以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
図1は、本実施の形態に係る内燃機関であるエンジン1の全体構成を示す図である。本実施の形態において、エンジン1は、たとえば、コモンレール式のディーゼルエンジンを一例として説明するが、その他の形式のエンジン(たとえば、ガソリンエンジン等)であってもよい。
エンジン1は、エンジン本体10と、エアクリーナ20と、インタークーラ26と、吸気マニホールド28と、過給機30と、排気マニホールド50と、排気再循環装置(以下、EGR(Exhaust Gas Recirculation)と記載する)60とを備える。
エンジン本体10は、複数の気筒12と、コモンレール14と、複数のインジェクタ16とを含む。本実施の形態においては、エンジン1は、直列4気筒エンジンを一例として説明するが、その他の気筒レイアウト(たとえば、V型あるいは水平型)のエンジンであってもよい。
複数のインジェクタ16は、複数の気筒12の各々に設けられ、その各々がコモンレール14に接続されている。燃料タンク(図示せず)に貯留された燃料は、サプライポンプ(図示せず)によって所定圧まで加圧されてコモンレール14へ供給される。コモンレール14に供給された燃料は複数のインジェクタ16の各々から所定のタイミングで噴射される。
エアクリーナ20は、エンジン1の外部から吸入される空気から異物を除去する。エアクリーナ20には、第1吸気管22の一方端が接続される。
第1吸気管22の他方端には、過給機30のコンプレッサ32の入口に接続される。コンプレッサ32の出口には、第2吸気管24の一方端が接続される。コンプレッサ32は、第1吸気管22から流通する空気を過給して第2吸気管24に供給する。コンプレッサ32の詳細な動作については後述する。
第2吸気管24の他方端には、インタークーラ26の一方端が接続される。インタークーラ26は、第2吸気管24を流通する空気を冷却する空冷式あるいは水冷式の熱交換器である。
インタークーラ26の他方端には、第3吸気管27の一方端が接続される。第3吸気管27の他方端には、吸気マニホールド28が接続される。吸気マニホールド28は、エンジン本体10の複数の気筒の各々の吸気ポートに連結される。
エアクリーナ20の下流近傍には、第1吸気管22を流通する空気の流量(吸入空気量)Qinを検出するエアフローメータ104が設けられる。エアフローメータ104は、第1吸気管22を流通する吸入空気量Qinを示す信号をECU(Electronic Control Unit)200に送信する。なお、吸気マニホールド28の上流には、たとえば、吸気絞り弁が設けられていてもよい。
排気マニホールド50は、エンジン本体10の複数の気筒12の各々の排気ポートに連結される。排気マニホールド50には、第1排気管52の一方端が接続される。第1排気管52の他方端は、過給機30のタービン36に接続される。そのため、各気筒の排気ポートから排出される排気ガスは、排気マニホールド50に集められた後、第1排気管52を経由してタービン36に供給される。
タービン36には、第2排気管54の一方端が接続される。第2排気管54の他方端には、図示しない各種触媒(たとえば、NOx触媒、DPF(Diesel particulate filter)あるいはDPNR(Diesel Particulate-NOx Reduction)等の触媒)やマフラー等が接続される。そのため、タービン36から排出された排気ガスは、第2排気管54、各種触媒およびマフラー等を経由して車外に排出される。
第3吸気管27と排気マニホールド50とは、エンジン本体10を経由せずにEGR60によって接続される。EGR60は、EGRバルブ62と、EGRクーラ64と、EGR通路66とを含む。
EGR通路66の一方端は、第3吸気管27に接続される。EGR通路66の一方端は、吸気マニホールド28に接続されてもよい。EGR通路66の他方端は、排気マニホールド50に接続される。EGR通路66の他方端は、第1排気管52に接続されてもよい。EGR通路66の途中には、EGRバルブ62と、EGRクーラ64とが設けられる。
EGRバルブ62は、ECU200からの制御信号に応じて、通路を遮断してEGRガスの流通を抑制する閉状態と、EGR通路66においてEGRガスの流通を許容する開状態とのうちのいずれか一方の状態から他方の状態へと切り替える切替弁である。さらに、EGRバルブ62は、開状態において、ECU200からの制御信号に応じて通路断面積(EGR開度)を変化させることによってEGRガスの流量(以下、EGRガス量と記載する)を変化させる。EGRクーラ64は、EGR通路66を流通するEGRガスを冷却する水冷式あるいは空冷式の熱交換器である。
