JP7159830B2 - 筒部材、回転電機のロータ、及び回転電機 - Google Patents

筒部材、回転電機のロータ、及び回転電機 Download PDF

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Description

本発明は、筒部材、回転電機のロータ、及び回転電機に関する。
従来、特許文献1に記載されるような筒部材が知られている。
上記筒部材は、樹脂を含侵させた繊維を予めシート状に形成し、当該シートを芯金に巻き付けることで形成されるものである。
特開平8-107641号公報
ここで、シートを複数枚用いることで筒部材の軸線に直交する方向にシートが層状に設けられる筒部材が一般的に知られている。当該複数のシートは、筒部材の軸線に沿って配向された繊維を樹脂で覆うことで構成されるものや、筒部材の軸線に交差する方向に配向された繊維を樹脂で覆うことで構成されるものが採用される。
ところで、シートを複数枚用いるにあたって、筒部材の軸線に沿って配向された繊維を樹脂で覆うことで構成されるシートを筒部材の最内層及び筒部材の最外層に配置すると、繊維が筒部材の軸線を中心とした筒部材の外縁に沿った方向に連続していない。そのため、筒部材の最内層及び筒部材の最外層に割れが生じやすい。
また、シートを複数枚用いるにあたって、1枚のシートを巻き終わったとき、巻き終わった位置から新たなシートを巻き始めることで筒部材を構成することが考えられる。この場合、シートの繋ぎ目の部分は、繊維が連続しておらず強度が弱くなっており、割れが発生する可能性がある。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、強度を維持しつつ割れを抑制できる筒部材、ロータ、及び回転電機を提供することにある。
上記課題を解決する筒部材は、軸方向層と周方向層とが積層されることで構成される筒部材であって、前記軸方向層及び前記周方向層は、強化繊維と、前記強化繊維を覆う樹脂とにより構成され、前記筒部材の軸線に沿った方向を第1方向、前記軸線に直交する方向であり、且つ前記軸方向層と前記周方向層とが積層されている方向を第2方向、及び前記軸線を中心とする前記筒部材の外縁に沿った方向を第3方向とすると、前記軸方向層を構成する前記強化繊維は、前記第1方向に沿って配向されており、前記周方向層を構成する前記強化繊維は、前記第3方向に沿って配向されており、前記周方向層は、前記筒部材の最内層及び前記筒部材の最外層をなすとともに前記最外層と前記最内層とが常に連続するように前記第3方向に沿って巻回された状態で構成され、前記軸方向層は、前記第3方向に沿って常に連続した状態で前記周方向層に挟み込まれるように配置されている。
これによれば、筒部材の周方向層に用いられている強化繊維は、筒部材の最内層から最外層に向けて常に連続するように設けられている。そのため、筒部材を構成する周方向層において強化繊維の切れ目がない状態となる。よって、筒部材の強度を維持することができる。また、筒部材の最内層及び筒部材の最外層をなす周方向層の強化繊維は第3方向に沿って連続しているため、樹脂に割れが生じ難くなる。したがって、筒部材の割れを抑制できる。したがって、強度を維持しつつ割れを抑制できる。
上記筒部材において、前記筒部材の最内層に位置する前記周方向層を最内周方向層、前記最内周方向層が前記第2方向の外側に変形することで形成され、前記最内周方向層とともに前記軸方向層を挟み込む前記周方向層を次最内周方向層、前記筒部材の最外層に位置する前記周方向層を最外周方向層、前記最外周方向層とともに前記軸方向層を挟み込む前記周方向層を次最外周方向層とすると、前記第2方向において、前記最内周方向層の外面と前記次最内周方向層の内面とが互いに重なり合う第1重なり部が形成され、前記第2方向において、前記最外周方向層の内面と前記次最外周方向層の外面とが互いに重なり合う第2重なり部が形成されているとよい。
これによれば、第1重なり部及び第2重なり部が形成されることにより筒部材の強度をより向上させることができる。
