JP2020016202A - 過給システム - Google Patents

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明大 松田
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Abstract

【課題】過給機の助走運転を行なう助走モードにおいて、過給機のサージングを抑制することと、助走時間を短くすることとの両立を図る。【解決手段】過給システムが、過給機30,40と、ACV62と、ABV64と、制御装置200とを備える。ABV64は、バイパス通路48に設けられ、全閉開度と全開開度と中間開度とのいずれにも開度調整可能に構成される。制御装置200は、シングルモードから助走モードを経てツインモードへ過給モードを切り替える制御を実行するように構成される。制御装置200は、ABV64の開度が中間開度である状態で助走モードを開始し、助走モードにおいて、過給機40のコンプレッサ43の動作点がコンプレッサマップ上のサージング領域内にある場合には、ABV64の開度を大きくする。【選択図】図1

Description

本発明は、並列に接続された複数の過給機を有する過給システムに関する。
過給機においてサージングが発生すると、過給機の性能が低下したり、振動および騒音が生じたりする。このため、過給システムにおいては、過給機のサージングを抑制することが求められる。たとえば、特表2007−510861号公報(特許文献1)には、過給機のコンプレッサの翼を開いてそのコンプレッサにおける吸入圧力に対する吐出圧力の比率(以下、「圧力比」とも称する)を減少させることにより過給機のサージングを抑制する技術が開示されている。
特表2007−510861号公報
ところで、エンジンの吸気を過給する過給システムとしては、並列に接続された複数の過給機を有する過給システム(パラレルツインターボシステム等)が公知である。たとえば、第1過給機および第2過給機を備えるパラレルツインターボシステムにおいては、第1過給機のみを用いてエンジンの吸気を過給する過給モード(以下、「シングルモード」とも称する)と、第1過給機および第2過給機の両方を用いてエンジンの吸気を過給する過給モード(以下、「ツインモード」とも称する)とを切り替える制御が行なわれる。
上記のパラレルツインターボシステムにおいて、過給モードをシングルモードからツインモードに切り替える際には、シングルモードにおいて停止していた第2過給機の運転が開始されてから、第2過給機の過給圧が十分高くなるまでの間に、第2過給機においてサージングが発生しやすくなる。こうしたサージングを抑制するために、第2過給機の助走運転を行なう助走モードを採用し、過給モードをシングルモードから直接ツインモードに切り替えるのではなく、シングルモードから助走モードを経てツインモードへ切り替える制御が行なわれることがある。助走モードでは、サージングを抑制しながら第2過給機の過給圧を上昇させる。
しかしながら、助走モードにおいて第2過給機のサージングを抑制しようとすると、第2過給機の運転が開始されてから第2過給機の過給圧が十分高くなるまでの時間(以下、「助走時間」とも称する)が長くなるという問題が生じ得る。たとえば、特許文献1に記載の技術では、コンプレッサの圧力比を減少させることによりサージングを抑制するため、こうした技術を助走モードに適用した場合には、助走時間が長くなる傾向がある。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、過給機の助走運転を行なう助走モードにおいて、過給機のサージングを抑制することと、助走時間を短くすることとの両立を図ることである。
本発明のある局面に係る過給システムは、第1過給機と、第2過給機と、第1バルブと、第2バルブと、制御装置とを備える。第1過給機は、第1吸入通路に接続され、第1吸入通路から供給される吸入空気を圧縮して第1過給通路へ吐出する第1コンプレッサを有する。第2過給機は、第1吸入通路に並列して設けられた第2吸入通路に接続され、第2吸入通路から供給される吸入空気を圧縮して第2過給通路へ吐出する第2コンプレッサを有する。第1バルブは、第2過給通路に設けられる。第2バルブは、第2過給通路と第1吸入通路とをつなぐバイパス通路に設けられる。制御装置は、第1バルブおよび第2バルブの両方が閉じた状態で第1コンプレッサを用いてエンジンの吸気を過給する第1過給モードから、第1バルブが閉じ第2バルブが開いた状態で第2過給機の助走運転を行なう助走モードを経て、第1バルブが開き第2バルブが閉じた状態で第1コンプレッサおよび第2コンプレッサの両方を用いてエンジンの吸気を過給する第2過給モードへ過給モードを切り替える制御を実行するように構成される。
そして、上記の第2バルブは、全閉開度と全開開度と中間開度とのいずれにも開度調整可能に構成される。また、上記の制御装置は、第2バルブの開度が中間開度である状態で助走モードを開始し、過給モードが助走モードであるときに、第2コンプレッサのコンプレッサマップ上において、第2コンプレッサにおける吸入圧力に対する吐出圧力の比率と、第2コンプレッサに吸入される空気量と、第2コンプレッサの回転速度とのうちの少なくとも2つのパラメータによって特定される動作点がコンプレッサマップ上のサージング領域内にある場合には、第2バルブの開度を大きくするように構成される。
上記過給システムでは、バイパス通路に設けられる第2バルブとして、全閉開度と全開開度と中間開度とのいずれにも開度調整可能に構成されるバルブを採用し、第2バルブの開度が中間開度である状態で助走モードを開始する。これにより、第2バルブを全開状態にして助走モードを開始する場合と比べて、助走モードにおける第2過給機の過給圧の上昇速度を速めることができる。そして、第2過給機の過給圧の上昇速度が速くなることで、第2過給機の助走時間を短くすることができる。また、助走モードにおいて、第2コンプレッサの動作点がコンプレッサマップ上のサージング領域内にある場合には、上記の制御装置によって第2バルブの開度が大きくされ、第2コンプレッサの吐出圧力が低下する。これにより、第2コンプレッサの動作点はコンプレッサマップ上のサージング領域外へ移動する。その結果、第2過給機のサージングが抑制されることになる。
上記のような制御を行なうことで、助走モードにおける第2過給機の過給圧の上昇速度を速めて助走時間を短くすることができる。また、助走モードにおいて第2過給機の過給圧が過剰に高くなったときには、第2バルブの開度を大きくすることにより第2コンプレッサの吐出圧力を下げて第2過給機のサージングを抑制することができる。よって、第2過給機の助走運転を行なう助走モードにおいて、第2過給機のサージングを抑制することと、助走時間を短くすることとの両立を図ることができる。
