JP2023084054A - バタフライバルブのシールリング - Google Patents
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Abstract
【課題】シールリングの形状によらず、優れた平面形状を有するバタフライバルブのシールリングを提供する。【解決手段】シールリング1は、バタフライバルブの弁体外周に設けられ、周方向の一部に合い口5を有する樹脂組成物の射出成形体であり、側面4に溝6が形成されており、該溝6の形成箇所におけるシールリング1の軸方向断面は略コの字状であり、シールリング1の円周中心点Oに対して合い口5の位置を0°としたとき、45°を超え135°未満又は225°を超え315°未満の範囲の少なくとも一方にゲート痕7が形成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、排気ガスなどの気体を利用した機器において、該気体をシール(封止)するために使用されるバタフライバルブのシールリングに関する。
内燃機関の排気再循環(EGR)システムでは、排気ガスの流量をコントロールするためのEGRバルブにシールリングが取り付けられている。EGRシステムは、排気の一部を吸気系に戻し、混合気が燃焼する時の最高温度を低くしてNOxの生成量を抑える装置である。EGRバルブは、EGR流路(ハウジング)内に回動可能に設けられるバタフライバルブであり、該バルブの開度を調整することで再循環する排気ガスの量がコントロールされる。略円板状のEGRバルブ(弁体)の外周には環状溝が設けられており、この環状溝にシールリングが装着される。
このようなEGRバルブのシールリングとして、特許文献1のシールリングが知られている。このシールリングは、樹脂製のシールリングであり、該シールリングの径方向の幅の範囲内に環状に金属製のスプリングが配置される。このスプリングは、シールリングに作用する圧力またはシールリングの変形に応じて、シールリングを径外方向および径内方向に押圧可能となっている。スプリングは、シールリングの軸方向一方の端面に形成された溝に収容され、当該溝の形成箇所におけるシールリングの軸方向断面は略コの字状に形成されている。
また、特許文献2には、リングの肉厚が、自由状態のリング外径の7%~11%であり、バルブの開放時において封止流体の圧力により拡径された状態のリング内径が、バルブの外径よりも小さい、樹脂製のシールリングが開示されている。このシールリングは、リングの幅(軸方向寸法)に対してリングの肉厚(径方向寸法)が大きくなっている。
一般に、樹脂製のバタフライバルブのシールリングは射出成形によって製造される。射出成形時において、ゲートをシールリングの全長中央に設けることは公知技術であり(例えば特許文献3参照)、シールリングをバランス良く製造する成形技術として、現在用いられる通常技術である。
しかしながら、例えば特許文献1のような略コの字状の断面を有するシールリングを、上記通常技術に倣って、シールリング全長中央にゲートを配置して製造すると、平面形状が低下する傾向が見られた。一般に、シールリングの平面形状が低下すると、エアリーク(ガスリーク)が大きくなり、バタフライバルブの機能が低下するおそれがある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、シールリングの形状によらず、優れた平面形状を有するバタフライバルブのシールリングを提供することを目的とする。
本発明のバタフライバルブのシールリングは、バタフライバルブの弁体外周に設けられるシールリングであって、上記シールリングは、周方向の一部に合い口を有する樹脂組成物の射出成形体であり、上記シールリングの円周中心点に対して上記合い口の位置を0°としたとき、45°を超え135°未満又は225°を超え315°未満の範囲の少なくとも一方にゲート痕が形成されていることを特徴とする。
上記シールリングは、軸方向一方の端面に凹部が形成されており、該凹部の形成箇所における上記シールリングの軸方向断面は略コの字状であることを特徴とする。
上記ゲート痕が内周面に形成され、上記シールリングの軸方向断面において上記ゲート痕が上記凹部と径方向で重ならない位置に形成されていることを特徴とする。
上記シールリングの幅方向長さ(軸方向寸法)と上記シールリングの厚さ方向長さ(径方向寸法)の比率が1:1.5~1:2.5であることを特徴とする。
上記樹脂組成物が、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、またはポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂をベース樹脂とすることを特徴とする。
