JP7153161B2 - シールリングおよび油圧機器 - Google Patents

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本発明は、オートマチックトランスミッション(以下、ATと記す)や無段変速機(以下、CVTと記す)など、油圧作動油などの流体の流体圧を利用した機器において、該流体を封止するために使用されるシールリング、および該シールリングを備える油圧機器に関する。
AT、CVTなどの機器では、作動油を密封するためのシールリングが要所に取り付けられている。例えば、ハウジングの軸孔に挿通される回転軸に設けられた対の離間した環状溝に取り付けられ、両環状溝間にある油路から供給される作動油を両シールリングの側面と内周面で受け、反対側の側面と外周面とで環状溝の側壁とハウジング内周面とをシールする。シールリングにおける各シール面は、環状溝の側壁、ハウジング内周面とそれぞれ摺動接触しつつ、両シールリング間の作動油の油圧を保持している。
従来、このようなシールリングとして、射出成形によって得られる合成樹脂製のシールリングが知られている(例えば、特許文献1参照)。このシールリングは略矩形断面の環状体であり、周方向の一箇所に合い口を有する。合い口は、相補的に嵌合する一対の端部で構成され、例えば、一方の合い口は、シールリング内径面側に突き合わせ面と、外径面側に突き合わせ面から突出したリップおよび後退したポケットとを有し、他方の合口は、上記突き合わせ面、上記リップおよびポケットと、相補的に嵌合するように形成された突き合わせ面、ポケットおよびリップとを有する複合ステップカットの合い口などが採用されている。
特開平09-100919号公報
射出成形によって得られた合成樹脂製のシールリングは、弾性変形により拡径して回転軸の環状溝に装着された後、ハウジング内径に組み付けられる。図11には、従来のシールリング51を装着した回転軸61をハウジング62内に組み付ける際の状態を示す。図11に示すように、回転軸61をハウジング62の一端側から挿入して組み付ける。ハウジング62の開口端部にはテーパ部62aが形成されている。しかしながら、偏芯などによってシールリング51の外周面がハウジング62のテーパ部62aよりも径方向外側に位置する場合がある。このような場合、シールリング51のリング側面52がハウジングの端面62bに接触することで、シールリング51にかじりなどの不具合が発生するおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ハウジング組み付け時のかじりなどの発生を抑制でき、低リーク性を維持できるシールリング、および該シールリングを備える油圧機器を提供することを目的とする。
本発明のシールリングは、ハウジングの軸孔に挿通される回転軸に設けられた環状溝に装着されて、該環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動自在に接触し、かつ上記軸孔の内周面に接触して、これら回転軸と軸孔との間の環状隙間を封止するシールリングであって、上記シールリングは、樹脂組成物の射出成形体であり、外周面の一端側または両端側に傾斜部を備え、少なくとも一方の上記傾斜部は、上記リング側面に接続した傾斜面と、上記外周面に対して略垂直に接続した段差面とを有し、上記段差面は、上記傾斜面を延長した仮想平面よりもリング径方向の内側に位置することを特徴とする。
上記段差面は、成形金型の型割によって形成される面であり、上記段差面と上記外周面とによって型割段差が形成されることを特徴とする。
上記シールリングの軸方向断面において、上記外周面に対する上記傾斜面の傾斜角度が20度~60度であることを特徴とする。
上記シールリングは、周方向の一部に複合ステップカットの合い口を有していることを特徴とする。
上記樹脂組成物のベース樹脂が、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、またはポリアミドイミド(PAI)樹脂であることを特徴とする。
本発明の油圧機器は、ハウジングと、上記ハウジングの軸孔に挿通される回転軸と、上記回転軸に設けられた環状溝に装着されたシールリングとを備える油圧機器であって、上記シールリングは、樹脂組成物の射出成形体であり、外周面の一端側または両端側に傾斜部を備え、少なくとも一方の上記傾斜部は、上記リング側面に接続した傾斜面と、上記外周面に対して略垂直に接続した段差面とを有し、上記段差面は、上記傾斜面を延長した仮想平面よりもリング径方向の内側に位置することを特徴とする。
