以下に、本発明に係る基板処理装置であるバフ処理装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
<処理装置>
図1は、本発明の一実施形態に係る処理装置の全体構成を示す平面図である。図1に示すように、処理対象物に処理を行うための処理装置(CMP装置)1000は、略矩形状のハウジング1を備える。ハウジング1の内部は、隔壁1a,1bによって、ロード/アンロードユニット2と、研磨ユニット3と、洗浄ユニット4と、に区画される。ロード/アンロードユニット2、研磨ユニット3、及び洗浄ユニット4は、それぞれ独立に組み立てられ、独立に排気される。また、洗浄ユニット4は、処理装置に電源を供給する電源供給部と、処理動作を制御する制御装置5と、を備える。
<ロード/アンロードユニット>
ロード/アンロードユニット2は、多数の処理対象物(例えば、ウェハ(基板))をストックするウェハカセットが載置される2つ以上(本実施形態では4つ)のフロントロード部20を備える。これらのフロントロード部20は、ハウジング1に隣接して配置され、処理装置の幅方向(長手方向と垂直な方向)に沿って配列される。フロントロード部20には、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、又はFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができるようになっている。ここで、SMIF及びFOUPは、内部にウェハカセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
また、ロード/アンロードユニット2には、フロントロード部20の並びに沿って走行機構21が敷設される。走行機構21上には、ウェハカセットの配列方向に沿って移動可能な2台の搬送ロボット(ローダー、搬送機構)22が設置される。搬送ロボット22は、走行機構21上を移動することによって、フロントロード部20に搭載されたウェハカセットにアクセスできるようになっている。各搬送ロボット22は、上下に2つのハンドを備えている。上側のハンドは、処理されたウェハをウェハカセットに戻すときに使用される。下側のハンドは、処理前のウェハをウェハカセットから取り出すときに使用される。このように、上下のハンドを使い分けることができるようになっている。さらに、搬送ロボット22の下側のハンドは、ウェハを反転させることができるように構成されている。
ロード/アンロードユニット2は最もクリーンな状態を保つ必要がある領域であるため、ロード/アンロードユニット2の内部は、処理装置外部、研磨ユニット3、及び、洗浄ユニット4のいずれよりも高い圧力に常時維持されている。研磨ユニット3は、研磨液としてスラリを用いるため最もダーティな領域である。したがって、研磨ユニット3の内部には負圧が形成され、その圧力は洗浄ユニット4の内部圧力よりも低く維持される。ロード/アンロードユニット2には、HEPAフィルタ、ULPAフィルタ、又は、ケミカルフィルタなどのクリーンエアフィルタを有するフィルタファンユニット(図示せず)が設けられている。フィルタファンユニットからは、パーティクル、有毒蒸気、又は有毒ガスが除去されたクリーンエアが常時吹き出している。
<研磨ユニット>
研磨ユニット3は、ウェハの研磨(平坦化)が行われる領域である。研磨ユニット3は、第1研磨モジュール3A、第2研磨モジュール3B、第3研磨モジュール3C、及び、第4研磨モジュール3Dを備えている。第1研磨モジュール3A、第2研磨モジュール3B、第3研磨モジュール3C、及び第4研磨モジュール3Dは、図1に示すように、処理装置の長手方向に沿って配列される。
図1に示すように、第1研磨モジュール3Aは、研磨面を有する研磨パッド(研磨具)10が取り付けられた研磨テーブル30Aと、ウェハを保持して研磨テーブル30A上の研磨パッド10に押圧しながら研磨するためのトップリング31Aと、研磨パッド10に研磨液やドレッシング液(例えば、純水)を供給するための研磨液供給ノズル32Aと、研磨パッド10の研磨面のドレッシングを行うためのドレッサ33Aと、液体(例えば純水)と気体(例えば窒素ガス)の混合流体又は液体(例えば純水)を噴射して研磨面上のスラリや研磨生成物、及びドレッシングによる研磨パッド残渣を除去するアトマイザ34Aと、を備えている。
同様に、第2研磨モジュール3Bは、研磨テーブル30Bと、トップリング31Bと、研磨液供給ノズル32Bと、ドレッサ33Bと、アトマイザ34Bと、を備えている。第3研磨モジュール3Cは、研磨テーブル30Cと、トップリング31Cと、研磨液供給ノ
ズル32Cと、ドレッサ33Cと、アトマイザ34Cと、を備えている。第4研磨モジュール3Dは、研磨テーブル30Dと、トップリング31Dと、研磨液供給ノズル32Dと、ドレッサ33Dと、アトマイザ34Dと、を備えている。
第1研磨モジュール3A、第2研磨モジュール3B、第3研磨モジュール3C、及び第4研磨モジュール3Dは、互いに同一の構成を有しているので、以下、第1研磨モジュール3Aについてのみ説明する。
図2は、第1研磨モジュール3Aを模式的に示す斜視図である。トップリング31Aは、トップリングシャフト36に支持される。研磨テーブル30Aの上面には研磨パッド10が貼付される。研磨パッド10の上面は、ウェハWを研磨する研磨面を形成する。なお、研磨パッド10に代えて固定砥粒を用いることもできる。トップリング31A及び研磨テーブル30Aは、矢印で示すように、その軸心周りに回転するように構成される。ウェハWは、トップリング31Aの下面に真空吸着により保持される。研磨時には、研磨液供給ノズル32Aから研磨パッド10の研磨面に研磨液が供給された状態で、研磨対象であるウェハWがトップリング31Aにより研磨パッド10の研磨面に押圧されて研磨される。
<搬送機構>