上記筒部材において、前記筒部材の最内層に位置する前記周方向層を最内周方向層、前記最内周方向層が前記第2方向の外側に変形することで形成され、前記最内周方向層とともに前記軸方向層を挟み込む前記周方向層を次最内周方向層、前記筒部材の最外層に位置する前記周方向層を最外周方向層、前記最外周方向層とともに前記軸方向層を挟み込む前記周方向層を次最外周方向層とすると、前記最内周方向層が前記第2方向の外側に向けて変形する境界部分を第1境界部、前記次最内周方向層が前記軸方向層を前記最内周方向層とともに挟み込むべく前記第2方向の外側に向けて変形する境界部分を第2境界部とすると、前記最外周方向層と前記次最外周方向層との間に挟まれている前記軸方向層の前記第3方向における端部は、前記第2方向において前記第1境界部に一致するように配置され、前記最外周方向層の前記第3方向における端部は、前記第2方向において前記第2境界部と一致するように配置されているとよい。
筒部材の周方向層及び軸方向層が第3方向に沿って常に連続していることに起因して、次最内周方向層が最内周方向層に乗り上がる部分、及び次最内周方向層が軸方向層に乗り上がる部分に対応する筒部材の外周部分が筒部材の第2方向の外側に向かって突出することで筒部材の対称性が低下してしまう。
その点、これによれば、最外周方向層と次最外周方向層との間に挟み込まれている軸方向層の第3方向における端部を、第2方向において第1境界部に一致するように配置している。また、最外周方向層の第3方向における端部を、第2方向において第2境界部に一致するように配置している。よって、筒部材は、第2方向における厚さが第3方向に沿って均一化される。したがって、筒部材の対称性を向上させることができる。
上記課題を解決する回転電機のロータは、上記の筒部材を備える回転電機のロータであって、前記筒部材の内周面に固定された磁性体と、前記筒部材及び前記磁性体と一体回転可能な回転軸と、を備える。
これによれば、回転軸とともに筒部材が回転し、筒部材に遠心力が作用したとしても筒部材の最内層及び筒部材の最外層の割れを抑制できる。また、筒部材に遠心力が作用することによる応力が作用しても、周方向層を構成する繊維が筒部材の第3方向に沿って連続しているため、ロータの強度を維持しつつ筒部材の割れを抑制できる。
また、筒部材を構成する軸方向層により回転軸の軸線に対する曲げ方向の剛性が高くなる。したがって、ロータ全体における回転軸の軸線に対する曲げ方向の剛性が高まるため、ロータに共振が発生し難くなる。したがって、ロータ全体が回転軸の軸線に対して撓むことを抑制できる。
上記課題を解決する回転電機は、ステータと、上記の回転電機のロータと、を備える。
この発明によれば、強度を維持しつつ割れを抑制できる。
回転電機の概略断面図。 ロータの筒部材の斜視図。 筒部材の断面図。 筒部材の製造方法を示す斜視図。 筒部材の製造方法を示す側面図。
以下、筒部材、回転電機のロータ、及び回転電機を具体化した実施形態を図1~図5にしたがって説明する。なお、説明の便宜上、回転電機について説明し、その後回転電機のロータ及び筒部材について説明する。
図1に示すように、回転電機10は、筒状のハウジング11内に収容されている。ハウジング11は、有底筒状の第1ハウジング構成体12と、第1ハウジング構成体12に連結される板状の第2ハウジング構成体13と、を備えている。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は金属材料製であり、例えばアルミニウム製である。
第1ハウジング構成体12は、板状の底壁12aと、底壁12aの外周部から筒状に延びる周壁12bと、を有している。第2ハウジング構成体13は、周壁12bにおける底壁12aとは反対側の開口を閉塞した状態で第1ハウジング構成体12に連結されている。
第1ハウジング構成体12の底壁12aの内面には、円筒状のボス部12cが突設されている。ボス部12cの軸線は、第1ハウジング構成体12の周壁12bの軸線と一致している。また、第2ハウジング構成体13の内面には、円筒状のボス部13cが突設されている。ボス部13cは、第1ハウジング構成体12の周壁12bの軸線と一致している。よって、両ボス部12c,13cの軸線は互いに一致している。
回転電機10は、ステータ14と、ロータ15とを備えている。ステータ14は、第1ハウジング構成体12の周壁12bの内周面に固定される円筒状のステータコア14aと、ステータコア14aに巻回されるコイル14bとを有している。ロータ15は、ハウジング11内においてステータ14の径方向内側に回転可能に配置されている。
