以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
図1は、本実施の形態に係るエンジン1の概略構成の一例を示す図である。図1を参照して、このエンジン1は、たとえば走行のための駆動源として車両に搭載される。本実施の形態においては、エンジン1は、ディーゼルエンジンである場合を一例として説明するが、たとえば、ガソリンエンジンであってもよい。
エンジン1は、バンク10A,10Bと、エアクリーナ20と、インタークーラ25と、吸気マニホールド28A,28Bと、過給機30,40と、排気マニホールド50A,50Bと、排気処理装置81と、制御装置200とを備える。
バンク10Aには、複数の気筒12Aが形成される。バンク10Bには、複数の気筒12Bが形成される。各気筒12A,12B内にはピストン(図示せず)が収納されており、ピストンの頂部と気筒の内壁とによって燃焼室(燃料が燃焼する空間)が形成されている。各気筒12A,12B内をピストンが摺動することによって燃焼室の容積が変化される。各気筒12A,12Bには、インジェクタ(図示せず)が設けられており、エンジン1の動作中においては、制御装置200によって設定されたタイミングおよび量の燃料を各気筒12A,12B内に噴射する。なお、制御装置200は、たとえば、アクセルペダルの踏み込み量や車両の速度から、各インジェクタから噴射する燃料の噴射量およびタイミングを設定する。
各気筒12A,12Bのピストンは、コネクティングロッドを介して共通のクランクシャフト(図示せず)に連結される。各気筒12A,12B内において所定の順序で燃料が燃焼することによってピストンが各気筒12A,12B内を摺動し、ピストンの上下運動がコネクティングロッドを経由してクランクシャフトの回転運動に変換される。
過給機30は、コンプレッサ31とタービン32とを含むターボチャージャーである。過給機30のコンプレッサ31は、エンジン1の吸気通路(すなわち、エアクリーナ20から吸気マニホールド28A,28Bまでの通路)に設けられる。過給機30のタービン32は、エンジン1の排気通路(すなわち、排気マニホールド50A,50Bから排気処理装置81までの通路)に設けられる。
コンプレッサ31内には、コンプレッサホイール33が回転自在に収納される。タービン32内には、タービンホイール34と可変ノズル機構35とが設けられ、タービンホイール34は、回転自在にタービン32内に収納される。コンプレッサホイール33と、タービンホイール34とは、回転軸36によって連結されており、一体的に回転する。コンプレッサホイール33は、タービンホイール34に供給される排気のエネルギー(排気エネルギー)によって回転駆動される。
可変ノズル機構35は、タービンホイール34の外周側に配置され、排気流入口から供給される排気をタービンホイール34に導く複数のノズルベーン(図示せず)と、複数のノズルベーンの各々を回転させることによって隣接するベーン間の隙間(以下の説明においてこの隙間をVN開度と記載する)を変化させる駆動装置(図示せず)とを含む。駆動装置は、たとえば、制御装置200からの動作指令に応じてノズルベーンを回転させて、開度を変化させる。
過給機40は、コンプレッサ41とタービン42とを含むターボチャージャーである。過給機40のコンプレッサ41は、エンジン1の吸気通路において、コンプレッサ31に並列して設けられ、エンジン1の吸気を過給する。過給機40のタービン42は、エンジン1の排気通路に設けられる。
コンプレッサ41内には、コンプレッサホイール43が回転自在に収納される。タービン42内には、タービンホイール44と可変ノズル機構45とが設けられ、タービンホイール44は、回転自在にタービン42内に収納される。コンプレッサホイール43と、タービンホイール44とは、回転軸46によって連結されており、一体的に回転する。コンプレッサホイール43は、タービンホイール44に供給される排気エネルギーによって回転駆動される。なお、可変ノズル機構45は、可変ノズル機構35と同様の構成を有するため、その詳細な説明は繰り返さない。
エアクリーナ20は、吸気口(図示せず)から吸入された空気から異物を除去する。エアクリーナ20には、吸気管23の一方端が接続される。吸気管23の他方端は、分岐して吸気管21の一方端および吸気管22の一方端に接続される。
吸気管21の他方端は、過給機30のコンプレッサ31の吸気流入口に接続される。過給機30のコンプレッサ31の吸気流出口は、吸気管37の一方端に接続される。吸気管37の他方端は、インタークーラ25に接続される。コンプレッサ31は、コンプレッサホイール33の回転によって吸気管21を通じて吸入される空気を過給して吸気管37に供給する。
吸気管22の他方端は、過給機40のコンプレッサ41の吸気流入口に接続される。過給機40のコンプレッサ41の吸気流出口は、吸気管47の一方端に接続される。吸気管47の他方端は、吸気管37の途中の接続部P3に接続される。コンプレッサ41は、コンプレッサホイール43の回転によって吸気管22を通じて吸入される空気を過給して吸気管47に供給する。
吸気管47の途中には制御弁62が設けられている。制御弁62は、たとえば、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリーオフのVSV(負圧切換弁)である。
また、吸気管47において制御弁62よりも上流側(コンプレッサ41側)に位置する接続部P4に、還流管48の一方端が接続されている。また、還流管48の他方端は吸気管21に接続されている。還流管48は、吸気管47を流れる空気の少なくとも一部を過給機のコンプレッサ(たとえば、コンプレッサ31)よりも上流側に還流させるための通路である。還流管48を通じて吸気管21に還流した空気は、コンプレッサ31に供給される。
