JP4296787B2 - 鋼の連続鋳造用浸漬ノズルおよび鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

鋼の連続鋳造用浸漬ノズルおよび鋼の連続鋳造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造の際に鋳型内に溶鋼を供給する鋼の連続鋳造用浸漬ノズルおよびそれを用いた鋼の連続鋳造方法に関し、詳しくは、内壁部へのAl23の付着による溶鋼通流孔の閉塞を防止することのできる鋼の連続鋳造用浸漬ノズルおよび鋼の連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミキルド鋼の製造においては、酸化脱炭精錬された溶鋼がAlにより脱酸され、酸化脱炭精錬により増加した溶鋼中の酸素が除去される。この脱酸工程で生成したAl23粒子は、溶鋼とAl23との密度差を利用して溶鋼から浮上分離され除去されるが、数10μm以下の微小なAl23粒子の浮上速度は極めて遅いため、実際のプロセスにおいて、Al23を完全に浮上・分離することは極めて困難であり、そのため、アルミキルド溶鋼中には微細なAl23 粒子が懸濁した状態で残留する。また、溶鋼中酸素を安定して低減させるため、Al脱酸後の溶鋼中にはAlが溶解して存在しており、このAlが取鍋からタンデッシュへの注入過程やタンデッシュ内において大気と接触して酸化した場合には、新たにAl23が溶鋼中に生成される。
【0003】
一方、鋼の連続鋳造では、タンディッシュから鋳型へと溶鋼を注湯する際に、耐火物製の浸漬ノズルを用いる。この浸漬ノズルに求められる特性としては、高温強度、耐熱衝撃性およびモールドパウダーや溶鋼に対する耐溶損性に優れることであり、そのため、これら特性に優れるAl23−黒鉛質やAl23−SiO2−黒鉛質の浸漬ノズルが広く用いられている。
【0004】
しかしながら、Al23−黒鉛質やAl23−SiO2−黒鉛質の浸漬ノズルを用いると、溶鋼中に懸濁しているこれらのAl23が、Al23−黒鉛質からなる浸漬ノズルやAl23−SiO2−黒鉛質を通過する際に、浸漬ノズル内壁に付着・堆積して、浸漬ノズルの閉塞が発生してしまう。
【0005】
浸漬ノズルが閉塞すると、鋳造作業上及び鋳片品質上で様々な問題が発生する。例えば、鋳片引き抜き速度を低下せざるを得ず、生産性が落ちるのみならず、甚だしい場合には、鋳込み作業そのものの中止を余儀なくされる。また、浸漬ノズル内壁に堆積したAl23が突然剥離し、大きなAl23粒子となって鋳型内に排出され、これが鋳型内の凝固シェルに捕捉された場合には製品欠陥となり、さらには、この部分の凝固が遅れ、鋳型直下に引き抜かれた時点で溶鋼が流出し、ブレークアウトにつながることさえもある。このような理由から、アルミキルド鋼を連続鋳造する際における浸漬ノズル内壁でのAl23 の付着・堆積機構、およびその防止方法が従来から研究されてきた。
【0006】
従来考えられているAl23付着機構として、▲1▼:溶鋼中に懸濁しているAl23 が浸漬ノズル内壁に衝突して堆積する、▲2▼:浸漬ノズルを通過する溶鋼の温度が下がり、そのために溶鋼中のAlおよび酸素の溶解度が低下し、Al23が晶出して内壁に付着する、▲3▼:浸漬ノズル中のSiO2と黒鉛とが反応してSiOとなり、これが溶鋼中のAlと反応してAl23が浸漬ノズル内壁で生成し、浸漬ノズルの内壁を覆い、その上に溶鋼中に懸濁していた微細なAl23粒子が衝突して堆積する等が提言されている。
【0007】
そして、これらの付着・堆積機構に基づき、▲1▼:浸漬ノズル内壁にArを吹き込んで浸漬ノズル内壁と溶鋼との間にガス膜をつくり、Al23が壁に接触しないようにする(例えば特許文献1参照)、▲2▼:浸漬ノズル内壁側の溶鋼温度が下がらないようにするため、浸漬ノズルの一部を導電性セラミックスで形成し、当該部分を浸漬ノズルの外部から高周波加熱する、または、浸漬ノズルの壁からの伝熱量を下げるために2層にする、もしくは断熱層を浸漬ノズル肉厚の間に設置する(例えば特許文献2参照)、▲3▼:酸素源となるSiO2の添加量を少なくした材質の浸漬ノズルを用い、Al23の生成を抑える(例えば特許文献3参照)等のAl23付着防止対策が提言されている。また、浸漬ノズル内壁に付着したAl23を除去する対策として、▲4▼:浸漬ノズル材質にAl23と化合して低融点化合物をつくる成分を含有させ、浸漬ノズル内壁に付着したAl23を低融点化合物として流出させる(例えば特許文献4参照)といった対策が提言されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平4−28463号公報
【特許文献2】
特開平1−205858号公報
【特許文献3】
特開平4−94850号公報
【特許文献4】
特開平1−122644号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の各対策には以下の問題点がある。すなわち、上記▲1▼の対策では、浸漬ノズル内に吹き込んだArガスの一部は鋳型内の溶鋼表面から放散できずに凝固シェルに捕捉される。Arガスが捕捉されて生成した気孔(ピンホール)中には介在物が同時に見つかることが多く、これが製品欠陥になる。また、鋳片表層部に捕捉された場合には、気孔内面が連続鋳造機内や圧延前の加熱炉内で酸化され、これがスケールオフされずに製品欠陥となる場合もある。
【0010】
このようなAr気泡によるピンホールの問題を解決するためには、溶鋼中にCaを添加し、介在物の組成をアルミナからカルシウム-アルミネートに変化させることによって、介在物の形態を固体から液体に変化させ、これによって浸漬ノズルの内壁に介在物が付着、堆積することを防止している。この鋳造方法ではArガスを吹き込まなくてもAl23の付着が発生せず鋳造が可能である。しかし、この方法では、介在物が液体となるため溶鋼から分離しにくくなり、溶鋼とともに鋳型へ流出し、結果的に介在物の多い鋳片となり、清浄性が劣化するという問題がある。
【0011】
上記▲2▼の対策では、浸漬ノズル内壁での鋼の凝固を防ぐ効果はあるが、Al23付着を防止する効果は少ない。このことは、溶鋼中に浸漬しているノズル内壁部分でもAl23の付着・堆積が多いことからも理解できる。
【0012】
上記▲3▼の対策では、浸漬ノズル材質中のSiO2が低下するため、浸漬ノズルの耐熱衝撃性が劣化する。通常、浸漬ノズルは予熱した後に使用される。それは耐火物が熱衝撃に弱く割れるためである。SiO2は耐熱衝撃性を向上させる効果が極めて高く、SiO2の含有量を下げることにより、鋳造開始時の溶鋼の通過直後、浸漬ノズルに割れの発生する頻度が非常に高くなる。
【0013】
また、上記▲4▼の対策では、例えばCaOを浸漬ノズルの構成材料として添加することにより、CaOとAl23とを化合させて低融点化合物を生成させ、この低融点化合物を溶鋼と一緒に鋳型内へ注入して、浸漬ノズル内壁のAl23付着を防止することはできるが、介在物の原因となる低融点化合物を鋳型内へ流出させるため、鋳片の清浄性が劣化するという問題点がある。さらに、浸漬ノズルの内壁が損耗していくので、長時間の鋳造には適していない。
【0014】
このように従来のAl23付着防止対策は、浸漬ノズルの閉塞は防止可能であっても鋳片中の介在物を増加させたり、または操業の安定性を阻害したりするものであり、操業面および鋳片品質面の全ての面で満足するAl23付着防止対策は、未だ確立されていないのが実状である。
【0015】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、溶鋼の連続鋳造の際に、鋳片の清浄性を損なうことなくかつ連続鋳造操業の安定性を阻害することなく、溶鋼中のAl23による閉塞を防止することができる鋼の連続鋳造用浸漬ノズルおよび鋼の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
発明者等は、Al23粒子の浸漬ノズル内壁表面への付着・堆積機構を解明するために、Al23−黒鉛質の耐火物材料で作製した耐火物棒をアルミキルド溶鋼中に浸漬させ、Al23付着試験を行った。
