JP4135386B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造方法に関し、詳しくは、浸漬ノズル内壁部におけるAl23 による閉塞を防止することのできる連続鋳造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
酸化精錬された溶鋼は通常Alにより脱酸され、酸化精錬により増加した溶鋼中の酸素が除去される。しかし、生成したAl23 粒子を溶鋼とAl23 との密度差によって溶鋼から浮上分離させるには限界があり、そのため、溶鋼中には微細なAl23 粒子が懸濁した状態で残留する。又、溶鋼中酸素を安定して低減させるために、Al脱酸後の溶鋼中にはAlが溶解して存在しており、このAlが取鍋からタンデッシュへの注入過程やタンデッシュ内において大気と接触して酸化した場合には、新たにAl23 が溶鋼中に生成される。溶鋼中に懸濁しているこれらのAl23 がAl23 −黒鉛質からなる浸漬ノズルを通過する際に浸漬ノズル内壁に付着・堆積して、浸漬ノズルの閉塞が発生する。
【0003】
浸漬ノズルが閉塞すると、鋳造作業上及び鋳片品質上で様々な問題が発生する。例えば、鋳片引き抜き速度を低下せざるを得ず、生産性が落ちるのみならず、甚だしい場合には、鋳込み作業そのものの中止を余儀なくされる。又、浸漬ノズル内壁に堆積したAl23 が突然剥離し、大きなAl23 粒子となって鋳型内に排出され、これが鋳型内の凝固シェルに捕捉された場合には製品欠陥となり、更には、この部分の凝固が遅れ、鋳型直下に引き抜かれた時点で溶鋼が流出し、ブレークアウトにつながることさえもある。このような理由から、浸漬ノズル内壁でのAl23 の付着・堆積機構、並びに、その防止方法が従来から研究されてきた。
【0004】
従来のAl23 付着機構として、▲1▼:溶鋼中に懸濁しているAl23 が浸漬ノズル内壁に衝突して堆積する、▲2▼:浸漬ノズルを通過する溶鋼の温度が下がり、そのために溶鋼中のAl及び酸素の溶解度が低下し、Al23 が晶出して内壁に付着する、▲3▼:浸漬ノズル中のSiO2 と黒鉛とが反応してSiOとなり、これが溶鋼中のAlと反応してAl23 が浸漬ノズル内壁で生成し、浸漬ノズルの内壁を覆い、その上に溶鋼中に懸濁していた微細なAl23 粒子が衝突して堆積する等が提言されている。
【0005】
そして、これらの付着・堆積機構に基づき、▲1▼:浸漬ノズル内壁にArを吹き込んで浸漬ノズル内壁と溶鋼との間にガス膜をつくり、Al23 が壁に接触しないようにする、▲2▼:浸漬ノズル内壁側の溶鋼温度が下がらないように、浸漬ノズルの外壁から断熱スリーブで覆う、又は、浸漬ノズルの壁からの伝熱量を下げるために2層にする、若しくは断熱層を浸漬ノズル肉厚の間に設置する、▲3▼:酸素源となるSiO2 の添加量を少なくした材質の浸漬ノズルを用い、Al23 の生成を抑える等のAl23 付着防止対策が提言されている。
【0006】
更に、浸漬ノズル内壁に付着したAl23 を除去する手段として、▲4▼:浸漬ノズル材質にAl23 と化合して低融点化合物をつくる成分を含有させ、浸漬ノズル内壁に付着したAl23 を低融点化合物として流出させるAl23 付着防止対策も提言されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の各対策には以下の問題点がある。即ち、上記▲1▼の対策では、浸漬ノズル内に吹き込んだArの一部は鋳型内の溶鋼表面から放散できずに凝固シェルに捕捉される。Arが捕捉されて生成した気孔中には介在物が同時に見つかることが多く、これが製品欠陥になる。又、鋳片表層部に捕捉された場合には、気孔内面が連続鋳造機内や圧延前の加熱炉内で酸化され、これがスケールオフされずに製品欠陥となる場合もある。
【0008】
上記▲2▼の対策では、浸漬ノズル内壁での鋼の凝固を防ぐ効果はあるが、Al23 付着を防止する効果は少ない。溶鋼中に浸漬しているノズル内壁部分でもAl23 の付着・堆積が多いことからも理解できる。
【0009】
上記▲3▼の対策では、浸漬ノズル材質中のSiO2 が低下するため、浸漬ノズルの耐熱衝撃性が劣化する。通常、浸漬ノズルは予熱した後に使用される。それは耐火物が熱衝撃に弱く割れるためである。SiO2 は耐熱衝撃性を向上する効果が極めて高く、SiO2 の含有量を下げることにより、鋳造開始時の溶鋼の通過直後、浸漬ノズルに割れの発生する頻度が非常に高くなる。
【0010】
又、上記▲4▼の対策では、例えばCaOを浸漬ノズルの構成材料として添加することにより、CaOとAl23 とを化合させて低融点化合物を生成させ、この低融点化合物を溶鋼と一緒に鋳型内へ注入して、浸漬ノズル内壁のAl23 付着を防止することはできるが、介在物の原因となる低融点化合物を鋳型内へ流出させるため、鋳片の清浄性が劣化すると云う問題点がある。更に、浸漬ノズルの内壁が損耗していくので、長時間の鋳造には適していない。
【0011】
