JP2022013442A - シールリング - Google Patents

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真也 小田
Shinya Oda
幸三 筧
Kozo Kakehi
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Abstract

【課題】型開き時の張り付きの発生を抑制でき、低オイルリーク性を維持できるシールリングを提供する。【解決手段】シールリング1は、ハウジングの軸孔に挿通される回転軸に設けられた環状溝に装着されて、該環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動自在に接触し、かつ軸孔の内周面に接触して、これら回転軸と軸孔との間の環状隙間を封止するシールリングであって、樹脂組成物の射出成形体であり、周方向の一部に合い口を備えるとともに、リング内周面2にリング径方向に凹んだ凹部7を有し、該凹部7の深さtaがシールリングの径方向長さTの1%~10%である。【選択図】図2

Description

本発明は、オートマチックトランスミッション(以下、ATと記す)や無段変速機(以下、CVTと記す)など、油圧作動油などの流体の流体圧を利用した機器において、該流体を封止するために使用されるシールリングに関する。
AT、CVTなどの機器では、作動油を密封するためのオイルシールリングが要所に取り付けられている。例えば、ハウジングの軸孔に挿通される回転軸に設けられた対の離間した環状溝に取り付けられ、両環状溝間にある油路から供給される作動油を両シールリングの側面と内周面で受け、反対側の側面と外周面とで環状溝の側壁とハウジング内周面とをシールする。シールリングにおける各シール面は、環状溝の側壁、ハウジング内周面とそれぞれ摺動接触しつつ、両シールリング間の作動油の油圧を保持している。このシールリングは略矩形断面の環状体であり、周方向の一箇所に合い口を有する。
近年、環境問題などを背景として、自動車業界は低燃費車の開発を加速させている。その一環でアイドリングストップの需要増加に伴って低オイルリークのニーズが高まっている。例えば、特許文献1には、回転摺動フリクションの低減を図りつつ、リーク量の低減を図り、長期にわたって安定したシール性能を維持する品質性に優れる樹脂製のシールリングが記載されている。具体的な構成としては、リング側面に、環状溝の非密封流体側の側壁に線状に当接する線接触部が、合い口の一方側から他方側まで全周にわたって連続的に設けられ、合い口の一方側に設けられた線接触部と、該合い口の他方側に設けられた線接触部とが、径方向に離れて設けられている。また、特許文献1には、外周面とリング側面との角部が面取りされて傾斜面が形成されたシールリングが記載されている。
国際公開第2004/011827号
上記のような樹脂製のシールリングは、例えば樹脂組成物の射出成形によって得られる。ここで、外周面に傾斜面を備えるシールリングの成形金型の工程図を図13に示す。図13(a)は樹脂充填時を示し、図13(b)は型開き時を示し、図13(c)は製品取り出し時を示している。図13(a)に示すように、成形金型は、固定側金型51と、可動側金型52と、コアピン53とを有し、これらが衝合されてキャビティ54が形成される。溶融状態の樹脂組成物がキャビティ54に充填され、保圧を経た後、一定時間冷却して成形体55が得られる。成形体55の外周面からリング側面にわたって傾斜面55aが形成されている。
続いて、型開きでは、固定側金型51に対して、可動側金型52およびコアピン53をX方向に可動させる。この際、本来であれば、コアピン53らの動きに合わせて成形体55もX方向に動くところ、成形体55が固定側金型51に吸着されて張り付く場合がある(図13(b)参照)。このような張り付きが生じると、シールリングが変形しやすくなり、例えば、リング側面の平面度が悪化し、オイルリークが多くなるおそれがある。また、張り付きが生じることで、後続の製品の取り出し(図13(c)参照)にも影響し、連続成形が困難になるおそれがある。このような張り付きは、金型の型割上、固定側金型51との接触面積が増加することから、傾斜面を有しないシールリングに比べて、傾斜面を有するシールリングの方がより発生しやすい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、型開き時の張り付きの発生を抑制でき、低オイルリーク性を維持できるシールリングを提供することを目的とする。
