JP7162759B2 - 電動機駆動装置 - Google Patents
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Description
本発明は、同期電動機を駆動する電動機駆動装置に関する。
同期電動機を用いたサーボ系は、さまざまな機械装置の動力源として利用されている。一般的なサーボ系では、速度制御器と電流制御器とが直列に接続される。同期電動機および機械装置を保護するために、各制御器の出力にはリミッタが設けられる。また、一般に、同期電動機へ交流電圧を出力する電力変換器には、出力可能な最大電圧の制限または出力可能な最大電流の制限がある。電力変換器にあるこのような制限も、リミッタと同様に機能する。
各制御器には、定常偏差を無くすように出力を制御するための積分器が設けられる。各制御器の出力がリミッタによって飽和した場合において、積分が継続されて積算が過剰となることによって、指令値が変化しても出力値が制限値から変化しなくなる現象であるワインドアップ現象が生じることが知られている。ワインドアップ現象が発端となって、持続振動が励起されることがある。ワインドアップ現象は、サーボ系による制御の安定性を低下させる要因となる。ワインドアップ現象を防止する手法の1つとして、各制御器の出力が飽和していることが検知された場合に、飽和状態が解除されるように、各制御器へ入力される指令値を低下させることが挙げられる。
特許文献1には、電動機の速度制御装置に関し、電力変換器の出力電圧が上限に達することによって出力電圧が飽和した場合に速度指令値を減少させる制御手法が開示されている。特許文献1にかかる速度制御装置は、電力変換器の出力電圧が飽和すると、電圧指令値の位相がdq回転座標に対して進み位相となるような電圧位相制御を行い、電圧指令値の位相角が閾値を超えたと判断されたときに速度指令値を修正する演算を行うことによって速度指令値を減少させる。
電動機駆動装置は、特許文献1に記載される制御手法が適用された場合に、制御パラメータが適切に調整されることによってワインドアップ現象の発生を防止し得る。ただし、特許文献1に記載される制御手法によると、多くの制御パラメータの調整が必要となる。また、サーボ系あるいはプラントモデルには、複雑な特性を示す多くの非線形要素が含まれる。このことから、特許文献1に記載される制御手法によると、電動機駆動装置は、試行錯誤によって制御パラメータを調整することになるため、電動機の安定した制御を行うための調整に要する作業負担が大きいという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電動機の安定した制御を行うための調整に要する作業負担を低減可能とする電動機駆動装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電動機駆動装置は、電動機に流れる相電流の値をdq座標系における電流であるd軸電流およびq軸電流の各値へ変換し、d軸電流およびd軸電流指令とq軸電流およびq軸電流指令とに基づいて電圧指令を決定することによって相電流を制御する電流制御器と、電圧指令の振幅である電圧振幅を求める電圧振幅演算部と、速度指令と電動機の回転速度と速度指令を低減させる速度垂下量とに基づいてq軸電流指令を決定することによって回転速度を制御する速度制御器と、電圧振幅と第1の電圧制限値とに基づいてd軸電流指令を決定することによって、電動機へ出力される電圧の振幅を制限するための磁束制御を行う弱め磁束制御器と、電圧振幅と第2の電圧制限値とに基づいて速度垂下量を制御する速度垂下制御器と、を備える。速度垂下制御器は、電圧振幅を第2の電圧制限値よりも小さくさせる速度垂下量を決定する。
本発明によれば、電動機駆動装置は、電動機の安定した制御を行うための調整に要する作業負担を低減できるという効果を奏する。
以下に、本発明の実施の形態にかかる電動機駆動装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電動機駆動装置の構成例を示すブロック図である。実施の形態1にかかる電動機駆動装置100は、同期電動機1を駆動する。電動機駆動装置100は、電力変換器3に接続される。同期電動機1は、機械装置2に機械的に接続される。同期電動機1は、機械装置2の動力源である。電力変換器3が同期電動機1へ交流電圧を出力することによって、機械装置2は動作する。同期電動機1、電力変換器3および電動機駆動装置100は、同期電動機1を駆動する電動機システムを構成する。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電動機駆動装置の構成例を示すブロック図である。実施の形態1にかかる電動機駆動装置100は、同期電動機1を駆動する。電動機駆動装置100は、電力変換器3に接続される。同期電動機1は、機械装置2に機械的に接続される。同期電動機1は、機械装置2の動力源である。電力変換器3が同期電動機1へ交流電圧を出力することによって、機械装置2は動作する。同期電動機1、電力変換器3および電動機駆動装置100は、同期電動機1を駆動する電動機システムを構成する。
