JP6795920B2 - ポリイミド前駆体、樹脂組成物、ポリイミド含む樹脂膜及びその製造方法 - Google Patents

ポリイミド前駆体、樹脂組成物、ポリイミド含む樹脂膜及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、フレキシブルデバイスのための基板の製造に用いられる、ポリイミド前駆体、樹脂組成物、ポリイミド含む樹脂膜及びその製造方法に関する。
近年、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置分野では、従来使用されていたガラス基板やカバーガラス等の透明基板に変わり、軽量で柔軟なプラスチック基板が検討されている。その様な用途に対し、耐熱特性、機械特性、耐熱酸化性、耐薬品性に優れたポリイミド樹脂の開発が行われている。
表示装置に用いられる透明基板は、透明性と、耐擦傷性向上及び表示装置の剛性向上のために、高いヤング率が求められる。しかしながら、一般的なポリイミド樹脂は高い芳香環密度により、茶色又は黄色に着色するため、透明性が要求される分野に用いることは困難であった。そこで、ポリイミド樹脂へフッ素を導入すること、主鎖に屈曲性を与えること、嵩高い側鎖を導入することにより、電荷移動錯体の形成を阻害し、透明性を発現させる方法が提案されている。
しかしながら、主鎖に屈曲性を与える、嵩高い側鎖を導入する、といった従来の方法では、透明性は向上するものの、ポリイミド樹脂のヤング率が低下するという課題があった。
このような課題に対して、非特許文献1には、脂環式のジアミンである1,4−シクロヘキサンジアミン(CHDA)とエステル結合を有するp−フェニレンビス(トリメリテート酸無水物)(TAHQ)と、を用いることで、透明性とヤング率を両立させることが開示されている。
特表2007−512568号公報 特表2012−511173号公報 特開2010−67957号公報 特開2013−179306号公報
:High Performance Polymers, 18、p697−717、2006年
フレキシブルディスプレイ用の透明基板や保護膜に用いられるポリイミドは、視認性の観点から、十分な透明性だけではなく、異物が低減されていること、及び表面平滑性が良好であることが要求され、更に、高いヤング率が求められる。
しかし公知のポリイミド樹脂は、例えば、フレキシブルディスプレイ用の透明基板又は保護膜として適用するために、十分な特性を有してはいるわけではなかった。
本発明は、上記説明した問題点に鑑みてなされたものであり、無色透明フレキシブル基板に用いるために十分な透明性と高いヤング率を有するポリイミド樹脂膜を与え、かつ、ポリイミド樹脂膜中の異物が十分に低減され、表面平滑性に優れる、ポリイミド前駆体を提供することを目的とする。
本発明は更に、ポリイミド樹脂膜及びその製造方法等を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、1、4−シクロヘキサンジアミンと、特定構造のテトラカルボン酸二無水物2種を共重合させることにより、透明性とヤング率を両立し、異物が十分に低減され、表面平滑性の良好なポリイミド樹脂膜を与えることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]下記一般式(1)及び(2)で示される構造単位を有する共重合体であるポリイミド前駆体。
Figure 0006795920
Figure 0006795920
{式中、複数ある場合のRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表し、nは0以上4以下、Xは下記式(3)〜(5):
Figure 0006795920
Figure 0006795920
Figure 0006795920
で表される部分構造からなる群より選ばれる少なくとも1種である。}
[2]前記式(1)のRが水素原子である[1]に記載のポリイミド前駆体。
[3]前記式(2)のXが前記式(3)又は(4)で表される部分構造である[1]または[2]に記載のポリイミド前駆体。
[4]前記式(2)のXが前記式(3)で表される部分構造である[1]〜[3]のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。
[5]前記式(1)で示される構造単位と前記式(2)で示される構造単位とのモル比が(1):(2)=80:20〜40:60である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。
[6][1]〜[5]のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体と、有機溶剤と、を含有する樹脂組成物。
[7]下記一般式(7)及び(8)で示される構造単位を有する共重合体であるポリイミド。
Figure 0006795920
Figure 0006795920
{式中、複数ある場合のRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表し、nは0以上4以下、Xは前記式(3)〜(5):
