JP7159904B2 - 液晶パネル用封止材および液晶パネル - Google Patents

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Description

本発明は、チオウレタン化合物と多価エン化合物を含有する液晶パネル用封止材および液晶パネルに関する。より詳しくは、フィルム液晶パネルに好適に使用しうる液晶パネル用封止材および液晶パネルに関する。
液晶滴下工法は液晶パネルの製造方法として一般的である。液晶滴下工法は、基材の一方に封止材を塗布しパターンを形成し、該パターンの枠内に液晶を滴下して、封止材が未硬化の状態でもう一対の基材を高真空下で貼りあわせた後封止材を硬化するという工法である。液晶滴下工法に使用される封止材は製造過程で発生するアウトガスにより接着性や硬化物の透明性が悪くなるという問題や、液晶の汚染を引き起こし電圧印加時に液晶の配向が乱れてしまうという問題があった。
これらの問題に対し、チオール基を有するチオールモノマーと炭素-炭素二重結合を有するエンモノマーとイソシアネート化合物を含有する封止材を用いることで、アウトガスの発生を抑制し接着性および硬化物の透明性を向上できることが知られている(特許文献1)。また、特許文献1では、封止材硬化後、湿熱環境下で封止材と液晶とが接触した状態でも液晶の配向乱れが発生しないことを確認している。
しかしながら、特許文献1の封止材では、未硬化状態で液晶と接触した場合、封止材成分が液晶と混ざり合ってしまうため、耐液晶汚染性が悪く、封止材が硬化前に液晶と長い間接する製造条件では液晶を汚染してしまうという問題があった。
また、近年ではフレキシブルな液晶パネルの開発が進んでおり、このような液晶パネルに使用される基板には、剛直なガラスに代わり柔軟なフィルムが用いられている。しかしながら、特許文献1の封止材はその硬化物が、フレキシブルなフィルムに追随する柔軟性と強靭性を併せ持っておらず、フィルムへの追随性が不十分であるという課題を有していた。
特開2017-45646号公報
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その課題は、封止材が未硬化の状態で液晶と接触しても液晶を汚染せず、また、硬化物が基材への追随性に優れる液晶パネル用封止材を提供すること、および上記液晶パネル用封止材を封止材として用いた液晶パネルを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねる中で、ポリチオールとジイソシアネートとを特定の割合で反応させて得られるチオウレタン化合物が、液晶との疎液性が高く、該チオウレタン化合物と多価エン化合物と組み合わせた特定の組成の液晶パネル用封止材において、未硬化状態で液晶と接触しても液晶を汚染することが無いことを見出した。さらにこの封止材の硬化物が柔軟性と強靭性を併せもつため、基材への追随性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の〔1〕~〔3〕である。
〔1〕下記の(A)~(C)成分
(A)チオール基を2~6個有するポリチオール(a1)とイソシアネート基を2個有するジイソシアネート(a2)との反応物であるチオウレタン化合物であって、ポリチオール(a1)のチオール基(SH)と、ジイソシアネート(a2)のイソシアネート基(NCO)のモル比率(SH/NCO)が2.5~6.5であるチオウレタン化合物
(B)重合性不飽和結合を2~6個有する多価エン化合物
(C)光重合開始剤
を含有し、(A)~(C)の各成分の含有割合が、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が30~150質量部、(C)成分が0.1質量部~10質量部である液晶パネル用封止材。
〔2〕前記の液晶パネル用封止材が、フィルム液晶パネルに対して用いられる、前記の〔1〕に記載の液晶パネル用封止材。
〔3〕前記の〔1〕または〔2〕に記載の液晶パネル用封止材の硬化物からなる封止端部を有する液晶パネル。
本発明において「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリル基を有する化合物とメタクリル基を有する化合物の双方を含む総称を意味し、「(メタ)アクリル基」等も同様である。また、「(メタ)アリル化合物」とは、アリル基を有する化合物とメタリル基を有する化合物の双方を含む総称を意味し、「(メタ)アリル基」も同様である。本発明において数値範囲を示す「○○~××」とは、別途記載が無い限り、その下限値(「○○」)や上限値(「××」)を含む概念である。すなわち、正確には「○○以上××以下」を意味する。
本発明の液晶パネル用封止材は、耐液晶汚染性が高く封止材が未硬化の状態で液晶と接触しても液晶を汚染することがない。また、硬化物が基材への追随性に優れる液晶パネル用封止材、および上記液晶パネル用封止材を封止材として用いたフィルム液晶パネルを提供することができる。
以下に、本発明について詳しく説明する。