還流管48の途中には制御弁64が設けられている。還流管48を通じて還流する空気の量は、制御弁64によって変更可能である。制御弁64は、たとえば、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリーオフの電磁弁(ソレノイドバルブ)である。
接続部P3には、コンプレッサ31によって過給された空気と、コンプレッサ41によって過給され制御弁62を通過した空気とが供給される。これらの空気は、接続部P3で合流してインタークーラ25に流入する。
インタークーラ25は、流入した空気を冷却するように構成される。インタークーラ25は、たとえば空冷式又は水冷式の熱交換器である。インタークーラ25には、2カ所の吸気流出口が設けられる。インタークーラ25の一方の出口には、吸気管27Aの一方端が接続される。吸気管27Aの他方端は、吸気マニホールド28Aに接続される。インタークーラ25の他方の出口には、吸気管27Bの一方端が接続される。吸気管27Bの他方端は、吸気マニホールド28Bに接続される。
吸気マニホールド28A、28Bは、それぞれバンク10A、10Bにおける気筒12A、12Bの吸気ポート(図示せず)に連結される。一方、排気マニホールド50A,50Bは、それぞれバンク10A,10Bにおける気筒12A,12Bの排気ポート(図示せず)に連結される。
各気筒12A,12Bの燃焼室から排気ポートを通じて気筒外に排出された排気(燃焼後のガス)は、エンジン1の排気通路を経由して車外に排出される。上記の排気通路は、排気マニホールド50A,50B、排気管51A,51Bと、接続部P1と、排気管52A,52B,53A,53Bと、合流部P2とを含む。排気管51Aの一方端は、排気マニホールド50Aに接続される。排気管51Bの一方端は、排気マニホールド50Bに接続される。排気管51Aの他方端と、排気管51Bの他方端とは、接続部P1において一旦合流した後に、分岐して排気管52Aの一方端および排気管52Bの一方端に接続される。
排気管52Aの他方端は、タービン32の排気流入口に接続される。タービン32の排気流出口には、排気管53Aの一方端が接続される。排気管52Bの他方端は、タービン42の排気流入口に接続される。タービン42の排気流出口には、排気管53Bの一方端が接続される。
排気管52Bの途中には制御弁66が設けられる。制御弁66は、たとえば、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるノーマリーオンのVSV(負圧切替弁)である。
排気管53Aの他方端と排気管53Bの他方端とは、接続部P2において合流し、排気処理装置81に接続される。排気処理装置81は、たとえば、SCR触媒、酸化触媒、あるいは、PM除去フィルタ等によって構成され、排気管53Aおよび排気管53Bから流通する排気を浄化する。
エンジン1の動作は、制御装置200によって制御される。制御装置200は、各種処理を行なうCPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよびデータを記憶するROM(Read Only Memory)およびCPUの処理結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を含むメモリと、外部との情報のやり取りを行なうための入・出力ポート(いずれも図示せず)とを含む。入力ポートには、各種センサ類(たとえば、エアフローメータ102、エンジン回転数センサ104等)が接続される。出力ポートには、制御対象となる機器(たとえば、複数のインジェクタ、可変ノズル機構35,45等)が接続される。
制御装置200は、各センサおよび機器からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジン1が所望の運転状態となるように各種機器を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。また、制御装置200には、時間の計測を行うためのタイマー回路(図示せず)が内蔵されている。
エアフローメータ102は、吸入空気量Qinを検出する。エアフローメータ102は、検出した吸入空気量Qinを示す信号を制御装置200に送信する。
エンジン回転数センサ104は、エンジン回転数NEを検出する。エンジン回転数センサ104は、検出したエンジン回転数NEを示す信号を制御装置200に送信する。
本実施の形態において、過給機30,40と制御装置200とによって「過給システム」が構成される。
制御装置200は、制御弁62,64,66を制御することにより、過給機30(プライマリターボ)のみで過給を行なうシングル過給モードと、過給機30(プライマリターボ)および過給機40(セカンダリターボ)の両方で過給を行なうツイン過給モードとのうちのいずれか一方から他方に切り替える切替制御を実行可能に構成される。
制御装置200は、シングル過給モードにおいて、制御弁62,64,66をいずれも閉状態(オフ状態)にする。これにより、排気マニホールド50A,50Bを流通する排気は、過給機30のタービン32に流れる。タービンホイール34の回転にともなってコンプレッサホイール33が回転する。コンプレッサ31から吐出された吸気は、インタークーラ25に供給される。
