JP7141978B2 - ポリシラザン含有組成物 - Google Patents
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Description
これらの膜はポリシラザン化合物と該ポリシラザン化合物を溶解させる有機溶媒とを含むコーティング液を適宜の基材上に塗布後、適当な硬化処理を施し、前記ポリシラザン化合物をシリカ質膜に転化させることにより形成されている(例えば、特許文献1~4参照)。よく用いられる硬化処理方法としては400℃~500℃程度で焼成する加熱硬化、キセノンエキシマ光などの波長が200nm以下の光による光照射硬化、加湿雰囲気中で加熱を行う加湿硬化などが挙げられる。しかし、いずれの硬化方法においても処理を行うためには特殊な装置の使用や基材に対して大きなダメージを与えてしまう恐れがあるため用途によっては硬化処理方法として好ましくない場合がある。そこで、従来では硬化がより穏やかな条件で進行するように触媒を加え、脱水素反応を促進させる方法も良く知られている(例えば、特許文献5)。このような触媒を使用すれば100℃~200℃程度の加熱で数時間以内に十分な硬化反応が進行する。
そこで、硬化初期段階での速い硬化速度を維持し、なおかつパラジウム化合物の使用量を低減することでコストを削減できるようなポリシラザン含有組成物の提供が待たれている。
下記(A)~(C)成分;
(A)1分子中に少なくとも1つ以上のヒドロシリル基を含有するポリシラザン化合物、
(B)有機溶剤、
(C)下記(C-1)及び(C-2)成分を含有する硬化触媒、
(C-1)前記(A)成分の酸化還元反応を促進する主触媒、
(C-2)前記(C-1)の触媒作用を促進する助触媒、
を含むポリシラザン含有組成物を提供する。
前記(C-2)助触媒が金属塩化物であると、ポリシラザン含有組成物はパラジウム化合物の使用量をより低減することが可能で、安全性が高く安価のものとなる。
前記(C-1)主触媒が有機パラジウム化合物であると、ポリシラザン含有組成物は硬化速度、作業性、保存安定性に優れるものとなる。
前記(C-1)成分の前記(A)成分に対する配合量、及び前記(C-1)成分と(C-2)成分との配合比が上述のとおりであると、ポリシラザン含有組成物はパラジウム化合物の使用量をより低減することが可能なものとなる。
(A)1分子中に少なくとも1つ以上のヒドロシリル基を含有するポリシラザン化合物、
(B)有機溶剤、
(C)下記(C-1)及び(C-2)成分を含有する硬化触媒、
(C-1)前記(A)成分の酸化還元反応を促進する主触媒、
(C-2)前記(C-1)の触媒作用を促進する助触媒、
を含むポリシラザン含有組成物である。
本発明の(A)成分であるポリシラザン化合物は、本発明の主剤となる成分であり、硬化することによってガラス質膜を形成するものである。前記ポリシラザン化合物としては、例えば無機ポリシラザンであるペルヒドロポリシラザン、もしくは有機ポリシラザンであるメチルポリシラザン、ジメチルポリシラザン、フェニルポリシラザン、ビニルポリシラザン、ヒドロキシル基、ビニル基、アミノ基、シリル基などのポリシラザンと化学的に反応し架橋構造を生成する反応基を有する炭化水素化合物、環状飽和炭化水素化合物、環状不飽和炭化水素化合物、飽和複素環化合物、不飽和複素環化合物およびシリコーン化合物などの化合物と化学的に架橋された架橋ポリシラザンなどが挙げられる。前記ポリシラザン化合物は、1種単独、もしくは2種以上のポリシラザン混合物、あるいは2種以上のポリシラザン構造からなるポリシラザン共重合体を含むことが好ましく、1分子中にケイ素原子に直接結合した水素原子(ヒドロシリル基)を少なくとも1つ以上含むことが必須である。さらに、共重合体はSi-H結合とSi-R結合との合計数に対するSi-R結合の数の比が0.01以上0.05以下であることが好ましい。Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン1分子中でRは同一であっても異なっていてもよい。中でも、硬化後の膜特性の観点から少なくともペルヒドロポリシラザンを含んでいることが更に好ましい。
本発明の(B)有機溶剤は、前記(A)ポリシラザン化合物を溶解するものであれば特に制約はない。メチル基やエチル基などの有機基が含まれるポリシラザンは比較的多種の有機溶剤に溶解するが、ペルヒドロポリシラザンのような有機基が含まれないもしくは有機基の量が少ないポリマーは無極性溶剤への溶解性が乏しいため、有機溶剤の最適化を図る必要がある。