本発明の液晶パネル用封止材(以下、単に封止材ということもある)は、下記の(A)~(C)成分を含有し、(A)~(C)の各成分の含有割合が、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が30~150質量部、(C)成分が0.1質量部~10質量部である。
(A)チオール基を2~6個有するポリチオール(a1)とイソシアネート基を2個有するジイソシアネート(a2)との反応物であるチオウレタン化合物であって、ポリチオール(a1)のチオール基(SH)とジイソシアネート(a2)のイソシアネート基(NCO)のモル比率(SH/NCO)が2.5~6.5であるチオウレタン化合物
(B)重合性不飽和結合を2~6個有する多価エン化合物
(C)光重合開始剤
上記の各成分について、順に説明する。
<チオウレタン化合物(A)>
本発明に用いるチオウレタン化合物(A)は、チオール基を2~6個有するポリチオール(a1)とイソシアネート基を2個有するジイソシアネート(a2)との反応物であるチオウレタン化合物である。該チオウレタン化合物は、ポリチオール(a1)のチオール基(SH)とジイソシアネート(a2)のイソシアネート基(NCO)のモル比率(SH/NCO)が2.5~6.5となる範囲で反応させて得られるチオウレタン基を有する化合物である。
チオウレタン化合物(A)は、1種のみを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。チオウレタン化合物(A)を含有することで、チオウレタン化合物(A)は高極性であるチオウレタン基を有することで液晶との疎液性が高く、封止材の液晶への溶解性を低下させ、封止材が液晶と長く触れ合った場合でも液晶の汚染を防ぐことが出来る。また、チオウレタン化合物(A)における残存するチオール基と多価エン化合物(B)との間でチオールーエン反応が進行し、封止材の硬化性を高めることができる。加えて、形成されるチオエーテル結合はC、O、Nといった原子による結合と比べ結合角や結合長を柔軟に変化できるため硬化物の柔軟性が高くなる。チオウレタン基は自身および水素結合性を有する官能基と強い水素結合を形成するため硬化物が強靭化するが、チオウレタン化合物(A)は特定のモル比率でポリチオール(a1)とジイソシアネート(a2)を反応させて得られているため、その硬化物は適度な強靭性と柔軟性を有し、基材への追随性を高めることができる。さらには、チオウレタン化合物(A)を含有する封止材は他成分との架橋ネットワークの形成に優れるため硬化物はバリア性に優れ、湿熱試験後の液晶の配向乱れを防ぐことができる。
チオール基(SH)とイソシアネート基(NCO)のモル比率(SH/NCO)は液晶との疎液性を高め組成物の液晶への汚染を防ぐことができるという観点、および硬化物が適度な強靭性と柔軟性を発現し基材への追随性を高めることができるという観点から2.5~6.5であり、好ましくは3~6である。モル比率(SH/NCO)がこの範囲内であれば、硬化物の柔軟性が低下し基材への追随性が低下したり、残存するチオール基の量が少なくなり架橋ネットワーク形成に劣り硬化物のバリア性が低下したりすることがない。また、モル比率(SH/NCO)がこの範囲内であれば、液晶への疎液性が低下し組成物の液晶への汚染を引き起こしてしまったり、硬化物の強靭性が低下し基材への追随性が低下したりすることがない。
本発明に用いるポリチオール(a1)は、式1で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0007159904000001
(式中のaは2~6の整数であり、Rは2~6価で炭素数10~60の有機基である。)
式中のaは水分バリア性を高め、湿熱試験後の液晶汚染を抑えることができる観点から3~6の整数が好ましく、より好ましくは4~6の整数である。式中のaがこの範囲内であれば、硬化収縮が大きくなって硬化後の基材への追随性が低下するようなことが起こらず良好な硬化物が得られる。また、Rも同様の観点から、3~6価が好ましく、より好ましくは4~6価である。Rの炭素数は10~60であり、好ましくは10~50であり、より好ましくは15~40であり、さらに好ましくは20~30である。Rの炭素数がこの範囲内であれば、硬化物の架橋密度が十分であり、良好なバリア性が得られる。
有機基とは、Cを含有し、さらにSi、N、P、O、及びSからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでもよい基である。有機基は、繰り返し単位を有する重合体であってもよい。また、その構造中に、ケトン基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシル基、アミド基、チオエーテル基、イソシアヌレート基等の基を含んでもよい。
式1で表される化合物として、具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、トリス-[(3-メルカプトプロピオモルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、等が挙げられる。