制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードへの切替時には、たとえば、制御弁64,66の両方を開状態(オン状態)にする。これにより、過給機40の助走運転が行なわれる。すなわち、排気マニホールド50A,50Bを流通する排気は、過給機30のタービン32および過給機40のタービン42に流れる。タービンホイール34,44の回転にともなってコンプレッサホイール33,43が回転する。コンプレッサ31から吐出された吸気は、インタークーラ25に供給される。コンプレッサ41から吐出された吸気は、還流管48を経由して吸気管21に戻される。
制御装置200は、助走運転中における過給機40の過給能力が十分高くなったタイミングで、制御弁62を開状態(オン状態)にするとともに、制御弁64を閉状態(オフ状態)にすることによって、コンプレッサ41から吐出された吸気についてもインタークーラ25に供給されるようにする。このように過給機30,40の両方で過給が行なわれることによって、ツイン過給モードへの切替制御が完了する。
上述のような構成を有するエンジン1においては、制御装置200は、たとえば、シングル過給モードで作動する過給機30の回転数に基づいてシングル過給モードとツイン過給モードとの間での切替が要求されるか否かの判定を行なう。
より具体的には、制御装置200は、たとえば、シングル過給モードの選択中において、過給機30の回転数NTがしきい値NT(0)に到達する場合に、ツイン過給モードへの切替要求があると判定する。このとき、制御装置200は、ツイン過給モードへの切替要求フラグをオン状態にする。
あるいは、制御装置200は、ツイン過給モードの選択中において、過給機30の回転数NTがしきい値NT(0)未満になる場合に、シングル過給モードへの切替要求があると判定する。このとき、制御装置200は、シングル過給モードへの切替要求フラグをオン状態にする。
図2は、過給モードの切り替えについて説明するためのコンプレッサマップの一例を示す図である。図2の縦軸は、圧力比(過給機30のコンプレッサ31における吸入圧力に対する吐出圧力の比)を示す。図2の横軸は、過給機30のコンプレッサ31への吸入空気量を示す。図2の太実線は、過給機30においてサージングが発生しやすいサージ領域との境界線(サージライン)を示す。図2の細実線は、過給機30の過回転領域との境界線(過回転ライン)を示す。図2の一点鎖線は、過給機30の作動効率が低下するチョーク領域との境界線(チョークライン)を示す。以下の説明においては、サージラインよりも左側の領域をサージ領域と称し、過回転ラインよりも右側の領域を過回転領域と称し、回転ラインとチョークラインと横軸とによって囲まれた領域をチョーク領域と称する。
図2の破線は、サージラインと過回転ラインとチョークラインとによって囲まれた予め定められた領域内に設定された切替ラインを示す。切替ラインは、過給機30の等回転数ラインであって、過給モードを切り替えるための過給機30の回転数NTのしきい値NT(0)の等回転数ラインである。
たとえば、シングル過給モードの選択中において(シングル過給モードの選択フラグがオン状態である場合)、過給機30の圧力比と吸入空気量とによって特定される動作点が、図2の矢印に沿って変化する場合を想定する。
制御装置200は、エンジン回転数NE、過給機30の回転数、吸入空気量および過給圧等を用いて動作点を推定する。制御装置200は、たとえば、吸入空気の温度等を用いてエアフローメータ102によって検出される吸入空気量を補正して、過給機30の吸入空気量を推定してもよい。
制御装置200は、過給機30の動作点が切替ライン上の図2のA点に到達する場合に(すなわち、過給機30の回転数NTがしきい値NT(0)に到達する場合に)、ツイン過給モードへの切替要求があると判定する。このとき、制御装置200は、ツイン過給モードへの切替要求フラグをオン状態にする。
制御装置200は、ツイン過給モードへの切替要求があると判定される場合には、ツイン過給モードへの切替制御を実行する。制御装置200は、たとえば、過給モードがツイン過給モードに切り替えられた場合には、シングル過給モードの選択フラグをオフ状態にするとともに、ツイン過給モードの選択フラグをオン状態にする。
しかしながら、過給機30の作動状態(すなわち、図2に示すコンプレッサマップ上の動作点の位置)によっては、過給モードをツイン過給モードに切り替えると、図2のA’点に示すように過給機30の動作点が図2の破線矢印の方向に移動し、サージ領域内に変化する場合がある。このような動作点に変化することによって、過給機30の作動安定性が悪化する可能性がある。
これは、ツイン過給モードに切り替えられることで、エアクリーナ20を流通する吸入空気が過給機30,40に流通することになるため、過給機30における吸入空気量がシングル過給モードでの吸入空気量の約半分になることによって動作点が変化するためである。
ツイン過給モードからシングル過給モードへの切替時においても同様に過給機30における吸入空気量が過給モードの切り替え後に約2倍になることによって動作点が変化する。そのため、過給機30の動作点がチョーク領域内に変化する場合がある。このような動作点に変化することによって、過給機30の作動効率が悪化する可能性がある。あるいは動作点が過回転領域内に変化することによって、過給機30が過回転状態になる可能性がある。
そこで、本実施の形態においては、制御装置200は、切替制御の実行が要求される場合に、過給機30における圧力比と、過給機30における吸入空気量と、過給機30の回転数とのうちの少なくとも2つのパラメータによって特定されるコンプレッサマップ上の動作点が、過給モードの切替制御の実行後に、予め定められた領域よりもサージングが発生しやすい第1領域(サージ領域)と、予め定められた領域よりも作動効率が低い第2領域(チョーク領域)と、過給機30が過回転状態となる第3領域(過回転領域)とのうちのいずれかの領域に変化することが推定されるときには、過給モードの切替制御の実行を禁止するものとする。
