融金属を含む溶融塩化物が、電解槽に供給されるまでの工程ないし作業の間で大気と接触することによる溶融金属の酸化や溶融塩化物の加水分解等により、微量の金属酸化物が形成される。また微減圧で操業される電解槽の内部へ周囲から流入する大気により電解槽で生成した溶融金属の一部が酸化し、金属酸化物を生じる。このようにして生じた金属酸化物が混入した電解槽においては、電気分解の際に陰極表面近傍に金属酸化物の粒子が凝集し、溶融塩化物の電気分解によって生じる溶融金属の成長を妨げる。溶融塩浴に金属酸化物が多量に含まれる場合は、これが金属酸化物の固形物を含む薄い層となって陰極表面近傍に存在することもあり、それにより、電気分解により生成される溶融金属の成長が著しく阻害されるという問題があった。
そして、陰極表面の固形物により成長を阻害された溶融金属は、極めて小さい微粒子として生成されることから、浮力による溶融塩浴の浴面への上昇または底部への沈降が十分に生じず、陽極で生成する塩素ガスの発生により起こる電極間の乱流に巻き込まれて電極間で循環し、陽極で生成される塩素との衝突を繰り返し、一部が溶融塩化物に戻り溶融金属の製造効率が低下する。また、電極間から溶融塩浴と共に貯留室まで送られた場合でも、貯留室で浴面まで浮上することができずまたは底部に沈降することができず、電解室へ戻る溶融塩と共に再度電極間に送られることになるため、電極間で電解生成した塩素との接触により、一部が塩素と反応して溶融塩化物に戻るので溶融金属の製造効率は低下する。
このように電解浴面に浮上する大きさまたは沈降する大きさまで成長できず微粒子となった生成溶融金属は塩素と衝突を繰り返すので、溶融塩へと戻る割合を増大させることになる。
従って、陰極表面近傍での金属酸化物の凝集は溶融金属の成長を阻害し、溶融金属の製造効率の低下、つまり電流効率の低下を招く。
この発明は、従来技術のこのような問題に対処するものであり、その目的とするところは、陰極表面の固形物による溶融金属の成長の阻害を有効に防止して、電流効率を向上させることのできる溶融塩電解槽の操業方法及び、それを用いる溶融金属の製造方法を提供することにある。
この発明の溶融塩電解槽の操業方法は、内部を溶融塩浴とする電解槽、電解槽の内部を、溶融塩を電気分解する電解室と当該電気分解により得られる溶融金属が流入する貯留室とに区画する隔壁、ならびに、電解室に配置した陽極及び陰極を含む電極を備える溶融塩電解槽を操業する方法であって、溶融塩の電気分解の合間に一時的に、前記電極の陽極及び陰極間に、溶融塩を電気分解する際の順方向電圧とは逆方向である逆方向電圧を印加し、陰極表面近傍に形成される金属酸化物を含む層を陰極から引き離すことにある。
ここで好ましくは、前記逆方向電圧の大きさを、溶融塩の分解電圧の大きさに対して200%以下、より好ましくは100%~200%とし、当該逆方向電圧を印加する時間を、0.5分以上、より好ましくは0.5分~5分とする。
また好ましくは、前記逆方向電圧の大きさを、溶融塩の分解電圧の大きさに対して90%以下、より好ましくは20%~90%とし、当該逆方向電圧を印加する時間を、5分~60分とする。
この発明の溶融塩電解槽の操業方法では、逆方向電圧を印加した後、溶融塩の電気分解を開始するまでの間、陽極及び陰極間への電圧の印加を停止することが好ましい。
この場合においては、陽極及び陰極間への電圧の印加を停止する時間を、金属酸化物の含有量によるが概ね20分以上とれば、陰極表面付近から引き離れた金属酸化物微粒子が電解槽底部に沈降し、順方向に電圧をかける通常の電解に戻った際に電流効率の向上が認められる。
なお、陰極表面近傍に形成される金属酸化物を含む層における当該金属酸化物は、前記溶融塩を電気分解して得られる金属の酸化物であることがある。
陰極は鋼または黒鉛からなるものとすることができる。
