JP7142409B2 - 洗浄済みベビーリーフの製造方法、及び洗浄済みベビーリーフの菌数低減方法 - Google Patents

洗浄済みベビーリーフの製造方法、及び洗浄済みベビーリーフの菌数低減方法 Download PDF

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本発明が関係するのは、洗浄済みベビーリーフの製造方法、及び洗浄済みベビーリーフの菌数低減方法である。
近年、人気が高まっているのは、即食野菜であり、例示すると、袋詰め或いはカップ詰めの葉野菜、カット野菜、サラダ等である。なぜなら、これらの商品は、既に洗浄殺菌されており、洗浄の手間を省けるからである。
ところが、即食野菜が抱えているのは、様々な問題点であり、具体的には、売れ残り品の処分、受注コントロールの難しさ等である。これらの問題点の原因は、即食野菜が生鮮食品であるが故に、その消費期間が短いことである。
そこで、即席野菜の消費期限を向上するための技術が開発されており、例示すると、以下のとおりである。特許文献1が開示するのは、カット野菜の保存方法であり、具体的には、カット野菜を保管するにあたり殺菌溶液を付着させ、その後水洗いする。
特許文献2が開示するのは、葉野菜の製造方法であり、具体的には、葉を保管するにあたり殺菌溶液を付着させ、更に、殺菌溶液を施した後、水洗いする。
特開2004-65149号公報 特開2008-237208号公報
本発明が解決しようとする課題は、洗浄済みベビーリーフの菌数を低減することである。
ベビーリーフの菌数が一般的に高いのは、収穫後、及びそれを保管した後である。そのため、洗浄済みベビーリーフを製造する際に、いかに菌数を低減させるかが重要である。生鮮食品であるため、加熱殺菌を行うことは好ましくなく、洗浄が菌数を低減させる重要な工程である。
当該課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討し発見したのは、ベビーリーフの水分付着率と、洗浄後の菌数低減の効果との関係である。そのような観点から本発明を定義すると、次のとおりである。
本発明に係る洗浄済みベビーリーフの製造方法を構成するのは、少なくとも、洗浄である。ここで洗浄されるのは、ベビーリーフであって、当該ベビーリーフの水分付着率は1.0%以下である。
本発明に係る洗浄済みベビーリーフの製造方法を構成するのは、少なくとも、除水、及び洗浄である。ここで除水されるのは、ベビーリーフに付着した水であり、かつ、洗浄されるのは、除水されたベビーリーフである。
また、除水によって得られるベビーリーフの水分付着率は、1.0%以下であることが好ましく、除水は、収穫後に乾燥すること、又は収穫後のベビーリーフを輸送する際の包材を吸湿材とすることによって行われることが好ましい。
そして、洗浄に用いられる洗浄液は、少なくとも、次亜塩素酸、又は次亜塩素酸塩を含むものであることが好ましく、除水、及び洗浄によって得られるベビーリーフの菌数は、1.0×10CFU/g以下であることが好ましい。
さらに、本製造方法によって製造される洗浄済みベビーリーフの流通温度帯は、チルド帯であり、製造される洗浄済みベビーリーフの製造から24時間後の一般生菌数は、1.0×10CFU/g未満であることが好ましい。
本発明に係る洗浄済みベビーリーフの菌数を低減する方法を構成するのは、少なくとも、洗浄である。ここで洗浄されるのは、ベビーリーフであって、当該ベビーリーフの水分付着率は1.0%以下である。本発明に係る洗浄済みベビーリーフの菌数を低減する方法を構成するのは、少なくとも、除水、及び洗浄である。ここで除水されるのは、ベビーリーフに付着した水であり、かつ、洗浄されるのは、除水されたベビーリーフである。
また、除水によって得られるベビーリーフの水分付着率は、1.0%以下であることが好ましく、除水は、収穫後に乾燥すること、又は収穫後のベビーリーフを輸送する際の包材を吸湿材とすることによって行われることが好ましい。
そして、洗浄に用いられる洗浄液は、少なくとも、次亜塩素酸、又は次亜塩素酸塩を含むものであることが好ましく、除水、及び洗浄によって得られるベビーリーフの菌数は、1.0×10CFU/g以下であることが好ましい。
さらに、本方法によって得られる洗浄済みベビーリーフの流通温度帯は、チルド帯であり、本方法によって得られる洗浄済みベビーリーフの製造から24時間後の一般生菌数は、1.0×10CFU/g未満であることが好ましい。