本発明のシールリングは、樹脂組成物の射出成形体であり、外周面の一端側または両端側に傾斜部を備え、少なくとも一方の傾斜部は、リング側面に接続した傾斜面と、外周面に対して略垂直に接続した段差面とを有し、段差面は、傾斜面を延長した仮想平面よりもリング径方向の内側に位置するので、シールリングをハウジングに挿入して組み付ける際に、外径側端部の段差面が、ハウジングの端面に当たることを抑制でき、かじりの発生を防止できる。これにより、リング側面のシール面に打痕などの傷付きが防止されるため、シールリングの低リーク性を維持できる。
シールリングの軸方向断面において、外周面に対する傾斜面の傾斜角度が20度~60度であるので、回転軸に対してシールリングの偏芯が大きい場合や、ハウジングの端面が当たった場合でも、かじりの発生を抑制できる。
シールリングは、周方向の一部に複合ステップカットの合い口を有しているので、シール性が特に優れる。また、樹脂組成物のベース樹脂が、PEK樹脂、PEEK樹脂、PPS樹脂、またはPAI樹脂であるので、曲げ弾性率、耐熱性などに優れ、溝に組み込む際に拡径しても割れることがなく、シールする作動油などの温度が高くなる場合でも使用できる。
本発明の油圧機器は、ハウジングと、ハウジングの軸孔に挿通される回転軸と、回転軸に設けられた環状溝に装着されたシールリングとを備え、該シールリングが本発明のシールリングであるので、ハウジング組み付け時のシールリングのかじりなどの発生を抑制でき、低オイルリーク性を維持できる。
本発明のシールリングの一例を示す平面図である。 図1のシールリングの断面図および一部拡大図である。 傾斜面と段差面の位置関係を説明するための図である。 図1のシールリングをハウジングに組み付ける際の状態を示す図である。 図1のシールリングを環状溝に組み込んだ状態を示す断面図である。 射出成形時の成形金型の断面図である。 離型工程を示す断面図である。 実施例1~4のシールリングの断面図である。 比較例1~2のシールリングの断面図である。 シールリングのオイルリーク量の測定試験の概略図である。 従来のシールリングをハウジングに組み付ける際の状態を示す図である。
本発明のシールリングの一例を図1~図2に基づいて説明する。図1はシールリングの平面図であり、図2(a)はA-A線断面図であり、図2(b)はその一部拡大図である。図1に示すように、シールリング1は、金型を用いた射出成形によって形成される断面が略矩形の環状体である。シールリング1は、周方向の一箇所に合い口10を有するカットタイプのリングであり、弾性変形により拡径して環状溝に装着される。合い口10は一対の端部から構成される。一対の端部の形状については、ストレートカット、アングルカットなどにすることも可能であるが、シール性に優れることから、図1に示す複合ステップカットを採用することが好ましい。
シールリングの大きさ(外径φ、内径φ、リング幅(径方向長さ)、リング厚み(軸方向長さ)など)は、用途などによって適宜設定される。例えば、シールリングの内径φは9mm~75mmであり、外径φは13mm~80mmである。
シールリング1において、リング側面4が環状溝の側壁面との摺動面となる。図2(a)に示すように、リング内周面2とリング側面4との角部には、射出成形時において金型からの突出し部分となる段部5が設けられている。図2(a)では、段部5は両側に設けられている。また、リング外周面3とリング側面4との角部には、傾斜部6が設けられている。傾斜部6は、リング全周にわたり環状溝の側壁面との非接触部となる。なお、リング側面4の内径側端部には、凹部からなる複数の潤滑溝が周方向に離間して形成されていてもよい。
傾斜部6についてさらに説明する。図2(b)に示すように、傾斜部6は、リング側面4に接続された傾斜面7と、リング外周面3に対して垂直に接続された段差面8と、接続面9とを有する。本発明において、段差面8は金型の型割によって形成される面(型割面とも言う)である。シールリング1に傾斜部6を設けた場合、リング側面4の延長線上に型割面を持ってくると、金型から離型する際に傾斜部6がアンダーカットとなってしまい、成形体を金型から取り出しにくい。そのため、本発明では、金型の型割面をシールリングの段差面8の延長線上に配置している。その上で、リング径方向における段差面8の幅Wを0.1mm以下としている。このように型割段差を小さくすることで、シールリングのかじりなどの不具合を防止している。特に、幅Wは0.01mm~0.05mmが好ましい。