このようにすると、過給モードが切り替えられるときに過給機30のコンプレッサマップ上の動作点がサージ領域、チョーク領域あるいは過回転領域に変化することが抑制される。そのため、切替制御の実行によってサージングが発生したり、作動効率が低下したりすることを抑制することができる。そのため、作動安定性や作動効率を悪化させることなく過給モードの切り替えを行なうことができる。
以下、図3を参照して、本実施の形態における制御装置200で実行される処理について説明する。図3は、制御装置200で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の制御周期毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、制御装置200は、過給モードがシングル過給モードであるか否かを判定する。制御装置200は、たとえば、シングル過給モードの選択フラグがオン状態である場合には、過給モードがシングル過給モードであると判定する。制御装置200は、たとえば、ツイン過給モードの選択フラグがオン状態である場合には、過給モードがシングル過給モードでないと判定する。過給モードがシングル過給モードであると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。
S102にて、制御装置200は、過給機30の動作点がチョーク領域または過回転領域に突入するか否かを判定する。具体的には、制御装置200は、たとえば、コンプレッサマップ上における過給機30の現在の動作点の位置を特定し、特定された動作点と前回特定された動作点とから動作点の移動速度と、移動方向とを特定する。制御装置200は、特定された動作点の位置がチョークライン上であって、かつ、移動方向がチョーク領域の方向である場合に、過給機30の動作点がチョーク領域に突入すると判定する。あるいは、制御装置200は、特定された動作点の位置と、移動速度と、移動方向とから予め定められた時間経過後に動作点が過回転領域内に移動すると判定する場合に、過給機30の動作点が過回転領域に突入すると判定してもよいし、特定された動作点の位置が切替ライン状態であって、かつ、移動方向が過回転領域の方向である場合に、過給機30の動作点が過回転領域に突入すると判定してもよい。過給機30の動作点がチョーク領域または過回転領域に突入すると判定される場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。
S104にて、制御装置200は、ツイン過給モードへの切り替え後に動作点がサージ領域に突入するか否かを判定する。
具体的には、制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードに過給モードを切り替えたことを想定した場合の、コンプレッサマップ上の現在の動作点からの移動先の動作点を推定する。制御装置200は、推定された動作点がサージ領域内である場合には、ツイン過給モードへの切替後に動作点がサージ領域に突入すると判定する。
制御装置200は、たとえば、シングル過給モードからツイン過給モードに過給モードを切り替えた場合には、過給機30において吸入空気量が半分になることを想定して、移動先の動作点を推定する。ツイン過給モードへの切り替え後にサージ領域に突入すると判定される場合(S104にてYES)、処理はS106に移される。
S106にて、制御装置200は、過給機30の動作点がチョーク領域および過回転領域に突入しないようにVN開度を調整する。制御装置200は、たとえば、S102においてチョーク領域に突入すると判定される場合であって、かつ、VN開度を小さくすることで動作点を予め定められた領域内でチョーク領域から乖離するように変化させることができる場合には、VN開度を現在の開度から所定開度だけ小さくすることによって排気流速を増加させて過給圧を増加させる。これにより、圧力比を増加させて、コンプレッサマップ上の動作点を、チョーク領域から乖離するようにVN開度を調整してもよい。あるいは、制御装置200は、たとえば、S102において過回転領域に突入すると判定される場合であって、かつ、VN開度を大きくすることで動作点を予め定められた領域内で過回転領域から乖離するように変化させることができる場合には、VN開度を現在の開度から所定開度だけ大きくすることによって排気流速を減少させて過給圧を減少させる。これにより、圧力比を減少させて、コンプレッサマップ上の動作点を、過回転領域から乖離するようにVN開度を調整してもよい。
なお、S104にて、ツイン過給モードへの切替後にサージ領域に突入しないと判定される場合(S104にてNO)、処理はS108に移される。S108にて、制御装置200は、シングル過給モードからツイン過給モードに過給モードを切り替える。切替制御については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。また、S102にて、過給機30の動作点がチョーク領域にも過回転領域にも突入しないと判定される場合(S102にてNO)、処理はS114に移される。S114にて、制御装置200は、シングル過給モードを保持する。すなわち、制御装置200は、ツイン過給モードへの切り替えを禁止する。
S100にて、過給モードがシングル過給モードでない(すなわち、過給モードがツイン過給モードである)と判定される場合(S100にてNO)、処理はS116に移される。