本発明の効果が得られるメカニズムは、以下であると推測される。ベビーリーフの洗浄を行う前に、ベビーリーフ表面に付着している水分を低下させることにより、殺菌効果を有する洗浄液が葉に浸透しやすくなり、それにより殺菌効果が高まる、というものである。
本発明が可能にするのは、ベビーリーフ洗浄時の菌数低減効果を高めることである。ベビーリーフの菌数を低減することで、洗浄済みベビーリーフの保存性を高めることができる。そのような洗浄済みベビーリーフは、その後に洗浄せずとも喫食できる。
本実施の形態に係る洗浄済みベビーリーフの製造方法の流れ図 除水の有無による、洗浄後の菌数の違い
<ベビーリーフ>
ベビーリーフとは、播種後10~90日程度の葉菜を意味する。本出願において、用語「ベビーリーフ」が使用される場合、ベビーリーフの種類の単複は不問であり、具体的には、1種類のベビーリーフでもよく、数種類のベビーリーフをミックスしたものでもよい。ベビーリーフの大きさは、植物の種類により変わるため、限定されないが、食べやすさの観点から、4cm以上であり、かつ、15cm以下、好ましくは12cm以下、より好ましくは10cm以下である。
ベビーリーフに用いられる植物は、食用可能であればよく、特に限定されないが、例示すると、アブラナ科、ヒユ科、キク科、セリ科、ユリ科、アカザ科の野菜等である。具体例としてはサニーレタス、グリーンカール、サラダナ、ミズナ、ビート、カラシナ、グリーンマスタード、ルッコラ、ホウレン草、赤高菜、ロメイン、レッドオーク、ターサイ、小紅菜、ロロロッサ、レッドアジアンマスタード、ピノグリーン、ホワイトケール、レッドケール、デトロイト、パクチョイなどである。
<容器詰めサラダ>
本発明に係る容器詰めサラダ(以下、「容器詰めサラダ」という。)とは、サラダであって、容器詰めされ、かつ、含有するのが少なくとも洗浄済みベビーリーフであるものをいう。容器詰めサラダを流通させる温度帯は、好ましくは、いわゆるチルド(冷蔵)帯である。チルド帯とは、流通温度帯であって、10℃以下の凍結しない温度帯である。好ましくは、0℃から10℃、より好ましくは、0℃から5℃までである。
<洗浄済みベビーリーフの製造方法>
図1が示すのは、洗浄済みベビーリーフの製造方法の流れである。本ベビーリーフの製造方法を構成するのは、主に、栽培、収穫(S10)輸送(S20)、選別(S30)、除水(S40)、洗浄(S50)、水晒し(S60)、脱水又は乾燥(S70)、容器詰め(S80)である。
<栽培及び収穫(S10)>
ベビーリーフの栽培方法は、特に限定されず、例示すると、水耕栽培、土耕栽培、露地での栽培、閉鎖型植物工場での栽培等が挙げられる。水耕栽培は、天気に左右されにくく、細菌の付着も少ない点が利点である。また、閉鎖型植物工場での栽培は、衛生面、安定生産の面からも好ましい。ここでベビーリーフの栽培方法、及び製造方法として取り込むのは、特開2017-060441号公報に記載の内容である。
そのように栽培されたベビーリーフは、収穫される。収穫方法は、特に限定されず、例えば、人、機械、それらの組合せ等である。
<輸送(S20)>
収穫されたベビーリーフを輸送する目的の一つは、洗浄である。その輸送方法は、特に限定されず、例えば、コンテナ詰、袋詰め、ダンボール詰め等である。もっとも、ベビーリーフの水分付着率を低減するという観点から、好ましいのは、輸送にあたり、除湿効果を有する包材に詰めることである。これによって、後述する、除水の工程に代替することもできる。また、後述する、洗浄時における菌数低減効果が高まる。
<選別(S30)>
ベビーリーフを選別する基準は、ベビーリーフが傷んでいるか否かである。傷んでいるとは、ベビーリーフ(葉及び葉柄)が折れている、欠けている、及び切れているもの、並びに、葉の内部の組織構造が損傷していることである。外観が良くないものも存在し得る。これらによって傷んでいるベビーリーフを除去することで、最終的な商品の外観が良くなる。
<除水(S40)>
ベビーリーフを除水する目的は、後述する洗浄において、菌数の低減効果を高めることである。当該目的から、除水の時期は、洗浄の前である。除水の方法は、特に限定されず、静置、送風、冷風、熱風、遠心分離、真空による吸引、及び吸湿素材の利用やこれらの組合せである。当該除水は、前記輸送において、輸送時の包材に除湿効果を有する物を用いることによって代替することもできる。除水の目標は、特に限定されないが、好ましくは、水分付着率が1.0%以下となるようにすることである。これにより、洗浄による菌数低減効果が高まる。