上記式1で表される化合物の中でも、ペンタエリスリトール骨格を有するポリチオール、ジペンタエリスリトール骨格を有するポリチオール、イソシアヌレート骨格を有するポリチオールなどが好ましい。
その中でも、バリア性を高めるため、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)が好ましい。また、追随性を高めるため、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレートが好ましい。
ポリチオール(a1)としては、市販品を用いてもよく、また合成したものを用いてもよい。合成の方法としては、例えば、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、3-メルカプトプロピオン酸等のメルカプト基含有カルボン酸とから、公知の方法でエステル化反応させることにより得ることができる。
本発明においては、イソシアネート基を2個有するジイソシアネート(a2)を用いる。単官能のイソシアネートの場合、硬化物の架橋密度が下がりバリア性が低下してしまい、また硬化物の強靭性と柔軟性が両立されず、基材への追随性に劣ってしまう。また3官能以上のイソシアネートの場合、チオウレタン化合物(A)とした際の極性が高すぎて他化合物との相溶性が低下してしまい、また硬化物の架橋密度が高くなりすぎるため強靭性と柔軟性が両立されず基材への追随性に劣ってしまう。
本発明に用いるジイソシアネート(a1)としては、式2で表される化合物である。
Figure 0007159904000002
は有機基であり、好ましくは炭化水素基である。Rの炭素数は好ましくは3~25であり、より好ましくは5~20である。Rの炭素数がこの範囲内であれば、硬化物の架橋密度は十分であり、良好なバリア性が得られる。
式2で表される化合物として、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートのいずれでもよい。具体的には、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。その中でも、硬化物の長期保管後の着色を防ぐ観点から脂肪族、脂環式ジイソシアネートが好ましい。
<多価エン化合物(B)>
本発明に用いる多価エン化合物(B)は、重合性不飽和結合を2~6個有するエン化合物である。エン化合物とは、例えば、(メタ)アクリル化合物、(メタ)アリル化合物が挙げられる。多価エン化合物(B)は、1種のみを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。液晶パネル用封止材が、このような化合物を含有することで、硬化物の強靭性が増し、基材への追随性を高めることが出来る。また、他成分との架橋ネットワークの形成に優れるため、硬化物はバリア性に優れ、湿熱試験後の液晶の配向乱れを抑えることができる。また、特に、多価エン化合物(B)が、(メタ)アリル化合物の場合、(メタ)アクリル化合物と比べ耐湿試験中に加水分解が起こらないため、耐湿試験中において硬化物の高バリア性を維持することが出来、より湿熱試験後の液晶の配向乱れを抑えることができる。多価エン化合物(B)における重合性不飽和結合の数は、硬化物の柔軟性を増し追随性を高める観点から2~5個が好ましく、より好ましくは2~3個である。重合性不飽和結合の数が7個以上になると、硬化収縮が大きくなり、追随性が低下するため好ましくない。また、重合性不飽和結合が1個の場合は、架橋ネットワーク形成に劣りバリア性が低下し、湿熱試験後の配向乱れを起こしてしまうため好ましくない。
前記チオウレタン化合物(A)に残存するチオール基(SH´)と多価エン化合物(B)の重合性不飽和結合(エン)のモル比率(SH´/エン)は、硬化物が適度な強靭性と柔軟性を発現し基材への追随性を高めることができるという観点から0.3~3.0が好ましく、より好ましくは0.4~2.5である。モル比率(SH´/エン)がこの範囲内であれば、硬化物の柔軟性が低下し基材への追随性が低下したり、硬化物の強靭性が低下し基材への追随性が低下したりすることがない。なお、チオウレタン化合物(A)に残存するチオール基(SH´)とは、ジイソシアネート(a2)のイソシアネート基のすべてが、ポリチオール(a1)のチオール基との反応に消費されたとして計算される未反応のチオール基である。
上記(メタ)アクリル化合物は2~6個の(メタ)アクリル基を有しており、その好ましい例として下記式3で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007159904000003
(式中のbは2~6の整数である。Rは、水素原子またはメチル基である。Rは2~6価の有機基である。bは2~3の整数が好ましく、Rは2~3価であることが好ましい。Rは炭素数2~14の炭化水素基からなる基、炭素数2~14のエーテル酸素(-O-)と炭化水素基からなる基、炭素数2~14の水酸基と炭化水素基とからなる基、イソシアヌレート骨格、並びにエーテル酸素、水酸基、及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基、またはビスフェノール骨格、並びにエーテル酸素、水酸基、及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基であることが好ましい。)
