JP7159980B2 - 過給システム - Google Patents

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Description

この開示は、過給システムに関し、特に、並列に接続された複数の過給機を有する過給システムに関する。
従来、排気経路において高圧段のタービンをバイパスするための経路に設けられたバイパス弁が設けられたシリーズシーケンシャルターボを搭載するエンジンにおいて、バイパス弁とタービンとの開口面積比、吸気圧力および排気ガス流量によって排気マニホールドの排気の圧力を推定する技術があった(たとえば、特許文献1参照)。
特開2016-79810号公報
しかし、特許文献1の技術はシリーズシーケンシャルターボに関する技術であるので、特許文献1の技術を用いて、パラレルシーケンシャルターボを搭載するエンジンにおいて、排気マニホールドの排気の圧力を推定することは困難である。
図13は、パラレルシーケンシャルターボを搭載するエンジンの燃料の噴射量と排気マニホールドの排気の圧力との関係を示す図である。図13を参照して、パラレルシーケンシャルターボを搭載するエンジンにおいては、等過給圧でシングル過給とツイン過給とを切替える場合、図で示すヒス領域で切替える。この場合に、シングル過給時とツイン過給時とで排気マニホールドの排気の圧力P4が異なるため、ポンピングロスが変化することにより、エンジンが発生するトルクに段差が生じる。このトルク段差を解消するために燃料の噴射量で補正する。このため、排気マニホールドの排気の圧力P4を推定する必要がある。
この開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、過給機を並列で備える過給システムにおいて排気マニホールドの排気の圧力を推定することが可能な過給システムを提供することである。
この開示による過給システムは、エンジンから排出される排気によって駆動される第1タービンと、第1タービンへ流入する排気の流速を開度によって調整する第1可変ノズル機構とを含み、エンジンへの吸気を過給する第1過給機と、エンジンから排出される排気によって駆動される第2タービンと、第2タービンへ流入する排気の流速を開度によって調整する第2可変ノズル機構とを含み、エンジンへの吸気を過給する第2過給機と、第1過給機において過給された空気がエンジンに供給されるシングル過給モードと、第1過給機において過給された空気と第2過給機において過給された空気とがエンジンに供給されるツイン過給モードとのうちのいずれか一方から他方に過給モードを切替える制御装置とを備える。
制御装置は、シングル過給モードからツイン過給モードに切替える前に、第2過給機に排気を供給しつつ、第2過給機によって過給された空気を第1過給機に供給する助走運転モードに切替え、シングル過給モード、ツイン過給モードおよび助走運転モードにおいて排気マニホールドの排気の圧力を推定する共通の推定式を用いて排気マニホールドの排気の圧力を算出し、算出した排気マニホールドの排気の圧力を用いてエンジンを制御する。
好ましくは、制御装置は、第1タービンおよび第2タービンの後で合流した排気の圧力を推定式に代入して排気マニホールドの排気の圧力を算出する。
好ましくは、エンジンの排気の一部をエンジンの吸気として還流させる還流路を有する排気再循環装置をさらに備える。
さらに好ましくは、制御装置は、第1タービンおよび第2タービンの後で合流した排気の圧力および還流路の排気の圧力を推定式に代入して排気マニホールドの排気の圧力を算出する。
さらに好ましくは、排気再循環装置は、還流路に備えられ還流される排気の量を調整するバルブを含む。推定式は、第1可変ノズル機構、第2可変ノズル機構およびバルブのそれぞれについてのノズル式ならびに質量保存則から構築される。
好ましくは、制御装置は、第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構の開口面積比から、第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構のそれぞれに分配される排気流量の比を特定し、エンジンから排出される排気流量、ならびに、第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構のそれぞれに分配される排気流量の比から、第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構のそれぞれに分配される排気流量を特定し、特定した第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構それぞれに分配される排気流量、および、第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構それぞれの開度から、第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構の有効開口面積を特定し、特定した第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構それぞれの有効開口面積を推定式に代入して排気マニホールドの排気の圧力を算出する。
この開示に従えば、過給機を並列で備える過給システムにおいて排気マニホールドの排気の圧力を推定することが可能な過給システムを提供できる。
この実施の形態におけるエンジンの概略構成の一例を示す図である。 シングル過給モード時の過給システムの動作を説明するための図である。 助走モード時の過給システムの動作を説明するための図である。 ツイン過給モード時の過給システムの動作を説明するための図である。 シングル過給モードにおけるエンジンの排気の流れの概略を示す図である。 φ関数が直線に近似できることを示す図である。 助走モードにおけるエンジンの排気の流れの概略を示す図である。 プライマリ過給機およびセカンダリ過給機の可変ノズル機構への排気の流れの概略を示す図である。 プライマリ過給機およびセカンダリ過給機の可変ノズル機構の開口面積比とそれぞれを通過するガス量の比との関係を示す図である。 ツイン過給モードにおけるエンジンの排気の流れの概略を示す図である。 排気マニホールドの排気の圧力が制約値を超えないように可変ノズル機構の開度を算出する手法の概略を示す図である。 この実施の形態における助走中VN開度算出処理の流れを示すフローチャートである。 パラレルシーケンシャルターボを搭載するエンジンの燃料の噴射量と排気マニホールドの排気の圧力との関係を示す図である。
以下、図面を参照しつつ、この開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
[過給システムの構成について]
図1は、この実施の形態におけるエンジン1の概略構成の一例を示す図である。図1を参照して、このエンジン1は、たとえば、走行のための駆動源として車両に搭載される。この実施の形態においては、エンジン1は、ディーゼルエンジンである場合を一例として説明するが、たとえば、ガソリンエンジンであってもよい。
エンジン1は、バンク10A,10Bと、エアクリーナ20と、インタークーラ25と、吸気マニホールド28A,28Bと、プライマリ過給機30と、セカンダリ過給機40と、排気マニホールド50A,50B(以下「エキマニ」ともいう)と、排気処理装置81と、制御装置200とを備える。エンジン1は、さらに、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ71と、EGRバルブ72とを含む排気再循環装置(EGR装置)を備える。
バンク10Aには、複数の気筒12Aが形成される。バンク10Bには、複数の気筒12Bが形成される。各気筒12A,12B内にはピストン(図示せず)が収納されており、ピストンの頂部と気筒の内壁とによって燃焼室(燃料が燃焼する空間)が形成されている。各気筒12A,12B内をピストンが摺動することによって燃焼室の容積が変化される。各気筒12A,12Bには、インジェクタ(図示せず)が設けられており、エンジン1の動作中においては、制御装置200によって設定されたタイミングおよび量の燃料を各気筒12A,12B内に噴射する。なお、各インジェクタから噴射する燃料の噴射量およびタイミングは、たとえば、エンジン回転速度NE、吸入空気量Ga、アクセルペダルの踏み込み量あるいは車両の速度等から制御装置200によって設定される。
