JP2004050288A - 連続鋳造用ノズル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ノズル内周面のノズル上端を除く一部又は全部はCaO−MgO−C含有耐火物21からなり、ノズル内周面のノズル上端部にはノズル外周側を構成する耐火物22が露出してなることを特徴とする連続鋳造用ノズル。ノズル外周側を構成する耐火物22は、ノズル上端部においてノズル内周面側に内径が狭まってなる。ノズル外周側を構成する耐火物22はSiO2含有量が5質量%以下である。底部に浸漬ノズルを有する連続鋳造用タンディッシュであって、浸漬ノズルはノズル内周面の一部又は全部はCaO−MgO−C含有耐火物からなり、浸漬ノズルの上端に接して設けられる鋳造用ノズルは、SiO2含有量が5質量%以下のAl2O3+C含有耐火物を用いてなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属の連続鋳造において、取鍋からタンディッシュあるいはタンディッシュから鋳型内に溶融金属を注入するために用いる連続鋳造用ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属の連続鋳造においては、溶融金属を取鍋からタンディッシュに注入し、さらにタンディッシュから鋳型内に注入する。鋳型内おいて、溶融金属と鋳型との接触部において凝固シェルが成長し、凝固シェルは下方に引き抜かれつつさらに凝固が進行し、最終的に凝固が完了して鋳片となり、引き出される。
【0003】
タンディッシュ底面には鋳造ストランド数に等しい数の注入口が設けられ、各注入口から鋳型内に溶融金属が注入される。注入口にはストッパーあるいはスライディングノズルが設けられ、これらを開閉することによって溶融金属の注入制御が行われる。ストッパーを設ける場合には、タンディッシュ底面に注入ノズル(ストッパーノズル)を設け、注入ノズルの上方にストッパーを配置し、注入ノズルとストッパーとの間隔を調整することによって溶融金属注入量を調整する。スライディングノズルを設ける場合には、タンディッシュ底面に上部ノズルを配置し、その下方にスライディングノズル、さらにその下方に下部ノズルを配置する。スライディングノズルは、1枚ないし2枚の固定プレートと移動プレート(以下総称してSNプレートという。)とによって構成され、固定プレートと移動プレートに設けられた開口部の位置を調整することによって溶融金属注入量を調整する。注入ノズル、上部・下部ノズル、SNプレートは、通常はいずれもAl2O3とCを主成分とするAl2O3+C含有耐火物によって形成される。
【0004】
スラブ及び大断面ブルーム連続鋳造においては、タンディッシュの注入口下部に浸漬ノズルと呼ばれる連続鋳造用ノズルを設け、この浸漬ノズル先端の溶融金属吐出口を鋳型内の溶融金属中に浸漬しつつ溶融金属の注入を行うことにより、注入溶融金属を酸化雰囲気に接触させずに鋳型内に注入することを可能にしている。浸漬ノズルの材質としては、溶融石英あるいはAl2O3+C含有耐火物が用いられる。Al2O3+C含有耐火物製ノズルは、Al2O3の高耐火性とCの低い溶鋼濡れ性とを組み合わせた特徴があり、溶鋼に対する耐食性が強く、溶融石英質ノズルに比較して耐食性に優れているので、現在では溶鋼の連続鋳造用浸漬ノズルとして最も広く用いられている。
【0005】
タンディッシュからの溶融金属の遮断にストッパーを用いる場合には、注入ノズルの下端に浸漬ノズルの上端を接続する。溶融金属の遮断にスライディングノズルを用いる場合には、スライディングノズルを構成する下部ノズルの下端に浸漬ノズルの上端を接続する。いずれの場合においても、浸漬ノズル上端接合部の気密性を十分に確保する必要がある。気密性が不十分であると、浸漬ノズル上端接合部を経由して外部から空気が吸引され、溶融金属を酸化させる原因となるからである。
【0006】