この発明の溶融金属の製造方法は、上記のいずれかの溶融塩電解槽の操業方法を用いて、溶融塩から溶融金属を製造するものである。
この発明によれば、溶融塩の電気分解の合間に一時的に、前記電極の陽極及び陰極間に、溶融塩を電気分解する際の順方向電圧とは逆方向である逆方向電圧を印加することにより、陰極表面近傍に凝集した金属酸化物を含む層が当該陰極から引き離されるので、その後に溶融塩の電気分解を再度開始すると、溶融金属の成長が、当該金属酸化物粒子を含む層によって阻害されないことから、電流効率の低下を防止することができる。
この発明の一の実施形態に係る溶融塩電解槽の操業方法を実施することのできる溶融塩電解槽の一例を示す縦断面図である。 図1のII-II線に沿う部分断面図である。
以下に図面を参照しつつ、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に例示する溶融塩電解槽1は、たとえば主としてAl23等の耐火煉瓦その他の適切な材料からなる容器形状を有し、その内部に供給された溶融塩からなる溶融塩浴で、溶融塩を電気分解するとともに、その電気分解により溶融金属が生成される電解槽2と、図2に図1のII-II線に沿う断面図で示すように、電解槽2内に溶融塩浴の深さ方向と平行に並べて配置した略平板形状の陽極3a及び陰極3bを含む電極3と、電解槽2内の温度調整を行う熱交換器としての温度調整管4とを備えてなる。この発明では、温度調整管4は省略してもよい。
なおここでは、溶融塩を溶融塩化マグネシウム(MgCl2)とした場合を例として説明し、この場合、溶融塩化マグネシウムの電気分解により、図1に示すように、溶融金属として金属マグネシウム(Mg)が生成されるとともに、ガスとして塩素ガス(Cl2)が発生する。金属マグネシウムは、金属チタンを製造するクロール法における四塩化チタンの還元に、また塩素ガスは、同法におけるチタン鉱石の塩素化にそれぞれ用いることができる。この電気分解の原料とする塩化マグネシウムとしては、クロール法で副次的に生成されるものを使用可能である。但し、この発明は、溶融塩化カルシウム(CaCl2)、溶融塩化アルミニウム(AlCl3)、溶融塩化亜鉛(ZnCl2)等の他の溶融塩の電気分解にも用いることができる。
ここで、図示の溶融塩電解槽1は、電解槽2の内部に、図1に示すところでは図の略中央域に配置された隔壁5をさらに備えるものであり、かかる隔壁5により、電解槽2の内部が、図1の右側に位置して電極3が配置される電解室2aと、図1の左側に位置し、電解室2aでの電気分解により得られた溶融金属が流れ込んで該溶融金属が溶融塩との密度差により上方側に溜まる貯留室2bとに区画される。具体的には、この隔壁5は、電解槽2の上方側開口を覆蓋する、図示しない蓋部材に近接させて配置されることにより、電解槽2の下方側の底部との間に、貯留室2bから電解室2aへの溶融塩の移動を可能にする溶融塩循環路5aを形成する。また、隔壁5自体に貫通させて設けた溶融金属流路5bにより、電解室2aから貯留室2bへの溶融金属の流入が可能になる。
またここで、電解室2aに配置された電極3は、少なくとも、整流器等に接続された平板状その他の形状の陽極3a及び陰極3bを有し、たとえばMgCl2→Mg+Cl2等といった所定の反応に基き、陽極3aの表面で酸化反応により塩素等のガスが生じるとともに、陰極3bの表面で還元反応により金属マグネシウム等の溶融金属が生成される。
この溶融塩電解槽1では、電極3がさらに、図2に示すように、陽極3aと陰極3bとの間に配置されて、陽極3a及び陰極3b間への電圧の印加によって分極する、これも実質的に平板状等の二枚のバイポーラ電極3c、3dを有し、これにより電気分解の生成効率の向上等を図っているも、このようなバイポーラ電極3c、3dは必ずしも必要ではない。