S116にて、制御装置200は、過給機30の動作点がサージ領域に突入するか否かを判定する。
具体的には、制御装置200は、たとえば、現在のコンプレッサマップ上の動作点の位置を特定し、特定された動作点と前回特定された動作点とから動作点の移動速度と、移動方向とを特定する。制御装置200は、特定された動作点の位置と、移動速度と、移動方向とから予め定められた時間経過後に動作点がサージ領域内に移動するか否かを判定する。制御装置200は、予め定められた時間経過後に動作点がサージ領域内に移動すると判定される場合に、過給機30の動作点がサージ領域に突入すると判定する。過給機30の動作点がサージ領域に突入すると判定される場合(S116にてYES)、処理はS118に移される。
S118にて、制御装置200は、シングル過給モードへの切り替え後に動作点がチョーク領域または過回転領域に突入するか否かを判定する。
具体的には、制御装置200は、ツイン過給モードからシングル過給モードに過給モードを切り替えた場合に、コンプレッサマップ上の現在の動作点からの移動先の動作点を推定する。制御装置200は、推定された動作点がチョーク領域内である場合には、シングル過給モードへの切替後に動作点がチョーク領域に突入すると判定する。また、制御装置200は、推定された動作点が過回転領域内である場合には、シングル過給モードへの切替後に動作点が過回転領域に突入すると判定する。
制御装置200は、たとえば、ツイン過給モードからシングル過給モードに過給モードを切り替えた場合には、過給機30において吸入空気量が2倍になることを想定して、移動先の動作点を推定する。シングル過給モードへの切り替え後に動作点がチョーク領域または過回転領域に突入すると判定される場合(S118にてYES)、処理はS120に移される。S120にて、制御装置200は、ツイン過給モードを保持する。すなわち、制御装置200は、シングル過給モードへの切り替えを禁止する。
なお、S118にて、シングル過給モードへの切り替え後に動作点がチョーク領域および過回転領域のいずれにも突入しないと判定される場合(S118にてNO)、処理はS122に移される。S122にて、制御装置200は、過給モードをシングル過給モードに切り替える。
また、S116にて、過給機30の動作点がサージ領域に突入しないと判定される場合(S116にてNO)、処理はS124に移される。
S124にて、制御装置200は、シングル過給モードの切替要求があるか否かを判定する。制御装置200は、たとえば、シングル過給モードへの切替要求フラグがオン状態である場合に、シングル過給モードへの切替要求があると判定する。シングル過給モードへの切替要求があると判定される場合(S124にてYES)、処理はS126に移される。
S126にて、制御装置200は、シングル過給モードへの切り替え後に動作点がチョーク領域または過回転領域に突入するか否かを判定する。判定方法については上述のS118にて説明したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。シングル過給モードへの切り替え後に動作点がチョーク領域に突入すると判定される場合(S126にてYES)、処理はS128に移される。S128にて、制御装置200は、ツイン過給モードを保持する。すなわち、制御装置200は、シングル過給モードへの切り替えを禁止する。
なお、S124にて、シングル過給モードへの切替要求がないと判定される場合(S124にてNO)、処理はS128に移される。また、S126にて、シングル過給モードへの切り替え後に動作点がチョーク領域および過回転領域のいずれにも突入しないと判定される場合(S126にてNO)、処理はS122に移される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態における制御装置200の動作について図4および図5を参照しつつ説明する。図4は、過給モードがシングル過給モードである場合の制御装置200の動作の一例を説明するための図である。図5は、過給モードがツイン過給モードである場合の制御装置200の動作の一例を説明するための図である。図4の縦軸および図5の縦軸は、いずれも過給機30における圧力比を示す。図4の横軸および図5の横軸は、いずれも過給機30への吸入空気量を示す。
<過給モードがシングル過給モードである場合>
たとえば、図4に示すように、現在の動作点がB点で保持され、かつ、過給モードがシングル過給モードである場合を想定する。
過給モードがシングル過給モードであって(S100にてYES)、過給機30の動作点が切替ラインに到達していない(過給機30の回転数NTがしきい値NT(0)に到達していない)場合に、過給機30の動作点がチョーク領域にも過回転領域にも突入しないと判定されると(S102にてNO)、シングル過給モードが保持される(S114)。
次に、図4に示すように、現在の動作点が切替ライン上のC点に到達し、かつ、過給モードがシングル過給モードである場合を想定する。
過給モードがシングル過給モードであって(S100にてYES)、過給機30の動作点が切替ラインに到達している(過給機30の回転数NTがしきい値NT(0)に到達している)場合に、過給機30の動作点が過回転領域に突入すると判定されると(S102にてYES)、C点からツイン過給モードに移行後の動作点であるC’点が推定される。推定されたC’点がサージ領域内であると、ツイン過給モードへの切り替え後に動作点がサージ領域に突入すると判定される(S104にてYES)。その結果、過給機30の動作点がチョーク領域および過回転領域に突入しないように過給機30のVN開度が調整される(S106)。