このように従来のAl23 付着防止対策は、浸漬ノズルの閉塞は防止可能であっても鋳片中の介在物を増加させたり、又は操業の安定性を阻害したりして、操業面及び鋳片品質面の全ての面で満足するAl23 付着防止対策は、未だ確立されていないのが実状である。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、鋼の連続鋳造に際し、鋳片の清浄性を損なうことなく且つ連続鋳造操業の安定性を阻害することなく、溶鋼中のAl23 による浸漬ノズルの閉塞を防止することができる連続鋳造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために浸漬ノズルにおけるAl23 付着機構に関する幾つかの基礎的な実験を行った。以下、実験方法及び実験結果を詳説する。
【0014】
[基礎実験]
図1に示すように、チャンバー32内の雰囲気をArで調整した高周波溶解炉31でAlキルド鋼を溶解しておき、この溶鋼38中に、浸漬ノズル材料として使用されているAl23 −黒鉛質の耐火物で造った直径25mmの試験片37を浸漬させ、試験片37を浸漬してから15分後、30分後、45分後の時点で溶鋼38中にそれぞれ0.01mass%分のAlを添加し、浸漬開始後60分経過した時点で試験片37を引き上げ、試験片37の外表面に付着した付着物の厚みを測定すると共に付着物組成の同定を行った。用いたAl23 −黒鉛質の耐火物、即ち試験片37の見掛け気孔率は12%〜15%の範囲であった。
【0015】
溶鋼38の成分は、C:0.02〜0.05mass%、Si:0.02mass%以下、Mn:0.15〜0.20mass%、P:0.010〜0.016mass%、S:0.001〜0.13mass%、Al:0.06〜0.12mass%とした。尚、図1はAl23 付着機構を解明するための基礎実験方法の概略図であり、図1において33はコイル、34は高Al23 質の坩堝、35は熱電対、36は試験片保持具である。
【0016】
基礎実験A:溶鋼中に表面活性元素である硫黄、セレン及びテルルを添加した場合と、それらを全く添加しない場合の実験を行い、付着物厚みに及ぼす表面活性元素の影響を調査した。この場合、溶鋼中硫黄濃度を0.13mass%、セレン濃度を0.09mass%、テルル濃度を0.05mass%としてそれぞれ実験した。表面活性元素である硫黄、セレン及びテルルを含有する溶鋼とAl23 粒子との界面張力は、これら表面活性元素の濃度が高くなるほど低下することが知られている。
【0017】
試験片引き上げ後の付着物厚みは、溶鋼中硫黄濃度が0.13mass%の場合に2〜3mm、溶鋼中セレン濃度が0.09mass%の場合に2.5〜3.6mm、溶鋼中テルル濃度が0.05mass%の場合に2.8〜3.8mmであり、付着物厚みは極めて厚くなった。これに対して、セレン及びテルルが添加されず、硫黄濃度が0.002mass%の溶鋼では付着物厚みは0.1〜0.3mmであった。これらの実験における付着物はAl23 であった。尚、基礎実験Aでは図1に示す充填物質39は装入せずに試験した。
【0018】
基礎実験B:試験片37の中心部に内径10mmの孔を設け、この孔の内部に充填物質39として、MgO粉末と、炭素粉末、金属Al粉末、金属Ti粉末、金属Zr粉末、金属Ce粉末、金属Ca粉末の中の1種又は2種以上とを混合したものを充填し、MgO粉末を還元させてMgガスを生成させ、このMgガスにより試験片37と溶鋼38との界面の溶鋼中硫黄を低減させる実験を行った。
【0019】
MgO粉末は、その直径が0.5mm〜3mmのマグネシアクリンカー粉末を用い、炭素粉末は、その直径が0.01mm〜0.5mmの黒鉛粉末を用い、金属Al粉末、金属Ti粉末、金属Zr粉末、金属Ce粉末、金属Ca粉末は、その直径が0.01mm〜0.5mmである市販の試薬粉末を用いた。
【0020】
そして、MgO粉末と、黒鉛粉末、金属Al粉末、金属Ti粉末、金属Zr粉末、金属Ce粉末、金属Ca粉末の中の1種とを質量比がほぼ等しくなる割合で充填した。即ち、黒鉛粉末、金属Al粉末、金属Ti粉末、金属Zr粉末、金属Ce粉末、金属Ca粉末の中の1種とMgO粉末とを充填する場合には、質量比が1:1となる割合で、又、黒鉛粉末、金属Al粉末、金属Ti粉末、金属Zr粉末、金属Ce粉末、金属Ca粉末の中の2種とMgO粉末とを充填する場合には、質量比が1:1:1となる割合で充填した。
【0021】
この実験では、チャンバー32内の雰囲気圧を1013 hPa(760torr)、800 hPa(600torr)、667 hPa(500torr)、467 hPa(350torr)、267 hPa(200torr)の5水準に調整して、生成するMgガスの試験片37内を透過する量を調整した。そして、試験片37と溶鋼38との界面に供給されるMgガス量の付着物厚みに及ぼす影響を調査した。この場合、チャンバー32内の雰囲気圧を低下するほど試験片37と溶鋼38との界面に供給されるMgガス量は多くなり、界面の溶鋼中硫黄は低下することになる。試験片37を溶鋼38に浸漬する直前の溶鋼中硫黄濃度は全ての試験で0.021mass%に調整した。
【0022】