Figure 0006795920
Figure 0006795920
Figure 0006795920
で表される部分構造からなる群より選ばれる少なくとも1種である。}
[8][7]に記載のポリイミド樹脂膜を含む、樹脂膜。
[9][6]に記載の樹脂組成物を支持体の表面上に塗布する工程と、
塗布した樹脂組成物を乾燥し、溶媒を除去する工程と、
前記支持体及び前記樹脂組成物を加熱してポリイミド樹脂膜を形成する工程と、
を含む、ポリイミド樹脂膜の製造方法。
[10][7]に記載のポリイミド樹脂膜を含む透明基板。
[11][7]に記載のポリイミド樹脂膜を含む保護膜。
無色透明フレキシブル基板に用いるために十分な透明性と高いヤング率を有するポリイミド樹脂膜を与え、かつ、ポリイミド樹脂膜中の異物が十分に低減され、表面平滑性に優れる、ポリイミド前駆体を提供することができる。
以下、本発明の例示の実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本開示の式中の構造単位は、ブロック構造等の特定の結合様式を意図するものではないことに留意すべきである。また、本開示で記載する特性値は、特記がない限り、[実施例]の項において記載する方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される値であることを意図する。
[ポリイミド前駆体]
本実施形態におけるポリイミド前駆体は、下記一般式(1)及び(2)で示される構造単位を有する共重合体である。
Figure 0006795920
Figure 0006795920
{式中、複数ある場合のRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表し、nは0以上4以下、Xは下記一般式(3)〜(5)で表される部分構造からなる群より選ばれる少なくとも1種である。}
Figure 0006795920
Figure 0006795920
Figure 0006795920
本発明のポリイミド前駆体を硬化膜とした時の耐熱性及び透明性の観点から前記式(1)中の複数ある場合のRは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン化アルキル基が好ましい。
式(1)中のnは0以上4以下であれば限定されない。その中で透明性の観点から0以上2以下が好ましく、0がより好ましい。
前記式(2)中のXは、前記式(3)、(4)、(5)で表される部分構造かならなる群より選択される少なくとも1種であれば限定されない。透明性及び濾過性の観点から、前記式(3)及び前記式(4)で表される部分構造であることがより好ましい。前記式(2)中のXは、これらのうち、得られるポリイミド樹脂膜の黄色度(YI)の抑制、ヘイズの低下、の観点から、前記式(3)で表される部分構造であることが特に好ましい。
前記共重合体の構造単位(1)と(2)との比(モル比)は、得られるポリイミド樹脂膜のYI、ヤング率、濾過性の観点から、(1):(2)=80:20〜40:60が好ましく、70:30〜40:60がより好ましく、70:30〜50:50が特に好ましい。前記式(1)のモル比を80以下とすることで、本発明のポリイミド前駆体を硬化膜とした時の表面平滑性を良好にできる固形分濃度で、濾過することができ、かつ、前記樹脂膜のYIを低くすることができる。前記式(1)のモル比を40以上とすることで、本発明のポリイミド前駆体を硬化膜とした時のヤング率を高く保つことができる。前記式(1)及び(2)の比は、たとえば、H−NMRスペクトルの結果から求めることができる。
本実施の形態におけるポリイミド前駆体は、必要に応じて、本発明の性能を損なわない範囲で、前記式(1)及び(2)で示される構造単位以外の構造単位を含有していてもよい。
本実施の形態に係るポリイミド前駆体(共重合体)は、前記構造単位(1)及び(2)の質量が、該共重合体の全質量を基準として、ヤング率の観点から、30質量%以上であることが好ましく、透明性の観点から、70質量%以であることが好ましい。最も好ましくは100質量%である。
本実施形態におけるポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜300,000が好ましく、30,000〜200,000が特に好ましい。重量平均分子量が10,000より大きいと、ヤング率、伸度等の機械的特性に優れ、YIが低くなる。重量平均分子量が300,000よりも小さいと、ポリイミド前駆体溶液を、高固形分濃度で濾過することができ、前記樹脂組成物を硬化膜とした時の平滑性を維持することができる。本開示において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCともいう)を用いて、標準ポリスチレン換算値として求められる値である。