次に、ウェハを搬送するための搬送機構について説明する。図1に示すように、第1研磨モジュール3A及び第2研磨モジュール3Bに隣接して、第1リニアトランスポータ6が配置されている。第1リニアトランスポータ6は、研磨モジュール3A,3Bが配列する方向に沿った4つの搬送位置(ロード/アンロードユニット側から順番に第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4とする)の間でウェハを搬送する機構である。
また、第3研磨モジュール3C及び第4研磨モジュール3Dに隣接して、第2リニアトランスポータ7が配置される。第2リニアトランスポータ7は、研磨モジュール3C,3Dが配列する方向に沿った3つの搬送位置(ロード/アンロードユニット側から順番に第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7とする)の間でウェハを搬送する機構である。
ウェハは、第1リニアトランスポータ6によって研磨モジュール3A,3Bに搬送される。第1研磨モジュール3Aのトップリング31Aは、トップリングヘッドのスイング動作により研磨位置と第2搬送位置TP2との間を移動する。したがって、トップリング31Aへのウェハの受け渡しは第2搬送位置TP2で行われる。同様に、第2研磨モジュール3Bのトップリング31Bは研磨位置と第3搬送位置TP3との間を移動し、トップリング31Bへのウェハの受け渡しは第3搬送位置TP3で行われる。第3研磨モジュール3Cのトップリング31Cは研磨位置と第6搬送位置TP6との間を移動し、トップリング31Cへのウェハの受け渡しは第6搬送位置TP6で行われる。第4研磨モジュール3Dのトップリング31Dは研磨位置と第7搬送位置TP7との間を移動し、トップリング31Dへのウェハの受け渡しは第7搬送位置TP7で行われる。
第1搬送位置TP1には、搬送ロボット22からウェハを受け取るためのリフタ11が配置されている。ウェハは、リフタ11を介して搬送ロボット22から第1リニアトランスポータ6に渡される。リフタ11と搬送ロボット22との間に位置して、シャッタ(図示せず)が隔壁1aに設けられており、ウェハの搬送時にはシャッタが開かれて搬送ロボット22からリフタ11にウェハが渡されるようになっている。また、第1リニアトランスポータ6と、第2リニアトランスポータ7と、洗浄ユニット4と、の間にはスイングトランスポータ12が配置されている。スイングトランスポータ12は、第4搬送位置TP
4と第5搬送位置TP5との間を移動可能なハンドを有している。第1リニアトランスポータ6から第2リニアトランスポータ7へのウェハの受け渡しは、スイングトランスポータ12によって行われる。ウェハは、第2リニアトランスポータ7によって第3研磨モジュール3C及び/又は第4研磨モジュール3Dに搬送される。また、研磨ユニット3で研磨されたウェハはスイングトランスポータ12を経由して洗浄ユニット4に搬送される。なお、スイングトランスポータ12の側方には、図示しないフレームに設置されたウェハWの仮置き台180が配置されている。仮置き台180は、第1リニアトランスポータ6に隣接して配置されており、第1リニアトランスポータ6と洗浄ユニット4との間に位置している。
<洗浄ユニット>
図3(a)は洗浄ユニット4を示す平面図であり、図3(b)は洗浄ユニット4を示す側面図である。図3(a)及び図3(b)に示すように、洗浄ユニット4は、ここではロール洗浄室190と、第1搬送室191と、ペン洗浄室192と、第2搬送室193と、乾燥室194と、バフ処理室300と、第3搬送室195と、に区画されている。なお、研磨ユニット3、ロール洗浄室190、ペン洗浄室192、乾燥室194、及びバフ処理室300の各室間の圧力バランスは、乾燥室194>ロール洗浄室190及びペン洗浄室192>バフ処理室300≧研磨ユニット3とすることができる。研磨ユニットでは研磨液を使用しており、バフ処理室についてもバフ処理液として研磨液を使用することがある。よって、上記のような圧力バランスにすることで、特に研磨液中の砥粒といったパーティクル成分の洗浄及び乾燥室への流入を防止することが可能であり、よって洗浄及び乾燥室の清浄度維持が可能となる。
ロール洗浄室190内には、縦方向に沿って配列された上側ロール洗浄モジュール201A及び下側ロール洗浄モジュール201Bが配置されている。上側ロール洗浄モジュール201Aは、下側ロール洗浄モジュール201Bの上方に配置されている。上側ロール洗浄モジュール201A及び下側ロール洗浄モジュール201Bは、洗浄液をウェハの表裏面に供給しながら、回転する2つのロールスポンジ(第1洗浄具)をウェハの表裏面にそれぞれ押し付けることによってウェハを洗浄する洗浄機である。上側ロール洗浄モジュール201Aと下側ロール洗浄モジュール201Bとの間には、ウェハの仮置き台204が設けられている。
ペン洗浄室192内には、縦方向に沿って配列された上側ペン洗浄モジュール202A及び下側ペン洗浄モジュール202Bが配置されている。上側ペン洗浄モジュール202Aは、下側ペン洗浄モジュール202Bの上方に配置されている。上側ペン洗浄モジュール202A及び下側ペン洗浄モジュール202Bは、洗浄液をウェハの表面に供給しながら、回転するペンシルスポンジ(第2洗浄具)をウェハの表面に押し付けてウェハの径方向に揺動することによってウェハを洗浄する洗浄機である。上側ペン洗浄モジュール202Aと下側ペン洗浄モジュール202Bとの間には、ウェハの仮置き台203が設けられている。
乾燥室194内には、縦方向に沿って配列された上側乾燥モジュール205A及び下側乾燥モジュール205Bが配置されている。上側乾燥モジュール205A及び下側乾燥モジュール205Bは、互いに隔離されている。上側乾燥モジュール205A及び下側乾燥モジュール205Bの上部には、清浄な空気を乾燥モジュール205A,205B内にそれぞれ供給するフィルタファンユニット207A,207Bが設けられている。