水分バリア性を高め湿熱試験後の配向乱れを抑えることができる観点からは、Rはイソシアヌレート骨格、並びにエーテル酸素、水酸基、及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基、もしくはビスフェノール骨格、並びにエーテル酸素、水酸基、及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基を用いたものが好ましい。また、硬化物の追随性を高める観点からは、炭素数2~14のエーテル酸素(-O-)と炭化水素基からなる基、炭素数2~14の水酸基と炭化水素基とからなる基、イソシアヌレート骨格、並びにエーテル酸素、水酸基及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基が好ましい。さらには、水分バリア性と追随性の両立の点からイソシアヌレート骨格、並びにエーテル酸素、水酸基及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基が好ましい。
bが2である(メタ)アクリル化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエンルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
bが3以上の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル化合物の中でも、トリメチロールプロパン骨格を有する(メタ)アクリル化合物、ペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリル化合物、ジペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アクリル化合物が好ましく、中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
上記(メタ)アリル化合物は2~6個の(メタ)アリル基を有しており、その好ましい例として下記式4で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007159904000004
(式中のcは2~6の整数である。Rは、水素原子またはメチル基である。Rは2~6価の有機基である。cは2~3の整数が好ましく、Rは2~3価であることが好ましい。Rは炭素数2~14のエーテル酸素(-O-)と炭化水素基からなる基、イソシアヌレート骨格、並びにエーテル酸素、水酸基、及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基、グリコールウリル基と炭化水素からなる基、またはビスフェノール骨格、並びにエーテル酸素、水酸基、及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基である。)
水分バリア性を高め湿熱試験後の配向乱れを抑えることができる観点からはRはイソシアヌレート骨格、並びにエーテル酸素、水酸基及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基、グリコールウリル基と炭化水素からなる基、またはビスフェノール骨格、並びにエーテル酸素、水酸基、及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基を用いたものが好ましい。また、硬化物の追随性を高める観点からは、炭素数2~14のエーテル酸素(-O-)と炭化水素基からなる基、イソシアヌレート骨格、並びにエーテル酸素、水酸基、及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基が好ましい。さらには、水分バリア性と追随性の両立の点からイソシアヌレート骨格、並びにエーテル酸素、水酸基、及び炭化水素から選ばれる少なくとも1つの基とからなる基が好ましい。
例えば、cが2である化合物としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジ(メタ)アリルエステル、イソフタル酸ジ(メタ)アリルエステル、フタル酸ジ(メタ)アリルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アリルエステル、ジ(メタ)アリルメチルグリシジルイソシアヌレート、マグノロール、ジ(メタ)アリルジフェニルシラン、トリメチロールプロパンジ(メタ)アリルエーテル、2,2’-ビス(3-(メタ)アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-(メタ)アリル-4-アリルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-(メタ)アリル-4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、1,3-ジ(メタ)アリル-5-(2,3-エポキシプロパン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、1,3-ジ(メタ)アリル(メタ)アリルシアヌレート、等が挙げられる。
