JP6783273B2 - シールリング - Google Patents

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本発明は、オートマチックトランスミッション(以下、ATと記す)や無段変速機(以下、CVTと記す)など、油圧作動油などの流体の流体圧を利用した機器において、該流体を封止するために使用されるシールリングに関する。
AT、CVTなどの機器では、作動油を密封するためのオイルシールリングが要所に取り付けられている。例えば、ハウジングの軸孔に挿通される回転軸に設けられた対の離間した環状溝に取り付けられ、両環状溝間にある油路から供給される作動油を両シールリングの側面と内周面で受け、反対側の側面と外周面とで環状溝の側壁とハウジング内周面とをシールする。シールリングにおける各シール面は、環状溝の側壁、ハウジング内周面とそれぞれ摺動接触しつつ、両シールリング間の作動油の油圧を保持している。このようなシールリングは、摩擦損失が少なく、かつ充分なオイルシール性が要求される。特に近年では、燃費向上が重要な課題とされており、AT、CVTなどの機器において、良好なシール性を維持しつつ、更なる低トルク性の向上が望まれている。
従来、このようなシールリングとして、図9に示すような特許文献1のシールリングが提案されている。図9は該シールリングの一部切欠き図である。図9に示すように、このシールリングでは、リングの摺動面21に密封対象となる流体を導入する流路を形成し、この流路の途中に突部23(突部の両側が凹部22)を設けて、摺動面間の面圧を軽減するように動圧を発生させている。
また、他のシールリングとして、図10に示すような特許文献2のシールリングが提案されている。図10は該シールリングが環状溝に取り付けられた状態を示す図である。図10に示すように、このシールリングは、環状溝31に取り付けられ、摺動面32の非当接部33側の端部に、該端部の縁を部分的に切り欠いた構成の凹部34が設けられている。
特開平8−121603号公報 特開2008−275052号公報
しかしながら、特許文献1のシールリングは、高速回転時での動圧による油膜形成効果は期待できるが、低速回転時での油膜形成効果はほとんど現れない。そのため、低速回転時においては、オイルはシール面(摺動面21のうち環状溝と実際に相対摺動する部分)に油膜を形成することができず、トルクの低下や摩耗の低減に寄与できない。この原因は、突部23の頂点がシールリングの摺動面21より内側に入っており、低速回転時には凹部22(潤滑溝)に入り込んだオイルが突部23を乗り越えて隣接する凹部22に流れるためと考えらえる。
また、特許文献2のシールリングは、摺動面32にオイルを導入しやすく、低速回転から高速回転まで摺動面32における油膜形成性に優れ、低トルク性に優れる。しかし、その反面、摺動面32における凹部34の面積を大きく取れず摺動面積の低減が限られている。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、シールリングの本来の目的である低オイルリーク性と、燃費向上のための低トルク性をバランス良く兼ね備えたシールリングを提供することを目的とする。
本発明のシールリングは、軸孔を有するハウジングおよび上記軸孔に挿通される回転軸の一方の部材に設けられた環状溝に装着されて、他方の部材表面に接触し、かつ上記環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動自在に接触して、これら部材間の環状隙間を封止するシールリングであって、該シールリングは、少なくとも上記側壁面との摺動面となるリング側面の内径側端部の一部に、上記側壁面との非接触部となる、リング周方向に沿ったV字状の凹部が設けられており、上記凹部の底面は、リング周方向に沿って傾斜した2つの平面から構成され、上記凹部の上記摺動面からの深さは、該凹部のリング周方向の端部以外に最深部があり、該最深部からリング周方向の両端部に向けて浅くなることを特徴とする。また、上記凹部は、内径側の開口寸法より外径側の開口寸法の方が大きいことを特徴とする。
上記凹部の上記摺動面からの深さは、リング径方向には一定であることを特徴とする。
上記凹部のリング周方向の端部と上記摺動面との境界部が、摺動面に対して急勾配に形成され、さらにR状に形成されていることを特徴とする。また、上記凹部がリング周方向で離間して複数個設けられ、隣り合う凹部同士の間のリング側面が上記摺動面の一部を構成することを特徴とする。
上記シールリングは合成樹脂製であり、該合成樹脂がポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと記す)樹脂またはポリエーテルエーテルケトン(以下、PEEKと記す)樹脂であることを特徴とする。