好ましくは、助走モードの開始タイミングにおける第2コンプレッサの動作点が、第2コンプレッサのコンプレッサマップにおいて、サージング領域の内外の境界を示すサージライン上、またはコンプレッサマップ上のサージング領域内に存在する。
このようにすると、助走モード開始直後における第2過給機の過給圧の上昇が速くなり、助走時間を短くすることができる。また、助走モードが開始されると、上記の制御装置が第2バルブの開度を大きくすることにより第2コンプレッサの吐出圧力が低下するため、第2コンプレッサの動作点がコンプレッサマップ上のサージング領域内に長時間とどまること(ひいては、第2過給機に過剰なサージングが生じること)は避けられる。なお、助走モードの開始タイミングにおける第2コンプレッサの動作点は、たとえば助走モードの開始タイミングにおける第2バルブの開度によって調整できる。
好ましくは、制御装置は、助走モードにおいて、第2コンプレッサの動作点がサージング領域内にある場合には、第2バルブの開度を所定量だけ大きくする開弁操作を行なった後、第2コンプレッサの動作点がサージング領域内にあるか否かのサージ判断を行ない、第2コンプレッサの動作点がサージング領域外に出ていない場合には、第2コンプレッサの動作点がサージング領域外に出るまで開弁操作とサージ判断とを繰り返すように構成される。
このようにすると、第2過給機の助走運転を行ないながら第2過給機のサージングを好適に抑制することができる。
なお、上記の所定量は、固定値であってもよいし、可変値(たとえば、第2コンプレッサのコンプレッサマップにおける現在の動作点とサージラインとに基づいて算出される量)であってもよい。
好ましくは、制御装置が、助走モードにおいて、第2コンプレッサの動作点がサージング領域に入っておらず、かつ、第2コンプレッサの吐出圧力が所定圧力以上である場合に、過給モードを助走モードから第2過給モードへ移行させるように構成される。
上記の構成によれば、第2コンプレッサの吐出圧力が所定圧力以上であるか否か(ひいては、第2過給機の過給圧が十分高くなっているか否か)に基づいて、適切なタイミングで助走モードを終了させることができる。また、第2コンプレッサの動作点がサージング領域に入っていない状態(すなわち、第2過給機においてサージングが発生していない状態)で、第2過給モードを開始することができる。特に好ましくは、制御装置は、第1コンプレッサの吐出圧力と第2コンプレッサの吐出圧力とが等しくなったタイミングで、過給モードを助走モードから第2過給モードへ移行させる。このようにすると、第2過給モードの開始直後における第1過給機および第2過給機のサージングを抑制することができる。
好ましくは、エンジンの排気通路は、排気上流側から排気下流側に向かって、第1排気通路と、分岐部と、分岐部で第1排気通路から分岐した第2排気通路および第3排気通路と、第2排気通路および第3排気通路が合流する排気合流部とを含む。第1過給機は、第1コンプレッサに接続された状態で第2排気通路に設けられた第1タービンを有し、エンジンの排気が第2排気通路を流れることにより第1タービンとともに第1コンプレッサが回転するように構成される。第2過給機は、第2コンプレッサに接続された状態で第3排気通路に設けられた第2タービンを有し、エンジンの排気が第3排気通路を流れることにより第2タービンとともに第2コンプレッサが回転するように構成される。過給システムは、第3排気通路に設けられた第3バルブをさらに備える。そして、第1バルブおよび第3バルブの各々は、全閉開度および全開開度のみに開度調整可能に構成される。また、制御装置は、第1過給モードでは第1バルブおよび第3バルブの両方を全閉状態にし、助走モードでは、第1バルブを全閉状態、第3バルブを全開状態にし、第2過給モードでは第1バルブおよび第3バルブの両方を全開状態にするように構成される。
このようにすると、第1バルブおよび第3バルブの各々として、低コストかつ堅牢なオンオフバルブ(すなわち、弁開度が全開/全閉の2つの位置しかとることができないバルブ)を採用しつつ、第1過給機および第2過給機による過給を好適に行なうことができる。
なお、バルブについて、「閉じた状態」は、全閉状態を意味し、「開いた状態」は、全閉状態ではない状態を意味する。また、「中間開度」は、全閉開度よりも大きく、かつ、全開開度よりも小さい開度である。
本発明によると、過給機の助走運転を行なう助走モードにおいて、過給機のサージングを抑制することと、助走時間を短くすることとの両立を図ることができる。
本発明の実施の形態に係る過給システムの概略構成の一例を示す図である。 本発明の実施の形態に係る過給システムのシングルモードにおける状態を示す図である。 本発明の実施の形態に係る過給システムの助走モードにおける状態を示す図である。 本発明の実施の形態に係る過給システムのツインモードにおける状態を示す図である。 本発明の実施の形態に係る過給システムの制御装置により実行される過給モード切替制御の一例を示すフローチャートである。 第2コンプレッサのコンプレッサマップの一例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、この実施の形態に係る過給システムの概略構成の一例を示す図である。図1を参照して、この過給システムにおいて過給対象となるエンジン100は、たとえば走行のための動力発生装置として車両(たとえば、4輪自動車)に搭載される。本実施の形態では、エンジン100がV型6気筒ディーゼルエンジンであるが、過給対象となるエンジンは、こうしたディーゼルエンジンに限られない。過給対象となるエンジンは、ガソリンエンジンであってもよいし、V型以外の気筒レイアウト(たとえば直列型あるいは水平型)のエンジンであってもよい。また、バンクや気筒の数も任意に変更できる。
この実施の形態に係る過給システムは、エンジン100と、エンジン100の吸気を過給する過給機30,40と、制御装置200とを含む。制御装置200は、演算装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置と、各種信号を入出力するための入出力ポートと(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、作業用メモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、保存用ストレージ(ROM(Read Only Memory)、および書き換え可能な不揮発性メモリ等)とを含む。制御装置200は、入力ポートに接続された各種機器および各種センサから信号を受信し、受信した信号に基づいて出力ポートに接続された各種機器を制御する。記憶装置に記憶されているプログラムをCPUが実行することで、各種制御が実行される。ただし、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