充填物質39がMgO粉末、炭素粉末、及び金属Al粉末の混合物の場合における試験片37の付着物厚みと圧力差との関係を図2に示す。但し、図2の横軸に示す圧力差は、大気圧(1013 hPa)とチャンバー32内の雰囲気圧との差である。図2に示すように圧力差が大きくなるほど付着物厚みが減少し、圧力差が346 hPa(0.34 atm)以上の場合には付着物厚みは0.1mm〜0.6mmであったが、圧力差がゼロの場合や213 hPa(0.21 atm)の場合には付着物厚みは1mm〜1.5mmであった。何れの場合も溶鋼表面からのガスの放散は観察できなかった。付着物の主体はAl23 であったが、試験片37と付着物との境界付近には、MgS、及び、MgOとAl23 との反応生成物も観察された。
【0023】
充填物質39を、金属Al粉末に替えて金属Ti粉末、金属Zr粉末、金属Ce粉末、金属Ca粉末のなかの1種とMgO粉末及び炭素粉末とで構成した場合にも、Al粉末の場合と同様に付着物厚みは減少した。
【0024】
これらの結果から、少なくとも試験片37と溶鋼38との界面ではMgガスにより溶鋼中硫黄が除去されていたこと、そして、界面近傍の溶鋼中硫黄が除去されるほど付着物厚みが減少することが分かった。
【0025】
基礎実験C:試験片37の中心部に内径10mmの孔を設け、この孔の内部に充填物質39として、金属Ca又は金属Caと炭素粉末との混合物を充填し、Caガスを生成させ、このCaガスにより試験片37と溶鋼38との界面の溶鋼中硫黄を低減する実験を行った。この実験でも基礎実験Bと同様にチャンバー32内を減圧し、試験片37を透過するCaガス量を調整した。
【0026】
その結果、この実験でもチャンバー32内を667 hPa(500torr)以下とすること即ち圧力差を346 hPa(0.34 atm)以上とすることにより、付着物厚みは少なくなった。この場合の付着物の主体はAl23 であったが、試験片37と付着物との境界付近には、CaS、及び、CaOとAl23 との反応生成物も観察された。
【0027】
以上説明したように、基礎実験では、硫黄、セレン、テルル等の表面活性元素が溶鋼中に多量に存在するとAl23 付着が促進されること、そして、試験片と溶鋼との界面から表面活性元素である硫黄を除去すると試験片でのAl23 付着が抑制されることが分かった。
【0028】
これらの結果から、浸漬ノズルにおけるAl23 付着機構を次のように考えた。即ち、溶鋼中の硫黄は界面活性の性質を持つため、通常、浸漬ノズルの内壁側に偏在し、ノズル内壁側の硫黄濃度が高くなり溶鋼側で低くなる。又、浸漬ノズル内壁で溶鋼が凝固する場合には、溶質元素である硫黄は溶鋼側に分配されるため、この濃度勾配が助長される。このような硫黄濃度分布が形成された境界層にAl23 粒子が侵入した場合、Al23 粒子の浸漬ノズル側と溶鋼側とでの硫黄濃度の差により、Al23 粒子と溶鋼との界面張力に差が生じ、この界面張力の差によってAl23 粒子は浸漬ノズル内壁側に吸引され、ノズル内壁面に堆積して、Al23 付着が発生するものと想到される。硫黄等の表面活性元素の含有量が高くなると濃度勾配が大きくなり、浸漬ノズル内壁側に吸引されるAl23 粒子が増加し、付着厚みが増大する。
【0029】
一方、試験片と溶鋼との界面から硫黄が除去された場合には、溶鋼中の硫黄濃度は、ノズル内壁側が低くなり溶鋼側で高くなる。このような濃度勾配が形成されると、界面張力の差によってAl23 粒子は浸漬ノズル内壁面から反撥するように離れていき、溶鋼中に懸濁するAl23 粒子のノズル内壁への接近が防止され、浸漬ノズルの内壁面にはAl23 が付着せず、Al23 によるノズル閉塞が防止されると想到される。
【0030】
このように、浸漬ノズルの内部にMgOを配置し、このMgOを還元してMgガスを生成させ、Mgガスをノズル内壁と溶鋼との界面に供給することにより浸漬ノズルのAl23 付着は防止できることが判明した。又、金属Caを浸漬ノズル内部に配置しても同様にAl23 付着を防止できることが判明した。但し、生成したMgガス又はCaガスが前記界面に供給されなくてはその効果を発揮することができない。
【0031】
ところで、浸漬ノズルを構成する耐火物材料の気孔率は10数%であり、鋳型内へ浸漬ノズルを介して溶鋼を注入する際には、タンディッシュから鋳型への溶鋼供給流路に設置したスライディングノズルやストッパー等のノズルゲートにより溶鋼供給流路の途中の断面積を縮小して溶鋼注入量を調整している。そのため、ノズルゲートで断面積を縮小した以降の溶鋼供給流路内は減圧され、大気圧よりも低くなる。そして、大気圧との圧力差はノズルゲートの開度を狭くするほど大きくなる。
【0032】
従って、ノズルゲートで断面積を縮小した以降の溶鋼供給流路内の圧力と大気圧との圧力差が346 hPa(0.34atm)以上となるようにノズルゲートの開度を設定すれば、浸漬ノズルの側壁内部で生成したMgガス又はCaガスは、浸漬ノズルの側壁を透過して浸漬ノズルの内壁面に到達することになる。これは、多孔質材料中をガスが透過する際の速度は、この多孔質を挟む雰囲気の圧力差に比例することが知られていることからも明らかである。そこで、このような圧力差をもたらす具体的なノズル開度を算定した。