実施の形態1において、同期電動機1は、回転子に永久磁石が設けられる永久磁石同期電動機である。同期電動機1は、回転子に界磁巻線が巻かれている巻線界磁式同期電動機であっても良く、回転子の突極性を利用して回転トルクを得るリラクタンス式同期電動機であっても良い。同期電動機1における永久磁石の配置は、埋め込み型の配置であってもよく表面型の配置であってもよい。実施の形態1では、同期電動機1は三相の同期電動機とする。同期電動機1は、三相以外の同期電動機であっても良い。例えば、同期電動機1は、二相の同期電動機であっても良く、五相の同期電動機であってもよい。
機械装置2は、同期電動機1を駆動することによって動作する装置であれば良い。実施の形態1では、機械装置2は、制御調整に時間がかかりやすいアプリケーションの代表例である冷媒圧縮機とする。冷媒圧縮機は、空調機器、チラー、冷蔵庫などの機器に組み込まれる。冷媒圧縮機の多くは、部品削減のために、電動機が内部に組み込まれた一体化構造を備える。このため、冷媒圧縮機の多くでは、電動機単体での制御調整が困難である。さらに、冷媒圧縮機では、時間に対する圧力条件の変化が緩やかであることから、圧力が安定するまでに時間を要する。圧力が安定するまでに時間を要することから、冷媒圧縮機の制御調整は長期化する傾向がある。
冷媒圧縮機には、ロータリー圧縮機、スクロール圧縮機、スクリュー圧縮機、レシプロ圧縮機、およびターボ圧縮機といった、さまざま種類の圧縮機がある。冷媒圧縮機は、いずれの種類の圧縮機であっても、制御調整が煩雑であるという点は共通である。機械装置2である冷媒圧縮機は、さまざま種類の圧縮機のうちのいずれであっても良い。機械装置2は、冷媒圧縮機以外の装置であっても良い。
電力変換器3は、不図示の電力源から入力される電力を規定された形態の電力に変換して出力する。実施の形態1では、電力変換器3は、汎用的な電圧形インバータとする。電圧形インバータは、直流電圧源から供給される直流電圧をスイッチングして所望の交流電圧に変換する装置である。電力変換器3は、電動機駆動装置100から出力される電圧指令12に基づいて直流電圧を交流電圧へ変換し、変換後の交流電圧を同期電動機1へ出力する。なお、電力変換器3は、同期電動機1に所望の交流電力を供給できるのであれば、電流形インバータ、マトリックスコンバータといった別種の回路であってもよいし、マルチレベル変換器であってもよい。
電流検出部4は、同期電動機1に流れる相電流を検出する。電流検出部4の種類、配置などは特に問わない。電流検出部4は、CT(Current Transformer)と呼ばれる変圧器を用いたタイプの電流センサであってもよく、シャント抵抗を用いるタイプの電流センサであってもよい。電流検出部4は、CTおよびシャント抵抗を組み合わせたものであってもよい。図1に示す電流検出部4は、同期電動機1と電力変換器3との間の配線に配置され、同期電動機1に流れる相電流を計測する。電流検出部4は、相電流の値を示す信号11を出力する。なお、電流検出部4は、図1に示す位置以外の位置に配置されてもよい。例えば、電流検出部4は、電力変換器3の内部に配置されてもよい。
電流検出部4を電力変換器3の内部に配置する場合、電流検出方式としては、電力変換器3のうち直流母線のN側にシャント抵抗が配置される1シャント電流検出方式、電力変換器3において下アームと直列にシャント抵抗が挿入される下アームシャント電流検出方式などを用いることができる。1シャント電流検出方式および下アームシャント電流検出方式は、CTを使う場合と比較して、電流検出可能なタイミングに制約はあるが、部品コストを下げることができる。
同期電動機1が三相の同期電動機である場合、電動機駆動装置100は、キルヒホッフの電流則に基づいて、三相のうちいずれか二相の相電流の値から他の一相の相電流の値を計算できる。このため、三相のうちいずれか二相に電流センサが配置されていれば良く、他の一相には電流センサが配置されなくても良い。
電動機駆動装置100は、ベクトル制御によって同期電動機1を制御する。電動機駆動装置100は、位置速度特定部5と、速度制御器6と、dq軸電流制御器7と、電圧振幅演算部8と、弱め磁束制御器9と、速度垂下制御器10とを備える。
同期電動機1をベクトル制御するためには、同期電動機1の磁極位置θeおよび回転速度ωeを検出または推定する必要がある。位置速度特定部5は、同期電動機1の磁極位置θeおよび回転速度ωeを特定する。具体的には、位置速度特定部5は、dq軸電流制御器7から出力される電圧指令12と、電流検出部4によって検出された相電流の値とに基づいて、磁極位置θeと回転速度ωeを推定する。位置速度特定部5は、特定された磁極位置θeと、特定された回転速度ωeとを出力する。
同期電動機1には、磁極位置θeを検出する位置センサが取り付けられても良い。位置センサとしては、ロータリーエンコーダあるいはレゾルバが使用される。同期電動機1には、位置センサの代わりに、タコジェネレータといった速度センサが取り付けられても良い。なお、同期電動機1には、使用環境、コストなどの制約によって、位置センサまたは速度センサの使用が適さない場合がある。実施の形態1では、電動機駆動装置100が位置センサレス制御を行うものとする。電動機駆動装置100は、位置センサまたは速度センサが用いられないものに限られず、位置センサまたは速度センサが用いられるものであっても良い。なお、上述する冷媒圧縮機は、位置センサまたは速度センサを使用しづらいアプリケーションの代表例である。