Al2O3+C含有耐火物製浸漬ノズルにおいては、溶融金属が流通するノズル内周部の溶融金属流通部に析出物が付着しやすいという性質を有している。析出物の付着は、特に非浸漬部のノズル内壁の温度勾配の大きな部分および吐出口付近の溶融金属流速の低下する部分に多く、付着物によって鋳造作業が困難になることがある。また、鋳造中に付着物を除去する作業を行う必要があり、ここで除去された付着物は鋳片中に取り込まれて大型介在物となり、鋳片品質を悪化させる原因となる。付着する析出物の主成分はαAl2O3であり、脱酸生成物として溶融金属中に含まれているAl2O3がノズル内壁に析出して堆積するものと考えられる。浸漬ノズル内壁への析出物付着は、特にアルミキルド鋼の連続鋳造において顕著に観察される。
【0007】
特許文献1には、連続鋳造用ノズルとして、ノズル内部の少なくとも一部がドロマ/黒鉛から成るノズルが開示されている。ドロマとは耐火物として市販されているのもであり、ドロマイトを焙焼して作られるものであり、最低56.5%のCaO、41.5%のMgOを含んでいることが好ましいとされる。このような材料によって作られたノズルを使用すると、ドロマがノズルを詰まらせない可溶反応産物を作り出すので、Al2O3+C含有耐火物ノズルに見られるような詰まりトラブルを避けることができるとしている。
【0008】
上記のドロマ/黒鉛質耐火物を採用するに際し、注入する溶融金属が接触するノズル内周面をドロマ/黒鉛質耐火物とし、注入溶融金属が接触しない外側材料としてより廉価な材料でできているものを用いることができる。外側材料には、従来から用いられているAl2O3+C含有耐火物を用いたとしても、ノズル詰まりの問題は発生しない。
【0009】
上記のドロマ/黒鉛を用いた連続鋳造用ノズルは、ステンレス鋼の連続鋳造に用いられ、ノズル詰まりの少ない鋳造を実現している。
【0010】
【特許文献1】
特表平11−506393号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
図7に示すような、溶融金属が接触するノズル内周面にCaO−MgO−C含有耐火物21(上記ドロマ/黒鉛質耐火物を含む)を用いた連続鋳造用ノズル1を採用することにより、ノズル詰まりの少ない鋳造を行うことができる。ただし、この連続鋳造用ノズル1は、ステンレス鋼の連続鋳造のような少量生産の連続鋳造においては用いることができるものの、普通鋼の連続鋳造のように大量の溶融金属を鋳造する場合においては、鋳造中にCaO−MgO−C含有耐火物21の部分が溶損するとともに、CaO−MgO−C含有耐火物21と接する耐火物部分の溶損が進行して溶損部30が形成されるため、浸漬ノズルの寿命が短く、従来に等しい生産性とコストを維持することができなかった。
【0012】
本発明は、連続鋳造用ノズル内周面への析出物の堆積を防止しつつ、ノズルの溶損を防止することのできる連続鋳造用ノズルを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
注入溶融金属が接触するノズル内周面にCaO−MgO−C含有耐火物を用い、ノズル外周側を構成する耐火物22(以下「外側材料」ともいう。)としてAl2O3+C含有耐火物を用いた浸漬ノズルが一般的に採用される。この浸漬ノズルの上端24をタンディッシュ注入口の注入ノズルあるいは下部ノズルの下端に取り付ける(図7)。以下、ストッパーを使用する場合の注入ノズルと、スライディングノズルを使用する場合の下部ノズルを、総称して「注入ノズル6」という。注入ノズル6はAl2O3+C含有耐火物によって形成される。このような構成を採用することにより、浸漬ノズル内周部への析出物の付着を防止することができる一方、鋳造中にCaO−MgO−C含有耐火物21の部分、および該CaO−MgO−C含有耐火物と接する耐火物部分の溶損が進行する。
【0014】
ノズル上端の接合面29においては、浸漬ノズルのCaO−MgO−C含有耐火物21部分とAl2O3+C含有耐火物製注入ノズル6とが接触しているか、あるいは極めて近接している。鋳造中における溶損状況を詳細に観察したところ、図8に示すように、溶損はノズル上端の接合面29において集中的に発生していることが判明した。溶損の進行は、ノズルのCaO−MgO−C含有耐火物21部分と注入ノズル6との接触部分において、ノズルのCaO−MgO−C含有耐火物部分と注入ノズル6の両方で同時に溶損が進行している。