ロータ15は、筒部材16と、磁性体である永久磁石17と、回転軸としての第1軸部材18及び回転軸としての第2軸部材19とを備えている。筒部材16は、軸線が直線状に延びる円筒状である。筒部材16は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)から構成されている。
永久磁石17は、中実円柱状である。永久磁石17は、径方向に着磁されている。永久磁石17は、筒部材16の内周面16aに圧入されることにより固定されている。永久磁石17の軸線L10は、筒部材16の軸線mと一致している。永久磁石17における軸線L10に沿った方向(永久磁石17の軸方向)の長さは、筒部材16における軸線mに沿った方向(筒部材16の軸方向)の長さより短い。
第1軸部材18及び第2軸部材19は、筒部材16の軸方向両側にそれぞれ設けられている。第1軸部材18は、第1圧入部18a、第1フランジ部18b、及び第1軸部18cを有している。第1圧入部18aは、円柱状をなしている。第1圧入部18aは、筒部材16の内周面16aにおける軸方向の一端部16bに圧入されている。よって、第1軸部材18は、筒部材16及び永久磁石17と一体回転可能である。
第1フランジ部18bは、第1圧入部18aに連続するとともに第1圧入部18aよりも外径が大きい円環状をなしている。第1軸部18cは、円柱状をなしている。第1軸部18cは、第1フランジ部18bにおける第1圧入部18aとは反対側の端部に連続している。第1軸部18cの外径は、第1圧入部18aの外径と同じである。
第2軸部材19は、第2圧入部19a、第2フランジ部19b、及び第2軸部19cを有している。第2圧入部19aは、円柱状をなしている。第2圧入部19aは、筒部材16の内周面16aにおける軸方向の他端部16cに圧入されている。よって、第2軸部材19は、筒部材16及び永久磁石17と一体回転可能である。
第2フランジ部19bは、第2圧入部19aに連続するとともに第2圧入部19aよりも外径が大きい円環状をなしている。第2軸部19cは、円柱状をなしている。第2軸部19cは、第2フランジ部19bにおける第2圧入部19aとは反対側の端部に連続している。第2軸部19cの外径は、第2圧入部19aの外径と同じである。
第1圧入部18aの外径と第2圧入部19aの外径とは同じである。また、第1フランジ部18bの外径と第2フランジ部19bの外径とは同じである。さらに、第1軸部18cの外径と第2軸部19cの外径とは同じである。第1軸部材18及び第2軸部材19は、第1軸部材18の軸線L11及び第2軸部材19の軸線L12が筒部材16の軸線mと一致した状態で、筒部材16の軸方向両側にそれぞれ設けられている。したがって、第1軸部材18の軸線L11及び第2軸部材19の軸線L12は、永久磁石17の軸線L10に一致している。筒部材16は、永久磁石17、第1軸部材18、及び第2軸部材19の同軸状態を担保する。
第1フランジ部18bにおける第1圧入部18a側の端面は、筒部材16の一端部16bに当接している。第2フランジ部19bにおける第2圧入部19a側の端面は、筒部材16の他端部16cに当接している。そして、第1フランジ部18bの端面における筒部材16の一端部16bに対する当接、及び第2フランジ部19bの端面における筒部材16の他端部16cに対する当接によって、筒部材16における軸方向の移動が規制されている。
第1軸部材18の第1軸部18cは、ボス部13cの内側を通過するとともに第2ハウジング構成体13を貫通してハウジング11外へ突出している。ボス部13cの内周面と第1軸部18cの外周面との間には、第1軸受21が設けられている。そして、第1軸部材18は、第1軸部18cが第1軸受21を介してボス部13cに支持されることにより、ハウジング11に回転可能に支持されている。
第2軸部材19の第2軸部19cは、ボス部12cの内側に挿入されている。ボス部12cの内周面と第2軸部19cの外周面との間には、第2軸受22が設けられている。そして、第2軸部材19は、第2軸部19cが第2軸受22を介してボス部12cに支持されることにより、ハウジング11に回転可能に支持されている。
