JP7147311B2 - 菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物 - Google Patents
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Description
特に、袋売りのメロンパンの上掛け生地部分においては、菓子生地が使用されているが、焼成から時間が経つにつれ、メロンパン下生地からの水分や、袋内に存在している水分がメロンパン上掛け生地部分に移行することから、焼成から時間が経ってもサクサクとした食感を維持することは困難である。メロンパンの上掛け生地部分等のベーカリー上掛け生地において、焼成から時間が経ってもサクサクとした食感を維持できることで、前記の利点をより発揮することができ、非常に有用となり得る。
(1)油脂、澱粉、蛋白質、水分を含み、かつ下記A)及びB)の特徴を有する菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物、
A)蛋白質含有素材として、全脂大豆からの水抽出物であって、炭水化物に対する蛋白質の重量比が100~200質量%である大豆抽出物を含むこと、
B)性状が可塑性を有すること、
(2) 更に下記C)の特徴を有する、(1)記載の菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物、
C)酸を含むこと、
(3)油脂を5~40質量%含む、(1)又は(2)記載の菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物、
(4)澱粉を2~15質量%含む、(1)~(3)の何れか1項記載の菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物、
(5)蛋白質を1~20質量%含む、(1)~(4)の何れか1項記載の菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物、
(6)蛋白質含有素材として、該大豆抽出物と、更に他の大豆蛋白素材を含む、(1)~(5)の何れか1項記載の菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物、
(7)該大豆蛋白素材が、分離大豆蛋白である、(6)記載の菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物、
(8)更に、多糖類を0.1~5質量%含む、(1)~(7)の何れか1項記載の菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物、
(9)該菓子生地が、ベーカリー上掛け生地である、(1)~(8)の何れか1項記載のベーカリー上掛け生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物、
に関するものである。
本発明の水中油型乳化油脂組成物に用いられる油脂としては、食用として用いられているものであれば植物性油脂、動物性油脂の何れを用いてもよい。例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂、又はこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。
本発明の水中油型乳化油脂組成物に用いられる澱粉としては、食用として用いられているものであれば何れを用いてもよく、例えば、小麦澱粉、米澱粉、モチ米澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ等の生澱粉や、これらに架橋処理、α化処理、エーテル化処理、エステル化処理、分解処理等の処理が施された加工澱粉等が挙げられる。
本発明の水中油型乳化油脂組成物に用いられる蛋白質としては、主に蛋白質含有素材の配合に由来する。
蛋白質含有素材として、少なくとも上記A)の特定の大豆抽出物(以下、「本抽出物」と称する場合がある。)を用いることを特徴とする。本発明の水中油型乳化油脂組成物中の総蛋白質における本抽出物由来の蛋白質の割合は、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上又は100質量%とすることができる。
以下、本抽出物の態様について説明する。
本抽出物の原料となる大豆は、全脂大豆である。全脂大豆は、圧搾やロールによる物理的処理や有機溶剤処理などにより大豆油の抽出処理がされていないものをいう。脂質含量は特に限定されないが、抽出処理がされていない全脂大豆では固形分中15質量%を超えるのが通常であり、多くは18質量%以上である。分離大豆蛋白や醤油の製造などに使用されているような脱脂大豆を原料とした場合は、本発明の効果を奏しにくい。