図2に示すシールリング1は、リング外周面3の両側に傾斜部を設けている。その両側の傾斜部のうち、一方の傾斜部(傾斜部6)が段差面8を有し、他方の傾斜部は傾斜面のみで構成されている。段差面8は、少なくとも一方側の傾斜部に形成すればよいが、両側の傾斜部に対称に形成してもよい。
傾斜面7の摺動面からの深さは、リング径方向の外側に向けて深くなり、リング軸方向には一定である。シールリング1の軸方向断面において、リング外周面3に対する傾斜面7の傾斜角α(図2(a)参照)は、例えば20度~60度である。傾斜角αは、好ましくは30度~50度であり、より好ましくは30度~45度であり、さらに好ましくは40度~45度である。傾斜角αが20度未満であると、シールリングの偏芯(環状溝からの飛び出し)が大きい場合にハウジングの端面に当たりやすくなり、かじりが発生するおそれがある。また、傾斜角αが60度を超えると、ハウジングの端面に当たった際にシールリングがスムーズにならわず、段差面8に引っかかり気味となり微小なかじりが発生するおそれがある。
また、図2のシールリング1では、傾斜面7と段差面8との間に、リング側面4に対し垂直な接続面9が設けられている。接続面9を設けることで、段差面8を傾斜部内に収めやすくなる。なお、接続面9は、リング側面4に対して略垂直な面であればよく、平面で構成されても曲面で構成されてもよい。リング軸方向における接続面9の厚みTは、特に限定されないが、段差面8の幅Wよりも大きいことが好ましい。具体的な寸法として、厚みTは、例えば0.05mm~0.3mmであることが好ましい。より好ましくは0.05mm~0.1mmである。
図3(a)では、傾斜面と段差面の位置関係を説明する。図3(a)に示すように、傾斜面7を延長した仮想平面をFとすると、段差面8は、仮想平面Fよりもリング径方向の内側に位置している。言い換えると、外周面3と段差面8との境界である角部Pは仮想平面Fから径方向外側に突出しない。このように段差面8を傾斜部の内側にすることで、ハウジングのテーパ部に傾斜面7を当てて押し込む際にも、段差面8(角部Pを含む)がハウジングの端面に当たることを抑制でき、かじりを防止できる。
図3(b)には、傾斜部の段差面の変形例を示している。図3(b)に示すように、段差面8’は外周面3に対して略垂直な曲面で形成され、外周面3と段差面8との境界部がR状に形成されている。段差面8’は、例えば、図3(a)に示す角部Pをバレル研磨などによって研磨することで得られる。境界部をR状とすることで、段差面8’のかじりを一層防止できる。なお、図3(b)の変形例においても、段差面8’は仮想平面Fよりもリング径方向の内側に位置している。
図4には、ハウジング組み付け時の状態を示す。図4では、シールリング1とハウジング22は断面を示している。シールリング1は、まず治具(図示省略)を用いて拡径されて、回転軸21の環状溝21aに装着される。シールリング1を装着した状態で回転軸21をハウジング22に挿入して組み付ける。図4に示すように、ハウジングの開口端部には、傾斜面(例えば傾斜角30度~50度)からなるテーパ部22aが施されている。しかし、ハウジングの壁部の肉厚が小さい場合や、シールリングに干渉しない程度に十分なテーパが形成できない場合には、偏芯によってシールリングの外周面がハウジングのテーパ部よりも外側に位置することがある。そのような場合、シールリングのリング側面がハウジングの端面に当たることでかじりが発生するおそれがある(図11参照)。
図4(b)に示すように、本発明に係るシールリングは、リング外周面3の一端側に、上述した傾斜面7および段差面8を有する傾斜部が形成されているので、シールリングの偏芯量が大きくなった場合であっても、リング側面4と傾斜面7との境界部である傾斜角部6aを、ハウジング22のテーパ部22a内に収めやすく、つまり傾斜角部6aをテーパ部径Rの内側に位置させやすくできるとともに、段差面8の幅が小さいので、ハウジング22の端面22bが段差面8に当たることを抑制でき、かじりの発生を防止できる。