エンジン100は、バンク10A,10Bと、吸気マニホールド28A,28Bと、排気マニホールド50とを備える。バンク10Aには、複数の気筒12Aが形成される。バンク10Bには、複数の気筒12Bが形成される。各気筒12A,12B内にはピストン(図示せず)が収納されており、ピストンの頂部と気筒の内壁とによって燃焼室(燃料が燃焼する空間)が形成されている。各気筒12A,12B内をピストンが摺動することによって燃焼室の容積が変化する。また、各気筒12A,12B内に燃料を噴射供給するインジェクタ(図示せず)が気筒ごとに設けられており、エンジン100の作動中においては、制御装置200によって各インジェクタの噴射タイミングおよび燃料噴射量が制御される。なお、制御装置200は、アクセルペダル(図示せず)の踏込み量および車両の走行速度(車速)などに基づいて、各インジェクタから噴射される燃料の量および噴射タイミングを決定する。
過給機30は、コンプレッサ33とタービン34と可変ノズル機構35と回転軸36とを備える。また、過給機40は、コンプレッサ43とタービン44と可変ノズル機構45と回転軸46とを備える。過給機30および40は、たとえば互いに同じ容量(サイズ)を有するターボチャージャーである。可変ノズル機構35、45はそれぞれノズル開度が大きくなるほどタービン34、44を流れる排気量が多くなるように構成され、可変ノズル機構35および45の各々のノズル開度は、制御装置200によって制御される。過給機30,40の詳細については後述する。
エンジン100の吸気系は、吸気通路と、吸気通路に設けられた各種装置(エアクリーナ20、コンプレッサ33,43、インタークーラ25、および吸気絞り弁26等)とを含む。吸気通路(より特定的には、エアクリーナ20から吸気マニホールド28A,28Bまでの通路)は、吸入通路21,22(より特定的には、エアクリーナ20からコンプレッサ33,43までの通路)と、過給通路37,47(より特定的には、コンプレッサ33,43から過給通路37および47の合流部P1までの通路)と、吸気通路24(より特定的には、合流部P1からインタークーラ25までの通路)と、吸気通路27(より特定的には、インタークーラ25から吸気マニホールド28A,28Bまでの通路)とを含む。なお、吸入通路22は、吸入通路21に並列して設けられている。この実施の形態に係る吸入通路21、22は、それぞれ本発明に係る「第1吸入通路」、「第2吸入通路」の一例に相当する。また、この実施の形態に係る過給通路37、47は、それぞれ本発明に係る「第1過給通路」、「第2過給通路」の一例に相当する。
一方、エンジン100の排気系は、排気通路と、排気通路に設けられた各種装置(タービン34,44、および図示しない排気浄化装置等)とを含む。排気通路(より特定的には、排気マニホールド50から車外への排出口(図示せず)までの通路)は、排気通路51(より特定的には、排気マニホールド50から排気通路51の分岐部P2までの通路)と、排気通路52A,52B(より特定的には、分岐部P2からタービン34,44までの通路)と、排気通路53A,53B(より特定的には、タービン34,44から排気通路53Aおよび53Bの合流部P3までの通路)とを含む。
エアクリーナ20は、吸入通路21および22の吸気上流側に配置され、空気中の異物を除去する。吸入通路21および22の各々には、図示しない吸気口から吸入され、エアクリーナ20によって異物が除去された空気が供給される。吸入通路21はコンプレッサ33の吸気流入口に接続され、吸入通路22はコンプレッサ43の吸気流入口に接続されている。
過給機30のコンプレッサ33の吸気流出口は、過給通路37に接続されている。コンプレッサ33は、吸入通路21から供給される吸入空気を圧縮して、圧縮した吸入空気を過給通路37へ吐出するように構成される。タービン34は、コンプレッサ33に接続された状態でエンジン100の排気通路(より特定的には、排気通路52Aと排気通路53Aとの間)に設けられている。コンプレッサ33とタービン34とは回転軸36によって連結されており、一体的に回転する。過給機30は、エンジン100の排気が排気通路52Aおよび53Aを流れることによりタービン34とともにコンプレッサ33が回転するように構成される。コンプレッサ33が回転することにより、コンプレッサ33において吸入空気が圧縮される。
過給機40のコンプレッサ43の吸気流出口は、過給通路47に接続されている。コンプレッサ43は、吸入通路22から供給される吸入空気を圧縮して、圧縮した吸入空気を過給通路47へ吐出するように構成される。タービン44は、コンプレッサ43に接続された状態でエンジン100の排気通路(より特定的には、排気通路52Bと排気通路53Bとの間)に設けられている。コンプレッサ43とタービン44とは回転軸46によって連結されており、一体的に回転する。過給機40は、エンジン100の排気が排気通路52Bおよび53Bを流れることによりタービン44とともにコンプレッサ43が回転するように構成される。コンプレッサ43が回転することにより、コンプレッサ43において吸入空気が圧縮される。
この実施の形態に係る過給機30、40は、それぞれ本発明に係る「第1過給機」、「第2過給機」の一例に相当する。また、この実施の形態に係るコンプレッサ33、43、タービン34、44は、それぞれ本発明に係る「第1コンプレッサ」、「第2コンプレッサ」、「第1タービン」、「第2タービン」の一例に相当する。
過給通路37および47は合流部P1(吸気合流部)で合流して吸気通路24の一方端につながっている。吸気通路24の他方端にはインタークーラ25を介して吸気通路27の一方端が接続されている。吸気通路27は途中で2方向に分岐しており、吸気通路27の各分岐路は吸気マニホールド28A,28Bに接続されている。このように、エンジン100の吸気通路は、コンプレッサ33で圧縮された吸入空気とコンプレッサ43で圧縮された吸入空気とが、過給通路37および47の合流部P1で合流してからエンジン100に供給されるように構成される。また、合流部P1で合流した空気は、エンジン100に供給される前にインタークーラ25によって冷却される。コンプレッサ33により圧縮された吸入空気は、過給通路37、吸気通路24、インタークーラ25、および吸気通路27を通じてエンジン100へ供給される。また、コンプレッサ43により圧縮された吸入空気は、過給通路47、吸気通路24、インタークーラ25、および吸気通路27を通じてエンジン100へ供給される。なお、吸気通路27の途中(より特定的には、吸気通路27の分岐部よりも上流側)には吸気絞り弁26が設けられている。吸気絞り弁26は、バルブ、モータ、および開度センサ(スロットルポジションセンサ)等を含んで構成され、吸気絞り弁26の開度は、制御装置200によって制御される。