すなわち、試料2.0gに100mlの水を加え、40℃にて60分攪拌抽出し、1400×gにて10分間遠心分離し、上清1を得る。残った沈殿に再度100mlの水を加え、40℃にて60分攪拌抽出し、1400×gにて10分遠心分離し、上清2を得る。上清1および上清2を合わせ、さらに水を加えて250mlとする。No.5Aろ紙にてろ過したのち、ろ液の窒素含量をケルダール法にて測定する。同時に試料中の窒素含量をケルダール法にて測定し、ろ液として回収された窒素(水溶性窒素)の試料中の全窒素に対する割合を質量%として表したものをNSIとする。
かかる態様の場合、例えば全脂大豆から抽出した通常の脂質含量の高い全脂豆乳や、脱脂大豆から抽出した脱脂豆乳とは明確に区別されるものである。本抽出物は、いわゆる「低脂肪豆乳」が典型的には包含されるが、全脂大豆からの水性溶媒抽出物であって脂質含量が上記範囲である限り、これらの呼称に限定されるものではない。
大豆を水性溶媒で抽出する際の加水量、抽出温度、抽出時間等の抽出条件は特に限定されず、例えば加水量は大豆に対して2~15重量倍、抽出温度は20~99℃、抽出時間は20分~14時間などで設定すればよい。本抽出物は液状、固形状、粉末状の何れの形態もとり得る。
ここで、本抽出物中の炭水化物に対する蛋白質含量(以下、「P/C含量」と称する場合がある。)は、100~200質量%であることが重要である。さらに120質量%以上、130質量%以上や140質量%以上の範囲、またさらに190質量%以下、180質量%以下や170質量%以下の範囲を選択することができる。ちなみに全脂豆乳や脱脂豆乳粉末は、P/C含量が200質量%を大きく超え、相対的に高蛋白質含量であり、本抽出物とは異なる。
なお、本発明において、蛋白質含量はケルダール法により測定される。また炭水化物含量は、固形分から脂質、蛋白質及び灰分の含量の和を引いた計算値とする。
本抽出物の一形態である低脂肪豆乳は、固形分中の脂質含量とP/C含量が上記範囲にあるものである。ちなみに全脂大豆から公知の方法で抽出して得たスラリー(大豆粉砕液)から不溶性画分であるオカラを除去して得られる一般の豆乳(全脂豆乳)では、固形分中の脂質含量が上記範囲よりも高くなり、20質量%以上となる。またP/C含量も250を超える。低脂肪豆乳を得るには、スラリーや全脂豆乳から高速遠心分離等により脂質を分離する方法や、該スラリーからオカラを分離する際に脂質をオカラ側に移行させる方法を用いることができる。より好ましい態様として、上記の通り予め加熱処理された全脂大豆、好ましくはNSI15~77、より好ましくはNSI40~70の全脂大豆を原料とすることによって、より本発明の効果を向上させることができる。この方法は例えば特開2012-16348号公報に記載の方法を参照することができる。
本発明の水中油型乳化油脂組成物中の総蛋白質における、本抽出物由来以外の蛋白質含有素材の蛋白質の割合は、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下又は10質量%以下とすることができる。
本発明の水中油型乳化油脂組成物で用いることができる水分としては、飲用に適する限り特に限定されず、水道水、蒸留水、ミネラルウォーター等を用いることができる。本発明の水中油型乳化油脂組成物の水分含量は、上記水以外の原料中に含まれる水分も含めた水分含量として、40~80質量%が好ましく、50~70質量%がより好ましく、55~65質量%がさらに好ましい。
本発明の水中油型乳化油脂組成物には、更に、澱粉を除く多糖類を配合することが好ましい。該多糖類は、水中油型乳化油脂組成物中に含有してもよいし、水中油型乳化油脂組成物とは別に、別途菓子生地に併用することもできる。具体的には、プルラン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、グアーガム、タマリンドシードガム、カシアガム、トラガントガム、タラガム、カラギーナン、HMペクチン、LMペクチン、ファーセルラン、アラビアガム、寒天、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、アルギン酸塩、カードラン、アガロース、グリコサミノグリカン、マルトデキストリン、マルトシルトレハロース、ケラタン硫酸、グルカン、ヘパリン、カロース、β1,3-グルカン、レバン、フコイダン、キトサン、フルクタン、カラヤガム、シゾフィラン、レンチナン、ラミナラン、ラムナン硫酸、コンニャクマンナン、ガラクトマンナン、大豆多糖類、キシラン、ヒアルロン酸、アラビノキシラン、キシログルカン、サクラン、アグロバクテリウム、カチオン化グアーガム、スクシノグリカン等が挙げられる。本発明では、特に、プルラン及び/又はジェランガムを含有することがより好ましい。
本発明の水中油型乳化油脂組成物中に用いることができる、その他の原料としては、ゲル化剤、安定剤、乳化剤、食物繊維、糖類、甘味料、塩類等が挙げられる。
