JP7153636B2 - 食肉用呈味改善剤および食肉加工食品の製造方法 - Google Patents

食肉用呈味改善剤および食肉加工食品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、食肉用呈味改善剤および食肉加工食品の製造方法に関する。
食肉加工食品の風味を改善しようとする技術として、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1(特開2011-62117号公報)には、食品粉末を攪拌しつつ、燻煙と接触させることにより燻煙処理した燻煙処理食品粉末を食品中に特定量含有させる食品の風味改善方法について記載されており、かかる方法により、各種食品にほのかな燻臭を付与し、食品のいやな臭いや味をマスキングして風味改善を図ることができるとされている。
特開2011-62117号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術を用いても、食肉の呈味を増強させるという点において、なお改善の余地があった。
本発明によれば、
油脂組成物である成分(A)を準備する工程と、
澱粉組成物である成分(B)を準備する工程と、
を含む食肉用呈味改善剤の製造方法であって、
前記成分(A)を準備する工程が、
レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理して加熱処理レシチン含有油脂を得る工程と、
前記加熱処理レシチン含有油脂を含む前記成分(A)を準備する工程と、
を含み、
前記成分(B)の25℃における冷水膨潤度が7以上20以下であって、
前記成分(B)を準備する工程が、
アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×103以上5×104以下の低分子化澱粉を得る工程と、
前記成分(B)の原料に前記低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ前記低分子化澱粉と前記低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、前記原料をα化処理する工程と、
を含む、食肉用呈味改善剤の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記本発明における食肉用呈味改善剤の製造方法により製造される、食肉用呈味改善剤が提供される。
また、本発明によれば、
上記本発明における食肉用呈味改善剤の製造方法により食肉用呈味改善剤を得る工程と、
前記食肉用呈味改善剤および食肉を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を加熱調理して食肉加工食品を得る工程と、
を含む、食肉加工食品の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記本発明における食肉加工食品の製造方法により製造される、食肉加工食品が提供される。
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明には、上記本発明における食肉用呈味改善剤の製造方法により製造される食肉用呈味改善剤を食肉に適用する工程を含む、食肉加工食品の呈味改善方法も包含される。
また、本発明によれば、上記本発明における食肉用呈味改善剤に用いられる油脂組成物である成分(A)の製造方法であって、
レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理して加熱処理レシチン含有油脂を得る工程と、
前記加熱処理レシチン含有油脂を含む前記成分(A)を準備する工程と、
を含む、成分(A)の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記本発明における食肉用呈味改善剤に用いられ、25℃における冷水膨潤度が7以上20以下である澱粉組成物である成分(B)の製造方法であって、
アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×103以上5×104以下の低分子化澱粉を得る工程と、
前記成分(B)の原料に前記低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ前記低分子化澱粉と前記低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、前記原料をα化処理する工程と、
を含む、成分(B)の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、食肉用呈味改善剤を食肉に適用する工程を含む、食肉加工食品の食肉の呈味を改善する方法であって、
前記食肉用呈味改善剤が、
上記本発明における成分(A)の製造方法で製造される油脂組成物の成分(A)と、
上記本発明における成分(B)の製造方法で製造される澱粉組成物の成分(B)と、
を含む、食肉加工食品の食肉の呈味を改善する方法が提供される。
以上説明したように本発明によれば、食肉の呈味を増強させることができる。ここでいう食肉の呈味とは、たとえば、食肉本来の好ましい味のことである。
以下、本発明の実施の形態について、具体例を挙げて説明する。
本実施形態において、食肉用呈味改善剤の製造方法は、油脂組成物である成分(A)を準備する工程と、澱粉組成物である成分(B)を準備する工程と、を含む。
ここで、成分(A)を準備する工程は、レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理して加熱処理レシチン含有油脂を得る工程と、加熱処理レシチン含有油脂を含む成分(A)を準備する工程と、を含む。
また、成分(B)の25℃における冷水膨潤度は7以上20以下である。そして、成分(B)を準備する工程が、アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×103以上5×104以下の低分子化澱粉を得る工程と、成分(B)の原料に低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ低分子化澱粉と低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、原料をα化処理する工程と、を含む。
また、食肉用呈味改善剤の製造安定性を高める観点から、食肉用呈味改善剤の製造方法が、さらに、成分(A)と成分(B)とを混合する工程を含むことが好ましい。
(食肉用呈味改善剤)
本実施形態において、食肉用呈味改善剤は、以下の成分(A)および(B)を含む。
(A)油脂組成物
(B)澱粉組成物
以下、各成分について具体的に説明する。
(成分(A))
成分(A)は、油脂組成物であって、レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理した加熱処理レシチン含有油脂を含む。
はじめに、加熱処理レシチン含有油脂の原料であるレシチン含有油脂について説明する。
レシチン含有油脂におけるレシチンは、食品または食品添加物の分野で慣用的に用いられているレシチンを総称するものである。レシチンは、具体的には、大豆、菜種、コーン、ヒマワリ、パーム、落花生、米糠などを原料とした植物油精製時の副産物(たとえば、脱ガム工程で発生する水和物)や卵黄などの粗原料から調製したペースト状レシチンや、この粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、さらにこの粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンなど、リン脂質を主成分とした混合物からなるレシチンである。食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、レシチンは、好ましくはペースト状レシチンおよび分別レシチンから選ばれる1種または2種であり、より好ましくはペースト状レシチンである。
また、レシチンの原料は問わないが、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、好ましくは大豆または米糠由来のレシチンであり、より好ましくは大豆由来のレシチンである。
また、レシチンの酸価は、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、好ましくは10以上である。また、加熱時の発煙を抑制する観点から、レシチンの酸価は好ましくは50以下であり、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは30以下である。ここでいう酸価は、社団法人日本油化学会制定・基準油脂分析試験法(2.3.1-1996 酸価)に準じて測定されたものである。
また、レシチン中のアセトン不溶物含量は、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、レシチン全体に対して50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、また、100質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