このような溶融塩電解槽1を用いた溶融塩の電気分解では、貯留室2bから溶融塩循環路5aを経て電解室2aに流動した溶融塩が電気分解されて、電解室2aで溶融金属が生成され、そしてこの溶融金属は、隔壁5の溶融金属流路5bを通って貯留室2bに流入し、その後、溶融塩に対する比重の小さい溶融金属は、貯留室2bの浅い箇所に浮上してそこに溜まることになり、これを図示しないポンプ等により回収することができる。したがって、ここでは、溶融塩から溶融金属を製造することができる。
溶融塩の電気分解を行うには、電極3の陽極3a及び陰極3b間に、一般に、{溶融塩分解電圧×(バイポーラ極数+1)}V~{(溶融塩分解電圧+3)×(バイポーラ極数+1)}V、典型的には{溶融塩分解電圧×(バイポーラ極数+1)}V~{(溶融塩分解電圧+1.5)×(バイポーラ極数+1)}Vの電圧を印加する。なお、この電気分解時の電圧は、後述する陰極3bの表面近傍の固形物除去時に印加する逆方向電圧に対して、「順方向電圧」ともいう。溶融塩の分解電圧は次式(1)により算出する。
溶融塩の分解電圧=-ΔG0/(nF)・・・(1)
ここで、ΔG0は塩化物の標準生成自由エネルギー、nは塩化物を成す金属イオンの原子価数、Fはファラデー定数(96485C/mol)である。たとえばMgを含む溶融塩では、他の成分(NaCl、CaCl2等)の影響による活量の変化や温度による変動があるが、浴温650℃~700℃では分解電圧=2.7~2.8Vとなる。
ところで、溶融塩電解槽1を用いて溶融塩の電気分解を行っていると、電解槽2に新たに供給される溶融塩の供給途中の容器に大気が流入したり、また電解槽2の内部へ大気が流入したりすること等により、陰極3bの表面近傍に、極性を有する酸化マグネシウム(MgO)等の金属酸化物の粒子が凝集した層(金属酸化物を含む層)が形成される。場合によっては金属酸化物粒子からなる薄い層の固形物が形成されることがある。
陰極3bの表面近傍に上記のような金属酸化物の凝集層が存在する状態で、電気分解を継続した場合は、金属酸化物の凝集層の存在に起因して、陰極3bの表面でマグネシウム等の金属が十分に成長せずに、粒径の小さな金属マグネシウム等の微粒子が生成される。この微粒子は、浮力による浴面への上昇力が弱いことから、溶融塩浴の通常の流れとは異なる挙動を示し、特に電極間での塩素ガスによる乱流に巻き込まれてそこで循環して、塩素ガスと繰り返し衝突する。そうなると、金属マグネシウム等の微粒子が塩素と反応して、電気分解前の塩化マグネシウムへと戻るので、溶融塩の製造効率が低下し、それによって電流効率が低下するという問題が生じる。
なお、亜鉛やアルミニウムの溶融塩電解では、その比重が大きいことを利用して、陰極3bの表面に生成される金属亜鉛ないしアルミニウムを、電解槽2の底部に沈降させて回収することが一般的である。この場合、陰極3bの表面近傍に、上記のような金属酸化物の凝集層が形成されると、陰極3bの表面に生成される金属亜鉛ないしアルミニウムが微粒子となって底部に沈降せず、上述したマグネシウムの場合と同様の問題が生じ得る。
この問題に対処するため、この実施形態では、溶融塩の電気分解時の所定のタイミングで、溶融塩を電気分解するための陽極3a及び陰極3b間への順方向電圧の印加を一旦停止し、陽極3a及び陰極3b間に、順方向電圧とは逆方向である逆方向電圧を印加する。このことによれば、陰極3bの表面付近に存在し、極性を有する酸化マグネシウム(MgO)等の金属酸化物の粒子からなる凝集層が、極性が切り替わった陰極3bとの間に働く斥力により、陰極3bから引き離されるので、その後に再び順方向電圧を印加して電気分解を再開した際に、陰極3bで生成される溶融金属は、金属酸化物の凝集層による成長阻害がないため、電流効率の低下が生じない。