本実施の形態におけるポリイミド前駆体は、分子量1,000未満の分子の含有量は、ポリイミド前駆体の全量に対して、5質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることが更に好ましい。このようなポリイミド前駆体を熱硬化して得られるポリイミド樹脂膜はヤング率、伸度等の機械特性に優れたものとなるため、好ましい。
ポリイミド前駆体の全量に対する分子量1,000未満の分子の含有量は、該ポリイミド前駆体を溶解した溶液を用いてGPC測定を行って得られるピーク面積から算出することができる。
[ポリイミド前駆体の製造方法]
本発明のポリイミド前駆体(ポリアミド酸)は、前記一般式(1)で表される構造単位に用いられるテトラカルボン酸二無水物(例えばp−フェニレンビス(トリメリテート酸無水物)(TAHQ))と、前記一般式(2)で表される構造単位に用いられるテトラカルボン酸二無水物(例えば4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA))と、CHDAと、を重縮合反応させることにより、合成することができる。この反応は、適当な溶媒中で行うことが好ましい。具体的には、例えば、溶媒に所定量のCHDAを溶解させた後、得られたジアミン溶液に、テトラカルボン酸二無水物を所定量添加し、撹拌する方法が挙げられる。
前記ポリイミド前駆体を合成する時の、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の比(モル比)は、得られる樹脂フィルムのヤング率、伸度、及びYIを所望の範囲にコントロールするとの観点から、テトラカルボン酸二無水物:ジアミン=100:90〜100:110(テトラカルボン酸二無水物1モル部に対してジアミン0.90〜1.10モル部)の範囲とすることが好ましく、100:95〜100:105(酸二無水物1モル部に対してジアミン0.95〜1.05モル部)の範囲とすることが更に好ましい。
本実施の形態において、好ましいポリイミド前駆体であるポリアミド酸を合成する際には、分子量を、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との比の調整、及び末端封止剤の添加によってコントロールすることが可能である。テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との比が1:1に近いほど、及び末端封止剤の使用量が少ないほど、ポリアミド酸の分子量を大きくすることができる。
テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分として、高純度品を使用することが推奨される。その純度としては、それぞれ、98質量%以上とすることが好ましく、99質量%以上とすることがより好ましく、99.5質量%以上とすることが更に好ましい。複数種類のテトラカルボン酸二無水物成分又はジアミン成分を併用する場合には、テトラカルボン酸二無水物成分又はジアミン成分の全体として上記の純度を有していれば足りるが、使用する全種類のテトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分が、それぞれ上記の純度を有していることが好ましい。
反応の溶媒としては、テトラカルボン酸二無水物成分及びジアミン成分、並びに生じたポリアミド酸を溶解することができ、高分子量の重合体が得られる溶媒であれば特に制限はされない。このような溶媒の具体例としては、例えば、非プロトン性溶媒、フェノ−ル系溶媒、エーテル及びグリコ−ル系溶媒等が挙げられる。
前記非プロトン性溶媒として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素、下記一般式(6):
Figure 0006795920
{式中、R=メチル基で表されるエクアミドM100(商品名:出光興産社製)、及び、R=n−ブチル基で表されるエクアミドB100(商品名:出光興産社製)等のアミド系溶媒;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含りん系アミド系溶媒;
ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;
シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;
ピコリン、ピリジン等の3級アミン系溶媒;
酢酸(2−メトキシ−1−メチルエチル)等のエステル系溶媒
等が:
前記フェノ−ル系溶媒として、例えば、フェノ−ル、o−クレゾ−ル、m−クレゾ−ル、p−クレゾ−ル、2,3−キシレノ−ル、2,4−キシレノ−ル、2,5−キシレノ−ル、2,6−キシレノ−ル、3,4−キシレノ−ル、3,5−キシレノ−ル等が:
前記エ−テル及びグリコ−ル系溶媒として、例えば、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エ−テル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2− (2−メトキシエトキシ)エチル]エ−テル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が、