【0017】
そして、付着・堆積に及ぼす溶鋼中のS濃度の影響を調べた結果、以下の事実を見出した。すなわち、▲1▼:溶鋼中のS濃度が高くなるほど、Al23付着厚みが厚くなる、▲2▼:溶鋼中S濃度を0.002mass%以下にすると、Al23の付着現象は起こらない、▲3▼:Sと同じように、表面活性元素であるSeやTeを溶鋼中に添加すると、▲1▼や▲2▼の現象が生じる。
【0018】
これらの結果から、Al23の付着機構を次のように考えた。すなわち、表面活性元素であるS原子は、浸漬ノズルの内壁面と溶鋼との界面に集積する性質があるため、溶鋼のS濃度はノズル内壁面側で高く、壁面から離れるにしたがって低くなるという濃度分布を形成する。この場合に、図1の(a)のようにノズル内壁面を0として、内壁面から離れる方向を“正”とすると、濃度勾配は“負”の値を示す。このようなSの濃度勾配を持つ濃度境界層中にAl23粒子が侵入した場合、Al23粒子のノズル内壁面側のS濃度は高く、反対側のS濃度は低くなる。一方、Al23と溶鋼との間の界面張力はS濃度に著しく依存することが知られており、S濃度が高くなるほど界面張力は小さくなる。そのため、図1の(a)に示すように、Al23粒子のノズル内壁面に近い側で界面張力が小さく、ノズル内壁面から遠い側で界面張力が大きくなる。この界面張力の差によって、Al23粒子はノズル内壁表面側に吸引され、内壁表面に堆積していく。
【0019】
この場合、溶鋼中のS濃度が高くなると、ノズル内壁面と溶鋼との界面のS濃度が高くなるとともに濃度境界層の厚みが広がるので、Al23粒子は濃度境界層に侵入しやくなり、かつノズル内壁面側への吸引力も大きくなるため、Al23 付着量が増大する。一方、溶鋼中S濃度を極端に低下させると、界面のS濃度が低下し、濃度境界層厚みも薄くなるので、Al23粒子は濃度境界層に侵入し難くなり、かつノズル内壁面側への吸引力も小さくなるため、Al23付着が起こり難くなる。
【0020】
Al23付着機構をこのように考えた場合、図1の(b)に示すように、ノズル内壁面部分の溶鋼中S濃度を内壁から離れた溶鋼内部のS濃度よりも低下させると、界面張力による吸引力は逆に反撥力に変わり、Al23粒子はノズル内壁から反撥するように離れていくことになる。
【0021】
そこで、ノズル内壁面部分の溶鋼のS濃度を低下させて図1の(b)に示すような“正”のS濃度勾配を形成する手段について検討した結果、浸漬ノズルを構成する耐火物の少なくとも一部が脱硫能を有していればよいことに想到した。つまり、浸漬ノズルを構成する耐火物が脱硫能を有していれば、ノズル内壁面近傍の溶鋼がその脱硫能を有する耐火物によって脱硫され、その部分のS濃度が低下し、図1の(b)に示すような“正”のS濃度勾配を形成することができる。
【0022】
このことを具体的な実験で確認した。実験は、Al23−黒鉛質耐火物材料からなる浸漬ノズルを丸棒に加工し、この丸棒の軸心にシリンダー状に孔加工し、その孔の中に、MgO粉末と該MgOを還元するための金属を配合した、還元剤としての金属粉末は、たとえば、Al、Ti、Zr、Ca、Ceの中から1種を選択し、さらに炭素粉末とを混合した。これを耐火物試験片に加工したシリンダー状孔に充填した。この試験片を、減圧可能なチャンバー内で溶解したアルミキルド溶鋼に浸漬させ、チャンバー内を大気圧以下に減圧(約0.7気圧)してAl23付着試験を行った。金属および炭素粉末が充填された孔の中は大気圧に保持した。試験片内部では、MgO粉末と金属とが反応して、金属Mgが生成し、Mgはガス化する。孔内部の圧力とチャンバー内との圧力の差によって、Mgガスは試験片の壁を透過して試験片表面にわずかずつ排出してくる。この試験では、試験片表面にはAl23粒子が全く付着しないことを確認した。また、試験片表面には、MgSが生成していたことも確認した。これらの結果から、試験片を透過した、Mgガスと溶鋼中のSとが反応して試験片表面部分の溶鋼が脱硫されることによりその部分のS濃度が低下し、“正”のS濃度勾配が形成され、その結果、試験片表面にAl23粒子が付着しなくなることが導かれる。つまり、浸漬ノズルを構成する耐火物が脱硫能を有することにより、ノズル内壁面部分の溶鋼がその脱硫能を有する耐火物によって脱硫され、その部分のS濃度が低下してAl23粒子はノズル内壁から反撥するという上記メカニズムの妥当性が確認された。
【0023】
本発明は以上のような本発明者らの知見に基づいてなされたものであり、鋳型内に溶鋼を供給する連続鋳造用浸漬ノズルの少なくとも一部分を脱硫能を有する耐火物からなるものとした。
【0024】
このような脱硫能を有する耐火物としては、アルカリ土類金属を含む酸化物を含有する耐火物材料に、前記酸化物を還元する成分を配合した耐火物を挙げることができる。これにより、前記耐火物中のアルカリ土類金属を含む酸化物が上記還元成分により還元されてアルカリ土類金属が生成し、このアルカリ土類金属と溶鋼中のSとが反応して溶鋼が脱硫され、上述のようなメカニズムでAl23粒子が付着しなくなるものと考えられる
【0026】
すなわち、本発明は、鋳型内に溶鋼を供給する連続鋳造用浸漬ノズルであって、MgOを含有する耐火物材料に、金属Alを配合した耐火物で少なくともその一部分が構成され、前記耐火物中のMgOの配合比率が5〜75mass%であり、金属Alの配合比率が1〜15mass%であり、溶鋼による加熱による耐火物材料中のMgOと金属Alとの反応によりMgが発生し、そのMgが溶鋼を脱硫し、それによりAl 粒子がノズル内壁から反撥することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズルを提供する。この場合に、このような耐火物としては、さらに炭素を配合したものであってもよい。この場合のノズルの内壁へのAl 2 3 付着を有効に防止することができる具体的なメカニズムを以下に説明する。
【0027】
MgOを含有する耐火物材料に、金属Alを配合した耐火物を浸漬ノズルの少なくとも一部に用いた場合には、浸漬ノズルの溶鋼通流孔を流下する溶鋼により、浸漬ノズルが1200〜1600℃程度まで加熱され(その内壁面は1500℃前後、その外壁面は900〜1200℃程度、鋳型内の溶鋼中に浸漬している部分は1540℃程度)、浸漬ノズル内に存在するMgOと金属Al、またはこれらと炭素とが加熱されて、MgOと金属Alとで下記に示す(1)式に示す反応が生じ、炭素が含まれている場合には、(1)式および(2)式に示す反応が生じ、いずれの場合にも上記耐火物内にMgガスが生成される。
3MgO(s)+2Al(l)→3Mg(g)+Al23(s) …(1)
MgO(s)+C(s)→Mg(g)+CO(g) …(2)
【0028】
上記(1)式の反応は、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caによっても金属Alと同様に起こる。ここで、炭素は(2)式に示す反応の他に、浸漬ノズルの予熱中におけるこれら金属の酸化を防止する役割も果たしている。
【0029】
後述するように、高速度で溶鋼が流下している浸漬ノズルの溶鋼通流孔内部は減圧され、大気圧よりも低くなり、また、浸漬ノズルを構成する耐火物材料が通常10数%から20数%の気孔率を有していることも相俟って、浸漬ノズルの耐火物内で発生したMgガスは浸漬ノズル側壁を拡散して、浸漬ノズル内壁面に到達する。
【0030】
浸漬ノズルの内壁面側には溶鋼が存在しており、MgはSとの親和力が強く、Mgガスは浸漬ノズル内壁面と溶鋼との境界層に存在するSと反応してMgSを生成し、その部分の溶鋼のS濃度は低くなる。浸漬ノズル内壁近傍の溶鋼中S濃度の濃度勾配は、浸漬ノズル側が低く、溶鋼側が高い濃度勾配となる。その結果、浸漬ノズル内壁面と溶鋼との境界層に存在するAl23粒子においては、浸漬ノズル側と溶鋼側とで溶鋼との界面張力に差が生じ、この界面張力の差に基づきAl23粒子は浸漬ノズル内壁面から反撥するように離れていく。この効果によって浸漬ノズルの内壁面にはAl23が付着せず、Al23によるノズル閉塞が防止される。上記MgSを生成する反応は脱硫反応と見ることできるから、浸漬ノズル内壁近傍に存在している溶鋼が浸漬ノズルを構成する上記耐火物により脱硫されると見ることもきる。すなわち、MgOを含有する耐火物材料に、金属Al等を配合した耐火物は、その組成の耐火物が脱硫能を有している結果、Al23の付着を防止することができると考えることできる。