シールリング1の傾斜角部6aを、ハウジング22のテーパ部22a内に収めるために、シールリング1の傾斜寸法Wが設定される。傾斜寸法Wは、リング径方向におけるリング外周面3から傾斜角部6aまでの距離であり、シールリング1の自由状態の外径φ、リング厚みW、環状溝の深さh、ハウジングのテーパ部径R、組み付け時の落込みによる最大偏芯量によって設定される。リング厚みWは、リング外周面3からリング内周面2までの距離であり、環状溝の深さhは、回転軸21の外周端面から環状溝21aの底部までの径方向長さであり、ハウジングのテーパ部径Rは、ハウジング22のテーパ部22aの外周径である。ここで、最大偏芯量は、シールリングが環状溝に落ち込んだ際に、反対側の部分が環状溝からはみ出す距離の最大値である。最大偏芯量は、各寸法(外径φ、W、h、R)が変化する場合にあっては、外径φの最大値、リング厚みWの最小値、環状溝の深さhの最大値、テーパ部径Rの最小値を用いて設定される。このように設定することで、シールリング1の最大偏芯時であっても、シールリング1の傾斜角部6aをハウジング22のテーパ部22a内に位置させることができ、シールリングをスムーズに挿入できる。
シールリングの使用形態の概略を図5に基づいて説明する。シールリング1は、ハウジングの軸孔22cに挿通される回転軸21に設けられた環状溝21aに装着される。図中の矢印が作動油からの圧力が加わる方向であり、図中右側が非密封流体側である。シールリング1は、そのリング側面4で、環状溝21aの非密封流体側の側壁面21bに摺動自在に接触している。また、その外周面3で軸孔22cの内周面に接触している。このシール構造により、回転軸21と軸孔22cとの間の環状隙間を封止している。また、作動油は用途に応じた種類が適宜用いられる。例えば、油温として-30~150℃程度、油圧として0~3.0MPa程度、回転軸の回転数として0~7000rpm程度の条件で使用される。
本発明のシールリングは、樹脂組成物の射出成形体である。樹脂組成物のベース樹脂としては、射出成形可能な合成樹脂であれば任意のものを使用できる。例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂、PEK樹脂、PEEK樹脂、PPS樹脂、PAI樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、フェノール(PF)樹脂などが挙げられる。なお、これらの樹脂は単独で使用しても、2種類以上混合したポリマーアロイとしてもよい。これらの樹脂の中でも特に、摩擦摩耗特性、曲げ弾性率、耐熱性、摺動性などに優れることから、PEK樹脂、PEEK樹脂、PPS樹脂、またはPAI樹脂をベース樹脂として用いることが好ましい。これらの樹脂は高い弾性率を有し、環状溝に組み込む際に拡径しても割れ難く、シールする作動油の油温が高くなる場合でも使用でき、また、ソルベントクラックの心配もない。
また、必要に応じて上記ベース樹脂に、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの繊維状補強材、球状シリカや球状炭素などの球状充填材、マイカやタルクなどの鱗状補強材、チタン酸カリウムウィスカなどの微小繊維補強材を配合できる。また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの摺動補強材、カーボンブラックなどの顔料も配合できる。これらは単独で配合することも、組み合せて配合することもできる。
以上の諸原材料を溶融混練して成形用ペレットとし、これを用いて射出成形法により所定形状に成形する。図6には成形金型の断面図を示す。図6に示すように、成形金型は、固定側金型23と、可動側金型24と、コアピン25とを有する。成形金型において、衝合面PLで衝合された固定側金型23および可動側金型24と、コアピン25によってキャビティ26が形成される。溶融状態の樹脂組成物がキャビティ26に充填され、保圧を経た後、一定時間冷却して成形体27が得られる。成形体27の段差面27aを含む傾斜部は、固定側金型23によって形成される。衝合面PLにおいて、固定側金型23の端部(シールリング外周方向側のPL面)は、可動側金型24の端部(シールリング外周方向側のPL面)よりもキャビティ26に向けて突出しており、この端部の位置の違いによって型割段差(段差面8)が生じる。