各気筒12A,12Bのピストンは、コネクティングロッドを介して共通のクランクシャフト(図示せず)に連結される。各気筒12A,12B内において所定の順序で燃料が燃焼することによってピストンが各気筒12A,12B内を摺動し、ピストンの上下運動がコネクティングロッドを経由してクランクシャフトの回転運動に変換される。
プライマリ過給機30は、コンプレッサ31とタービン32とを含むターボチャージャである。プライマリ過給機30のコンプレッサ31は、エンジン1の吸気通路(すなわち、エアクリーナ20から吸気マニホールド28A,28Bまでの通路)に設けられる。プライマリ過給機30のタービン32は、エンジン1の排気通路(すなわち、排気マニホールド50A,50Bから排気処理装置81までの通路)に設けられる。
コンプレッサ31内には、コンプレッサホイール33が回転自在に収納される。タービン32内には、タービンホイール34と可変ノズル機構35とが設けられる。タービンホイール34は、回転自在にタービン32内に収納される。コンプレッサホイール33と、タービンホイール34とは、回転軸36によって連結されており、一体的に回転する。コンプレッサホイール33は、タービンホイール34に供給される排気のエネルギ(排気エネルギ)によって回転駆動される。
可変ノズル機構35は、タービン32を作動させる排気の流速を変化させる。可変ノズル機構35は、タービンホイール34の外周側に配置され、排気流入口から供給される排気をタービンホイール34に導く複数のノズルベーン(図示せず)と、複数のノズルベーンの各々を回転させることによって隣接するノズルベーン間の隙間(以下の説明においてこの隙間をVN開度と記載する)を変化させる駆動装置(図示せず)とを含む。可変ノズル機構35は、たとえば、制御装置200からの制御信号VN1に応じて駆動装置を用いてノズルベーンを回転させることによってVN開度を変化させる。
セカンダリ過給機40は、コンプレッサ41とタービン42とを含むターボチャージャである。この実施の形態においては、セカンダリ過給機40は、プライマリ過給機30と同じ構造およびサイズであることとする。セカンダリ過給機40のコンプレッサ41は、エンジン1の吸気通路において、コンプレッサ31に並列して設けられ、エンジン1の吸気を過給する。セカンダリ過給機40のタービン42は、エンジン1の排気通路において、タービン32に並列して設けられる。
コンプレッサ41内には、コンプレッサホイール43が回転自在に収納される。タービン42内には、タービンホイール44と可変ノズル機構45とが設けられる。タービンホイール44は、回転自在にタービン42内に収納される。コンプレッサホイール43と、タービンホイール44とは、回転軸46によって連結されており、一体的に回転する。コンプレッサホイール43は、タービンホイール44に供給される排気エネルギによって回転駆動される。
なお、可変ノズル機構45は、可変ノズル機構35と同様の構成を有するため、その詳細な説明は繰り返さない。可変ノズル機構45は、たとえば、制御装置200からの制御信号VN2に応じて駆動装置を用いてノズルベーンを回転させることによってVN開度を変化させる。
エアクリーナ20は、吸気口(図示せず)から吸入された空気から異物を除去する。エアクリーナ20には、吸気管23の一方端が接続される。吸気管23の他方端は、分岐して吸気管21の一方端および吸気管22の一方端に接続される。
吸気管21の他方端は、プライマリ過給機30のコンプレッサ31の吸気流入口に接続される。プライマリ過給機30のコンプレッサ31の吸気流出口には、吸気管37の一方端が接続される。吸気管37の他方端は、インタークーラ25に接続される。コンプレッサ31は、コンプレッサホイール33の回転によって吸気管21を通じて吸入される空気を過給して吸気管37に供給する。
吸気管22の他方端は、セカンダリ過給機40のコンプレッサ41の吸気流入口に接続される。セカンダリ過給機40のコンプレッサ41の吸気流出口には、吸気管47の一方端が接続される。吸気管47の他方端は、吸気管37の途中の接続部C3に接続される。コンプレッサ41は、コンプレッサホイール43の回転によって吸気管22を通じて吸入される空気を過給して吸気管47に供給する。
吸気管47の途中には第1制御弁62が設けられている。第1制御弁62は、たとえば、制御装置200からの制御信号CV1に応じてON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリオフのVSV(負圧切替弁)である。
また、吸気管47において第1制御弁62よりも上流側(コンプレッサ41側)に位置する接続部C4に、還流管48の一方端が接続されている。また、還流管48の他方端は吸気管21に接続されている。還流管48は、吸気管47を流れる空気の少なくとも一部をプライマリ過給機30のコンプレッサ31よりも上流側に還流させるための通路である。還流管48を通じて吸気管21に還流した空気は、コンプレッサ31に供給される。
還流管48の途中には第2制御弁64が設けられている。第2制御弁64は、たとえば、制御装置200からの制御信号CV2に応じてON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリオフの電磁弁(ソレノイドバルブ)である。
接続部C3には、コンプレッサ31によって過給された空気と、コンプレッサ41によって過給され、第1制御弁62を通過した空気とが供給される。これらの空気は、接続部C3で合流してインタークーラ25に流入する。
インタークーラ25は、流入した空気を冷却するように構成される。インタークーラ25は、たとえば空冷式又は水冷式の熱交換器である。インタークーラ25の吸気流出口には、ディーゼルスロットル68を介して、吸気管27Aの一方端および吸気管27Bの一方端が接続される。ディーゼルスロットル68は、電動アクチュエータを用いて開度が調整可能に構成され、制御装置200からの制御信号に応じて吸気の流量を調整する。吸気管27Aの他方端は、吸気マニホールド28Aに接続される。吸気管27Bの他方端は、吸気マニホールド28Bに接続される。
吸気マニホールド28A、28Bは、それぞれバンク10A、10Bにおける気筒12A、12Bの吸気ポート(図示せず)に連結される。一方、排気マニホールド50A,50Bは、それぞれバンク10A,10Bにおける気筒12A,12Bの排気ポート(図示せず)に連結される。
各気筒12A,12Bの燃焼室から排気ポートを通じて気筒外に排出された排気(燃焼後のガス)は、エンジン1の排気通路を経由して外に排出される。上記の排気通路は、排気マニホールド50A,50B、排気管51A,51Bと、接続部C1と、排気管52A,52B,53A,53Bと、接続部C2とを含む。排気管51Aの一方端は、排気マニホールド50Aに接続される。排気管51Bの一方端は、排気マニホールド50Bに接続される。排気管51Aの他方端と、排気管51Bの他方端とは、接続部C1において一旦合流した後に、分岐して排気管52Aの一方端および排気管52Bの一方端に接続される。
排気管52Aの他方端は、タービン32の排気流入口に接続される。タービン32の排気流出口には、排気管53Aの一方端が接続される。排気管52Bの他方端は、タービン42の排気流入口に接続される。タービン42の排気流出口には、排気管53Bの一方端が接続される。
排気管52Bの途中には第3制御弁66が設けられる。第3制御弁66は、たとえば、制御装置200からの制御信号CV3に応じてON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリオンのVSV(負圧切替弁)である。
排気管53Aの他方端と排気管53Bの他方端とは、接続部C2において合流し、排気処理装置81に接続される。排気処理装置81は、たとえば、SCR触媒、酸化触媒、あるいは、PM除去フィルタ等によって構成され、排気管53Aおよび排気管53Bから流通する排気を浄化する。
排気管51Aと排気管51Bとの合流部には、排気再循環装置の還流路73の一方端が接続される。還流路73の他方端は、EGRクーラ71に接続される。EGRクーラ71は、流入した排気を冷却するように構成される。EGRクーラ71は、たとえば空冷式または水冷式の熱交換器である。EGRクーラ71の流出口には、EGRバルブ72を介して、還流路74の一方端が接続される。EGRバルブ72は、制御装置200からの制御信号CV4に応じて開度を調整する流量調整弁である。還流路74の他方端は、吸気管27Aと吸気管27Bとの合流部に接続される。