cが3以上である化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アリルエーテル、グリセリントリ(メタ)アリルエーテル、1,3,4,6テトラ(メタ)アリルグリコールウリル、1,3,4,6テトラ(メタ)アリル-3a-メチルグリコールウリル、等が挙げられる。
上記(メタ)アリル化合物の中でも、イソシアヌレート骨格を有する(メタ)アリル化合物、ペンタエリスリトール骨格を有する(メタ)アリル化合物、ビスフェノール骨格を有する(メタ)アリル化合物などが好ましい。
中でも、2,2’-ビス(3-(メタ)アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-(メタ)アリル-4-アリルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-(メタ)アリル-4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アリルエーテル、1,3-ジ(メタ)アリル-5-(2,3-エポキシプロパン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンが好ましい。
<光重合開始剤(C)>
本発明に用いる光重合開始剤(C)は、チオウレタン化合物(A)および多価エン化合物(B)の硬化反応を促進するために添加され、封止材の硬化に必要な光照射を少なくすることができる。光重合開始剤(C)は1種のみを単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤等があげられる。光ラジカル重合開始剤は、反応時間を短縮する際に用いることが好ましく、光カチオン重合開始剤は、屈曲性を向上させる際に用いることが好ましく、光アニオン重合開始剤は、接着性を付与する際に用いることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、シクロプロピルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等が挙げられる。
光アニオン重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン o-ベンゾイルオキシム、ニフェジピン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン、2-ニトロフェニルメチル4-メタクリロイルオキシピペリジン-1-カルボキシラート、1,2-ジイソプロピル-3-〔ビス(ジメチルアミノ)メチレン〕グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオナート、1,2-ジシクロヘキシル-4,4,5,5,-テトラメチルビグアニジウム n-ブチルトリフェニルボラート等が挙げられる。
<その他成分>
上記液晶パネル用封止材は、本発明の目的を阻害しない範囲において、エポキシ化合物等の樹脂成分や、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤、界面活性剤、シランカップリング剤、レベリング剤、密着付与剤、可塑剤、消泡剤、充填材、遮光材、導電材、スペーサー等の添加剤を含有していてもよい。
<組成比(含有割合)>
本発明の液晶パネル用封止材における(A)~(C)の各成分の含有割合は、チオウレタン化合物(A)100質量部に対し、多価エン化合物(B)が30~150質量部、光重合開始剤(C)が0.1~10質量部の割合となるように配合される。
本発明の液晶パネル用封止材は、特定のモル比率でポリチオール(a1)とジイソシアネート(a2)を反応させて得られるチオウレタン化合物(A)を含有する。チオウレタン化合物(A)は、高極性で液晶と混ざりにくい性質を有するためで未硬化の状態での耐液晶汚染性を向上させることができる。また、本発明の液晶パネル用封止材は、チオウレタン化合物(A)と多価エン化合物(B)との間にチオールーエン反応が進行し硬化物が得られる。形成されるチオエーテル結合はC、O、Nといった原子による結合と比べ結合角や結合長を柔軟に変化できるため硬化物の柔軟性が高くなる。加えて、チオウレタン基は自身および水素結合性を有する官能基と強い水素結合を形成するため硬化物を強靭化することができる。