それぞれ挙げられる。}
ポリアミド酸の合成に用いられる溶媒の常圧における沸点は、60〜300℃が好ましく、140〜280℃がより好ましく、170〜270℃が特に好ましい。溶媒の沸点が300℃より高いと、乾燥工程が長時間必要となる。一方で溶媒の沸点が60℃より低いと、乾燥工程中に、樹脂膜の表面における荒れの発生、樹脂膜中への気泡の混入等が起こり、均一なフィルムが得られない場合がある。
このように、好ましくは沸点が170〜270℃であり、より好ましくは20℃における蒸気圧が250Pa以下である溶媒を使用することが、溶解性及び塗工時エッジはじきの観点から好ましい。より具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、前記一般式(6)で表される化合物から成る群より選択される1種以上を使用することが好ましい。
溶媒中の水分含量は、3000質量ppm以下が好ましい。
これらの溶媒は、単独で又は2種類以上混合して用いてもよい。
本実施形態におけるポリイミド前駆体は、分子量1,000未満の分子の含有量が5質量%未満であることが好ましい。
前記ポリイミド前駆体中に、この分子量1,000未満の分子が存在するのは、合成時に使用する溶媒の水分量が関与しているためと考えられる。すなわち、一部の酸二無水物モノマーの酸無水物基が水分によって加水分解してカルボキシル基になり、高分子量化することなく低分子の状態で残存することによると考えられる。従って、上記の重合反応に使用する溶媒の水分量は、可及的に少ない方がよい。この溶媒の水分量は、3,000質量ppm以下とすることが好ましく、1,000質量ppm以下とすることがより好ましい。
溶媒の水分量は、使用する溶媒のグレード(脱水グレード、汎用グレード等)、溶媒容器(ビン、18L缶、キャニスター缶等)、溶媒の保管状態(希ガス封入の有無等)、開封から使用までの時間(開封後すぐ使用するか、開封後経時した後に使用するか等)等が関与すると考えられる。また、合成前の反応器の希ガス置換、合成中の希ガス流通の有無等も関与すると考えられる。従って、ポリイミド前駆体の合成時には、原料として高純度品を用い、水分量の少ない溶媒を用いるとともに、反応前および反応中に系内に環境からの水分が混入しないような措置を講ずることが推奨される。
溶媒中に各モノマー成分を溶解させるときには、必要に応じて加熱してもよい。
ポリイミド前駆体合成時の反応温度は、0℃〜140℃とすることが好ましく、より好ましくは40℃〜130℃であり、更に好ましくは60〜120℃である。本実施形態のポリイミド前駆体は、例えば脂環式ジアミンである、1,4−シクロヘキサンジアミンより合成される。脂環式のジアミンは塩基性度が高く、合成時に反応生成物が有するカルボン酸との間で塩を形成しやすい。上記温度で重合反応を行うことにより、塩の形成を抑制することができ、かつ、重合度の高いポリイミド前駆体が得られる。重合時間は、1〜100時間とすることが好ましく、2〜10時間とすることがより好ましい。重合時間を1時間以上とすることによって均一な重合度のポリイミド前駆体となり、100時間以下とすることによって重合度の高いポリイミド前駆体を得ることができる。
本実施形態のポリイミド前駆体の溶液粘度は、25℃において、500〜200,000mPa・sが好ましく、2,000〜100,000mPa・sがより好ましく、3,000〜30,000mPa・sが特に好ましい。溶液粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製VISCONICEHD)を用いて測定できる。溶液粘度が300mPa・s以上であれば膜形成の際に容易に塗布できる。一方で溶液粘度が200,000mPa・s以下であれば、ポリイミド前駆体を合成する際の撹拌及び濾過が容易になる。
しかしながら、ポリアミド酸合成の際に溶液が高粘度になったとしても、反応終了後に溶媒を添加して撹拌することにより、取扱い性のよい粘度のポリアミド酸溶液を得ることも可能である。
本実施の形態において、ポリイミド前駆体は、その一部がイミド化されていてもよい。この場合のイミド化率は、80%以下とすることが好ましく、50%以下とすることがより好ましい。この部分イミド化は、上記の(a)ポリイミド前駆体を加熱して脱水閉環することにより得られる。この加熱は、好ましくは120〜200℃であり、より好ましくは150〜180℃の温度において、好ましくは15分〜20時間であり、より好ましくは30分〜10時間行うことができる。
また、上述の反応によって得られたポリアミド酸に、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール又はN,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタールを加えて加熱し、カルボン酸の一部又は全部をエステル化したうえで、本実施の形態におけるポリイミド前駆体として用いることにより、室温保管時の粘度安定性が向上された樹脂組成物を得ることもできる。これらエステル変性ポリアミド酸は、他に、上述の酸二無水物成分を、酸無水物基に対して1当量の1価のアルコール、及び塩化チオニル、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤と順次に反応させた後、ジアミン成分と縮合反応させる方法によっても得ることができる。