エンジン1の動作は、制御装置200によって制御される。制御装置200は、各種処理を行なうCPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよびデータを記憶するROM(Read Only Memory)およびCPUの処理結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を含むメモリと、外部との情報のやり取りを行なうための入出力ポート(いずれも図示せず)とを含む。入力ポートには、各種センサ類(たとえば、エアフローメータ102、第1圧力センサ106、第2圧力センサ108、温度センサ114および第3圧力センサ118等)が接続される。出力ポートには、制御対象となる機器(たとえば、複数のインジェクタ、可変ノズル機構35,45、第1制御弁62、第2制御弁64、第3制御弁66、EGRバルブ72等)が接続される。
制御装置200は、各センサおよび機器からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジン1が所望の運転状態となるように各種機器を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。また、制御装置200には、時間の計測を行うためのタイマ回路(図示せず)が内蔵されている。
エアフローメータ102は、吸入空気量Gaを検出する。エアフローメータ102は、検出した吸入空気量Gaを示す信号を制御装置200に送信する。
第1圧力センサ106は、吸気管37の接続部C3における圧力(以下、第1過給圧と記載する)Ppを検出する。第1圧力センサ106は、検出した第1過給圧Ppを示す信号を制御装置200に送信する。
第2圧力センサ108は、吸気管47の接続部C4における圧力(以下、第2過給圧Psと記載する)を検出する。第2圧力センサ108は、第2過給圧Psを示す信号を制御装置200に送信する。
第3圧力センサ118は、吸気マニホールド28A,28Bにおける圧力(以下、吸気マニホールド圧Pimと記載する)を検出する。第3圧力センサ118は、吸気マニホールド圧Pimを示す信号を制御装置200に送信する。
温度センサ114は、排気マニホールド50(代表して排気マニホールド50B)における圧力(以下、エキマニガス温度T4と記載する)を検出する。温度センサ114は、エキマニガス温度T4を示す信号を制御装置200に送信する。
この実施の形態において、プライマリ過給機30とセカンダリ過給機40と制御装置200とによって「過給システム」が構成される。
制御装置200は、第1制御弁62、第2制御弁64および第3制御弁66を制御することにより、プライマリ過給機30(プライマリターボ)のみで過給を行なうシングル過給モードと、プライマリ過給機30(プライマリターボ)およびセカンダリ過給機40(セカンダリターボ)の両方で過給を行なうツイン過給モードとのうちのいずれか一方から他方に切替える切替制御を実行可能に構成される。また、制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードに切替える場合には、シングル過給モードから、セカンダリ過給機40による過給圧を一定以上に上昇させる助走モードでの運転を実行した後に、過給モードをツイン過給モードに切替える。
以下、シングル過給モード、助走モードおよびツイン過給モードの各々における過給システムの動作について図2、図3および図4を参照しつつ説明する。
<シングル過給モードについて>
制御装置200は、所定の実行条件が成立する場合に、シングル過給モードで過給システムを動作させる。所定の実行条件とは、たとえば、エンジン回転速度NEおよび吸入空気量Gaに基づくエンジン1の運転状態が低負荷運転状態であるという条件を含む。制御装置200は、過給モードがシングル過給モードである場合には、第1制御弁62、第2制御弁64および第3制御弁66をいずれも閉状態(オフ状態)にする。
図2は、シングル過給モード時の過給システムの動作を説明するための図である。図2の矢印に示すように、排気マニホールド50A,50Bを流通する排気は、排気管52Aを経由してプライマリ過給機30のタービン32に流れ、排気管53Aを経由して排気処理装置81に流れる。タービン32に供給された排気によって、タービンホイール34が回転し、タービンホイール34の回転にともなってコンプレッサホイール33が回転する。
エアクリーナ20から吸入される空気は、吸気管23および吸気管21を経由してコンプレッサ31に流れる。コンプレッサ31から吐出された吸気は、吸気管37を経由してインタークーラ25に流れる。インタークーラ25に流れた吸気は、吸気管27A,27Bに分岐して吸気マニホールド28A,28Bの各々に流れる。
<助走モードについて>
制御装置200は、たとえば、過給モードがシングル過給モードであって、かつ、プライマリ過給機30の回転速度がしきい値を超える場合に、シングル過給モードからツイン過給モードへの切替要求があると判定する。
制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードへの切替要求がある場合には、ツイン過給モードに切替える前に助走モードを実行する。すなわち、制御装置200は、第2制御弁64および第3制御弁66の両方を開状態(オン状態)にし、第1制御弁62を閉状態(オフ状態)にする。
図3は、助走モード時の過給システムの動作を説明するための図である。図3の矢印に示すように、排気マニホールド50A,50Bを流通する排気は、接続部C1で一旦合流した後に排気管52A,52Bに分岐し、プライマリ過給機30,セカンダリ過給機40のタービン32,42の両方に流れ、排気管53A,53Bを経由して排気処理装置81に流通する。
タービン32に供給された排気によって、タービンホイール34が回転し、タービンホイール34の回転にともなってコンプレッサホイール33が回転する。タービン42に供給された排気によって、タービンホイール44が回転し、タービンホイール44の回転にともなってコンプレッサホイール43が回転する。
エアクリーナ20から吸入される空気は、吸気管23から吸気管21,22に分岐してコンプレッサ31,41の両方に流れる。コンプレッサ31から吐出された吸気は、吸気管37を経由してインタークーラ25に流れる。コンプレッサ41から吐出された吸気は、吸気管47から接続部C4を経由して還流管48に流れ、還流管48から吸気管21を経由してコンプレッサ31に流れる。
インタークーラ25に流れた吸気は、吸気管27A,27Bに分岐して吸気マニホールド28A,28Bの各々に流れる。助走モードにおいては、プライマリ過給機30によってインタークーラ25に流れる吸気を過給しつつ、セカンダリ過給機40の回転速度が上昇される。セカンダリ過給機40の回転速度が上昇するにつれてセカンダリ過給機40のコンプレッサ41から吐出される吸気の圧力が上昇していく。
<ツイン過給モードについて>
制御装置200は、助走モード中におけるセカンダリ過給機40の過給能力が十分高くなったタイミングで、ツイン過給モードで過給システムを動作させる。制御装置200は、過給モードがツイン過給モードである場合には、第1制御弁62を開状態(オン状態)にするとともに、第2制御弁64を閉状態(オフ状態)にする。
図4は、ツイン過給モード時の過給システムの動作を説明するための図である。助走モード時においては、セカンダリ過給機40のコンプレッサ41から吐出された吸気が吸気管47の途中から還流管48を経由して吸気管21に流れていたのに対して、ツイン過給モード時においては、図4の矢印に示すように、セカンダリ過給機40のコンプレッサ41から吐出された吸気が吸気管47から吸気管37を経由してインタークーラ25に流れる。
なお、上述以外の排気および吸気の流れは助走モード時の排気および吸気の流れと同様である。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
[この実施の形態の前提について]
従来から、図1から図4で示したような2つの過給機を搭載するエンジン1においては、等過給圧でシングル過給とツイン過給とを切替える場合、図13で示したヒス領域で切替える。この場合に、シングル過給時とツイン過給時とで排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4が異なるため、ポンピングロスが変化することにより、エンジン1が発生するトルクに段差が生じる。このトルク段差を解消するために燃料の噴射量で補正する。このため、排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定する必要がある。