レシチン中のアセトン不溶物含量は、食品添加物公定法分析試験法により測定できる。レシチン中のアセトン不溶物含量は、具体的には、以下のような測定により求められる、アセトン不溶物換算値である。
レシチン約2gの質量(P)を精密に量り、これを50mL目盛付共栓遠心管に入れ、石油エーテル3mLを加えて溶かし、アセトン15mLを加えてよくかき混ぜた後、氷水中に15分間放置する。これにあらかじめ0~5℃に冷却したアセトンを加えて50mLとし、よくかき混ぜ、氷水中に15分間放置した後、毎分約3000回転で10分間遠心分離し、上層液をフラスコに採る。さらに共栓遠心管の沈殿物に0~5℃のアセトンを加えて50mLとし、氷水中で冷却しながらよくかき混ぜた後、同様に遠心分離する。この上層液を先のフラスコに合わせ、水浴上で蒸留し、残留物を105℃で1時間乾燥し、その質量(Q)を精密に量る。
この測定により、レシチン中のアセトン不溶物含量が、以下の数式により算出される。
アセトン不溶物含量(質量%)=(1-Q/P)×100
レシチン含有油脂の油脂としては、限定はなく、食用油として用いられるものであればよい。レシチン含有油脂の油脂は、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、好ましくは大豆油、菜種油、コーン油、パーム油とその分別油および綿実油からなる群から選択される1種または2種以上であり、大豆油、菜種油、コーン油およびパーム油とその分別油からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上がより好ましく、大豆油、菜種油およびパームオレインからなる群から選択されるいずれか1種または2種以上がさらに好ましく、大豆油がよりいっそう好ましい。
また、レシチン含有油脂は、食用油にレシチンを添加した油脂でもよく、レシチンが残存するように精製した油脂でもよい。レシチンの含有量の調整のしやすさの点で、好ましくは食用油にレシチンを添加したものがよい。
レシチン含有油脂中のレシチンの含有量は、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、レシチン含有油脂全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、レシチン特有の風味を抑制する観点から、レシチン含有油脂中のレシチンの含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
次に、成分(A)の製造方法を説明する。
成分(A)の製造方法は、たとえば、レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理して加熱処理レシチン含有油脂を得る工程と、加熱処理レシチン含有油脂を含む成分(A)を準備する工程と、を含む。
本実施形態において、加熱処理レシチン含有油脂は、上述したレシチン含有油脂を加熱処理する工程により得られる。
レシチン含有油脂の加熱処理の温度は、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から70℃以上であり、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは105℃以上である。また、油脂の劣化臭発現を抑制する観点から、レシチン含有油脂の加熱処理の温度は160℃以下であり、好ましくは140℃以下である。
また、レシチン含有油脂の加熱処理の時間は、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは2.5時間以上、さらに好ましくは3時間以上である。また、油脂の劣化臭発現を抑制する観点から、レシチン含有油脂の加熱処理の時間は好ましくは240時間以下であり、より好ましくは120時間以下、さらに好ましくは80時間以下、よりいっそう好ましくは48時間以下である。
また、レシチン含有油脂の加熱処理は、レシチン含有油脂の400nmの吸光度に基づいておこなうことが好ましい。レシチン含有油脂の400nmの吸光度は、通常の分光光度計での測定値、もしくはレシチン含有油脂に400nmの吸光度が0の液状油を加えて希釈油脂を調製し、かかる希釈油脂の分光光度計での測定値に希釈倍率を乗じた値である。
加熱処理後の400nmの吸光度から加熱処理前の400nmの吸光度を引いた値(加熱処理後の吸光度-加熱処理前の吸光度)が、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から0.1以上になるようにすることが好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましく、2以上がよりいっそう好ましい。また、油脂の劣化臭発現を抑制する観点から、上記(加熱処理後の吸光度-加熱処理前の吸光度)が25以下になるようにすることが好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましく、12以下がよりいっそう好ましい。
また、レシチン含有油脂の加熱方法は限定されず、通常油脂等の加熱に使用される方法を用いればよい。たとえば、直火、電熱器、IHヒーター、オイルバス、蒸気、恒温槽などで加熱することができる。加熱時にレシチン含有油脂を撹拌することは必須ではないが、均一に加熱できるため撹拌することが好ましい。また、消泡を目的として、加熱時にレシチン含有油脂にシリコーンを添加してもよい。
以上の手順により、加熱処理レシチン含有油脂が得られる。そして、得られた加熱処理レシチン含有油脂を含む成分(A)を準備する。
成分(A)は、加熱処理レシチン含有油脂からなる組成物であってもよいし、加熱処理レシチン含有油脂以外の成分をさらに含む組成物であってもよい。
たとえば、成分(A)は、加熱処理レシチン含有油脂の他に、食用油として用いられるものを含んでいてもよい。食用油の種類に限定はないが、具体例として、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、紅花油、ヒマワリ油、綿実油、米油、パーム核油、ヤシ油などの植物油脂;および、牛脂、豚脂等の動物脂;ならびにこれらに分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂の単品、または、これらの2種以上を混合したものが挙げられる。
成分(A)中の油脂含有量は、限定されないが、成分(A)全体に対して好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。油脂含有量の上限に制限はないが、成分(A)全体に対してレシチンと油脂の合計が100質量%以下である。成分(A)は、レシチン含有油脂を加熱処理して得られる油脂を含有するが、レシチン含有油脂を加熱処理して得られる加熱処理レシチン含有油脂の含有量は限定されず、成分(A)全体に対して100質量%であってもよい。成分(A)中の水分含有量は成分(A)全体に対して好ましくは1%以下である。
また、成分(A)は、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、成分(A)全体に対して加熱処理前のレシチンが0.01質量%以上20質量%以下になるように加熱処理レシチン含有油脂を含有することが好ましく、0.05質量%以上12質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上8質量%以下がさらに好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がよりいっそう好ましい。
また、成分(A)は、レシチンの沈降防止の観点から、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルやショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤を含有することが好ましい。
成分(A)中の乳化剤の含有量は、レシチンの沈降を防止する観点から、成分(A)全体に対してたとえば0.01質量%以上であり、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。また、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、成分(A)中の乳化剤の含有量は、成分(A)全体に対してたとえば5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
食肉用呈味改善剤における成分(A)の配合量は、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、食肉用呈味改善剤全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。また、上記の観点から、食肉用呈味改善剤における成分(A)の配合量は、食肉用呈味改善剤全体に対して好ましくは85質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