上記構成のロータ15において、図示しない駆動回路によって制御された電力がコイル14bに供給されると、永久磁石17が回転しようとし、永久磁石17が圧入されている筒部材16が永久磁石17と一体的に回転する。そして、筒部材16と第1軸部材18との圧入部分においてトルクが筒部材16から第1軸部材18に伝達されるとともに、筒部材16と第2軸部材19との圧入部分においてトルクが筒部材16から第2軸部材19に伝達され、第1軸部材18及び第2軸部材19が筒部材16と一体的に回転する。このようにして、ロータ15が回転する。筒部材16は、ロータ15の回転によって遠心力を受ける永久磁石17の変形を抑制する。
次に、筒部材16について説明する。
図2に示すように、筒部材16は、強化繊維としての複数の第1繊維16dと、強化繊維としての複数の第2繊維16eと、第1繊維16d及び第2繊維16eを覆う樹脂16fとにより構成されている。第1繊維16dは、筒部材16の軸線mに沿った方向である第1方向Aに延びている。第1方向Aとは、具体的には筒部材16の軸方向を示している。第2繊維16eは、筒部材16の軸線mを中心する筒部材16の外縁に沿った方向である第3方向Cに延びている。筒部材16が円筒状をなしているため、第3方向Cは具体的には筒部材16の周方向のことである。筒部材16は、複数の第1繊維16d及び複数の第2繊維16eが樹脂16f(マトリックス樹脂)中に複合化されることにより形成されている。なお、樹脂16fは、熱硬化性樹脂で構成され、第1繊維16d及び第2繊維16eは、同じ炭素繊維で構成されている。
図3に示すように、筒部材16は、筒部材16の軸線mに直交する方向である第2方向Bに軸方向層30と周方向層40とが積層されることで構成されている。第2方向Bとは、筒部材16が円筒状をなしているため、具体的には筒部材16の径方向のことを示し、また軸方向層30と周方向層40とが積層されている方向を示す。軸方向層30は、第1繊維16dと、第1繊維16dを覆う樹脂16fとにより構成されている。軸方向層30を構成する第1繊維16dは、第1方向Aに沿って配向されている。周方向層40は、第2繊維16eと、第2繊維16eを覆う樹脂16fとにより構成されている。周方向層40を構成する第2繊維16eは、第3方向Cに沿って配向されている。
周方向層40は、筒部材16の最内層及び筒部材16の最外層をなすとともに最内層と最外層とが常に連続するように第3方向Cに沿って巻回された状態で構成されている。また、軸方向層30は、周方向層40に挟み込まれるように設けられている。このとき、軸方向層30は、周方向層40の間において第3方向Cに沿って常に連続した状態となっている。すなわち、軸方向層30及び周方向層40のそれぞれは、第3方向Cに沿って一筆書きに巻回される様態をなしている。本実施形態において、軸方向層30は、第3方向Cに沿って約1.5周している。また、周方向層40は、第3方向Cに沿って約3.5周している。また、筒部材16では、軸方向層30の巻回され始める第1端部P1と、周方向層40が巻回され始める第2端部P2とが軸線mを挟んで反対側となるように設定されている。筒部材16の構成の特性上、軸方向層30及び周方向層40は各端部P1,P2を乗り越えるように巻回される。ここで筒部材16の軸方向層30及び周方向層40は、周方向層40の間に軸方向層30を挟み込みつつ第3方向Cに沿って常に連続する様態を有している。そのため、軸方向層30及び周方向層40は、第3方向Cに沿って巻回されるときに第2方向Bにおいて各端部P1,P2に対応する部分を軸方向層30及び周方向層40が通過する度に配置される位置が第2方向Bの外側に向けてずれていく。なお、本実施形態の軸方向層30及び周方向層40は、第2方向Bにおいて同じ厚さを有している。筒部材16をロータ15に適用した場合を考えると、軸方向層30及び周方向層40の厚さが厚すぎると、樹脂16fに発生する応力が強くなり、ひいては軸方向層30及び周方向層40の樹脂16fに割れが発生する可能性がある。そのため、本実施形態の筒部材16の軸方向層30及び周方向層40の厚さは、筒部材16をロータ15に適用したときに樹脂16fに割れが発生しうる応力が発生しない程度に設定されている。