上記凹部の最深部の位置は、該凹部のリング周方向の中央位置にあることを特徴とする。また、上記凹部の最深部の上記摺動面からの深さは、リング総幅の45%以下であることを特徴とする。
本発明のシールリングは、軸孔を有するハウジングおよび上記軸孔に挿通される回転軸の一方の部材に設けられた環状溝に装着されて、他方の部材表面に接触し、かつ環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動自在に接触して、これら部材間の環状隙間を封止するものであり、少なくとも側壁面との摺動面となるリング側面の内径側端部の一部に、側壁面との非接触部となる、リング周方向に沿ったV字状の凹部が設けられているので、密封流体である作動油等がこの凹部を介して摺動面に適度に流出しやすい。このため、低オイルリーク性と、低トルク性をバランス良く兼ね備えたシールリングとなる。
凹部に流入した作動油等はシールリングの回転軸との相対的回転によって凹部内から摺動面に流出する。この際、凹部の内径側の開口寸法より外径側の開口寸法の方を大きくすることで、より多くの作動油等を摺動面に流出することが可能となり、十分な低トルク性を発揮する。
凹部の摺動面からの深さは、該凹部のリング周方向の端部以外に最深部があり、該最深部からリング周方向の両端部に向けて浅くなり、リング径方向には一定であるので、隣り合う凹部同士の間の摺動面(リング側面)に密封流体である作動油等が流出しやすく、十分な低トルク性を有する。一方、凹部の外径側の摺動面には流出しにくいので、低オイルリーク性を有する。
凹部のリング周方向の端部と摺動面との境界部が摺動面に対して急勾配に形成されているので、摺動面が摩耗した場合でも凹部の開口面積の減少が小さく、トルクの変化が生じない。また、凹部のリング周方向の端部と摺動面との境界部が、さらにR状に形成されているので、隣り合う凹部同士の間の摺動面(リング側面)に密封流体である作動油等がより流出しやすくなり、更なる低トルク化が図れる。
シールリングが合成樹脂製であり、該合成樹脂がPPS樹脂またはPEEK樹脂であるので、曲げ弾性率、耐熱性などに優れ、溝に組み込む際に拡径しても割れることがなく、シールする作動油の油温が高くなる場合でも使用できる。
本発明のシールリングの一例を示す斜視図および断面図である。 図1のシールリングを環状溝に組み込んだ状態を示す断面図である。 シールリングの一部をリング内径側から見た図である。 図3におけるB部の拡大図である。 境界部の一例を示す断面図である。 シールリングの試験機の概略図である。 オイルリークの試験結果を示す図である。 摩耗量の試験結果を示す図である。 従来のシールリングの一例を示す図である。 従来のシールリングの他の例を示す図である。 V字状の凹部の他の実施形態を示す図である。
本発明のシールリングの一例を図1および図2に基づいて説明する。図1(a)はシールリングの斜視図を、図1(b)は図1(a)のシールリングの一部拡大断面図を、図2はこのシールリングを油圧装置の環状溝に組み込んだ状態の断面図を、それぞれ示す。図1(a)および(b)に示すように、シールリング1は、一箇所の合い口4を有する断面が略矩形の環状体であり、リングの両側面2の内径側端部に、リング周方向に沿ったV字状の凹部3が複数設けられている。また、リング内周面1bとリングの両側面2(凹部3を含む)との角部は直線状、曲線状の面取りが設けられていてもよく、シールリングを射出成形で製造する場合、該部分に金型からの突出し部分となる段部1cを設けてもよい。
図2に示すように、シールリング1は、ハウジング5の軸孔5aに挿通される回転軸6に設けられた環状溝6aに装着される。図中の矢印が作動油からの圧力が加わる方向であり、図中右側が非密封流体側である。シールリング1は、そのリング側面2で、環状溝6aの非密封流体側の側壁面6bに摺動自在に接触している。また、その外周面1aで軸孔5aの内周面に接触している。このシール構造により、回転軸6と軸孔5aとの間の環状隙間を封止している。なお、環状溝が、回転軸側ではなく、ハウジング側に設けられる構成においても同様に適用できる。また、作動油は用途に応じた種類が適宜用いられる。本発明では、油温として30〜150℃程度、油圧として0.5〜3.0MPa程度、回転軸の回転数として1000〜7000rpm程度の条件を主に想定している。