また、食肉用呈味改善剤が水分を含むとき、成分(A)の含有量は、食肉用呈味改善剤中の水以外の成分全体に対して好ましくは8質量%以上であり、また、好ましくは85質量%以下である。また、食肉用呈味改善剤が水分を含むとき、成分(A)の含有量は、食肉用呈味改善剤中の水以外の成分全体に対してたとえば15質量%以上であってもよく、また、たとえば90質量%以下であってもよい。
また、食肉用呈味改善剤における加熱処理前のレシチン量が、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、食肉用呈味改善剤全体に対して好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上となるように、食肉用呈味改善剤に成分(A)を配合する。また、上記の観点から、食肉用呈味改善剤における加熱処理前のレシチン量は、加熱処理前のレシチンとして、食肉用呈味改善剤全体に対して好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下となるように成分(A)を配合する。
(成分(B))
成分(B)は、澱粉組成物であって、成分(B)の25℃における冷水膨潤度は、7以上20以下である。
成分(B)は、澱粉を必須成分として含む。
具体的には、成分(B)は、食肉用呈味改善剤として食肉加工食品に配合された際のべたつきまたは風味の劣化を抑制する観点から、澱粉を75質量%以上含む。また、上記観点から、澱粉含量を80質量%以上とすることが好ましく、85質量%以上とすることがさらに好ましい。
また、成分(B)中の澱粉含量の上限に制限はなく、100質量%以下であるが、配合される食肉加工食品の食感等に応じてたとえば99.5質量%以下、99質量%以下、95質量%以下等としてもよい。
また、成分(B)は、上記澱粉として、アミロース含量5質量%以上の澱粉を原料とする低分子化澱粉を特定の割合で含む。かかる低分子化澱粉として特定のピーク分子量のものが用いられる。すなわち、成分(B)中の澱粉が、アミロース含量5質量%以上の澱粉を原料とする低分子化澱粉を成分(B)中に3質量%以上45質量%以下含み、低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下である。
低分子化澱粉のピーク分子量の下限値は、食肉加工食品のベタつきを抑制する観点から、3×103以上であり、8×103以上とすることが好ましい。また、低分子化澱粉のピーク分子量の上限値は、食肉の呈味の増強効果を高める観点から、5×104以下であり、3×104以下とすることが好ましく、1.5×104以下とすることがさらに好ましい。なお、低分子化澱粉のピーク分子量の測定方法については、実施例の項で後述する。
成分(B)中の低分子化澱粉の含有量は、食肉の呈味の増強効果を高める観点から、3質量%以上であり、8質量%以上であることが好ましく、13質量%以上とすることがさらに好ましい。
一方、成分(B)中の低分子化澱粉の含有量の上限は、食肉加工食品のベタつきを抑制する観点から、45質量%以下であり、35質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは25質量%以下である。
低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量は、5質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、より好ましくは22質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。なお、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下である。
低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉として、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉および、これらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。吸水率の高さの観点から、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、および、タピオカ澱粉から選択される1種または2種以上を用いることが好ましく、吸水率の高さ、べたつきのなさ、および、ダマになりにくさのバランスを向上させる観点からは、ハイアミロースコーンスターチを用いることが好ましい。ハイアミロースコーンスターチのアミロース含量は、40質量%以上のものが入手可能である。
また、成分(B)においては、冷水膨潤度が特定の条件を満たす構成となっている。
まず、成分(B)において、吸水率を適度に高める観点から、冷水膨潤度は7以上であり、好ましくは7.5以上であり、さらに好ましくは9以上である。
一方、冷水膨潤度が高すぎると、成分(B)を含む食肉用呈味改善剤が適用される食肉加工食品の食感が柔らかくなりすぎる場合があるため、冷水膨潤度は、20以下であり、好ましくは17以下である。
なお、成分(B)の冷水膨潤度の測定方法については、実施例の項で後述する。
また、成分(B)の粒度については、適度な吸水性と結着性を得る観点からは、JIS-Z8801-1規格における目開き0.5mmの篩上の成分(B)の含有量は好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。また、目開き0.5mmの篩上の成分(B)の含有量の下限に制限はなく、0質量%以上である。
また、成分(B)が配合される食肉用呈味改善剤またはこれが適用される食肉加工食品の形態、大きさなどを踏まえ、たとえばJIS-Z8801-1規格における目開き0.01mm篩下の成分(B)の含有量は好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
成分(B)の粘度は、食肉との親和性を高める観点から4200mPa・s以下であり、好ましくは3600mPa・s以下、さらに好ましくは1600mPa・s以下である。
また、食肉の呈味の増強効果を高める観点からは、成分(B)の粘度は80mPa・s以上であり、好ましくは100mPa・s以上、さらに好ましくは300mPa・s以上である。
このときの粘度とは、成分(B)を乾燥物重量換算35gとグアーガム(DSP五協フード&ケミカル株式会社製グアパックPF-20)0.5gとを均一混合したものを金属羽で攪拌した350gの水へ少量ずつ添加して得た均一なスラリー液(14℃)における、B型粘度計による粘度測定値である。
また、成分(B)の吸水率は、食肉の呈味の増強効果を高める観点から、成分(B)の乾燥重量に対してたとえば500%以上であり、好ましくは600%以上であり、さらに好ましくは650%以上である。また、上記観点から、成分(B)の吸水率は、成分(B)の乾燥重量に対してたとえば1500%以下であり、好ましくは1200%以下であり、さらに好ましくは900%以下である。
成分(B)中の上記低分子化澱粉以外の澱粉成分としては、様々な澱粉を使用することができる。具体的には、用途に応じて一般に市販されている澱粉、たとえば食品または飼料用の澱粉であれば、種類を問わないが、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉などの澱粉;およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉などから、1種以上を適宜選ぶことができる。好ましくは、成分(B)の原料が、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を含有するのがよい。
また、成分(B)には、澱粉以外の成分を配合することもできる。
澱粉以外の成分の具体例としては、砂糖などの糖類(多糖類を除く。);グルテンなどのタンパク質;大豆粉(たとえば脱脂大豆粉)などの穀粉;ペクチンなどの多糖類およびその他のガム類;油脂;色素;乳化剤;ならびに炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの不溶性塩が挙げられる。
乳化剤を配合することにより、成分(B)の硬さを調整することができるため、食肉用呈味改善剤が配合される食肉加工食品に応じて食感を変化させることができる。
また、炭酸カルシウムなどの不溶性塩を添加することにより、成分(B)の気泡構造を安定化し、成分(B)の製造安定性を改善することができる。
また、脱脂大豆粉等の穀粉を含むことで、成分(B)を含む食肉用呈味改善剤が配合される食肉加工食品の食感や硬さを調整することもできる。
次に、成分(B)の製造方法を説明する。本実施形態において、成分(B)の製造方法は、アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×103以上5×104以下の低分子化澱粉を得る工程と、成分(B)の原料に低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ低分子化澱粉と低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、成分(B)の原料をα化処理する工程とを含む。ここで、澱粉の合計含量は、原料全体に対する質量割合である。