同期電動機1の位置センサレス制御に関しては様々な手法が提案されているが、実施の形態1では、基本的にどの手法が用いられてもよい。公知の手法としては、例えば、状態観測器によって同期電動機1の状態量を推定し、状態量の推定誤差を用いて回転速度ωeを適応同定する速度推定手法がある。この方法は適応オブザーバと呼ばれる方法であり、誘起電圧定数の変化にロバストな速度推定ができるという長所がある。適応オブザーバを用いない場合、単に速度起電力のアークタンジェント成分から磁極位置θeを推定しても良い。この方法はアークタンジェント法と呼ばれている。アークタンジェント法は、誘起電圧定数に誤差があると速度推定誤差が生じるという欠点はあるが、計算が適応オブザーバよりも簡単である。他にも多くの位置センサレス制御法が提案されているが、磁極位置θeと回転速度ωeとを推定できるのであれば、どの手法が用いられても良い。
速度制御器6は、第1の速度指令である速度指令ω1
*と速度垂下量Δωと特定された回転速度ωeとに基づいてq軸電流指令iq
*を決定することによって、同期電動機1の回転速度ωeを制御する。
図2は、実施の形態1にかかる電動機駆動装置が有する速度制御器の構成例を示すブロック図である。速度制御器6は、加算器21,25と、減算器22と、速度フィードバック(Feed Back:FB)制御器23と、速度フィードフォワード(Feed Forward:FF)制御器24とを有する。
速度指令ω1
*は、電動機駆動装置100の外部から速度制御器6へ入力される。速度指令ω1
*は、電動機駆動装置100の内部での計算によって得られるものであっても良い。加算器21には、速度指令ω1
*と速度垂下量Δωとが入力される。加算器21は、速度指令ω1
*と速度垂下量Δωとを加算し、加算結果である第2の速度指令ω2
*を出力する。速度垂下量Δωについては後述する。減算器22には、第2の速度指令ω2
*と回転速度ωeとが入力される。減算器22は、第2の速度指令ω2
*と回転速度ωeとの差分を出力する。速度FB制御器23は、減算器22から入力される差分がゼロになるようにFB制御を行う。
速度FB制御器23としては、比例積分(Proportional Integral:PI)制御器が用いられる。PI制御器では、ステップ応答に対する定常偏差がゼロになることが知られている。PI制御器が用いられることによって、ゲイン設計が容易となる。速度FB制御器23には、PI制御以外の制御則による制御器が用いられても良い。定常偏差をゼロにするために、速度FB制御器23には、積分器を持つ制御器が用いられる。速度FF制御器24は、速度FB制御器23に並列に接続されている。速度FF制御器24には、第2の速度指令ω2
*が入力される。速度FF制御器24は、回転速度ωeのFF制御を行う。速度制御器6は、速度FF制御器24が設けられることによって、制御応答を早めることができる。加算器25は、速度FB制御器23の出力値と速度FF制御器24の出力値とを加算することによって、q軸電流指令iq
*を生成する。
d軸電流指令id
*は、弱め磁束制御器9によって決定される。速度制御器6は、「最大トルク/電流制御(Maximum Torque Per Ampere control:MTPA)」によってd軸電流指令id
*を決定しても良い。d軸電流指令id
*については後述する。
電流制御器であるdq軸電流制御器7は、同期電動機1に流れる相電流を制御する。dq軸電流制御器7としては、dq回転座標上でのベクトル制御を行うベクトル制御器が用いられる。一般的なベクトル制御器は、磁極位置θeを基準としたdq回転座標上で電流制御を行う。相電流をdq回転座標上の値に変換すると、交流量が直流量となって制御が容易となるため、電動機駆動装置100は、dq回転座標上で電流制御を行う。座標変換には磁極位置θeの情報が必要であるため、dq軸電流制御器7には、位置速度特定部5によって特定された磁極位置θeが入力される。
dq軸電流制御器7は、座標変換によって、相電流の値をdq座標系における電流であるd軸電流の値とq軸電流の値とへ変換する。また、dq軸電流制御器7は、d軸電流およびd軸電流指令id
*とq軸電流およびq軸電流指令iq
*とに基づいて電圧指令12を決定する。dq軸電流制御器7は、d軸電流がd軸電流指令id
*と一致するようにd軸電圧指令を調整する。dq軸電流制御器7は、q軸電流がq軸電流指令iq
*と一致するようにq軸電圧指令を調整する。これにより、dq軸電流制御器7は、dq回転座標上の電圧指令を決定する。
dq軸電流制御器7は、d軸電流をFB制御する不図示のPI制御器と、q軸電流をFB制御する不図示のPI制御器と、dq軸の干渉成分をFF補償する不図示の非干渉化制御器とを備える。d軸電流指令id
*にd軸電流が適切に追従し、かつq軸電流指令iq
*にq軸電流が適切に追従可能であれば、dq軸電流制御器7における制御手法として、上述する手法以外が用いられても良い。
dq軸電流制御器7は、磁極位置θeに基づいて、dq回転座標上の電圧指令から三相静止座標の値への座標変換を行う。dq軸電流制御器7は、三相静止座標上の電圧指令12を電力変換器3へ出力する。
電圧振幅演算部8は、電圧指令の振幅である電圧振幅を求める。電圧指令の振幅は、電圧指令ベクトルのノルム、または電圧指令ベクトルの絶対値とも称される。電圧指令の振幅を計算する手法としては、さまざまな手法が考えられる。電圧振幅演算部8は、例えば、次の式(1)に示される演算によって電圧指令の振幅を計算する。電圧振幅演算部8は、電圧振幅の計算結果を出力する。
|νdq
*|は電圧振幅、νd
*はd軸電圧指令、νq