本実施形態の樹脂組成物におけるポリイミド前駆体(好ましくはポリアミド酸)の割合は、塗膜形成性の観点から3〜50質量%が好ましく、6〜40質量%が更に好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。前記固形分濃度が、3質量%以上であれば、上記ポリイミド前駆体を硬化膜とした時に、十分な表面平滑性が得られる。
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、本発明のポリイミド前駆体と、有機溶剤と、を含む。
本実施の形態における有機溶剤は、前述したポリイミド前駆体及び任意に使用されるその他の成分を溶解できるものであれば、特に制限しない。このような有機溶剤としては、ポリイミド前駆体の合成時に用いることのできる溶媒として上述したものを用いることができる。好ましい有機溶媒も、上記と同様である。本実施の形態の樹脂組成物における有機溶剤は、本発明のポリイミド前駆体の合成に用いられる溶媒と同一でも異なってもよい。
有機溶媒は、樹脂組成物の固形分濃度が塗膜形成性の観点から3〜50質量%が特に好ましい。前記固形分濃度が、3質量%以上であれば、上記樹脂組成物を硬化膜とした時に、十分な表面平滑性が得られる。また、樹脂組成物の粘度(25℃)が、500mPa・s〜100,000mPa・sとなるように、有機溶媒の構成及び量を調整したうえで、加えることが好ましい。
[その他の成分]
本実施の形態の樹脂組成物は、上記ポリイミド前駆体及び有機溶剤の他に、界面活性剤、アルコキシシラン化合物等を、更に含有していてもよい。
(界面活性剤)
本実施の形態の樹脂組成物に、界面活性剤を添加することによって、該樹脂組成物の塗布性を向上することができる。具体的には、塗工膜におけるスジの発生を防ぐことができる。
このような界面活性剤は、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、これら以外の非イオン界面活性剤等を挙げることができる。これらの例としては、
シリコーン系界面活性剤として、例えば、オルガノシロキサンポリマーKF−640、642、643、KP341、X−70−092、X−70−093、KBM303、KBM403、KBM803(以上、商品名、信越化学工業社製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57、DC−190(以上、商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、SILWET L−77,L−7001,FZ−2105,FZ−2120,FZ−2154,FZ−2164,FZ−2166,L−7604(以上、商品名、日本ユニカー社製)、DBE−814、DBE−224、DBE−621、CMS−626、CMS−222、KF−352A、KF−354L、KF−355A、KF−6020、DBE−821、DBE−712(Gelest)、BYK−307、BYK−310、BYK−378、BYK−333(以上、商品名、ビックケミー・ジャパン製)、グラノール(商品名、共栄社化学社製)等が;
フッ素系界面活性剤として、例えば、メガファックF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)、フロラードFC4430、FC4432(住友スリーエム株式会社、商品名)等が;
これら以外の非イオン界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が、それぞれ挙げられる。
これらの界面活性剤の中でも、樹脂組成物の塗工性(スジ抑制)の観点から、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が好ましく、キュア工程時の酸素濃度によるYI値及び全光線透過率への影響の観点から、シリコーン系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤を用いる場合、その配合量は、樹脂組成物中のポリイミド前駆体100質量部に対して、0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましい。
(アルコキシシラン化合物)