【0015】
以上の結果から、ノズル内周面にCaO−MgO−C含有耐火物を用いた連続鋳造用ノズルの溶損は、CaO−MgO−C含有耐火物とAl2O3+C含有耐火物との接触に基づき、何らかの低融点物質が形成され、その結果として溶損が進行しているものと推定されるに至った。このことから本発明者らは、CaO−MgO−C含有耐火物21と注入ノズル6との接触を断つことにより、あるいは注入ノズル6の材質としてCaO−MgO−C含有耐火物21と接しても溶損を起こさない材質を選択することにより、結果としてCaO−MgO−C含有耐火物21の溶損を防止できることを見いだした。
【0016】
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)ノズル内周面のノズル上端を除く一部又は全部はCaO−MgO−C含有耐火物21からなり、ノズル内周面のノズル上端部にはノズル外周側を構成する耐火物22が露出してなることを特徴とする連続鋳造用ノズル。
(2)ノズル外周側を構成する耐火物22は、ノズル上端部においてノズル内周面側に内径が狭まってなることを特徴とする上記(1)に記載の連続鋳造用ノズル。
(3)ノズル外周側を構成する耐火物22はAl2O3+C含有耐火物であり、かつSiO2含有量が5質量%以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の連続鋳造用ノズル。
(4)前記CaO−MgO−C含有耐火物21の組成は、0.03≦MgO/CaO≦32、0.05≦C/(CaO+MgO+C)≦0.40、かつCaO+MgO+Cの合計が90質量%以上であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の連続鋳造用ノズル。
ここで、CaO、MgO、CはCaO−MgO−C含有耐火物21中の含有量(質量%)を表す。
(5)前記CaO−MgO−C含有耐火物に代えてCaO−C含有耐火物を用いることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の連続鋳造用ノズル。
(6)前記CaO−MgO−C含有耐火物に代えてCaO−MgO含有耐火物を用いることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の連続鋳造用ノズル。
(7)底部に浸漬ノズルを有する連続鋳造用タンディッシュであって、該浸漬ノズルとして上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の連続鋳造用ノズルを用いてなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
【0017】
(8)底部に浸漬ノズルを有する連続鋳造用タンディッシュであって、該浸漬ノズルは、ノズル内周面の一部又は全部はCaO−MgO−C含有耐火物からなり、該CaO−MgO−C含有耐火物の組成は、0.03≦MgO/CaO≦32、0.05≦C/(CaO+MgO+C)≦0.40、かつCaO+MgO+Cの合計が90質量%以上であり、該浸漬ノズルの上端に接して設けられる鋳造用ノズルは、SiO2含有量が5質量%以下のAl2O3+C含有耐火物を用いてなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
(9)底部に浸漬ノズルを有する連続鋳造用タンディッシュであって、該浸漬ノズルは、ノズル内周面の一部又は全部はCaO−MgO含有耐火物からなり、該CaO−MgO含有耐火物の組成は、0.03≦MgO/CaO≦32、かつCaO+MgOの合計が90質量%以上であり、該浸漬ノズルの上端に接して設けられる鋳造用ノズルは、SiO2含有量が5質量%以下のAl2O3+C含有耐火物を用いてなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