本発明のシールリングは、ハウジングの軸孔に挿通される回転軸に設けられた環状溝に装着されて、該環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動自在に接触し、かつ上記軸孔の内周面に接触して、これら回転軸と軸孔との間の環状隙間を封止するシールリングであって、上記シールリングは、樹脂組成物の射出成形体であり、周方向の一部に合い口を備えるとともに、内周面にリング径方向に凹んだ凹部を有し、該凹部の深さがシールリングの径方向長さの1%~10%であることを特徴とする。
上記シールリングは、外周面の少なくとも一端側に傾斜部を備え、上記傾斜部は、リング側面に接続した傾斜面を有することを特徴とする。
上記傾斜部は、上記外周面に対して略垂直に接続した段差面を有し、リング径方向における上記段差面の高さが0.1mm以下であることを特徴とする。
上記凹部のリング軸方向における幅が、上記シールリングの軸方向長さの2%~60%であることを特徴とする。
上記凹部は、リング周方向に沿って連続して設けられた凹溝であり、該凹溝のリング周方向における形成範囲は、上記シールリングの内周に対して15%以上であることを特徴とする。
本発明のシールリングは、樹脂組成物の射出成形体であり、周方向の一部に合い口を備えるとともに、内周面にリング径方向に凹んだ凹部を有し、該凹部の深さがシールリングの径方向長さの1%~10%であるので、型開き時において、成形体のコアピンなどへの追従性が向上し、固定側金型に対する張り付きを抑制できる。また、凹部の深さを所定範囲とすることで、シールリングの環状溝への落ち込みを防止しつつ、金型からの取り出し性を確保できる。これにより、型開き時の張り付きによって生じる変形を抑制でき、ひいては低オイルリーク性を維持できる。
シールリングのハウジングへの組み付け時には、リング側面がハウジングの端面に接触することで、シールリングにかじりなどの不具合が発生し、それによりシール性が影響を受けるおそれがある。この点、上記シールリングは、外周面の少なくとも一端側に傾斜部を備え、傾斜部は、リング側面に接続した傾斜面を有するので、角部が面取りされて、かじりの発生を抑制できる。一方、傾斜面の形成に伴って、型開き時の固定側金型への張り付きがより懸念されるが、内周面に上記凹部を有することから、張り付きを抑制できる。
上記傾斜部は、外周面に対して略垂直に接続した段差面を有し、リング径方向における段差面の高さが0.1mm以下であるので、ハウジングに組み付ける際に、外径側端部の段差面が、ハウジングの端面に当たることを抑制でき、かじりの発生を防止できる。これにより、リング側面のシール面に打痕などの傷付きが防止されるため、シールリングの低オイルリーク性の維持により効果である。また、段差面を設けることで、その延長線上に型割面を設定でき、シールリングの外径寸法のバラツキが抑えられる。
凹部のリング軸方向における幅が、シールリングの軸方向長さの2%~60%であるので、アンカー効果を発揮させつつ、シールリングの落ち込みを好適に防止できる。
凹部は、リング周方向に沿って連続して設けられた凹溝であり、該凹溝のリング周方向における形成範囲は、シールリングの内周に対して15%以上であるので、シールリングの略全体でアンカー効果を発揮させることができる。
本発明のシールリングの一例を示す平面図である。 図1のシールリングの断面図である。 図1のシールリングの成形金型の工程図である。 図1のシールリングを環状溝に組み込んだ状態を示す断面図である。 本発明のシールリングの他の例の断面図およびA矢視図である。 本発明のシールリングの他の例の断面図である。 本発明のシールリングの他の例の断面図および一部拡大図である。 図7のシールリングの傾斜面と段差面の位置関係の説明図である。 実施例1~3のシールリングの断面図などである。 比較例1~2のシールリングの断面図である。 比較例2の取り出し工程を説明するための図である。 シールリングのオイルリーク量の測定試験の概略図である。 従来のシールリングの成形金型の工程図である。