一方、極性が大きい有機溶剤では吸湿しやすくなる傾向にあることが知られている。ポリシラザン化合物は水分により重合反応および硬化反応が促進されることが知られており、極性が大きい、すなわち吸湿性が高い有機溶剤を使用すると保存安定性が低下する。また、有機基の割合が多いポリシラザンについては、溶解性が乏しくなるため選定するポリシラザン化合物により溶剤を使い分けることもできる。
前記(B)有機溶媒中の水分量は、水が(A)ポリシラザン化合物と反応してしまいポリシラザン含有組成物の保存安定性を損なうためできるだけ少ない方が良いが、500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。
本発明の(C)硬化触媒は、前記(A)成分の硬化反応を促進する作用を有し、(C-1)主触媒と(C-2)助触媒とを含有するものである。
本発明の(C-1)主触媒は、前記(A)成分の酸化還元反応を促進し、ポリシラザン化合物の硬化速度を速める作用を有する。
主触媒としては酸化還元反応によりポリシラザンの脱水素反応を促進する触媒効果があれば特に制約はないが、例えばチタン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛などの周期表第4周期に属するdブロック元素、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの白金族元素、アルミニウム、スズ、亜鉛などの両性元素などの金属単体もしくはこれらの金属元素を有する化合物が挙げられる。
前記(C-1)成分の配合量としては、前記(A)成分100質量部に対して0.15~0.8質量部の範囲であることが好ましく、0.3~0.6質量部であることがより好ましい。
本発明の(C-2)助触媒は、前記(C-1)成分と併用し、前記(C-1)成分の触媒作用を促進する作用を有する。前記(C-2)助触媒としては、主触媒の酸化還元作用を促進する効果があれば特に制約はないが、例えば鉄、銅、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛などの周期表第4周期に属するdブロック元素、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの白金族元素などの金属単体もしくはこれらの金属元素を有する化合物が挙げられる。金属単体として用いる場合は、粉状で用いるのが好ましく、化合物として用いる場合は、無機金属化合物を用いるのが好ましく、金属塩化物を用いるのが、助触媒としての効果が高いためより好ましい。中でも、安全性や価格の観点から塩化鉄(II)が好ましい。
また、前記(C-1)及び(C-2)成分は、そのままポリシラザン含有組成物に添加しても良いが、有機溶剤に分散・溶解させてから添加しても良い。有機溶剤としては、例えば1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどのアルケン化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンなどのシクロアルカン化合物、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、カプロン酸エチルなどのエステル化合物、トルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族化合物などが挙げられる。その中でも上記(C)硬化触媒の溶解性に優れるトルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族化合物が好ましく、その中でも特に基材に対する濡れ性などの工程上の理由からアニソールがより好ましい。
本発明のポリシラザン含有組成物は(A)ポリシラザン化合物と(B)有機溶剤、(C)硬化触媒の他にも無機充填剤などの添加物を含んでいても良い。例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどの脂肪族アミン類、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノールなどの脂肪族アミノアルコール類、アニリン、フェニルエチルアミン、トルイジンなどの芳香族アミン類、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジンピラジンなどの複素環式アミン類などのアミン触媒、ヒュームドシリカ、ヒュームド二酸化チタン、ヒュームドアルミナ等の補強性無機充填剤、溶融シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、酸化亜鉛等の非補強性無機充填剤、ヒドロシリル基、アルケニル基、アルコキシシリル基、エポキシ基から選ばれる官能性基を少なくとも2種、好ましくは2種又は3種含有するオルガノシロキサンオリゴマー、オルガノオキシシリル変性イソシアヌレート化合物およびその加水分解縮合物などの接着助剤、ジメチルシリコーンやフェニルシリコーンなどの非反応性シリコーンオイルなどが挙げられ任意の割合で添加できる。