EGRバルブ62が開状態である場合には、排気マニホールド50に集められた排気ガスの一部がEGRガスとしてEGR通路66に導入され、EGRクーラ64において冷却された後に、EGRバルブ62によって流量が調整されて第3吸気管27に供給される。EGRガスが第3吸気管27に供給されることで、気筒内での燃焼温度を低下させて、NOxの生成量を低減することができる。一方、EGRバルブ62が閉状態である場合には、EGRガスの流通が遮断される。
過給機30は、コンプレッサ32と、タービン36と、可変ノズル機構40とを含む。コンプレッサ32のハウジング内にはコンプレッサホイール34が収納され、タービン36のハウジング内にはタービンホイール38が収納される。コンプレッサホイール34とタービンホイール38とは、連結軸42によって連結され、一体的に回転する。そのため、コンプレッサホイール34は、タービンホイール38に供給される排気ガスの排気エネルギーによって回転駆動される。
可変ノズル機構40は、タービンホイール38の回転軸を中心とした周囲の排気流入部に配置され、第1排気管52から供給される排気ガスをタービンホイール38に導く複数のベーン(図2参照)と、複数のベーンの各々を回転させることによって隣接するベーン間の隙間(以下の説明においてこの隙間を可変ノズル機構40の開度と記載する)を変化させるアクチュエータとを含む。アクチュエータは、電動モータあるいは油圧アクチュエータであって、ECU200からの制御信号に応じて可変ノズル機構40の開度を変化させる。
可変ノズル機構40の開度を変化させることによって、排気流入部における排気ガスの流路が絞られたり、拡げられたりする。これにより、タービンホイール38に吹き付けられる排気ガスの流速を変化させることができる。
図2は、可変ノズル機構40の構成の一例を示す図である。図2(a)は、図1において左方向から可変ノズル機構40を見た図である。図2(b)は、図1において右方向から可変ノズル機構40を見た図である。可変ノズル機構40の構成は、第1排気管52からタービンホイール38までの排気ガスの流路を絞ることでタービンホイール38に供給される排気ガスの流速を変化させるものであればよく、特に、図2に示される構成に限定されるものではない。
図2(a)および図2(b)に示すように、可変ノズル機構40は、タービンホイール38の外周の排気流入部に配置された複数のノズルベーン67と、複数の軸68を回転中心として複数のノズルベーン67をそれぞれ揺動可能に保持するノズルプレート69と、各軸68の端部に固定されたアーム70を用いて軸68を回転させるユニゾンリング71とを含む。ユニゾンリング71は、リンク72を介してアクチュエータによって回転されるようになっており、リンク72の回転軸72aの端部に固定されたアーム72bをアクチュエータを用いて揺動させることで、アーム72bと係合するユニゾンリング71を回転させることができる。
たとえば、図2(a)に示されるように、アーム72bがリンク72によって矢印に示す方向に搖動させると、ユニゾンリング71は、矢印に示す方向、すなわち、図2(a)では反時計まわり、図2(b)では時計回りに回転する。さらに、このユニゾンリング71の回転によって、各軸68は、矢印に示す方向、すなわち、図2(a)では反時計回り、図2(b)では時計回りに回転される。したがって、ノズルベーン67の開度は閉じ側(隣接する2つのノズルベーンの間の隙間が狭くなるように)に制御されることとなる。また、アーム72vを矢印とは逆の方向に搖動させると、ノズルベーン67の開度は開き側(隣接する2つのノズルベーンの間の隙間が拡がるように)に制御されることとなる。
図1に戻って、ECU200は、エンジン1の制御装置である。ECU200には、車両の状態を検出する各種センサが接続される。本実施の形態においては、ECU200には、たとえば、エンジン回転速度センサ102と、アクセルペダルポジションセンサ106とが接続される。
エンジン回転速度センサ102は、エンジン1の出力軸の回転速度(以下、エンジン回転速度と記載する)NEを検出する。エンジン回転速度センサ102は、検出したエンジン回転速度NEを示す信号をECU200に送信する。
アクセルペダルポジションセンサ106は、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量APを検出する。アクセルペダルポジションセンサ106は、検出したアクセルペダルの踏み込み量APを示す信号をECU200に送信する。