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、酸を含むことが好ましい。用いられる酸としては、食用として用いられているものであれば無機酸、有機酸の何れを用いてもよく、例えば、リン酸等の無機酸や、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、グルコン酸等の有機酸が挙げられる。本発明においては、これらの酸を単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。また乳酸を用いる場合、乳酸を添加する代わりに、以下のように乳酸菌を原料に添加して乳酸発酵させて乳酸を生成させても良い。また該乳酸発酵と酸の添加を併用することもできる。
本発明の水中油型乳化油脂組成物において、酸を含有させる好ましい態様として、上記の通り、少なくとも蛋白質を含む原料の一部又は全部を乳酸発酵させることができる。特に蛋白質を含む原料として本抽出物が乳酸発酵されていることが好ましく、他の蛋白質を含む原料が用いられる場合には、全ての蛋白質を含む原料が乳酸発酵されていることが好ましい。
蛋白質以外の油脂、澱粉や他の原料は、蛋白質を含む原料と共に乳酸発酵されていてもよい。例えば蛋白質と油脂を共に乳酸発酵する場合には、蛋白質と油脂との乳化物を乳酸発酵することができる。
乳酸発酵に使用される乳酸菌は特に限定はされず、通常の発酵乳に使用する一般的な乳酸菌、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス、ストレプコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ヘルベチカス、ラクトバチルス・ラクチス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・サンフランシスコ、ラクトバチルス・パネックス、ラクトバチルス・コモエンシス、ラクトバチルス・カルバタス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ヒルガルディ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ルテリ、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・ジアセチルラクチス、ロイコノストック・メセンテロイデス、ロイコノストック・クレモリス、ビフィドバクテリム属等の単独または混合物を使用することができる。
本発明の水中油型乳化油脂組成物のpHは、3.5以上7未満のpHにすることが好ましい。より好ましくはpH4~6.5、更に好ましくはpH4.5~6.0、最も好ましくはpH4.5~5.6にすることが好ましい。その際、該水中油型乳化油脂組成物には、原料を混合した後のpH又は乳酸発酵物の発酵停止時のpHに寄っては、必要により乳酸やクエン酸等の有機酸、あるいは逆にアルカリ剤を添加し、適宜目的とするpHに調整することが好ましい。
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、その性状が可塑性を有することを特徴とする。
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、可塑性を有し、かつ5℃におけるレオメーター測定値による硬さが150~400g/19.6mm2(直径30mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分)であるのが好ましい。
かかる硬さを有する可塑性の水中油型乳化油脂組成物は、菓子生地へ練り込む際、特に油脂類と砂糖などの糖類を一定時間攪拌した後のタイミングで加える場合に、均一に生地に練り込みやすい物性を有する。
本発明の水中油型乳化油脂組成物は、例えば全原料を混合、乳化して得た原料液に、酸を添加するか乳酸発酵することにより製造することが好ましい。また、例えば蛋白質を含む原料の一部又は全部を混合し、必要により油脂と乳化して得た原料液に酸を添加するか乳酸発酵した後、残りの原料を混合し、必要により油脂と乳化することにより製造することが好ましい。酸の添加又は乳酸発酵の前後には、必要により加熱殺菌を行うこともできる。また乳化はホモゲナイザー等により行うことができ、必要により乳化の前に予め撹拌機等により水相と油相を予備乳化させておいてもよい。
本発明で言う菓子類とは、小麦粉などの穀粉類、砂糖などの糖類、卵類、及び乳製品(乳成分)を主原料とし、食用油脂類などを添加し、混合した生地を成形し、焼成等の加熱により製造されるものを指す。特に、本発明では、ほぐれが良く、時間が経ってもサクサクとした食感を有することが好ましい菓子類を指す。具体的には、小麦粉を使用する、クッキー、ビスケット、サブレ、タルト、メロンパンの上掛け生地及び帽子パンの上掛け生地等のベーカリー上掛け生地や、小麦粉を使用するものではないが、マカロン、ボルガ生地、ダマンド生地、ダッチ生地を例示できる。特に、本発明において好ましい態様として、メロンパン等のベーカリー上掛け生地に使用することがより好ましい。