本発明のシールリングの一例を図1~図2に基づいて説明する。図1はシールリングの平面図であり、図2はA-A線断面図である。図1に示すように、シールリング1は、金型を用いた射出成形によって形成され、断面が略矩形の環状体である。シールリング1は、周方向の一箇所に合い口10を有するカットタイプのリングであり、弾性変形により拡径して環状溝に装着される。
合い口10は一対の端部から構成される。一対の端部の形状については、ストレートカット、アングルカットなどにすることも可能であるが、オイルシール性に優れることから、図1に示す複合ステップカットを採用することが好ましい。複合ステップカットにおいて、一方の合い口は、シールリング内径面側に突き合わせ面と、外径面側に突き合わせ面から突出したリップおよび後退したポケットとを有し、他方の合い口は、上記突き合わせ面、上記リップおよびポケットと、相補的に嵌合するように形成された突き合わせ面、ポケットおよびリップとを有している。
シールリングの大きさ(外径φ、内径φ、リング厚みT(径方向長さ)、リング幅W(軸方向長さ)など)は、用途などによって適宜設定される。例えば、シールリングの内径φは9mm~75mmであり、外径φは13mm~80mmである。
シールリング1において、リング側面4または4’が環状溝の側壁面との摺動面となる。図2に示すように、リング内周面2とリング側面4、4’との角部には、射出成形時において金型からの突出し部分となる段部5、5’が設けられている。図2では、段部5、5’はリング軸方向の両端部に設けられ、リング径方向に凹んだ部分である。また、リング外周面3とリング側面4、4’との両側の角部には、傾斜部として傾斜面6、6’が設けられている。傾斜面6、6’は、リング全周にわたって設けられ、環状溝の側壁面との非接触部となる。なお、リング側面4、4’の内径側端部には、凹部からなる複数の潤滑溝が周方向に離間して形成されていてもよい。
傾斜面6、6’の摺動面(リング側面4または4’)からの深さは、リング径方向の外側に向けて深くなり、リング軸方向には一定である。シールリング1の軸方向断面において、リング外周面3に対する傾斜面6、6’の傾斜角αは、例えば20度~60度である。傾斜角αは、好ましくは30度~50度であり、より好ましくは30度~45度であり、さらに好ましくは40度~45度である。傾斜角αが20度未満であると、ハウジングへの組み付け時において、シールリングの偏芯(環状溝からの飛び出し)が大きい場合にハウジングの端面に当たりやすくなり、かじりが発生するおそれがある。また、傾斜角αが60度を超えると、ハウジングの端面に当たった際にシールリングがスムーズに誘導されないおそれがある。
図2に示すように、シールリング1は、一対の段部5、5’の間のリング内周面2にリング径方向に凹んだ凹部7を有している。凹部7は、後述の図3で示すように、成形金型の型開き時におけるアンダーカット部である。アンダーカット部は、金型(例えばコアピン)との係り代、つまり金型に引っ掛かる部分である。図2において、凹部7は、リング周方向に沿って連続して形成された断面円弧状の円弧溝である。この円弧溝は、両側の段部5、5’には開口しておらず、リング内周面内で閉じた凹溝となっている。なお、凹溝の形状は特に限定されず、例えば、断面矩形の角溝や断面三角形の三角溝などにしてもよい。
シールリング1の凹部7の深さtは、リング厚みTの1%~10%である。リング厚みTは、シールリング1においてリング径方向の最大厚みをいい、図2では、リング内周面2とリング外周面3との間の長さである。凹部7の深さtは、凹部の最も凹んだ地点から、凹部が形成されていないと仮定した場合のリング内周面の仮想面Fに降ろした垂線の長さをいう。深さtが1%未満の場合、型開き時にアンカー効果が得られにくく、張り付きが発生するおそれがある。また、深さtが10%を超えると、金型との引っ掛かりが強くなり、最終的に金型からの取り出しが困難になるおそれがある。深さtは、好ましくはリング厚みTの3%~5%である。