本実施の形態にかかる樹脂組成物から得られる樹脂フィルムを、フレキシブルデバイス等の製造プロセスにおいて支持体との間に十分な密着性を示すものとするために、該樹脂組成物は、ポリイミド前駆体100質量%に対して、アルコキシシラン化合物を0.01〜20質量%を含有することができる。ポリイミド前駆体100質量%に対するアルコキシシラン化合物の含有量が0.01質量%以上であることにより、支持体との間に良好な密着性を得ることができる。またアルコキシシラン化合物の含有量が20質量%以下であることが、樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましい。アルコキシシラン化合物の含有量は、ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.02〜15質量%であることがより好ましく、0.05〜10質量%であることが更に好ましく、0.1〜8質量%であることが特に好ましい。
本実施の形態にかかる樹脂組成物の添加剤としてアルコキシシラン化合物を用いることにより、上記の密着性の向上に加えて、更に樹脂組成物の塗工性(スジムラ抑制)を向上するとともに、得られる硬化膜のYI値のキュア時酸素濃度依存性を低下させることができる。
アルコキシシラン化合物としては、例えば、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノエチルトリプロポキシシラン、γ−アミノエチルトリブトキシシラン、γ−アミノブチルトリエトキシシラン、γ−アミノブチルトリメトキシシラン、γ−アミノブチルトリプロポキシシラン、γ−アミノブチルトリブトキシシラン、フェニルシラントリオール、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p−トリル)シラン、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ−p−トリルシラン、トリフェニルシラノール及び下記構造のそれぞれで表されるアルコキシシラン化合物等を挙げることができ、これらから選択される1種以上を使用することが好ましい。
Figure 0006795920
本実施の形態における樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、以下の方法によることができる。
(a)ポリイミド前駆体を合成した際に用いた溶媒と、(b)有機溶剤とが同一の場合には、合成したポリイミド前駆体溶液をそのまま樹脂組成物とすることができる。また、必要に応じて、室温(25℃)〜80℃の温度範囲で、ポリイミド前駆体に(b)有機溶剤及びその他の成分の1種以上を添加して、攪拌混合したうえで、樹脂組成物として用いてもよい。この攪拌混合は、撹拌翼を備えたスリーワンモータ(新東化学株式会社製)、自転公転ミキサー等の適宜の装置を用いることができる。また必要に応じて40〜100℃の熱を加えてもよい。
一方、(a)ポリイミド前駆体を合成した際に用いた溶媒と、(b)有機溶剤とが異なる場合には、合成したポリイミド前駆体溶液中の溶媒を、例えば再沈殿、溶媒留去等の適宜の方法により除去して(a)ポリイミド前駆体を単離した後に、室温〜80℃の温度範囲で、(b)有機溶剤及び必要に応じてその他の成分を添加して、攪拌混合することにより、樹脂組成物を調製してもよい。
上述のように樹脂組成物を調製した後、該組成物溶液を例えば130〜200℃において例えば5分〜2時間加熱することにより、ポリマーが析出を起こさない程度にポリイミド前駆体の一部を脱水イミド化してもよい。ここで、加熱温度及び加熱時間をコントロールすることにより、イミド化率を制御することができる。ポリイミド前駆体を部分イミド化することにより、樹脂組成物の室温保管時の粘度安定性を向上することができる。イミド化率の範囲としては、5%〜70%とすることが、樹脂組成物溶液へのポリイミド前駆体の溶解性と溶液の保存安定性とのバランスをとる観点から好ましい。
本実施の形態にかかる樹脂組成物は、その水分量が3,000質量ppm以下であることが好ましい。
樹脂組成物の水分量は、該樹脂組成物を保存する時の粘度安定性の観点から、1,000質量ppm以下であることがより好ましく、500質量ppm以下であることが更に好ましい。
本実施の形態にかかる樹脂組成物の溶液粘度は、25℃において、500〜200,000mPa・sが好ましく、2,000〜100,000mPa・sがより好ましく、3,000〜30,000mPa・sが特に好ましい。この溶液粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製、VISCONICEHD)を用いて測定できる。 溶液粘度が300mPa・sより低いと膜形成の際の塗布がし難く、200,000mPa・sより高いと樹脂組成物調合の際の撹拌及び濾過が困難になるという問題が生じる恐れがある。
(a)ポリイミド前駆体を合成する際に、溶液が高粘度になったとしても、反応終了後に溶媒を添加して撹拌することにより、取扱い性のよい粘度の樹脂組成物を得ることが可能である。
本実施の形態にかかる樹脂組成物は、十分異物が低減されたポリイミドフィルムを得る観点から、1gあたり3μm以下の異物が300個以下であることが好ましく、100個以下がより好ましく、50個以下が特に好ましい。異物の数が300以下であれば、前記樹脂組成物を膜厚1μmで、8インチウェハー上に塗布し、硬化させて得られるポリイミド樹脂膜中の異物が、500個以下であることができる。