過給機40の吐出側に接続される過給通路47の途中には吸気切替バルブ(以下、「ACV」と称する)62が設けられている。この実施の形態では、ACV62として、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるオンオフバルブを採用する。ACV62は、たとえばノーマリーオフのVSV(負圧切換弁)である。この実施の形態に係るACV62は、本発明に係る「第1バルブ」の一例に相当する。
また、過給通路47におけるACV62よりも上流側(コンプレッサ43側)の部位には、バイパス通路48の一方端が接続されている。バイパス通路48の他方端は吸入通路21に接続されている。過給通路47と吸入通路21とは、互いにバイパス通路48を介して接続されている。バイパス通路48は、過給通路47を流れる空気の少なくとも一部をコンプレッサ33よりも上流側に還流させるように構成される。バイパス通路48を通じて吸入通路21に還流した空気は、コンプレッサ33に供給される。
過給通路47と吸入通路21とをつなぐバイパス通路48の途中には、吸気バイパスバルブ(以下、「ABV」と称する)64が設けられている。バイパス通路48を通じて吸入通路21へ還流する空気の量(ひいては、還流の有無)は、ABV64によって変更可能である。
ABV64は、全閉開度と全開開度と中間開度とのいずれにも開度調整可能に構成される。ABV64の開度は0%〜100%で表され、0%は全閉開度、100%は全開開度に相当する。ABV64は、全閉開度(最小開度)と全開開度(最大開度)との間(0%〜100%)を連続的に変更可能に構成される。ABV64は、たとえば、弁体と、弁体を駆動するモータと、開度センサとを含んで構成される。ABV64の開度が大きくなるほど、吸入通路21へ還流する空気流量が多くなり、コンプレッサ43の吐出圧力が低くなる。ABV64の開度は、制御装置200によって制御される。この実施の形態に係るABV64は、本発明に係る「第2バルブ」の一例に相当する。
吸気マニホールド28A、28Bは、それぞれバンク10A、10Bにおける気筒12A、12Bの吸気ポート(図示せず)に連結されている。また、バンク10A、10Bにおける気筒12A、12Bの排気ポート(図示せず)は、排気マニホールド50に連結されている。また、排気マニホールド50は、排気通路51に接続されている。各排気ポートから排出される排気ガスは、排気マニホールド50に集められた後、排気通路51およびEGR通路81へ排出される。
排気マニホールド50はEGR通路81を介してEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置80に接続されており、排気マニホールド50から排出される排気ガスの一部は、EGR通路81およびEGR装置80を通じて吸気通路27に還流し得る。他方、還流しない排気ガス(すなわち、車外へ向かう排気ガス)は、排気マニホールド50から排気通路51へ排出される。
排気通路51の一方端は排気マニホールド50に接続され、排気通路51の他方端は分岐部P2で排気通路52A,52Bにつながっている。排気通路52Aはタービン34の排気流入口に接続され、タービン34の排気流出口には、排気通路53Aが接続されている。一方、排気通路52Bはタービン44の排気流入口に接続され、タービン44の排気流出口には、排気通路53Bが接続されている。
排気通路52Bの途中には排気切替バルブ(以下、「ECV」と称する)66が設けられている。この実施の形態では、ECV66として、制御装置200によってON(開)/OFF(閉)制御されるオンオフバルブを採用する。ECV66は、たとえばノーマリーオンのVSV(負圧切換弁)である。この実施の形態に係るECV66は、本発明に係る「第3バルブ」の一例に相当する。
排気通路53Aおよび53Bは合流部P3(排気合流部)で合流する。タービン34および44の各々を通った排気は合流部P3で合流してから、合流部P3よりも排気下流側に設けられた排気浄化装置およびマフラー等(いずれも図示せず)を経由して、排出口(図示せず)から車外へ排出される。
上記のように、エンジンの排気通路は、排気上流側から排気下流側に向かって、排気通路51と、分岐部P2と、分岐部P2で排気通路51から分岐した排気通路52Aおよび52Bと、排気通路53Aおよび53Bが合流する合流部P3とを含む。排気通路52Aと排気通路53Aとは、互いに過給機30のハウジング内に形成された通路(図示せず)を介してつながっている。また、排気通路52Bと排気通路53Bとは、互いに過給機40のハウジング内に形成された通路(図示せず)を介してつながっている。この実施の形態に係る排気通路51は、本発明に係る「第1排気通路」の一例に相当する。また、この実施の形態に係る排気通路52Aおよび53Aは、本発明に係る「第2排気通路」を構成する。また、この実施の形態に係る排気通路52Bおよび53Bは、本発明に係る「第3排気通路」を構成する。
この実施の形態では、吸入通路21に吸入空気量センサ71(たとえば、エアフローメータ)が設けられている。吸入空気量センサ71は、コンプレッサ33の吸入空気量Ga1を検出して制御装置200へ出力するように構成される。また、吸入通路22には吸入空気量センサ72(たとえば、エアフローメータ)が設けられている。吸入空気量センサ72は、コンプレッサ43の吸入空気量Ga2を検出して制御装置200へ出力するように構成される。過給通路37には圧力センサ73が設けられている。圧力センサ73は、コンプレッサ33の吐出圧力P31を検出して制御装置200へ出力するように構成される。また、過給通路47におけるACV62よりも上流側(コンプレッサ43側)の部位には圧力センサ74が設けられている。圧力センサ74は、コンプレッサ43の吐出圧力P32を検出して制御装置200へ出力するように構成される。なお、図1には一部のセンサしか示していないが、エンジン100の状態等を検出して制御装置200へ出力する各種センサ(たとえば、吸気圧センサ、排気圧センサ、エンジン回転速度センサ、エンジン冷却水温センサ、アクセル開度センサ、大気圧センサ、外気温センサ等)がさらに設けられていてもよい。また、コンプレッサ33,43の回転速度を検出するために、回転軸36,46に回転速度センサを設けてもよい。
この実施の形態に係る過給システムは、並列に接続された過給機30および40を有するパラレルツインターボシステムである。この過給システムでは、過給機30(プライマリターボ)のみを用いてエンジン100の吸気を過給するシングルモードと、過給機30および40(プライマリターボおよびセカンダリターボ)の両方を用いてエンジン100の吸気を過給するツインモードとを切り替える制御が行なわれる。