また、別の観点では、凹部7の深さtは、段部5、5’の深さ(径方向長さ)よりも浅いことが好ましい。また、凹部7の深さtの具体的な数値は0.05mm~0.2mm程度である。なお、段部5、5’は金型からの突出し部分につき、突出し時のシールリングの変形防止のため、その深さ(径方向長さ)はリング厚みTの10%を超えて設けられている。
凹部7のリング軸方向における幅wは、特に限定されない。ただし、幅wが小さいと、型開き時にアンカー効果が得られにくく張り付きが発生するおそれがあり、幅wが大きいと、例えば溶融粘度が高い材料を用いた場合にショートショットが発生する場合がある。そのため、凹部7の幅wは、リング幅Wの2%~60%であることが好ましく、5%~40%であることがより好ましい。リング幅Wは、シールリング1においてリング軸方向の最大幅をいい、図2では、一方のリング側面4と他方のリング側面4’との間の長さである。幅wは、リング内周面2に対して開口した部分のリング軸方向の幅である。また、凹部7は、深さtのリング厚みTに対する割合(%)と、幅wのリング幅Wに対する割合(%)との積が10以上、500以下の範囲となることが望ましい。10未満であれば型開き時にアンカー効果が得られにくく張り付きが発生するおそれがあり、500を超えると溶融粘度が高い材料を用いた場合にショートショットが発生する場合がある。
凹部7のリング周方向における形成範囲は、シールリング1の内周に対して15%以上であることが好ましく、50%以上がより好ましい。凹部7の形成範囲を15%以上とすることでアンカー効果が得られやすい。一方、合い口10(図1参照)の周辺、例えば合い口10を中心にしたリング周方向±10°の範囲の部分には凹部を形成しないことが好ましい。凹部7のリング周方向における形成範囲の上限は、例えば90%であり、80%が好ましい。
図2では、凹部として、周方向に沿って連続して形成された凹溝を示したが、該凹部がリング周方向で分割された複数(例えば2本)の凹溝で構成されていてもよい。この場合、複数の凹溝のリング周方向における形成範囲(各凹溝の合計)は、シールリング1の内周に対して15%以上であることが好ましく、50%以上がより好ましい。その上限は、例えば90%であり、80%が好ましい。
また、本発明のシールリングの凹部は凹溝に限らず、孔で構成されていてもよい。この場合、例えば、複数の孔がリング周方向に互いに離間して配列された形状にすることができる。孔の深さ、リング軸方向における幅、リング周方向における形成範囲(複数の孔の場合はその合計)については、上述の各数値範囲を採用できる。
本発明のシールリングは、樹脂組成物の射出成形体である。樹脂組成物のベース樹脂としては、射出成形可能な合成樹脂であれば任意のものを使用できる。例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ホリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、フェノール(PF)樹脂などが挙げられる。なお、これらの樹脂は単独で使用しても、2種類以上混合したポリマーアロイとしてもよい。これらの樹脂の中でも特に、摩擦摩耗特性、曲げ弾性率、耐熱性、摺動性などに優れることから、PEK樹脂、PEEK樹脂、PPS樹脂、またはPAI樹脂をベース樹脂として用いることが好ましい。これらの樹脂は高い弾性率を有し、環状溝に組み込む際に拡径しても割れ難く、シールする作動油の油温が高くなる場合でも使用でき、また、ソルベントクラックの心配もない。
また、必要に応じて上記ベース樹脂に、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの繊維状補強材、球状シリカや球状炭素などの球状充填材、マイカやタルクなどの鱗状補強材、チタン酸カリウムウィスカなどの微小繊維補強材を配合できる。また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの摺動補強材、カーボンブラックなどの顔料も配合できる。これらは単独で配合することも、組み合せて配合することもできる。
