JP7142870B1 - 両面起毛積層シート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば特許文献1(実用新案第3193600号公報)には、生地1は、裏地を構成する第1層である綿製の起毛材2、表地を構成する第2層である合成繊維のポリウレタン材3、及び接着材4を主要構成として備え、起毛材2は、毛先が起立せしめられて柔軟性を有し肌触りがよく、ポリウレタン材3は、撥水加工及び紫外線吸収加工が施されており、接着材4は、これら起毛材2及びポリエステル材3をそれぞれの面の全体において互いを接着して結合させるものであり、いわゆるボンディング加工がなされた生地1として構成されていることが記載されている。
起毛材は肌触りがよいだけでなくデザイン性や保温性などの効果もあり、裏地だけでなく表地にも起毛材を用いたいという要望があった。
また、本発明の他の目的は、接着剤層に水が浸透しないよう、表層及び裏層に撥水剤を浸透させた両面起毛積層シートを提供することを課題とする。
さらに、本発明の他の目的は、上記記載の両面起毛積層シートの製造方法を提供することを課題とする。
(1)本発明の両面起毛積層シートは、A層、接着剤層、B層が積層された積層シートであって、前記A層及びB層は、撥水剤が浸透されているとともに、
その露出面の繊維の一部が切断されて毛羽立った状態の起毛繊維が形成された構造となっていることを特徴とする。
(2)本発明の両面起毛積層シートの製造方法は、撥水剤を浸透させて撥水処理効果を有するA層を形成し、剥離紙上に接着剤を塗布して接着剤層を乗せた接着剤付き剥離紙を形成し、前記接着剤付き剥離紙の接着剤の面に前記A層を積層するとともに、
撥水剤を浸透させて撥水処理効果を有するB層を形成し、接着剤付き剥離紙の剥離紙を剥いだ接着剤層の面に前記B層を積層し、A層、接着剤層、B層が順次積層された積層シートを形成した後、前記A層及びB層の露出面の繊維の一部を切断して毛羽立った状態の起毛繊維を形成させることを特徴とする。
また、裏地や表地には撥水剤が浸透されているので、水分が接着剤層に浸透せずに積層シートとしての接着効果に優れ、洗濯などによっても積層シートが剥がれることがない。
本発明の両面起毛積層シートの製造方法は、接着剤層を一旦剥離紙上にフィルム上に形成し、接着剤層の両面に表・裏層を順次積層するので、接着剤層が表・裏層を強固に接着できる。
図面を用いて、本発明の実施形態1に係る両面起毛積層シートについて説明する。
図1は、表面から順次、A層(表層)11、接着剤層13、B層(裏層)12の3層からなる実施形態1に係る両面起毛積層シートの構成を示す断面図である。
図2(a)は、起毛加工をしていないA層表面の顕微鏡写真である(下部に倍率を示している)。表面における束ねられた繊維は切断されておらず起毛状態にはないことがわかる。
図2(b)は、実施形態1の積層シート(起毛加工後)のA層表面の顕微鏡写真である(下部に倍率を示している)。表面における束ねられた繊維の一部が切断されて起毛状態にあることがわかる。
すなわち、実施形態1の積層シートは、起毛加工によって、表・裏の露出面の繊維の一部が切断されて毛羽立った状態の起毛繊維が形成された構造となっているのである。
積層シートのA層(表層)11やB層(裏層)12を構成する部材としては、織物や編物等が挙げられる。
<織物>
ここで、織物(テキスタイルと呼ばれることもある)とは、一般的には、紡績した糸を使って経糸(たていと)を平行に並べ、それに対して直角に緯糸(よこいと)を一定の法則に従って交錯させ、平面をつくりあげた生地の総称をいい、経緯糸の交錯する方法の違いにより、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。
また、織物の種類は、構成する原料により、麻織物、絹織物、毛織物、化繊織物、合繊織物、炭素繊維織物などがあり、これらの繊維原料を混紡するか、異なる繊維の原糸を経緯に交織したものもあるが、本発明においては、これらをすべて含んでいる。
(1)本発明の両面起毛積層シートは、
A層、接着剤層、B層が積層された積層シートであって、前記A層及びB層は、撥水剤が浸透されているとともに、
その露出面の繊維の一部が切断されて毛羽立った状態の起毛繊維が形成された構造となっており、
前記接着剤層には架橋剤が配合されており、
前記A層とB層は、直接積層されたものであることを特徴とする。
(2)本発明の両面起毛積層シートの製造方法は、
撥水剤を浸透させて撥水処理効果を有するA層を形成し、剥離紙上に接着剤を塗布して接着剤層を乗せた接着剤付き剥離紙を形成し、前記接着剤付き剥離紙の接着剤の面に前記A層を積層するとともに、