【0031】
MgOおよび金属Al、またはこれらとAlを含む耐火物が配置されない通常の浸漬ノズルの場合には、浸漬ノズルの溶鋼通流孔内が減圧されることにより、大気が浸漬ノズル側壁を透過して溶鋼を酸化し、Al23が生成してAl23付着の原因となるが、本発明に係る浸漬ノズルでは浸漬ノズル内部で発生するMgガスが大気の透過を妨げるので、この作用によってもAl23付着が防止される。
【0032】
この場合、上記耐火物中のMgOの配合比率は、5〜75mass%とすることが好ましい。MgOの配合比率が5mass%未満では、前述したようなMgガスによる付着防止効果が得られ難いためであり、一方、75mass%を超えて配合した場合には、連続鋳造用浸漬ノズルとして必要な耐熱衝撃性等が低下してしまうためである。
【0033】
上記耐火物中の金属Alの配合比率は、1〜15mass%であることが好ましい。金属Alが15mass%を超えて配合された場合にもAl23付着防止効果は得られるが、15mass%以下の配合で得られる付着防止効果を超えるものではない。金属Alの配合比率は2〜15mass%であることがさらに好ましく、5〜10mass%であることが一層好ましい。
【0034】
金属Alの代わりに、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caを用いることもできる。これらを配合する場合にも15mass%以下が好ましい。15mass%を超えて配合されても、15mass%以下の配合で得られる付着防止効果を超えるものではなく、また、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caは高価であるため、コスト増を招き好ましくない。
【0035】
また、耐火物に炭素を配合する場合には、その配合比率は40mass%以下とすることが好ましい。炭素の配合比率が40mass%を超えた場合には、連続鋳造用浸漬ノズルとして必要な耐熱衝撃性等が低下してしまうためである。
【0036】
上記耐火物を構成する耐火物材料は、MgOの他にCaOを配合させることが好ましい。上記耐火物が脱硫能を有する場合には、CaOを配合することにより脱硫効果が大きくなる。Mgガスと溶鋼中Sとの反応で生成するMgSは、Mgガスの供給量が減少すると逆反応が生じてMgガスとSに戻る場合がある。逆反応が生じてノズル内壁表面部分に存在する溶鋼中のS濃度が上昇すると、S濃度勾配が“負”になり、Al23粒子がノズル内壁側に吸引され、Al23粒子の付着・堆積が生じるようになる。この現象が生じることを回避するためにはCaOの存在が有効である。すなわち、CaOが存在すると、MgSの分解によって生成したS原子はCaOに溶解し固定されるので、S濃度勾配が“負”になることを防止することができる。このように、CaOが存在すると脱硫効果が高まる。上記耐火物中のCaOの配合量は5mass%以下であることが好ましい。5mass%を超えると耐火物中への吸湿が大きくなり好ましくない。また、上記耐火物中のCaOの配合量が0.5mass%未満であると脱硫効果を促進する効果が小さいため、0.5mass%以上が好ましい。
【0037】
また、上記耐火物材料にAl23 、SiO2、ZrO2、TiO2の1種または2種以上を含有させてもよい。これらを含有させることで、上記耐火物の高温強度や耐熱衝撃性を向上させることができる。なお、CaOも適量配合することにより、上記効果に加えてこのような効果を奏することができる。
【0048】
以上の本発明に係る浸漬ノズルは、以上のような耐火物でその全体が構成されていてもよいが、その一部が以上のような耐火物であってもよい。例えば、浸漬ノズルの溶鋼通流孔の周囲部分の全周に亘ってこのような耐火物で構成してもよい。この場合には、後述する図4のように浸漬ノズルの高さ方向の全部にこのような耐火物を設けてもよいし、高さ方向の一部であってもよい。また、Al23の付着防止効果をより確実なものとするためには、溶鋼通流孔を含む内側部で溶鋼が充満する部位、具体的には浸漬ノズルを溶鋼に浸漬した際の溶鋼湯面レベル以下の部位の全周に亘って(溶鋼吐出孔の周囲部分も含む)以上のような耐火物を配置することが好ましい。さらに、以上のような耐火物を支持用の耐火物で支持する構成としてもよい。これにより、上記耐火物が強度的に多少劣るものであっても、浸漬ノズルとして使用することが可能となる。具体的には、上述のように、浸漬ノズルの溶鋼通流孔の周囲部分の全周に亘って、または浸漬ノズルの溶鋼通流孔を含む内側部で溶鋼が充満する部位の全周に亘って以上のような耐火物を配置し、その外側を支持用耐火物として通常の浸漬ノズルの耐火物で構成することが好ましい。これにより、Al23の付着防止効果を発揮するのみならず、浸漬ノズルの強度が向上し、浸漬ノズルのハンドリングや使用可能時間を従来の浸漬ノズルと同等にすることができる。
【0060】
本発明においては、以上のように構成される本発明の浸漬ノズルを用いて鋳型内に溶鋼を供給して連続鋳造する。この場合に、前記浸漬ノズルの溶鋼通流孔を流下する溶鋼にArガスを吹き込まずに溶鋼を鋳型内に注入することができる。上述したように、本発明に係る浸漬ノズルでは内壁表面へのAl23の付着が防止されるので、従来Al23の付着防止対策として浸漬ノズルの溶鋼通流孔内に吹き込んでいたArガスの吹き込みをなくすることが可能となる。その結果、鋳片表層部のAr気泡に起因する製品欠陥を防止することができる。従来、Arガス吹き込みをしないで連続鋳造する場合には、溶鋼中に金属Caを添加する溶鋼処理を行っているが、本発明の浸漬ノズルを用いたアルミキルド鋼の鋳造では、Ca添加処理しなくても、Arガス吹き込み量を3NL/min以下(0を含む)とArガスを全く吹き込まないか吹き込み量を微少量とした条件で連続鋳造することが可能である。
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図2は本発明が適用される鋼の連続鋳造設備の鋳型部分を示す概略断面図である。この鋼の連続鋳造設備は、相対する鋳型長辺銅板11と、鋳型長辺銅板11内に内装された相対する鋳型短辺銅板12とから構成される鋳型2を有し、この鋳型2の上方には、内部を耐火物で施行され、溶鋼Lを貯留するタンディッシュ3が配置されている。このタンディッシュ3の底部には上ノズル4が設けられ、この上ノズル4に接続して、固定板13、摺動板14、および整流ノズル15からなるスライディングノズル5が配置されている。スライディングノズル5の下面側には、浸漬ノズル1が配置されている。そして、タンディッシュ3から鋳型2へ溶鋼Lが流出する溶鋼流出孔16が形成されている。
【0062】
浸漬ノズル1は、鋳型2内の溶鋼Lに浸漬され、その下端部に溶鋼吐出孔17が形成されていて、この溶鋼吐出孔17から吐出流18を鋳型短辺銅板12に向けて溶鋼を吐出する。鋳型2内に注入された溶鋼Lは鋳型2内で冷却されて凝固シェル6を形成し、鋳型2内の溶鋼湯面7にはモールドパウダー8が添加される。
【0063】
本発明の第1の実施形態においては、浸漬ノズル1は、MgO等の耐火物材料に、Al等の金属を配合したAl23付着防止機能を有する耐火物でその少なくとも一部分が構成される。図3の概略断面図に示す第1の例では、スラグと接触するスラグライン部24以外の全てをそのようなAl23付着防止機能を有する耐火物22で構成する(以下、「一体型」と呼ぶ)。また、図4の概略断面図に示す第2の例では、スラグライン部24以外の部分のうち、溶鋼が通流する溶鋼通流孔25の周囲部分のみを脱硫能を有する耐火物22で構成し、その外側を母材耐火物(支持用耐火物)23で構成する(以下、「内挿型」と呼ぶ)。