*はq軸電圧指令である。電圧振幅演算部8が式(1)の演算を行う場合、電圧振幅演算部8には、dq軸電流制御器7からdq回転座標上の電圧指令νd
*,νq
*が入力される。
なお、電圧振幅演算部8は、電圧振幅|νdq
*|の代わりに、変調率を計算しても良い。変調率は、電圧振幅|νdq
*|が電力変換器3の出力限界に対してどの程度大きいかを評価するために、電圧振幅|νdq
*|を規格化したものである。電圧振幅演算部8は、次の式(2)に示される演算によって変調率であるMを計算する。
VDCは、電力変換器3である電圧形インバータの直流母線電圧である。直流母線電圧は、直流母線電圧検出部によって検出される。直流母線電圧検出部の図示は省略する。式(2)によって求まる変調率が1よりも小さくなる電圧領域は、インバータ線形領域と称される。式(2)によって求まる変調率が1よりも大きくなる電圧領域は、過変調領域、または電圧飽和領域と称される。
弱め磁束制御器9は、電圧振幅|νdq
*|と第1の電圧制限値Vlim1とに基づいてd軸電流指令id
*を決定することによって、同期電動機1へ出力される電圧の振幅を制御するための磁束制御を行う。速度垂下制御器10は、電圧振幅|νdq
*|と第2の電圧制限値Vlim2とに基づいて速度垂下量Δωを制御する。ここで、弱め磁束制御器9と速度垂下制御器10との詳細について説明する。
図3は、実施の形態1にかかる電動機駆動装置による制御対象である同期電動機の電圧状態を表す電圧ベクトルを説明するための図である。図3では、埋め込み型の永久磁石同期電動機である同期電動機1が高速領域で回転しているときにおける電圧ベクトルを示している。高速領域では、同期電動機1の巻線抵抗による電圧降下を無視できる場合が多いため、図3では巻線抵抗による電圧降下を省略している。図3には、定常状態における電圧ベクトルを示しており、過渡項は省略している。
同期電動機1では、回転速度ωeが上昇するに従って、速度起電力ωeΦaが増加する。ここで、Φaはdq軸磁束鎖交数であり、電動機に固有の値である。速度起電力ωeΦaは、q軸方向に発生する。永久磁石同期電動機では、q軸電流と電動機のマグネットトルクとは比例する。同期電動機1は、通常、何らかの力学的な仕事を機械装置2に行わせるためのトルクを出力する。同期電動機1にはq軸電流iqが流れて、q軸電流iqの電機子反作用によってd軸方向の電圧であるωeLqiqが発生する。Lqはq軸インダクタンスである。
一方、d軸電流idはトルクへの寄与度が低いので、高速領域よりも回転速度が遅い低中速領域において、d軸電流idは高速領域に比べて小さな値に制御される。低中速領域のd軸電流指令id
*を決定する公知の手法としては、id=0制御、またはMTPAといった手法がある。
一般に、電力変換器3が同期電動機1へ出力可能な交流電圧の最大電圧には制限がある。高速領域では、速度起電力ωeΦaおよび電圧ωeLqiqのベクトル和が電力変換器3の最大出力電圧を超える場合があり、弱め磁束制御と呼ばれる手法を用いる必要がある。
dq軸電圧の制限値をVomとした場合、高速領域では制限値Vomは、近似式である次の式(3)の関係を満たす。なお、電力変換器3の出力限界範囲は厳密に言えば六角形状であるが、ここでは円で近似して考えている。実施の形態1では、円で近似することを前提として議論するが、厳密に六角形を考えて議論してもよいことは言うまでも無い。
実施の形態1では、原点を中心とする半径が制限値Vomの円を電圧制限円30と称する。なお、電力変換器3がPWM(Pulse Width Modulation)インバータであった場合、制限値Vomは、直流母線電圧の値により変動することは公知である。
高速領域では速度起電力ωeΦaが非常に大きくなるから、q軸電流iqを大きくするためにはd軸電流idをマイナス方向に流し、電圧指令ベクトルν*の振幅を電圧制限円30の範囲内に収める必要がある。このように、dq軸磁束鎖交数Φaと逆方向にd軸固定子磁束Ldidを発生させて電圧の振幅を減少させる制御手法は、一般に弱め磁束制御と称される。Ldはd軸インダクタンスである。
弱め磁束制御として最も単純な方法は、電圧方程式に基づいてd軸電流指令id
*を決定する方法である。上記の式(3)をd軸電流idについて解くことによって、次の式(4)が得られる。
しかしながら、上記の式(4)に基づいてd軸電流idを求める弱め磁束制御は、モータ定数の変化またはモータ定数のバラツキなどに弱いという欠点があり、産業界ではあまり利用されていない。
上記の式(4)に基づく弱め磁束制御の代わりに利用される手法の1つとして、積分型の弱め磁束制御が知られている。例えば、電圧振幅|νdq
*|と第1の電圧制限値Vlim1との差分を積分制御することによってd軸電流指令id
*を決定する手法が公知である。以下の説明では、かかる手法を「d軸電流指令操作型の弱め磁束制御」と称することがある。
図4は、実施の形態1にかかる電動機駆動装置が有する弱め磁束制御器の構成例を示すブロック図である。弱め磁束制御器9は、減算器41と、リミッタ付きの積分器42とを有する。減算器41は、第1の電圧制限値Vlim1から電圧振幅|νdq
*|を差し引いた差分を出力する。積分器42は、かかる差分に不図示の制御ゲインを乗算した結果を積分することによって、d軸電流指令id
*を求める。弱め磁束制御器9が、第1の電圧制限値Vlim1と電圧振幅|νdq