本発明のポリシラザン含有組成物は、そのままコーティング組成物として使用できる。
前記ポリシラザン含有コーティング組成物を塗布する方法としては、例えば、チャンバードクターコーター、一本ロールキスコーター、リバースキスコーター、バーコーター、リバースロールコーター、正回転ロールコーター、ブレードコーター、ナイフコーターなどのロールコート法やスピンコート法、ディスペンス法、ディップ法、スプレー法、転写法、スリットコート法等が挙げられる。
こうしてコーティング組成物の塗布によりポリシラザン樹脂塗膜を形成した後、該塗膜を硬化させることが好ましい。
硬化方法としては充分に硬化する方法であれば特に制約はないが80~450℃の範囲内での加熱処理が好ましく、100~200℃の範囲内での加熱処理がより好ましい。
重量平均分子量が3,411であるペルヒドロポリシラザン2gをジブチルエーテル8gに溶解させ、ポリシラザン溶液を作製した。次に主触媒としてプロピオン酸パラジウム0.008gと助触媒として塩化鉄(II)0.011gをアニソール2gに溶解させた触媒溶液を作製し、ポリシラザン溶液にゆっくり添加し、ポリシラザン溶液Aを作製した。
このポリシラザン溶液Aを被膜が0.5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、150℃で1時間加熱硬化した。この時の残存Si-H結合量をFT-IRにより測定し硬化率を算出した。以後、硬化率は100-(1時間硬化後の残存Si-H結合量)/(硬化前のSi-H結合量)×100の計算式で算出したものを指す。また、加熱硬化1時間後と3時間後に塗膜の鉛筆硬度を測定した。
重量平均分子量が3,411であるペルヒドロポリシラザン2gをジブチルエーテル8gに溶解させ、ポリシラザン溶液を作製した。次に主触媒としてプロピオン酸パラジウム0.016gと助触媒として塩化鉄(II)0.021gをアニソール2gに溶解させた触媒溶液を作製し、ポリシラザン溶液にゆっくり添加し、ポリシラザン溶液Bを作製した。
このポリシラザン溶液Bを被膜が0.5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、150℃で1時間加熱硬化した。この時の残存Si-H結合量をFT-IRにより測定し硬化率を算出した。また、加熱硬化1時間後と3時間後に塗膜の鉛筆硬度を測定した。
重量平均分子量が3,411であるペルヒドロポリシラザン2gをジブチルエーテル8gに溶解させ、ポリシラザン溶液を作製した。次に主触媒として酢酸パラジウム0.0036gと助触媒として塩化鉄(II)0.021gをアニソール2gに溶解させた触媒溶液を作製し、ポリシラザン溶液にゆっくり添加し、ポリシラザン溶液Cを作製した。
このポリシラザン溶液Cを被膜が0.5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、150℃で1時間加熱硬化した。この時の残存Si-H結合量をFT-IRにより測定し硬化率を算出した。また、加熱硬化1時間後と3時間後に塗膜の鉛筆硬度を測定した。
重量平均分子量が3,411であるペルヒドロポリシラザン2gをジブチルエーテル8gに溶解させ、ポリシラザン溶液を作製した。次に主触媒として酢酸パラジウム0.0071gと助触媒として塩化鉄(II)0.021gをアニソール2gに溶解させた触媒溶液を作製し、ポリシラザン溶液にゆっくり添加し、ポリシラザン溶液Dを作製した。
このポリシラザン溶液Dを被膜が0.5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、150℃で1時間加熱硬化した。この時の残存Si-H結合量をFT-IRにより測定し硬化率を算出した。また、加熱硬化1時間後と3時間後に塗膜の鉛筆硬度を測定した。
重量平均分子量が3,411であるペルヒドロポリシラザン2gをジブチルエーテル8gに溶解させ、ポリシラザン溶液を作製した。次に主触媒として酢酸パラジウム0.0142gと助触媒として塩化鉄(II)0.021gをアニソール2gに溶解させた触媒溶液を作製し、ポリシラザン溶液にゆっくり添加し、ポリシラザン溶液Eを作製した。