そこで、この実施の形態においては、制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードに切替える前に、セカンダリ過給機40に排気を供給しつつ、セカンダリ過給機40によって過給された空気をプライマリ過給機30に供給する助走モードに切替え、シングル過給モード、ツイン過給モードおよび助走モードにおいて排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定する共通の推定式を用いて排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を算出し、算出した排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を用いてエンジンを制御する。これにより、過給機を並列で備える過給システムにおいて排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定できる。
また、従来、タービンとコンプレッサとを有する過給機においてタービンによるコンプレッサの駆動力を補助するための電動機を備えたものがあった。このような過給機においては、目標過給圧と実過給圧との間に乖離があるときにコンプレッサの駆動を電動機で補助することにより、タービンの駆動力を増加させるためにノズルベーンを急激に開けることを回避して、排気マニホールドの排気の圧力の急激な変動を抑制するようにしていた。
この技術を用いれば、2つの過給機を搭載する過給システムにおいても、排気マニホールドの排気の圧力の急激な変動を抑制できることも考えられる。しかし、このように過給機に付加的な構成である電動機を備えるようにした場合、電動機を備えるためにコストが増加したり、電動機を搭載するためのスペースを確保する必要があったり、電動機の重量のため車両の重量が増加したりする。また、排気マニホールドの排気の圧力が高まり過ぎると、エンジンの各部が損傷してしまう虞がある。
そこで、この実施の形態においては、制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードに切替える前に、セカンダリ過給機40に排気を供給しつつ、セカンダリ過給機40によって過給された空気をプライマリ過給機30に供給する助走モードに切替え、助走モードの開始時に、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35およびセカンダリ過給機40の可変ノズル機構45それぞれの開度から排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定する推定式を用いて、排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4が制約値を超えないように、可変ノズル機構35,45それぞれの開度を特定し、可変ノズル機構35,45それぞれの開度を、特定した開度となるよう制御する。これにより、過給機を並列で備える過給システムにおいて、付加的な構成を設けることなく、排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4が高まり過ぎないようにすることができる。
[排気マニホールドの排気の圧力の推定式の導出について]
まず、シングル過給モード、ツイン過給モードおよび助走モードにおいて排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定する共通の推定式の導出について説明する。
図5は、シングル過給モードにおけるエンジン1の排気の流れの概略を示す図である。図5を参照して、シングル過給モードである場合、エンジン1から排気マニホールド50(50A,50B)を介して排出された排気は、プライマリ過給機30の側と、排気再循環装置の側とに分岐して流れる。
ここで、バルブやノズルなどについては、エネルギ保存則、運動量保存則および状態方程式によりノズルの状態を、数式(1)で示すノズル式で表現することができる。なお、μA:有効開口面積、Pus:ノズル上流圧力、Pds:ノズル下流圧力、Tus:ノズル上流温度、R:気体定数である。
Figure 0007159980000001
また、数式(1)に含まれるφ関数は、ノズルの流れやすさの特性を示す関数であり、以下の数式(2)で示される。なお、κ:排気の比熱比である。
Figure 0007159980000002
図6は、φ関数が直線に近似できることを示す図である。図6を参照して、Pds/Pusのおおよその値に応じて、数式(2)のφ関数は、数式(3)で示すように、直線に近似することができる。なお、a,b:定数である。
Figure 0007159980000003
図5に戻って、排気マニホールド50から流れ出る排気の単位時間当りの流量moutは、各気筒12A,12Bに流れ込む空気の単位時間当りの流量Gcylと、各気筒12A,12Bへの単位時間当りの燃料の噴射量Gfとの和である。つまり、以下の数式(4)となる。
Figure 0007159980000004
また、排気マニホールド50から流れ出た排気の単位時間当りの流量moutは、質量保存則より、プライマリ過給機30の側に流れる排気の単位時間当りの流量mVNと、排気再循環装置の側に流れる排気の単位時間当りの流量mEGRとの和である。つまり、以下の数式(5)となる。
Figure 0007159980000005
排気再循環装置の側のEGRバルブ72に流れる排気について、ノズル式を規定すると、以下の数式(6)となる。なお、μAEGR:EGRバルブ72の有効開口面積、P4:排気マニホールドの排気の圧力、T4:排気マニホールド50A,50Bの排気の温度、Pim:吸気マニホールドの吸気の圧力、a,b:定数である。EGRバルブ72の有効開口面積μAEGRは、EGRバルブ72を通過するガス量mEGRごとのEGRバルブ72の実開度と有効開口面積μAEGRとの関係を示す2次元マップを用いて特定することができる。この2次元マップは、制御装置200のROMに予め記憶される。
Figure 0007159980000006
プライマリ過給機30の側のタービン32の可変ノズル機構35に流れる排気について、ノズル式を規定すると、以下の数式(7)となる。なお、μAVN:可変ノズル機構35の有効開口面積、P6:タービン後の圧力、c,d:定数である。可変ノズル機構35の有効開口面積μAVNは、可変ノズル機構35を通過するガス量mVNごとの可変ノズル機構35の実開度と有効開口面積μAVNとの関係を示す2次元マップを用いて特定することができる。この2次元マップは、制御装置200のROMに予め記憶される。
Figure 0007159980000007
数式(4)から数式(7)に基づいて、P4について整理すると、以下の数式(8)で示すP4の推定式となる。
Figure 0007159980000008
シングル過給モードにおいては、この数式(8)の推定式を用いて排気マニホールド50の排気の圧力P4を算出することができる。なお、μAEGR,μAVNは、上述した方法で特定できる。Gcylは、たとえば過給圧およびエンジン1の回転速度を引数にして計算できる推定のシリンダ流入ガス量であり、基本的には実験によって得られた関係性を用いて計算できる。Gfは、エンジン1の回転速度、燃料の噴射量などから公知の方法で特定できる。T4,Pimは、それぞれ、温度センサ114,第3圧力センサ118からの信号により特定できる。タービン後圧力P6は、大気圧との予め特定された相関関係から推定できる。なお、ここでは、タービン後圧力P6は、推定値であることとするが、これに限定されず、圧力センサで検出されるようにしてもよい。
次に、助走モードにおいて排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定する推定式の導出について説明する。
図7は、助走モードにおけるエンジン1の排気の流れの概略を示す図である。図7を参照して、助走モードである場合、エンジン1から排気マニホールド50(50A、50B)を介して排出された排気は、プライマリ過給機30の側と、排気再循環装置の側とに加えて、セカンダリ過給機40の側に分岐して流れる。
排気再循環装置の側のEGRバルブ72に流れる排気についてのノズル式は、上述の数式(6)と同様である。上述のシングル過給モードの場合と同様、プライマリ過給機30の側のタービン32の可変ノズル機構35に流れる排気、および、セカンダリ過給機40の側のタービン42の可変ノズル機構45に流れる排気のそれぞれについて、ノズル式を規定すると、以下の数式(9)および数式(10)となる。なお、μAVN1,μAVN2:可変ノズル機構35,45の有効開口面積、c,d,e,f:定数である。