【0033】
溶鋼供給流路内における溶鋼の圧力変化を考察すると、溶鋼供給流路内では、ノズルゲートの上下で溶鋼の圧力が急激に変化し、この圧力差は下記の(1)式で求めることができる。但し、(1)式において、ΔPはノズルゲート直上の溶鋼供給流路内の圧力とノズルゲート通過直後の溶鋼供給流路内の圧力との圧力差、ρは溶鋼密度、gは重力加速度、A1 はノズルゲート部の開口横断面積、A2 はノズルゲート以降の溶鋼供給流路の横断面積、Vはノズルゲート部における溶鋼の線速度である。尚、本発明においては、ノズルゲート以降の溶鋼供給流路の横断面積(A2 )に対するノズルゲート部の開口横断面積(A1 )の百分率をノズルゲートの開度(R)(R=(A1 /A2 )×100)としている。
【0034】
【数1】
Figure 0004135386
【0035】
この場合、圧力差(ΔP)は、大気圧と、ノズルゲート通過直後の溶鋼供給流路内の圧力との差と一致し、又、溶鋼の線速度(V)は下記の(2)式により求めることができる。但し、(2)式におけるhはノズルゲートからタンディッシュ内溶鋼湯面までの距離である。
【0036】
【数2】
Figure 0004135386
【0037】
(1)式及び(2)式を用い、距離(h)=1.3mの条件の下で開度(R)と圧力差(ΔP)との関係を算出すると、開度(R)が20%のときに圧力差(ΔP)は0.56 atm、開度(R)が55%のときに圧力差(ΔP)は0.34 atm、開度(R)が70%のときに圧力差(ΔP)は0.08 atmとなる。
【0038】
(1)式によれば、距離(h)が大きくなって線速度(V)が増大すれば、開度(R)が一定であっても圧力差(ΔP)は大きくなる。一方、近年使用されている所謂大型タンディッシュでは、距離(h)は1.3m以上確保されている。従って、このような大型タンディッシュを対象とした場合には開度(R)を55%以下に設定すれば、少なくとも圧力差(ΔP)を0.34 atm以上確保することができる。距離(h)が1.3m以上の場合には、圧力差(ΔP)は0.34 atm以上にこそなれ、それ以下になることはない。そこで、本発明では、開度(R)の好ましい範囲の最大値を55%とすることにした。但し、開度(R)を小さくし過ぎると、鋳造開始時の溶鋼の凝固によるノズル閉塞等の虞が高いので、開度(R)の下限値を20%とすることにした。
【0041】
本発明は、上記実験結果に基づきなされたもので、の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、ノズルゲートの開度を調整して溶鋼注入量を制御しながらノズルゲートの下流側に設置した浸漬ノズルを介してタンディッシュ内の溶鋼を鋳型内へ注入する連続鋳造方法において、MgO粉末及び炭素粉末と、金属Al粉末、金属Ti粉末、金属Zr粉末、金属Ce粉末、金属Ca粉末の群から選択された1種又は2種以上と、が充填されたスリットをその側壁内部に有する浸漬ノズルを用い、前記ノズルゲートの開度を、浸漬ノズル内の圧力が大気圧に比べて346 hPa(0.34 atm)以上低くなる開度の範囲内として注入し、前記MgO粉末の還元により生成するMgガスを浸漬ノズルの内壁面に到達させることを特徴とするものである。
【0042】
の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、ノズルゲートの開度を調整して溶鋼注入量を制御しながらノズルゲートの下流側に設置した浸漬ノズルを介してタンディッシュ内の溶鋼を鋳型内へ注入する連続鋳造方法において、金属Ca粉末又は金属Ca粉末と炭素粉末とが充填されたスリットをその側壁内部に有する浸漬ノズルを用い、前記ノズルゲートの開度を、浸漬ノズル内の圧力が大気圧に比べて346 hPa(0.34 atm)以上低くなる開度の範囲内として注入し、前記金属Ca粉末のガス化により生成するCaガスを浸漬ノズルの内壁面に到達させることを特徴とするものである。
【0043】
の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、第1の発明または第2の発明において、前記ノズルゲートとタンディッシュ内溶鋼湯面との距離が1.3m以上であるタンディッシュを用い、前記ノズルゲートの開度を20%から55%の範囲内とすることを特徴とするものである。
【0044】
の発明に係る鋼の連続鋳造方法は、第1の発明ないし第の発明の何れかにおいて、前記浸漬ノズル内を流下する溶鋼に不活性ガスを吹き込まずに溶鋼を鋳型内に注入することを特徴とするものである。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図3、図4及び図5は、本発明を実施する際に用いた浸漬ノズルの概略図、図6は、本発明を実施する際に用いた連続鋳造設備の鋳型部の正面縦断面の概略図である。
【0046】