このポリシラザン溶液Eを被膜が0.5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、150℃で1時間加熱硬化した。この時の残存Si-H結合量をFT-IRにより測定し硬化率を算出した。また、加熱硬化1時間後と3時間後に塗膜の鉛筆硬度を測定した。
重量平均分子量が3,411であるペルヒドロポリシラザン2gをジブチルエーテル8gに溶解させ、ポリシラザン溶液を作製した。次に主触媒として酢酸パラジウム0.0142gと助触媒として塩化鉄(II)0.032gをアニソール2gに溶解させた触媒溶液を作製し、ポリシラザン溶液にゆっくり添加し、ポリシラザン溶液Fを作製した。
このポリシラザン溶液Fを被膜が0.5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、150℃で1時間加熱硬化した。この時の残存Si-H結合量をFT-IRにより測定し硬化率を算出した。また、加熱硬化1時間後と3時間後に塗膜の鉛筆硬度を測定した。
重量平均分子量が3,411であるペルヒドロポリシラザン2gをジブチルエーテル8gに溶解させ、ポリシラザン溶液を作製した。次に主触媒として酢酸パラジウム0.0142gと助触媒として塩化鉄(II)0.053gをアニソール2gに溶解させた触媒溶液を作製し、ポリシラザン溶液にゆっくり添加し、ポリシラザン溶液Gを作製した。
このポリシラザン溶液Gを被膜が0.5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、150℃で1時間加熱硬化した。この時の残存Si-H結合量をFT-IRにより測定し硬化率を算出した。また、加熱硬化1時間後と3時間後に塗膜の鉛筆硬度を測定した。
重量平均分子量が3,411であるペルヒドロポリシラザン2gをジブチルエーテル8gに溶解させ、ポリシラザン溶液を作製した。次に主触媒としてプロピオン酸パラジウム0.016gをアニソール2gに溶解させた触媒溶液を作製し、ポリシラザン溶液にゆっくり添加し、ポリシラザン溶液Hを作製した。
このポリシラザン溶液Hを被膜が0.5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、150℃で1時間加熱硬化した。この時の残存Si-H結合量をFT-IRにより測定し硬化率を算出した。また、加熱硬化1時間後と3時間後に塗膜の鉛筆硬度を測定した。
重量平均分子量が3,411であるペルヒドロポリシラザン2gをジブチルエーテル8gに溶解させ、ポリシラザン溶液を作製した。次に主触媒として酢酸パラジウム0.0142gをアニソール2gに溶解させた触媒溶液を作製し、ポリシラザン溶液にゆっくり添加し、ポリシラザン溶液Iを作製した。
このポリシラザン溶液Iを被膜が0.5μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、150℃で1時間加熱硬化した。この時の残存Si-H結合量をFT-IRにより測定し硬化率を算出した。また、加熱硬化1時間後と3時間後に塗膜の鉛筆硬度を測定した。
Claims (3)
- 下記(A)~(C)成分;
(A)1分子中に少なくとも1つ以上のヒドロシリル基を含有するポリシラザン化合物、
(B)有機溶剤、
(C)下記(C-1)及び(C-2)成分を含有する硬化触媒、
(C-1)前記(A)成分の酸化還元反応を促進する主触媒、
(C-2)前記(C-1)の触媒作用を促進する助触媒、
を含むものであって、
前記(C-1)成分がパラジウム化合物であり、
前記(C-2)成分が鉄、銅、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の金属塩化物
であることを特徴とするポリシラザン含有組成物。 - 前記(C-1)主触媒が有機パラジウム化合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリシラザン含有組成物。
- 前記(C-1)成分の配合量が、前記(A)成分100質量部に対して0.15~0.8質量部の範囲であり、かつ前記(C-1)成分と(C-2)成分との配合比が(C-1)成分100質量部に対して(C-2)成分30~600質量部であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリシラザン含有組成物。
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