以上の諸原材料を溶融混練して成形用ペレットとし、これを用いて射出成形法により所定形状に成形する。図3には成形金型の工程図を示す。図3(a)に示すように、成形金型は、固定側金型11と、可動側金型12と、コアピン13とを有し、これらが衝合されてキャビティ14が形成される。溶融状態の樹脂組成物がキャビティ14に充填され、保圧を経た後、一定時間冷却して成形体15が得られる。成形体15の内周面には凹部15aが設けられており、凹部15aの凹みに対応してコアピン13に凸部13aが形成されている。
続いて、図3(b)に示す型開きでは、固定側金型11に対して、可動側金型12およびコアピン13をX方向に可動させる。この際、凹部15aがコアピン13の凸部13aに引っ掛かるため、コアピン13の動きに追従して成形体15もX方向に動く。このように、凹部15aがアンダーカット部となり、成形体15が物理的に固定されるため、固定側金型11への張り付きが抑制される。
その後、図3(c)に示すように、コアピン13を固定側金型11に向けてY方向に前進させることで、成形体15が可動側金型12から離型する。そして、図3(d)に示すように、取り出しハンド16の係合部16aを成形体15のリング側面15bの一部に係合させて、Z方向に可動させることで、成形体15がコアピン13から取り出される。取り出された成形体15の合い口は、一対の端部が相互に離れた状態となっているが、熱固定などによって閉じられ、図1に示すシールリング1が得られる。
シールリングの使用形態の概略を図4に基づいて説明する。シールリング1は、ハウジング22の軸孔22aに挿通される回転軸21に設けられた環状溝21aに装着される。図中の矢印が作動油からの圧力が加わる方向であり、図中右側が非密封流体側である。シールリング1は、そのリング側面4で、環状溝21aの非密封流体側の側壁面21bに摺動自在に接触している。また、そのリング外周面3で軸孔22aの内周面に接触している。このシール構造により、回転軸21と軸孔22aとの間の環状隙間を封止している。また、作動油は用途に応じた種類が適宜用いられる。例えば、油温として-30~150℃程度、油圧として0~3.0MPa程度、回転軸の回転数として0~7000rpm程度の条件で使用される。
図4に示すように、シールリング1において、オイルリークに関わるリング外周面3やリング側面4にはアンダーカット部となる凹部が形成されておらず、リング内周面2に凹部7を形成することで、低オイルリーク性を維持することができる。さらに、凹部7によって、型開き時に固定側金型への張り付きが抑制されるので、張り付きに伴う変形、例えばリング側面4の平面度の悪化などを抑制でき、その結果、低オイルリーク性の維持に繋がる。
以下には、図5~図8を参照して、本発明のシールリングの他の例を説明する。
図5に示すシールリング1は、図2のシールリング1と比べて凹部の構成が異なっている。図5(a)はシールリングの断面図であり、図5(b)はA矢視図である。なお、凹部以外の構成の説明は省略する。
図5(a)に示すように、凹部7Aは、リング内周面2において一方の段部5から他方の段部5’にかけて形成された凹部である。凹部7Aの深さtは一定であり、凹部の底面から仮想面Fに降ろした垂線の長さとして表される。この構成においても凹部7Aの深さtは、リング厚みTの1%~10%を満たしている。
図5(b)に示すように、シールリング1をリング内周面側から見た図では、凹部7Aは台形状であり、その周方向幅はリング軸方向の一方側に向けて小さくなっている。具体的には、一方の段部5に開口する周方向幅Lは、他方の段部5’に開口する周方向幅Lよりも小さくなっている。この構成の場合、成形金型を型開きする際には、凹部7Aの周方向幅が小さくなっている側に向かって、つまりX方向に可動側金型およびコアピンを動かす。その結果、コアピンの凸部の幅広に形成された部分が凹部7Aに引っ掛かることで、固定側金型に対する張り付きを抑制できる。なお、型開き時のアンカー効果を発揮させつつ、取り出しハンド(図3(d)参照)による金型からの取り出し性を確保するため、周方向幅Lは、周方向幅Lに対して1.05倍~1.2倍であることが好ましい。