ECU200は、受信したアクセルペダルの踏み込み量AP、吸入空気量Qin、エンジン回転速度NE等に基づいてエンジン1を制御する。本実施の形態においては、ECU200は、たとえば、エンジン1の負荷状態に基づいてEGRバルブ62の開度を調整する。ECU200は、たとえば、エンジン1の負荷状態が高負荷状態である場合には、EGRバルブ62が閉状態になるようにEGRバルブ62を制御する。ECU200は、たとえば、エンジン1の負荷状態が低負荷状態である場合には、EGRバルブ62が開状態になるようにEGRバルブ62を制御する。エンジン1が高負荷状態である場合とは、たとえば、車両の加速中の場合である。
さらに、ECU200は、エンジン1の状態に基づいて可変ノズル機構40の開度の目標値を算出する。ECU200は、可変ノズル機構40の開度が算出された目標値になるように可変ノズル機構40のアクチュエータを制御するための制御信号を生成し、アクチュエータに送信する。可変ノズル機構40のアクチュエータは、受信した制御信号に基づいてノズルベーン67の開度を変化させる。
ECU200は、たとえば、エンジン1の低回転時においては、タービンホイール38に供給される排気ガスの流速を速めるように可変ノズル機構40の開度が小さくなるように可変ノズル機構40のアクチュエータを制御する。このようにすると、タービン36の排気流入部における排気ガスの流路が絞られるため、タービンホイール38に供給される排気ガスの流速が速められる。そのため、過給圧が上昇しにくいエンジン1の低回転時において速やかに過給圧を上昇させて過給効率を上げることができる。
一方、ECU200は、エンジン1の高回転時においては、タービンホイール38に供給される排気ガスの流速を遅くするように可変ノズル機構40の開度が大きくなるように可変ノズル機構40のアクチュエータを制御する。このようにすると、タービン36の排気流入部における排気ガスの流路が拡げられるため、タービンホイール38に供給される排気ガスの流速が遅くされる。そのため、過給圧の上昇が伴うエンジン1の高回転時において、最適な過給圧に調整することができ、燃費の改善が図れる。
さらに、ECU200は、EGRバルブ62が開状態である場合には、EGR通路66にEGRガスを導入するため、排気圧力を上げるべく、可変ノズル機構40の開度が小さくなるように可変ノズル機構40のアクチュエータを制御する。
一方、ECU200は、EGRバルブ62が閉状態である場合には、タービン36よりも上流(第1排気管52)の排気ガスの圧力(以下、タービン前圧と記載する)の増大を抑制すべく、EGRバルブ62が開状態である場合よりも可変ノズル機構40の開度が大きくなるように可変ノズル機構40のアクチュエータを制御する。
以上のような構成を有するエンジン1において、たとえば、エンジン1の負荷状態が低負荷状態から高負荷状態に変化する場合には、EGRバルブ62が開状態から閉状態に変化する制御が実行されるとともに可変ノズル機構40の開度が大きくなるように変化する制御が実行される。このような場合において、可変ノズル機構40の開度の制御がEGRバルブ62の閉状態への制御に遅れて実行される場合には、タービン36の上流の圧力の増加を適切に抑制できない場合がある。可変ノズル機構40の開度の制御の遅れは、可変ノズル機構40の開度の制御の応答性が、EGRバルブ62の開度の制御の応答性よりも低いことにより生じる。
たとえば、図3に示すように、アクセルペダルの踏み込み量がA(0)となるエンジン1の低負荷状態を想定する。この場合において、EGRバルブ62の開度がB(0)であり、可変ノズル機構40の開度がC(0)であるものとする。また、タービン前圧や膨張比(=(タービン前圧+大気圧)/(タービン背圧+大気圧))は、変動中心をほぼ一定とした状態で変動しているものとする。なお、タービン背圧とは、タービン36よりも下流(第2排気管54)の排気ガスの圧力を示す。
このような場合に、時間T(0)にて運転者がアクセルペダルの踏み込み量を増加させることによって、エンジン1の要求出力が上昇する。エンジン1の要求出力の上昇に応じてエンジン1の負荷が増加する。
時間T(1)にて、たとえば、アクセルペダルの踏み込み量APがしきい値A(1)を超えるなどして、エンジン1が高負荷状態であると判定される場合に、EGRバルブ62の開度(以下、EGR開度と記載する)がB(0)からB(1)(ほぼゼロの値)になるまで低下されるEGR62の開度制御と、可変ノズル機構40の開度がC(0)からC(1)に増加される可変ノズル機構40の開度制御とが実行される。