ところで、パラレルツインターボシステムにおいて、過給モードをシングルモードからツインモードに切り替える際には、シングルモードにおいて停止していたセカンダリターボの運転が開始されてから、セカンダリターボの過給圧が十分高くなるまでの間に、セカンダリターボにおいてサージングが発生しやすくなる。
こうしたサージングを抑制するためには、シングルモードから助走モードを経てツインモードへ切り替える制御を行なうことが考えられる。たとえば、セカンダリターボの過給通路(コンプレッサの吐出側の通路)を流れる空気の少なくとも一部をプライマリターボの吸入通路(コンプレッサの吸気流入側の通路)に還流させるバイパス通路にACVを設け、助走モードにおいてACVを開くことが考えられる。ACVを開くことで、セカンダリターボのコンプレッサの吐出圧力が低下し、セカンダリターボのサージングが抑制される。
上記のような助走モードを採用するパラレルツインターボシステムでは、一般に、ACVとしてオンオフバルブが採用され、助走モードにおいてはACVの開度が全開開度にされる。ACVは助走モードにおいてのみ開かれ、シングルモードおよびツインモードの各々においてはACVが閉じた状態になっている。助走モードにおいては、ACVの開度を大きくするほどセカンダリターボのサージングが生じにくくなることから、ACVを中間開度にするメリットはないと考えられ、ACVとしては低コストかつ堅牢なオンオフバルブが採用されている。
しかしながら、セカンダリターボの助走時間(セカンダリターボの運転が開始されてからセカンダリターボの過給圧が十分高くなるまでの時間)が長くなると、過給圧段差が発生し、加速の遅延(ひいては、ドライバビリティの悪化)につながることがある。
そこで、この実施の形態に係る過給システムでは、ABV64として、全閉開度と全開開度と中間開度とのいずれにも開度調整可能に構成されるバルブを採用し、ABV64の開度が中間開度である状態で助走モードを開始する。これにより、ABV64を全開状態にして助走モードを開始する場合と比べて、助走モードにおける過給機40の過給圧の上昇速度を速めることができる。そして、過給機40の過給圧の上昇速度が速くなることで、過給機40の助走時間を短くすることができる。また、この実施の形態に係る過給システムでは、制御装置200が、助走モードにおける過給機40のコンプレッサ43の動作点を監視する。
なお、コンプレッサの動作点は、コンプレッサマップ上において、コンプレッサにおける吸入圧力に対する吐出圧力の比率(すなわち、コンプレッサの圧力比)と、コンプレッサに吸入される空気量(すなわち、コンプレッサの吸入空気量)と、コンプレッサの回転速度とのうちの少なくとも2つのパラメータによって特定される。この実施の形態では、制御装置200の記憶装置(より特定的には、保存用ストレージ)にコンプレッサ33,43のコンプレッサマップが予め記憶されている。コンプレッサの動作点がコンプレッサマップ上のどこに存在するかに基づいて、コンプレッサの動作状態を判定することができる。たとえば、コンプレッサマップ上のサージング領域にコンプレッサの動作点が存在するときには、コンプレッサにおいてサージングが発生しやすくなる。また、コンプレッサマップ上のチョーク領域にコンプレッサの動作点が存在するときには、コンプレッサの作動効率が低下する。
この実施の形態では、コンプレッサ33および43の各々の吸入圧力が、大気圧と略一致する。このため、制御装置200は、圧力センサ74により検出されるコンプレッサ43の吐出圧力P32に基づいて、コンプレッサ43の圧力比(≒コンプレッサ43の吐出圧力/大気圧)を推定できる。また、制御装置200は、吸入空気量センサ72の出力に基づいてコンプレッサ43の吸入空気量Ga2を取得できる。そして、制御装置200は、コンプレッサ43の圧力比とコンプレッサ43の吸入空気量Ga2とによって、コンプレッサ43のコンプレッサマップ上の動作点を特定することができる。
この実施の形態に係る過給システムでは、助走モードにおけるコンプレッサ43の動作点を監視し、コンプレッサ43の動作点がコンプレッサマップ上のサージング領域内にあると判断される場合には、ABV64の開度を大きくする。ABV64の開度が大きくなると、コンプレッサ43の吐出圧力が低下する。これにより、ABV64での圧力損失が減り、コンプレッサ43の動作点はコンプレッサマップ上のサージング領域外へ移動する。その結果、過給機40のサージングが抑制されることになる。
上記のような制御を行なうことで、助走モードにおける過給機40の過給圧の上昇速度を速めて助走時間を短くすることができる。また、助走モードにおいて過剰に過給圧が高くなったときには、ABV64によりコンプレッサ43の吐出圧力を下げて過給機40のサージングを抑制することができる。よって、過給機40の助走運転を行なう助走モードにおいて、過給機40のサージングを抑制することと、助走時間を短くすることとの両立を図ることができる。また、過給モードがシングルモードからツインモードへ短時間で移行することにより、過給モード切替時における過給圧段差が抑制され、ドライバビリティが改善される。
以下、図2〜図6を用いて、シングルモードから助走モードを経てツインモードへ過給モードを切り替える制御(以下、単に「過給モード切替制御」とも称する)について説明する。この実施の形態に係るシングルモード、ツインモードは、それぞれ本発明に係る「第1過給モード」、「第2過給モード」の一例に相当する。なお、図2〜図4では、便宜上EGR装置80を省略しているが、EGR装置80による還流は必要に応じて実行される。
図2は、この実施の形態に係る過給システムのシングルモードにおける状態を示す図である。図2を参照して、シングルモードでは、ACV62、ABV64、およびECV66の全てが閉じた状態(ACV:閉、ABV:閉、ECV:閉)でコンプレッサ33のみでエンジン100の吸気が過給される。
図3は、この実施の形態に係る過給システムの助走モードにおける状態を示す図である。図3を参照して、助走モードでは、ACV62が閉じABV64およびECV66の各々が開いた状態(ACV62:閉、ABV64:開、ECV:開)で過給機40の助走運転(より特定的には、過給機40の過給圧を上昇させる運転)が行なわれる。
図4は、この実施の形態に係る過給システムのツインモードにおける状態を示す図である。図4を参照して、ツインモードでは、ACV62およびECV66の各々が開きABV64が閉じた状態(ACV62:開、ABV64:閉、ECV:開)でコンプレッサ33および43の両方を用いてエンジン100の吸気が過給される。