図5において、凹部7Aは、リング内周面2の複数箇所に形成されていてもよい。例えば、リング周方向に等間隔に離間して3箇所~5箇所形成される。複数箇所に形成することで、リング略全体でアンカー効果を発揮させることができる。
図6に示すシールリング1は、図2のシールリング1と比べて凹部の構成が異なっている。なお、凹部以外の構成の説明は省略する。図6に示すように、凹部7Bは、リング内周面において段部5から段部5’に向けて傾斜した凹部である。凹部7Bの仮想面Fからの深さは、段部5’に近づくにしたがい深くなっている。この場合、凹部7Bの深さtは、凹部7Bの最も凹んだ地点から仮想面Fに降ろした垂線の長さとして表される。この構成においても凹部7Bの深さtは、リング厚みTの1%~10%を満たしている。
この構成の場合、成形金型を型開きする際には、凹部7Bの深さが浅くなっている側に向かって、つまりX方向に可動側金型およびコアピンを動かす。その結果、コアピンの凸部の高く形成された部分が凹部7Bに引っ掛かることで、固定側金型に対する張り付きを抑制できる。なお、凹部7Bは、リング周方向に沿って連続して設けられており、その形成範囲は、シールリング1の内周に対して15%以上であることが好ましく、50%以上がより好ましい。
図7に示すシールリング1は、図2のシールリング1と比べて外周面に設けられた傾斜部の構成が異なっている。図7(a)はシールリングの断面図であり、図7(b)はその一部拡大図である。なお、傾斜部以外の構成の説明は省略する。
図7に示すように、傾斜部は、リング側面4に接続された傾斜面6と、リング外周面3に対して垂直に接続された段差面8と、接続面9とを有する。段差面8は金型の型割によって形成される面(型割面とも言う)であり、この構成の場合、固定側金型と可動側金型の型割面がシールリング1の段差面8の延長線上に配置される。段差面8を設けることでシールリングの外径寸法のバラツキが抑えられる。一方で、型割段差が大きいと、ハウジング組み付け時のシールリングのかじりなどのおそれがあることから、リング径方向における段差面8の高さt(図7(b参照))は0.1mm以下が好ましく、0.01mm~0.05mmがより好ましい。
図7に示すシールリング1は、リング外周面3の両側に傾斜部を設けている。その両側の傾斜部のうち、一方の傾斜部が段差面8を有し、他方の傾斜部は傾斜面のみで構成されている。段差面8は、少なくとも一方側の傾斜部に形成することが好ましく、両側の傾斜部に対称に形成してもよい。この場合、両側の傾斜部が段差面を有する構成となり、組み付け方向の依存性がなくなる。
また、図7のシールリング1では、傾斜面6と段差面8との間に、リング側面4に対し垂直な接続面9が設けられている。接続面9を設けることで、段差面8を傾斜部内に収めやすくなる。なお、接続面9は、リング側面4に対して略垂直な面であればよく、平面で構成されても曲面で構成されてもよい。リング軸方向における接続面9の幅w(図7(b)参照)は、特に限定されないが、段差面8の高さtよりも大きいことが好ましい。具体的な寸法として、幅wは、例えば0.05mm~0.3mmであることが好ましい。より好ましくは0.05mm~0.1mmである。
図8(a)では、傾斜面と段差面の位置関係を説明する。図8(a)に示すように、傾斜面6を延長した仮想平面をfとすると、段差面8は、仮想平面fよりもリング径方向の内側に位置している。言い換えると、リング外周面3と段差面8との境界である角部Pは仮想平面fから径方向外側に突出しない。このように段差面8を傾斜部の内側にすることで、ハウジングのテーパ部に傾斜面6を当てて押し込む際にも、段差面8(角部Pを含む)がハウジングの端面に当たることを抑制でき、かじりを防止できる。
図8(b)には、傾斜部の段差面の変形例を示している。図8(b)に示すように、段差面8’はリング外周面3に対して略垂直な曲面で形成され、リング外周面3と段差面8’との境界部がR状に形成されている。段差面8’は、例えば、図8(a)に示す角部Pをバレル研磨などによって研磨することで得られる。境界部をR状とすることで、段差面8’のかじりを一層防止できる。なお、図8(b)の変形例においても、段差面8’は仮想平面fよりもリング径方向の内側に位置している。