しかしながら、EGR62の開度制御の実行によってEGRバルブ62の開度が時間T(2)にてB(1)まで変化するのに対して、可変ノズル機構40の開度制御によって可変ノズル機構40の開度が時間T(2)よりも後の時間T(3)にて増加を開始し、時間T(4)にて可変ノズル機構40の開度がC(1)まで増加する場合には、少なくとも時間T(2)から時間T(3)までの期間においては、EGRバルブ62が閉状態でかつ可変ノズル機構40によって排気流入部における排気ガスの流量が絞られた状態が継続する。
その結果、可変ノズル機構40の開度が十分に大きくなるまでの間にタービン前圧および膨張比は増加することとなる。そのため、タービン前圧および膨張比の増加を適切に抑制できない場合がある。
そこで、本発明は、ECU200が、流速を低減させる可変ノズル機構40の動作と、開状態から閉状態へのEGRバルブ62の動作とが要求される場合には、タービン前圧が第1しきい値よりも大きいという第1開始条件と、膨張比が第2しきい値よりも大きいという第2開始条件とのうちの少なくともいずれかの条件が成立するときに、EGRバルブ62が閉状態となることを抑制する点を特徴とする。
このようにすると、第1開始条件または第2開始条件が成立するときに、EGRバルブ62が閉状態となることが抑制されるので、EGRバルブ62が閉状態であるときに可変ノズル機構40による排気ガスの流速の低減が遅れることに起因したタービン前圧の増加を適切に抑制することができる。
本実施の形態においてECU200は、流速を低減させる可変ノズル機構40の動作と、開状態から閉状態へのEGRバルブ62の動作とが要求される場合に、第1開始条件が成立する場合にEGRバルブ62が閉状態となることを抑制する点を一例として説明する。また、ECU200は、第1開始条件が成立してからタービン前圧が前記第1しきい値以下の第3しきい値よりも小さいという第1終了条件が成立するまで、EGRバルブ62の開度を所定の開度で維持することによって閉状態となることを抑制し、第1終了条件が成立する場合にEGRバルブ62を閉状態にするものとする。
図4に、本実施の形態に係るエンジン1を制御するECU200の機能ブロック図を示す。ECU200は、加速判定部202と、EGR要求判定部204と、タービン前圧判定部206と、EGRバルブ制御部208と、可変ノズル機構制御部210とを含む。なお、これらの構成は、プログラム等のソフトウェアにより実現されてもよいし、ハードウェアにより実現されてもよい。
加速判定部202は、エンジン1を搭載した車両が加速中であるか否かを判定する。なお、加速判定部202は、たとえば、アクセルペダルの踏み込み量APがしきい値A(1)よりも大きい場合には、車両が加速中であると判定する。加速判定部202は、たとえば、車両が加速中であると判定された場合に、加速判定フラグをオン状態にしてもよい。
EGR要求判定部204は、加速判定部202によって車両が加速中であると判定された場合に、EGRバルブ62を開状態から閉状態にする要求があるか否かを判定する。EGR要求判定部204は、たとえば、EGRバルブ62が開状態であって、かつ、EGRバルブ62を閉状態にする条件が成立する場合には、EGRバルブ62を開状態から閉状態にする要求があると判定する。EGRバルブ62を閉状態にする条件とは、たとえば、車両の状態(あるいは、エンジン1の状態)に基づく排気再循環装置60の作動要求量(たとえば、EGR率)がEGRバルブ62の閉状態に対応する量(たとえば、0%)であるという条件等を含む。
なお、EGR要求判定部204は、たとえば、加速判定フラグがオン状態である場合に、EGRバルブ62を開状態から閉状態にする要求があるか否かを判定し、EGRバルブ62を開状態から閉状態にする要求があると判定する場合に閉状態要求フラグをオン状態にしてもよい。
タービン前圧判定部206は、EGR要求判定部204によってEGRバルブ62を開状態から閉状態にする要求があると判定される場合、第1開始条件が成立するか否か、すなわち、タービン前圧がしきい値P(0)よりも大きいか否かを判定する。しきい値P(0)は、たとえば、後述するEGRバルブ62の開度保持制御を実行しないとタービン前圧が上限値を超えることとなるタービン前圧である。しきい値P(0)は、たとえば、実験等によって適合される、予め定められた値である。しきい値P(0)は、たとえば、アクセルペダルの踏み込み量等に基づくエンジン1の負荷に応じて変化する値であってもよい。