上側ロール洗浄モジュール201A、下側ロール洗浄モジュール201B、上側ペン洗浄モジュール202A、下側ペン洗浄モジュール202B、仮置き台203、上側乾燥モジュール205A、及び下側乾燥モジュール205Bは、図示しないフレームにボルトな
どを介して固定される。
第1搬送室191には、上下動可能な第1搬送ロボット(搬送機構)209が配置される。第2搬送室193には、上下動可能な第2搬送ロボット210が配置される。第3搬送室195には、上下動可能な第3搬送ロボット(搬送機構)213が配置される。第1搬送ロボット209、第2搬送ロボット210、及び、第3搬送ロボット213は、縦方向に延びる支持軸211,212,214にそれぞれ移動自在に支持されている。第1搬送ロボット209、第2搬送ロボット210、及び、第3搬送ロボット213は、内部にモータなどの駆動機構を有しており、支持軸211,212,214に沿って上下に移動自在となっている。第1搬送ロボット209は、搬送ロボット22と同様に、上下二段のハンドを有している。第1搬送ロボット209は、図3(a)の点線で示すように、その下側のハンドが上述した仮置き台180にアクセス可能な位置に配置されている。第1搬送ロボット209の下側のハンドが仮置き台180にアクセスするときには、隔壁1bに設けられているシャッタ(図示せず)が開くようになっている。
第1搬送ロボット209は、仮置き台180、上側ロール洗浄モジュール201A、下側ロール洗浄モジュール201B、仮置き台204、仮置き台203、上側ペン洗浄モジュール202A、及び、下側ペン洗浄モジュール202B、の間でウェハWを搬送するように動作する。洗浄前のウェハ(スラリが付着しているウェハ)を搬送するときは、第1搬送ロボット209は、下側のハンドを用い、洗浄後のウェハを搬送するときは上側のハンドを用いる。
第2搬送ロボット210は、上側ペン洗浄モジュール202A、下側ペン洗浄モジュール202B、仮置き台203、上側乾燥モジュール205A、及び、下側乾燥モジュール205B、の間でウェハWを搬送するように動作する。第2搬送ロボット210は、洗浄されたウェハのみを搬送するので、1つのハンドのみを備えている。図1に示す搬送ロボット22は、上側のハンドを用いて上側乾燥モジュール205A又は下側乾燥モジュール205Bからウェハを取り出し、そのウェハをウェハカセットに戻す。搬送ロボット22の上側ハンドが乾燥モジュール205A,205Bにアクセスするときには、隔壁1aに設けられているシャッタ(図示せず)が開くようになっている。
バフ処理室300には、上側バフ処理モジュール300A、及び、下側バフ処理モジュール300Bが備えられる。第3搬送ロボット213は、上側ロール洗浄モジュール201A、下側ロール洗浄モジュール201B、仮置き台204、上側バフ処理モジュール300A、及び、下側バフ処理モジュール300B、の間でウェハWを搬送するように動作する。
なお、本実施形態では、洗浄ユニット4内において、バフ処理室300、ロール洗浄室190、及び、ペン洗浄室192、を、ロード/アンロードユニット2から遠い方から順番に並べて配置する例を示したが、これには限られない。バフ処理室300、ロール洗浄室190、及び、ペン洗浄室192の配置態様は、ウェハの品質及びスループットなどに応じて適宜選択し得る。また、本実施形態では、上側バフ処理モジュール300A、及び、下側バフ処理モジュール300Bを備える例を示すが、これに限らず一方のバフ処理モジュールのみを備えていてもよい。また、本実施形態では、バフ処理室300の他に、ウェハWを洗浄するモジュールとしてロール洗浄モジュール、及び、ペン洗浄モジュールを挙げて説明したが、これに限らず、2流体ジェット洗浄(2FJ洗浄)又はメガソニック洗浄を行うこともできる。2流体ジェット洗浄は、高速気体に乗せた微小液滴(ミスト)を2流体ノズルからウェハWに向けて噴出させて衝突させ、微小液滴のウェハW表面への衝突で発生した衝撃波を利用してウェハW表面のパーティクル等を除去(洗浄)するものである。メガソニック洗浄は、洗浄液に超音波を加え、洗浄液分子の振動加速度による作
用力をパーティクル等の付着粒子に作用させて除去するものである。以下、上側バフ処理モジュール300A、及び、下側バフ処理モジュール300Bについて説明する。上側バフ処理モジュール300A、及び、下側バフ処理モジュール300Bは、同様の構成であるため、上側バフ処理モジュール300Aのみ説明する。
<バフ処理モジュール>
図4は、上側バフ処理モジュールの概略構成を示す図である。図4に示すように、上側バフ処理モジュール300Aは、ウェハWが設置されるバフテーブル400と、バフ処理コンポーネント350と、バフ処理液を供給するための液供給系統700と、バフパッド502のコンディショニング(目立て)を行うためのコンディショニング部800と、を備える。バフ処理コンポーネント350は、ウェハWの処理面にバフ処理を行うためのバフパッド502が取り付けられたバフヘッド500と、バフヘッド500を保持するバフアーム600と、を備える。
バフ処理液は、DIW(純水)、洗浄薬液、及び、スラリのような研磨液、の少なくとも1つを含む。バフ処理の方式としては主に2種類ある。1つは処理対象であるウェハ上に残留するスラリや研磨生成物の残渣といった汚染物をバフパッドとの接触時に除去する方式である。もう1つの方式は上記汚染物が付着した処理対象を研磨等により一定量除去する方式である。前者においては、バフ処理液は洗浄薬液やDIWが好ましく、後者においては研磨液が好ましい。但し、後者においては、上記処理での除去量は例えば10nm未満、好ましくは5nm以下であることが、CMP後の被処理面の状態(平坦性や残膜量)の維持にとっては望ましく、この場合、通常のCMPほどの除去速度が必要ない場合がある。そのような場合、適宜研磨液に対して希釈等の処理を行うことで処理速度の調整を行っても良い。また、バフパッド502は、例えば発泡ポリウレタン系のハードパッド、スウェード系のソフトパッド、又は、スポンジなどで形成される。バフパッドの種類は処理対象物の材質や除去すべき汚染物の状態に対して適宜選択すれば良い。