シールリング1は、一箇所の合い口4(図1参照)を有するカットタイプのリングであり、弾性変形により拡径して環状溝6aに装着される。シールリング1は、合い口4を有することから、使用時において作動油の油圧によって拡径されて、外周面1aが軸孔5aの内周面と密着する。合い口4の形状については、ストレートカット型、アングルカット型などにすることも可能であるが、シール性に優れることから、図1(a)に示す複合ステップカット型を採用することが好ましい。
図1および図2に示すように、シールリング1は、一方のリング側面が環状溝の側壁面との摺動面となり、このリング側面(摺動面)に該側壁面との非接触部となるV字状の凹部3が形成されている。この凹部3を設けることで、密封流体である作動油等が該凹部を介して摺動面に適度に流出しやすくなる。詳細には、隣り合う凹部同士の間の摺動面Xと凹部との境界部は連続的な形状となり、凹部の外径側の摺動面Yと凹部との境界部は非連続な形状(段差)となるため、作動油等が摺動面Xには流出しやすく、摺動面Yには摺動面Xと比較すると流出しにくい。摺動面XやYに密封流体である作動油等が流出することで、該摺動面で油膜を形成でき、トルクおよび摩耗の低減が図れる。また、摺動面Yへの流出を抑制することで、低オイルリーク性に繋がる。
凹部は少なくとも摺動面となるリング側面に形成すればよいが、組み付け方向の依存性がなく、重量バランスにも優れることから、図1に示すようにリングの両側面に対称に形成することが好ましい。
また、図1に示すように、凹部3はリング周方向で離間して複数個設けることが好ましい。隣り合う凹部同士の間のリング側面2が摺動面の一部(摺動面X)を構成する。上述のとおり、使用時には、この隣り合う凹部同士の間の摺動面において油膜を形成でき、トルクおよび摩耗の低減が図れる。凹部のそれぞれのリング周方向の長さは、個数に応じて、リング全周の約3〜20%とすることが好ましい。凹部のリング径方向の長さは、リング総厚みの10〜60%とすることが好ましい。また、摺動特性が安定することから、凹部は全て同サイズとし、略等間隔で離間して複数個(図1では片面12個)設けることが好ましい。
V字状の凹部を図3に基づいて詳細に説明する。図3は、本発明のシールリングの一部(図1のA部)をリング内径側から見た図である。図3に示すように、凹部3は、リング周方向に沿ったV字状である。リングの側面2の一方が環状溝との摺動面である。凹部3の摺動面からの深さは、凹部3のリング周方向の端部以外に最深部3cがあり、最深部3cからリング周方向の両端部に向けて浅くなる。すなわち、リング周方向で摺動面に近い領域程浅くなる。また、凹部3の摺動面からの深さは、リング径方向には一定である。図1および図3に示す例では、凹部3の底面は、摺動面(リングの側面2)から、幅方向中央側に向けてリング周方向に沿って傾斜した平面3aと平面3bとから構成される。
他の形態のV字状の凹部を図11に基づいて説明する。図11(a)〜(c)は、それぞれ、シールリングのV字状の凹部を正面方向から見た図である。図11(a)〜(c)に示すように、これらの形態では、凹部3の内径側3fの開口寸法より外径側3eの開口寸法の方が大きく設計されている。すなわち、リング側面2において、環状溝の側壁面との非接触面(白抜き部)であるV字状の凹部3の正面形状は、内径側3fより外径側3eの方が非接触面積が大きくなるよう形成されている。このように凹部を設計することによって、凹部に流入した作動油等がシールリングの回転軸との相対的回転によって凹部内から流出されるとき、凹部の内径側の開口寸法は外径側の開口寸法よりも小さいので、凹部の内径側の開口寸法と外径側の開口寸法とが同じ場合と比較して、より多くの作動油等が摺動面に流出されるようになる。これは、凹部内から流出される作動油等が凹部の周方向端部にぶつかったときにシールリングの内径側に抜け出る量を抑えることができるためである。
図1および図3に示す例では、最深部3cの位置は凹部3のリング周方向の中央位置であるが、特にこれに限定されるものではない。また、これらの例では、凹部3の底面は、リング周方向に沿って傾斜した平面3aと平面3bとから構成されるが、平面ではなく曲面で構成してもよい。また、凹部3の最深部3cの形状は、平面3aと平面3bとを単純に連結したV字状の他、曲線状や水平状としてもよい。曲線状や水平状としてもトルク低減の効果には悪影響がない。
凹部3の最深部3cの摺動面からの深さは、リング総幅の45%以下とすることが好ましく、30%以下とすることが更に好ましい。なお、ここでの「深さ」は、凹部をリングの両側面に形成する場合には、各側面の凹部の深さを合計したものである。リング総幅の45%をこえる場合、リングが使用時に大きく変形する等のおそれがある。