続いて、固定側金型と可動側金型を型開きして成形体を取り出す。図7では、離型工程を段階的に示している。図7(a)では、固定側金型23と可動側金型24が衝合面で型割される。型開きの後、コアピン25が固定側金型23に向けて前進することで、成形体27が可動側金型24から離型する(図7(b))。コアピン25の段部25aによって、シールリングの内径側端部の段部が形成される。図7(c)に示すように、コアピン25がさらに前進することで、成形体27が成形金型から取り出される。取り出された成形体27の合い口は、一対の端部が相互に離れた状態となっているが、熱固定などによって閉じられ、図1に示すようなシールリング1が得られる。
実施例1~実施例4
PEEK樹脂をベース樹脂として、炭素繊維およびPTFE樹脂を配合した樹脂組成物を用いて、図8に示すそれぞれの形状のシールリングを射出成形により製造した。実施例1~実施例4のシールリングの各寸法は、外径φ32mm、内径φ28mm、リング幅(径方向長さ)2mm、リング厚み(軸方向長さ)2.3mmである。各実施例のシールリングには、傾斜面7と段差面8と接続面9とを有する傾斜部が形成されており、段差面の幅W(図2参照)は0.05mmである。傾斜面の傾斜角θはそれぞれ異なっており、実施例1が40度、実施例2が30度、実施例3が60度、実施例4が20度である。
比較例1
PEEK樹脂をベース樹脂として、炭素繊維およびPTFE樹脂を配合した樹脂組成物を用いて、図9に示す形状のシールリングを射出成形により製造した。このシールリングの各寸法は、外径φ32mm、内径φ28mm、リング幅2mm、リング厚み2.3mmである。
比較例2
PEEK樹脂をベース樹脂として、炭素繊維およびPTFE樹脂を配合した樹脂組成物を用いて、図9に示す形状のシールリングを射出成形により製造した。このシールリングの各寸法は、外径φ32mm、内径φ28mm、リング幅2mm、リング厚み2.3mmである。比較例2のシールリングは、外周面の両側に傾斜部が形成されている。この傾斜部は、リング側面に対し垂直に接続された面と、リング外周面に対し垂直に接続された面とが傾斜面で接続された形状となっている。傾斜部寸法Wは、0.4mmであり、本発明に係る段差面に相当する面の幅Wは、0.2mmである。
<組み込み試験>
得られた各シールリングの組み込み性について評価した。各シールリングを図4に示すように回転軸の環状溝(深さh2.2mm)に装着した状態で、ハウジング(テーパ部径R34.5mm、テーパ部の傾斜角45度)に挿入した。各シールリングについて、偏芯量をそれぞれ変更して組み込み性を4段階(A~D)で評価した。かじりが無い場合をA、かじりが微小の場合をB、かじりが小さい場合をC、かじりが大きい場合をDと評価した。結果を表1に示す。
Figure 0007153161000001
表1に示すように、偏芯がない場合は、いずれのシールリングもかじりが発生しなかったが、偏芯量が大きくなるにしたがって、かじりの程度が大きくなる傾向が見られた。偏芯量0.6mmの場合、実施例1~実施例4では、ほとんどかじりが見られなかったのに対して、比較例1~比較例2では、それぞれ角部Pで大きなかじりが見られた。比較例2は、傾斜部が形成されており、傾斜角部Qはハウジングのテーパ部内に位置しているが、角部Pを含む段差面の幅Wが大きいため、かじりが発生した。実施例1~実施例3の中でも、特に、傾斜面7の傾斜角が40度(実施例1)、30度(実施例2)のシールリングは、偏芯量が0.7mmと大きい場合でもほとんどかじりが見られなかった。なお、この場合、実施例3(傾斜角θ=60度)のシールリングは、段差面でやや引っかかり気味となり、小さなかじりが発生した。
<オイルリーク試験>
得られた各シールリングのオイルリーク量を、図10に示す試験機により評価した。図10は試験機の概略図である。相手軸28の環状溝にシールリング30、30’を装着した。シールリングには、上記組み込み試験を実施する前のシールリングと、上記組み込み試験を実施した後(偏芯0.7mm)のシールリングをそれぞれ用いた。モータ31の回転によって、シールリング30、30’は、相手軸28の環状溝側壁と、ハウジング29の軸孔内周面と摺接する。油圧ユニット32より油を圧送して、シールリング30と30’との間の環状隙間に供給した。オイルリーク試験の条件は、油圧800kPa、回転数2000rpm、油温80℃とし、オイルにはATFを用いた。この試験機により、オイルリーク量(ml/min)を測定した。オイルリーク量は、試験開始から5分経過後において測定した値に基づくものである。結果を表2に示す。
Figure 0007153161000002