*|との差分を積算する制御器であることによって、電動機駆動装置100は、d軸電流指令id
*を過不足のない適切な値に自動調整することができる。
電圧振幅|νdq
*|が第1の電圧制限値Vlim1よりも大きい場合は、差分がマイナスとなることから、d軸電流指令id
*はマイナス方向へ変化する。これとは逆に、電圧振幅|νdq
*|が第1の電圧制限値Vlim1よりも小さい場合は、差分がプラスとなることから、d軸電流指令id
*はプラス方向へ変化する。一般論として、d軸電流指令id
*には、適宜リミッタが設けられる。リミッタが設けられることによって、積分器42における積分演算の発散が防がれる。また、d軸電流指令id
*が過大になることによる同期電動機1の減磁が、リミッタが設けられることによって防がれる。また、同期電動機1が低中速領域で回転しているときに正のd軸電流idが流れるのを防ぐため、プラス方向のリミッタが設けられてもよい。プラス方向の制限値は、ゼロまたは「最大トルク/電流制御の電流指令値」とするのが普通である。
実施の形態1にかかる電動機駆動装置100の有用性を説明するため、弱め磁束制御法として広く知られている他の方法について説明する。上記の特許文献1に記載されている方法である「位置誤差指令演算」は、積分型の弱め磁束制御の一種とみられる。上述する弱め磁束制御の方法によると、d軸電流指令を操作した結果として電圧指令の位相角が進むこととなるが、電圧指令の位相を直接的に操作する場合も同様の効果を得ることができる。電圧指令の位相を直接的に操作する方法は、「電圧位相制御」などと称される。「位置誤差指令演算」においても、「電圧位相制御」が用いられていると推測される。電圧指令の位相の代わりに制御座標の位相を、磁極位置に対して進み方向にシフトさせる方法も知られている。以下の説明では、位相の操作によるこれらの手法を「位相操作型の弱め磁束制御」と称することがある。位相操作型の弱め磁束制御には、いずれも数学的な見通しが悪く、制御ゲインを決めるための演算が煩雑であるという欠点がある。
一般に、数学的な見通しの悪さは、制御調整の難度に大きく影響する。古典制御工学のアプローチはゲイン設計の有力な手段であるが、プラントモデルまたはコントローラに非線形要素が含まれる場合は奏功しない。位相の回転操作には三角関数が必要となるが、三角関数を含む微分方程式の多くは非線形要素である。位相操作量が微小であれば、三角関数を線形近似することが可能だが、弱め磁束制御での位相操作量は0度から90度の範囲で大きく変化するため、線形近似が困難である。一般的に、非線形制御の議論は難しいものであると認知されており、制御調整は容易ではない。適切なゲインが理論的に発見できない場合、試行錯誤的な実験を繰り返して制御ゲインを調整していくことになるが、それには多大な労力が掛かる。そういった点で位相操作型の弱め磁束制御は好ましくない手法であると言える。
実施の形態1にかかる電動機駆動装置100では、「d軸電流指令操作型の弱め磁束制御」によって、「位相操作型の弱め磁束制御」に比べてゲイン設計を簡単に行うことが可能となる。「d軸電流指令操作型の弱め磁束制御」におけるゲイン設計については後述する。
図5は、実施の形態1にかかる電動機駆動装置が有する速度垂下制御器の構成例を示すブロック図である。ここでは、冷媒圧縮機のように、正回転での力行動作のみを行うアプリケーションへの適用を前提とした構成について説明する。速度垂下制御器10の構成は、逆回転あるいは回生動作を考慮した構成とすることはもちろん可能である。
速度垂下制御器10は、減算器51と、リミッタ付きの積分器52とを有する。減算器51は、第2の電圧制限値Vlim2から電圧振幅|νdq
*|を差し引いた差分を出力する。積分器52は、かかる差分に不図示の制御ゲインを乗算した結果を積分することによって、速度垂下量Δωを求める。速度垂下制御器10が、第2の電圧制限値Vlim2と電圧振幅|νdq
*|との差分を積算する制御器であることによって、電動機駆動装置100は、速度垂下量Δωを過不足のない適切な値に自動調整することができる。
電圧振幅|νdq
*|が第2の電圧制限値Vlim2よりも大きい場合は、差分がマイナスとなることから、速度垂下量Δωはマイナス方向へ変化する。これとは逆に、電圧振幅|νdq
*|が第2の電圧制限値Vlim2よりも小さい場合は、差分がプラスとなることから、速度垂下量Δωはプラス方向へ変化する。積分器52は、積分演算が発散しないように、速度垂下量Δωが取り得る範囲をリミッタによって限定する。速度垂下量Δωの上限値がゼロとされることによって、電動機駆動装置100は、電圧飽和が生じない条件においては同期電動機1に減速動作を行わせないようにすることができる。つまり、速度垂下制御器10は、電圧振幅|νdq
*|が第2の電圧制限値Vlim2を上回らないように、速度垂下量Δωを調整する。このように、速度垂下制御器10は、電圧振幅|νdq
*|を第2の電圧制限値Vlim2よりも小さくさせる速度垂下量Δωを決定する。
速度垂下量Δωの下限値には、適当な値が設定されれば良い。ここでは、高速領域にて電圧飽和が生じた場合のケースを想定しているため、例えば、速度垂下量Δωの下限値としては、同期電動機1の最大速度ωMaxの-10%から-20%程度の値が設定されれば、多くの場合において事足りる。以上のとおり、正回転での力行動作において、速度垂下量Δωが取り得る範囲は、0≧Δω≧-0.2ωMaxとなる。