本発明のバタフライバルブのシールリングは、周方向の一部に合い口を有する樹脂組成物の射出成形体であり、シールリングの円周中心点に対して合い口の位置を0°としたとき、45°を超え135°未満又は225°を超え315°未満の範囲の少なくとも一方にゲート痕が形成されているので、後述の実施例に示すように、上記範囲外の箇所にゲート痕が形成された場合に比べて平面度に優れる。これにより、シールリングの形状によらず優れた平面度を有するシールリングとなり、その結果、エアリークを低減することができる。
上記シールリングは、特に軸方向一方の端面に凹部が形成されており、該凹部の形成箇所におけるシールリングの軸方向断面が略コの字状のシールリングにおいても、優れた平面度を有するシールリングとなる。
本発明のシールリングは、バタフライバルブを用いた制御弁に使用されるものであり、略円板状のバタフライバルブの外周に設けられた環状溝に装着されて、このバルブと、このバルブが収容されるハウジングとの間の隙間を封止するシール部材である。制御弁は、ハウジング内で弁棒を軸として略円板状のバタフライバルブが回動することで、弁の開閉が行われる。この種の制御弁としては、例えば、内燃機関の排気再循環(EGR)システムの制御弁(単に「EGR制御弁」ともいう)が挙げられる。
本発明のシールリングの一例を図1~図2に基づいて説明する。図1はシールリングの平面図であり、図2はそのA-A線断面図である。図1において、シールリング1は、樹脂組成物の射出成形体である。シールリング1の軸方向断面は、一方の側面4(軸方向一方の端面)、他方の側面4’(軸方向他方の端面)、外周面2、および内周面3で囲まれた略矩形状である。ここで、図示は省略するが、内周面3と側面4、4’との角部には、直線状、曲線状の面取りが設けられていてもよく、シールリングを射出成形する場合の金型からの突き出し部分となる段部が設けられていてもよい。なお、面取りや段部は、合い口を構成する一対の端部にまでかけて形成されていてもよい。
シールリング1は、周方向の一部に合い口5を有するカットタイプのリングである。射出成形後の成形体は合い口5が開いており、その後の熱固定によって図1に示すように閉じられる。合い口5の形状については、ストレートカット形状、アングルカット形状などにすることも可能であるが、封止流体のシール性に優れることから、図3に示す複合ステップカット形状を採用することが好ましい。
図1において、シールリング1の一方の側面4に、軸方向に凹んだ凹部として溝6が形成されている。溝6は、合い口5を除き、側面4の略全周にわたり周方向に沿って形成されている。溝6は、内周面3と外周面2に開口しておらず、側面内で閉じた凹溝となっている。また、図1において、溝6は、溝幅および溝深さが略一定で形成されている。この溝6には、金属バネなどの弾性部材が収容される(図4参照)。この場合、弾性部材は、シールリングの弾性定数よりも高い弾性定数のものを用いることで、シールリングに拡径力を付与し、シール性を向上させることができる。弾性部材の素材としては、例えば、金属や、樹脂組成物、有機無機複合材料などを用いることができる。
図1において、シールリング1の他方の側面4’に凹部は形成されておらず、該側面4’は平坦面になっている。
図2は、溝の形成箇所におけるシールリングの軸方向断面を示す。図2に示すシールリング1の軸方向断面は略コの字状である。図2において、溝6は、断面形状が略矩形状であり、底面6aとその底面6aから直立した側壁面6b、6bで構成されている。なお、シールリングの略コの字状の形態において、溝の断面形状は略矩形状に限定されず、略三角形状や円弧状なども採用できる。
図2を用いてシールリング1の各寸法について説明する。図2に示すように、シールリング1の幅W(軸方向寸法)は、軸線方向において一方の側面4から他方の側面4’までの距離である。また、シールリング1の肉厚T(径方向寸法)は、外周面2から内周面3までの距離である。シールリングの幅と肉厚の関係は特に限定されないが、バルブ使用時にシールリングが拡径して環状溝から脱落しにくいようにするため、シールリングの幅よりも肉厚を大きくすることが好ましい(幅W<肉厚T)。具体的には、シールリングの幅と肉厚の比率が1:1.2~1:3.0が好ましく、シールリングの幅と肉厚の比率が1:1.5~1:2.5がより好ましい。本発明によれば、シールリングの幅と肉厚の比率が上記数値範囲であっても、シールリングの平面度を良好に維持できる。なお、シールリングの幅Wは、特に限定されないが、1.5mm~2.5mmに設定することが好ましい。
溝6の側面4からの深さdは、シールリングの幅Wの20%~70%とすることが好ましく、30%~60%とすることがより好ましい。上記範囲内にすることで、使用時におけるシールリングの変形などを抑えやすくなるとともに、溝内に弾性部材を収容しやすくなる。なお、上記「深さ」は、凹部の深さが変化する場合は、最深部の深さとする。