【0064】
耐火物22は、具体的にはアルカリ土類金属を含む酸化物を含有する耐火物材料に、酸化物を還元する成分を配合してなるものを用いることができる。この場合に、アルカリ土類金属を含む酸化物はMgOを主体とし、酸化物を還元する成分は、金属Al、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caからなる群から選択された1種または2種以上であることが好ましい。また、耐火物22は、さらに炭素を配合してもよい。典型的にはMgOを含有する耐火物材料に、金属Alを配合したもの、またはこれらにさらに炭素を配合したものが挙げられる。また、MgOの配合比率を5〜75mass%、金属Al、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caの群から選択された1種または2種以上の配合比率を15mass%以下、炭素を配合する場合には炭素の配合比率を40mass%以下とすることが好ましい。さらに、耐火物22としては、耐火物材料としてMgOの他に微少量、好ましくは5mass%以下のCaOを配合するとなお好ましい。また、耐火物22を構成する耐火物材料としてMgOやCaOの他、Al23 、SiO2 、ZrO2 、TiO2 からなる群から選択された1種または2種以上を配合してもよい。
【0065】
また、耐火物22としては、スピネル(MgO・Al23)を含有する耐火物材料に、金属Al、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caからなる群から選択された1種または2種以上を添加してなるものであってもよく、さらに炭素を配合したものであってもよい。また、スピネル(MgO・Al23)の配合比率が20〜99mass%であり、金属Al、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caからなる群から選択された1種または2種以上の配合比率が10mass%以下、炭素を配合する場合には炭素の配合比率を40mass%以下であることが好ましい。さらに、耐火物22としては、耐火物材料としてスピネル(MgO・Al23)の他に微少量、好ましくは5mass%以下のCaOを配合するとなお好ましい。また、耐火物22を構成する耐火物材料としてスピネル(MgO・Al23)やCaOの他、熱衝撃性を有し、高温強度を上げるために、MgO、Al23 、SiO2 、ZrO2 、TiO2 からなる群から選択された1種または2種以上を配合してもよい。
【0066】
通常、鋼の連続鋳造用浸漬ノズルは、高温強度に優れたAl23−黒鉛質耐火物やAl23−SiO2−黒鉛質耐火物が使用されることが多く、したがって、図3に示す本発明で規定する耐火物22の外側の母材耐火物23としては、Al23−黒鉛質耐火物やAl23−SiO2−黒鉛質耐火物を用いることが好ましい。
【0067】
また、モールドパウダーと接触する範囲に設けられるスラグライン部24としては、スラグに対する耐食性に優れる、例えばZrO2−黒鉛質耐火物等を用いればよい。本発明に係る浸漬ノズル1において、スラグライン部24の設置は必ずしも必要ではないが、浸漬ノズル1の耐用性から設置した方が好ましい。
【0068】
特に、以上のようなAl23付着防止機能を有する耐火物22が、脱硫能を有する耐火物であれば、浸漬ノズル内壁面と溶鋼との境界層近傍の溶鋼のS濃度が低くなり、Al23粒子が反撥して高いAl23付着防止機能を有することができる。
【0069】
次に、第2の実施形態について説明する。
本発明の第2の実施形態においては、浸漬ノズル1は、その内壁表面からMgガス、Caガス、Mnガス、Ceガスのうちの1種以上を吐出可能に構成され、これにより、Al23付着防止機能が発揮される。また、金属Mg粉末、金属Ca粉末、金属Mn粉末、金属Ce粉末のうちの1種以上の金属粉末と耐火物材料とで構成され、溶鋼の熱により前記金属粉末から発生したMgガス、Caガス、Mnガス、Ceガスのうちの1種以上が、溶鋼通流孔を通流する溶鋼に供給されれ、これにより、Al23付着防止機能が発揮される。
【0070】
図5は前者の例を示す概略断面図であり、母材耐火物31の側壁部にスリット33が設けられ、スリット33には、Arガス等の不活性ガスを搬送用ガスとしてMgガス、Caガス、Mnガス、Ceガスのうちの1種以上を供給するためのガス導入管39が接続されており、そして、ガス導入管39は、このようなガスを発生させるためのガス発生装置38に接続している。ガス発生装置38は、例えば、加熱装置により金属Mg、金属Ca、金属Mn、金属Ceを加熱してガス化させる装置であり、ガス導入管39は、その内部を通過するガスが液化・凝縮しないように、その外周をニクロム線等の加熱装置によって加熱・保温されている。ガス発生装置38は、金属Mg、金属Ca、金属Mn、金属Ceのうちの1種以上の金属を収容し、これらの融点以上の温度まで加熱して金属蒸気を発生させる。それをArガス等の不活性ガスを搬送用ガスとしてガス導入管39を介してスリット33内に導入する。前述したように、溶鋼Lの鋳造中、スリット33内に導入された金属ガスは、浸漬ノズル1の溶鋼流出孔25を流下する溶鋼Lにより生じる圧力差によって内壁表面から溶鋼流出孔25内に排出される。
【0071】
浸漬ノズル1を構成する母材耐火物31としては、高温強度に優れたAl23−黒鉛質耐火物、MgO−スピネル質耐火物やスピネル質耐火物を好適に用いることができる。スリット33の厚みは、0.5〜3mmとすることが好ましい。0.5mm未満では、金属ガスが凝固してスリット33が閉塞するおそれが高くなり、一方、3mmを超えるとノズル強度の低下が現れ、浸漬ノズル1の折損事故につながるおそれがある。また、モールドパウダー8と接触する範囲に設けられるスラグライン部34としては、スラグに対する耐食性に優れる、例えばZrO2−黒鉛質耐火物等を用いればよい。スラグライン部34の設置は必ずしも必要ではないが、浸漬ノズル1の耐用性から設置した方が好ましい。
【0072】
図6〜8は後者の例、すなわち浸漬ノズル1を金属Mg粉末、金属Ca粉末、金属Mn粉末、金属Ce粉末のうちの1種以上の金属粉末と耐火物材料とで構成した例である。溶鋼Lの鋳造中、溶鋼Lの熱によって浸漬ノズル1が加熱され、それに伴って浸漬ノズル1に配合された金属粉末が融点以上の温度まで加熱されてガス化する。これにより発生したMgガス、Caガス、Mnガス、Ceガスのうち1種以上は、溶鋼通流孔25を流下する溶鋼Lにより生じる圧力差によって浸漬ノズル1の内壁表面から溶鋼通流孔25内に吐出される。
【0073】
図6の例では、浸漬ノズル1を、スラグライン部34以外の全てを金属Mg粉末、金属Ca粉末、金属Ce粉末のうちの1種以上の金属粉末と、Al23−黒鉛質またはMgO−スピネル質またはスピネル質の耐火物材料との混合物からなる金属粉末含有耐火物35で構成した一体型のものである。また、図7の例では、浸漬ノズル1のスラグライン部34以外の部分のうち、溶鋼が通流する溶鋼通流孔25の周囲部分のみを金属粉末含有耐火物35で構成し、その外側を上述した母材耐火物31で構成した内挿型のものである。さらに、図8の例では、金属粉末含有耐火物35を、母材耐火物31中の内壁表面側に分散させ、埋め込んで構成する(「複層型」と呼ぶ)。
【0074】
この場合、用いる金属Mg粉末、金属Ca粉末、金属Mn粉末および金属Ce粉末の大きさは、0.1mm〜3mmであり、浸漬ノズルにおけるその配合比率は3〜10mass%であることが好ましい。これらの金属粉末が0.1mm未満では、ガス化反応時期が集中し、金属ガスを長時間に亘って発生させることが困難であり、一方、3mmを超えると、ガス化反応が緩やかに起こるのみならず、耐火物材料に配合した際に耐火物の特性を劣化させるおそれがある。また、これらの金属粉末の配合比率が、3mass%未満では金属ガスの発生量が少なく、所期の効果を得ることができず、一方、10mass%を超える場合には耐火物の特性を劣化させるおそれがある。
【0075】