次に、図4に示すように、現在の動作点が切替ライン上のD点に到達し、かつ、過給モードがシングル過給モードである場合を想定する。
過給モードがシングル過給モードであって(S100にてYES)、過給機30の動作点が切替ラインに到達している(過給機30の回転数NTがしきい値NT(0)に到達している)場合に、過給機30の動作点が過回転領域に突入すると判定されると(S102にてYES)、D点からツイン過給モードに移行後の動作点であるD’点が推定される。推定されたD’点が予め定められた領域内であると(S104にてNO)、ツイン過給モードへの切替制御が実行される(S108)。
なお、過給機30の動作点がチョーク領域に突入すると判定される場合には(S102にてYES)、ツイン過給モードへの切替後に過給機30の動作点がサージ領域に突入するか否かが判定される(S104)。ツイン過給モードへの切替後に動作点がサージ領域に突入すると判定される場合には(S104にてYES)、過給機30の動作点がチョーク領域に突入しないように過給機30のVN開度が調整される(S106)。一方、ツイン過給モードへの切替後に動作点がサージ領域に突入しないと判定される場合には(S104にてNO)、ツイン過給モードへの切替制御が実行される(S108)。
<過給モードがツイン過給モードである場合>
たとえば、図5に示すように、現在の動作点がE点で保持され、かつ、過給モードがツイン過給モードである場合を想定する。
過給モードがツイン過給モードであって(S100にてNO)、過給機30の動作点がサージ領域に突入しないと判定されると(S116にてNO)、シングル過給モードへの切替要求があるか否かが判定される(S124)。動作点が切替ラインよりも下方に位置する(過給機30の回転数NTがしきい値NT(0)未満である)場合に、シングル過給モードへの切替要求があると判定されると(S124にてYES)、E点からシングル過給モードへの切り替え後の動作点であるE’点が推定される。推定されたE’点が過回転領域内であると、シングル過給モードへの切替後に動作点が過回転領域に突入すると判定される(S126にてYES)。その結果、シングル過給モードへの切替が禁止され、ツイン過給モードが保持される(S128)。
次に、図5に示すように、現在の動作点がF点となり、かつ、過給モードがツイン過給モードである場合を想定する。
過給モードがツイン過給モードであって(S100にてNO)、過給機30の動作点がサージ領域に突入しないと判定されると(S116にてNO)、シングル過給モードへの切替要求があるか否かが判定される(S124)。動作点が切替ラインよりも下方に位置する(過給機30の回転数NTがしきい値NT(0)未満である)場合に、シングル過給モードへの切替要求があると判定されると(S124にてYES)、E点からシングル過給モードへの切替後の動作点であるF’点が推定される。推定されたF’点が予め定められた領域内であると、シングル過給モードに切替後に動作点がチョーク領域および過回転領域のいずれにも突入しないと判定され(S126にてNO)、シングル過給モードへの切替が行なわれる(S122)。
なお、過給機30の動作点がサージ領域に突入すると判定される場合には(S116にてYES)、シングル過給モードへの切替後に過給機30の動作点がチョーク領域または過回転領域に突入するか否かが判定される(S118)。シングル過給モードへの切替後に動作点がチョーク領域または過回転領域に突入すると判定される場合には(S118にてYES)、ツイン過給モードが保持される(S120)。一方、シングル過給モードへの切替後に動作点がチョーク領域および過回転領域のいずれにも突入しないと判定される場合には(S118にてNO)、シングル過給モードへの切替制御が実行される(S122)。
以上のようにして、本実施の形態に係る過給システムによると、過給モードが切り替えられるときにコンプレッサマップ上の動作点がサージ領域、チョーク領域あるいは過回転領域に変化することが抑制される。そのため、切替制御の実行によってサージングが発生したり、作動効率が低下したり、あるいは、過給機30が過回転状態となることを抑制することができる。そのため、サージングの発生や作動効率の低下を抑制しつつ過給モードの切り替えを行なうことができる。したがって、サージングの発生や作動効率の低下を抑制しつつ複数の過給機を用いた過給モードの切り替えを行なう過給システムを提供することができる。
以下、変形例について説明する。
上述の実施の形態では、エンジン1の吸気通路には、過給機30,40が設けられるものとして説明したが、エンジン1の吸気通路には、過給機30,40に加えて、たとえば、吸気絞り弁や排気再循環装置のEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガス流入口が設けられてもよい。
さらに上述の実施の形態では、エンジン1は、V型6気筒のエンジンを一例として説明したが、たとえば、その他の気筒レイアウト(たとえば、直列型あるいは水平型)のエンジンであってもよい。
さらに上述の実施の形態では、過給機30の回転数によってシングル過給モードへの切替要求があるか否か、あるいは、ツイン過給モードへの切替要求があるか否かを判定するものとして説明したが、過給機30の回転数に加えて、過給機30の効率や車両の運転状態(たとえば、加速状態)等のドライバビリティの観点から過給モードの切替要求があるか否かを判定してもよい。
さらに上述の実施の形態では、過給モードがシングル過給モードであって、チョーク領域に突入すると判定され、かつ、ツイン過給モードへの切替後に動作点がサージ領域に突入すると判定される場合にチョーク領域に突入しないようにVN開度を調整するものとして説明したが、たとえば、エンジン1の燃料噴射量を調整して動作点がチョーク領域に突入しないようにしてもよい。