なお、本発明の菓子生地で用いる穀粉類としては、通常の菓子類の製造と同様、強力粉、薄力粉、中力粉などの小麦粉類の他、ライ麦粉、全粒粉、上新粉などの米粉、デュラム粉などの穀物の粉や、アーモンド、ヘーゼルナッツなどの木の実の粉や、各種澱粉、加工澱粉類から選ばれる1種類、あるいは2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、特に薄力粉、アーモンドパウダー(アーモンドプードル)、強力粉、上新粉、デュラム粉からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
また、穀粉100質量部に対して、水中油型乳化油脂組成物として1~40質量部添加することが好ましく、2~33質量部添加することがより好ましく、2.5~32質量部添加することが更に好ましく、3~30質量部添加することが最も好ましい。
(実施例1)
菜種硬化油16部を60℃に加温し、水30部と低脂肪豆乳「美味投入(R)」(不二製油(株)製)40部を混合して50℃に加温した。そこに分離大豆蛋白「プロリーナ700」(不二製油(株)製)5部、「プルラン」((株)林原製)1部、加工澱粉7部、増粘安定剤1部を加えて100部とし、50℃で撹拌しながら乳酸でpHを5.5に調整後、80~90℃で加熱撹拌して殺菌し、次いで2MPaの圧力にてホモゲナイザーで均質化し、冷却して本発明の「水中油型乳化油脂組成物P」を得た。
該組成物Pは、脂質含量が16.7%、澱粉含量が7.4%、蛋白質含量が6.4%、水分含量が67.0%であり、性状は可塑性であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが240g/19.6mm2(直径30mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分)である。
なお、本実施例で用いた低脂肪豆乳は、NSIが20~77の範囲となるように加熱処理された全脂大豆からの抽出物であり、特開2012-16348号公報に記載される方法で製造されている。本製品の固形分9.7%、脂質含量(固形分中)5.0%、蛋白質含量54.6%(固形分中)、炭水化物含量34.1%(固形分中)であり、P/C含量が160%である。また、本実施例で用いた分離大豆蛋白は、固形分94.2%、脂質含量(固形分中)0.2%、蛋白質含量91.0%(固形分中)、炭水化物含量4.6%(固形分中)である。
実施例1の分離大豆蛋白「プロリーナ700」(不二製油(株)製)を3.8部使用した以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、本発明の「水中油型乳化油脂組成物Q」を得た。該組成物Qの性状は可塑性であり、硬さが200g/19.6mm2であった。
実施例1で使用した低脂肪豆乳に代えて、市販の低脂肪牛乳を使用した以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、比較例の「水中油型乳化油脂組成物C1」を得た。
なお、本比較例で用いた低脂肪牛乳は、固形分11.2%、脂質含量8.9%(固形分中)、蛋白質含量33.9%(固形分中)、炭水化物含量49.1%(固形分中)であり、P/C含量が69.1%である。
実施例1で使用した低脂肪豆乳に代えて、全脂豆乳「無調整豆乳」(キッコーマン(株)製)を使用した以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、比較例の「水中油型乳化油脂組成物C2」を得た。
なお、本比較例で用いた全脂豆乳は、全脂大豆からの抽出物であり、固形分10.0%、脂質含量37.0%(固形分中)、蛋白質含量45.0%(固形分中)、炭水化物含量16.0%(固形分中)であり、P/C含量が281%である。
実施例1で使用した低脂肪豆乳に代えて、脱脂豆乳粉末「プロフィット1000」(不二製油(株)製)を使用した以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、比較例の「水中油型乳化油脂組成物C3」を得た。
なお、本比較例で用いた脱脂豆乳粉末は、脱脂大豆からの抽出物であり、固形分94.4%、脂質含量0.1%(固形分中)、蛋白質含量64.5%(固形分中)、炭水化物含量27.5%(固形分中)であり、P/C含量が235%である。
実施例1~2及び比較例1~3により得られた各水中油型乳化油脂組成物P,Q,C1~C3をメロンパンの上掛け生地(クッキー生地)に練り込み、メロンパンを製造し、上掛け部分(クッキー生地)の品質評価を行った。