このような第2の実施形態においては、Mg、Ca、Mn、Ceは硫黄親和金属であり、溶鋼中の硫黄と反応して溶鋼を脱硫する脱硫能を有していると考えるることもできるから、前者の例では、浸漬ノズル1の内壁表面から脱硫能を有するガスを吐出することにより、溶鋼通流孔を通流する溶鋼のうち前記内壁表面部分に存在するものが脱硫されること、また後者の例では、浸漬ノズル1を脱硫能を有する金属粉末と耐火物材料とで構成し、溶鋼の熱により金属粉末から発生した脱硫能を有するガスによって、溶鋼通流孔を通流する溶鋼のうち前記内壁表面部分に存在するものが脱硫されることによって、Al23粒子の付着を防止するメカニズムが考えられる。
【0076】
以上のような第1および第2の実施形態で説明したような浸漬ノズル1を用いた上記図2に示す連続鋳造設備により鋼の連続鋳造を行う際には、取鍋(図示せず)からタンディッシュ3内に注入された溶鋼Lを、スライディングノズル5で溶鋼流量を調整しながら、溶鋼流出孔16を経由させ、浸漬ノズル1の溶鋼吐出孔17から吐出流18を鋳型短辺銅板12に向けて鋳型2内に注入する。注入された溶鋼Lは鋳型2内で冷却されて凝固シェル6を形成し、鋳型2の下方に連続的に引き抜かれ鋳片となる。鋳造に際しては、鋳型2内の溶鋼湯面7上にはモールドパウダー8を添加する。
【0077】
この場合に、溶鋼LはAlにより脱酸されたアルミキルド鋼である場合が多く、溶鋼中にAl23粒子が懸濁しているが、以上のような浸漬ノズル1を用いることにより、Al23粒子の付着が防止される。
【0078】
ここで、第1の実施形態の耐火物22が脱硫能を有している場合、または第2の実施形態のように浸漬ノズル1の溶鋼通流孔25を通流する溶鋼に脱硫能を有する金属ガスを供給する場合には、浸漬ノズル1の溶鋼通流孔25を通流する溶鋼Lのうち内壁面部分に存在する溶鋼は脱硫されてS濃度が低くなり、内壁面から離れた溶鋼通流孔25の中心側の溶鋼のS濃度が相対的に高くなって、溶鋼LとAl23粒子との間の界面張力に差が生じ、この界面張力の差により溶鋼L中に懸濁しているAl23は浸漬ノズル1の内壁面から離脱するように移動するので、浸漬ノズル1の内壁面でのAl23付着層厚みの成長が抑制され、Al23によるノズル閉塞が防止される。その結果、鋳造可能時間を飛躍的に延長させることが可能となり、また、浸漬ノズル1の内壁でのAl23粒子の付着・堆積による粗大化を防止することができるので、粗大化したAl23の剥離に起因する鋳片の大型介在物を大幅に削減することができる。
【0079】
従来、上ノズル4、スライディングノズル5の固定板13、浸漬ノズル1のいずれか、またはこれらの2箇所以上から、溶鋼流出孔16内を流下する溶鋼L中にAl23付着防止のためのArガスを吹き込むことが行われているが、本発明に係る浸漬ノズル1を用いた場合には、上述のようにAl23粒子がほとんど付着しないため、Al23付着防止のためのArガスは吹き込む必要がない。仮に吹き込む場合にも極少量のArガス吹き込みで十分である。例えば、連続鋳造すべき溶鋼がCaを添加しないAlキルド鋼である場合には、浸漬ノズル1内へのArガス吹き込み量を3NL/min以下(0を含む)として連続鋳造することが可能である。このようにArガス吹き込みを行わないまたは低減することにより、Ar吹き込みに起因して鋳片表層部で発生していた製品欠陥を著しく低減することができる。
【0080】
なお、浸漬ノズル1を介して鋳型内へ溶鋼を供給する際には、図2の場合にはスライディングノズル5にて、また、ストッパーを設けた設備ではストッパーにより途中の浸漬ノズル断面積を縮小しながら、すなわち、浸漬ノズル1の断面積よりもスライディングノズル部分またはストッパー部分の断面積の方を小さくして流量制御しているため、高速度で溶鋼が流下している浸漬ノズル1の溶鋼通流孔25内では必ず減圧され、大気圧よりも低くなる。浸漬ノズルを構成している耐火物の気孔率は10〜20%程度であるため、浸漬ノズルの耐火物内で発生するMgガス等は浸漬ノズル1の側壁を拡散して、浸漬ノズル1の内壁面に到達する。浸漬ノズル1の内部でガス化したMgやCaをノズル壁/溶鋼界面まで浸透させるには、界面圧力をできるだけ低下させることが重要である。
【0081】
浸漬ノズル1を構成する耐火物中をガスが透過する速度はQ(m3/sec・m2)、圧力差ΔP(= Pin −Pintf、ここで、Pintf は耐火物内壁表面の圧力、Pinは浸漬ノズル内部で発生するガスの圧力)に比例する。そして、Pintf はスライディングノズルの開度に依存している。また、管内の一部の断面積が縮小-拡大する管の中を流れる流体の圧力は数式(4)式で表すことができる。
【0082】
【数1】
Figure 0004296787
【0083】
ここで、A1、A2はスライディングノズルおよび浸漬ノズルの横断面積(m2)、スライディングノズルの開度OARは、OAR(%)=(A1/A2)×100で表すことができる。また、gは重力加速度、v1はスライディングノズルから浸漬ノズルへの吐出流の線速度を示す。タンディッシュ内の溶鋼深さh1が1.3mの場合、数式(4)から計算されるΔPは、20%の開度のとき、0.56atm(ただし、ν1=(2gh11/2=(2×9.8×1.3)1/2=5.05m)である。
【0084】
基礎実験で、チャンバー内の圧力を変えて、ガスの浸透速度を変化させた実験を行った。70%の開度に相当するΔPは0.08atmであり、Mgガスの浸透速度が小さく、アルミナ付着防止効果が出にくい。チャンバー内と大気圧の圧力差ΔPを0.35atm以上にすると、ガスの浸透が十分にありアルミナ付着の抑制効果が明確に現れた。したがって圧力差ΔPを0.35atm以上になるように開度を設定するのが望ましい。0.35atmの圧力差を得るための開度は55%である。
【0085】
上記数式(4)から、圧力差を大きくするには、開度を小さくして、流速を上げればよいが、開度を小さくし過ぎると、流量の制御が困難になるので、20%程度が制御の下限値とするのが実際的である。また、流速をあげるためには、タンディッシュ内の溶鋼深さh1を大きくすればよいがタンディッシュの大きさは鋳造作業に適した形で決まっており、多くの場合0.5〜2m程度である。
【0086】
なお、上記説明では鋳片断面が矩形型の鋳型2について説明したが、鋳片断面が円形の鋳型であっても本発明方法を使用することができる。さらに、連続鋳造機の個々の装置は上記に限るものではなく、例えば溶鋼流量調整装置としてスライディングノズル5の代わりにストッパーを用いてもよいように、その機能が同一であればどのような装置としてもよい。
【0087】
【実施例】
(実施例1)
MgOを含む酸化物を含有する耐火物材料に、MgOを還元する成分である金属Al、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caからなる群から選択された1種または2種以上を配合し、表1のNo.1〜19に示す種々の組成の耐火物を図3または図4の耐火物22として用い、図3または図4に示す形状の浸漬ノズルを製造した。これら浸漬ノズルを用い、図2に示す連続鋳造設備により溶鋼を連続鋳造した。図4の内挿型の浸漬ノズルの場合、その外周部の母材耐火物はAl23−黒鉛質の耐火物とした。また、比較のために、No.20、21に示す従来のAl23−黒鉛質耐火物製の浸漬ノズルを用いた鋳造も実施した。
【0088】
鋳造条件は、300トン/ヒートを6ヒート連続して鋳造後、使用後の浸漬ノズルを回収して吐出孔直上部の内壁に付着した付着物を観察した。鋳造鋼種は低炭素アルミキルド鋼(C:0.04〜0.05mass%、Si:tr、Mn:0.1〜0.2mass%、Al:0.03〜0.04mass%)であり、スラブ幅は950〜1200mmの範囲であった。鋳片引き抜き速度は2.2〜2.8m/minであった。
【0089】