例えば汚染物が処理対象物表面に埋まっている場合は、より汚染物に物理力を作用させやすいハードパッド、すなわち硬度や剛性の高いパッドをバフパッドとして使用しても良い。一方で処理対象物が例えばLow-k膜等の機械的強度の小さな材料である場合、被処理面のダメージ低減のために、ソフトパッドを使用しても良い。また、バフ処理液がスラリのような研磨液の場合、処理対象物の除去速度や汚染物の除去効率、ダメージ発生の有無は単にバフパッドの硬度や剛性だけでは決まらないため、適宜選択しても良い。また、これらのバフパッドの表面には、例えば同心円状溝やXY溝、渦巻き溝、放射状溝といった溝形状が施されていても良い。更に、バフパッドを貫通する穴を少なくとも1つ以上バフパッド内に設け、本穴を通してバフ処理液を供給しても良い。また、バフパッドを例えばPVAスポンジのような、バフ処理液が浸透可能なスポンジ状の材料を使用しても良い。これらにより、バフパッド面内でのバフ処理液の流れ分布の均一化やバフ処理で除去された汚染物の速やかな排出が可能となる。
バフテーブル400は、ウェハWを吸着する機構を有する。また、バフテーブル400は、図示していない駆動機構によって回転軸A周りに回転できるようになっている。また、バフテーブル400は、図示していない駆動機構によって、ウェハWに角度回転運動、又は、スクロール運動をさせるようになっていてもよい。バフパッド502は、バフヘッド500のウェハWに対向する面に取り付けられる。バフヘッド500は、図示していない駆動機構によって回転軸B周りに回転できるようになっている。また、バフヘッド500は、図示していない駆動機構によってバフパッド502をウェハWの処理面に押圧できるようになっている。バフアーム600は、バフヘッド500を矢印Cに示すようにウェハWの半径もしくは直径の範囲内で移動可能である。また、バフアーム600は、バフパッド502がコンディショニング部800に対向する位置までバフヘッド500を揺動できるようになっている。
コンディショニング部800は、バフパッド502の表面をコンディショニングするための部材である。コンディショニング部800は、ドレステーブル810と、ドレステーブル810に設置されたドレッサ820と、を備える。ドレステーブル810は、図示していない駆動機構によって回転軸D周りに回転できるようになっている。また、ドレステーブル810は、図示していない駆動機構によってドレッサ820にスクロール運動をさせるようになっていてもよい。ドレッサ820は、表面にダイヤモンドの粒子が電着固定された、又は、ダイヤモンド砥粒がバフパッドとの接触面の全面もしくは一部に配置されたダイヤドレッサ、樹脂製のブラシ毛がバフパッドとの接触面の全面もしくは一部に配置されたブラシドレッサ、又はこれらの組み合わせで形成される。
上側バフ処理モジュール300Aは、バフパッド502のコンディショニングを行う際には、バフパッド502がドレッサ820に対向する位置になるまでバフアーム600を旋回させる。上側バフ処理モジュール300Aは、ドレステーブル810を回転軸D周りに回転させるとともにバフヘッド500を回転させ、バフパッド502をドレッサ820に押し付けることによって、バフパッド502のコンディショニングを行う。コンディショニング条件としては、コンディショニング荷重は~80Nであり、40N以下であることがバフパッドの寿命の観点からなお良い。また、バフパッド502及びドレッサ820の回転数は500rpm以下での使用が望ましい。なお、本実施形態は、ウェハWの処理面及びドレッサ820のドレス面が水平方向に沿って設置される例を示すが、これに限定されない。例えば、上側バフ処理モジュール300Aは、ウェハWの処理面及びドレッサ820のドレス面が鉛直方向に沿って設置されるように、バフテーブル400及びドレステーブル810を配置することができる。この場合、バフアーム600及びバフヘッド500は、鉛直方向に配置されたウェハWの処理面に対してバフパッド502を接触させてバフ処理を行い、鉛直方向に配置されたドレッサ820のドレス面に対してバフパッド502を接触させてコンディショニング処理を行うことができるように配置される。また、バフテーブル400もしくはドレステーブル810のいずれか一方が鉛直方向に配置され、バフアーム600に配置されたバフパッド502が各テーブル面に対して垂直になるようバフアーム600の全部もしくは一部が回転しても良い。
液供給系統700は、ウェハWの処理面に純水(DIW)を供給するための純水ノズル710を備える。純水ノズル710は、純水配管712を介して純水供給源714に接続される。純水配管712には、純水配管712を開閉することができる開閉弁716が設けられる。制御装置5は、開閉弁716の開閉を制御することにより、任意のタイミングでウェハWの処理面に純水を供給することができる。
また、液供給系統700は、ウェハWの処理面に薬液(Chemi)を供給するための薬液ノズル720を備える。薬液ノズル720は、薬液配管722を介して薬液供給源724に接続される。薬液配管722には、薬液配管722を開閉することができる開閉弁726が設けられる。制御装置5は、開閉弁726の開閉を制御することにより、任意のタイミングでウェハWの処理面に薬液を供給することができる。
また、液供給系統700は、ウェハWの処理面にスラリを供給するためのスラリノズル730を備える。スラリノズル730は、スラリ配管732を介してスラリ供給源734に接続される。スラリ配管732には、スラリ配管732を開閉することができる開閉弁736が設けられる。制御装置5は、開閉弁736の開閉を制御することにより、任意のタイミングでウェハWの処理面にスラリを供給することができる。
上側バフ処理モジュール300Aは、ウェハWに処理液を供給するとともにバフテーブル400を回転軸A周りに回転させ、バフパッド502をウェハWの処理面に押圧し、バ