低分子化澱粉を得る工程は、アミロース含量5質量%以上の澱粉を分解して低分子化澱粉とする工程である。ここでいう分解とは、澱粉の低分子化を伴う分解をいい、代表的な分解方法として酸処理や酸化処理、酵素処理による分解が挙げられる。この中でも、分解速度やコスト、分解反応の再現性の観点から、酸処理が好ましい。
原料をα化処理する工程には、澱粉の加熱糊化に使用されている一般的な方法を用いることができる。具体的には、ドラムドライヤー、ジェットクッカー、エクストルーダー、スプレードライヤーなどの機械を使用した加熱糊化法が知られているが、本実施形態において、冷水膨潤度が上述した特定の条件を満たす成分(B)をより確実に得る観点から、エクストルーダーやドラムドライヤーによる加熱糊化が適しており、エクストルーダーが最も適している。
エクストルーダーなどによる押出造粒機を用いる方法によれば、成分(B)の少なくとも表面近傍を糊化させるとともに、成分(B)として密度が適度に低い組成物が得られるため、吸水率が適度に高く離水の抑制効果に優れた成分(B)をさらに安定的に得ることができる。エクストルーダー処理する場合は通常、澱粉を含む原料に加水して水分含量を10~60質量%程度に調製した後、たとえばバレル温度30~200℃、出口温度80~180℃、スクリュー回転数100~1,000rpm、熱処理時間5~60秒の条件で、加熱膨化させる。エクストルーダーを用いる際のα化度は、ダマの発生の抑制の観点から、たとえば20%以上、好ましくは30%以上とする。一方、べたつきの抑制の観点から、エクストルーダーを用いる際のα化度は、たとえば100%以下、好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下とする。
また、ドラムドライヤーを用いたα化処理によれば、α化度をさらに充分に高められるため、成分(B)として吸水率に優れた組成物を安定的に得ることができる。ドラムドライヤー処理する場合は、通常、澱粉を含む原料の重ボーメ度10~22程度のスラリーを、オンレーターに通して出口温度90~140℃程度まで加熱して糊液とし、この糊液を直ちに、100~200℃程度に加熱したドラムドライヤーに薄く広げて加熱乾燥させ、これをドラムドライヤーから掻き取る。ドラムドライヤーを用いる際のα化度は、ダマの発生の抑制の観点から、たとえば20%以上、好ましくは30%以上とする。一方、べたつきの抑制の観点から、ドラムドライヤーを用いる際のα化度は、たとえば100%以下、好ましくは98%以下とする。
本実施形態において、たとえば上記特定の原料をα化処理する工程により、成分(B)として、冷水膨潤度が特定の条件を満たす組成物を得ることができる。
また、α化処理して得られた組成物を、必要に応じて、粉砕し、篩い分けをし、大きさを適宜調整して成分(B)としてもよい。こうすることにより、適度な結着性を得ることができる。
食肉用呈味改善剤における成分(B)の配合量は、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、食肉用呈味改善剤全体に対して好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは9質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。また、上記の観点から、食肉用呈味改善剤における成分(B)の配合量は、食肉用呈味改善剤全体に対して好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
また、食肉用呈味改善剤が水分を含むとき、成分(B)の含有量は、食肉用呈味改善剤中の水以外の成分全体に対して好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは85質量%以下である。また、食肉用呈味改善剤が水分を含むとき、成分(B)の含有量は、食肉用呈味改善剤中の水以外の成分全体に対してたとえば15質量%以上であってもよく、また、たとえば92質量%以下であってもよい。
また、食肉用呈味改善剤における成分(A)に対する成分(B)の質量比((B)/(A))については、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上である。また、食肉の結着性を維持する観点から、((B)/(A))が、好ましくは6以下であり、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。また、食肉の呈味の増強効果を向上させる観点からは、((B)/(A))は、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、さらに好ましくは0.8以下である。
また、食肉用呈味改善剤における加熱処理前のレシチン(L)換算に対する成分(B)の配合比((B)/(L))については、食肉の呈味の増強効果を安定的に得る観点から、好ましくは4以上であり、より好ましくは10以上、より好ましくは15以上である。また、食肉の結着性を維持する観点から、((B)/(L))が、好ましくは1000以下であり、より好ましくは700以下、より好ましくは500以下である。
本実施形態において、食肉用呈味改善剤は、成分(A)を準備する工程、および、成分(B)を準備する工程を含む製造方法により得られる。
また、本実施形態において、食肉用呈味改善剤の製造方法は、成分(A)および(B)を混合する工程をさらに含んでもよい。
本実施形態において得られる食肉用呈味改善剤は、成分(A)および(B)を含むため、食肉用呈味改善剤として効果的に用いることができる。さらに具体的には、食肉用呈味改善剤を食肉に適用することにより、食肉加工食品における食肉本来の好ましい呈味を増強することができる。
また、本実施形態において、食肉加工食品の食肉の呈味を改善する方法は、たとえば、上述した成分(A)および(B)を含む食肉用呈味改善剤を食肉に適用する工程を含む。
また、本実施形態において、食肉用呈味改善剤は、上記成分(A)および(B)以外の成分を含んでもよい。
成分(A)および(B)以外の成分として、たとえば水、だし汁、調味液等が挙げられる。
たとえば、食肉用呈味改善剤が水を含む場合、水の含有量は、たとえば食肉用呈味改善剤中の水以外の成分を除いた残部とすることができる。
また、食肉用呈味改善剤中の水の含有量は、食肉加工食品製造の作業性を高める観点から、食肉用呈味改善剤全体に対して好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上、よりいっそう好ましくは50質量%以上である。
また、食肉加工食品のドリップを防止する観点から、食肉用呈味改善剤中の水の含有量は、好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下、よりいっそう好ましくは80質量%以下である。
また、食肉用呈味改善剤中の成分(B)1質量部に対する水の量は、食肉加工食品製造の作業性を高める観点から、好ましくは0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上、よりいっそう好ましくは2質量部以上である。
また、食肉加工食品のドリップを防止する観点から、食肉用呈味改善剤中の成分(B)1質量部に対する水の量は、好ましくは6質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以下、よりいっそう好ましくは4質量部以下である。
また、食肉用呈味改善剤が水を含むとき、食肉用呈味改善剤の水以外の成分が、成分(A)および(B)からなる構成であってもよい。
食肉用呈味改善剤が水を含むとき、食肉用呈味改善剤の製造方法が、成分(A)、(B)および水を混合する工程をさらに含んでもよい。食肉用呈味改善剤の均質性を高める観点から、成分(A)および(B)を混合した後、混合物に水を添加して混合することが好ましい。
(食肉加工食品)
本実施形態において、食肉加工食品は、上述した本実施形態における食肉用呈味改善剤を用いて製造される。
食肉加工食品の原料である食肉の具体例として、牛、豚、羊、山羊等の哺乳動物の肉;鶏、アヒル、七面鳥、ガチョウ、鴨等の鳥類の肉;スケソウダラ、イトヨリ、ホッケ等の魚やエビ、カニ、イカ、タコ、ホタテ等の魚介類の肉が挙げられる。
また、食肉の呈味増強効果を高める観点から、食肉加工食品の原料である食肉の形状は、好ましくは挽肉、すり身等のミンチ状である。
なお、食肉は非加熱であることが好ましい。
本実施形態において、食肉加工食品として、たとえば挽肉、すり身等のミンチ状の食肉を用いて得られる製品が挙げられる。食肉加工食品として、さらに具体的には、焼売、餃子、肉まん等の点心;ハンバーグ、ミートボール、ミートローフ、つくね、ウインナーソーセージ、メンチカツ、チキンナゲット等の畜肉練り製品;さつま揚げ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん等の魚介肉練り製品が挙げられる。これらのうち、食肉の呈味増強効果を高める観点から、食肉加工食品は、好ましくは焼売、餃子、ハンバーグ、肉まん、さつま揚げからなる群から選択される。
また、食肉加工食品は、上述した食肉成分以外の素材を含んでもよく、たとえば、玉ねぎ、椎茸、ショウガ、たけのこ、キャベツ、ニラ等の野菜;