筒部材16の最内層に位置する周方向層40を最内周方向層41、最内周方向層41とともに軸方向層30を挟み込む周方向層40を次最内周方向層としての中間層42とする。中間層42は、最内周方向層41が第2方向Bの外側に変形することにより形成されている。また、筒部材16の最外層に位置する周方向層40を最外周方向層43とする。ここで、最外周方向層43とともに軸方向層30を挟み込む中間層42は、次最外周方向層の一例でもある。なお、本実施形態では、中間層42は、筒部材16の最内層及び最外層に位置する周方向層40以外の部分を示している。
筒部材16の第2方向Bにおいて、筒部材16には、最内周方向層41の外面41aと中間層42の内面42aとが互いに重なり合う第1重なり部51が形成されている。また、筒部材16の第2方向Bにおいて、筒部材16には、最外周方向層43の内面43aと中間層42の外面42bとが互いに重なり合う第2重なり部52が形成されている。
上述したように、筒部材16の軸方向層30及び周方向層40は、軸方向層30の第1端部P1及び周方向層40の第2端部P2を乗り越えるように構成されている。そのため、軸方向層30及び周方向層40は、筒部材16の第2方向Bの外側に変形する部分が形成される。具体的に、最内周方向層41が第2方向Bの外側に向けて変形する境界部分を第1境界部B1とする。また、中間層42が軸方向層30を最内周方向層41とともに挟み込むべく第2方向Bの外側に向けて変形する境界部分を第2境界部B2とする。最外周方向層43と中間層42との間に挟まれている軸方向層30の第3方向Cにおける端部31は、第2方向Bにおいて第1境界部B1に一致するように配置されている。最外周方向層43の第3方向Cにおける端部44は、第2方向Bにおいて第2境界部B2に一致するように配置されている。筒部材16は、第3方向Cにおいて最外周方向層43の端部44を同最外周方向層43に対して固着させる固着部50を有している。
図2に示すように、固着部50は、筒部材16の第1方向Aの全長に亘って設けられている。第2方向Bの外側から見て、固着部50は、第1方向Aに沿って延びる直線形状を有している。
次に、筒部材16の製造方法について説明する。
図4及び図5に示すように、筒部材16は、軸方向層30をなすシート状の第1プリプレグ61と周方向層40をなすシート状の第2プリプレグ62とを円柱状の巻回部材であるマンドレル60により巻回することにより構成される。第1プリプレグ及び第2プリプレグは、それぞれ第1繊維16d及び第2繊維16eを樹脂16fで覆うことにより構成されている。なお、各プリプレグ61,62を構成する樹脂16fは、熱硬化していない状態であるため、柔軟性を有している。
図4に示すように、マンドレル60に第1プリプレグ61及び第2プリプレグ62を巻回する前に、第1プリプレグ61及び第2プリプレグ62を互いに積層する。具体的には、第1プリプレグ61及び第2プリプレグ62の巻回方向において、第2プリプレグ62の表面62aにおける両端部の所定範囲R1,R2を除く所定範囲R3に第1プリプレグ61を積層した状態にする。この状態で、マンドレル60が第2プリプレグ62の裏面62bを巻き込むように回転することで、第1プリプレグ61及び第2プリプレグ62がマンドレル60に巻回されていく。
ここで、所定範囲R1,R2,R2について説明する。
図5に示すように、所定範囲R1は、第2プリプレグ62がマンドレル60を直接的に1回巻回できるとともに、第2プリプレグ62がマンドレル60を1回巻回した状態で更に0.5回巻回できる程度の範囲である。すなわち、図3に示されている周方向層40が筒部材16の最内層をなし、且つ最内周方向層41と中間層42とが互いに重なり合うことで第1重なり部51を形成できる程度の範囲に設定されている。また、所定範囲R2は、マンドレル60に対して第1プリプレグ61が巻回し終わった状態で第2プリプレグ62がマンドレル60を1.5回巻回できる程度の範囲である。すなわち、図3に示されている周方向層40が筒部材16の最外層をなし、且つ最外周方向層43と中間層42とが互い重なり合うことで第2重なり部52を形成できる程度の範囲に設定されている。所定範囲R3は、第1プリプレグ61が第2プリプレグ62に挟まれた状態でマンドレル60を1.5回巻回できる程度の範囲に設定されている。