付着物の観察では、Al23付着が非常に少なく(厚さ5mm以下)、かつ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金が全く観察されない状態を「付着ゼロ」(符号:◎で表示)、Al23付着厚さが5mm超10mm以下の範囲で、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金なしの状態を「付着小」(符号:○で表示)、Al23付着厚さが10mm超20mm以下の範囲で、凝固・付着した地金が存在する状態を「付着中」(符号:△で表示)と評価し、一方、Al23付着厚さが20mm超で、かつ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金も多い状態を「付着大」(符号:×で表示)と評価した。表1に、用いた耐火物の組成とAl23付着状況の評価結果を示す。
【0090】
【表1】
Figure 0004296787
【0091】
表1からも明らかなように、比較例のNo.20、21はAl23付着が多く、かつ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金も多いため評価が「付着大」であったのに対し、本発明例であるMgOを含む酸化物を含有する耐火物材料に、MgOを還元する成分である金属Al、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caからなる群から選択された1種または2種以上を配合した耐火物を適用した浸漬ノズルのNo.1〜19の場合には、比較例よりもAl23付着量、地金の付着が少なかった。これらの中で、MgOの配合量が5〜80mass%、Al等の還元成分の配合量が5〜15mass%であるNo.1〜12、15〜19は「付着ゼロ」◎の極めて良い評価であった。Al量が2mass%のNo.14は「付着小」○とこれらに比較してAl23付着性が若干劣っており、Al量が1mass%のNo.13は「付着中」〜「付着小」△〜○と鋳造チャンスによっては効果の小さい場合もあった。すなわち、Alが1mass%以上でAl23付着抑制効果が確認できたものの、安定してAl23付着抑制効果を得るためには2mass%以上が好ましく、Al23付着を確実に防止するためには5〜15mass%以上が好ましいことが確認された。Alの配合量が15mass%のNo.17はAl23付着性の評価では「付着ゼロ」◎と極めて良好な結果が得られたが浸漬ノズルの内面に亀裂が入る場合があった。以上から、内壁へのAl23付着抑制効果および材料の安定性の観点からするとAlの配合量は5〜10mass%が最も好ましいという結果が得られた。また、MgOの配合量が80mass%のNo.12はAl23付着性の評価では「付着ゼロ」◎と極めて良好な結果が得られたが浸漬ノズルの内面に亀裂が入る場合があった。このことからMgOの配合量は5〜75mass%が好ましいことが確認された。さらに、炭素配合量が40mass%以下では、内挿型の浸漬ノズルが健全な状態を保っていたが、炭素配合量が45mass%のNo.19では内挿型浸漬ノズルの貼り合わせ部に剥離が生じる場合があった。このことから炭素を配合する場合には40mass%以下が好ましいことが確認された。
【0092】
(実施例2)
表2に示すように、表1のNo.1と同じ組成であるNo.22を基本組成とし、これにCaOを配合したNo.23〜26の組成の耐火物を図4の耐火物22として用いて図4に示す内挿型の浸漬ノズルを製造し、この浸漬ノズルを用い、図2に示す連続鋳造設備により溶鋼を連続鋳造した。
【0093】
鋳造条件は、300トン/ヒートを8ヒート連続して鋳造後、使用後の浸漬ノズルを回収して吐出孔直上部の内壁に付着した付着物および浸漬ノズルの状態を観察した。鋳造鋼種は低炭素アルミキルド鋼(C:0.04〜0.05mass%、Si:tr、Mn:0.1〜0.2mass%、Al:0.03〜0.04mass%)であり、スラブ幅は950〜1200mmの範囲であった。鋳片引き抜き速度は2.2〜2.8m/minであった。
【0094】
付着物の観察では、Al23付着厚さが5mm以下で亀裂が全く観察されない状態を「極めて良好」(符号:◎で表示)、Al23付着厚さが5mm超10mm以下で亀裂が全く観察されない状態を「良好」(符号:○で表示)、Al23付着厚さが10mm超15mm以下であるか、微小な亀裂が発生した場合には「不良」(符号:△で表示)、Al23付着厚さが15mm超であるか亀裂が発生した状態、またはその他の使用不適の原因がある場合を「不適」(符号:×で表示)と評価した。
【0095】
【表2】
Figure 0004296787
【0096】
表2に示すように、CaOを0.5mass%配合したNo.23は基本組成のNo.22と同じ「良好」○の評価であり、No.22に比較してAl23付着厚さが若干薄くなった程度であったが、CaOを1〜5mass%配合したNo.24〜26は「極めて良好」◎となり、CaOを1〜5mass%配合することによりAl23付着防止効果が格段に向上することが確認された。
【0097】
(実施例3)
鋳型部分が図2に示すように構成された連続鋳造設備(2ストランドマシン)を用い、一方のストランドには本発明に係る浸漬ノズル、すなわち図7に示すように吐出孔を含む内孔側に、MgO−炭素−金属Al質にAl23とCaOを含有させた耐火物を張り、その外側をAl23−黒鉛質耐火物で支持した。本発明に係るMgO−炭素−金属Al質に、Al23とCaOを含有させた耐火物としては、粒子直径が3mm以下のマグネシアクリンカー粉末、粒子直径が0.5mm以下の炭素粉末、および粒子直径が0.1〜3mmの金属Al粉末を、配合比率4:2:1の割合で混合し、さらにAl23を粉末を25mass%、CaO粉末を5mass%混ぜ合わせたものを用いた。最初にMgO、黒鉛、金属Alを混ぜ合わせ、できるだけMgOの周りに金属Alを配合させるように工夫した。その理由は、MgOとAlとが反応してMgガスを効率的に発生させるためである。Al23を混ぜるのは、MgOと反応してスピネルを形成させ、強度を上昇させるためである。溶鋼中にはカルシウムを全く添加せずに、Arガス流量は最初の2チャージの間全く流さず、後の2チャージの間3NL/minの流量で流した。
【0098】
他方のストランドには、従来から用いられているAl23−C質の浸漬ノズルを使用した。このストランドでは、鋳造の開始から終了までArガスを10NL/minの流量で流した。
【0099】
タンディッシュ内の溶鋼深さを0.7〜2mの間で調整して鋳造を実施した。スライディングノズルと浸漬ノズルの開度は引き抜き速度が一定の場合には20〜70%の間で調整した。例えば、タンディッシュ内溶鋼深さh1=1.3mのとき、開度を20%、40%、55%、60%にするためには、鋳造スループット量(ton/min)が3.6、5.1、6.0および6.3ton/minである。このような換算表を作成して鋳造を実施した。
【0100】
鋳造鋼種は低炭素アルミキルド鋼(C:0.04〜0.05mass%、Si:tr、Mn:0.1〜0.2mass%、S:0.008〜0.15mass%、Al:0.03〜0.04mass%)であり、スラブ幅は1600mmであった。鋳片引き抜き速度は1.4〜2.4m/minであった。
【0101】
鋳造条件は、300トン/チャージを4チャージ連続して鋳造した。使用後の浸漬ノズルを回収して吐出孔直上部の内壁に付着した付着層厚みを鋳型幅方向位置およびそれと直角方向位置の4ケ所の付着層厚みを測定し、その平均値をアルミナ付着層厚みとした。
【0102】
その結果を図9に示す。図9は、横軸にスライディングノズルの開度OARをとり、縦軸にノズル内壁のアルミナ付着厚さをとって、これらの関係を本発明に係る浸漬ノズルと従来の浸漬ノズルとで比較して示す図である。この図から明らかなように、本発明に係る浸漬ノズルの場合には、OARが60%の時には5mm程度のAl23付着厚さが存在したが、40%、20%ではほとんどAl23付着が存在しなかった。一方、従来型のAl23-黒鉛質耐火物で構成した浸漬ノズルではArガスを常時10NL/min吹き込んだ鋳造を行ったにもかかわらず、OARが20%や40%に維持できずに3チャージと4チャージ目の鋳造はOARを70%以上に調整しないと鋳造が困難となった。その場合には、浸漬ノズル回収後に測定したAl23付着厚さは20mm以上もあった。