【0018】
(10)上記(7)乃至(9)のいずれかに記載の連続鋳造用タンディッシュを用い、タンディッシュから浸漬ノズルを経由して溶融金属を鋳型内に注入することを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下の説明において、浸漬ノズル1の上端24と接するノズルであって、ストッパー方式のタンディッシュにおける注入ノズル、あるいはスライディングノズル方式のタンディッシュにおける下部ノズル6を、総称して注入ノズル6と称する。
【0020】
本発明における第1の発明は、ノズル内周面のノズル上端24を除く一部又は全部はCaO−MgO−C含有耐火物21からなり、ノズル内周面のノズル上端部にはノズル外周側を構成する耐火物21が露出してなることを特徴とする連続鋳造用ノズルである(図1、3)。
【0021】
ノズル内周面にCaO−MgO−C含有耐火物21を有する従来の浸漬ノズルを使用した場合に、浸漬ノズル上端と接触する注入ノズル6の溶損が発生するのは、注入ノズル6がCaO−MgO−C含有耐火物21自体と近接して接しているためである。従って、本発明のようにCaO−MgO−C含有耐火物21をノズル上端を除く部分に配置しておけば、CaO−MgO−C含有耐火物21が注入ノズル6と接触することがないので、注入ノズル6と浸漬ノズル1の接合面29における耐火物が溶損することがなく、溶融金属流通路8は外気に対して気密性が保たれる。
【0022】
第1の発明において、図3(a)に示すように、CaO−MgO−C含有耐火物21をノズル上端を除く部分に配置し、ノズル上端には空隙部23が存在する形態としても良い。さらに、ノズル外周側を構成する耐火物22は、図1に示すように、ノズル上端部においてノズル内周面側に内径が狭まってなる内径狭まり部27を有することとすれば、溶融金属流通路8の内周面に段差が生じることがないので好ましい。ただし、この場合にはノズル内周面を構成するCaO−MgO−C含有耐火物21部分を浸漬ノズル1の上方から挿入して形成することができないが、先に成形したCaO−MgO−C含有耐火物21を型の中に挿入し、その回りにAl2O3とCの混合物を詰めてラバープレスで一体成形した上で仮焼成する方法によって、図1に示す形状に成型することが可能である。もちろん、外周側を構成する耐火物22とCaO−MgO−C含有耐火物21とを別々に成形し、図3(b)に示すように外周側を構成する耐火物22の下端26からCaO−MgO−C含有耐火物21を挿入して組み立てる形態とすることもできる。
【0023】
本発明においては、ノズル上端付近において、外周側を構成する耐火物22とCaO−MgO−C含有耐火物21との接合面25が溶融金属流通路8に露出している。この接合面25において、図4に示すように溶損30が進行することがある。ただし、このような溶損30が発生しても、浸漬ノズル1の上端と注入ノズル6との接合面29は健全に保持されるので、接合面29を経由して外気が溶融金属流通路8に浸入するトラブルが発生することはない。
【0024】
第1の発明において、ノズル外周側を構成する耐火物22がAl2O3+C含有耐火物であり、かつSiO2含有量が5質量%以下であることとすると好ましい。Al2O3+C含有耐火物は、高い耐火性を有しており、ノズル外周側を構成する耐火物21として最も好ましい材質である。さらに、Al2O3+C含有耐火物中のSiO2含有量を5質量%以下とすることにより、該Al2O3+C含有耐火物とCaO−MgO−C含有耐火物との接合部における低融点物質の形成を最小限とし、該接合部における耐火物の溶損を最小限とすることができる。SiO2含有量は3質量%以下であればより好ましい。
【0025】