フヘッド500を回転軸B周りに回転させながら矢印C方向に揺動することによって、ウェハWにバフ処理を行うことができる。なお、バフ処理における条件であるが、基本的には本処理はメカニカル作用によるディフェクト除去であるものの、一方でウェハWへのダメージの低減を考慮して、圧力は3psi以下、好ましくは2psi以下が望ましい。また、ウェハW及びバフヘッド500の回転数は、バフ処理液の面内分布を考慮して1000rpm以下であることが望ましい。また、バフヘッド500の移動速度は、300mm/sec以下である。しかしながら、ウェハW及びバフヘッド500の回転数及びバフヘッド500の移動距離により、最適な移動速度の分布は異なるため、ウェハW面内でバフヘッド500の移動速度は可変であることが望ましい。この場合の移動速度の変化方式としては、例えばウェハW面内での揺動距離を複数の区間に分割し、それぞれの区間に対して移動速度を設定できる方式が望ましい。また、バフ処理液流量としては、ウェハW及びバフヘッド500が高速回転時も十分な処理液のウェハ面内分布を保つためには大流量が良い。しかしその一方で、処理液流量増加は処理コストの増加を招くため、流量としては1000ml/min以下、好ましくは500ml/min以下であることが望ましい。
ここで、バフ処理とは、バフ研磨処理とバフ洗浄処理の少なくとも一方を含むものである。
バフ研磨処理とは、ウェハWに対してバフパッド502を接触させながら、ウェハWとバフパッド502を相対運動させ、ウェハWとバフパッド502との間にスラリ等の研磨を介在させることによりウェハWの処理面を研磨除去する処理である。バフ研磨処理は、ロール洗浄室190においてロールスポンジによってウェハWに加える物理的作用力、及、ペン洗浄室192においてペンスポンジによってウェハWに加える物理的作用力、よりも強い物理的作用力をウェハWに対して加えることができる処理である。バフ研磨処理によって、汚染物が付着した表層部の除去、研磨ユニット3における主研磨で除去できなかった箇所の追加除去、又は主研磨後のモフォロジー改善、を実現することができる。
バフ洗浄処理とは、ウェハWに対してバフパッド502を接触させながら、ウェハWとバフパッド502を相対運動させ、ウェハWとバフパッド502との間に洗浄処理液(薬液、又は、薬液と純水)を介在させることによりウェハW表面の汚染物を除去したり、処理面を改質したりする処理である。バフ洗浄処理は、ロール洗浄室190においてロールスポンジによってウェハWに加える物理的作用力、及び、ペン洗浄室192においてペンスポンジによってウェハWに加える物理的作用力、よりも強い物理的作用力をウェハWに対して加えることができる処理である。
次に、本発明によるバフ処理装置の詳細を説明する。図5は、一実施形態によるバフ処理装置のバフヘッド500付近の概略断面図である。本実施形態のバフ処理装置は、回転可能なシャフト510を備える。シャフト510は、図示しないモータ等の回転駆動機構が連結されている。シャフト510はバフアーム600から下方に延びる。また、図示の実施形態において、シャフト510は中空である。シャフト510の内部にスラリ、薬液、純水などの処理液を通す配管を設けて、処理液をバフヘッドの内部から供給するようにしてもよい。図5に示されるように、シャフト510には、ボス511が固定される。ボス511は、シャフト510の全周を取り囲む、少なくとも一部が円筒形状を備える。ボス511はシャフト510とともに回転する。図5に示されるように、ボス511の下方の一部にバフヘッドフランジ513が固定される。バフヘッドフランジ513は概ね円板状の構造である。バフヘッドフランジ513には、後述する駆動ピン514およびボルト517を通す領域が設けられる。シャフト510およびボス511の回転により、バフヘッドフランジ513も回転する。
図5に示されるように、シャフト510には、球面滑り軸受520が取り付けられる。
より具体的には、シャフト510には、球面滑り軸受520の内輪520aが固定される。内輪520aの外側には外輪520bが配置される。球面滑り軸受520の内輪520aの外面は球状の凸面であり、外輪520bの内面は球状の凹面である。内輪520aの球状の凸面と外輪520bの球状の凹面は互いに滑ることができ、ジンバル機構を構成する。球面滑り軸受520の外輪520bには、バフヘッド本体512が固定される。バフヘッド本体512の下面には、バフパッドキャリア518が取り付けられる。バフパッドキャリア518は、バフヘッド本体512から取り外し可能に取り付けられる。バフパッドキャリア518の下面には、バフパッド502が取り付けられる。バフパッド502は、ウェハWに直接的に接触して、ウェハWをバフ処理するためのものである。上述のように、バフパッド502は、例えば発泡ポリウレタン系のハードパッド、スウェード系のソフトパッド、又は、スポンジなどで形成される。本発明において、ハードパッドとは、弾性率が概ね350psiから3,000psiの範囲のものをいう。また、本発明において、ソフトパッドとは、弾性率が概ね50psiから300psiのものをいう。
図5に示されるように、バフヘッドフランジ513とバフヘッド本体512とは、駆動ピン514により連結される。そのため、シャフト510、ボス511、およびバフヘッドフランジ513の回転トルクがバフヘッド本体512に伝達される。バフヘッド本体512が回転駆動されることで、バフパッドキャリア518およびバフパッド502を回転駆動させることができる。なお、上述したように、球面滑り軸受520によりジンバル機構が構成されているので、バフヘッド本体512は回転しながら、球面滑り軸受520の滑り面に沿って傾動することができる。