凹部のリング周方向の端部と摺動面との境界部について図4および図5に基づいて説明する。図4は図3におけるB部の拡大図であり、図5は境界部の一例を示す拡大断面図である。図5(a)に示すように、凹部3のリング周方向の端部と摺動面(リングの側面2)との境界部3dは、摺動面に対して急勾配に形成されていることが好ましい。すなわち、凹部3において、境界部3dの摺動面に対する勾配を、該境界部3d以外の部分の摺動面に対する勾配よりも大きくすることが好ましい。この構成により、急勾配を形成しない場合(図5(b))と比較して、摺動面が同程度摩耗した場合でも凹部の開口面積の減少が小さく、トルクの変化が生じない。この急勾配は、例えば図4に示すように、リングの幅方向中央側に凸のR状にすることができる。境界部3dの急勾配部をR状に形成することで、密封流体である作動油等が、より摺動面に流出しやすくなり、更に低トルクとなる。
本発明のシールリングの材質は特に限定されないが、上述の凹部を側面に形成することや、弾性変形により拡径して溝に装着すること等を考慮すれば合成樹脂の成形体とすることが好ましい。使用できる合成樹脂としては、例えば、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、PEEK樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す)樹脂等のフッ素樹脂、PPS樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。なお、これらの樹脂は単独で使用しても、2種類以上混合したポリマーアロイとしてもよい。
上述の凹部や複合ステップカットの合い口を有するシールリングの製造が容易であり低コストであること、機械加工された場合より回転トルクが低く安定すること等から、シールリングは、合成樹脂を射出成形してなる射出成形体にすることが好ましい。このため、合成樹脂としては、射出成形が可能である熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。その中でも特に、摩擦摩耗特性、曲げ弾性率、耐熱性、摺動性などに優れることから、PEEK樹脂またはPPS樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は高い弾性率を有し、溝に組み込む際に拡径しても割れることがなく、シールする作動油の油温が高くなる場合でも使用でき、また、ソルベントクラックの心配もない。
また、必要に応じて上記合成樹脂に、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの繊維状補強材、球状シリカや球状炭素などの球状充填材、マイカやタルクなどの鱗状補強材、チタン酸カリウムウィスカなどの微小繊維補強材を配合できる。また、PTFE樹脂、グラファイト、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの摺動補強材、カーボンブラックなども配合できる。これらは単独で配合することも、組み合せて配合することもできる。特に、PEEK樹脂またはPPS樹脂に、繊維状補強材である炭素繊維と、固体潤滑剤であるPTFE樹脂とを含むものが、本発明のシールリングに要求される特性を得やすいので好ましい。炭素繊維を配合することで、曲げ弾性率等の機械的強度の向上が図れ、PTFE樹脂の配合により摺動特性の向上が図れる。
合成樹脂製とする場合には、以上の諸原材料を溶融混練して成形用ペレットとし、これを用いて公知の射出成形法等により所定形状に成形する。射出成形により製造する場合、そのゲート位置は特に限定されないが、シール性の確保の観点および後加工が不要になることからリング内周面に設けた方が好ましい。また、ゲート位置は、リング内周面の合い口対向部に設けた方が、射出成形における流動バランスの面から好ましい。
実施例1および比較例1〜3
PEEK樹脂を主材料とし、炭素繊維およびPTFE樹脂を配合した樹脂組成物(NTN精密樹脂社製:ベアリーPK5301)を用い、表1に示すそれぞれの形状のシールリング(外径φ50mm、内径φ47mm、リング幅1.5mm、リング厚さ1.5mm)を射出成形により製造した。なお、表中の摺動面積は、非接触部となる各凹部を除くリング側面の面積である。
参考例1
実施例1と同材料を用い、図9(特開平8−121603号公報)に示す形状のシールリング(外径φ50mm、内径φ47mm、リング幅1.5mm、リング厚さ1.5mm)を射出成形により製造した。