また、溶融塩浴の温度低下や循環不足等によって、電極3間の陰極3bの表面にマグネシウム等の金属が固化し、これが成長して陽極3aもしくはバイポーラ電極3c、3dの表面に接すると短絡現象が起きるという問題もあるが、上述したような陽極3a及び陰極3b間への逆方向電圧の印加により、陰極3bに固着した金属マグネシウムの表面及び陰極3bの表面から発生する塩素が瞬時に、金属マグネシウムと反応するので、この実施形態は、このような固化した金属マグネシウムも短時間のうちに陰極3bから引き離されるという利点もある。
なお多くの場合、電極3間の金属マグネシウムによる短絡は、短絡形成時にその部分の比抵抗が溶融塩浴の比抵抗よりも小さいことから、短絡箇所に大電流が流れてその際に生じるジュール熱で溶解することで解消される。しかしながら、電極3間の金属マグネシウムによる短絡で金属マグネシウムの固化が大きくなると、短絡が溶解せず電気分解の継続が困難となる場合がある。この場合、通常は、溶融塩浴の温度を上昇させて、金属マグネシウムの固化部分を溶解する等といった措置を講じるが、このような措置では固化箇所が特定できず、また固化が解消できないことがある。これは、固化がMgだけでなく、MgOやCaF2、Mg34などと混合した物質で形成されることが多いからである。これに対し、上述したこの実施形態によれば、電極3間の短絡を容易かつ瞬時に解消できるので有効である。
また、溶融塩浴の温度を上昇させて金属マグネシウムの固化部分を溶解する措置では、電解浴を含む電解槽全体の温度上げることになるので、電解槽外周の耐火煉瓦層も加熱され耐火煉瓦槽とその目地部内で固化していた浸潤電解浴を溶かしてしまい、電解浴の電解槽外部への漏れ出しや、黒鉛よりなる陽極も高温となるためその酸化消耗を促進するので、結果として電解槽の寿命を短くすることをもたらしていた。一方、この実施形態では、そのような問題を招くことなく、電極3間の短絡を解消することができる。
溶融塩の電気分解の合間に電極3間に逆方向電圧を印加する場合、大きな逆方向電圧を長時間にわたって印加すると、極性が入れ替わった陽極3aおよび陰極3b間で溶融塩の電気分解が生じ、陰極3bの表面から発生する塩素ガスにより、鋼もしくは黒鉛等からなる陰極3bの塩化腐食による損傷等の不具合が懸念される。
このような不具合の発生を確実に防止するとの観点からは、逆方向電圧の大きさは、好ましくは、先に述べた溶融塩の分解電圧の大きさに対して90%以下、より好ましくは溶融塩の分解電圧に対して20%~90%というように比較的小さくすることが有効である。このような小さい逆方向電圧であれば、たとえば、5分~60分にわたって印加することができる。なお逆方向電圧が小さすぎたり、その印加時間が短すぎたりすると、固形物が陰極3bの表面から有効に引き離されないことが考えられる。
一方、陰極3bの表面に酸化マグネシウム(MgO)等からなる固形物が強固に形成される場合は、比較的短時間であれば、ある程度大きな逆方向電圧を印加することも可能である。
通常経験的には、陰極3bに鋼材を使用している場合においては、陰極3bの表面に固着した物質の除去のために逆方向電圧を溶融塩の分解電圧より大きな値を印加することは、その際に鋼材表面から発生する塩素により陰極鋼材の塩化腐食が起こることを懸念するため思いつかない事項である。
しかし鋼製陰極表面に固化した生成金属を含む物質により電極間短絡を生じた減少に対する逆方向電圧の印加を試行し、慎重に条件や作用を検討したところ、顕著な鋼材腐食は見出されず、陰極表面に固着し電極間短絡を誘発した金属生成物を含む固化物は確実に除去できる条件を見出した。
すなわち、このような条件として、逆方向電圧の大きさは、好ましくは溶融塩の分解電位の大きさに対して、200%以下、より好ましくは溶融塩の分解電圧に対して、100%~200%とし、その印加時間は、陰極部材の塩素腐食を避けるために0.5分~5分とすることが好適である。