図5は、制御装置200により実行される過給モード切替制御の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、過給モードがシングルモードである状況においてツインモードへの切替要求(以下、「モード切替要求」とも称する)が発生したときに実行される。すなわち、図5の処理が実行されるタイミングでは、過給モードがシングルモードになっており、ACV62、ABV64、およびECV66の全てが閉じた状態になっている。なお、この実施の形態では、助走モードにおいて可変ノズル機構35,45のノズル開度を一定にする。ただしこれに限られず、可変ノズル機構35,45のノズル開度によって、助走モードにおけるコンプレッサ43の動作点が調整されてもよい。
上記モード切替要求の発生条件は任意に設定できる。たとえば、エンジン100の運転状態が所定の状態(たとえば、高負荷状態)になったときにモード切替要求が発生するようにしてもよい。また、過給機30が所定の状態(たとえば、高回転速度の状態)になったときにモード切替要求が発生するようにしてもよい。また、過給機30,40の効率および車両のドライバビリティなどの観点から上記モード切替要求の発生条件を設定してもよい。
ステップ(以下、ステップを「S」と記載する)11にて、制御装置200は、ABV64の開度を所定の初期値Vに調整する。この実施の形態では、初期値Vを中間開度とする。より具体的には、助走モードが開始されるタイミングにおいてコンプレッサ43の動作点がコンプレッサマップにおけるサージライン上に存在するように、初期値Vを設定する。コンプレッサ43の動作点は、ABV64の開度に応じて変化する。
図6は、コンプレッサ43のコンプレッサマップの一例を示す図である。図6の縦軸は、コンプレッサ43の圧力比(より特定的には、コンプレッサ43における吸入圧力に対する吐出圧力の比率)を示す。図6の横軸は、コンプレッサ43の吸入空気量(より特定的には、吸入通路22からコンプレッサ43に吸入される空気量)を示す。図6中のサージラインは、サージング領域(すなわち、コンプレッサ43においてサージングが発生しやすくなる動作点の領域)の内外の境界を示す線である。コンプレッサマップ上のサージラインよりも、コンプレッサ43の圧力比が高くなったり、コンプレッサ43の吸入空気量が少なくなったりすると、コンプレッサ43の動作点がサージング領域内に存在するようになる。なお、過給機40の助走運転では、コンプレッサ43においてチョークよりもサージングが発生しやすいため、図6ではチョークライン(ひいては、チョーク領域)を割愛している。
図6を参照して、動作点Aは、助走モードの開始タイミングにおけるコンプレッサ43の動作点である。助走モードの開始タイミングでは、コンプレッサ43の吸入空気量が少なくなっており、助走モードが開始されてから次第にコンプレッサ43の吸入空気量が増加する。この実施の形態では、動作点Aがサージライン上に存在するようにABV64の開度が調整される。より具体的には、S11において、動作点Aがサージライン上に存在するように初期値Vが決定される。こうした初期値Vは、予め実験等によって求められた値(たとえば、50%)であってもよい。また、S11において、制御装置200の記憶装置に記憶されているコンプレッサ43のコンプレッサマップと、圧力センサ74により検出されるコンプレッサ43の吐出圧力P32と、吸入空気量センサ72により検出されるコンプレッサ43の吸入空気量Ga2とに基づいて、初期値Vが決定されてもよい。図6中の動作点B1〜B3については後述する。
再び図5を参照して、S12にて、制御装置200は、ECV66の開度を全開開度にする。これにより、過給モードが助走モード(図3参照)になり、助走モード(すなわち、過給機40の助走運転)が開始される。S11の処理により、助走モードの開始タイミングにおけるコンプレッサ43の動作点は、コンプレッサ43のコンプレッサマップにおけるサージライン上に存在する。ECV66が全開状態になることによって、排気ガスが第3排気通路(排気通路52Bおよび53B)を流れてタービン44を回転させる。このため、助走モードの開始から時間が経過するにつれてコンプレッサ43の吸入空気量が増加する。また、コンプレッサ43の吸入空気量の増加に伴ってコンプレッサ43の圧力比(ひいては、過給機40の過給圧)が上昇する。
過給機40の助走運転中においては、コンプレッサ43の吸入空気量および圧力比が上昇する。ただし、過給機40の助走運転中においては、コンプレッサ43から吐出された空気の一部がバイパス通路48を経由して吸入通路21に戻される。吸入通路21に戻される空気の量は、バイパス通路48に設けられたABV64の開度に応じて変わる。このため、ABV64の開度によってコンプレッサ43の動作点の移動の仕方が変わる。再び図6を参照して、ABV64の開度が小さい場合には、吸入空気量の上昇量に対する圧力比の上昇量の割合(ひいては、動作点の推移を示すグラフの傾き)が大きくなり、コンプレッサ43の動作点はサージング領域内へ向かって(たとえば、動作点Aから動作点B1へ)移動する。他方、ABV64の開度が大きい場合には、吸入空気量の上昇量に対する圧力比の上昇量の割合(ひいては、動作点の推移を示すグラフの傾き)が小さくなり、コンプレッサ43の動作点はサージング領域外へ向かって(たとえば、動作点Aから動作点B2へ)移動する。この実施の形態では、コンプレッサ43の動作点が概ねサージライン上を移動する(たとえば、動作点Aから動作点B3へ移動する)ように、ABV64の開度が調整される。より具体的には、以下に説明するように、コンプレッサ43の動作点がサージング領域内に入る(S13にてYESと判断される)たびに、ABV64の開弁操作(S14)が行なわれることにより、コンプレッサ43の動作点がサージライン付近に調整される。
再び図5を参照して、S13にて、制御装置200は、コンプレッサ43(第2コンプレッサ)の動作点がサージング領域内にあるか否かを判断する。
S13においてコンプレッサ43の動作点がサージング領域内にあると判断された場合(S13にてYES)には、制御装置200は、S14において、ABV64の開度を所定量(所定開度)だけ大きくする開弁操作を行なう。その後、処理はS13へ戻る。開弁操作における所定量は、たとえば予め実験等により適切な値が求められて、制御装置200の記憶装置に格納されている。記憶装置に格納されている所定量は、固定値であってもよいし、制御装置200によって変更できてもよい。