チオウレタン化合物(A)は特定のモル比率でポリチオール(a1)とジイソシアネート(a2)を反応させて得られたものであり、チオウレタン化合物(A)と多価エン化合物(B)を含む硬化物は特定の存在比でチオウレタン結合とチオエーテル結合を有するため、適度な強靭性と柔軟性を有し、基材への追随性を高めることができる。また、チオウレタン化合物(A)と多価エン化合物(B)を含有する封止材は架橋ネットワークの形成に優れるため硬化物はバリア性に優れ、湿熱試験後の液晶の配向乱れを防ぐことができる。さらに、多価エン化合物(B)が特に(メタ)アリル化合物の場合、耐湿試験中に加水分解が起こらず、耐湿試験中の硬化物の高バリア性を維持することが出来、より耐湿試験後の液晶の配向乱れを抑えることができる。ここで、予め反応させたチオウレタン化合物(A)を用いずに、未反応のチオール化合物及びイソシアネート化合物、並びにエン化合物を配合した組成物を用いた場合には、未硬化の状態で液晶と接すると液晶に化合物が溶け出してしまい液晶を汚染してしまう。また、未反応のチオール化合物及びイソシアネート化合物、並びにエン化合物を配合した組成物は、チオール化合物とイソシアネート化合物を反応させたチオウレタン化合物(A)を用いる場合と比べ、チオウレタン化に基づく高分子量化が無いためチオール化合物の分子量が低く反応性が高いこと、及びチオウレタン化によりチオール基が消費されず未反応のチオール基が多いことより、エン同士の反応よりもチオールとエンが優先的に反応し、硬化物は強靭性と柔軟性の両立が出来ず基材への追随性に劣ってしまう。
本発明の液晶パネル用封止材において、チオウレタン化合物(A)100質量部に対し、多価エン化合物(B)の含有量は30~150質量部であり、下限値としては、好ましくは40質量部以上であり、より好ましくは50質量部以上である。上限値としては、好ましくは120質量部以下であり、より好ましくは100質量部以下である。ここで、多価エン化合物(B)が30質量部未満の場合、硬化物の架橋密度が低く、強靭性と柔軟性のバランスが崩れ、追随性が悪化してしまう傾向にある。また、バリア性が低下し、耐湿熱試験後の配向乱れを引き起こしてしまう。多価エン化合物(B)が150質量部を超える場合、組成物中のチオウレタン化合物(A)の割合が低下し、強靭性の低下による追随性悪化、液晶汚染、さらには耐湿熱試験後の配向乱れを引き起こしてしまう。
液晶パネル用封止材は、チオウレタン化合物(A)100質量部に対し、光重合開始剤(C)の含有量は0.1~10質量部であり、下限値としては、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上である。上限値としては、好ましくは7質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下である。光重合開始剤(C)が0.1質量部未満の場合、硬化反応が十分に進行せず、硬化不十分で追随性の低下や液晶汚染、さらには耐湿熱試験後の配向乱れを引き起こしてしまう傾向がある。光重合開始剤(C)が10質量部を超える場合、未反応の光重合開始剤(C)が組成物中に多く残存したり、硬化反応に組み込まれない開始剤の分解物が発生するため、液晶汚染、さらには耐湿熱試験後の配向乱れを引き起こしてしまう傾向がある。
<液晶パネル>
本発明の液晶パネルは、上記した本発明の液晶パネル用封止材の硬化物からなる封止端部を有する。封止を施す液晶パネルは、例えば液晶の配向により透明・不透明を制御するのみの調光部材やディスプレイのように画像表示を行う表示素子等が含まれる。本発明の液晶パネルは、例えば、一対の基板を対向に配置し、周囲が上記液晶パネル用封止材組成物にて封止され、その間に液晶材料が存在するものである。ここで、基板とはガラス、石英等の無機透明基材やポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィン(コ)ポリマー、PMMA、ポリイミド等のプラスチック透明フィルム基材上に銀や銅の電極またはITO等の透明電極が施され、さらに配向膜等が形成されたものである。フィルム液晶パネルとは、上記のプラスチック透明フィルム基材を用いた基板にて形成された液晶パネルであり、フィルム液晶用の液晶パネル用封止材は、上記フィルム液晶パネルに用いられる液晶パネル用封止材である。
<液晶パネルの形成>
本発明の液晶パネルは、一対の上記基板の一方に上記液晶パネル用封止材を塗布した後、その内側に液晶を滴下しもう一方の基板を重ね合わせ、光を照射し上記液晶パネル用封止を硬化させることで形成される。
上記液晶パネル用封止の塗布方法は特に制限されず、例えば、ディスペンサ塗工やスクリーン印刷法等が適用される。
上記液晶パネル用封止材に光を照射する光源としては特に制限されず、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯といった水銀灯やブラックライトランプ、LEDランプ、ハロゲンランプ、無電極ランプ、キセノンランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が適用される。
液晶パネルの汚染性は、上記のように液晶パネルを形成し、実際に電圧を印加して配向具合を確認する手法に加えて、電圧保持率の測定によって評価することも出来る。電圧保持率は液晶セルに電圧を印加し充電された電荷が一定時間後にどの程度保持されているかを確認する評価方法であり、液晶が汚染されている場合、電荷が保持されずに電圧保持率は低下する。汚染性がなく良好な電圧保持率は85%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