コーンスターチ、片栗粉、小麦粉、パン粉等の澱粉や穀粉;
全卵、卵白、卵黄等の鶏卵またはその成分;
大豆タンパク質、大豆粉等の植物タンパク質素材;
砂糖、食酢、酒、味醂、食塩、醤油、胡椒、ナツメグ、グルタミン酸ナトリウム、オイスターソース等の調味料;
ごま油、ラード(豚脂)、ネギ油等の食用油脂;
乳化剤;
香料;
酵素製剤、アルカリ製剤、リン酸塩等の食肉改良剤等の通常食品に用いられる素材を含んでもよい。
次に、本実施形態における食肉加工食品の製造方法を説明する。
本実施形態において、食肉加工食品の製造方法は、たとえば以下の工程を含む:
(食肉用呈味改善剤調製工程)前述した本実施形態における食肉用呈味改善剤の製造方法により食肉用呈味改善剤を得る工程;
(混合工程)食肉用呈味改善剤および食肉を混合して混合物を得る工程;および
(加熱調理工程)混合物を加熱調理して食肉加工食品を得る工程。
本実施形態において、混合工程における混合方法に制限はなく、たとえば、手で捏ねてもよいし、ミキサー等の機械で混合してもよい。
また、混合工程における食肉用呈味改善剤の添加量は、原料として用いる食肉の種類、形状等により設定できる。
食肉加工食品原料として用いる食肉100質量部に対する成分(A)の添加量としては、食肉の呈味増強効果を高める観点から、たとえば0.2質量部以上であり、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。また、食肉加工食品に異味が生じることを抑制する観点から、食肉100質量部に対する成分(A)の添加量としては、たとえば40質量部以下であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。
食肉加工食品原料として用いる食肉100質量部に対する加熱処理前のレシチン量が、食肉の呈味増強効果を高める観点から、たとえば0.001質量部以上であり、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上となるように成分(A)を添加する。また、食肉加工食品に異味が生じることを抑制する観点から、食肉加工食品原料として用いる食肉100質量部に対する加熱処理前のレシチン量が、たとえば0.5質量部以下であり、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下となるように成分(A)を添加する。
また、食肉加工食品原料として用いる食肉100質量部に対する成分(B)の添加量としては、食肉の呈味増強効果を高める観点から、たとえば0.1質量部以上であり、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。また、食肉加工食品の食感を維持する観点から、食肉加工食品原料として用いる食肉100質量部に対する成分(B)の添加量としては、たとえば50質量部以下であり、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
また、混合工程で得られる混合物全体に対する成分(A)の添加量としては、食肉の呈味増強効果を高める観点から、たとえば0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、食肉加工食品に異味が生じることを抑制する観点から、混合工程で得られる混合物全体に対する成分(A)の添加量としては、たとえば30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
また、混合工程で得られる混合物全体に対する加熱処理前のレシチン量が、食肉の呈味増強効果を高める観点から、たとえば0.001質量%以上であり、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上となるように成分(A)を添加する。また、食肉加工食品に異味が生じることを抑制する観点から、混合工程で得られる混合物全体に対する加熱処理前のレシチン量が、たとえば0.5質量%以下であり、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下となるように成分(A)を添加する。
また、混合工程で得られる混合物全体に対する成分(B)の添加量としては、食肉の呈味増強効果を高める観点から、たとえば0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、食肉加工食品の食感を維持する観点から、混合工程で得られる混合物全体に対する成分(B)の添加量としては、たとえば30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
加熱調理工程における加熱調理方法および条件は、食肉加工食品の種類に応じて適宜選択される。加熱調理方法として、たとえば、蒸し、ゆで、煮込み、焼成、油ちょう等のフライ、および、これらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
本実施形態において得られる食肉加工食品は、成分(A)および(B)を含む食肉用呈味改善剤が適用されたものであるため、食肉の好ましい呈味が増強されたものとすることができる。
また、本実施形態によれば、たとえば、食肉の好ましい呈味が増強されるとともに、肉の臭みが抑制された食肉加工食品を得ることも可能となる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 油脂組成物である成分(A)を準備する工程と、
澱粉組成物である成分(B)を準備する工程と、
を含む食肉用呈味改善剤の製造方法であって、
前記成分(A)を準備する工程が、
レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理して加熱処理レシチン含有油脂を得る工程と、
前記加熱処理レシチン含有油脂を含む前記成分(A)を準備する工程と、
を含み、
前記成分(B)の25℃における冷水膨潤度が7以上20以下であって、
前記成分(B)を準備する工程が、
アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×10 3 以上5×10 4 以下の低分子化澱粉を得る工程と、
前記成分(B)の原料に前記低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ前記低分子化澱粉と前記低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、前記原料をα化処理する工程と、
を含む、食肉用呈味改善剤の製造方法。
2. 加熱処理レシチン含有油脂を得る前記工程において、前記レシチン含有油脂を0.5時間以上240時間以下加熱処理する、1.に記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
3. 前記レシチン含有油脂がレシチンを添加した食用油である、1.または2.に記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
4. アミロース含量5質量%以上の前記澱粉の原料が、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチおよびタピオカ澱粉からなる群から選択される1種または2種以上である、1.乃至3.いずれか一つに記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
5. α化処理する前記工程における前記原料が、前記低分子化澱粉以外の前記澱粉として、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を含む、1.乃至4.いずれか一つに記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
6. 低分子化澱粉を得る前記工程における前記低分子化処理が酸処理である、1.乃至5.いずれか一つに記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
7. さらに、前記成分(A)と前記成分(B)とを混合する工程を含む、1.乃至6.いずれか一つに記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
8. 1.乃至7.いずれか一つに記載の食肉用呈味改善剤の製造方法により食肉用呈味改善剤を得る工程と、
前記食肉用呈味改善剤および食肉を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を加熱調理して食肉加工食品を得る工程と、
を含む、食肉加工食品の製造方法。
9. 前記食肉が、哺乳動物、鳥類および魚介類からなる群から選択される1または2以上の肉である、8.に記載の食肉加工食品の製造方法。
10. 前記食肉がミンチ状である、8.または9.に記載の食肉加工食品の製造方法。
11. 前記食肉加工食品が、焼売、餃子、ハンバーグ、肉まん、さつま揚げからなる群から選択される、8.乃至10.いずれか一つに記載の食肉加工食品の製造方法。
12. 食肉用呈味改善剤に用いられる油脂組成物である成分(A)の製造方法であって、
レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理して加熱処理レシチン含有油脂を得る工程と、
前記加熱処理レシチン含有油脂を含む前記成分(A)を準備する工程と、
を含む、成分(A)の製造方法。
13. 前記食肉用呈味改善剤が、澱粉組成物である成分(B)を含み、
前記成分(B)の25℃における冷水膨潤度が7以上20以下であって、
前記成分(B)が、
アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×10 3 以上5×10 4 以下の低分子化澱粉を得る工程と、
前記成分(B)の原料に前記低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ前記低分子化澱粉と前記低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、前記原料をα化処理する工程とを含む方法で製造される、12.に記載の成分(A)の製造方法。
14. 食肉用呈味改善剤に用いられ、25℃における冷水膨潤度が7以上20以下である澱粉組成物である成分(B)の製造方法であって、
アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×10 3 以上5×10 4 以下の低分子化澱粉を得る工程と、
前記成分(B)の原料に前記低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ前記低分子化澱粉と前記低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、前記原料をα化処理する工程と、
を含む、成分(B)の製造方法。
15. 前記食肉用呈味改善剤が、油脂組成物である成分(A)を含み、
前記成分(A)が、
レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理して加熱処理レシチン含有油脂を得る工程と、
前記加熱処理レシチン含有油脂を含む前記成分(A)を準備する工程とを含む方法で製造される、14.に記載の成分(B)の製造方法。
16. 食肉用呈味改善剤を食肉に適用する工程を含む、食肉加工食品の食肉の呈味を改善する方法であって、
前記食肉用呈味改善剤が、
12.または13.に記載の製造方法で製造される油脂組成物の成分(A)と、
14.または15.に記載の製造方法で製造される澱粉組成物の成分(B)と、
を含む、食肉加工食品の食肉の呈味を改善する方法。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の趣旨はこれらに限定されるものではない。
以下の例において、断りのない場合、「%」とは、「質量%」である。また、断りのない場合、「部」とは、「質量部」である。
(製造例1)
レシチンAY(株式会社J-オイルミルズ製;ペースト状レシチン、大豆由来、酸価 19.8、アセトン不溶物含量:65質量%) 5質量%、および、大豆油(製品名:J 大豆白絞油NS、株式会社J-オイルミルズ製) 95質量%を混合し、レシチン含有油脂とした。
得られたレシチン含有油脂を三口フラスコに加え、撹拌しながらオイルバスによる加熱をおこなった。120℃になるまで加熱した後、5時間保温した。保温後、冷却して加熱処理レシチン含有油脂を得た。紫外可視分光光度計UV-2450(株式会社島津製作所製)にて、1cmガラスセルを用いて波長400nmの吸光度を測定した結果、加熱処理レシチン含有油脂の測定値からレシチン含有油脂の測定値を引いた値は、3.8であった。
得られた加熱処理レシチン含有油脂 25質量%、および、菜種油(製品名:AJINOMOTOさらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製) 75質量%を混合し、成分(A)の油脂組成物として用いた。
なお、本例における油脂組成物中のレシチンAYの含有量は1.25質量%である。
(製造例2)
本例においては、レシチンAY 1.25質量%、および、大豆油 98.75質量%を混合し、レシチン含有油脂とした。
得られたレシチン含有油脂を、加熱処理せずに、油脂組成物として用いた。
(製造例3)
本例においては、成分(B)として、酸処理により得られた低分子化澱粉を用いて澱粉組成物を製造した。製造方法を以下に示す。
(酸処理ハイアミロースコーンスターチの作製方法)
ハイアミロースコーンスターチ(株式会社J-オイルミルズ製、HS-7、アミロース含量70質量%)を水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー重量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を以下の方法で測定したところ、ピーク分子量1.2×104であった。
(ピーク分子量の測定方法)
ピーク分子量の測定は、東ソー株式会社製HPLCユニットを使用して以下の手順でおこなった(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)。
(1)試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で目開き0.15mmを通過する粒度に調整した。この試料を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃で3分間加熱して完全に溶解した。0.45μmろ過フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25HP PTFE 0.45μm)を用いてろ過をおこない、ろ液を分析試料とした。
(2)以下の分析条件で分子量を測定した。
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)(東ソー株式会社製)2本
流速:0.5mL/min、移動相:5mM NaNO3含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液、カラム温度:40℃、分析量:0.2mL
(3)検出器データを、ソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver5.70、東ソー株式会社製)にて収集し、分子量ピークを計算した。検量線には、分子量既知のプルラン(昭和電工株式会社製、Shodex StandardP-82)を使用した。
(澱粉組成物の製造方法)
コーンスターチ(株式会社J-オイルミルズ製、コーンスターチY)79質量%、上述の方法で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチ(ピーク分子量1.2×104)20質量%、および、炭酸カルシウム1質量%を充分に均一になるまで袋内で混合した。2軸エクストルーダー(株式会社幸和工業製KEI-45)を用いて、混合物を加圧加熱処理した。処理条件は、以下の通りである。原料供給:450g/分、加水:17質量%、バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃および100℃、出口温度:100~110℃、スクリューの回転数250rpmとした。このようにしてエクストルーダー処理により得られたα化処理物を110℃にて乾燥し、水分含量を約10質量%に調整した。得られたα化処理物のα化度を後述する方法で測定したところ、51%であった。
次いで、乾燥したα化処理物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けし、目開き0.5mmの篩上の含有量が20質量%の澱粉組成物を成分(B)として得た。得られた澱粉組成物の冷水膨潤度を後述する方法で測定したところ、10.0であった。
(α化度の測定方法)
α化処理物中の澱粉のα化度測定は、β-アミラーゼ-プルラナーゼ(BAP)法によりおこなった。
(1)事前にα化処理物を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で目開き0.15mmを通過する粒度に調整したものを測定試料として用いた。
(2)澱粉科学第28巻第4号第235~240頁(1981年)の「β-アミラーゼ-プルラナーゼ(BAP)系を用いた澱粉の糊化度、老化度の新測定法」に記載される方法に準じて、α化処理物中の澱粉のα化度(%)を測定した。
(冷水膨潤度の測定方法)
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、電磁水分計:型番MX50)を用いて、130℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物重量を算出した。
(2)この乾燥物重量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃の恒温槽の中でゆるやかに撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離(遠心分離機:日立工機株式会社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプタ)し、沈殿層と上澄層に分けた。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層重量を測定し、これをB(g)とした。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの重量をC(g)とした。