撥水剤を浸透させて撥水処理効果を有するB層を形成し、接着剤付き剥離紙の剥離紙を剥いだ接着剤層の面に前記B層を積層し、A層、接着剤層、B層が順次積層された積層シートを形成した後、前記A層及びB層の露出面の繊維の一部を切断して毛羽立った状態の起毛繊維を形成させることを特徴とする。
繊維を起毛させる手段としては、生地の表面を引っ掻く、回動ドラム中で落下させる、など手段があるが、本発明においてはその手段を特定するものではない。
回動ドラム中で落下させる手段による起毛方法については、後述する。
なお、本発明における起毛の程度は、肌触りという観点からは、その長さを特に指定するものではないが、顕微鏡写真で見ると平均値として、10ミクロン程度が挙げられる。
その厚みや目付量を特に規定するものではないが、製造上の観点から、0.1mm~5mm程度のものが好ましい。
それ以上厚くなると肌触りが著しく悪くなる。
A層やB層には、生地に予め撥水処理が施されている。
A層やB層に撥水処理を施す理由は、後述するように、積層シート形成後に行う起毛加工において水を投入する場合があるからである。
起毛加工の際に、積層シートとともに回動ドラムに投入する水が、積層シートに浸透して接着剤の効果を弱め、A層、B層間を剥離する現象を引き起こすことがある。
このため、起毛加工時において、接着剤層13に水を浸透させないために、接着剤層13と接するA層及びB層には撥水処理を施しているのである。
撥水処理剤としては、本発明において特定するものではないが、水をはじく機能を有する布生地に用いられるフッ素系やシリコーン系などのような撥水処理剤が一例として挙げられる。
例えば、エルソフトN-500コンク(ノニオン性脂肪酸系柔軟剤)、シリコーラン810MF(非イオン性シリコン系柔軟剤)、これらを配合した撥水剤(ライオンスペシャリティケミカルズ(株)製)などが挙げられる。
撥水処理の方法としては、撥水処理剤を溶かした液中にA層、B層をディッピングするなどの手段が挙げられる。
例えば、ディッピング法としては、生地を撥水剤を貯留したディッピング槽中に浸漬し、生地を引き上げ、マングル(絞りロール)で絞って水分を除去し、130~150℃の炉中を通過させて乾燥させ、撥水剤をA層、B層の生地の表面に残留させる。
また、その他の撥水処理方法としては、ロールコーター法、キスコーター法(生地の片面に樹脂を擦り付けるように付与する方法。撥水樹脂など片面樹脂加工に用いられる。)、吹きつけなども用いることができる。
接着剤層13は、A層11及びB層12の全体において互いを接着するものであり、一体化した積層シートを構成させる役割を有する。
接着剤層としては、布生地を接着するものであればよく市販されているものを使用することができる。
本発明における実施の形態では、一例として、
接着剤:ウレタン樹脂(レザミンUD660SA、メーカー:大日精化工業株式会社)、
架橋剤:ラックスキンU1000(メーカー:セイコー化成株式会社)、
を、接着剤:架橋剤=100部:8部の割合で配合したものを、有機溶剤で希釈したもののを、0.1~1mmの厚みの接着剤層13として用いた。
次に、本発明の両面起毛積層シートの製造方法を説明する。
なお、以下の説明は一実施形態であり、必ずしも本発明の技術思想を限定するものではない。
<剥離紙上への接着剤層の形成>
まず、図3(a)に示すように、接着剤をロート状の接着剤貯留槽13aから剥離紙14の上にフィルム状に塗布し、剥離紙14上にフィルム状に接着剤層13を形成した後、接着剤層13に接するように撥水処理済みのA層を積層し、剥離紙14とともに巻き取り巻取りロール15とする。
そして、剥離紙14を剥がしながら、その剥がした面に撥水処理済みのB層を積層する。
織物や編物などの繊維生地に毛羽立ちを与えるための起毛加工方法について説明する。
この方法は、繊維製の織物や編物などの繊維生地は、温水中においてもみ加工することにより表面を毛羽立たせ、起毛させる。
図4に示す概略斜視図は、起毛加工機の一部を破断した状態を示すものであり、
図5に、起毛加工機の正面図(a)、側面図(b)を示す。
図示する実施形態の起毛加工機に示すように、回転自在に支承した回転ドラム20に織物や編物などの生地を温水や洗浄剤などの液剤とともに投入し、回転ドラム20を回転することで生地に起毛加工を施す。
この起毛加工方法において、回転ドラム20内に積層シートを投入し、回転ドラム20を正逆回転制御せしめる回転制御機構25の駆動させる。
回転制御機構25は、所定回転数だけ回転ドラム20を回転させた後、一旦回転を停止し、同じ回転量だけ逆回転する正逆回転動作を繰り返すようにする。