図5に示されるように、バフヘッド本体512には、バフヘッドフランジ513を通ってボルト517がねじ込まれている。ボルト517の頭部の下面とバフヘッドフランジ513の間にはばね516(弾性部材)が配置される。そのため、ばね516の力でバフヘッド本体512を支持している。換言すれば、ばね516がバフヘッド本体512のジンバル動作(傾動)に負荷を与える。そのため、バフパッド502に下面から力が加えられない限り、ばね516によりバフパッド502の平行位置が保たれる。また、ばね516により、バフヘッド本体512を支持することにより、ウェハWをバフ処理中にバフヘッド500が傾く、いわゆるコッキングを防止または緩和することができる。ばね516のばね定数は、バフヘッド本体512を支持する力、ジンバル動作に与える負荷などを考慮して選択される。
図5に示されるように、バフ処理装置は、バフヘッド500の周囲を囲うカバー550を備える。カバー550は、処理液などの液体がバフヘッド500の内部に侵入することを防止するためのものである。カバー550の詳細な構造は後述する。
図6は、図5に示されるバフヘッド500の上面断面図である。図6に示される実施形態において、駆動ピン514およびばね516は、それぞれ3個ずつバフヘッド500の円周方向に交互に等間隔で配置される。他の実施形態として、駆動ピン514およびばね516は3個ずつでなくてもよく、たとえば、2個ずつとしてもよい。あるいは、他の実施形態として、それぞれ4個以上の駆動ピン514およびばね516をバフヘッド500の円周方向に交互に等間隔で配置してもよい。駆動ピン514およびばね516の数が多い方が、バフ処理時にウェハWの面内均一性を向上させることができると考えられる。
図5、6に示される実施形態のバフ処理装置の動作を説明する。シャフト510が回転すると、回転力は、シャフト510、ボス511、バフヘッドフランジ513へと伝達され、駆動ピン514により回転力がバフヘッド本体512へ伝達され、バフパッドキャリア518およびバフパッド502へと伝達される。
また、バフパッド502を処理するウェハWに押し付けるときは、シャフト510を下方向に移動させることで、下方向の力がシャフト510、球面滑り軸受520の内輪520a、外輪520b、バフヘッド本体512、バフパッドキャリア518、バフパッド502と伝達され、バフパッド502をウェハWに押し付けることができる。
また、バフパッド502を処理するウェハWから引き離すときは、シャフト510を上方向に移動させることで、持ち上げ力は、シャフト510、ボス511、バフヘッドフランジ513、ばね516、ボルト517、バフヘッド本体512、バフパッドキャリア518、バフヘッド502へと伝達され、バフパッド502がウェハWから引き離される。
図7は、一実施形態によるバフ処理装置のバフヘッド500付近の概略断面図である。図7に示される実施形態においては、図5に示される実施形態と同様に、シャフト510、ボス511、バフヘッド本体512、バフヘッドキャリア518、およびバフパッド502を備える。しかし、図7に示される実施形態においては、図5の実施形態のバフヘッドフランジ513、駆動ピン514およびばね516の代わりに、リング状のベローズ型カップリング522が設けられる。ベローズ型カップリング522は、図7に示されるように、一端がボス511に固定され、他端がバフヘッド本体512に固定される。ベローズ型カップリング522は、図5の実施形態の駆動ピン514およびばね516の両方の機能を持つものであり、シャフト510の回転トルクをバフヘッド本体512に伝達するとともに、バフヘッド本体512を弾性的に支持する。図7の実施形態のように、ベローズ型カップリング522を使用すると、図5の実施形態と比べて部品点数を減らすことができ、また、バフヘッド本体512の全周を弾性的に支持することができる、というメリットがある。一方で、図5の駆動ピン514およびばね516を使用する実施形態においては、ベローズ型カップリング522を使用する実施形態と比べて、ばね516のばね定数の選択肢が多いというメリットがある。
さらに、図7に示される実施形態においては、図5に示されるような球面滑り軸受520を備えていない。図7に示される実施形態において、ボス511の下側にヘッド支柱部524が固定される。ヘッド支柱部524の下面は、バフヘッド本体512と接触する球面状の凹面を備える。一方、バフヘッド本体512のヘッド支柱部524に接触する領域は、球面状の凸面を備える。ヘッド支柱部524の球面状の凹面と、バフヘッド本体512の球面状の凸面とは、滑り動き可能であり、ジンバル機構が形成される。図7に示されるジンバル機構の回転中心は、図5に示される実施形態のジンバル機構の回転中心よりも低い位置にある。図7の実施形態においては、ジンバル機構の回転中心は、概ねバフパッド502の表面付近にある。一実施形態として、ジンバルの回転中心はバフパッド502の表面から10mmの範囲内とすることができる。一実施形態として、バフパッド502としてソフトパッドを使用する場合は、ジンバル機構の回転中心は、バフパッド502の表面からの距離がバフパッド502の直径の0.1倍以下になるようにする。一方、バフパッド502としてハードパッドを使用する場合は、ジンバル機構の回転中心は、バフパッド502の表面からの距離がバフパッド502の直径の0.3倍以下になるようにする。図7に示される実施形態のように、ジンバル機構の回転中心をバフパッド502の表面付近にすることで、バフ処理時のコッキングを防止または緩和することができる。ソフトパッドの方がハードパッドよりもコッキングの影響を受けやすいので、ソフトパッドを使用する場合は、ハードパッドを使用する場合よりも、ジンバル機構の回転中心をよりバフパッドの表面付近にすることが望ましい。
さらに、図7に示される実施形態によるバフ処理装置は、支持部材526を備える。支持部材526は、バフヘッド本体512に固定される。支持部材526は、下面の一部がヘッド支柱部524の一部と軸方向に重なるように配置される。ただし、ヘッド支柱部524と支持部材526との間には隙間があり、バフヘッド500をウェハWから引き上げ
るとき以外は接触しないように構成される。