このことによれば、陰極3bの表面の固形物は、逆方向電圧の大きさに比例する大きな電気的斥力の作用だけでなく、陰極3bから発生する塩素ガスにより、陰極3bの表面から十分に引き剥がされる。しかも、上記のような短い時間とすることで、陰極3bへの損傷の発生は有効に防止されることになる。
なお、上述した逆方向電圧を印加する時間は、逆方向電圧を継続的に印加する1回あたりの時間を意味する。
電極間で固化した生成金属を含む物質が多く、1回の逆方向電圧を印加しただけでは固化物質が十分に除去できず短絡が解消しないことも考えられる。ここで、短絡を起こした極間の固化物が除去できたか否かは順方向の通電でチェックすることが必要になる場合がある。そのため、1回の逆方向電圧を印加した後、順方向電圧に一旦戻して確認し、短絡が解消していなければ再度逆方向電圧をもう1回印加するという作業を行うことがある。また、短絡が解消した後、次の短絡形成時に順方向電圧を同様に1回印加して、その効果を確認することがある。このような一連の過程においては、逆方向電圧を継続的に印加する1回あたりの時間を、上述したように、逆方向電圧の大きさに応じて、5分~60分もしくは0.5分~5分に設定することが好ましい。
上記のようにして逆方向電圧を印加した後は、溶融塩の電気分解を開始するまでの間、一定の時間にわたって、陽極及び陰極間への電圧の印加を停止することが好ましい。それにより、その電圧停止時に、陰極3bの表面から引き離された固形物が沈降して、これが電解槽2の底部のスラッジに取り込まれる。
具体的には、陽極3a及び陰極3b間への電圧の印加を停止する時間は、20分以上とすることが好適である。この停止時間が短すぎると、陰極近傍から引き離された金属酸化物粒子が十分に沈殿せず、順方向の通電を再開した際に再度陰極近傍に凝集してしまうことが起こり得る。
次に、この発明の溶融塩電解槽の操業方法を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
(試験例1)
所定の期間にわたって溶融塩電解槽を操業した際に、逆方向電圧の印加を行わなかった比較例と、定期的に逆方向電圧の印加を行った実施例1~7のそれぞれの電流効率を比較した。その結果を逆方向電圧の印加の条件とともに表1に示す。
ここで、電流効率は、ファラデーの法則から求める金属の理論生成量に対する実際に得られた回収金属量の割合を示しており、具体的には次式(2)~(4)より算出したものである。
電流効率(%)=実際の回収金属量(mol)/理論生成量(mol)×100(%)・・・(2)
理論生成量(mol)=((通電量A×通電時間)/(n×F))×(バイポーラ極数+1)・・・(3)
実際の回収金属量(mol)=理論生成量と同値の通電時間で回収した生成金属の量(mol)・・・(4)
上記式(3)中、nは塩化物を成す金属イオンの原子価数であり、Fはファラデー定数(96485C/mol)である。
各比較例及び実施例の電流効率は、実施例1の電流効率を100とする指数で示している。なお、いずれの比較例及び実施例も、図1及び2に示すような溶融塩電解槽を用いた。
Figure 0007127984000001
表1に示すところから、定期的に逆方向電位の印加を行った実施例1~7はいずれも、逆方向電位の印加を行わなかった比較例に比して電流効率が高かったことが解かる。これは、定期的に溶融塩の分解電圧以下の逆電位を印加することで、陰極近傍に形成された金属酸化物の凝集層が除去され、それにより、電流効率の低下が防止されたことによるものと考えられる。
(試験例2)
陰極表面に金属を含む塊(固形物)が形成されて短絡が生じた際に、溶融塩の分解電圧以上の逆電位を印加し、短絡起因物質である陰極表面に形成された金属を含む塊を除去することで、電解槽寿命を延長することができるかどうかについて検証した。