本発明において、ノズル内周面の上端を除く一部又は全部をCaO−MgO−C含有耐火物21によって形成することにより、連続鋳造中にノズル内周面にAl2O3をはじめとする析出物が形成されるのを防止している。このCaO−MgO−C含有耐火物の組成は、0.03≦MgO/CaO≦32、0.05≦C/(CaO+MgO+C)≦0.40、かつCaO+MgO+Cの合計が90質量%以上であると好ましい。
【0026】
CaO−MgO−C含有耐火物の結晶構造は、CaO相とMgO相が混在したものであり、CはCaOとMgOとが共存する結晶粒の粒子間に板状に充填される形で存在している。ノズル内周面の材質がCaO−MgO−C含有耐火物であるとAl2O3析出物の付着が少ない理由は、溶融金属から析出したAl2O3がノズル内周面に付着したとき、耐火物中のCaO相と付着Al2O3とが反応して低融点物質を生成し、そのために付着した析出物が再度溶融金属中に浮遊していくためであると考えられる。従って、ノズル内周面を形成する耐火物中にCaO相が存在すれば、析出物付着を防止する能力を有する。CaO−MgO−C含有耐火物中のMgO/CaOが32以下であれば、耐火物中に確実にCaO相を存在させることができ、析出物付着防止効果を発揮することができる。MgO/CaO比が低いほどCaO相の存在比率が増大するので、析出物付着防止効果を向上させることができる。MgO/CaO≦1であるとより好ましい。MgO/CaO≦0.72であるとさらに好ましい。
【0027】
CaO−MgO−C含有耐火物中のMgO相は、溶融金属中のAl2O3と比較的融点の高い反応生成物をつくるため、ノズル内面耐火物の溶損を抑制するという機能を有する。この機能を発揮させるためには、MgO/CaO≧0.03とすることが必要である。MgO/CaO≧0.2であるとより好ましい。MgO/CaO≧0.42であるとさらに好ましい。
【0028】
CaO−MgO−C含有耐火物を製造するに際し、耐火物中のCaO−MgO源として通常はドロマイトを用いる。ドロマイト中のCaCO3とMgCO3の比率が生産地によって異なるので、ドロマイトを用いて製造した耐火物中のMgO/CaO比は0.49〜1の範囲に存在することになる。この範囲であれば上記好ましいMgO/CaO比を実現することができる。
【0029】
CaO−MgO−C含有耐火物中のCは、Cがもつ高熱伝導性により、耐熱スポーリング性に優れるという機能を有する。この機能を発揮させるためには、C/(CaO+MgO+C)を0.05以上とする必要がある。0.15以上であればより好ましい。ただし、C含有量が高すぎると、Cの酸化による損耗が大きくなるので、C/(CaO+MgO+C)≦0.40とする。C/(CaO+MgO+C)≦0.35であるとより好ましい。
【0030】
CaO−MgO−C含有耐火物においては、CaO+MgO+Cの合計を90質量%以上とする。不純物の含有量が10%超となると、耐火性が低下するとともに、耐火物の主要物質との低融点物質を形成し易くなるため本発明の内孔体としての特性が得られなくなるためである。
【0031】
CaO−MgO−C含有耐火物の形状としては、連続鋳造用ノズルの外側を構成する耐火物22と、内周を構成するCaO−MgO−C含有耐火物21とを別々に製作し、外側を構成する耐火物22の内側にCaO−MgO−C含有耐火物21を上方から挿入する方法を採用すれば、製作が容易であって好ましい。この場合、連続鋳造用ノズル下端の吐出口9において、図1に示すように溶融金属流通路に外側を構成する耐火物22が露出するが、もともとこの部分への析出物の付着はそれほど多くなかったので問題とはならない。また、同じ吐出口9において外側を構成する耐火物22とCaO−MgO−C含有耐火物21との接触部が溶融金属流通路に露出する。この接触部における耐火物の溶損は、直接外気の侵入という弊害はもたらさないものの、溶損を最小限とするためには、ノズルの外側を構成する耐火物22としてSiO2含有量5質量%以下のAl2O3+C含有耐火物を用いると好ましい。
【0032】