Figure 0007159980000009
Figure 0007159980000010
また、排気マニホールド50から流れ出た排気の単位時間当りの流量moutは、質量保存則より、プライマリ過給機30の側に流れる排気の単位時間当りの流量mVN1と、セカンダリ過給機40の側に流れる排気の単位時間当りの流量mVN2と、排気再循環装置の側に流れる排気の単位時間当りの流量mEGRとの和である。つまり、以下の数式(11)となる。
Figure 0007159980000011
数式(4),数式(6),数式(9)から数式(11)に基づいて、P4について整理すると、以下の数式(12)で示すP4の推定式となる。
Figure 0007159980000012
EGRバルブ72の有効開口面積μAEGRは、シングル過給モードの場合と同様に特定することができる。
可変ノズル機構35,45の有効開口面積μAVN1,μAVN2は、それぞれ、可変ノズル機構35,45を通過するガス量mVN1,mVN2ごとの可変ノズル機構35,45の実開度と有効開口面積μAVN1,μAVN2との関係を示す2次元マップを用いて特定することができる。この2次元マップは、制御装置200のROMに予め記憶される。可変ノズル機構35,45の前後の圧力P4,P6は同じであるため、c=e,d=fである。
図8は、プライマリ過給機30およびセカンダリ過給機40の可変ノズル機構35,45への排気の流れの概略を示す図である。図8を参照して、助走モードの場合、可変ノズル機構35,45をそれぞれ通過するガス量mWN1,mVN2を特定することができない。このため、可変ノズル機構35,45の有効開口面積μAVN1,μAVN2を特定することができない。
図9は、プライマリ過給機30およびセカンダリ過給機40の可変ノズル機構35,45の開口面積比とそれぞれを通過するガス量の比との関係を示す図である。図9を参照して、プロットは、実験結果を示す。プライマリ過給機30およびセカンダリ過給機40の可変ノズル機構35、45の開口面積比(可変ノズル機構35の開口面積/可変ノズル機構45の開口面積)には、通常用いられる使用域がある。この使用域においては、プライマリ過給機30およびセカンダリ過給機40の可変ノズル機構35、45の開口面積比、および、それぞれを通過するガス量の比(mVN1/mVN2)は、図9より、比例の関係と近似することができる。
また、可変ノズル機構35,45の開口面積およびそれぞれの開度は、1対1の関係である。このため、可変ノズル機構35,45の開度は特定できるため、可変ノズル機構35,45それぞれの開口面積は特定できる。このため、可変ノズル機構35,45の開口面積比からそれぞれを通過するガス量の比を特定できる。その結果、可変ノズル機構35,45を通過するガス量の合計は特定できるため、それぞれのガス量mVN1,mVN2を特定でき、ガス量mVN1,mVN2と可変ノズル機構35,45の実開度とから、有効開口面積μAVN1,μAVN2を特定できる。これにより、数式(12)を用いて排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4を推定できる。
次に、ツイン過給モードにおいて排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定する推定式の導出について説明する。図10は、ツイン過給モードにおけるエンジンの排気の流れの概略を示す図である。図10を参照して、ツイン過給モードにおいては、プライマリ過給機30およびセカンダリ過給機40の可変ノズル機構35,45の開度が同じとされる。このため、それぞれを通過するガス量mVN1,mVN2(=mVN1)を特定でき、ガス量mVN1,mVN2と可変ノズル機構35,45の実開度とから、有効開口面積μAVN1,μAVN2(=μAVN1)を特定できる。これにより、数式(12)を用いて排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4を推定できる。
なお、シングル過給モードである場合は、第3制御弁66が閉じているので、セカンダリ過給機40のタービン42を通過する排気の流量は0であるため、数式(12)においてμAVN2=0とすることで、数式(8)と同じとなる。
つまり、共通の数式(12)を用いて、シングル過給モード、ツイン過給モードおよび助走モードにおける排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定することができる。したがって、シングル過給モード、ツイン過給モードおよび助走モードにおいて、それぞれ異なる推定式を用いることなく、特別なセンサなどの部品を追加することなく、排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4を、高精度に推定することができる。そして、エンジン1の制御において、この排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4を用いることができる。
また、シングル過給モード、ツイン過給モードおよび助走モードにおいて、EGRバルブ72を通過するガス量mEGRごとのEGRバルブ72の実開度と有効開口面積μAEGRとの関係を示す共通の2次元マップを用いることができる。したがって、このEGRバルブ72についての2次元マップを、シングル過給モード、ツイン過給モードおよび助走モードのそれぞれについて用意しておくための工数を削減することができる。
また、シングル過給モード、ツイン過給モードおよび助走モードにおいて、可変ノズル機構35,45を通過するガス量mVNごとの可変ノズル機構35,45の実開度と有効開口面積μAVNとの関係を示す共通の2次元マップを用いることができる。したがって、この可変ノズル機構35,45についての2次元マップを、シングル過給モード、ツイン過給モードおよび助走モードのそれぞれについて用意しておくための工数を削減することができる。
これにより、ポンピングロスの推定精度を向上させることができることにより、ポンピングロスの変化によるエンジン1の発生トルクの段差を解消するための燃料の噴射量の補正の精度が上がる。その結果、シングル過給モードだけでなく、ツイン過給モードおよび助走モードにおいても、ドライバビリティを向上できる。
[排気マニホールドの排気の圧力の推定式の導出の変形例]
(1) 前述した実施の形態においては、エンジン1が、2つのバンクを有するV型エンジンや水平対向エンジンであることとした。しかし、これに限定されず、直列エンジンなど他の形式のエンジンでであってもよい。
(2) 前述した実施の形態においては、排気再循環装置を備えるようにした。しかし、これに限定されず、排気再循環装置を備えないようにしてもよい。この場合、数式(12)などの排気再循環装置に関連する項は削除する。
[排気マニホールドの排気の圧力の推定式を用いた可変ノズル機構の制御について]
次に、助走モードにおける排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4の推定式を用いた可変ノズル機構35、45の制御について説明する。
シングル過給モードから助走モードに制御されたときに、過給機の仕事低下による過給圧段差の防止のため、排気マニホールド50A、50Bの圧力を上げるため、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35は閉め側を使用する。しかし、その背反として、急加速時においては助走モード中の排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4が上昇し、制約値を超えてしまう可能性がある。
このため、この実施の形態においては、以下で示すように、圧力P4の推定式を用いて、助走モードに入る前の各部の物理状態から助走モード中の圧力P4を推定し、圧力P4が制約値を超えないようにすることができる可変ノズル機構35の開度を算出する手法を説明する。
図11は、排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4が制約値を超えないように可変ノズル機構35,45の開度を算出する手法の概略を示す図である。図11を参照して、まず、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35のVN開度として仮値を設定する。また、この実施の形態においては、助走モード中のセカンダリ過給機40の可変ノズル機構45のVN開度は、固定開度(=制御全閉(制御し得る最小開度))とする。