<評価方法>
各実施例および比較例における液晶パネル用封止材は、下記に記載の方法によってその性能を評価した。
<基材追随性>
実施例および比較例で製造した液晶パネル用封止材を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケータにて膜厚が100μmとなるように塗工し、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(1000mJ/cm)を行い液晶パネル用封止材を硬化させた。得られた硬化膜付PETフィルムを長さ100mm、幅10mmの長方形状にカットし、サンプルとした。得られたサンプルをMIT試験機(テスター産業(株)製BE-202)を使用し、屈曲試験を行った(条件:荷重1N、折り曲げ速度175cpm、屈曲半径2.0mm、折り曲げ速度 135°)。複数回屈曲させた後の試験後サンプルを目視観察し、評価した。
◎:15000回後にクラックや剥れなし。
○:15000回後にクラックが発生するが、7000回後ではクラックや剥れなし。
×:7000回以内にクラックや剥れが発生する。
<耐液晶汚染性>
サンプル瓶に液晶パネル用封止材を0.025g添加し、さらに液晶(メルク社製MLC-7021-000)を1g加え、25℃にて1時間静置した。その後、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(1000mJ/cm)を行い、液晶パネル用封止材を硬化させ100℃で2時間加熱した。2時間後、遠心分離機で硬化物と液晶を分離し、液晶をITO付ガラス基板液晶セル((株)イーエッチシー製KSSZ-05/B107MINX05)に注入した。液晶物性評価システム(東洋テクニカ(株)製6245)を用いて、液晶セルに25℃で交流5Vの初期電圧を64μs印加し16.7msのフレームタイム前後の電圧比に100を乗じた値(電圧保持率)を算出した。なお、電圧保持率が高いほど、液晶が汚染し難いことを意味し、表2、3において、電圧保持率を耐液晶汚染性として記載した。
<耐湿熱試験後の配向乱れ>
ディスペンサー(武蔵エンジニアリング(株)製ショットマスター)を用いてガラス上に透明電極および配向膜をこの順で施した40mm×45mmのガラス基板((株)イーエッチシー製RT-DM88-PIN)上に実施例および比較例で製造した液晶パネル用封止材を35mm×40mmの四角形の枠状に塗布(線幅:1mm)し、枠上に描画した液晶パネル用封止材の内側に液晶(メルク社製MLC-11900-000)を滴下した。次に上記ガラス基板と、対向するガラス基板を減圧下にて貼り合わせ、25℃にて1時間静置した。高圧水銀灯を用いて紫外線照射(1000mJ/cm)を行い液晶パネルを得た。上記と同様に作製した液晶パネルを50℃90%RHの条件下に500時間曝した後、AC5Vの電圧にて中間調の表示状態で駆動させ、液晶パネル用封止材の硬化物近傍の液晶の配向乱れを偏光顕微鏡にて観察した。
◎:配向乱れ未発生
○:液晶パネル用封止材の硬化物端部0.5mm以内に配向乱れ発生
×:液晶パネル用封止材の硬化物端部0.5mmを越えて配向乱れ発生
本実施例および比較例で用いた各成分は、次のとおりである。
<チオウレタン化合物(A)>
(チオウレタン基を有する化合物(A-1)の製造)
攪拌機、滴下管、温度計を備えた反応容器に、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)156.7質量部、ジブチルチンラウレート0.01質量部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら80℃に加熱した。滴下管にヘキサメチレンジイソシアネート16.8質量部を仕込み、攪拌中の反応容器に窒素雰囲気下1時間かけて滴下した。温度を80℃に保ち窒素雰囲気下でさらに8時間攪拌し反応させ、冷却後チオウレタン基を有するチオウレタン化合物(A-1)を得た(モル比率(SH/NCO)6.0)。
下記表1のポリチオール、イソシアネートを用いた以外は上記方法と同様にしてチオウレタン基を有するチオウレタン化合物(A-2)~(A-10)を得た。
Figure 0007159904000005
(ポリチオールとジイソシアネートの混合物(A´-1)の調整)
攪拌機を備えた反応容器に、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)156.7質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート16.8質量部を仕込み、10分間攪拌下しポリチオールとジイソシアネートの混合物(A´-1)を得た(モル比率(SH/NCO)6.0)。
<多価エン化合物(B)>
B-1:1,3-ジアリル-5-(2,3-エポキシプロパン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン
B-2:ペンタエリスリトールトリアリルエーテル
B-3:2,2-ビス(3-アリル-4-グリシジルオキシフェニル)プロパン