各プリプレグ61,62がマンドレル60に巻回し終わったとき、各プリプレグ61,62を加熱する。このとき、第2プリプレグ62の所定範囲R3における端部はマンドレル60に向かって加圧された状態である。各プリプレグ61,62を構成する樹脂16fは、加熱されることにより硬化する。そのため、各プリプレグ61,62はマンドレル60に巻回された状態で固定される。同時に、各プリプレグ61,62が重なり合っている部分における樹脂16fは、若干溶融する。そのため、各プリプレグ61,62の重なり合う部分における樹脂16fが互いに溶融して混ざりあった状態となる。その後、各プリプレグ61,62を冷却することで、各プリプレグ61,62が重なり合っている部分は、溶着された状態となる。各プリプレグ61,62が熱硬化し、各プリプレグ61,62が溶着された状態になり、且つ固着部50が形成されたとき、マンドレル60を成形品から取り出すことで筒部材16の成形が完了する。なお、筒部材16の各端部P1,P2の近傍には隙間が形成されることが考えられる。しかし、本実施形態の筒部材16は、各プリプレグ61,62を加熱したときの樹脂16fの溶融に伴い、当該隙間に樹脂16fが入り込む。よって、筒部材16に形成されうる隙間は、樹脂16fで埋まる。そのため、筒部材16の最内層は滑らかな曲面を有する内周面16aとなり、且つ筒部材16の軸方向層30及び周方向層40の重なりにより形成されうる隙間が存在しない状態となる。
本実施形態では以下の作用及び効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、筒部材16の周方向層40に用いられている第2繊維16eは、筒部材16の最内層から最外層に向けて常に連続するように設けられている。そのため、筒部材16を構成する周方向層40において第2繊維16eの切れ目がない状態となる。よって、筒部材16の強度を維持することができる。また、筒部材16の最内層及び筒部材の最外層をなす周方向層40の第2繊維16eは、筒部材16の第3方向Cに沿って連続しているため、樹脂16fに割れが生じ難くなる。したがって、筒部材16の割れを抑制できる。したがって、強度を維持しつつ割れを抑制できる。
(2)本実施形態では、第1重なり部51及び第2重なり部52が形成されることにより筒部材16の強度をより向上させることができる。
(3)筒部材16の周方向層40及び軸方向層30が第3方向Cに沿って常に連続していることに起因して、中間層42が最内周方向層41に乗り上がる部分、及び中間層42が軸方向層30に乗り上がる部分に対応する筒部材16の外周部分が筒部材16の第2方向Bの外側に向かって突出することで筒部材16の対称性が低下してしまう。
その点、本実施形態では、最外周方向層43と中間層42との間に挟み込まれている軸方向層30の第3方向Cにおける端部31を、第2方向Bにおいて第1境界部B1に一致するように配置している。また、最外周方向層43の第3方向Cにおける端部44を、第2方向Bにおいて第2境界部B2に一致するように配置している。よって、筒部材16は、第2方向Bにおける厚さが第3方向Cに沿って均一化される。したがって、筒部材16の対称性を向上させることができる。
(4)本実施形態では、第1軸部材18及び第2軸部材19とともに筒部材16が回転し、筒部材16に遠心力が作用したとしても筒部材16の最内層及び筒部材16の最外層の割れを抑制できる。また、筒部材に遠心力が作用することによる応力が作用しても、周方向層40を構成する第2繊維16eが筒部材16の第3方向Cに沿って連続しているため、ロータ15の強度を維持しつつ筒部材16割れを抑制できる。
また、筒部材16を構成する軸方向層30により第1軸部材18及び第2軸部材19の軸線に対する曲げ方向の剛性が高くなる。したがって、ロータ15全体における第1軸部材18及び第2軸部材19の軸線L11,L12に対する曲げ方向の剛性が高まるため、ロータ15に共振が発生し難くなる。したがって、ロータ15全体が第1軸部材18及び第2軸部材19の軸線L11,L12に対して撓むことを抑制できる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