<洗浄(S50)>
ベビーリーフを洗浄する目的は、異物の除去及び菌数の低減である。異物を例示すると、ベビーリーフに付着する泥、土、砂等である。ベビーリーフを洗浄する手段は、特に限定されないが、好ましくは、殺菌水への接液である。接液する方法は、特に限定されないが、例示すると、浸漬、噴霧等である。ベビーリーフの洗浄を行う回数は、1回又は2回以上である。洗浄に使用される液の効果は、一般生菌数の低減である。そのような洗浄液は、特に限定されないが、例示すると、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、焼成カルシウム、塩酸、酢酸、過酢酸、クエン酸、フマル酸、オゾンなどであり、好ましくは、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、及び亜塩素酸塩である。次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、及び亜塩素酸塩の好ましい条件は、濃度が10~200ppm、pHが4.8~8.0である。当該pHは、より好ましくは、5.0~7.0である。これらにより、菌数の低減効果が高まる。
<接液温度>
殺菌水への接液を行う場合、当該殺菌水の温度は、0℃乃至30℃であり、好ましくは、0℃乃至20℃であり、より好ましくは、0℃乃至15℃であり、最も好ましいのは、0~10℃である。殺菌水の水温は、高すぎても低すぎても、ベビーリーフへのダメージが大きくなる。例えば、殺菌水の臭いが付きやすくなったり、しおれやすくなったり、日持ちがしにくくなる。
<接液時間>
接液時間は、特に限定されないが、10秒乃至60分間であり、好ましくは、10秒間乃至15分間であり、最も好ましくは、10秒間乃至10分間である。殺菌水への接液時間が短すぎると、一般生菌数が低減難い。他方、接液時間が長すぎると、ベビーリーフへのダメージが大きくなる。
<水晒し(S60)>
ベビーリーフを水晒しする目的は、殺菌剤の除去である。すなわち、水晒しを要するのは、殺菌水への接液を行う場合である。言い換えれば、この工程は、適宜省略される。水晒しの手段は、特に限定されないが、好ましくは、水への浸漬や水の噴霧等である。
<晒し水>
晒し水は、特に限定されないが、例えば、水道水、井戸水、浄水などである。付言すると、衛生上必要な措置のとられた水に含まれる塩素(水道法施行規則(昭和32年12月14日厚生省令第45号)を参照)は、水晒しにおける除去の対象外である。
<水晒し温度>
水晒しの温度は、0℃乃至30℃であり、好ましくは、0℃乃至20℃であり、最も好ましくは、0℃乃至10℃である。水晒しの処理温度が高すぎても低すぎても、ベビーリーフへのダメージが大きくなる。
<水晒し時間>
水晒し時間は、特に限定されないが、好ましくは、1秒間乃至60分間であり、さらに好ましくは5秒間乃至30分間であり、最も好ましくは、10秒間乃至10分間である。水晒し時間が短すぎると、殺菌剤の除去効果が低くなる。他方、水晒し時間が長すぎると、ベビーリーフへのダメージが大きくなる。
<脱水、又は乾燥(S70)>
洗浄されたベビーリーフを脱水、又は乾燥する目的は、洗浄後のベビーリーフの外観の向上である。脱水、又は乾燥の方法は、特に限定されず、静置、送風、冷風、熱風、遠心分離、真空による吸引、吸湿素材の利用やこれらの組合せである。ベビーリーフ同士の接触による傷みや、遠心分離による圧力による傷みを考慮して、遠心分離を避け、風をあてることによる乾燥であることが好ましい。除水の目標は、特に限定されないが、好ましくは、水分付着率が3.0%以下である。水分付着率の詳細は、後述する。
<容器詰め(S80)>
ベビーリーフは、容器詰めされる。容器詰の際に用いられる包装材は、特に限定されないが、ポリエチレン製の袋、カップ等である。
<水分付着率>
ベビーリーフの水分付着率とは、葉に付着した水分量を、水分を除去した後の葉の重量で除した数値を、100で乗じた値である。具体的な水分付着率の測定方法は、以下である。水分が付着した状態の葉の重量(A)を測定する。その後、葉に付着した水分を、水分を吸着させる紙等でふき取り、付着した水分を除去した後の葉の重量(B)を測定する。以下の式に当てはめ、水分付着率を算出できる。