さらに上述の実施の形態では、過給システムとして2つの過給機を備えるものとして説明したが、3以上の過給機を有するものであってもよい。
さらに上述の実施の形態では、過給システムとして備えた2つの過給機が同じ容量(サイズ)であるものとして説明したが、2つの過給機は異なる容量(サイズ)を有するものであってもよい。
さらに上述の実施の形態では、ツイン過給モードへの切替後に過給機30の動作点がサージ領域に突入すると判定される場合に、シングル過給モードを保持し、シングル過給モードへの切替後に過給機30の動作点がチョーク領域または過回転領域に突入すると判定される場合に、ツイン過給モードを保持するとして説明したが、たとえば、過給モードを保持するとともに、過給機30の動作点が、過給モードの切替後に、サージ領域、チョーク領域および過回転領域のいずれにも変化しない動作点になるようにエンジン1、過給機30,40のうちの少なくともいずれかを制御してもよい。このようにすると、その後の切替制御の実行の要求に応じて切替制御を実行することができる。
制御装置200は、たとえば、過給モードへの切替後に過給機30の動作点がサージ領域、チョーク領域あるいは過回転領域に突入すると判定される場合に、過給機30のVN開度を大きくして圧力比を上げたり、VN開度を小さくして圧力比を下げたりすることによって、過給モードを切り替えても、サージ領域、チョーク領域および過回転領域のいずれにも突入しない動作点にしてもよい。
あるいは、上述のVN開度の調整に代えて、あるいは、加えてウエストゲートバルブの開度を調整することによって、過給モードを切り替えても、サージ領域、チョーク領域および過回転領域のいずれにも突入しない動作点にしてもよい。
ウエストゲートバルブは、たとえば、排気マニホールド50A,50Bから排気管52A,52bの間の排気ガスを過給機30,40を経由しないで排気管53A,53Bにバイパスするバイパス通路に設けられる。
たとえば、ウエストゲートバルブの開度を小さくして圧力比を上げたり、ウエストゲートバルブの開度を大きくして圧力比を下げたりすることによって、過給モードを切り替えても、サージ領域、チョーク領域および過回転領域のいずれにも突入しない動作点にしてもよい。
あるいは、制御装置200は、上記の場合に、エンジン1の燃料噴射量の増加により排気流量を増加させて過給機30の回転数を増加させたり、エンジン1の燃料噴射量の減少により排気流量を減少させて過給機30の回転数を減少させたりして、過給モードを切り替えても、サージ領域、チョーク領域および過回転領域のいずれにも突入しない動作点にしてもよい。
さらに上述の実施の形態では、過給モードの切替後の動作点を推定して、推定された動作点がサージ領域、チョーク領域および過回転領域のうちのいずれかの領域内であるか否かを判定することによって過給モードの切替後の動作点がサージ領域、チョーク領域または過回転領域に突入するか否かを判定するものとして説明したが、制御装置200は、たとえば、動作点と、予め定められた領域内に設定された禁止判定領域との相対位置関係に基づいて、動作点がサージ領域、チョーク領域または過回転領域に突入するか否かを判定してもよい。
このようにすると、動作点と禁止判定領域との相対位置関係に基づいて、切替制御の実行後に動作点がサージ領域とチョーク領域と過回転領域とのうちのいずれかの領域に変化するか否かを推定することができる。
図6は、コンプレッサマップ上に設定された禁止判定領域を説明するための図である。図6の縦軸は、過給機30における圧力比を示す。図6の横軸は過給機30への吸入空気量を示す。図6に示すように、たとえば、予め定められた領域内に、過給モードがシングル過給モードである場合にツイン過給モードに切り替えられてもサージ領域に突入しない第1禁止判定領域(太破線と過回転ラインとチョークラインとによって囲まれた領域)を予め設定しておき、制御装置200のメモリ等に記憶しておく。制御装置200は、過給モードがシングル過給モードであって、かつ、現在の過給機30の動作点(たとえば、G点)が第1禁止判定領域内である場合に、ツイン過給モードへの切替後にサージ領域に突入しないと判定する。
同様に、予め定められた領域内に、過給モードがツイン過給モードである場合にシングル過給モードに切り替えられてもチョーク領域または過回転領域に突入しない第2禁止判定領域を予め設定しておき、制御装置200のメモリ等に記憶しておく。制御装置200は、過給モードがツイン過給モードであって、かつ、現在の過給機30の動作点が第2禁止判定領域内である場合に、シング過給モードへの切替後にチョーク領域および過回転領域のいずれにも突入しないと判定する。
さらに上述の実施の形態では、制御装置200は、過給モードがシングル過給モードである場合には、過給機30の回転数がしきい値に到達する場合にツイン過給モードへの切替要求があると判定するものとして説明したが、制御装置200は、たとえば、動作点の移動速度が遅くなるほどしきい値を上昇させるようにしてもよい。
このようにすると、動作点の移動速度が遅くなるほどしきい値が上昇するので、移動速度が遅い場合にはシングル過給モードにおいて過給機30の回転数を可能な限り上昇させることができる。
以下、図7を参照して、この変形例における制御装置200で実行される処理について説明する。図7は、変形例における制御装置200で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
S200にて、制御装置200は、過給機30の動作点を特定したか否かを判定する。過給機30の動作点を特定したと判定される場合(S200にてYES)、処理はS202に移される。