図2に示すように、溝6は、側面4において内周寄りに形成されている。内周寄りとは、溝6の径方向中央位置が、側面4の径方向中央位置よりも内周側に位置していることをいう。この場合、溝6を境にして、内周側のシールリングの肉厚は、外周側のシールリングの肉厚よりも小さくなっている。
ここで、上記図1および図2で示したような凹部がシールリングの軸方向端面に形成された場合、該凹部が形成されていない場合と比べて、射出成形において溶融樹脂の流動性が悪くなり、キャビティへの充填不良の発生が考えられる。実際に、凹部が形成されたシールリングを射出成形で製造する際においてシールリング全長の中央にゲートを配置すると、平面度が悪化する不具合が発生することが分かった。なお、中央にゲートが配置されたことで平面度が悪く成形されたシールリングは、熱固定を行っても平面度は改善されなかった。そこで、本発明者は、ゲートの位置を所定の位置に配置することで平面度の悪化という不具合を解消できることを見出した。
本発明のシールリングは、図1に示すように、円周中心点Oに対して合い口の位置を0°としたとき、45°を超え135°未満および225°を超え315°未満からなる範囲にゲート痕7が形成されている。図1では、シールリング1の円周中心点Oに対して合い口の位置を0°としたとき、270°の位置にゲート痕7が形成されている。なお、上記角度は、シールリングの反シール面(図1では溝が形成された側面)を基準にして、その際の合い口の位置を0°としたときの時計回りの角度を表している。
シールリング1において、ゲート痕が0°~45°および315°~360°の範囲に形成されると、ゲート痕が無い側の合い口までの流動長が長くなり、キャビティに充填しにくくなる。また、ゲート痕が有る側の合い口周辺にはヒケやバリなどが発生しやすくなる。一方、ゲート痕が135°~225°の範囲に形成されると、後述の実施例に示すように、平面度が悪化する傾向がある。
図1に示すように、シールリング1において、ゲート痕7は、上記範囲に1つだけ形成されることが好ましい。この場合ゲートはピンゲートであり、1点ゲートが用いられる。多点ゲートを用いると、溶融樹脂が合流する箇所にウェルドが形成される。ウェルドは機械強度が小さくなることから、ウェルドが生じない1点ゲートを用いることが好ましい。
ゲート痕7の形成範囲は、合い口の位置を0°としたとき、65°~115°(90°±25°)および245°~295°(270°±25°)の範囲が好ましく、80°~100°(90°±10°)および260°~280°(270°±10°)の範囲がより好ましい。このように90°付近および270°付近の範囲にゲート痕7を形成することで、2方向の流動長のバランスをある程度保ちながら平面度を良好に維持しやすくなる。
また、図1において、溝6は、合い口の位置を0°としたとき、側面4の少なくとも45°~315°の領域に形成されている。ゲート痕7は内周面3に形成され、該ゲート痕7は、図1の平面視において、溝6と径方向で重なる位置に形成されている。また、図2の軸方向断面で示すように、ゲート痕7は、内周面3の軸方向で溝6の無い側面4’寄りの位置に形成され、ゲート痕7のある径方向には溝6の深さ領域にかからないように形成されている。この場合、シールリング1の軸方向断面ではゲート痕7が溝6と径方向で重ならない位置に形成されている。なお、径方向に重ならないとは、図2において、ゲート痕7の径方向の延長線上に溝6が存在しないことをいう。
図3には、複合ステップカットの合い口の拡大図を示す。図3(a)は射出成形後の成形体の状態を示しており、合い口が開いた状態となっている。合い口5は、相補的に嵌合される一対の端部8、9で構成される。一方の端部8は、内周面側に突き合わせ部8aと、外周面側に突き合わせ部8aから突出したリップ部8bおよび後退したポケット部8cとを有する。他方の端部9は、突き合わせ部8a、リップ部8b、およびポケット部8cと、相補的に嵌合するように形成された突き合わせ部9a、ポケット部9c、およびリップ部9bとを有する。このような合い口5が開いた状態を、熱固定によって閉じた状態とする(図3(b))。本発明において、0°の基準となる合い口の位置は、閉じた合い口の中央位置であり、突き合わせ部8a、9a間の中央位置である。
本発明のシールリングの形状は、上記図1~図3の形状に限らない。凹部の形状は、上述した溝の形態に限定されず、適宜変更できる。また、軸方向両方の端面に凹部が形成されていないシールリングに対しても適用できる。
