JP7157387B2 - タンディッシュ上ノズル - Google Patents
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Description
また、Al脱酸後の溶鋼中にはAlが溶解しており、このAlが取鍋からタンディッシュへの注入過程やタンディッシュ内において大気と接触して酸化することにより、アルミナが新たに溶鋼中に生成される。
ノズル内壁にアルミナ粒子が付着・堆積してノズル閉塞が起きると、鋳造作業及び鋳片品質において様々な問題が発生する。具体的には、鋳片引抜速度を低下せざるを得ず、生産性が落ちるのみならず、場合によっては鋳込作業そのものの中止を余儀なくされる。また、浸漬ノズル内壁に堆積したアルミナが突然剥離し、大きなアルミナ粒子となって鋳型内に排出され、これが凝固シェルに捕捉された場合には製品欠陥となる。さらには、欠陥部位の凝固が遅れて溶鋼が流出しブレークアウトにつながることさえある。
特許文献1記載の技術のように、ノズル本体内に貫通孔を形成して不活性ガスをノズル孔に吹き込む場合、比較的大きなガス気泡が吹き込まれることから、ノズル内壁へのアルミナ付着抑制効果は得られるものの、溶鋼中に懸濁しているアルミナ粒子を浮上・分離させる効果が小さいため、鋳片品質の改善が十分に得られないという課題がある。
ノズル本体内に、ノズル孔と同心で軸方向に延びる環状スリットと、前記環状スリットに不活性ガスを供給する供給路とを備え、
前記ノズル孔と前記環状スリットに挟まれた内壁耐火物の上部がポーラス性耐火物とされると共に、前記内壁耐火物の下部に、前記環状スリットと連通し前記ノズル孔に不活性ガスを吹き込む貫通孔が設けられ、
前記ポーラス性耐火物は、C(カーボン)を5質量%以上30質量%未満、SiO2(シリカ)を5質量%以上15質量%未満、Al2O3(アルミナ)を50質量%以上90質量%未満含有し、且つ前記SiO2の粒径が1.0mm未満であり、
鋳造に使用する前の状態でのSiO2粒子の周囲90%以上がCによって被覆され、前記ポーラス性耐火物の気孔率が18%以上27%以下であることを特徴としている。
本発明の一実施の形態に係るタンディッシュ上ノズル10の縦断面を図1に示す。
タンディッシュの流出口に設置されるタンディッシュ上ノズル10は、溶鋼の流通路となるノズル孔14と、ノズル孔14を囲繞する耐火物からなる概略円筒状のノズル本体11とから構成されている。
ノズル本体11の外周面は鉄皮17で被覆され、ノズル本体11内には、ノズル孔14とほぼ同心で軸方向に延びる環状スリット12が形成されている。環状スリット12には供給路13を介して外部から不活性ガスが供給される。環状スリット12のクリアランスは1mm程度である。
また、鋳造に使用する前の状態でのSiO2粒子の周囲90%以上がCによって被覆され、ポーラス性耐火物の鋳片鋳造前後における気孔率は18%以上27%以下とする。
なお、貫通孔16を設ける耐火物の組成は特に限定されず、ノズル本体11を構成するアルミナ-カーボン質耐火物もしくは本発明に使用するポーラス性耐火物と同じでもよい。
タンディッシュ上ノズルから吹き込む不活性ガスのガス気泡径が小さいほど、溶鋼中に懸濁する微細なアルミナ粒子はガス気泡に捕捉され、スライディングノズルや浸漬ノズルの内壁へのアルミナ付着が抑制される。従って、連続鋳造用ノズルへのアルミナ付着を長時間安定して抑制するためには、ポーラス性耐火物が組織劣化することなく、小さいガス気泡径を維持することが重要となる。
SiO2(s) + C(s) → SiO(g)+CO(g) ・・・ 反応式1
上記反応によるSiO2粒子のガス化によってポーラス性耐火物の組織劣化が進行する。これにより、ポーラス性耐火物組織内の気孔が三次元的に連結してガス流路が大きくなり、発生する気泡も大きくなってしまう。
SiO(g)+2C(s)→ SiC(s)+CO(g) ・・・ 反応式2
Cが5質量%未満では、SiO2粒子周囲のC被覆率が低下するため、反応式2による組織劣化抑制効果が得られず、鋳造中における組織劣化の進行によって背圧低下を招いてしまう。一方、Cが30質量%以上では、余剰なCによるポーラス性耐火物の損耗が鋳造中に生じやすくなる。
SiO2が5質量%未満では、SiO2量不足による耐熱衝撃性の低下によって亀裂が発生する一方、SiO2が15質量%以上では、ポーラス性耐火物の損耗が鋳造中に生じやすくなる。
ポーラス性耐火物中の主原料であるアルミナは耐火性原料として一般的に使用されるものであり、50質量%未満ではポーラス性耐火物の損耗が生じやすくなる一方、90質量%以上では、SiO2やCが規定量未満となる。
また、SiO2粒子周囲のC被覆率が90%未満の場合、組織劣化の抑制効果が得られず、鋳造中における組織劣化が進行する。