S202にて、制御装置200は、動作点の移動速度を算出する。制御装置200は、たとえば、予め定められた時間前の動作点と現在の動作点とのコンプレッサマップ上の距離を算出する。制御装置200は、算出された距離を予め定められた時間で除算することによって動作点の単位時間当たりの移動速度を算出する。予め定められた時間は、たとえば、前回の計算時点から今回の計算時点までの時間であってもよいし、所定回数分だけ遡った計算時点から今回の計算時点までの時間であってもよい。
S204にて、制御装置200は、補正係数を取得する。補正係数は、等回転数ラインに沿って設定された切替ラインの補正に用いられる。
制御装置200は、算出された移動速度と、移動速度と補正係数との関係を示す予め定められたマップとを用いて補正係数を取得する。図8は、補正係数と動作点の移動速度との関係を示すマップの一例を示す図である。図8に示すように、移動速度が速いほど補正係数は小さくなるように設定され、移動速度が遅いほど補正係数は大きくなるように設定される。
S206にて、制御装置200は、切替ラインを設定する。具体的には、制御装置200は、過給機30の回転数NTのしきい値NT(0)に補正係数を乗算した値を算出する。制御装置200は、コンプレッサマップ上において算出された当該値に対応する等回転数ラインを設定し、設定された等回転数ラインを切替ラインとして設定する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく制御装置200の動作について図9を参照しつつ説明する。図9は、変形例における制御装置200の動作の一例を説明するための図である。図9の縦軸は、過給機30における圧力比を示す。図9の横軸は、過給機30における吸入空気量を示す。たとえば、図9の破線に示す位置に切替ラインが設定されているものとする。
過給機30動作点として図9のb点が特定されると(S200にてYES)、予め定められた時間前の動作点である図9のa点から特定されたb点までの移動距離と、a点における動作点の計算時点からb点における動作点の計算時点までの時間(予め定められた時間)とから移動速度が算出される(S202)。
算出された移動速度と、図8に示すマップとから補正係数が取得され(S204)、取得された補正係数を用いて切替ラインが設定される(S206)。たとえば、移動速度が前回切替ラインが設定された時点よりも遅くなる場合には、前回切替ラインが設定された時点の補正係数よりも大きい値が今回の補正係数として設定される。その結果、図9の破線に示す前回の切替ラインよりも過回転ラインに近づく位置に今回の切替ラインが設定されることになる。このようにすると、過給機30の動作点がゆっくり動く場合(緩加速時)には、ツイン過給モードへの切替が要求される過給機30の回転数のしきい値が引き上げられるため、過給機30の性能を十分に使いきった状態でツイン過給モードに切り替えることができる。一方、過給機30の動作点が速く動く場合(急加速時)には、早めにツイン過給モードへの切替が要求されるため、動作点が過回転ラインに到達することを確実に抑制することができる。
以下に、急加速時と緩加速時との切替ラインの変化と過給機30の動作点の変化の一例について図10を参照しつつ説明する。図10は、変形例における切替ラインの変化と過給機30の動作点の変化の一例について説明するための図である。なお、図10は、図2と比較して過給機30の動作線の軌跡および切替ラインが変化する以外の構成は同じであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
図10の(A)の矢印は、急加速時の動作点の変化を示す。急加速時においては、過給圧の上昇遅れにより動作線の傾きは緩加速時と比較して緩やかになる。急加速時において動作点の移動速度が速いと上述の補正係数は1.0となるため、図10の破線に示すように切替ラインが変化しない。そのため、過給機30の回転数が切替ラインに対応する回転数に到達する時点でツイン過給モードへの切替が要求されることになる。そのため、回転数が過回転ラインに対応する回転数に対してオーバーシュートすることなくツイン過給モードへの切替が可能となる。
一方、図10の(B)の矢印は、緩加速時の動作点の変化を示す。緩加速時においては、動作点がゆっくり変化するため、図10の二点鎖線に示すように切替ラインが過回転ラインに近づくことになる。すなわち、過給モードとしてはシングル過給モードを維持したまま、過給機30の動作点が過回転ラインに近い位置で変化するように過給機30を動作させることができる。このとき、たとえば、過回転ラインを超えないようにVN開度を開く制御を実施するなどすると、過給機30の動作点を予め定められた領域内であって、かつ、過回転ラインに沿うように変化させることができる。このとき、チョークライン上まで動作点が変化する場合には(図3のS102にてYES)、チョーク領域および過回転領域に突入しないようにVN開度が調整されたり(図3のS106)、ツイン過給モードに切り替えられたりする(図3のS108)。
さらに上述の実施の形態では、1つの切替ラインを用いてシングル過給モードとツイン過給モードとの切替要求があるか否かを判定するものとして説明したが、たとえば、シングル過給モードからツイン過給モードへの切替要求があるか否かの判定に用いられる切替ラインと、ツイン過給モードからシングル過給モードへの切替要求があるか否かの判定に用いられる切替ラインとを異なるものとしてもよい。
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。