速度制御器6は、このようにして求められた速度垂下量Δωに基づいて、速度指令ω1
*を減少させ、第2の速度指令ω2
*を決定する。同期電動機1が出力可能な最大トルクよりも大きな負荷トルクが同期電動機1に印加されるなどして、深刻な電圧飽和が発生している場合において、電動機駆動装置100は、速度指令ω1
*を低下させることによって電圧飽和を緩和する。上述するように弱め磁束制御器9および速度垂下制御器10が構成されることによって、弱め磁束制御器9および速度垂下制御器10のゲイン設計を非常に簡単に行うことが可能となる。
次に、図6から図15を参照して、電動機駆動装置100におけるゲインの設計について説明する。図6は、実施の形態1にかかる電動機駆動装置と同期電動機との制御モデルの例を示す図である。図6には、電動機駆動装置100のコントローラモデルと同期電動機1の電気的なプラントモデルとの詳細が示されている。ここでは、弱め磁束制御器9の弱め磁束制御ゲインKIfwと速度垂下制御器10の速度垂下ゲインKIstとを具体的に決定するための制御設計について説明する。
図7は、図6に示す制御モデルを高速領域の動作点付近について近似したモデルを示す図である。速度制御器6、弱め磁束制御器9、および速度垂下制御器10の制御応答に比べて、dq軸電流制御器7の制御応答が十分に高いと判断される場合、d軸電流指令id
*とd軸電流idとはほぼ一致し、q軸電流指令iq
*とq軸電流iqとはほぼ一致するとみなせる。また、動作点付近における回転速度ωeの変化は緩やかであるものとする。さらに、回転速度ωeは十分に高く、電機子抵抗Rによる電圧降下はごく小さく無視できるものとする。これらの条件の下において、図6に示す制御モデルは、図7のように簡略化して表現できる。
ここで、弱め磁束制御器における制御ゲインである弱め磁束制御ゲインKIfwの設計について説明する。図8は、図4に示す弱め磁束制御器における弱め磁束制御ゲインの設計について説明するための第1の図である。図9は、図4に示す弱め磁束制御器における弱め磁束制御ゲインの設計について説明するための第2の図である。図10は、図4に示す弱め磁束制御器における弱め磁束制御ゲインの設計について説明するための第3の図である。図11は、図4に示す弱め磁束制御器における弱め磁束制御ゲインの設計について説明するための第4の図である。
図7に示すモデルから速度垂下制御器10と速度制御器6とを省略することによって、図8に示すブロック図が得られる。ここで、第1の電圧制限値Vlim1を基に電圧振幅|νdq
*|を得るための伝達関数について考える。伝達関数は1入力1出力と表現される関数であることから、動作点付近において、第1の電圧制限値Vlim1以外の入力要素は一定とみなす。すなわち、q軸電流指令iq
*とdq軸磁束鎖交数Φaとは無視するものとする。かかる条件の下において、図8に示すブロック図から、図9に示すブロック図が得られる。
図10に示すブロック図は、図9に示すブロック図を基に、弱め磁束制御器9の規範モデルを表現したものである。弱め磁束制御器9は、第1の電圧制限値Vlim1の変化に対して電圧振幅|νdq
*|が適切に追従するように設計されることが望まれる。また、応答が収束するまでの速さは任意の時定数を用いて指定することが望まれる。このことから、弱め磁束制御器9の規範モデルは1次のローパスフィルタ60とすべきである。ωfwは、ローパスフィルタ60の遮断角周波数とする。遮断角周波数は時定数の逆数である。
図10に示すローパスフィルタ60は、簡単な変形によって、図11に示す構成と等価であることが明らかである。図11に示すローパスフィルタ60は、減算器61と積分器62とを有する。図9に示すブロック図における開ループ伝達関数と図11に示すブロック図における開ループ伝達関数とが一致するように弱め磁束制御ゲインKIfwが設計されることによって、弱め磁束制御器9は、所望の応答特性を得ることが可能となる。よって、弱め磁束制御ゲインKIfwは、次の式(5)のように決定される。
次に、速度垂下制御器10における制御ゲインである速度垂下制御ゲインの設計について説明する。図12は、図5に示す速度垂下制御器における速度垂下制御ゲインの設計について説明する第1の図である。図13は、図5に示す速度垂下制御器における速度垂下制御ゲインの設計について説明する第2の図である。図14は、図5に示す速度垂下制御器における速度垂下制御ゲインの設計について説明する第3の図である。図15は、図5に示す速度垂下制御器における速度垂下制御ゲインの設計について説明する第4の図である。速度垂下制御ゲインは、速度制御器6の伝達関数と同期電動機1の伝達関数とに基づいて決定される。
図7に示すモデルから弱め磁束制御器9を省略することによって、図12に示すブロック図が得られる。ここで、第2の電圧制限値Vlim2を基に電圧振幅|νdq
*|を得るための伝達関数について考える。伝達関数は1入力1出力と表現される関数であることから、動作点付近において,第2の電圧制限値Vlim2以外の入力要素は一定とみなす。すなわち、d軸電流指令id
*とdq軸磁束鎖交数Φaとは無視するものとする。かかる条件の下において、図12に示すブロック図から、図13に示すブロック図が得られる。
さらに、図13に示すブロック図を変形することによって、図14に示すブロック図が得られる。図14に示すブロック図には、速度FB制御器23の伝達関数が含まれる。ここでは、速度FB制御器23のゲイン設計について先に述べる。