(5)B/Cを冷水膨潤度とした。
また、以下の例においては、上記製造例で得られたものの他、以下の成分を用いた。
粒状蛋白(乾燥):不二製油株式会社製、フジニックエース400(大豆タンパク質)
粒状蛋白(2倍戻し):粒状蛋白1質量部に対して、水を1質量部添加して、膨化させたもの
スケソウダラスリミ:アメリカンシーフーズ社製、等級B
イトヨリスリミ:アピトウン・エンタープライズ産業株式会社製、等級A
ホッケスリミ:高野冷凍株式会社製、ホッケスリミ
澱粉A:川光物産株式会社製、コーンスターチ
(実施例1~7、比較例1~4)
本例では、焼売の作製および評価をおこなった。
(焼売の作製および評価方法)
1.表1または表2に記載の食肉用呈味改善剤(以下、「呈味改善剤」ともいう。)の成分を混合し、呈味改善剤を得た。ここで、澱粉組成物を配合する例では、事前に菜種油または油脂組成物と混合した後、しいたけのだし汁を加えて混合した。
2.すべての原材料、すなわち、1.で得られた呈味改善剤および表1または表2に記載の他の成分を混合して、中身餡を得た。
3.焼売の皮に、上記2.で得られた中身餡12~13gを包皮した。
4.蒸し器にて10分蒸煮し、各例の焼売を得た。
5.4.で得られた焼売の粗熱を取ったものを試食し、官能評価した。
評価は、3名の専門パネラーにておこない、合議により肉の味の強さを以下の基準で4段階評価した。○または◎のものを合格とした。評価結果を表1または表2にあわせて示す。
◎:コントロール(比較例1)より非常に強い
○:コントロール(比較例1)より強い
△:コントロール(比較例1)よりやや強い
×:コントロール(比較例1)と同等
Figure 0007153636000001
Figure 0007153636000002
表1および2より、各実施例で得られた焼売は、同じ表中に記載の比較例で得られた焼売に比べて、肉の味が増強されていた。
さらに具体的には、表1中、実施例1においては、柔らかさを強く感じ、ジューシー感をやや強く感じるとともに、肉の臭みおよび粒状蛋白由来の植物蛋白臭(以下、「植タン臭」ともよぶ。)が抑制されていた。
また、表2中、実施例2においては、ジューシー感と柔らかさを強く感じ、肉の臭みと植タン臭が抑制されていた。実施例3においては、ジューシー感を非常に強く感じ、柔らかさを強く感じ、肉の臭みと植タン臭が明らかに抑制されていた。実施例4においては、ジューシー感を強く柔らかさを非常に強く感じ、肉の臭みと植タン臭が抑制されていた。実施例5においては、ジューシー感と柔らかさをやや強く感じ、肉の臭みと植タン臭が抑制されていた。実施例6においては、ジューシー感をやや強く柔らかさを非常に強く感じ、肉の臭みと植タン臭が抑制されていた。実施例7においては、ジューシー感を強く柔らかさを非常に強く感じ、肉の臭みと植タン臭が抑制されていた。
(実施例8、比較例5~7)
本例では、ハンバーグの作製および評価をおこなった。
(ハンバーグの作製および評価方法)
1.事前に豚挽肉と牛挽肉、食塩を混ぜて冷蔵庫中に30分間静置した。
2.表3に記載の呈味改善剤の成分を混合し、呈味改善剤を得た。ここで、澱粉組成物を配合する例では、事前に菜種油または油脂組成物と混合した後、水を加えて混合した。
3.上記2.で得られた呈味改善剤と、表3に記載の原材料のうち、上記1.で得られたものと上記1.以外の原材料とを混合した。
4.上記3.で得られた混合物を50g/個になるように成型した。
5.フライパンを200℃に加熱し裏表各2分焼成した。
6.230℃に予熱させたオーブンで5分加熱して各例のハンバーグを得た。
7.粗熱を取った後冷凍保存し、試食時に65℃にレンジアップして評価した。
評価は、3名の専門パネラーにておこない、合議により肉の味の強さを以下の基準で4段階評価した。○または◎のものを合格とした。評価結果を表3にあわせて示す。
◎:コントロール(比較例5)より非常に強い
○:コントロール(比較例5)より強い
△:コントロール(比較例5)よりやや強い
×:コントロール(比較例5)と同等
Figure 0007153636000003
表3より、実施例で得られたハンバーグは、同じ表中に記載の比較例で得られたハンバーグに比べて、肉の味が増強されていた。
さらに具体的には、表3中、実施例8においては、柔らかさを強く感じ、肉の臭みや植タン臭が抑制されていた。
(実施例9、比較例8)
本例では、餃子の作製および評価をおこなった。
(餃子の作製および評価方法)
1.表4に記載の呈味改善剤の成分を混合し、呈味改善剤を得た。ここで、澱粉組成物を配合する例では、事前に澱粉組成物と油脂組成物とを混合した後、澱粉組成物の3倍量の水を加えて混合した。
2.上記1.で得られた呈味改善剤および表4に記載の他の原材料をすべて混合した。
3.上記2.で得られた中身餡を餃子生地(大判、分量外)に15gずつ包皮した。
4.フライパンを230℃に加熱し、上記3.で包皮したものを1分焼成した。
5.100g程度の水を投入し蓋をして3分蒸煮した。
6.蓋をとり3分焼成して各例の餃子を得た。
7.焼成直後については、上記6.で得られた餃子の粗熱を取った後に試食し評価した。
8.冷蔵保存後については、上記6.で得られた餃子を3時間冷蔵保存し、試食時に65℃にレンジアップして評価した。
評価は、3名の専門パネラーにておこない、合議により肉の味の強さを以下の基準で4段階評価した。○または◎のものを合格とした。評価結果を表4にあわせて示す。
◎:コントロール(比較例8)より非常に強い
○:コントロール(比較例8)より強い
△:コントロール(比較例8)よりやや強い
×:コントロール(比較例8)と同等
Figure 0007153636000004
表4より、実施例で得られた餃子は、同じ表中に記載の比較例で得られた餃子に比べて、肉の味が増強されていた。さらに具体的には、表4中、実施例9では、焼成直後においては中身餡の柔らかさをやや強く感じ、肉の臭みは抑制されていた。また、実施例9について、冷蔵保存後において、ジューシー感を強く感じるとともに中身餡の柔らかさと香ばしさをやや強く感じ、肉の臭みは抑制されていた。
(実施例10、比較例9)
本例では、肉まんの作製および評価をおこなった。
(肉まんの生地の作製方法)
肉まん生地の原材料として以下の成分を用いた。
強力粉 35.9質量%
薄力粉 20.5質量%
砂糖 2.8質量%
塩 0.3質量%
菜種油 1.8質量%
水 25.6質量%
牛乳 12.3質量%
ドライイースト 0.8質量%
合計 100.0質量%
上記成分を用いて、以下の手順で肉まん生地を作製した。
1.上記すべての原材料を、良く混ざるようにしっかりと捏ねた。
2.1.で得られた生地を50gずつに切り分けて、肉まん生地とした。
(中身餡の作製方法)
1.表5に記載の呈味改善剤の成分を混合し、呈味改善剤を得た。ここで、澱粉組成物を配合する例では、事前に澱粉組成物と油脂組成物とを混合した後、澱粉組成物の3倍量の水を加えて混合した。
2.上記1.で得られた呈味改善剤および表5に記載の他の原材料をすべて混合して、中身餡とした。
(肉まんの作製および評価方法)
1.中身餡30gを肉まん生地50gで包皮した。
2.上記1.で包皮したものを蒸し器にて15分蒸煮した。
3.蒸煮直後については、上記2.で得られた肉まんの粗熱を取ったものを試食し評価した。
4.冷凍保存後については、上記2.で得られた肉まんを7日間冷凍(-18℃)保存した後、試食時に65℃にレンジアップし評価した。
評価は、4名の専門パネラーにておこない、合議により肉の味の強さを以下の基準で4段階評価した。○または◎のものを合格とした。評価結果を表5にあわせて示す。
◎:コントロール(比較例9)より非常に強い
○:コントロール(比較例9)より強い
△:コントロール(比較例9)よりやや強い
×:コントロール(比較例9)と同等
Figure 0007153636000005
表5より、実施例で得られた肉まんは、同じ表中に記載の比較例で得られた肉まんに比べて、肉の味が増強されていた。さらに具体的には、表5中、実施例10においては、蒸煮直後においてはジューシー感を強く感じるとともに中身餡の柔らかさと香ばしさをやや強く感じ、肉の臭みは抑制されていた。また、実施例10について、冷凍保存後においては、ジューシー感と中身餡の柔らかさが非常に強く、肉の臭みと植タン臭は抑制されていた。
(実施例11、比較例10~12)
本例では、さつま揚げの作製および評価をおこなった。
(さつま揚げの作製および評価方法)
1.表6に記載の呈味改善剤の成分を混合し、呈味改善剤を得た。ここで、澱粉組成物を配合する例では、事前に菜種油または油脂組成物と混合した後、水を加えて混合した。
2.表6に記載の原材料のうち、冷凍のスリミを半解凍後、包丁でサイコロ状にカットし、さらにフードプロセッサーにて細かくした。
3.KENMIXミキサー(株式会社愛工舎製作所製)を用いて、2.で得られたスリミを30秒間混練した。その後、さらに氷冷水を加えて60秒間混練し、食塩を加えて90秒間混練した。そして、1.で得られた呈味改善剤および表6に記載の他の成分を加え90秒間混練した。