本発明では、図3及び図4に示すように、MgOと、炭素、金属Al、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caの群から選択された1種又は2種以上と、を含有する耐火物材料2(以下「含MgO耐火物材料2」と記す)、若しくは、金属Caを含有する耐火物材料2a(以下「含Ca耐火物材料2a」と記す)によって少なくともその一部分が構成された浸漬ノズル1を用いるか、又は、図5に示すように、MgO粉末と、炭素粉末、金属Al粉末、金属Ti粉末、金属Zr粉末、金属Ce粉末、金属Ca粉末の群から選択された1種又は2種以上と、が充填物質8(以下「含MgO充填物質8」と記す)として充填されたスリット7をその側壁に有する浸漬ノズル1、若しくは、金属Ca粉末又は金属Ca粉末と炭素粉末とが充填物質8a(以下「含Ca充填物質8a」と記す)として充填されたスリット7をその側壁に有する浸漬ノズル1を用いて鋳造する。スリット7には、スリット7の内部にAr等の不活性ガスを供給するためのガス導入管9が接続されている。
【0047】
スリット7は次のようにして形成することができる。浸漬ノズル1を成形する際、例えば焼成温度で消失する糸紐状の物質を浸漬ノズル1の側壁所定位置に挿入し、浸漬ノズル1の焼成時にこの物質を消失させてしまうことでスリット7を形成することができる。又、含MgO充填物質8又は含Ca充填物質8aは、このようにして形成させたスリット7内にMgO粉末、炭素粉末、金属Al粉末及び金属Ca粉末等の混合物を浸漬ノズル1の外部から装入することにより得ることができる。スリット7内の含MgO充填物質8又は含Ca充填物質8aの大気による酸化を防止するために、ガス導入管9からAr等の不活性ガスをスリット7内に供給し、スリット7内を大気圧よりも高くしておくことが好ましい。当然ながら、スリット7を密閉した場合にはガス導入管9は不要である。
【0048】
含MgO耐火物材料2若しくは含Ca耐火物材料2aによって浸漬ノズル1を構成する場合、図3に示すように、スラグライン部4を除く全てを含MgO耐火物材料2若しくは含Ca耐火物材料2aによって構成(「一体型」と呼ぶ)しても良く、又、図4に示すように、溶鋼と接触する内孔5の近傍のみに含MgO耐火物材料2若しくは含Ca耐火物材料2aを配置(「内挿型」と呼ぶ)しても良い。但し、内挿型とすることで、Al23 の付着防止効果を発揮するのみならず、浸漬ノズル1の強度が向上し、浸漬ノズル1のハンドリングや使用可能時間を従来の浸漬ノズルと同等にすることができるため、内挿型とすることが好ましい。又、含MgO耐火物材料2及び含Ca耐火物材料2aにAl23 、SiO2 、ZrO2 、CaO、TiO2 の一種若しくは2種以上を含有させても良い。これらを含有させることで、含MgO耐火物材料2及び含Ca耐火物材料2aの高温強度や耐スポーリング性を向上させることができる。
【0049】
通常、鋼の連続鋳造用浸漬ノズルは、高温強度に優れたAl23 −黒鉛質耐火物やAl23 −SiO2 −黒鉛質耐火物が使用されることが多く、従って、図4に示す浸漬ノズル1のノズル母材3や図5に示す浸漬ノズル1のノズル母材3としては、Al23 −黒鉛質耐火物やAl23 −SiO2 −黒鉛質耐火物を用いることが好ましい。但し、ノズル母材3はこれらの耐火物に限るわけではなく、黒鉛質を含有しないAl23 質、SiO2 質、MgO質、ZrO2 質、Cr23 質及びこれらの化合物組成の耐火物とすることができる。又、モールドパウダーと接触する範囲に設けられるスラグライン部4としては、スラグに対する耐食性に優れる、例えばZrO2 −黒鉛質耐火物等を用いれば良い。浸漬ノズル1において、スラグライン部4の設置は必ずしも必要ではないが、浸漬ノズル1の耐用性から設置した方が好ましい。
【0050】
本発明では、このような構成の浸漬ノズル1を用いて溶鋼の連続鋳造を行うが、このような浸漬ノズル1を使用する連続鋳造設備としては、例えば図6に示すような連続鋳造設備を使用することができる。図6において、相対する鋳型長辺11と、鋳型長辺11内に内装された相対する鋳型短辺12とから構成される鋳型10の上方には、内部を耐火物で施行されたタンディッシュ13が配置され、このタンディッシュ13の底部には上ノズル20が設けられ、この上ノズル20に接続して、固定板21、摺動板22、及び整流ノズル23からなるスライディングノズル14が配置され、更に、スライディングノズル14の下面側には、上記に説明した浸漬ノズル1が配置され、タンディッシュ13から鋳型10への溶鋼供給孔24が形成されている。
【0051】
そして、取鍋(図示せず)からタンディッシュ13内に注入された溶鋼15を、スライディングノズル14で溶鋼流量を調整しながら、溶鋼供給孔24を経由させ、吐出孔6から吐出流19を鋳型短辺12に向けて鋳型10内に注入する。注入された溶鋼15は鋳型10内で冷却されて凝固シェル16を形成し、鋳型10の下方に連続的に引き抜かれ鋳片となる。鋳型10内の溶鋼湯面17上にはモールドパウダー18を添加して鋳造する。
【0052】