図9で示したように、可変ノズル機構35,45の開口面積およびそれぞれの開度は、1対1の関係である。また、プライマリ過給機30およびセカンダリ過給機40の可変ノズル機構35、45の開口面積比、および、それぞれを通過するガス量の比(mVN1/mVN2)は、図9より、比例の関係と近似することができる。これにより、可変ノズル機構35,45のVN開度から、それぞれを通過するガス量の比を特定することができる。このときの可変ノズル機構35,45を通過するガス量の合算値は、助走モード切替え直前の可変ノズル機構35を通過するガス量の値とする。これにより、可変ノズル機構35、45を通過するガス量G4_1st,G4_2ndを算出できる。
プライマリ過給機30の可変ノズル機構35のVN開度および通過するガス量G4_1stから、可変ノズル機構35を通過するガス量mVNごとの可変ノズル機構35の実開度と有効開口面積μAVNとの関係を示す2次元マップを用いて、有効開口面積μAVN1を特定できる。
同様に、セカンダリ過給機40の可変ノズル機構45のVN開度および通過するガス量G4_2ndから、可変ノズル機構45を通過するガス量mVNごとの可変ノズル機構45の実開度と有効開口面積μAVNとの関係を示す2次元マップを用いて、有効開口面積μAVN2を特定できる。
数式(12)で示した排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4の推定式に、μAVN1およびμAVN2、ならびに、その他のセンサ値および推定値を代入してP4の推定値を算出できる。このP4の推定値がP4のクライテリア(制約値)を超える場合は、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35のVN開度を開き側に変更して、再度、P4の推定値を算出する。この繰返し演算により、よりクライテリアに近く、かつ、クライテリア未満となる可変ノズル機構35のVN開度を見つけ、助走モード中の可変ノズル機構35のVN開度の指令値とすることで、助走モード中のP4を制御する。
図12は、この実施の形態における助走中VN開度算出処理の流れを示すフローチャートである。この助走中VN開度算出処理は、上位の処理から所定周期ごとに呼出されて実行される。図12を参照して、制御装置200は、過給モードフラグがシングル過給モードを示す値から助走モードを示す値に変更されたか否かを判断する(ステップS111)。変更されていない(ステップS111でNO)と判断した場合、制御装置200は、実行する処理をこの処理の呼出元の上位の処理に戻す。
過給モードフラグがシングル過給モードを示す値から助走モードを示す値に変更された(ステップS111でYES)と判断した場合、制御装置200は、吸気マニホールド圧Pim,タービン後圧力P6,各気筒12A,12Bに流れ込む空気の単位時間当りの流量Gcyl,各気筒12A,12Bへの単位時間当りの燃料の噴射量Gfを特定する(ステップS112)。
次に、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35のVN開度の仮値をベース開度に設定する(ステップS113)。ベース開度は、タービンの仕事および効率から決まる最適開度である。この開度より閉め側では、過給圧段差が悪化し、性能低下してしまうため、助走モード中のVN開度の上限開度をベース開度として考える。
次いで、制御装置200は、図11で説明した方法で、可変ノズル機構35、45を通過するガス量G4_1st,G4_2ndを算出し(ステップS114)、数式(12)で示した排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4の推定式を用いて推定圧力P4を算出する(ステップS115)。
そして、制御装置200は、ステップS115での圧力P4の演算が規定回目であるか否かを判断する(ステップS121)。規定回目でない(ステップS121でNO)と判断した場合、制御装置200は、ステップS115での圧力P4の演算が1回目であるか否かを判断する(ステップS122)。
圧力P4の演算が1回目である(ステップS122でYES)と判断した場合、制御装置200は、推定P4がP4の制約値未満であるか否かを判断する(ステップS123)。圧力P4の演算が1回目でない(ステップS122でNO)と判断した場合、および、推定P4がP4の制約値以上である(ステップS123でYES)と判断した場合、制御装置200は、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35のVN開度の仮値を更新し(ステップS124)、ステップS114からの処理を繰返す。
Figure 0007159980000013
表1は、VN仮値の更新を説明するための一例である。VN開度の仮値の最初の更新においては、VN開度を最も開き側(40%)とする。その後の更新においては、VN開度を前々回のP4の演算と前回のP4の演算との間(この実施の形態では中央)の値とする。
そして、前々回のVN開度と前回のVN開度と今回のVN開度とのそれぞれに対応する推定圧力P4について、前々回のVN開度に対応する推定圧力P4と、今回のVN開度に対応する推定圧力P4との間に、制約値(この実施の形態においては400kPa)が含まれる場合、前々回のVN開度と今回のVN開度との間(この実施の形態では中央)の値を、次回のVN開度とし、前回のVN開度に対応する推定圧力P4と、今回のVN開度に対応する推定圧力P4との間に、制約値(この実施の形態においては400kPa)が含まれる場合、前回のVN開度と今回のVN開度との間(この実施の形態では中央)の値を、次回のVN開度とする。
たとえば、前々回のP4の演算時のVN開度が80%であり、前回のP4の演算時のVN開度が40%である場合、VN開度を(80+40)/2=60%とする。そして、前々回のVN開度80%に対する推定P4=430kPaであり、前回のVN開度40%に対する推定P4=280kPaであり、今回のVN開度60%に対する推定P4=310kPaであるので、制約値である400kPaは、前々回のVN開度80%と今回のVN開度60%との間の値と考えられるため、前々回のVN開度80%と今回のVN開度60%との中央の値である(80+60)/2=70%を次のVN開度とする。
このようにVN開度を更新することで、7回目のP4の演算時のVN開度と8回目のP4の演算時のVN開度との差が1.00%未満となる。この実施の形態においては、VN開度の差が1.00%未満である場合、推定P4の差があまりないと考えて、8回を規定回としている。
そして、更新したVN開度の仮値に対して、ステップS115で推定P4を算出する。圧力P4の演算が規定回目である(ステップS121でYES)と判断した場合、および、演算が1回目であり推定P4がP4の制約値未満である(ステップS123でYES)と判断した場合、制御装置200は、助走モード中のプライマリ過給機30の可変ノズル機構35のVN開度の指令開度を、そのときの演算で用いた仮値とする(ステップS125)。その後、制御装置200は、実行する処理をこの処理の呼出元の上位の処理に戻す。
助走モードにおいては、制御装置200は、算出された指令開度となるように、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35の開度を制御する。
たとえば、規定回の2回前のP4の演算時のVN開度が77.5%であり、規定回の1回前のP4の演算時のVN開度が78.75である場合、規定回のVN開度を(77.5+78.75)/2≒78.13%に更新する。そして、規定回の2回前のVN開度77.5%に対する推定P4=390kPaであり、規定回の1回前のVN開度78.75%に対する推定P4=410kPaであり、規定回のVN開度78.13に対する推定P4=402kPaであるので、制約値である400kPaは、規定回の2回前のVN開度77.5%と規定回のVN開度78.13%との間の値と考えられる。制約値400kPaは、77.5%と78.13%との間のVN開度に対応すると考えられるため、制約値を超えない推定P4=390kPaに対応するVN開度77.5%を指令開度とする。
これにより、排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4が制約値を超えない範囲で、できるだけ上げることができる。このため、数式(13)で示されるように、タービン仕事が上昇し、コンプレッサ仕事が上昇し、プライマリ過給機30の過給圧Ppの低下を抑制できる。