速度FB制御器23の比例ゲインKPSを設計する方法としては、例えば次の式(6)を用いる方法が知られている。速度FB制御器23の積分ゲインKISを設計する方法としては、例えば次の式(7)を用いる方法が知られている。
Jはイナーシャ、Pmは極対数、ωSCは速度制御帯域、ωPIはPI折れ点角周波数である。目標値応答を比例制御側で決定し、かつ積分制御は定常偏差をゼロにするためのみにおいて動作させる方針でωPIとωSCとを決定する場合、ωPIはωSCの5分の1以下に設定すると良い。
図14に示すブロック図における開ループ伝達関数GO(s)は、次の式(8)で表される。従って、図14に示すブロック図は、図15に示すブロック図のように変形できる。
図15に示すブロック図における閉ループ伝達関数GC(s)は、次の式(9)で表される。式(9)において、伝達関数母数の複素数sの次数は2である。
二次遅れ系の伝達関数の一般式は、次の式(10)で表される。ζは減衰係数、ωnは固有角周波数である。
式(9)における分母の係数と式(10)における分母の係数とを比較することによって、速度垂下制御器10の固有角速度ωnが任意の値となるような速度垂下ゲインKIstは、次の式(11)により決定することができる。
なお、速度垂下制御器10の減衰係数ζは、次の式(12)で表される。
減衰係数ζが適切でない場合、速度垂下制御器10による速度垂下制御は不安定となる。減衰係数ζが0.5未満であると、速度垂下量Δωが収束するまでにおける速度垂下量Δωの振動が顕著となる。このため、減衰係数ζは少なくとも0.5以上であることが望ましい。なお、ωn>0かつωPI>0であることは明らかであることから、減衰係数ζは常に正の値となる。これにより、上記の式(9)に示す伝達関数は安定であるといえる。
上記の特許文献1のように、電圧飽和か否かをフラグ判定して、速度指令を垂下させる処理を行う制御構成の場合、ゲイン設計は困難である。これに対し、実施の形態1によると、図1に示すように制御系を構成したことによって、上述するように明快なゲイン設計が可能となる。
図16は、実施の形態1にかかる電動機駆動装置を用いた場合における動作波形の例を示す図である。図16には、回転速度ωe、負荷トルクT、d軸電流指令id
*、電圧振幅|νdq
*|、および速度垂下量Δωの各々と時間との関係の例を、グラフによって示している。
同期電動機1が一定の速度で回転しているときに、図16に示すように時刻t1から時刻t5において負荷トルクTを徐々に増加させたとする。時刻t2までの期間において、電圧振幅|νdq
*|が第1の電圧制限値Vlim1よりも小さいため、d軸電流指令id
*はゼロとなる。時刻t2を境に、電圧振幅|νdq
*|は第1の電圧制限値Vlim1を超える。そうすると、積分型の弱め磁束制御器9がd軸電流指令id
*をマイナス方向へ増加させて、電圧振幅|νdq
*|がそれ以上増加しないようにされる。
d軸電流指令id
*がマイナス方向へ増加することで、時刻t3において、d軸電流指令id
*が下限値IdLimLに達したとする。下限値IdLimLは、減磁および発熱などから同期電動機1を保護するために設定されている。同期電動機1には、下限値IdLimLを超えるd軸電流idを流すことはできない。よって、時刻t3以降は電圧飽和を緩和するために、速度指令ω1
*を低下させる必要が生じる。
図16において、第2の電圧制限値Vlim2には、第1の電圧制限値Vlim1よりも高い値が設定されている。時刻t3から時刻t4までの期間は電圧振幅|νdq
*|が増加していくが、時刻t4になると電圧振幅|νdq
*|が第2の電圧制限値Vlim2に到達して、速度垂下量Δωが発生し始める。時刻t4から時刻t5までの期間は、速度垂下量Δωが発生することによって回転速度ωeが低下し、電圧振幅|νdq
*|の増加が止まる。時刻t5以降は負荷トルクTが一定になったことによって、回転速度ωeの低下が止まる。
実施の形態1では、第1の電圧制限値Vlim1と第2の電圧制限値Vlim2とが別々に設けられており、かつ第2の電圧制限値Vlim2が第1の電圧制限値Vlim1よりも大きい値であることによって、電動機駆動装置100は、弱め磁束制御の動作タイミングと速度垂下制御との動作タイミングとを互いにずらしている。これにより、電動機駆動装置100は、弱め磁束制御を最大限活用して同期電動機1の出力トルクを増加させることができる。
なお、電力変換器3の過変調領域を活用して、最大トルクの増加と銅損の低減とを図る場合は、次の式(13)に示す範囲で第1の電圧制限値Vlim1と第2の電圧制限値Vlim2とを設定することができる。これにより、電動機駆動装置100は、弱め磁束制御による電圧の振幅の制限が効かなくなった後に速度垂下量Δωの制御を行うことで、同期電動機1の出力限界範囲を最大限に使い切ることができる。
実施の形態1によると、電動機駆動装置100は、制御調整のための煩雑な作業を行わなくても、電圧飽和時において同期電動機1の制御が不安定になる現象を抑制できる。冷媒圧縮機といったアプリケーションにおいて、制御調整の省力化は、大きなメリットとなる。さらに、電動機駆動装置100は、電力変換器3の過変調領域を活用して最大トルクの増加と銅損の低減とを図ることができる。以上により、電動機駆動装置100は、電動機の安定した制御を行うための調整に要する作業負担を低減できるという効果を奏する。
実施の形態2.