得られたシールリングの特性について、図6に示す試験機により、回転トルク、オイルリーク量、摩耗量を、それぞれ評価した。図6は試験機の概略図である。相手軸11の環状溝にシールリング12、12’を装着した。シールリング12、12’は、相手軸11の環状溝側壁と、ハウジング13の軸孔内周面と摺接する。装置右側より油を圧送して、シールリング12と12’との間の環状隙間に供給した。回転トルク試験の条件は、油圧0.5〜3.0MPa、油温30〜150℃、回転数1000〜7000rpmとし、オイルリーク試験の条件は、油圧0.5〜3.0MPa、回転数1000〜7000rpm、油温30〜150℃(30℃、70℃、110℃、150℃の4条件)とし、摩耗試験の条件は、油圧3.0MPa、油温150℃で、回転数7000rpmとした。
この試験機により、相手軸の回転トルク、オイルリーク量(ml/min)、シールリング側面の摩耗量(摩耗深さ、μm)を測定した。回転トルクおよびオイルリーク量は、試験開始直後において測定した値に基づくものであり、摩耗量は、試験1時間経過後の量である。結果を表2に示す。ここで、回転トルクについては、同条件の比較例1を100%とし、他は比較例1との対比で示した。また、オイルリーク量については図7に、摩耗量については図8にそれぞれ示す。
表2に示すように、回転トルクは、実施例1が、低速から高速回転時のいずれも最も低トルクであり、比較例1(溝無しリング)と比較して50%以上低減できた。また、実施例1のシール特性は、比較例1(溝無しリング)と同等であった。また、摩耗量は、実施例1が最も少なく、比較例1(溝無しリング)の10%程度であった。この結果より、実施例1に係るシールリングは、低オイルリーク性と低トルク性とをバランス良く兼ね備えることが分かる。
本発明のシールリングは、シールリングの本来の目的である低オイルリーク性と、低トルク性をバランス良く兼ね備えるので、回転軸とハウジングとの間でこれらの特性が要求されるシールリングとして使用できる。特に、自動車等におけるATやCVTなどの油圧機器に燃費向上のために好適に使用できる。
1 シールリング
2 リング側面
3 V字状の凹部
4 合い口
5 ハウジング
6 回転軸
11 相手軸
12、12’ シールリング
13 ハウジング

Claims (7)

  1. 軸孔を有するハウジングおよび前記軸孔に挿通される回転軸の一方の部材に設けられた環状溝に装着されて、他方の部材表面に接触し、かつ前記環状溝の非密封流体側の側壁面に摺動自在に接触して、これら部材間の環状隙間を封止するシールリングであって、
    該シールリングは、少なくとも前記側壁面との摺動面となるリング側面の内径側端部の一部に、前記側壁面との非接触部となる、リング周方向に沿ったV字状の凹部が設けられており、
    前記凹部の底面は、リング周方向に沿って傾斜した2つの平面から構成され、
    前記凹部の前記摺動面からの深さは、該凹部のリング周方向の端部以外に最深部があり、
    前記凹部の最深部は、リング径方向に一定の深さの線状であり、
    前記凹部の最深部の位置は、該凹部のリング周方向の中央位置にあり、
    該最深部からリング周方向の両端部に向けて浅くなり、該最深部の前記摺動面からの深さは、前記シールリングの軸方向の長さであるリング総幅の45%以下であり、
    前記凹部のリング径方向の長さはリング総厚みの10〜60%であり、リング周方向の長さはリング全周の3〜20%であることを特徴とするシールリング。
  2. 前記凹部は、内径側の開口寸法より外径側の開口寸法の方が大きいことを特徴とする請求項1記載のシールリング。
  3. 前記凹部のリング周方向の両端部において、前記2つの平面は前記摺動面に直接接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシールリング。
  4. 前記凹部のリング周方向の端部と前記摺動面との境界部が前記摺動面に対して急勾配に形成され、前記凹部において、該境界部の前記摺動面に対する勾配が、該境界部以外の部分の前記摺動面に対する勾配よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシールリング。
  5. 前記凹部のリング周方向の端部と前記摺動面との境界部がR状に形成されていることを特徴とする請求項4記載のシールリング。
  6. 前記凹部がリング周方向で離間して複数個設けられ、隣り合う凹部同士の間のリング側面が前記摺動面の一部を構成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項記載のシールリング。
  7. 前記シールリングは合成樹脂製であり、該合成樹脂がポリフェニレンサルファイド樹脂またはポリエーテルエーテルケトン樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項記載のシールリング。
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