B-4:トリメチロールプロパントリアクリレート
B-5:ペンタエリスリトールトリメタクリレート
B-6:エチレングリコールモノアリルエーテル
<光重合開始剤(C)>
C-1:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
C-2:1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)
C-3:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
[実施例1]
チオウレタン化合物(A-1)100質量部、多価エン化合物(B-1)100質量部、及び光重合開始剤(C-1)3質量部を攪拌釜に加え、2時間混合、攪拌し、液晶パネル用封止材を得た。該液晶パネル用封止材を用いて、各評価を行った。結果を表2に示した。
[実施例2~16、比較例1~10]
各成分の種類及び量を表2、3のとおり変更した以外は実施例1と同様にして、液晶パネル用封止材を得た。該液晶パネル用封止材を用いて、各評価を行った。結果を表2、3に示した。
Figure 0007159904000006
Figure 0007159904000007
上記試験の結果、各実施例の液晶パネル用封止材は優れた基材追随性、耐液晶汚染性、耐湿熱液晶汚染性を有していた。
一方、比較例1ではチオウレタン化合物(A)のモル比率(SH/NCO)が本発明の範囲より過大であるため、硬化物の強靭性が低下し基材への追随性が劣り、また組成物中のチオウレタン基の割合が低下し液晶への相溶性が上がってしまい、液晶の汚染、さらには耐湿熱後の液晶の配向乱れを起こすことがわかった。比較例2では、チオウレタン化合物(A)のモル比率(SH/NCO)が本発明の範囲より過小であるため、硬化物が適度な強靭性と柔軟性を保つことができなくなってしまい基材への追随性が劣り、また、バリア性が低下し耐湿熱後の液晶の配向乱れを起こすことがわかった。比較例3では、多価エン化合物(B)の含有量が本発明の範囲より過少であるため、硬化物の強靭性が低下し基材への追随性が劣り、また、バリア性が低下し耐湿熱後の液晶の配向乱れを起こすことがわかった。比較例4では、多価エン化合物(B)の含有量が本発明の範囲より過多であるため、硬化物の柔軟性が低下し基材への追随性が劣り、また組成物中のチオウレタン基の割合が低下し液晶への相溶性が上がってしまい液晶の汚染、さらには耐湿熱後の液晶の配向乱れを起こすことがわかった。比較例5では多価エン化合物(B)に代え重合性不飽和結合を1つしか持たない化合物を使用しているため、硬化物の強靭性が低下し基材への追随性が劣り、また、バリア性が低下し耐湿熱後の液晶の配向乱れを起こすことがわかった。比較例6では光重合開始剤(C)を含有していないため硬化性が低下し、基材追随性に劣り、液晶の汚染、耐湿熱後の液晶の配向乱れを起こしてしまうことがわかった。
比較例7では光重合開始剤(C)の含有量が多過ぎるため、残存の開始剤成分により液晶の汚染、耐湿熱後の液晶の配向乱れを起こしてしまうことがわかった。比較例8は、チオウレタン化合物(A)の原料にジイソシアネート化合物ではなく、単官能のイソシアネート化合物を用いているため、硬化物の架橋密度が低下し、強靭性と柔軟性の両立が出来ず基材への追随性に劣り、またバリア性が低下し耐湿熱後の液晶の配向乱れを起こすことがわかった。比較例9は、チオウレタン化合物(A)の原料にジイソシアネート化合物ではなく、3官能のイソシアネート化合物を用いているため、硬化物の架橋密度が高くなりすぎてしまい、強靭性と柔軟性の両立が出来ず基材への追随性に劣ってしまうことがわかった。比較例10では、チオウレタン化合物(A)の出発物質であるポリチオール(a1)とジイソシアネート(a2)とを予め反応させずに多価エン化合物(B)と一括で混合して用いているため、硬化物が適度な強靭性と柔軟性を保つことができなくなってしまい基材への追随性が劣り、また、液晶への相溶性が上がってしまい液晶の汚染、さらには耐湿熱後の液晶の配向乱れを起こすことがわかった。

Claims (3)

  1. 下記の(A)~(C)成分
    (A)チオール基を2~6個有するポリチオール(a1)とイソシアネート基を2個有するジイソシアネート(a2)との反応物であるチオウレタン化合物であって、ポリチオール(a1)のチオール基(SH)とジイソシアネート(a2)のイソシアネート基(NCO)のモル比率(SH/NCO)が2.5~6.5であるチオウレタン化合物
    (B)重合性不飽和結合を2~6個有する多価エン化合物
    (C)光重合開始剤
    を含有し、(A)~(C)の各成分の含有割合が、(A)成分100質量部に対して、(B)成分が30~150質量部、(C)成分が0.1質量部~10質量部である液晶パネル用封止材。
  2. 前記の液晶パネル用封止材が、フィルム液晶パネルに対して用いられる、請求項1に記載の液晶パネル用封止材。
  3. 請求項1または2に記載の液晶パネル用封止材の硬化物からなる封止端部を有する液晶パネル。
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