本実施の形態において、タービン前圧判定部206は、エンジン本体10から排出される排気ガスの排気流量と可変ノズル機構40の開度とに基づいてタービン前圧を推定する。タービン前圧判定部206は、たとえば、排気流量と可変ノズル機構40の開度とタービン前圧との関係を示すマップ等を用いてタービン前圧を推定してもよい。
また、タービン前圧判定部206は、たとえば、吸入空気量と、燃料噴射量(噴射指令値や噴射指令時間)、および、排気温度等に基づいて排気流量を推定する。タービン前圧判定部206は、たとえば、吸入空気量と燃料噴射量と排気温度と排気流量との関係を示すマップ等を用いて排気流量を推定してもよい。
さらにタービン前圧判定部206は、エンジン回転速度、燃料噴射量、および、外気温等の環境補正値等に基づいて排気温度を推定する。タービン前圧判定部206は、たとえば、エンジン回転速度と燃料噴射量と排気温度との関係を示すマップ等を用いて排気温度を推定し、推定された排気温度を環境補正値を用いて補正して、最終的な排気温度を推定してもよい。
なお、タービン前圧判定部206は、たとえば、閉状態要求フラグがオン状態であって、後述する開度保持制御の実行フラグがオフ状態である場合に、タービン前圧がしきい値P(0)よりも大きいか否かを判定し、タービン前圧がしきい値P(0)よりも大きいと判定する場合には、第1前圧判定フラグをオン状態にしてもよい。
さらに、タービン前圧判定部206は、EGRバルブ62の開度保持制御の実行時においては、第1終了条件が成立するか否か、すなわち、タービン前圧がしきい値P(1)よりも小さいか否かを判定する。しきい値P(1)は、EGRバルブ62を閉状態にしてもタービン前圧が上限値を超えないように設定される値である。しきい値P(1)は、たとえば、実験等によって適合される、予め定められた値である。しきい値P(1)は、たとえば、アクセルペダルの踏み込み量等に基づくエンジン1の負荷に応じて変化する値であってもよい。
なお、タービン前圧判定部206は、たとえば、後述する開度保持制御実行フラグがオン状態である場合に、タービン前圧がしきい値P(1)よりも小さいか否かを判定し、タービン前圧がしきい値P(1)よりも小さいと判定する場合には、第2前圧判定フラグをオン状態にしてもよい。
EGRバルブ制御部208は、たとえば、タービン前圧判定部206によって、タービン前圧がしきい値P(0)よりも大きいと判定される場合に、EGRバルブ62の開度を所定開度で保持する開度保持制御を実行する。なお、EGRバルブ制御部208は、たとえば、開度保持制御の実行とともに開度保持制御実行フラグをオン状態にする。
さらに、EGRバルブ制御部208は、開度保持制御の実行中に、タービン前圧判定部206によって、タービン前圧がしきい値P(1)よりも小さいと判定される場合に、開度保持制御を終了して、EGRバルブ62を閉状態にする(EGRバルブ62の開度を0%にする)。
なお、EGRバルブ制御部208は、たとえば、第1前圧判定フラグがオン状態である場合に、開度保持制御を実行するとともに、開度保持制御実行フラグをオン状態にしてもよい。
さらに、EGRバルブ制御部208は、開度保持制御実行フラグおよび第2前圧判定フラグがいずれもオン状態になる場合に、開度保持制御を終了して、EGRバルブ62を閉状態にするとともに各種フラグ(第1前圧判定フラグ、第2前圧判定フラグおよび開度保持制御実行フラグ)をオフ状態にしてもよい。
なお、開度保持制御において保持される所定の開度は、EGRバルブ62の開度が保持されている間にタービン前圧が上限値を超えない開度であって、かつ、タービン前圧が下限値を下回らない開度であれば、特に限定されるものではない。タービン前圧の下限値は、たとえば、過給機30の過給圧を車両の状態に基づいて設定される過給圧の目標値に制御可能な値である。
さらに、EGRバルブ制御部208は、加速判定部202によって車両が加速中であると判定され、かつ、EGR要求判定部204によってEGRバルブ62を開状態から閉状態にする要求があると判定された場合に、タービン前圧がしきい値P(0)以下であると、開度保持制御を実行することなくEGRバルブ62を閉状態にする全閉制御を実行する。
可変ノズル機構制御部210は、加速判定部202によって車両が加速中であると判定され、EGR要求判定部204によってEGRバルブ62を開状態から閉状態にする要求があると判定された場合に、可変ノズル機構40の開度がEGRバルブ62が開状態である場合に対応した開度よりも大きくなるように可変ノズル機構40のアクチュエータを制御する。可変ノズル機構制御部210は、アクチュエータ制御信号を生成して可変ノズル機構40のアクチュエータに送信する。