その際に、スライディングノズル14の摺動板22の開度(R)を、浸漬ノズル1内の圧力が大気圧に比べて346 hPa(0.34 atm)以上低くなる開度の範囲内として注入する。この開度(R)は、鋳造条件及び設備条件に基づき上記(1)式により求めることができる。例えば、摺動板22の上面からタンディッシュ13内の溶鋼湯面までの距離が1.3m以上である大型タンディッシュの場合には、スライディングノズル14の開度(R)を20%から55%の範囲内とすれば所定の圧力差を確保することができる。
【0053】
鋳造中の浸漬ノズル1は、浸漬ノズル1内を流下する溶鋼15によりその内壁面は1500℃前後、その外壁面は900〜1200℃程度まで昇温され、鋳型10内の溶鋼15中に浸漬している部分は1540℃程度まで昇温される。同様に、浸漬ノズル1の内部に配置されたMgO、炭素、金属Al及び金属Ca等も加熱される。
【0054】
含MgO耐火物材料2及び含MgO充填物質8は1300℃以上に加熱されると、含MgO耐火物材料2中及び含MgO充填物質8中のMgOと金属Alとで下記に示す(3)式による反応が起こり、浸漬ノズル1の側壁内にMgガスが生成される。
【0055】
【数3】
Figure 0004135386
【0056】
上記(3)式に示すMgOの還元反応は、炭素、金属Ti、金属Zr、金属Ce、金属Caによっても金属Alと同様に起こる。又、金属CaはMgOを還元するのみならず、1440℃以上になると金属Ca自体がガス化するため、含Ca耐火物材料2a及びスリット7内の含Ca充填物質8aがガス化してCaガスが浸漬ノズル1の側壁内に生成される。ここで、炭素はMgOの還元反応の他に、浸漬ノズル1の予熱中におけるこれら金属の酸化を防止する役割も果たしており、この観点から金属Al、金属Ca等の金属を用いる場合には炭素を併用することが好ましい。
【0057】
浸漬ノズル1の内壁面側には溶鋼15が存在しており、マグネシウム及びカルシウムは硫黄との親和力が強く、浸漬ノズル1の側壁を透過したMgガス及びCaガスは浸漬ノズル1の内孔5と溶鋼15との境界層に存在する溶鋼中硫黄と反応してMgS及びCaSを生成する。そのため、浸漬ノズル内壁近傍の溶鋼中の硫黄濃度は低くなり、浸漬ノズル内壁近傍の溶鋼中硫黄濃度の濃度勾配は、浸漬ノズル1側が低く、溶鋼15側が高い濃度勾配となる。その結果、浸漬ノズル内壁面と溶鋼15との境界層に存在するAl23 粒子においては、浸漬ノズル内壁側と溶鋼側とで溶鋼15との界面張力に差が生じ、この界面張力の差に基づきAl23 粒子は浸漬ノズル内壁面から反撥するように離れていく。この効果によって浸漬ノズル1の内壁面にはAl23 が付着せず、Al23 によるノズル閉塞が防止される。
【0058】
従来の浸漬ノズルの場合には、浸漬ノズルの内孔5内が減圧されることにより、大気が浸漬ノズル側壁を透過して溶鋼15を酸化し、Al23 が生成してAl23 付着の原因となるが、本発明で用いる浸漬ノズル1では浸漬ノズル1の内部で発生するMgガス及びCaガスが大気の透過を妨げるので、この観点からもAl23 付着が防止される。
【0059】
従来、上ノズル20、固定板21、浸漬ノズル1の何れか、若しくは2箇所以上から、溶鋼供給孔24内を流下する溶鋼15中にAl23 付着防止のためのAr等不活性ガスを吹き込むことが行われているが、本発明を実施した場合にはAl23 付着が抑制されるため、このための不活性ガスは吹き込む必要がない。仮に吹き込む場合には極少量の吹き込み量(3Nl/分程度)で十分である。その結果、鋳片表層部のAr気泡等の不活性ガス気孔に起因する製品欠陥を防止することができる。
【0060】
このようにして鋳造することで、浸漬ノズル1の内壁面でのAl23 付着層厚みの成長が抑制され、Al23 によるノズル閉塞が防止される。その結果、鋳造可能時間を飛躍的に延長させることが可能となり、又、浸漬ノズル1の内壁でのAl23 粒子の付着・堆積による粗大化を防止することができるので、粗大化したAl23 の剥離に起因する鋳片の大型介在物を大幅に削減することができる。
【0061】
尚、上記説明では鋳片断面が矩形型の鋳型10について説明したが、鋳片断面が円形の鋳型であっても本発明を適用することができる。更に、連続鋳造機の個々の装置は上記に限るものではなく、例えば溶鋼流量調整装置としてスライディングノズル14の代わりにストッパーを用いても良いように、その機能が同一であればどのような装置としても良い。
【0062】
【実施例】
[実施例1]
図6に示す連続鋳造機(2ストランド連続鋳造機)を用い、一方のストランドには図4に示す浸漬ノズル(以下「試験ノズルA」と記す)を設置し、他方のストランドには従来のAl23 −黒鉛質の浸漬ノズル(以下「従来ノズル」と記す)を設置して、300トン/ヒートの溶鋼を4ヒート連続鋳造した。
【0063】