図7に示される実施形態のバフ処理装置の動作を説明する。シャフト510が回転すると、回転力は、シャフト510、ボス511、ベローズ型カップリング522、バフヘッド本体512、バフパッドキャリア518、バフパッド502へと伝達される。
また、バフパッド502を処理するウェハWに押し付けるときは、シャフト510を下方向に移動させることで、下方向の力がシャフト510、ボス511、ヘッド支柱部524、バフヘッド本体512、バフパッドキャリア518、バフパッド502へと伝達され、バフパッド502をウェハWに押し付けることができる。なお、このとき、ヘッド支柱部524は支持部材526に接触しない。
また、バフパッド502を処理するウェハWから引き離すときは、シャフト510を上方向に移動させることで、持ち上げ力は、シャフト510、ボス511、ヘッド支柱部524へと伝達され、ヘッド支柱部524が上方に持ち上げられる。ヘッド支柱部524が上方に持ち上げられることで、ヘッド支柱部524と支持部材526とが接触する。このとき、ジンバル機構を構成するヘッド支柱部524の球状凹面とバフヘッド本体512の球状凸面は離れる。その後、持ち上げ力は、ヘッド支柱部524、支持部材526、バフヘッド本体512、バフパッドキャリア518、バフパッド502へと伝達され、バフパッド502がウェハWから引き離される。そのため、そのため、バフパッド502をウェハWから引き上げるときに、バフヘッド本体512は、ヘッド支柱部524により安定的に支持され、バフ処理時にバフヘッドに付着したスラリ等の落下を防止することができる。
図8は、一実施形態によるバフ処理装置のバフヘッド500付近の概略断面図である。図8に示される実施形態においては、図5に示される実施形態と同様に、シャフト510、ボス511、バフヘッドフランジ513、バフヘッド本体512、駆動ピン514、ばね516、バフヘッドキャリア518、およびバフパッド502備える。図8に示される実施形態においては、図5に示されるような球面滑り軸受520を備えていない。図8に示される実施形態のバフ処理装置は、図7の実施形態と同様に、ヘッド支柱部524の球面状の凹面およびバフヘッド本体512の球面状の凸面によりジンバル機構が構成される。図8に示される実施形態のジンバル機構の回転中心は、図7に示される実施形態と同様に、図5に示される実施形態のジンバル機構の回転中心よりも低い位置にある。
また、図8に示される実施形態によるバフ処理装置は、図7に示されるバフ処理装置と同様に、バフヘッド本体512に固定される支持部材526を備える。
図8に示される実施形態のバフ処理装置の動作を説明する。シャフト510が回転すると、回転力は、シャフト510、ボス511、バフヘッドフランジ513へと伝達され、駆動ピン514により回転力がバフヘッド本体512へ伝達され、バフパッドキャリア518およびバフパッド502へと伝達される。
また、バフパッド502を処理するウェハWに押し付けるときは、シャフト510を下方向に移動させることで、下方向の力がシャフト510、ボス511、ヘッド支柱部524、バフヘッド本体512、バフパッドキャリア518、バフパッド502へと伝達され、バフパッド502をウェハWに押し付けることができる。なお、このとき、ヘッド支柱部524は支持部材526に接触しない。
また、バフパッド502を処理するウェハWから引き離すときは、シャフト510を上方向に移動させることで、持ち上げ力は、シャフト510、ボス511、ヘッド支柱部5
24へと伝達され、ヘッド支柱部524が上方に持ち上げられる。ヘッド支柱部524が上方に持ち上げられることで、ヘッド支柱部524と支持部材526とが接触する。このとき、ジンバル機構を構成するヘッド支柱部524の球状凹面とバフヘッド本体512の球状凸面は離れる。その後、持ち上げ力は、ヘッド支柱部524、支持部材526、バフヘッド本体512、バフパッドキャリア518、バフパッド502へと伝達され、バフパッド502がウェハWから引き離される。そのため、そのため、バフパッド502をウェハWから引き上げるときに、バフヘッド本体512は、ヘッド支柱部524により安定的に支持され、バフ処理時にバフヘッドに付着したスラリ等の落下を防止することができる。なお、図8に示される実施形態のバフ処理装置においては、バフヘッド500を持ち上げるときに、図5の実施形態とは異なりばね516の力を利用しておらず、ヘッド支柱部524および支持部材526を利用している。そのため、図8に示される実施形態においては、ばね516のばね定数を図5の実施形態のばね516のばね定数よりも小さいものにすることができる。
次に、本発明によるバフ処理装置に使用される一実施形態によるカバー550の構造を詳細に説明する。図8に示されるように、カバー550は、バフヘッド500の外周を囲う略円筒形の部材で構成される。図9Aは、図8に示されるカバー550の拡大図である。図8および図9Aに示されるように、カバー550は、外側カバー550aおよび内側カバー550bを備える。外側カバー部550aは、バフヘッド500の静止部分に取り付けられる。すなわち、バフヘッド500が回転しても、外側カバー550aは回転しない。一方、内側カバー550bは、バフヘッド500の回転部分に取り付けられる。すなわち、バフヘッド500が回転すると、内側カバー550bも回転する。
外側カバー550aは、第1カバー部材552a、および第1カバー部材552aに取り付けられる第2カバー部材560aを備える。第1カバー部材552aは、バフヘッド500の回転軸(シャフト510)に沿う方向に延びる軸方向部分554aと、軸方向部分554aから外側に延びる外側突出部556aを備える。
第2カバー部材560aは、バフヘッド500の回転軸(シャフト510)に沿う方向に延びる軸方向部分562aと、軸方向部分562aから内側に延びる内側突出部564aを備える。図9Aに示されるように、第1カバー部材552aの外側突出部556aと第2カバー部材560aの内側突出部564aとは回転軸に沿う方向に係合する。また、内側突出部564aは、第1カバー部材552aの軸方向部分554aの外側表面に対してスライド可能である。そのため、第2カバー部材560aを第1カバー部材552aに対してスライドさせることができる。かかる構成により、外側カバー550aを取り外すことなく、容易にバフヘッド500の内部にアクセスすることができ、外側カバー550aを取り外すことなく、バフヘッド500のメンテナンス作業を行うことができる。