本発明のシールリングは、合成樹脂をベース樹脂にした樹脂組成物の射出成形体である。使用できる合成樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、PEEK樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、PPS樹脂、PAI樹脂、ポリアミド(PA)樹脂などが挙げられる。なお、これらの樹脂は単独で使用しても、2種類以上混合したポリマーアロイとしてもよい。これらの中でも特に、耐摩耗性、シール性、耐熱性、耐久性、曲げ弾性率などに優れることから、PEEK樹脂、PAI樹脂、またはPPS樹脂を用いることが好ましい。
また、必要に応じて上記合成樹脂に、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの繊維状補強材、球状シリカや球状炭素などの球状充填材、マイカやタルクなどの鱗状補強材、チタン酸カリウムウィスカなどの微小繊維補強材を配合できる。また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの摺動補強材、カーボンブラックなども配合できる。これらは単独で配合することも、組み合せて配合することもできる。特に、PEEK樹脂、PAI樹脂、またはPPS樹脂に、繊維状補強材である炭素繊維と、固体潤滑剤であるPTFE樹脂とを含むものが、本発明のシールリングに要求される特性を得やすいので好ましい。炭素繊維を配合することで、曲げ弾性率などの機械的強度の向上が図れ、PTFE樹脂の配合により摺動特性の向上が図れる。
以上の諸原材料を溶融混練して成形用ペレットが得られる。これを用いて、シールリングの形状に対応した成形キャビティの所定の位置に、ゲート(例えば1点ピンゲート)を配置し、当該ゲートから溶融樹脂を注入する。この際、ゲートは、シールリングの上述した位置にゲート痕が形成されるように配置される。これにより、溶融樹脂を成形キャビティ内に均一に行き渡せることができ、射出成形後の成形体の平面度を向上させることができる。射出成形後、熱固定によって成形体の合い口を閉じることで、図1に示すようなシールリング1が得られる。
図4には、本発明のシールリングを装着したEGRバルブを示す。図4は、バルブ閉鎖時の状態を示している。シールリング1は、治具を用いて、弾性変形により拡径してバタフライバルブ11の環状溝12に装着される。図4において、シールリング1は、略円板状のバタフライバルブ11の外周に設けられた環状溝12に装着されて、バタフライバルブ11と、ハウジング13との間の環状隙間14を封止している。バタフライバルブ11は、ハウジング13の内部に、弁棒となるシャフト(図示省略)に支持されて回動可能に収容されている。バタフライバルブ11をハウジング13の内部で回動させることで、弁が開閉する。
図4において、封止気体であるEGRガスの圧力は、シールリング1の側面4に作用し、側面4’が環状溝12の一方の側壁面に押し当てられる。また、この圧力や、シールリングの拡径方向の張力、溝内に収容される弾性部材15のスプリング力によって、ハウジング13の内壁に外周面2が押し付けられ、シール性が確保される。また、弾性部材15を収容することで、例えば、高温クリープなどによってシールリングの張力が低下した場合であっても、シール性を確保することができる。なお、シールリング1において、溝6が設けられた側面4とは反対側の側面4’がシール面となる。
実施例1、比較例1~3
シールリング(外径φ40mm×幅1.8mm×肉厚3.6mm)を、ゲート位置を変えて、各試験例20個ずつ、射出成形で製造した。シールリングの材質やゲート設計などを以下に示す。また、各試験例のシールリングにおけるゲート痕の位置は、図5に示すとおりである。これらシールリングは、一方の側面に弾性部材が装着される溝が形成されており、該溝の形成箇所におけるシールリングの軸方向断面は略コの字状である。また、内周面と側面との角部に段部が設けられている。
材質:PEEK(ベアリーPK5301)
ゲート :φ0.9mm、1点ピンゲート
合い口 :複合ステップカット
シールリング(外径φ40mm×幅1.8mm×肉厚3.6mm)を、ゲート位置を変えて、各試験例20個ずつ、射出成形で製造した。シールリングの材質やゲート設計などを以下に示す。また、各試験例のシールリングにおけるゲート痕の位置は、図5に示すとおりである。これらシールリングは、一方の側面に弾性部材が装着される溝が形成されており、該溝の形成箇所におけるシールリングの軸方向断面は略コの字状である。また、内周面と側面との角部に段部が設けられている。
材質:PEEK(ベアリーPK5301)
ゲート :φ0.9mm、1点ピンゲート
合い口 :複合ステップカット