Figure 0007159980000014
なお、Cpg:定圧比熱(=0.26)、κ:排気の比熱比(1.33)、G4:過給機を通過する排気の流量、T4:排気マニホールド50A、50Bの排気の温度、P4:排気マニホールド50A、50Bの圧力、P6:タービン後の圧力である。
このようにVN開度の仮値を更新しながら繰返して推定P4を算出することで、VN開度の刻みが小さくなっていき、VN開度を制御可能な必要精度まで計算が可能であり、かつ、よりP4の制約値に近く、制約値未満の推定P4の算出が可能となる。これにより、助走モード直前のシングル過給モード時の物理量から算出した推定P4を用いて、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35のVN開度をフィードフォワード(F/F)制御することで、第3制御弁66が開かれ、セカンダリ過給機40のタービン42への排気の流量が増える助走モードに入った際の排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4を制御できる。
これにより、助走モード中の排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4を制御することで、どんな運転がされたときであっても、助走モードへの切替え時の過給圧段差を最小にすることができる。したがって、特別なセンサなどの部品を追加することなく、過給圧段差を低減することができ、排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4が制約値を超えないようにできる。また、ドライバビリティを向上でき、エンジン1の制御の信頼性を確保することができる。
[可変ノズル機構の制御における変形例]
(1) ここでは、助走モードにおける制御について説明したが、シングル過給モードおよびツイン過給モードにおいても上述の可変ノズル機構の制御を用いることができる。
(2) ここでは、セカンダリ過給機40の可変ノズル機構45のVN開度を最も閉じ側の固定開度とした。しかし、これに限定されず、セカンダリ過給機40の可変ノズル機構45のVN開度を、最も閉じ側とは異なる固定開度としてもよいし、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35のVN開度と同様に算出してもよい。
(3) ここでは、図11および図12で説明した最適化方法で、排気マニホールド50A,50Bの排気の最適な圧力、および、その最適な圧力に対応するプライマリ過給機30の可変ノズル機構35の最適なVN開度を算出するようにした。しかし、これに限定されず、排気マニホールド50A、50Bの最適な圧力および可変ノズル機構35の最適なVN開度は、他の方法で最適化するようにしてもよい。
[まとめ]
(1-1) 図1から図4で示したように、過給システムは、エンジン1から排出される排気によって駆動されるタービン32と、タービン32へ流入する排気の流速を開度によって調整する可変ノズル機構35とを含み、エンジン1への吸気を過給するプライマリ過給機30と、エンジン1から排出される排気によって駆動されるタービン42と、タービン42へ流入する排気の流速を開度によって調整する可変ノズル機構45とを含み、エンジン1への吸気を過給するセカンダリ過給機40と、プライマリ過給機30において過給された空気がエンジン1に供給されるシングル過給モードと、プライマリ過給機30において過給された空気とセカンダリ過給機40において過給された空気とがエンジン1に供給されるツイン過給モードとのうちのいずれか一方から他方に過給モードを切替える制御装置200とを備える。
図5から図10で示したように、制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードに切替える前に、セカンダリ過給機40に排気を供給しつつ、セカンダリ過給機40によって過給された空気をプライマリ過給機30に供給する助走モードに切替え、シングル過給モード、ツイン過給モードおよび助走モードにおいて排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定する数式(12)で示される共通の推定式を用いて排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を算出し、算出した排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を用いてエンジンを制御する。これにより、過給機を並列で備える過給システムにおいて排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定できる。
(1-2) 図5から図10で示したように、制御装置200は、プライマリ過給機30のタービン32およびセカンダリ過給機40のタービン42の後で合流した排気の圧力P6を、数式(12)で示される推定式に代入して排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を算出する。これにより、特定可能なタービン後の圧力P6から排気マニホールド50A、50Bの圧力P4を算出できる。
(1-3) 図1から図4で示したように、エンジン1の排気の一部をエンジン1の吸気として還流させる還流路73,74を有する排気再循環装置をさらに備える。これにより、エンジン1の効率を向上できる排気再循環装置を備える場合であっても排気マニホールド50A、50Bの排気の圧力P4を推定できる。
(1-4) 図5から図10で示したように、制御装置200は、プライマリ過給機30のタービン32およびセカンダリ過給機40のタービン42の後で合流した排気の圧力P6および還流路73,74の排気の圧力Pimを、数式(12)で示される推定式に代入して排気マニホールドの排気の圧力P4を算出する。これにより、特定可能なタービン後の圧力P6および排気再循環装置の還流路73,74の排気の圧力Pimから排気マニホールド50A、50Bの圧力P4を算出できる。
(1-5) 図1から図4で示したように、排気再循環装置は、還流路73,74に備えられ還流される排気の量を調整するEGRバルブ72を含む。図5から図10で示したように、数式(12)で示される推定式は、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35、セカンダリ過給機40の可変ノズル機構45、および、EGRバルブ72のそれぞれについての数式(9)、数式(10)および数式(6)のノズル式ならびに質量保存則から構築される。
(1-6) 図7から図9で示したように、制御装置200は、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35およびセカンダリ過給機40の可変ノズル機構45の開口面積比(可変ノズル機構35の開口面積/可変ノズル機構45の開口面積)から、可変ノズル機構35および可変ノズル機構45のそれぞれに分配される排気流量の比(mVN1/mVN2)を特定し、エンジンから排出される排気流量、ならびに、第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構のそれぞれに分配される排気流量の比(mVN1/mVN2)から、第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構のそれぞれに分配される排気流量mVN1,mVN2を特定し、特定した第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構それぞれに分配される排気流量mVN1,mVN2、および、第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構それぞれの開度から、第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構の有効開口面積μAVN1,μAVN2を特定し、特定した第1可変ノズル機構および第2可変ノズル機構それぞれの有効開口面積μAVN1,μAVN2を、数式(12)で示される推定式に代入して排気マニホールドの排気の圧力P4を算出する。