4.3.で得られた混合物を一口大の大きさにし、180℃にて4分間揚げ調理し、各例のさつま揚げを得た。
5.4.で得られたさつま揚げの粗熱を取ったものを試食し、官能評価した。
評価は、4名の専門パネラーにておこない、合議により魚の味の強さを以下の基準で4段階評価した。○または◎のものを合格とした。評価結果を表6にあわせて示す。
◎:コントロール(比較例10)より非常に強い
○:コントロール(比較例10)より強い
△:コントロール(比較例10)よりやや強い
×:コントロール(比較例10)と同等
Figure 0007153636000006
表6より、実施例で得られたさつま揚げは、同じ表中に記載の比較例で得られたさつま揚げに比べて、魚の味が増強されていた。さらに具体的には、表6中、実施例11においては、香ばしさを強く感じ、魚の臭みは抑制されていた。
(製造例7-1~7-9、8-1~8-8および9-1~9-5)
(加熱処理レシチン含有油脂の製造例)
レシチン含有油脂に使用した食用油の種類、使用するレシチンの種類、レシチンの添加量、加熱温度及び加熱時間を表7乃至表9に記載のように変えた以外は製造例1に従って、加熱処理レシチン含有油脂を製造した。また、表7には加熱処理後のレシチン含有油脂の吸光度(400nm)と加熱処理前のレシチン含有油脂の吸光度(400nm)との吸光度差を記載した。なお、表7乃至表9で使用した食用油およびレシチンは下記の通りである。
菜種油:株式会社J-オイルミルズ製、AJINOMOTO さらさらキャノーラ油
パームオレイン:株式会社J-オイルミルズ製、ヨウ素価67
FA:株式会社J-オイルミルズ製、レシチンFA(ペースト状レシチン、大豆由来、酸価23.7、アセトン不溶物含量:65質量%)
SA:辻製油株式会社製、SLP-パウダーA(分別レシチン、大豆由来)
RL:築野食品工業株式会社製(ペースト状レシチン、米糠由来)
Figure 0007153636000007
Figure 0007153636000008
Figure 0007153636000009
(製造例10-1~10-4)
(澱粉組成物の製造例1)
酸処理ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチおよび炭酸カルシウムの配合割合を表10に変えた以外は製造例3に従って、澱粉組成物を製造した。表10の澱粉組成物の粒度は澱粉組成物によって異なるが、JIS-Z8801-1規格の目開き0.5mm篩の篩上含有量が20~40質量%であった。各例における澱粉組成物の配合および分析結果を表10に示す。
Figure 0007153636000010
(製造例11-1~11-3)
(澱粉組成物の製造例2)
表11のように酸処理に使用した原料澱粉をハイアミロースコーンスターチに代えてコーンスターチ(株式会社J-オイルミルズ製、アミロース含量25質量%)もしくはタピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製、アミロース含量16質量%)に変えたことおよび酸処理澱粉、コーンスターチおよび炭酸カルシウムの配合割合を変えたこと以外は製造例3に従って、澱粉組成物を製造した。各例における澱粉組成物の配合および分析結果を表11に示す。
Figure 0007153636000011
(製造例12-1~12-3)
(澱粉組成物の製造例3)
ハイアミロースコーンスターチの酸処理時間を表12に記載のように変えた以外は製造例3に従って澱粉組成物を製造した。各例における澱粉組成物の配合および分析結果を表12に示す。
Figure 0007153636000012
(製造例13-1~13-3)
(澱粉組成物の製造例4)
澱粉組成物に配合するコーンスターチに代えて、リン酸架橋小麦澱粉(株式会社J-オイルミルズ製、ジェルコールWP)、馬鈴薯澱粉(株式会社J-オイルミルズ製)もしくはリン酸架橋タピオカ澱粉(株式会社J-オイルミルズ製、ジェルコールTP-1)に変えた以外は製造例3に従って澱粉組成物を製造した。各例における澱粉組成物の配合および分析結果を表13に示す。
Figure 0007153636000013
この出願は、2017年4月20日に出願された日本出願特願2017-083430号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。

Claims (12)

  1. 食肉本来の味を増強する食肉用呈味改善剤であって、
    油脂組成物である成分(A)と、
    澱粉組成物である成分(B)と、
    を含み、
    前記成分(A)が、レシチン含有油脂の70℃以上160℃以下の温度での加熱処理物である加熱処理レシチン含有油脂を含み、
    前記成分(B)が、アミロース含量5質量%以上の澱粉の低分子化澱粉を前記成分(B)中に3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10 3 以上5×10 4 以下であり、
    前記成分(B)中の前記低分子化澱粉と前記低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上であり、
    前記成分(B)の冷水膨潤度が7以上20以下であり、
    当該食肉用呈味改善剤における前記成分(A)の配合量に対する前記成分(B)の配合量の質量比((B)/(A))が0.3以上4以下である、食肉用呈味改善剤。
  2. 請求項1に記載の食肉用呈味改善剤を製造する方法であって、
    前記成分(A)を準備する工程と、
    前記成分(B)を準備する工程と、
    前記成分(A)と前記成分(B)とを混合する工程と、
    を含
    前記成分(A)を準備する工程が、
    前記レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理して前記加熱処理レシチン含有油脂を得る工程と、
    前記加熱処理レシチン含有油脂を含む前記成分(A)を準備する工程と、
    を含み
    記成分(B)を準備する工程が、
    アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×103以上5×104以下の前記低分子化澱粉を得る工程と、
    前記成分(B)の原料に前記低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ前記低分子化澱粉と前記低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、前記原料をα化処理する工程と、
    を含み、
    混合する前記工程において、前記質量比((B)/(A))が0.3以上4以下となるように前記成分(A)および前記成分(B)を混合する、食肉用呈味改善剤の製造方法。
  3. 加熱処理レシチン含有油脂を得る前記工程において、前記レシチン含有油脂を0.5時間以上240時間以下加熱処理する、請求項に記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
  4. 前記レシチン含有油脂がレシチンを添加した食用油である、請求項またはに記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
  5. アミロース含量5質量%以上の前記澱粉の原料が、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチおよびタピオカ澱粉からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項乃至いずれか一項に記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
  6. α化処理する前記工程における前記原料が、前記低分子化澱粉以外の前記澱粉として、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項乃至いずれか一項に記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
  7. 低分子化澱粉を得る前記工程における前記低分子化処理が酸処理である、請求項乃至いずれか一項に記載の食肉用呈味改善剤の製造方法。
  8. 請求項乃至7いずれか一項に記載の食肉用呈味改善剤の製造方法により食肉用呈味改善剤を得る工程と、
    前記食肉用呈味改善剤および食肉を混合して混合物を得る工程と、
    前記混合物を加熱調理して食肉加工食品を得る工程と、
    を含む、食肉加工食品の製造方法。
  9. 前記食肉が、哺乳動物、鳥類および魚介類からなる群から選択される1または2以上の肉である、請求項8に記載の食肉加工食品の製造方法。
  10. 前記食肉がミンチ状である、請求項8または9に記載の食肉加工食品の製造方法。
  11. 前記食肉加工食品が、焼売、餃子、ハンバーグ、肉まん、さつま揚げからなる群から選択される、請求項8乃至10いずれか一項に記載の食肉加工食品の製造方法。
  12. 請求項1に記載の食肉用呈味改善剤を食肉に適用する工程を含み、前記食肉本来の味を増強する方法である、食肉加工食品の食肉の呈味を改善する方法。
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