【0103】
本発明に係る浸漬ノズルを用いて、Arガスをほとんど吹き込まずに鋳造した鋳片内にはピンホールは極端少なかった。従来型の浸漬ノズルを用いArガス吹き込み流量を10NL/min吹き込んだ時の鋳片内のピンホール数を1とすると、本発明による浸漬ノズルを使用して、Arガス吹き込み量が3NL/minの場合には、0.2まで減少し、0NL/minではピンホールは全く観察されなかった。
【0104】
本発明に係る浸漬ノズルを用いて、浸漬ノズルへのArガス吹き込み流量を0〜10NL/minに変化させた鋳造を行って、鋳片内のピンホールの数を測定し、Arガス吹き込み流量を10NL/minの場合のときのピンホール発生数を1とすると、0NL/minの場合には0、3NL/minの場合には0.2、44NL/minの場合には0.4、6NL/minの場合には0.8、8NL/minの場合には0.9となり、ピンホールの発生を抑制するためには、Arガス流量を3NL/min以下に調整することが好ましいことが分かった。このようにArガス流量を少なくすると通常のアルミナ-黒鉛質ノズルではアルミナ詰まりが発生して高々1〜2チャージの鋳造で鋳造ストップとなる。しかし、本発明に係る浸漬ノズルを使用すれば、Arガス流量が3NL/min以下の条件でも、4チャージ以上の鋳造も可能である。
【0105】
この鋳造で製造したスラブを飲料用缶に製缶した結果、従来の鋳造方法(Al23−C質ノズル使用で、Arガス流量10NL/min)の場合、不良缶の発生数は100万個中20〜50個であるのに対し、本発明の浸漬ノズルを用いてAr流量を3NL/min以下として製造したスラブでは、不良缶の発生数は10個以内と良好な水準であった。欠陥の原因も従来方法を用いた鋳造材ではパウダー起因が30%、アルミナ起因が30%、残りは不明であったのに対し、本発明に係る浸漬ノズルを用いてArガス流量を3NL/min以下とした場合は、パウダー起因はゼロで、アルミナ起因が80%で、残りが不明であった。
【0106】
このように本発明の浸漬ノズルを用いてArガス流量を3NL/min以下とした場合にはパウダー起因の欠陥が全く見られないこと、さらにスケール性の表面欠陥が激減することが特徴的である。
【0107】
(実施例4)
スピネル(MgO・Al23)を含有する耐火物材料に、金属Al、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caからなる群から選択された1種または2種以上を配合し、表3のNo.27〜38に示す種々の組成の耐火物を図3または図4の耐火物22として用い、図3または図4に示す形状の浸漬ノズルを製造した。これら浸漬ノズルを用い、図2に示す連続鋳造設備により溶鋼を連続鋳造した。図4に示す内挿型の浸漬ノズルの場合、その外周部の母材耐火物はAl23−黒鉛質の耐火物とした。また、比較のために、No.39、40に示すスピネルが構成材料ではあるが還元剤である金属Al等の金属を含有しない耐火物、No.41に示す従来のAl23−黒鉛質耐火物を耐火物22とした浸漬ノズルを用いた鋳造も実施した。
【0108】
300トン/ヒートを6ヒート連続して鋳造後、使用後の浸漬ノズルを回収してスラグライン部の内側に付着した付着物を観察した。鋳造鋼種は低炭素アルミキルド鋼(C:0.04〜0.05mass%、Si:tr、Mn:0.1〜0.2mass%、S:0.01〜0.02mass%、Al:0.03〜0.04mass%)であり、スラブ幅は950〜1200mmの範囲であった。鋳片引き抜き速度は2.2〜2.8m/minであった。
【0109】
付着物の観察では、Al23付着が非常に少なく、かつ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金が全く観察されない状態を「付着無し」(符号:○で表示)と判断し、一方、Al23付着が多く、かつ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金も多い状態を「付着有り」(符号:×で表示)と評価した。表3に、用いた耐火物の組成とAl23付着状況の評価結果を示す。
【0110】
【表3】
Figure 0004296787
【0111】
表3からも明らかなように、比較例のNo.39〜41は、Al23付着が多く、かつ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金も多かったのに対し、スピネル(MgO・Al23)を含有する耐火物材料に、金属Al、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caからなる群から選択された1種または2種以上を配合した耐火物を適用した浸漬ノズルNo.27〜38の場合には、Al23付着が非常に少なく、さらに、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金も全く見られなかった。
【0112】
(実施例5)
図5に示すスリット型形式の浸漬ノズルを用い、金属Mg、金属Ca、金属Mn、金属Ceのいずれか1種から発生する金属ガスをこのスリット内に供給しながら、図2に示す連続鋳造設備によりアルミキルド溶鋼を連続鋳造した。このような金属ガスとして、金属Mg、金属Ca、金属Mn、金属Ceのいずれか1種を電気抵抗炉内の金属収納管に装入してガス化したものを用い、このような金属ガスを浸漬ノズルまで導いた。電気抵抗炉から浸漬ノズルまでの経路はガスが凝固しないように融点以上の温度に加熱および保温した。電気炉での金属加熱温度は、金属MgOの場合には、900℃、1000℃、1100℃の3水準の加熱実験を行った。途中のガス導入管も同じ温度で保温した。金属Caの場合には、電気炉で1000℃に加熱し、ガス導入管を1000℃以上に保温した。金属Mnの場合には、電気炉で1300℃に加熱し、ガス導入管を1300℃以上に保温した。金属Ceの場合には、電気炉で1000℃に加熱し、ガス導入管を1000℃以上になるように保温した。浸漬ノズルとしては、母材耐火物がAl23−黒鉛質耐火物で構成されたものを用いた。比較のために、金属ガスを吹き込まない鋳造も実施した。
【0113】
鋳造条件は、300トン/ヒートを6ヒート連続して鋳造後、使用後の浸漬ノズルを回収して吐出孔から20mm上方の内壁表面に付着した付着層厚みを測定した。鋳造鋼種は低炭素アルミキルド鋼(C:0.04〜0.05mass%、Si:tr、Mn:0.1〜0.2mass%、Al:0.03〜0.04mass%)であり、スラブ幅は950〜1200mmの範囲であった。鋳片引き抜き速度は2.2〜2.8m/minであった。
【0114】
付着物の評価は、Al23付着が非常に少なく、かつ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金が全く観察されない状態を「付着無し」(符号:○で表示)と判断し、一方、Al23付着が多く、かつ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金も多い状態を「付着有り」(符号:×で表示)と判断し、この中間の状態を「若干付着」(符号:△で表示)とした。表4に、用いた金属ガス、電気抵抗炉の温度、Al23付着厚みの測定結果、および評価結果を示す。
【0115】
【表4】
Figure 0004296787
【0116】
表4からも明らかなように、金属ガスを導入しない従来の鋳造方法(No.48)の場合には、Al23付着が多く、評価は「付着有り」であったが、Mgガス、Caガス、Mnガス、Ceガスを浸漬ノズル内壁面から吐出した場合には、従来の鋳造方法の場合に比べて、Al23付着量を抑えることができた。Mgを用いた中では、電気抵抗炉の温度を900℃とした43では評価が「若干付着」であったが、1000℃以上としたNo.42,44では、評価は全て「付着無し」であった。
【0117】
(実施例6)