表2に示すように、比較例では、上記の固形物を除去するため、当該固形物が溶けるまで溶融塩浴の温度を上昇させた。実施例1及び2では、上記の固形物を除去するため、逆方向電圧を印加することとし、逆方向電圧の大きさ及び印加時間を変化させた。表2中、「電解槽寿命」は、比較例の電解槽の使用可能期間を1とした指数で示している。
Figure 0007127984000002
比較例では、煉瓦及び目地部から槽外への浴漏れや陽極黒鉛の酸化消耗が生じて、電解槽の寿命が短くなった。一方、実施例1及び2では、比較例に比して寿命を延ばすことができた。
1 溶融塩電解槽
2 電解槽
2a 電解室
2b 貯留室
3 電極
3a 陽極
3b 陰極
3c、3d バイポーラ電極
4 温度調整管(鋼製器具)
5 隔壁
5a 溶融塩循環路
5b 溶融金属流路

Claims (7)

  1. 内部を溶融塩浴とする電解槽、電解槽の内部を、溶融塩を電気分解する電解室と当該電気分解により得られる溶融金属が流入する貯留室とに区画する隔壁、ならびに、電解室に配置した陽極及び陰極を含む電極を備える溶融塩電解槽を操業する方法であって、
    前記陰極が鋼からなり、
    溶融塩の電気分解の合間に一時的に、前記電極の陽極及び陰極間に、溶融塩を電気分解する際の順方向電圧とは逆方向となる逆方向電圧を印加し、陰極表面近傍に形成される金属酸化物及び金属を含む層を陰極から引き離し、電極間の短絡を解消し、
    前記逆方向電圧の大きさを、溶融塩の分解電圧の大きさに対して100%~200%とし、当該逆方向電圧を印加する時間を、0.5分~5分と
    逆方向電圧を印加した後、溶融塩の電気分解を開始するまでの間、陽極及び陰極間への電圧の印加を停止し、陽極及び陰極間への電圧の印加を停止する時間を、20分以上とする、溶融塩電解槽の操業方法。
  2. 内部を溶融塩浴とする電解槽、電解槽の内部を、溶融塩を電気分解する電解室と当該電気分解により得られる溶融金属が流入する貯留室とに区画する隔壁、ならびに、電解室に配置した陽極及び陰極を含む電極を備える溶融塩電解槽を操業する方法であって、
    溶融塩の電気分解の合間に一時的に、前記電極の陽極及び陰極間に、溶融塩を電気分解する際の順方向電圧とは逆方向となる逆方向電圧を印加し、陰極表面近傍に形成される金属酸化物を含む層を陰極から引き離し、
    前記逆方向電圧の大きさを、溶融塩の分解電圧の大きさに対して90%以下とし、当該逆方向電圧を印加する時間を、5分~60分とし、
    逆方向電圧を印加した後、溶融塩の電気分解を開始するまでの間、陽極及び陰極間への電圧の印加を停止し、陽極及び陰極間への電圧の印加を停止する時間を、20分以上とする、溶融塩電解槽の操業方法。
  3. 陰極表面近傍に形成される金属酸化物を含む層における当該金属酸化物は、前記溶融塩を電気分解して得られる金属の酸化物である、請求項1又は2に記載の溶融塩電解槽の操業方法。
  4. 陰極が鋼または黒鉛からなる請求項2に記載の溶融塩電解槽の操業方法。
  5. 前記溶融塩浴の浴温を650℃~700℃とする、請求項1~のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽の操業方法。
  6. 前記逆方向電圧の印加を、月に少なくとも1回実施する、請求項2に記載の溶融塩電解槽の操業方法。
  7. 請求項1~のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽の操業方法を用いて、溶融塩から溶融金属を製造する、溶融金属の製造方法。
JP2017252226A 2017-12-27 2017-12-27 溶融塩電解槽の操業方法及び、溶融金属の製造方法 Active JP7127984B2 (ja)

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