上記で得られたシールリングの平面度を測定した(各試験例n=20)。平面度の測定では、まず、平坦な試験台の上に、溝が形成された側面を下に向けてシールリングを載置し、他方の側面の上に100gのガラス板を載せた。そして、三次元測定機(キーエンス社製ワンショット3D VR-5200)にて、他方の側面(シール面)の全周範囲における最低高さと最高高さの差を平面度として測定した。
その測定結果として、図6にゲート位置と平面度の関係を示す。縦軸の平面度は、値が小さいほど平面度に優れることを意味する。図6は、弾性部材が装着される溝とは反対側(反溝側)の側面の結果である。図6に示すように、実施例1および比較例3は、比較例1、2よりも平面度に優れるとともに、ばらつきが小さい結果となった。比較例1、2は平面度が悪く、その結果エアリークが大きくなると考えられる。また、各シールリング間で比較すると、平面度は、ゲート位置が合い口に近いほど良好になる傾向が見られた。
続いて、各試験例のシールリングの外観を観察した。その結果、実施例1および比較例1、2は、ヒケ、バリは認められなかった。一方、比較例3は、平面度は良好な結果(図6参照)が得られたものの、ヒケ、バリが認められた。比較例3のシールリングの平面図および形状測定の結果を、図7~図8に示す。
図7(a)は合い口を閉じる前の状態の比較例3の平面図であり、図7(b)はそのB部拡大図である。図7(b)に示すように、ゲート痕が形成された側の端部のリップ部の外周面にバリが発生した。このバリの盛り上がり高さは0.466mmであった。一方で、ゲート痕が形成されていない側の端部にヒケが認められた。図8には、図7(b)のC-C線に沿って平面形状を測定した結果を示す。図8に示すように、ゲート痕が形成されていない側の端部の側面に約0.06mmのヒケが確認された。ヒケのある比較例3は、バタフライバルブの環状溝と隙間が生じるためエアリークが大きくなると考えられる。
上記のように、シールリングの円周中心点に対して合い口の位置を0°としたとき、45°を超え135°未満および225°を超え315°未満で構成される範囲にゲート痕を有する実施例1のシールリングは、平面度に優れるとともに、ヒケ、バリの発生も抑制できる。このように、溶融樹脂の注入口であるゲートの位置を所定の位置にすることで、射出成形後の変形を抑えることができ、平面度の悪化を防ぎ、エアリークの増大を抑制することができる。
本発明のバタフライバルブのシールリングは、シールリングの形状によらず、優れた平面形状を有するので、バタフライバルブの環状溝に装着されるシールリングとして広く使用でき、特にEGRバルブ用のシールリングに好適である。
1 シールリング(バタフライバルブのシールリング)
2 外周面
3 内周面
4、4’ 側面
5 合い口
6 溝(凹部)
7 ゲート痕
8 端部
9 端部
11 バタフライバルブ
12 環状溝
13 ハウジング
14 環状隙間
15 弾性部材
2 外周面
3 内周面
4、4’ 側面
5 合い口
6 溝(凹部)
7 ゲート痕
8 端部
9 端部
11 バタフライバルブ
12 環状溝
13 ハウジング
14 環状隙間
15 弾性部材
Claims (5)
- バタフライバルブの弁体外周に設けられるシールリングであって、
前記シールリングは、周方向の一部に合い口を有する樹脂組成物の射出成形体であり、
前記シールリングの円周中心点に対して前記合い口の位置を0°としたとき、45°を超え135°未満又は225°を超え315°未満の範囲の少なくとも一方にゲート痕が形成されていることを特徴とするバタフライバルブのシールリング。 - 前記シールリングは、軸方向一方の端面に凹部が形成されており、該凹部の形成箇所における前記シールリングの軸方向断面は略コの字状であることを特徴とする請求項1記載のバタフライバルブのシールリング。
- 前記ゲート痕が内周面に形成され、前記シールリングの軸方向断面において前記ゲート痕が前記凹部と径方向で重ならない位置に形成されていることを特徴とする請求項2記載のバタフライバルブのシールリング。
- 前記シールリングの軸方向寸法と前記シールリングの径方向寸法の比率が1:1.5~1:2.5であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載のバタフライバルブのシールリング。
- 前記樹脂組成物が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはポリフェニレンサルファイド樹脂をベース樹脂とすることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載のバタフライバルブのシールリング。
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