気孔率は開孔気孔の値であり、アルキメデス法により測定した。具体的には、ポーラス性耐火物のサンプル片を乾燥させた時の重量(W0)、水中に完全浸漬させた際の重量(W1)、及び水中に完全浸漬させた状態で真空引きした際の重量(W2)を測定し、その比率から気孔率(P)を算出した。算出式は、P=(W2-W0)/(W2-W1)となる。
同図より、従来のタンディッシュ上ノズルに比べて本実施の形態に係るタンディッシュ上ノズルのほうが、鋳造前後における気孔率の増大幅が小さいことがわかる。
従来のタンディッシュ上ノズルは、鋳造長が増大するにつれて背圧が低下しているが、本実施の形態に係るタンディッシュ上ノズルは、鋳造長鋳造時間にかかわらず背圧が安定していることが同図よりわかる。
原料である粉体を所定の量比で配合し、液状もしくは粉末状のバインダーを加えてミキサーで混練する。混練物はノズル本体用と内壁耐火物用の各々を作製する。ここで、ポーラス性耐火物の原料を配合する際、予めSiO2原料とC原料を混合しておく。これにより、SiO2粒子の周囲90%以上をCによって被覆することができる。
上ノズル使用時に吹き込むAr等の不活性ガスの流量や圧力は特に限定するものではないが、通常は2~30NL/minのガス流量、0.5~1kg/cm2のガス圧力で使用する。
試験条件及び試験結果の一覧を表1に示す。
(a)使用前のタンディッシュ上ノズル
内壁耐火物上部に使用したポーラス性耐火物の使用前における気孔率は、上述したアルキメデス法により測定した開孔気孔の値である。
使用前におけるポーラス性耐火物の水中ガス気泡径は、鋳造初期のガス気泡径を想定した数値であり、使用前の上ノズルを軸方向に半分に切断した後に切断面とノズル内面の貫通孔を非水溶性の接着剤で塞ぎ、水中に漬けて2.0kg/cm2の圧力でガスを吹き込むことにより、ポーラス性耐火物から噴き出た気泡を撮影し、気泡10個について画像解析により測定した直径の平均値である。
なお、SEM-EPMAは、走査型電子顕微鏡に波長分散形X線検出機を取り付けて、試料表面の元素の同定や定量分析をする装置である。
鋳造時間300分、連々数6回、ガス吹込み圧力0.7kg/cm2以上の条件でAlキルド鋼の連続鋳造を実施した後、使用したタンディッシュ上ノズルを回収して評価した。
1550℃熱処理後におけるポーラス性耐火物の水中ガス気泡径は、鋳造末期のガス気泡径を想定した数値であり、1550℃で5時間保持する熱処理後の上ノズルを軸方向に半分に切断した後に切断面とノズル内面の貫通孔を非水溶性の接着剤で塞ぎ、水中に漬けて2.0kg/cm2の圧力でガスを吹き込むことにより、ポーラス性耐火物から噴き出た気泡を撮影し、気泡10個について画像解析により測定した直径の平均値である。厳密には、鋳造後のポーラス性耐火物の水中ガス気泡径を測定する必要があるが、原型を留めた状態で鋳造後の上ノズルを回収することが非常に困難であるため、1550℃熱処理後の水中ガス気泡径を鋳造末期のガス気泡径と想定して測定した。
鋳片内アルミナ介在物個数密度指数は、連々鋳の最後に鋳造された鋳片をサンプリングし、スライム分析により得られたアルミナ介在物個数密度について、比較例1を100として指数表記した値である。
また、アルミナ付着厚み指数は、上ノズル、スライディングノズル、浸漬ノズル各内壁への最大アルミナ付着厚みの合計値について、比較例1を100として指数表記した値である。
実施例1~3は、鋳造過程においてポーラス性耐火物の組織内にSiC緻密層が生成されたため、気孔率の増大による組織劣化が抑制され、背圧も低下することなく初期の微細なガス気泡径が維持されている。それ故、鋳造初期から末期までアルミナ介在物の捕捉効果が維持され、ノズル内壁へのアルミナ付着抑制も安定した結果が得られたと推察される。
また、比較例2は、ポーラス性耐火物が本発明範囲内の組成であっても、内壁耐火物の下部に貫通孔を持たない構造であることから、ノズル内壁へのアルミナ付着抑制において課題が残る結果になったと考えられる。
Claims (1)
- タンディッシュの流出口に設置される上ノズルにおいて、
ノズル本体内に、ノズル孔と同心で軸方向に延びる環状スリットと、前記環状スリットに不活性ガスを供給する供給路とを備え、
前記ノズル孔と前記環状スリットに挟まれた内壁耐火物の上部がポーラス性耐火物とされると共に、前記内壁耐火物の下部に、前記環状スリットと連通し前記ノズル孔に不活性ガスを吹き込む貫通孔が設けられ、
前記ポーラス性耐火物は、Cを5質量%以上30質量%未満、SiO2を5質量%以上15質量%未満、Al2O3を50質量%以上90質量%未満含有し、且つ前記SiO2の粒径が1.0mm未満とされ、
鋳造に使用する前の状態でのSiO2粒子の周囲90%以上がCによって被覆され、前記ポーラス性耐火物の気孔率が18%以上27%以下であることを特徴とするタンディッシュ上ノズル。
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