上記図1~図8では、リング外周面に傾斜部を有するシールリングを示したが、本発明のシールリングはこれに限定されず、上記傾斜部を有しないシールリング、つまり角部が面取りされていないシールリングについても適用できる。また、上記図1~図8では、リング軸方向の両端部にリング径方向に凹んだ一対の段部を有するシールリングを示したが、本発明のシールリングはこれに限定されず、上記段部を有しないシールリングにも適用できる。
実施例1~実施例3
PEEK樹脂を用いて、図9に示すそれぞれの形状のシールリングを射出成形によって製造した。実施例1~実施例3のシールリングの各寸法は、外径φ43mm、リング幅(軸方向長さ)2.3mm、リング厚み(径方向長さ)2mmである。各実施例のシールリングの外周面には傾斜部が形成され、内周面には凹部が形成されている。実施例1の凹部は円弧溝であり、深さtが0.06mm(3%)、幅wが0.5mm(22%)である。実施例2の凹部はA矢視図において台形状であり、深さtが0.1mm(5%)であり、周方向長さLが5.5mm、周方向長さLが6mmである。なお、この凹部は、リング周方向に離間して4箇所に形成した。実施例3の凹部は円弧溝であり、深さtが0.06mm(3%)、幅wが0.9mm(39%)である。なお、上記カッコ内の割合は、リング厚みまたはリング幅に対する割合を示している。また、割合同士の積は、実施例1が66、実施例3が117である。
比較例1~比較例2
PEEK樹脂を用いて、図10に示すそれぞれの形状のシールリングを射出成形によって製造した。比較例のシールリングの各寸法は、実施例と同様である。また、比較例のシールリングの外周面には傾斜部が形成されている。比較例1はアンダーカット部となる凹部を有していない。比較例2は内周面に矩形溝の凹部を有し、その深さtが0.3mm(15%)、幅wが0.5mm(22%)である。
<射出成形性試験>
実施例1~3および比較例1~2のシールリングの製造時において、固定側金型への張り付きの有無、および、製品の変形の有無を評価した。張り付きの有無は射出成形工程の観察、変形の有無は定盤上に置いた時の浮き上がり部の有無により判断した。なお、各シールリングの製造前には金型洗浄を行い、各試験において離型剤は使用せずに行った。張り付きが発生するまで射出成形の連続運転を行い、張り付きが発生したショット数を表1に記入した。なお、連続運転は800ショットまでとした。結果を表1に示す。
Figure 2022013442000002
表1に示すように、実施例1~実施例3は、800ショット連続して射出成形しても固定側金型への張り付きがなく、取り出しハンドを用いた取り出し性も良好であった。これに対して、凹部を有しない比較例1は、20ショット目で固定側金型への張り付きが発生し、リングにねじれ(変形)が生じた。また、比較例2は、800ショットで張り付きは見られなかったが、取り出し時にリングの変形が生じた。具体的には、図11に示すように、比較例2では凹部が所定以上の深さであるため、コアピン13への引っ掛かりが強く、取り出し時に負荷がかかり、リングに変形と凹部周辺の破壊が生じた。
アンダーカット部となる凹部の形成位置は、リング内周面以外にも、リング側面やリング外周面が考えられるが、リング側面の場合は、突出し時でもアンカー効果が強く、取り出しが困難になる。また、リング外周面の場合は、突出し時に成形体が金型に拘束された状態となるため、成形体を突き出せず連続成形が困難である。そのため、凹部をリング内周面に形成することで、図3で示したように、取り出し時に成形体が拘束されず、取り出しを容易に行うことができる。
<オイルリーク試験>