試験ノズルAは、ノズル母材をAl23 −黒鉛質とし、その内側に、粒子直径が3mm以下のマグネシアクリンカー粉末と、粒子直径が0.5mm以下の黒鉛粉末及び金属Al粉末とを1:1:1の配合比率で配合し、更に、これらにアルミナ粉末を混合したものを含MgO耐火物材料として成形した。含MgO耐火物材料は、マグネシアクリンカー粉末と金属Al粉末との反応を効率良く行わせるために、マグネシアクリンカー粉末の周囲に金属Al粉末が配合されるように工夫した。アルミナ粉末を混合した理由は、MgOとAl23 との反応によりスピネルを形成させ、含MgO耐火物材料の強度を高めるためである。
【0064】
タンディッシュから鋳型への溶鋼供給孔内へのAr吹き込みは、試験ノズルAでは、最初の2ヒートの間は全く吹き込まず、後半の2ヒートから3Nl/分の流量で吹き込み、一方、従来ノズルでは全ての鋳造期間中10Nl/分の流量で吹き込んだ。Arは上ノズルから吹き込んだ。
【0065】
タンディッシュ内の溶鋼深さ(h)を1.3〜2.0mの間で調整すると共に、スライディングノズルの開度(R)を20%から55%の範囲で調整して鋳造した。スライディングノズルの開度(R)と溶鋼注入量との関係は、例えばタンディッシュ内の溶鋼高さ(h)が1.3mの場合、開度(R)を20%、40%、60%にするには溶鋼注入量はそれぞれ3.6トン/分、5.1トン/分、6.3トン/分になり、このような換算表を作成して鋳造した。
【0066】
このように、1.3m以上の溶鋼深さ(h)を確保すると共に、スライディングノズルの開度(R)を20%から55%の範囲とすることで、浸漬ノズル内の圧力は大気圧に比べて常に346 hPa(0.34 atm)以上低く維持された。
【0067】
鋳造鋼種は、低炭素Alキルド鋼((C:0.04〜0.05mass%、Si:tr、Mn:0.1〜0.2mass%、S:0.008〜0.02mass%、Al:0.03〜0.04mass%))であり、スラブ厚みは220mm、スラブ幅は1600mm、鋳片引き抜き速度は1.4〜2.4m/分であった。
【0068】
鋳造後、浸漬ノズルを回収して吐出孔の内側のAl23 付着厚みを、鋳型幅方向位置及びそれと直角方向位置の4箇所で測定し、その平均値をAl23 付着厚みとした。その結果、試験ノズルAでは付着厚みは5mm程度と少なく、且つ、浸漬ノズル内壁面に凝固・付着した地金が全く観察されなかった。これに対して、従来ノズルでは約15mm厚みのAl23 付着が認められた。
【0069】
これら鋳片を圧延し、最終的に飲料用缶に製缶した結果、従来ノズルで鋳造した鋳片では不良缶の発生数が100万個中20〜50個であったが、試験ノズルAで鋳造した鋳片では不良缶の発生数が10個以内であった。
【0070】
このように、本発明により浸漬ノズルのAl23 付着防止のみならず、鋳片の清浄性を高めることが確認できた。
【0071】
[実施例2]
図6に示す連続鋳造機(2ストランド連続鋳造機)を用い、一方のストランドには図5に示すスリット付きの浸漬ノズル(以下「試験ノズルB」と記す)を設置し、他方のストランドには従来のAl23 −黒鉛質の浸漬ノズル(以下「従来ノズル」と記す)を設置して、300トン/ヒートの溶鋼を4ヒート連続鋳造した。
【0072】
試験ノズルBは、ノズル母材をAl23 −黒鉛質とし、その側壁の内孔から5mmの位置に5mm厚みのスリットを設け、このスリット内に粒子直径が3mm以下のマグネシアクリンカー粉末と、粒子直径が0.5mm以下の黒鉛粉末及び金属Al粉末とを1:1:1の配合比率で配合した含MgO充填物質を挿入した。この場合、含MgO充填物質の挿入後、含MgO充填物質を挿入した孔を耐火材料で密閉し、スリット内への不活性ガス吹き込みは中止した。又、スリットは吐出孔の上端まで設置した。
【0073】
タンディッシュから鋳型への溶鋼供給孔内へのAr吹き込みは、試験ノズルBでは、最初の2ヒートの間は全く吹き込まず、後半の2ヒートから3Nl/分の流量で吹き込み、一方、従来ノズルでは全ての鋳造期間中10Nl/分の流量で吹き込んだ。Arは上ノズルから吹き込んだ。
【0074】
タンディッシュ内の溶鋼深さ(h)をほぼ1.8mに調整し、スライディングノズルの開度(R)をそれぞれ20%、40%、55%、80%の4水準に維持したまま4ヒートの溶鋼を鋳造した。即ち、4ヒートの鋳造中、スライディングノズルの開度がほぼ一定になるように鋳片引き抜き速度を調整して鋳造した。スライディングノズルの開度(R)と溶鋼注入量との関係は、例えばタンディッシュ内の溶鋼高さ(h)が1.8mの場合、開度(R)を20%、40%、60%、80%にするには溶鋼注入量はそれぞれ2.8トン/分、3.6トン/分、5.5トン/分、6.5トン/分になり、このような換算表を作成して鋳造した。
【0075】
鋳造鋼種は、低炭素Alキルド鋼((C:0.04〜0.05mass%、Si:tr、Mn:0.1〜0.2mass%、S:0.008〜0.02mass%、Al:0.03〜0.04mass%))であり、スラブ厚みは220mm、スラブ幅は1350mmであり、上記の溶鋼注入量に一致させるために、鋳片引き抜き速度をそれぞれ1.2m/分、1.6m/分、2.4m/分、2.8m/分の4水準とした。
【0076】