制御装置200は、過給モードが助走モードである状況において、コンプレッサ43の動作点がサージング領域内にあるか否かを判断し(S13)、コンプレッサ43の動作点がサージング領域内にあると判断される場合(S13にてYES)には、S14においてABV64の開弁操作を行なった後、コンプレッサ43の動作点がサージング領域内にあるか否かのサージ判断(S13)を再度行ない、コンプレッサ43の動作点がサージング領域外に出ていない場合(S13にてYES)には、コンプレッサ43の動作点がサージング領域外に出るまで(すなわち、S13にてNOと判断されるまで)ABV64の開弁操作(S14)とサージ判断(S13)とを繰り返す。こうすることで、コンプレッサ43の動作点がサージライン付近に調整される。コンプレッサ43の動作点がサージライン付近に存在するときには、過給機40の過給圧の上昇が速い。このため、助走時間が短くなる。また、過給機40の過給圧が高くなって過給機40にサージングが生じやすくなったとき(すなわち、コンプレッサ43の動作点がサージング領域内に入ったとき)には、ABV64によりコンプレッサ43の吐出圧力を下げて過給機40のサージングを抑制することができる。よって、助走モードにおいて過給機40のサージングを抑制することと、助走時間を短くすることとの両立が図られる。
S13においてコンプレッサ43の動作点がサージング領域内にないと判断された場合(S13にてNO)には、制御装置200は、S15において、コンプレッサ43(第2コンプレッサ)の吐出圧力P32が所定圧力以上であるか否かを判断する。この実施の形態では、所定圧力として、コンプレッサ33(第1コンプレッサ)の吐出圧力P31を採用する。コンプレッサ33の吐出圧力P31は圧力センサ73によって検出され、コンプレッサ43の吐出圧力P32は圧力センサ74によって検出される。なお、上記の所定圧力は、吐出圧力P31に限られず任意に設定できる。上記の所定圧力は、たとえば、吐出圧力P31と吐出圧力P32との差に応じて可変であってもよい。そして、吐出圧力P31と吐出圧力P32との差が所定の許容範囲内である場合に、S15においてYESと判断されるようにしてもよい。
S15においてコンプレッサ43の吐出圧力P32がコンプレッサ33の吐出圧力P31以上ではないと判断された場合(S15にてNO)には、処理はS13へ戻る。そして、S15においてYESと判断されるまで、S13〜S15によって助走モード(すなわち、過給機40の助走運転)が実行される。助走モードにおいては、コンプレッサ43の吐出圧力P32が上昇する。そして、コンプレッサ33の吐出圧力P31とコンプレッサ43の吐出圧力P32とが等しくなったタイミングで、S15においてYESと判断される。
S15においてコンプレッサ43の吐出圧力P32がコンプレッサ33の吐出圧力P31以上であると判断された場合(S15にてYES)には、制御装置200は、S16において、ABV64の開度を全閉開度にするとともに、ACV62の開度を全開開度にする。これにより、過給モードがツインモード(図4参照)になり、ツインモードが開始される。
制御装置200は、助走モードにおいて、コンプレッサ43の動作点がサージング領域に入っておらず、かつ、コンプレッサ43の吐出圧力P32がコンプレッサ33の吐出圧力P31以上である場合に、過給モードを助走モードからツインモードへ移行させる。より具体的には、過給モードは、コンプレッサ33の吐出圧力P31とコンプレッサ43の吐出圧力P32とが等しくなったタイミングで、助走モードからツインモードへ移行する。ツインモードの開始タイミングにおけるコンプレッサ33の吐出圧力P31とコンプレッサ43の吐出圧力P32とが異なる場合には、ツインモードの開始直後において過給機30および40のサージングが生じやすくなる。たとえば、コンプレッサ43の吐出圧力P32に対してコンプレッサ33の吐出圧力P31が高過ぎる場合には、コンプレッサ33によって圧縮された空気がコンプレッサ43へ逆流し、コンプレッサ43においてサージングが生じやすくなる。また、コンプレッサ33の吐出圧力P31に対してコンプレッサ43の吐出圧力P32が高過ぎる場合には、コンプレッサ43によって圧縮された空気がコンプレッサ33へ逆流し、コンプレッサ33においてサージングが生じやすくなる。この実施の形態に係る過給モード切替制御(図5)では、ツインモードの開始タイミングにおけるコンプレッサ33の吐出圧力P31とコンプレッサ43の吐出圧力P32とが等しくなることで、ツインモードの開始直後における過給機30および40のサージングが抑制される。
以上説明したように、この実施の形態に係る過給システムでは、ABV64の開度が中間開度である状態で助走モードが開始される(S11〜S12)。これにより、ABV64を全開状態にして助走モードを開始する場合と比べて、助走モードにおけるABV64の過給圧の上昇速度を速めることができる。そして、過給機40の過給圧の上昇速度が速くなることで、過給機40の助走時間を短くすることができる。また、制御装置200は、助走モードにおけるコンプレッサ43の動作点を監視し(S13)、コンプレッサ43の動作点がコンプレッサ43のコンプレッサマップ上のサージング領域内にあると判断される場合(S13にてYES)には、ABV64の開度を大きくする(S14)。これにより、コンプレッサ43の動作点はコンプレッサマップ上のサージング領域外へ移動する。その結果、過給機40のサージングが抑制されることになる。すなわち、この実施の形態に係る過給システムによれば、過給機40の助走運転を行なう助走モードにおいて、過給機40のサージングを抑制することと、助走時間を短くすることとの両立を図ることが可能になる。
また、この実施の形態に係る過給システムでは、ACV62およびECV66の各々がオンオフバルブである。すなわち、ACV62およびECV66の各々は、全閉開度と全開開度と中間開度とのうちの全閉開度および全開開度のみに開度調整可能に構成される。そして、制御装置200は、シングルモードではACV62およびECV66の両方を全閉状態にし、助走モードでは、ACV62を全閉状態、ECV66を全開状態にし、ツインモードではACV62およびECV66の両方を全開状態にするように構成される(図2〜図4参照)。こうした構成により、ACV62およびECV66の各々として、低コストかつ堅牢なオンオフバルブを採用しつつ、過給機30および40による過給を好適に行なうことが可能になる。
以下、変形例について説明する。
上記実施の形態では、助走モードが開始されるタイミングにおいてコンプレッサ43の動作点がコンプレッサマップにおけるサージライン上に存在するように、初期値Vを設定している。しかしこれに限られず、助走モードが開始されるタイミングにおいてコンプレッサ43の動作点がコンプレッサマップにおけるサージング領域内に存在するように、初期値Vを設定してもよい。助走モードにおいて図5のS13およびS14が繰り返し実行されることにより、コンプレッサ43の動作点がサージング領域内に存在する場合には、制御装置200によってABV64の開度が大きくされる。これにより、コンプレッサ43の動作点はコンプレッサマップ上のサージング領域外へ移動するため、コンプレッサ43の動作点がコンプレッサマップ上のサージング領域内に長時間とどまること(ひいては、過給機40に過剰なサージングが生じること)は避けられる。