回転ドラム20は、回動しない固定状の外側の外胴22(外側ドラム)と、その内側に内胴23(内側ドラム)が同心状で配設された二重構造となっている。
内胴23は、外胴22中において、回転制御機構25から伝動ベルト25aを介し、その回動軸24を回動させるように構成されている。
実施の形態では、内胴23の正逆回動の揺動角度を300度に設定し、内胴23の回動に伴って積層シートが所定高さまで上昇させ自重により落下することを繰り返すことにより、積層シートの表面に起毛加工を施した。
<実施例1>
実施例1では、A層及びB層として、綿織物生地(目付量40g/m2)を用いた。
塗布量150g/m2接着剤層を介して上記のA層、B層を積層し、
幅1.5m、長さ30mの積層シートを製造した。
<起毛加工>
起毛加工機に、積層シートを折りたたんで投入し、
回動ドラム中に水を2400Lを加え、
正回転、停止、逆回転の工程を60分間繰り返し、
積層シートの両面を毛羽立たせた。
実施例2では、積層A及び積層Bとして、麻織物生地(目付量100g/m2)を用いた。
その他の積層シートの製造条件や起毛加工条件は、実施例1と同様とした。
実施例3では、積層A及び積層Bとして、コール天(別珍)織物生地(目付量200g/m2)を用いた。
その他の積層条件や起毛加工条件は、実施例1と同様とした。
実施例4では、積層A及び積層Bとして、シルク織物生地(目付量200g/m2)を用いた。
その他の積層条件や起毛加工条件は、実施例1と同様とした。
実施例5では、積層A及び積層Bとして、ストレッチ素材の織物生地(ポリエステルと綿の混紡織物生地)目付量200g/m2)を用いた。
その他の積層条件や起毛加工条件は、実施例1と同様とした。
上記の起毛加工を行った後の、両面起毛積層シートの接着強度を測定した。
両面起毛積層シートの剥離強度は、JIS 1096に準じて行った。
すなわち、幅25mm、長さ300mmに切り出した試験片のA層、B層の端部それぞれを引っ張り試験機の上下のチャックに挟み込み、接着剤層を介しての、A層B層間の剥離強度を測定した。
なお、起毛加工前の積層シート、起毛加工後の両面起毛積層シート、両者のデータをそれぞれ3回測定し平均をとった。
剥離強度のデータを以下にまとめた。データの単位はニュートンである。
得られた比較例の両面起毛積層シートを、実施例と同様にして剥離強度を測定した。
剥離強度のデータを以下にまとめた。データの単位はニュートンである。
実施例1~5においては、起毛加工をする前の積層シートは剥離強度に優れていた。
起毛加工後の両面起毛積層シートは若干の剥離強度の低下がみられるものの、撥水処理をしているA層、B層が接着剤層への水の浸透を防いだ効果がみられる。
一方、比較例1~5においては、撥水処理をしていないA層、B層を積層したものであるので接着剤層に水が浸透したものと考えられ、対応する実施例の両面起毛積層シートよりも接着性が悪く、剥離強度の低下がみられた。
また、水分が接着剤層に浸透せずに積層シートとしての接着効果に優れ、洗濯などによっても両面起毛積層シートが剥がれることがない。
よって、産業上の利用可能性が高い。
11 A層(表層)
12 B層(裏層)
13 接着剤層
13a 接着剤貯留槽
14 剥離紙
15 巻き取りロール
20 回転ドラム
21 架台
22 外胴(外側ドラム)
23 内胴(内側ドラム)
24 回動軸
25 回転制御機構
26 小室
27 蓋
28 伝動ベルト
29 仕切板
Claims (2)
- A層、接着剤層、B層が積層された積層シートであって、前記A層及びB層は、撥水剤が浸透されているとともに、
その露出面の繊維の一部が切断されて毛羽立った状態の起毛繊維が形成された構造となっており、
前記接着剤層には架橋剤が配合されており、
前記A層とB層は、直接積層されたものであることを特徴とする両面起毛積層シート。
- 撥水剤を浸透させて撥水処理効果を有するA層を形成し、剥離紙上に接着剤を塗布して接着剤層を乗せた接着剤付き剥離紙を形成し、前記接着剤付き剥離紙の接着剤の面に前記A層を積層するとともに、
撥水剤を浸透させて撥水処理効果を有するB層を形成し、接着剤付き剥離紙の剥離紙を剥いだ接着剤層の面に前記B層を積層し、A層、接着剤層、B層が順次積層された積層シートを形成した後、前記A層及びB層の露出面の繊維の一部を切断して毛羽立った状態の起毛繊維を形成させることを特徴とする両面起毛積層シートの製造方法。
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