本発明において、ノズル内周面の一部又は全部において、上記CaO−MgO−C含有耐火物に代えてCaO−C含有耐火物を用いても良い。MgOを含有していないので上記ノズル内面耐火物の溶損抑制機能を発揮することはできないが、耐火物のライニング厚みを使用回数にあわせてコントロールできるという理由で十分にノズル内周面としての機能を果たすことができ、さらに優れた析出物付着除去効果を発揮することができる。この場合において、CaO−C含有耐火物は0.05≦C/(CaO+C)≦0.40、かつCaO+Cの合計が90質量%以上の条件を満足すると好ましい。その理由は、上記CaO−MgO−C含有耐火物における理由と同様である。
【0033】
本発明において、ノズル内周面の一部又は全部において、上記CaO−MgO−C含有耐火物に代えてCaO−MgO含有耐火物を用いても良い。
【0034】
連続鋳造用ノズルの内周面は溶鋼と接触する部分である。Cを含有する耐火物においては、耐火物骨材の間にCが板状に存在する。ノズルの内周面にCを含有した耐火物を用いると、耐火物中のCの部分が溶鋼と反応する形で基材の間から溶損されていく。従って、Cを含有しない耐火物の方が耐火物の溶損速度が小さくなり、寿命が長くなり、有利になることがある。一方、Cを含有しない耐火物は耐スポーリング性が悪化するので、予熱時の昇温速度を小さくするなどの予熱の工夫が必要となる。ノズル内周面にCaO−MgO含有耐火物を用い、ノズル外周面にAl2O3+C含有耐火物を用いることとすれば、内周面のCaO−MgO含有耐火物の内面と外面との温度差が小さくなり、かつ蓄熱効果もあるので、耐スポーリング性をさほど損なわずにノズルを形成することができる。ただし、ノズル内外周の耐火物間で線膨張係数の差が大きく、ノズル外周面を構成するAl2O3+C含有耐火物に比較して内周面のCaO−MgO含有耐火物の方が予熱時に膨張速度が大きいので、Al2O3+C含有耐火物との接合部にCaO−MgO含有耐火物の膨張を吸収することができるモルタルもしくは接合剤が必要となる。あるいは、外周を構成する耐火物が内周耐火物の膨張を抑制できるように、外周耐火物の厚さを十分に取ることとしても良い。
【0035】
ノズルの内周面にCaO−MgO含有耐火物を用いる場合において、CaO−MgO含有耐火物の組成は、0.03≦MgO/CaO≦32、かつCaO+MgOの合計が90質量%以上の条件を満足すると好ましい。その理由は、上記CaO−MgO−C含有耐火物における理由と同様である。また、Cを積極的には含有しないが、5%未満の範囲でCを含有していても構わない。
【0036】
上記第1の発明を適用した連続鋳造用ノズル1を浸漬ノズルとして採用し、この浸漬ノズルを底部に装着したタンディッシュ2を構成することができる(図2)。このタンディッシュ2を用いて溶融金属の連続鋳造を行えば、連続鋳造中における浸漬ノズル内周面への析出物の付着を防止しつつ、浸漬ノズル上端における耐火物の溶損を防止することができ、溶融金属中への空気の巻き込みを防止し、同一のタンディッシュを用いて長時間にわたる鋳造を行うことが可能になる。
【0037】
溶融金属の連続鋳造タンディッシュを形成するに際し、浸漬ノズル1はその上部の注入ノズル6に接するように配置される。注入ノズル6の材質として通常はAl2O3+C含有耐火物が使用される。従来、該Al2O3+C含有耐火物中のSiO2含有量は15質量%程度の含有量となっていた。
【0038】
本発明における第2の発明は、図5に示すように、底部に浸漬ノズル1を有する連続鋳造用タンディッシュ2であって、該浸漬ノズル1は、ノズル内周面の一部又は全部はCaO−MgO−C含有耐火物21からなり、該浸漬ノズルの上端に接して設けられる鋳造用ノズル(注入ノズル6)は、SiO2含有量が5質量%以下のAl2O3+C含有耐火物を用いてなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュである。
【0039】