上記実施の形態では、コンプレッサ43の圧力比とコンプレッサ43の吸入空気量とによって特定される動作点、およびその動作点に対応するコンプレッサマップを採用している。しかしこれに限られず、コンプレッサ43の圧力比とコンプレッサ43の吸入空気量とのいずれか一方に代えて、またはコンプレッサ43の圧力比とコンプレッサ43の吸入空気量とに加えて、コンプレッサ43の回転速度を用いてコンプレッサ43の動作点を特定するようにしてもよい。このように特定されるコンプレッサ43の動作点、およびこうした動作点に対応するコンプレッサマップを採用する場合にも、コンプレッサ43の動作点がコンプレッサマップ上のどこに存在するかに基づいて、コンプレッサ43の動作状態を判定することができる。
過給システムの構成は、図1に示した構成に限られず適宜変更可能である。上記実施の形態では、過給システムにおける2つの過給機が同じ容量(サイズ)を有しているが、過給システムにおける2つの過給機は異なる容量(サイズ)を有していてもよい。また、上記実施の形態では、2つの過給機を備える過給システムについて説明したが、過給システムは3つ以上の過給機を備えていてもよい。また、ACV62およびECV66の少なくとも一方が、全閉開度と全開開度と中間開度とのいずれにも開度調整可能に構成されていてもよい。
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10A,10B バンク、12A,12B 気筒、20 エアクリーナ、21,22 吸入通路、24,27 吸気通路、25 インタークーラ、26 吸気絞り弁、28A,28B 吸気マニホールド、30,40 過給機、34,44 タービン、33,43 コンプレッサ、35,45 可変ノズル機構、36,46 回転軸、37,47 過給通路、48 バイパス通路、50 排気マニホールド、51,52A,52B,53A,53B 排気通路、62 ACV、64 ABV、66 ECV、71,72 吸入空気量センサ、73,74 圧力センサ、80 EGR装置、81 EGR通路、100 エンジン、200 制御装置。

Claims (5)

  1. 第1吸入通路に接続され、前記第1吸入通路から供給される吸入空気を圧縮して第1過給通路へ吐出する第1コンプレッサを有する第1過給機と、
    前記第1吸入通路に並列して設けられた第2吸入通路に接続され、前記第2吸入通路から供給される吸入空気を圧縮して第2過給通路へ吐出する第2コンプレッサを有する第2過給機と、
    前記第2過給通路に設けられた第1バルブと、
    前記第2過給通路と前記第1吸入通路とをつなぐバイパス通路に設けられた第2バルブと、
    前記第1バルブおよび前記第2バルブの両方が閉じた状態で前記第1コンプレッサを用いてエンジンの吸気を過給する第1過給モードから、前記第1バルブが閉じ前記第2バルブが開いた状態で前記第2過給機の助走運転を行なう助走モードを経て、前記第1バルブが開き前記第2バルブが閉じた状態で前記第1コンプレッサおよび前記第2コンプレッサの両方を用いて前記エンジンの吸気を過給する第2過給モードへ過給モードを切り替える制御を実行する制御装置とを備え、
    前記第2バルブは、全閉開度と全開開度と中間開度とのいずれにも開度調整可能に構成され、
    前記制御装置は、前記第2バルブの開度が中間開度である状態で前記助走モードを開始し、前記過給モードが前記助走モードであるときに、前記第2コンプレッサのコンプレッサマップ上において、前記第2コンプレッサにおける吸入圧力に対する吐出圧力の比率と、前記第2コンプレッサに吸入される空気量と、前記第2コンプレッサの回転速度とのうちの少なくとも2つのパラメータによって特定される動作点がサージング領域内にある場合には、前記第2バルブの開度を大きくする、過給システム。
  2. 前記助走モードの開始タイミングにおける前記動作点は、前記コンプレッサマップにおいて、前記サージング領域の内外の境界を示すサージライン上、または前記サージング領域内に存在する、請求項1に記載の過給システム。
  3. 前記制御装置は、前記助走モードにおいて、前記動作点が前記サージング領域内にある場合には、前記第2バルブの開度を所定量だけ大きくする開弁操作を行なった後、前記動作点が前記サージング領域内にあるか否かのサージ判断を行ない、前記動作点が前記サージング領域外に出ていない場合には、前記動作点が前記サージング領域外に出るまで前記開弁操作と前記サージ判断とを繰り返す、請求項1または2に記載の過給システム。
  4. 前記制御装置は、前記助走モードにおいて、前記動作点が前記サージング領域に入っておらず、かつ、前記第2コンプレッサの吐出圧力が所定圧力以上である場合に、前記過給モードを前記助走モードから前記第2過給モードへ移行させる、請求項3に記載の過給システム。
  5. 前記エンジンの排気通路は、排気上流側から排気下流側に向かって、第1排気通路と、分岐部と、前記分岐部で前記第1排気通路から分岐した第2排気通路および第3排気通路と、前記第2排気通路および前記第3排気通路が合流する排気合流部とを含み、
    前記第1過給機は、前記第1コンプレッサに接続された状態で前記第2排気通路に設けられた第1タービンを有し、前記エンジンの排気が前記第2排気通路を流れることにより前記第1タービンとともに前記第1コンプレッサが回転するように構成され、
    前記第2過給機は、前記第2コンプレッサに接続された状態で前記第3排気通路に設けられた第2タービンを有し、前記エンジンの排気が前記第3排気通路を流れることにより前記第2タービンとともに前記第2コンプレッサが回転するように構成され、
    前記過給システムは、前記第3排気通路に設けられた第3バルブをさらに備え、
    前記第1バルブおよび前記第3バルブの各々は、全閉開度および全開開度のみに開度調整可能に構成され、
    前記制御装置は、前記第1過給モードでは前記第1バルブおよび前記第3バルブの両方を全閉状態にし、前記助走モードでは、前記第1バルブを全閉状態、前記第3バルブを全開状態にし、前記第2過給モードでは前記第1バルブおよび前記第3バルブの両方を全開状態にする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の過給システム。
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