〇 回転軸として第1軸部材18及び第2軸部材19が採用されていたが、これに限らない。例えば、永久磁石17を貫通する1本の回転軸を採用してもよい。この場合においても筒部材16は、ロータ15の回転によって遠心力を受ける永久磁石17の変形を抑制するために使用される。
〇 第1端部P1と第2端部P2とは軸線mを挟んで反対側に位置していたが、これに限らない。例えば、第1端部P1、第2端部P2、及び軸線mのなす角度が90度となるようにしてもよい。このように変更しても第2方向Bにおいて軸方向層30の端部31を第1境界部B1に、最外周方向層43の端部44を第2境界部B2に一致するように設けることで筒部材16の対称性が向上する。また、当該角度は、筒部材16の製品仕様によって適宜変更してもよい。
〇 軸方向層30の端部31は、筒部材16の第2方向Bにおいて第1境界部B1に一致するように設けられていたが、これに限らない。例えば筒部材16の第2方向Bにおいて第2端部P2に一致するように設けてもよい。この場合、最外周方向層43の端部44を第1端部P1に一致するように設けるとよい。本実施形態では、第1端部P1及び第2端部P2は、軸線mを挟んで反対側に位置している。そのため、上記のように変更することで、ロータ15が回転したときのバランスを維持することができる。
〇 上記変更例に伴い、第1重なり部51及び第2重なり部52が設けられる範囲も適宜変更してもよい。
〇 また、第1重なり部51及び第2重なり部52が形成されない筒部材16を採用してもよい。例えば、筒部材16の第2方向Bにおいて第1端部P1と第2端部P2とを一致させた状態、もしく第1端部P1を第2端部P2の近傍に設けるように変更してもよい。この場合であっても第2方向Bにおいて軸方向層30の端部31を第1境界部B1に、最外周方向層43の端部44を第2境界部B2に一致するように構成すれば、筒部材16の対称性を向上させることができる。また、筒部材16の第2方向Bにおいて最外周方向層43の端部44を軸方向層30の端部31に一致させるようにしてもよい。すなわち、筒部材16の最内層及び最外層を周方向層40により構成できればどのように変更してもよい。
〇 軸方向層30及び周方向層40の巻き数は本実施形態よりも多くしてもよいし、少なくしてもよい。筒部材16の最内層及び最外層を周方向層40により構成し、軸方向層30及び周方向層40が第3方向Cに沿って常に連続している(一筆書き)ようになっていればどのように変更してもよい。
〇 磁性体として永久磁石17が採用されていたが、磁性体として電磁鋼板を積層した積層コアを採用してもよい。この場合、筒部材16の内周面16aに積層コアを固定する場合、第1プリプレグ61及び第2プリプレグ62を直接積層コアに巻き付ける。また、磁性体としては積層コアに限らず、磁性を有する部材であれば適宜変更してもよい。ただし、当該部材の外形によっては筒部材16の製造方法を適宜変更するとよい。なお、積層コア等を用いることにより筒部材16の外形が変更される場合であっても、筒部材16の周方向層40を構成する第2繊維16eは、筒部材16の軸線mを中心とする筒部材16の外縁に沿った方向である第3方向に沿って配向されるようにする。
〇 本実施形態の筒部材16の内周面16aには永久磁石17が圧入されることで固定されていたが、例えば筒部材16の内周面16aに永久磁石17を隙間嵌めし、筒部材16の内周面16aと永久磁石17の外周面との間を接触剤等で埋めるようにしてもよい。
〇 軸方向層30を構成する第1繊維16dは、第1方向Aに沿って配向されていたが、例えば軸線mに対して若干交差する程度、すなわち軸方向層30を構成するときの製造誤差の範囲で第1繊維16dが配向されていればよい。
〇 周方向層40を構成する第2繊維16eは、第3方向Cに沿って配向されていたが、上記変更例に軸方向層30の第1繊維16dと同様に周方向層40を構成するときの製造誤差の範囲で第2繊維16eが配向されていればよい。
〇 強化繊維としては有機繊維や無機繊維を使用してもよいし、異なる種類の有機繊維、異なる種類の無機繊維、又は有機繊維と無機繊維を混繊した混繊繊維を使用してもよい。有機繊維の種類としては、アラミド繊維、ポリ-p-フェニルレンベンゾビスオキサゾール繊維、超分子量ポリエチレン繊維等が挙げられ、無機繊維の種類としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等が挙げられる。