実施の形態2では、電動機駆動装置100が有するハードウェア構成について説明する。図17は、本発明の実施の形態2にかかる電動機駆動装置が有するハードウェア構成の例を示す図である。実施の形態2では、上記の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付すものとする。図17には、電動機システムを構成する同期電動機1、電力変換器3および電流検出部4と、同期電動機1を動力源として動作する機械装置2とを、電動機駆動装置100と併せて示している。
実施の形態2では、電動機駆動装置100が有するハードウェア構成について説明する。図17は、本発明の実施の形態2にかかる電動機駆動装置が有するハードウェア構成の例を示す図である。実施の形態2では、上記の実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付すものとする。図17には、電動機システムを構成する同期電動機1、電力変換器3および電流検出部4と、同期電動機1を動力源として動作する機械装置2とを、電動機駆動装置100と併せて示している。
電動機駆動装置100は、ハードウェア構成として、プロセッサ101とメモリ102とを有する。図1に示す位置速度特定部5と、速度制御器6と、dq軸電流制御器7と、電圧振幅演算部8と、弱め磁束制御器9と、速度垂下制御器10との各機能は、メモリ102に格納されるプログラムをプロセッサ101が実行することによって実現される。
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、又はDSP(Digital Signal Processor)である。メモリ102は、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを備えている。メモリ102は、不揮発性の補助記憶装置の代わりに、ハードディスク等の補助記憶装置を備えていても良い。揮発性記憶装置および補助記憶装置の図示は省略する。プロセッサ101は、補助記憶装置に記憶されているプログラムを、揮発性記憶装置を介して読み出す。プロセッサ101は、演算結果等のデータを揮発性記憶装置へ出力する。プロセッサ101は、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置へデータを保存しても良い。
電力変換器3および電流検出部4については、様々な方式が検討されているが、基本的にはどの方式を用いてもよい。電動機システムには、電力変換器3の入力電圧または出力電圧を検出する電圧検出手段、あるいは直流母線電圧を検出する電圧検出手段が設けられても良い。
各構成要素の間におけるデータの送受信方法は、基本的にどのような方式でも良い。各構成要素は、デジタル信号の送受信を行っても良く、アナログ信号の送受信を行っても良い。デジタル信号は、パラレル通信でもシリアル通信でも良い。アナログ信号およびデジタル信号は、不図示の変換器によって適宜、変換されても良い。例えば、電流検出部4が検出した相電流をアナログ信号で表現する場合、不図示のD/A(Digital to Analog)変換器によってアナログ信号をデジタル信号に変換してプロセッサ101へデータを送信する。不図示のD/A変換器は、電動機駆動装置100の内部にあってもよいし、電流検出部4の内部にあってもよい。
プロセッサ101が電力変換器3へ送信する電圧指令の信号は、アナログ信号とデジタル信号とのどちらであっても良い。また、プロセッサ101は、キャリア比較変調部、空間ベクトル変調部などの変調部を有していても良い。プロセッサ101は、変調を行ったあとのパルス列である電圧指令を電力変換器3へ送信しても良い。電力変換器3の入力電圧または出力電圧を検出する電圧検出手段、あるいは直流母線電圧を検出する電圧検出手段が設けられる場合に、電圧検出手段と電動機駆動装置100との間における送受信方法は、基本的にどのような方法であっても良い。同期電動機1に位置センサが取り付けられる場合、位置センサと電動機駆動装置100との間における送受信方法は、基本的にどのような方法であっても良い。
プロセッサ101は、速度指令ω1
*をもとに速度制御演算と電流制御演算を行って電圧指令12を決定する。電圧指令12の振幅が第1の電圧制限値Vlim1を超える場合は弱め磁束制御が動作し、電圧指令12の振幅が第2の電圧制限値Vlim2を超える場合は速度垂下制御が動作する。
速度指令ω1
*と第1の電圧制限値Vlim1と第2の電圧制限値Vlim2とは、電動機駆動装置100の外部のコンピュータから電動機駆動装置100へ与えられる。電動機駆動装置100へ速度指令ω1
*と第1の電圧制限値Vlim1と第2の電圧制限値Vlim2とを与えるコンピュータの図示は省略する。速度指令ω1
*と第1の電圧制限値Vlim1と第2の電圧制限値Vlim2とは、プロセッサ101の内部で計算されても良い。プロセッサ101の計算能力次第では、プロセッサ101は、速度指令ω1
*と第1の電圧制限値Vlim1と第2の電圧制限値Vlim2との計算以外の計算処理を行っても良い。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1 同期電動機、2 機械装置、3 電力変換器、4 電流検出部、5 位置速度特定部、6 速度制御器、7 dq軸電流制御器、8 電圧振幅演算部、9 弱め磁束制御器、10 速度垂下制御器、11 信号、12 電圧指令、21,25 加算器、22,41,51,61 減算器、23 速度FB制御器、24 速度FF制御器、30 電圧制限円、42,52,62 積分器、60 ローパスフィルタ、100 電動機駆動装置、101 プロセッサ、102 メモリ。
Claims (5)
- 電動機に流れる相電流の値をdq座標系における電流であるd軸電流およびq軸電流の各値へ変換し、前記d軸電流およびd軸電流指令と前記q軸電流およびq軸電流指令とに基づいて電圧指令を決定することによって前記相電流を制御する電流制御器と、
前記電圧指令の振幅である電圧振幅を求める電圧振幅演算部と、
速度指令と前記電動機の回転速度と前記速度指令を低減させる速度垂下量とに基づいて前記q軸電流指令を決定することによって前記回転速度を制御する速度制御器と、
前記電圧振幅と第1の電圧制限値とに基づいて前記d軸電流指令を決定することによって、前記電動機へ出力される電圧の振幅を制限するための磁束制御を行う弱め磁束制御器と、
前記電圧振幅と第2の電圧制限値とに基づいて前記速度垂下量を制御する速度垂下制御器と、を備え、
前記速度垂下制御器は、前記電圧振幅を前記第2の電圧制限値よりも小さくさせる前記速度垂下量を決定することを特徴とする電動機駆動装置。 - 前記第2の電圧制限値は、前記第1の電圧制限値よりも大きい値であることを特徴とする請求項1に記載の電動機駆動装置。
- 前記速度垂下制御器は、前記第2の電圧制限値と前記電圧振幅との差分を積算する制御器であることを特徴とする請求項1または2に記載の電動機駆動装置。
- 前記弱め磁束制御器は、前記第1の電圧制限値と前記電圧振幅との差分を積算する制御器であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の電動機駆動装置。
- 前記速度垂下制御器における制御ゲインは、前記速度制御器の伝達関数と前記電動機の伝達関数とに基づいて決定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の電動機駆動装置。
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