得られた各シールリングのオイルリーク量を、図12に示す試験機により評価した。図12は試験機の概略図である。相手軸23の環状溝に、各試験例に対応した形状のシールリング25、25’を装着した。このシールリングの各寸法は、外径φ48mm、リング幅(軸方向長さ)1.6mm、リング厚み(径方向長さ)1.5mmであり、射出成形後に合い口を閉じた状態で熱固定を行った。上記寸法は熱固定後の寸法である。相手軸23を固定した状態で、モータ(図示省略)によってハウジング24を回転させた。シールリング25、25’は、相手軸23の環状溝側壁と、ハウジング24の軸孔内周面と摺接する。油圧ユニット26から油を圧送して、シールリング25と25’との間の環状隙間に供給した。オイルリーク試験の条件は、油圧2.0MPa、回転数2000rpm、油温120℃とし、オイルにはATFを用いた。この試験機により、オイルリーク量(ml/min)を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2022013442000003
表2に示すように、実施例1~実施例3のシールリングは、低オイルリーク量であり、オイルリーク量にほとんど差がなかった。上述したように、固定側金型への張り付きがなく、また金型からの取り出しが容易であることから、シールリングの変形を抑制でき、低オイルリーク性が維持された。これに対して、比較例2は、オイルリーク量が多い結果となった。このシールリングは製品の取り出し時に変形があったため、側壁面や軸孔内周面とのシール性が低下したと考えられる。なお、表2に示す比較例1は、張り付きが発生したシールリングを用いて試験を行った。張り付きが発生したため、リング側面の平面度の悪化が生じ、オイルリーク量の増大に繋がったと考えられる。
上記のように、実施例に係るシールリングは、シールリングの内周面に凹部を形成し、その凹部の深さをリング厚みの1%~10%とすることで、シール性やリングの落ち込みは従来のシールリングと同等を確保しつつ、金型からの取り出しが容易で、かつ、固定側金型への張り付きやそれに伴う変形を防止することができる。その結果、低オイルリーク性を維持されたシールリングになる。
本発明のシールリングは、型開き時の張り付きの発生を抑制でき、低オイルリーク性を維持できるので、回転軸とハウジングとの間で低オイルリーク性が要求されるシールリングとして使用できる。特に、自動車等におけるATやCVTなどの油圧機器に燃費向上のために好適に使用できる。
1 シールリング
2 リング内周面
3 リング外周面
4、4’ リング側面
5、5’ 段部
6 傾斜面
7、7A、7B 凹部
8、8’ 段差面
9 接続面
10 合い口
11 固定側金型
12 可動側金型
13 コアピン
14 キャビティ
15 成形体
16 取り出しハンド
21 回転軸
22 ハウジング
23 相手軸
24 ハウジング
25、25’ シールリング
26 油圧ユニット

Claims (5)

  1. ハウジングの軸孔に挿通される回転軸に設けられた環状溝に装着されて、該環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動自在に接触し、かつ前記軸孔の内周面に接触して、これら回転軸と軸孔との間の環状隙間を封止するシールリングであって、
    前記シールリングは、樹脂組成物の射出成形体であり、周方向の一部に合い口を備えるとともに、内周面にリング径方向に凹んだ凹部を有し、該凹部の深さがシールリングの径方向長さの1%~10%であることを特徴とするシールリング。
  2. 前記シールリングは、外周面の少なくとも一端側に傾斜部を備え、前記傾斜部は、リング側面に接続した傾斜面を有することを特徴とする請求項1記載のシールリング。
  3. 前記傾斜部は、前記外周面に対して略垂直に接続した段差面を有し、リング径方向における前記段差面の高さが0.1mm以下であることを特徴とする請求項2記載のシールリング。
  4. 前記凹部のリング軸方向における幅が、前記シールリングの軸方向長さの2%~60%であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載のシールリング。
  5. 前記凹部は、リング周方向に沿って連続して設けられた凹溝であり、該凹溝のリング周方向における形成範囲は、前記シールリングの内周に対して15%以上であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載のシールリング。
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