〇 筒部材16は、ロータ15に適用されていたが、適用先は適宜変更してもよい。
10…回転電機、14…ステータ、15…ロータ、16…筒部材、16a…内周面、16d…第1繊維、16e…第2繊維、16f…樹脂、17…永久磁石、18…第1軸部材、19…第2軸部材、30…軸方向層、31…軸方向層の端部、40…周方向層、41…最内周方向層、41a…最内周方向層の外面、42…中間層、42a…中間層の内面、42b…中間層の外面、43…最外周方向層、43a…最外周方向層の内面、44…最外周方向層の端部、51…第1重なり部、52…第2重なり部、m…筒部材の軸線、B1…第1境界部、B2…第2境界部、A…第1方向、B…第2方向、C…第3方向。

Claims (5)

  1. 軸方向層と周方向層とが積層されることで構成される筒部材であって、
    前記軸方向層及び前記周方向層は、強化繊維と、前記強化繊維を覆う樹脂とにより構成され、
    前記筒部材の軸線に沿った方向を第1方向、前記軸線に直交する方向であり、且つ前記軸方向層と前記周方向層とが積層されている方向を第2方向、及び前記軸線を中心とする前記筒部材の外縁に沿った方向を第3方向とすると、
    前記軸方向層を構成する前記強化繊維は、前記第1方向に沿って配向されており、
    前記周方向層を構成する前記強化繊維は、前記第3方向に沿って配向されており、
    前記周方向層は、前記筒部材の最内層及び前記筒部材の最外層をなすとともに前記最外層と前記最内層とが常に連続するように前記第3方向に沿って巻回された状態で構成され、
    前記軸方向層は、前記第3方向に沿って常に連続した状態で前記周方向層に挟み込まれるように配置されていることを特徴とする筒部材。
  2. 前記筒部材の最内層に位置する前記周方向層を最内周方向層、前記最内周方向層が前記第2方向の外側に変形することで形成され、前記最内周方向層とともに前記軸方向層を挟み込む前記周方向層を次最内周方向層、前記筒部材の最外層に位置する前記周方向層を最外周方向層、前記最外周方向層とともに前記軸方向層を挟み込む前記周方向層を次最外周方向層とすると、
    前記第2方向において、前記最内周方向層の外面と前記次最内周方向層の内面とが互いに重なり合う第1重なり部が形成され、
    前記第2方向において、前記最外周方向層の内面と前記次最外周方向層の外面とが互いに重なり合う第2重なり部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筒部材。
  3. 前記筒部材の最内層に位置する前記周方向層を最内周方向層、前記最内周方向層が前記第2方向の外側に変形することで形成され、前記最内周方向層とともに前記軸方向層を挟み込む前記周方向層を次最内周方向層、前記筒部材の最外層に位置する前記周方向層を最外周方向層、前記最外周方向層とともに前記軸方向層を挟み込む前記周方向層を次最外周方向層とすると、
    前記最内周方向層が前記第2方向の外側に向けて変形する境界部分を第1境界部、前記次最内周方向層が前記軸方向層を前記最内周方向層とともに挟み込むべく前記第2方向の外側に向けて変形する境界部分を第2境界部とすると、
    前記最外周方向層と前記次最外周方向層との間に挟まれている前記軸方向層の前記第3方向における端部は、前記第2方向において前記第1境界部に一致するように配置され、
    前記最外周方向層の前記第3方向における端部は、前記第2方向において前記第2境界部と一致するように配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の筒部材。
  4. 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の筒部材を備える回転電機のロータであって、
    前記筒部材の内周面に固定された磁性体と、
    前記筒部材及び前記磁性体と一体回転可能な回転軸と、を備えることを特徴とする回転電機のロータ。
  5. ステータと、
    請求項4に記載の回転電機のロータと、を備えることを特徴とする回転電機。
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