図5を参照して、本実施の形態に係るエンジン1のECU200で実行される制御処理について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU200は、車両が加速中であるか否かを判定する。車両が加速中であると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合(S100にてNO)、この処理は終了する。
S102にて、ECU200は、EGRバルブ62を開状態から閉状態にする要求があるか否かを判定する。EGRバルブ62を開状態から閉状態にする要求があると判定される場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでない場合(S102にてNO)、この処理は終了する。
S104にて、ECU200は、タービン前圧がしきい値P(0)よりも大きいか否かを判定する。タービン前圧がしきい値P(0)よりも大きいと判定される場合(S104にてYES)、処理はS106に移される。もしそうでない場合(S104にてNO)、処理はS110に移される。
S106にて、ECU200は、EGRバルブ62の開度保持制御を実行する。S108にて、ECU200は、タービン前圧がしきい値P(1)よりも小さいか否かを判定する。タービン前圧がしきい値P(1)よりも小さいと判定される場合(S108にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでない場合(S108にてNO)、処理はS108に戻される。S110にて、ECU200は、EGRバルブ62を閉状態にする全閉制御を実行する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係るエンジン1のECU200の動作について図6を参照しつつ説明する。
たとえば、図6に示すように、アクセルペダルの踏み込み量がA(0)となるエンジン1の低負荷状態を想定する。この場合において、EGRバルブ62の開度がB(0)であり、可変ノズル機構40の開度がC(0)であるものする。このとき、タービン前圧は、時間の経過とともに増加しているように変化している場合を想定する。
時間T(5)にて、アクセルペダルの踏み込み量がしきい値A(1)を超えると車両が加速中であると判定される(S100にてYES)。このとき、EGRバルブ62を閉状態にする要求があり(S102にてYES)、かつ、タービン前圧がしきい値P(0)よりも大きい場合には(S104にてYES)、EGRバルブ62の開度保持制御が実行される(S106)。そのため、EGRバルブ62の開度がB(0)から所定開度B(2)まで変化された後、EGRバルブ62の開度が所定開度B(2)で保持される。そして、時間T(6)において、可変ノズル機構40の開度がC(0)から増加するように制御が開始されると、時間の経過とともに可変ノズル機構40の開度がC(1)になるまで増加していく。
そのため、時間T(5)にてEGRバルブ62を閉状態にする場合には、図6の上段のグラフの破線に示すように、タービン前圧が上限値を超えるのに対して、時間T(5)にてEGRバルブ62の開度が所定開度B(2)で保持されるようにすることで、可変ノズル機構40の開度の制御がEGRバルブ62の開度の制御に遅れて実行されても、図6の上段のグラフの実線に示すように、タービン前圧が上限値を超えることが抑制される。
時間T(7)にて、開度保持制御の実行中に、タービン前圧がしきい値P(1)よりも小さくなると(S108にてYES)、開度保持制御が終了し、全閉制御が実行される(S110)。そのため、EGRバルブ62の開度がB(1)(閉状態)になる。
以上のようにして、本実施の形態に係るエンジン1によると、流速を低減させる可変ノズル機構40の動作と、開状態から閉状態へのEGRバルブ62の動作とが要求される場合には、第1開始条件が成立するときに、第1終了条件が成立するまでEGRバルブ62の開度が所定開度B(2)で保持される。そのため、第1終了条件が成立するまでEGRバルブ62が閉状態となることが抑制されるので、EGRバルブ62が閉状態であるときに可変ノズル機構40による排気ガスの流速の低減が遅れることに起因したタービン前圧の増加を適切に抑制することができる。したがって、排気再循環を停止する際にタービンの上流圧力の増加を適切に抑制する内燃機関を提供することができる。