練り込み用マーガリン(不二製油(株)製「トスタールME10」)45部、グラニュー糖70部をケンウッドミキサー(愛工舎製作所)のミキサーボールへ投入してミキシングし、比重が0.85になるまで混合及び攪拌した。次に、全卵33部を3回に分けて添加し、その都度30秒間ずつミキシングした。その後、薄力粉100部を添加し、40秒ミキシングした。
上記クッキー生地を、20℃で2時間寝かせた後、表面がなめらかになるまで捏ねた。その後、厚さ4.2mm、90mm×90mmの大きさにカットし、常法に従って予め調製したメロンパン下生地の上に被せ、35℃、湿度50%の条件で45分間ホイロ後、グラニュー糖3gをクッキー生地の上にふり掛け、上火175℃/下火190℃で18分間オーブンで焼成し、メロンパンを得た。
対照区にて配合している全卵を5部減らして28部とする代わりに、水中油型乳化油脂組成物P,Q,C1~C3のうち1つを10部配合する以外は、対照区の配合及び製法と同様にして、メロンパンを得た。
各試験区をそれぞれ試験区P,Q,C1~C3とした。なお、上掛け生地作製の際、ミキシング時の各水中油型乳化油脂組成物の練り込み易さを確認した。
対照区及び各試験区で調製したメロンパンを20名のパネラーにて試食し、上掛け生地部分の食感(サクサクとした食感とほぐれ)について、下記評価基準により官能評価を実施し、採点をした。
なお、サクサクとした食感とは、メロンパンを口に含むとき、歯で噛んだ際に歯切れが良い食感とし、評価した。また、ほぐれとは、メロンパンを口の中で咀嚼するときに、口の中でメロンパン上掛け生地部分がねちゃつかず、容易に砕けることを、ほぐれが良いとし、評価した。
・食感(サクサクとした食感)
5点:非常に良好(サクサクとした食感が強く感じられる)
4点:良好
3点:許容できる
2点:やや不良(サクサクとした食感が弱い)
1点:不良(サクサクとした食感がない、又はサクサクとした食感とは異なる)
・食感(ほぐれ)
5点:非常に良好(非常にほぐれが良い)
4点:良好(ほぐれが良い)
3点:許容できる
2点:やや不良(ややねちゃつく)
1点:不良(ねちゃつく)
A:4.5点以上
B:3.5点以上4.5点未満
C:2.5点以上3.5点未満
D:1.5点以上2.5点未満
E:1.5点未満
の5段階で評価付けを行い、サクサクとした食感及びほぐれの両食感がC評価以上のものを、合格品質とした。結果を表2に示した。
(実施例3)
菜種硬化油8.5部を60℃に加温し、水30部と低脂肪豆乳「美味投入(R)」(不二製油(株)製)53部を混合して50℃に加温した。そこに糖類5.5部、分離大豆蛋白「プロリーナ700」(不二製油(株)製)3部を混合し、50℃で加熱撹拌して予備乳化した後、該予備乳化液を2MPaの圧力にてホモゲナイザーで均質化し、70~85℃で殺菌後24℃まで冷却した。
次に、該乳化液に対してラクトバチルス・ブルガリカス及びストレプトコッカス・サーモフィラスを混合した乳酸菌スターターを0.01%添加して37~40℃で約5時間発酵させた。発酵液のpHは4.5であった。
得られた発酵液76.1部に対して、菜種硬化油10部、加工澱粉7部、増粘安定剤1部、さらに水を加えて100部とし、50℃で撹拌しながらアルカリでpHを5.6に調整後、80~90℃で加熱撹拌して殺菌し、次いで2MPaの圧力にてホモゲナイザーで均質化し、冷却して本発明の「水中油型乳化油脂組成物R」を得た。該組成物Rは、脂質含量が16.8%、澱粉含量が7.4%、蛋白質含量が4.3%、水分含量が65%であり、性状は可塑性であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが220g/19.6mm2(直径30mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分)である。
なお、本実施例で用いた低脂肪豆乳は、NSIが20~77の範囲となるように加熱処理された全脂大豆からの抽出物であり、特開2012-16348号公報に記載される方法で製造されている。本製品の固形分9.7%、脂質含量(固形分中)5.0%、蛋白質含量54.6%(固形分中)、炭水化物含量34.1%(固形分中)であり、P/C含量が160%である。
実施例3の分離大豆蛋白「プロリーナ700」(不二製油(株)製)を5部とした以外は、実施例3の配合及び製法と同様にして、本発明の「水中油型乳化油脂組成物S」を得た。該組成物Sの性状は可塑性であり、硬さが200g/19.6mm2であった。
実施例3の分離大豆蛋白「プロリーナ700」(不二製油(株)製)を5部とし、更にプルラン「プルラン」((株)林原製)0.5部使用した以外は、実施例3の配合及び製法と同様にして、本発明の「水中油型乳化油脂組成物T」を得た。該組成物Tの性状は可塑性であり、硬さが210g/19.6mm2であった。
実施例3の分離大豆蛋白「プロリーナ700」(不二製油(株)製)を、分離大豆蛋白「フジプロFR」(不二製油(株)製)とした以外は、実施例3の配合及び製法と同様にして、本発明の「水中油型乳化油脂組成物U」を得た。該組成物Uの性状は可塑性であり、硬さが180g/19.6mm2であった。