前述したとおり、浸漬ノズルの内周面にCaO−MgO−C含有耐火物21を用いた場合において、このCaO−MgO−C含有耐火物21と接する注入ノズル6の部分が溶損するのは、主にAl2O3+C含有耐火物製注入ノズル中に含有するSiO2成分がCaOと反応し、低融点物質を生成するためである。上記第2の発明においては、注入ノズル6としてSiO2含有量が5質量%以下のAl2O3+C含有耐火物を用いることにより、この問題を解決した。注入ノズル6中のSiO2含有量を上記範囲とすることにより、低融点物質の生成を減少させることができ、注入ノズル6とCaO−MgO−C含有耐火物21との接触面における耐火物溶損を大幅に低減することができる。その結果、浸漬ノズル内周面におけるCaO−MgO−C含有耐火物21は従来通り浸漬ノズル上端まで配置されていても、注入ノズル6と浸漬ノズル接触部におけるノズル溶損が低減する。このタンディッシュ1を用い、タンディッシュから浸漬ノズルを経由して溶融金属を鋳型内に注入することを特徴とする溶融金属の連続鋳造を行った場合には、長時間にわたってタンディッシュを使用しても該接合面から溶融金属への空気の巻き込み発生を防止することができる。
【0040】
第2の発明において、CaO−MgO−C含有耐火物の組成を、0.03≦MgO/CaO≦32、0.05≦C/(CaO+MgO+C)≦0.40、かつCaO+MgO+Cの合計が90質量%以上とする理由は、前記第1の発明と同様である。また、CaO−MgO−C含有耐火物に代えてCaO−C含有耐火物を用いてもよい。
【0041】
第2の発明において、CaO−MgO−C含有耐火物に代えてCaO−MgO含有耐火物を用いてもよい。CaO−MgO含有耐火物を用いた場合の特徴、及びCaO−MgO含有耐火物の好ましい成分組成は、前記第1の発明と同様である。
【0042】
本発明の連続鋳造用ノズルを浸漬ノズルとして使用する際に、外周をAl2O3+C含有耐火物とした場合には、浸漬ノズルの外周部であってスラグラインに相当する部分には、図6に示すようにスラグによる溶損を防止するためのスラグライン耐火物28を配置すると好ましい。たとえば、ZrO2+C系耐火物を用いることができる。
【0043】
本発明を用いた連続鋳造においては、Al脱酸鋼を鋳造した場合でも、ノズル内面にAl2O3の付着が見られずノズル絞りが発生しない。そのため、通常浸漬ノズルの内面にAl2O3が付着することを防止することを目的として、浸漬ノズル内面、もしくは上ノズルよりArガス等の不活性ガスを吹き込む必然性が無くなる。従って、要求される鋳片の品質水準に応じて任意に不活性ガス流量を削減可能となり、ピンホールの少ない鋳片の製造が可能となり、表面品質に優れた板材の製造が可能となる。
【0044】
上記本発明の連続鋳造用ノズルは、タンディッシュに接続する浸漬ノズルとして使用したときに最も優れた効果を発揮するが、この用途に限定されるものではなく、たとえば取鍋に接続して溶融金属をタンディッシュに注入する際の連続鋳造用ノズルとして使用しても同様に効果を発揮することができる。
【0045】
【発明の効果】
連続鋳造用ノズルの内周面にCaO−MgO−C含有耐火物を採用してノズル内周面への析出物の付着を防止するに際し、本発明を適用することにより、連続鋳造用ノズルとその上部の耐火物との接合面における溶損を防止することができ、耐火物の寿命を延ばすことができる。そのため、普通鋼の連続鋳造においてもCaO−MgO−C含有耐火物を十分に使用することが可能になり、ノズルつまりのない鋳造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の連続鋳造用ノズルを示す図であり、(a)は断面図、(b)は側面図、(c)はC−C矢視図、(d)はD−D矢視断面図、(e)はE−E矢視断面図である。
【図2】本発明の連続鋳造用ノズルを浸漬ノズルとして装着したタンディッシュを示す部分断面図である。
【図3】本発明の連続鋳造用ノズルの部分断面図である。
【図4】本発明の連続鋳造用ノズルの部分断面図である。
【図5】本発明の連続鋳造用ノズルを浸漬ノズルとして装着したタンディッシュを示す部分断面図である。
【図6】本発明の連続鋳造用ノズルの断面図である。
【図7】従来の連続鋳造用ノズルを浸漬ノズルとしてタンディッシュに装着した状況を示す部分断面図である。