図6に示す一体型形式の浸漬ノズル、図7に示す内挿型形式の浸漬ノズル、および、図8に示す複層型形式の浸漬ノズルを用い、図2に示す連続鋳造設備によりアルミキルド溶鋼を連続鋳造した。ここでは、Al23−黒鉛質耐火物材料に、金属Mg粉末、金属Ca粉末、金属Mn、金属Ce粉末を混合・分散させた耐火物を用いた。金属粉末の大きさは0.1〜3mmを基準とし、また、金属粉末の配合比率は5mass%を基準とした。ただし、金属Mg粉末の場合には、粉末の大きさおよび配合比率を変更した試験も実施した。内挿型の浸漬ノズルの母材耐火物は、Al23−黒鉛質耐火物とした。比較のために、Al23−黒鉛質耐火物材料で構成された従来の浸漬ノズルを用いた鋳造も実施した。
【0118】
鋳造条件は、300トン/ヒートを6ヒート連続して鋳造後、使用後の浸漬ノズルを回収して吐出孔から20mm上方の内壁表面に付着した付着層厚みを測定した。鋳造鋼種は低炭素アルミキルド鋼(C:0.04〜0.05mass%、Si:tr、Mn:0.1〜0.2mass%、Al:0.03〜0.04mass%)であり、スラブ幅は950〜1200mmの範囲であった。鋳片引き抜き速度は2.2〜2.8m/minであった。
【0119】
付着物の評価は、Al23付着が非常に少なく、かつ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金が全く観察されない状態を「付着無し」(符号:○で表示)と判断し、一方、Al23付着が多く、かつ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金も多い状態を「付着有り」(符号:×で表示)と判断し、この中間の状態を「若干付着」(符号:△で表示)とした。表5に、用いた浸漬ノズルの型式、金属種、金属粉末の大きさ、金属粉末の配合比率、Al23付着厚みの測定結果、評価結果、および使用後の浸漬ノズル状況を示す。
【0120】
【表5】
Figure 0004296787
【0121】
表5からも明らかなように、Al23−黒鉛質耐火物材料に、金属Mg粉末、金属Ca粉末、金属Mn粉末、金属Ce粉末を混合・分散させた耐火物を浸漬ノズルに用いた場合には、従来の浸漬ノズルを使用した場合(No.61)に比べて、Al23付着量を抑えることができた。そして、特に、金属粉末の大きさを0.1〜3mmとするとともに、金属粉末を3〜10mass%さらには5〜10mass%配合した場合には、Al23付着が非常に少なく、かつ浸漬ノズル内壁表面に凝固・付着した地金も全く観察されなかった。3mm以上の金属粉末を配合した場合(No.52)、および、金属粉末を10mass%を超えて配合した場合(No.57)には、使用後の浸漬ノズルに若干剥離が見られ、耐用性が多少劣化することが確認された。また、微細な金属粉末を配合した場合(No.53)では、金属粉末が鋳造の初期から中期にかけてガス化してしまい、Al23付着を防止する効果の持続性が小さかった。一方、金属粉末の配合比率が少ない場合(No.54)では、発生するガス量が少なくAl23付着防止効果が小さかった。
【0122】
【発明の効果】
本発明によれば、浸漬ノズルの内壁面部分において溶鋼のS濃度を低下させることができるので浸漬ノズル内壁面でのAl23付着層の成長を抑制することができ、Al23による浸漬ノズルの閉塞を防止することが可能となる。その結果、鋳造可能時間を飛躍的に延長させることができると同時に、浸漬ノズル内壁から剥離する粗大化したAl23に起因する鋳片の大型介在物性の欠陥、並びに、浸漬ノズルの閉塞による鋳型内溶鋼の偏流に起因するモールドパウダー性の欠陥を大幅に削減することができ、工業上有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明するための図。
【図2】本発明に係る浸漬ノズルを適用した鋼の連続鋳造設備の鋳型部を示す断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る浸漬ノズルの一例を概略的に示す垂直断面図および水平断面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る浸漬ノズルの他の例を概略的に示す垂直断面図および水平断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る浸漬ノズルの一例を概略的に示す垂直断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る浸漬ノズルの他の例を概略的に示す垂直断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る浸漬ノズルのさらに他の例を概略的に示す垂直断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る浸漬ノズルのさらに他の例を概略的に示す垂直断面図。
【図9】横軸にスライディングノズルの開度OARをとり、縦軸にノズル内壁のアルミナ付着厚さをとって、これらの関係を本発明に係る浸漬ノズルと従来の浸漬ノズルとで比較して示す図。
【符号の説明】
1 浸漬ノズル
2 鋳型
3 タンディッシュ
4 上ノズル
5 スライディングノズル
6 凝固シェル
8 モールドパウダー
17 溶鋼吐出孔
22 Al23付着防止機能を有する耐火物
23 母材耐火物(支持用耐火物)
24 スラグライン部
25 溶鋼通流孔
31 母材耐火物
33 スリット
34 スラグライン部
35 金属粉末含有耐火物
38 ガス発生装置
39 ガス導入管
L 溶鋼

Claims (10)

  1. 鋳型内に溶鋼を供給する連続鋳造用浸漬ノズルであって、MgOを含有する耐火物材料に、金属Alを配合した耐火物で少なくともその一部分が構成され、前記耐火物中のMgOの配合比率が5〜75mass%であり、金属Alの配合比率が1〜15mass%であり、溶鋼による加熱による耐火物材料中のMgOと金属Alとの反応によりMgが発生し、そのMgが溶鋼を脱硫し、それによりAl粒子がノズル内壁から反撥することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  2. 前記耐火物中の金属Alの配合比率が2〜15mass%であることを特徴とする請求項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  3. 前記耐火物中の金属Alの配合比率が5〜10mass%であることを特徴とする請求項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  4. 前記耐火物は、さらに炭素を含むことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  5. 前記耐火物中の炭素の配合比率が40mass%以下であることを特徴とする請求項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  6. 前記耐火物材料は、さらにCaOを含有することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  7. 前記耐火物中のCaOの含有量が5mass%以下であることを特徴とする請求項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  8. 前記耐火物材料は、さらに、Al23
    、SiO2 、ZrO2 、TiO2 からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  9. 前記耐火物は、溶鋼と接触するノズル内孔部に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
  10. 請求項1から請求項のいずれかに記載の耐火物と、その耐火物を支持する支持用耐火物とを有することを特徴とする鋼の連続鋳造用浸漬ノズル。
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