水分付着率(%)=100×(A―B)/B
<菌数>
測定されるベビーリーフの菌数は、一般生菌数である。当該一般生菌数の測定方法は、公知の方法であればよく、具体的には食品衛生検査指針(社団法人日本食品衛生協会、2004年)に準拠した標準寒天培地を用いた混釈法である。洗浄(S50)により、一般生菌数を1.0~3.0オーダー低下できる。また、本洗浄(S50)による好ましい洗浄後の一般生菌数は、1.0×10~1.0×10CFU/gである。洗浄済ベビーリーフ製造後24時間経過後における一般生菌数は、好ましくは1.0×10CFU/g以下であり、より好ましくは1.0×10CFU/g以下である。さらには、洗浄済みベビーリーフ製造後72時間経過後における好ましい一般生菌数は、1.0×10CFU/g以下である。これにより、その後に洗浄をすることなく、喫食することが可能となる。付言すると、弁当及びそうざいの衛生規範(昭和54年6月29日環食第161号改正平成7年10月12日衛食第188号・衛乳第211号・衛化第119号)により、一般生菌数は、1.0×10CFU/g以下である。
本発明に係るベビーリーフを具現化したのは、実施例1である。これらの実施例によって、本発明に係る特許請求の範囲が限定されるものではない。
<ベビーリーフ>
本実施例で用いたベビーリーフは、ピノグリーン、スピナッチ、ビート、ルッコラの混合物である。
<菌数の測定>
本測定における菌数の測定は、食品衛生検査指針(社団法人日本食品衛生協会、2004年)に準拠した方法で行った。
<比較例1>
比較例1は、収穫後の前記ベビーリーフを袋に詰め、プラスチック製のコンテナに入れ、工場まで輸送し、選別後、次亜塩素酸を有する洗浄水で洗浄し、水晒しを行った後、風をあてて乾燥を行った。洗浄前において水分付着率を測定し、洗浄前、乾燥後、及び乾燥後72時間経過した時、において菌数の測定を行った。
<実施例1>
実施例1は、収穫後の前記ベビーリーフを袋に詰め、袋の口を開けた状態で段ボールに入れ、工場まで輸送した以外は、前記比較例1と同条件で洗浄、水晒し、風をあてて乾燥を行った。洗浄前において水分付着率を測定し、洗浄前、乾燥後、乾燥後72時間経過した時、において菌数の測定を行った。輸送に段ボールを用いた以外は、比較例1と同じ条件にて試験を行った。
Figure 0007142409000001
<評価結果、まとめ>
以上の試験結果を考慮した結果、収穫後の輸送時に、コンテナではなく、吸湿性のある包材であるダンボールを使用することにより、ベビーリーフ表面への水分付着率が低下した。そして、これを殺菌効果の有する洗浄水で殺菌することで、菌数低減効果が高まり、洗浄済ベビーリーフ製造後72時間経過後も、コンテナで輸送した区分と比較すると、菌数が低いままであった。
これにより、ベビーリーフの葉の表面への水分付着率を低減させることで、特に当該水分付着率を1.0以下に低減することで、洗浄時の菌数低減効果が高まることがわかった。当該発明の方法を用いることにより、消費期間の延長を図れることがわかった。
本発明が有用な分野は、洗浄済みベビーリーフの製造方法、及び洗浄済みベビーリーフの菌数低減方法である。

Claims (4)

  1. ベビーリーフの製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
    梱包:梱包されるのは、収穫されたベビーリーフであり、その際に用いるのは、吸湿性包材であり、及び、
    洗浄:洗浄されるのは、梱包されてきたベビーリーフであり、当該ベビーリーフの水分付着率は、1.0%以下である。
  2. 請求項1の製造方法であって、
    当該吸湿性包材は、ダンボールである。
  3. ベビーリーフの製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
    輸送:輸送されるのは、収穫されたベビーリーフであり、その際に用いるのは、吸湿性
    包材であり、及び、
    洗浄:洗浄されるのは、輸送されたベビーリーフであり、当該ベビーリーフの水分付着率は、1.0%以下である。
  4. 請求項の製造方法であって、
    当該吸湿性包材は、ダンボールである。
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