(2-1) 図1から図4で示したように、過給システムは、エンジン1から排出される排気によって駆動されるタービン32と、タービン32へ流入する排気の流速を開度によって調整する可変ノズル機構35とを含み、エンジン1への吸気を過給するプライマリ過給機30と、エンジン1から排出される排気によって駆動されるタービン42と、タービン42へ流入する排気の流速を開度によって調整する可変ノズル機構45とを含み、エンジン1への吸気を過給するセカンダリ過給機40と、プライマリ過給機30において過給された空気がエンジン1に供給されるシングル過給モードと、プライマリ過給機30において過給された空気とセカンダリ過給機40において過給された空気とがエンジン1に供給されるツイン過給モードとのうちのいずれか一方から他方に過給モードを切替える制御装置200とを備える。
図11および図12で示したように、制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードに切替える前に、セカンダリ過給機40に排気を供給しつつ、セカンダリ過給機40によって過給された空気をプライマリ過給機30に供給する助走モードに切替え、助走モードの開始時に、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35およびセカンダリ過給機40の可変ノズル機構45それぞれの開度から排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4を推定する推定式を用いて、排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4が制約値を超えないように、可変ノズル機構35,45それぞれの開度を特定し、可変ノズル機構35,45それぞれの開度を、特定した開度となるよう制御する。これにより、過給機を並列で備える過給システムにおいて、付加的な構成を設けることなく、排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力P4が高まり過ぎないようにすることができる。
(2-2) 図11で示したように、制御装置200は、セカンダリ過給機40の可変ノズル機構45のVN開度を制御可能な開度のうち最も閉じ側の開度と特定する。これにより、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35のVN開度を算出しやすくできる。
(2-3) 図11および図12で示したように、制御装置200は、プライマリ過給機30の可変ノズル機構35の第1開度と第1開度より開き側の第2開度と第1開度および第2開度の間の第3開度とのそれぞれに対応する排気マニホールド50A,50Bの排気の圧力である第1圧力、第2圧力および第3圧力を算出し、第1圧力と第3圧力との間に制限値が含まれる場合、当該第3圧力に対応する第3開度を新たな第2開度に変更し、第3圧力と第2圧力との間に制限値が含まれる場合、当該第3圧力に対応する第3開度を新たな第1開度に変更し、第1開度と第3開度との差および第3開度と第2開度との差が所定値未満となったときの第1圧力、第2圧力および第3圧力のうち制限値を超えず最も大きい圧力に対応する開度を、可変ノズル機構35のVN開度として特定する。これにより、最適なVN開度を効率よく特定することができる。
今回開示された各実施の形態は、適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 エンジン、10A,10B バンク、12A,12B 気筒、20 エアクリーナ、21,22,23,27A,27B,37,47 吸気管、25 インタークーラ、28A,28B 吸気マニホールド、30 プライマリ過給機、31,41 コンプレッサ、32,42 タービン、33,43 コンプレッサホイール、34,44 タービンホイール、35,45 可変ノズル機構、36,46 回転軸、40 セカンダリ過給機、48 還流管、50,50A,50B 排気マニホールド、51A,51B,52A,52B,53A,53B 排気管、62 第1制御弁、64 第2制御弁、66 第3制御弁、68 ディーゼルスロットル、71 EGRクーラ、72 EGRバルブ、73,74 還流路、81 排気処理装置、102 エアフローメータ、106 第1圧力センサ、108 第2圧力センサ、114 温度センサ、118 第3圧力センサ、200 制御装置。

Claims (4)

  1. エンジンから排出される排気によって駆動される第1タービンと、前記第1タービンへ流入する排気の流速を開度によって調整する第1可変ノズル機構とを含み、前記エンジンへの吸気を過給する第1過給機と、
    前記エンジンから排出される排気によって駆動される第2タービンと、前記第2タービンへ流入する排気の流速を開度によって調整する第2可変ノズル機構とを含み、前記エンジンへの吸気を過給する第2過給機と、
    前記第1過給機において過給された空気が前記エンジンに供給されるシングル過給モードと、前記第1過給機において過給された空気と前記第2過給機において過給された空気とが前記エンジンに供給されるツイン過給モードとのうちのいずれか一方から他方に過給モードを切替える制御装置と、
    前記エンジンの排気の一部を前記エンジンの吸気として還流させる還流路を有する排気再循環装置とを備え、
    前記排気再循環装置は、前記還流路に備えられ還流される排気の量を調整するバルブを含み、
    前記制御装置は、
    前記シングル過給モードから前記ツイン過給モードに切替える前に、前記第2過給機に排気を供給しつつ、前記第2過給機によって過給された空気を前記第1過給機に供給する助走運転モードに切替え、
    前記シングル過給モード、前記ツイン過給モードおよび前記助走運転モードにおいて排気マニホールドの排気の圧力を推定する共通の推定式を用いて前記排気マニホールドの排気の圧力を算出し、
    算出した前記排気マニホールドの排気の圧力を用いて前記エンジンを制御
    前記推定式は、前記第1可変ノズル機構、前記第2可変ノズル機構および前記バルブのそれぞれについてのノズル式ならびに質量保存則から構築される、過給システム。
  2. エンジンから排出される排気によって駆動される第1タービンと、前記第1タービンへ流入する排気の流速を開度によって調整する第1可変ノズル機構とを含み、前記エンジンへの吸気を過給する第1過給機と、
    前記エンジンから排出される排気によって駆動される第2タービンと、前記第2タービンへ流入する排気の流速を開度によって調整する第2可変ノズル機構とを含み、前記エンジンへの吸気を過給する第2過給機と、
    前記第1過給機において過給された空気が前記エンジンに供給されるシングル過給モードと、前記第1過給機において過給された空気と前記第2過給機において過給された空気とが前記エンジンに供給されるツイン過給モードとのうちのいずれか一方から他方に過給モードを切替える制御装置とを備え、
    前記制御装置は、
    前記シングル過給モードから前記ツイン過給モードに切替える前に、前記第2過給機に排気を供給しつつ、前記第2過給機によって過給された空気を前記第1過給機に供給する助走運転モードに切替え、
    前記第1可変ノズル機構および前記第2可変ノズル機構の開口面積比から、前記第1可変ノズル機構および前記第2可変ノズル機構のそれぞれに分配される排気流量の比を特定し、
    前記エンジンから排出される排気流量、ならびに、前記第1可変ノズル機構および前記第2可変ノズル機構のそれぞれに分配される排気流量の比から、前記第1可変ノズル機構および前記第2可変ノズル機構のそれぞれに分配される排気流量を特定し、
    特定した前記第1可変ノズル機構および前記第2可変ノズル機構それぞれに分配される排気流量、および、前記第1可変ノズル機構および前記第2可変ノズル機構それぞれの開度から、前記第1可変ノズル機構および前記第2可変ノズル機構の有効開口面積を特定し、
    特定した前記第1可変ノズル機構および前記第2可変ノズル機構それぞれの有効開口面積を、前記シングル過給モード、前記ツイン過給モードおよび前記助走運転モードにおいて排気マニホールドの排気の圧力を推定する共通の推定式に代入して前記排気マニホールドの排気の圧力を算出し、
    算出した前記排気マニホールドの排気の圧力を用いて前記エンジンを制御する、過給システム。
  3. 前記制御装置は、前記第1タービンおよび前記第2タービンの後で合流した排気の圧力を前記推定式に代入して前記排気マニホールドの排気の圧力を算出する、請求項1または請求項2に記載の過給システム。
  4. 前記制御装置は、前記第1タービンおよび前記第2タービンの後で合流した排気の圧力および前記還流路の排気の圧力を前記推定式に代入して前記排気マニホールドの排気の圧力を算出する、請求項に記載の過給システム。
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