鋳造後、浸漬ノズルを回収して吐出孔の内側のAl23 付着厚みを、鋳型幅方向位置及びそれと直角方向位置の4箇所で測定し、その平均値をAl23 付着厚みとした。図7にAl23 付着厚みの測定結果を示す。図7において、斜線が付与されたものが試験ノズルBにおける結果で、斜線が付与されていないものが従来ノズルにおける結果である。
【0077】
図7に示すように、開度(R)が55%以下の範囲では試験ノズルBにおけるAl23 付着厚みは従来ノズルに比較して少なく、鋳造にも何ら支障を来すことはなかった。しかし、開度(R)が80%の場合には、試験ノズルB及び従来ノズル共にAl23 付着厚みは15mm程度であり、両者で大差は見られなかった。
【0078】
これら鋳片を圧延し、最終的に飲料用缶に製缶した結果、従来ノズルで鋳造した鋳片では不良缶の発生数が100万個中20〜50個であったが、試験ノズルBで鋳造した鋳片では不良缶の発生数が10個以内であった。欠陥の原因別では、従来ノズルの場合には、モールドパウダー起因の欠陥が30%、Al23 起因の欠陥が30%、残りは不明であった。これに対して試験ノズルBの場合には、モールドパウダー起因の欠陥はゼロで、Al23 起因の欠陥が80%、残りは不明であった。このように試験ノズルBを用いた鋳造では、モールドパウダー起因の欠陥が全く見られなかった。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、浸漬ノズル内壁面でのAl23 付着層の成長を抑制することができ、Al23 による浸漬ノズルの閉塞を防止することが可能となる。その結果、鋳造可能時間を飛躍的に延長させることができると同時に、浸漬ノズル内壁から剥離する粗大化したAl23 に起因する鋳片の大型介在物性の欠陥、並びに、浸漬ノズルの閉塞による鋳型内溶鋼の偏流に起因するモールドパウダー性の欠陥を大幅に削減することができ、工業上有益な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al23 付着機構を解明するための基礎実験方法の概略図である。
【図2】基礎実験における付着物厚みと圧力差との関係を示す図である。
【図3】本発明を実施する際に用いた浸漬ノズルの例を示す概略図である。
【図4】本発明を実施する際に用いた浸漬ノズルの他の例を示す概略図である。
【図5】本発明を実施する際に用いた浸漬ノズルの他の例を示す概略図である。
【図6】本発明を実施する際に用いた連続鋳造設備の鋳型部の正面縦断面の概略図である。
【図7】実施例2におけるAl23 付着厚みの測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1 浸漬ノズル
2 含MgO耐火物材料
2a 含Ca耐火物材料
3 ノズル母材
4 スラグライン部
5 内孔
6 吐出孔
7 スリット
8 含MgO充填物質
8a 含Ca充填物質
9 ガス導入管
10 鋳型
13 タンディッシュ
14 スライディングノズル
15 溶鋼
16 凝固シェル
17 溶鋼湯面
18 モールドパウダー
19 吐出流

Claims (4)

  1. ノズルゲートの開度を調整して溶鋼注入量を制御しながらノズルゲートの下流側に設置した浸漬ノズルを介してタンディッシュ内の溶鋼を鋳型内へ注入する連続鋳造方法において、MgO粉末及び炭素粉末と、金属Al粉末、金属Ti粉末、金属Zr粉末、金属Ce粉末、金属Ca粉末の群から選択された1種又は2種以上と、が充填されたスリットをその側壁内部に有する浸漬ノズルを用い、前記ノズルゲートの開度を、浸漬ノズル内の圧力が大気圧に比べて346 hPa(0.34 atm)以上低くなる開度の範囲内として注入し、前記MgO粉末の還元により生成するMgガスを浸漬ノズルの内壁面に到達させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
  2. ノズルゲートの開度を調整して溶鋼注入量を制御しながらノズルゲートの下流側に設置した浸漬ノズルを介してタンディッシュ内の溶鋼を鋳型内へ注入する連続鋳造方法において、金属Ca粉末又は金属Ca粉末と炭素粉末とが充填されたスリットをその側壁内部に有する浸漬ノズルを用い、前記ノズルゲートの開度を、浸漬ノズル内の圧力が大気圧に比べて346 hPa(0.34 atm)以上低くなる開度の範囲内として注入し、前記金属Ca粉末のガス化により生成するCaガスを浸漬ノズルの内壁面に到達させることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
  3. 前記ノズルゲートとタンディッシュ内溶鋼湯面との距離が1.3m以上であるタンディッシュを用い、前記ノズルゲートの開度を20%から55%の範囲内とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
  4. 前記浸漬ノズル内を流下する溶鋼に不活性ガスを吹き込まずに溶鋼を鋳型内に注入することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の鋼の連続鋳造方法。
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