さらに、ECU200は、車両の加速が要求される場合に、可変ノズル機構40によってタービンに供給される排気ガスの流速を低減させるようにベーンの開閉動作を行なうので、車両の加速が要求される場合に、タービン前圧の増加を適切に抑制することができる。
以下、変形例について説明する。本実施の形態においては、ECU200は、タービン前圧がしきい値P(0)よりも大きいときには、タービン前圧がしきい値P(1)よりも小さくなるまでEGRバルブ62の開度を所定の開度で維持するものとして説明したが、特に所定の開度で維持することに限定されるものではない。たとえば、ECU200は、タービン前圧がしきい値P(0)よりも大きいときには、タービン前圧がしきい値P(1)よりも小さくなるまでEGRバルブ62の開度をタービン前圧の変化に応じて変化させるようにしてもよい。ECU200は、たとえば、タービン前圧とその上限値との差分に応じて(たとえば、差分が小さくなるほど可変ノズル機構40の開度が大きなるように)EGRバルブ62の開度を決定し、決定された開度になるようにEGRバルブ62を制御してもよい。
具体的には、図5に示すフローチャートのS106におけるEGRバルブ62の開度保持制御をタービン前圧に応じた開度制御に変更するものである。その他の制御処理については、図5に示すフローチャートに記載された制御処理と同様であるためその詳細な説明は繰り返さない。
このようにすると、ECU200は、図7に示すように動作する。具体的には、時間T(5)にて、アクセルペダルの踏み込み量がしきい値A(1)を超えると車両が加速中であると判定される。このとき、EGRバルブ62を閉状態にする要求があり、かつ、タービン前圧がしきい値P(0)よりも大きい場合には、タービン前圧に応じた開度制御が実行される。そして、時間T(8)にて、タービン前圧がしきい値P(1)よりも小さくなると、タービン前圧に応じた開度制御が終了される。
タービン前圧に応じた開度制御の実行中において、EGRバルブ62の開度は、図6で示すEGRバルブ62の開度保持制御実行中におけるEGRバルブ62の開度よりも小さくなる期間があるため、図6で示すタービン前圧よりもタービン前圧を上限値に近い状態で維持することができる。そのため、タービン前圧の変動を抑制することができるとともに、タービン前圧をエンジン1の状態に応じた適切な値で維持することができる。
さらに、本実施の形態においては、アクセル開度から車両が加速中であるか否かを判定したが、たとえば、エンジン回転速度の変化量(上昇量)がしきい値よりも大きい場合に、車両が加速中であるか否かを判定してもよい。あるいは、燃料噴射指令値(噴射時間)あるいは燃料噴射指令値の積算値よりも大きい場合に、車両が加速中であると判定してもよい。あるいは、クルーズコントロール中においては、車両の速度と目標速度との差がしきい値よりも大きい場合に、車両が加速中であると判定してもよい。
さらに、本実施の形態においては、車両が加速中であるか否かの判定結果に基づいて開度保持制御を実行する点について説明したが、車両が加速中であるか否かの判定に代えて、エンジン1が低負荷状態から高負荷状態へと切り替えられるか否かの判定結果に基づいて開度保持制御を実行してもよい。
さらに、本実施の形態においては、第1終了条件が成立したと判定された場合に開度保持制御を終了するものとして説明したが、たとえば、可変ノズル機構40の開度が所定開度以上になったときに開度保持制御を終了してもよいし、開度保持制御を実行してからの経過時間が所定時間を超える場合に開度保持制御を終了してもよい。
さらに、本実施の形態においては、第1開始条件のしきい値P(0)と、第1終了条件のしきい値P(1)とは異なる値であるものとして説明したが、しきい値P(0)としきい値P(1)とは同じ値であってもよい。
さらに本実施の形態においては、第1開始条件が成立したと判定された場合に開度保持制御を実行するものとして説明したが、第1開始条件に加えて第2開始条件が成立したと判定された場合に開度保持制御を実行してもよいし、前記第1開始条件に代えて第2開始条件が成立したと判定された場合に開度保持制御を実行してもよい。
また、この場合において、開度保持制御は、第1開始条件または第2開始条件が成立したと判定されてから第1終了条件が成立するまで継続してもよいし、膨張比が第2しきい値以下の第4しきい値よりも小さいという第2終了条件が成立するまで継続してもよい。なお、第2しきい値と第4しきい値とは同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。