【図8】従来の連続鋳造用ノズルと注入ノズルとの接触面における溶損発生状況を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 連続鋳造用ノズル(浸漬ノズル)
2 タンディッシュ
3 注入ノズル
4 上部ノズル
5 スライディングプレート
6 下部ノズル(注入ノズル)
7 ストッパー
8 溶融金属流通路
9 吐出口
10 溶融金属
11 鋳型
21 CaO−MgO−C含有耐火物
22 外側を構成する耐火物
23 空隙
24 上端
25 接合面
26 下端
27 内径狭まり部
28 スラグライン耐火物
29 接合面
30 溶損
Claims (10)
- ノズル内周面のノズル上端を除く一部又は全部はCaO−MgO−C含有耐火物からなり、
ノズル内周面のノズル上端部にはノズル外周側を構成する耐火物が露出してなることを特徴とする連続鋳造用ノズル。 - ノズル外周側を構成する耐火物は、ノズル上端部においてノズル内周面側に内径が狭まってなることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造用ノズル。
- ノズル外周側を構成する耐火物はAl2O3+C含有耐火物であり、かつSiO2含有量が5質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続鋳造用ノズル。
- 前記CaO−MgO−C含有耐火物の組成は、0.03≦MgO/CaO≦32、0.05≦C/(CaO+MgO+C)≦0.40、かつCaO+MgO+Cの合計が90質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の連続鋳造用ノズル。
- 前記CaO−MgO−C含有耐火物に代えてCaO−C含有耐火物を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の連続鋳造用ノズル。
- 前記CaO−MgO−C含有耐火物に代えてCaO−MgO含有耐火物を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の連続鋳造用ノズル。
- 底部に浸漬ノズルを有する連続鋳造用タンディッシュであって、該浸漬ノズルとして請求項1乃至6のいずれかに記載の連続鋳造用ノズルを用いてなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
- 底部に浸漬ノズルを有する連続鋳造用タンディッシュであって、該浸漬ノズルは、ノズル内周面の一部又は全部はCaO−MgO−C含有耐火物からなり、該CaO−MgO−C含有耐火物の組成は、0.03≦MgO/CaO≦32、0.05≦C/(CaO+MgO+C)≦0.40、かつCaO+MgO+Cの合計が90質量%以上であり、該浸漬ノズルの上端に接して設けられる鋳造用ノズルは、SiO2含有量が5質量%以下のAl2O3+C含有耐火物を用いてなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
- 底部に浸漬ノズルを有する連続鋳造用タンディッシュであって、該浸漬ノズルは、ノズル内周面の一部又は全部はCaO−MgO含有耐火物からなり、該CaO−MgO含有耐火物の組成は、0.03≦MgO/CaO≦32、かつCaO+MgOの合計が90質量%以上であり、該浸漬ノズルの上端に接して設けられる鋳造用ノズルは、SiO2含有量が5質量%以下のAl2O3+C含有耐火物を用いてなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
- 請求項7乃至9のいずれかに記載の連続鋳造用タンディッシュを用い、タンディッシュから浸漬ノズルを経由して溶融金属を鋳型内に注入することを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法。
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