内側カバー550bは、第1カバー部材552b、および第1カバー部材552bに取り付けられる第2カバー部材560bを備える。第1カバー部材552bは、バフヘッド500の回転軸(シャフト510)に沿う方向に延びる軸方向部分554bと、軸方向部分554bから外側に延びる外側突出部556bを備える。外側突出部556bの下面558b(ウェハWの方を向く面)は、バフヘッド500の回転軸に垂直な面(ウェハW面)に対して傾斜している。一実施形態として、外側突出部556bの下面558bの傾斜角度は約45度であり、外側突出部556bの外側がより下に位置するように傾斜している。また、内側カバー550bの第1カバー部材552bは、後述するネジ580を通すための孔553bを備える。
内側カバー550bの第2カバー部材560bは、3分割構成とすることができ、1つの第2カバー部材が、バフヘッド500の周囲の3分の1を囲うように構成することがで
きる。
内側カバー550bの第2カバー部材560bは、バフヘッド500の回転軸(シャフト510)に沿う方向に延びる軸方向部分562bを備える。軸方向部分562bの上面564b(ウェハWの反対方向を向く面)は、バフヘッド500の回転軸に垂直な面(ウェハW面)に対して傾斜している。一実施形態として、軸方向部分562bの上面564bの傾斜角度は約45度であり、軸方向部分562bの内側がより下に位置するように傾斜している。上面564bは、第2カバー部材560bが第1カバー部材552bに取り付けられたときに、第1カバー部材552bの下面558bと係合する。軸方向部分562bは、ネジ580を通すためのスロット566bを備える。スロット566bは、軸方向部分562bの下縁から上方に延びる。図9Bは、図9Aの内側カバー550bの第2カバー部材560bのスロット566bを矢印9Bの方向から見た図である。スロット566bのサイズは、スロット566b内でネジ580が相対的に移動可能となるサイズである。また、内側カバー550bの第2カバー部材560bの軸方向部分562bは、段部568bを備える。図9Aに示されるように、段部568bは、第1カバー部材552bの下面558bと第2カバー部材560bの上面564bとが係合するように取り付けられたときに、ネジ580のネジ頭が段部568bに係合する。このとき、ネジ580の軸部分はスロット566bの上端には接触しない。
図9Aに示されるように、ネジ580により、内側カバー550bの第1カバー部材552bと第2カバー部材560bとを一緒にバフヘッド本体512に接続することができる。ネジ580を緩めることで、ネジ頭と段部568bとの係合が解除され、スロット566bにより第2カバー部材560bを下方に移動させることができる。そのため、第1カバー部材552bの下面558bと第2カバー部材560bの上面564bとの係合が解除され、ネジ580を完全に取り外すことなく、第2カバー部材560を第1カバー部材552bから取り外すことができる。かかる構成により、ネジ580の落下を防止することができ、また、メンテナンス時に簡単にバフヘッド500の内側にアクセスすることができる。
外側カバー550aと内側カバー550bとは、互いに軸方向に分離可能に構成される。図10A、10B、10Cは、外側カバー550aと内側カバー550bとを分離させるときの状態を示す図である。図10Aは、外側カバー550aと内側カバー550bとが互いに近接した状態であり、バフヘッド500を上昇させた状態を示している。図10Bは、バフヘッド500を下降させることにより、外側カバー550aと内側カバー550bとを分離させた状態を示している。図10Cは、外側カバー550aの第2カバー部材560aを第1カバー部材552aに対して上方にスライドさせ、バフヘッド500を下降させて内側カバー550bを下げた状態を示す図である。さらに、図10Cは、内側カバー550bの第2カバー部材560bが取り外され、内側カバー550bの第1カバー部材552bを下げた状態を示す図である。図10Cの状態において、バフヘッド500の内部に容易にアクセスでき、メンテナンスを行うことができる。メンテナンスを行うに際して、バフヘッド500の下降、外側カバー550aの第2カバー部材560aの上方へのスライド、および内側カバー550bを下げる順番は任意である。たとえば、(1)バフヘッド500を下降させることで外側カバー550aと内側カバー550bとを分離させた後に、(2)内側カバー550bの第2カバー部材560bを取り外すとともに内側カバー550bの第1カバー部材552bを下げ、次いで、(3)外側カバー550aの第2カバー部材560aを上方へスライドさせ、メンテナンスを行うことができる。あるいは、別の例として、(1)内側カバー550bの第2カバー部材560bを取り外すとともに内側カバー550bの第1カバー部材552bを下げた後に、(2)バフヘッド500を下降させることで外側カバー550aと内側カバー550bとを分離させ、次いで、(3)外側カバー550aの第2カバー部材560aを上方へスライドさせて、メ
ンテナンスを行ってもよい。
以上のように本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。また、上述の実施形態のそれぞれの特徴は互いに矛盾しない限り組み合わせまたは交換することができる。また、本発明の実施形態では、基板の処理面が上向きになるように横向きに配置して、バフヘッドを基板の上から押圧してバフ処理するものとして説明しているが、基板を縦向きに配置して、バフヘッドを横から基板に押圧してバフ処理するようにしてもよい。