表2に示すように、組み込み試験前については、いずれの試験例もほぼ同程度のオイルリーク量を示した。一方、組み込み試験後については、実施例1、2は、オイルリーク量にほとんど変化は見られなかった。上述したように、かじりがほとんど発生しなかったため、組み込みによっても低オイルリーク性が維持された。これに対して、比較例1、2は、組み込みによってオイルリーク量が大幅に増加した。これらのシールリングは組み込みに伴うかじりが大きかったため、側壁面や軸孔とのシール性が低下したと考えられる。なお、実施例3~4もオイルリーク量が増加する結果となったが、偏芯量(例えば偏芯0.6mmなど)によっては、低オイルリーク性が維持されると考えられる。
本発明のシールリングは、ハウジング組み付け時のかじりなどの発生を抑制でき、低リーク性を維持できるので、回転軸とハウジングとの間で低リーク性が要求されるシールリングとして使用できる。特に、自動車等におけるATやCVTなどの油圧機器に燃費向上のために好適に使用できる。
1 シールリング
2 リング内周面
3 リング外周面
4 リング側面
5 段部
6 傾斜部
7 傾斜面
8、8’ 段差面
9 接続面
10 合い口
21 回転軸
22 ハウジング
23 固定側金型
24 可動側金型
25 コアピン
26 キャビティ
27 成形体
28 相手軸
29 ハウジング
30、30’ シールリング
31 モータ
32 油圧ユニット

Claims (6)

  1. ハウジングの軸孔に挿通される回転軸に設けられた環状溝に装着されて、該環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動自在に接触し、かつ前記軸孔の内周面に接触して、これら回転軸と軸孔との間の環状隙間を封止するシールリングであって、
    前記シールリングは、樹脂組成物の射出成形体であり、外周面の一端側または両端側に傾斜部を備え、
    少なくとも一方の前記傾斜部は、リング側面に接続した傾斜面と、前記外周面に対して略垂直に接続した段差面とを有し、前記段差面は、前記傾斜面を延長した仮想平面よりもリング径方向の内側に位置することを特徴とするシールリング。
  2. 前記シールリングの軸方向断面において、前記外周面に対する前記傾斜面の傾斜角度が20度~60度であることを特徴とする請求項1記載のシールリング。
  3. 前記シールリングは、周方向の一部に複合ステップカットの合い口を有していることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシールリング。
  4. 前記樹脂組成物のベース樹脂が、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、またはポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項記載のシールリング。
  5. ハウジングと、前記ハウジングの軸孔に挿通される回転軸と、前記回転軸に設けられた環状溝に装着されたシールリングとを備える油圧機器であって、
    前記シールリングは、樹脂組成物の射出成形体であり、外周面の一端側または両端側に傾斜部を備え、少なくとも一方の前記傾斜部は、リング側面に接続した傾斜面と、前記外周面に対して略垂直に接続した段差面とを有し、前記段差面は、前記傾斜面を延長した仮想平面よりもリング径方向の内側に位置することを特徴とする油圧機器。
  6. ハウジングの軸孔に挿通される回転軸に設けられた環状溝に装着されて、該環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動自在に接触し、かつ前記軸孔の内周面に接触して、これら回転軸と軸孔との間の環状隙間を封止するシールリングの製造方法であって、
    前記シールリングは、樹脂組成物の射出成形体であり、外周面の一端側または両端側に傾斜部を備え、少なくとも一方の前記傾斜部は、リング側面に接続した傾斜面と、前記外周面に対して略垂直に接続した段差面とを有し、前記段差面は、前記傾斜面を延長した仮想平面よりもリング径方向の内側に位置し、
    前記段差面は、成形金型の型割によって形成される面であり、前記段差面と前記外周面とによって型割段差が形成されることを特徴とするシールリングの製造方法。
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