なお、本実施例で用いた分離大豆蛋白は、固形分95.0%、脂質含量(固形分中)0.5%、蛋白質含量91.5%(固形分中)、炭水化物含量3.3%(固形分中)である。
実施例3の分離大豆蛋白「プロリーナ700」(不二製油(株)製)を3部とし、更にジェランガム「ケルコゲル」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.5部使用した以外は、実施例3の配合及び製法と同様にして、本発明の「水中油型乳化油脂組成物V」を得た。該組成物Vの性状は可塑性であり、硬さが260g/19.6mm2であった。
○試験区R,S,T,U,V
試験区Pにて配合している水中油型乳化油脂組成物Pの代わりに、実施例3~7で得られた水中油型乳化油脂組成物R,S,T,U,Vのうち1つを配合する以外は、試験区Pの配合及び製法と同様にして、メロンパンを製造した。得られたメロンパンを20℃で保管し、保管開始から1日後のメロンパン上掛け生地部分の食感(サクサクとした食感及びほぐれ)について、試験例1と同じ評価基準に従って官能評価を行い、A~Eの5段階で評価付けを行った。結果を対照区と比較して表4に示した。
表2及び表4の結果から、乳酸発酵の有無にかかわらず、本発明に係る水中油型乳化油脂組成物を使用することで、サクサクとした食感及びほぐれの両立した菓子が得られることがわかった。
(実施例8)
実施例1において、原料を混合した後に調整するpHを5.5から4.5とする以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、本発明の水中油型乳化油脂組成物Wを得た。なお、pHの調整には、乳酸を添加して調整した。該組成物Wの性状は可塑性であり、硬さが220g/19.6mm2であった。
実施例1において、原料を混合した後に調整するpHを5.5から6.5に変更する以外は、実施例1の配合及び製法と同様にして、本発明の水中油型乳化油脂組成物Xを得た。なお、pHの調整には、アルカリ剤を添加して調整した。該組成物Xの性状は可塑性であり、硬さが210g/19.6mm2であった。
○試験区W,X
試験区Pにて配合している水中油型乳化油脂組成物Pの代わりに、実施例8,9で得られた水中油型乳化油脂組成物W,Xのうち1つを配合する以外は、試験区Pの配合及び製法と同様にして、メロンパンを製造した。得られたメロンパンを20℃で保管し、保管開始から1日後のメロンパン上掛け生地部分の食感(サクサクとした食感及びほぐれ)について、試験例1と同じ評価基準に従って官能評価を行い、A~Eの5段階で評価付けを行った。結果を対照区と比較して表6に示した。
○試験区P2~P5
試験区Pにて配合している本発明の水中油型乳化油脂組成物Pの配合量を10部から5部(試験区P2)、15部(試験区P3)、20部(試験区P4)、30部(試験区P5)に変更し、それに伴い、全卵の量をそれぞれ30部(試験区P2)、25部(試験区P3)、23部(試験区P4)、18部(試験区P5)と変更した以外は試験区Pの配合及び製法と同様にして、メロンパンを得た。
Claims (6)
- 油脂5~40質量%、澱粉2~15質量%、蛋白質1~20質量%、水分を含み、かつ下記A),B)及びC)の特徴を有する菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物。
A)蛋白質含有素材として、全脂大豆からの水抽出物であって、炭水化物に対する蛋白質の重量比が100~200質量%である大豆抽出物を含むこと、
B)性状が可塑性を有すること、
C)酸を含むこと、
ただし、水中油型乳化油脂組成物中の総蛋白質におけるA)の大豆抽出物由来の蛋白質の割合は、30~100質量%である。 - 蛋白質含有素材として、該大豆抽出物と、更に他の大豆蛋白素材を含む、請求項1項記載の菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組物。
ただし、該大豆蛋白素材が、分離大豆蛋白である。 - 更に、多糖類を0.1~5質量%含む、請求項1又は2記載の菓子生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物。
- 該菓子生地が、ベーカリー上掛け生地である、請求項1~3の何れか1項記載のベーカリー上掛け生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物。
- 請求項1~3の何れか1項記載の生地練り込み用水中油型乳化油脂組成物を、穀粉100質量部に対して1~40質量部添加し菓子生地に練り込むことを特徴とする、菓子の製造方法。
- 該菓子生地が、ベーカリー上掛け生地である、請求項5記載の製造方法。
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