本実施の形態のポリイミドは、下記一般式(7)および(8)で示される構造を有するポリイミドである。
Figure 0006795920
Figure 0006795920
式中、複数あるRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表し、nは0以上4以下、Xは下記一般式(3)〜(5)で表される部分構造からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
式(7)中のnは0以上4以下であれば限定されない。その中で透明性の観点から0以上2以下が好ましく、0がより好ましい。
前記式(2)中のXは、前記式(3)、(4)、(5)で表される部分構造かならなる群より選択される少なくとも1種であれば限定されない。透明性及び濾過性の観点から、前記式(3)及び前記式(4)で表される部分構造であることが好ましい。前記式(2)中のXは、これらのうち、得られるポリイミド樹脂膜の黄色度(YI)の抑制、ヘイズの低下、の観点から、前記式(3)で表される部分構造であることが好ましい。
Figure 0006795920
Figure 0006795920
Figure 0006795920
本実施の形態にかかるポリイミドは、20μm膜厚における黄色度YIが12以下であると好ましい。より好ましくは8以下であり、特に好ましくは6以下である。また、ヤング率が4GPa以上であることが好ましい。特に、20μm膜厚における黄色度YIが12以下であり、かつ、ヤング率が4GPa以上であることがより好ましい。
また、本実施の形態にかかるポリイミドは、膜厚1μmで、8インチウェハー上に製膜した場合、異物が500個以下であることを特徴とする。また、膜厚の斑を2μm以下にすることもできる。
[ポリイミド樹脂膜の製造方法]
本実施の形態にかかるポリイミド樹脂膜は、前述のポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を加熱または化学イミド化することにより、得ることができる。
本実施形態の別の態様として、支持体の表面上に前述の樹脂組成物を塗布することにより塗膜を形成する工程(塗布工程)と、
前記支持体及び前記塗膜を加熱することにより、該塗膜に含まれるポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド樹脂膜を形成する工程(加熱工程)と、
を含む製造方法を提供することができる。
ここで、支持体は、その後の工程の加熱温度における耐熱性を有していれば、特に限定されない。例えば、ガラス(例えば、無アルカリガラス)基板;
シリコンウェハー;
PET(ポリエチレンテレフタレート)、OPP(延伸ポリプロピレン)、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリエチレングリコールナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂基板;
ステンレス、アルミナ、銅、ニッケル等の金属基板
等が用いられる。
膜状のポリイミド成形体を形成する場合には、例えば、ガラス基板、シリコンウェハー等が好ましく、フィルム状又はシート状のポリイミド成形体を形成する場合には、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)、OPP(延伸ポリプロピレン)、ポリイミド等からなる支持体が好ましい。
塗布方法としては、例えば、ドクターブレードナイフコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ロータリーコーター、フローコーター、ダイコーター、バーコーター等の塗布方法、スピンコート、スプレイコート、ディップコート等の塗布方法;スクリーン印刷及びグラビア印刷等に代表される印刷技術等を適用することができる。
塗布厚は、所望の樹脂フィルムの厚さと樹脂組成物中のポリイミド前駆体の含有量に応じて適宜調整されるべきものであるが、好ましくは1〜1,000μm程度である。塗布工程は、室温における実施で足りるが、粘度を下げて作業性をよくする目的で、樹脂組成物を40〜80℃の範囲で加温して実施してもよい。
塗布工程に続き、乾燥工程を行ってもよいし、乾燥工程を省略して直接次の加熱工程に進んでもよい。この乾燥工程は、有機溶剤除去の目的で行われる。乾燥工程を行う場合、例えば、ホットプレート、箱型乾燥機、コンベヤー型乾燥機等の適宜の装置を利用することができる。乾燥工程は、80〜200℃で行うことが好ましく、100〜150℃で行うことがより好ましい。乾燥工程の実施時間は、1分〜10時間とすることが好ましく、3分〜1時間とすることがより好ましい。
上記のようにして、支持体上にポリイミド前駆体を含有する塗膜が形成される。
続いて、加熱工程を行う。加熱工程は、上記の乾燥工程で塗膜中に残留した有機溶剤の除去を行うとともに、塗膜中のポリイミド前駆体のイミド化反応を進行させ、ポリイミドから成る膜を得る工程である。
この加熱工程は、例えば、イナートガスオーブン、ホットプレート、箱型乾燥機、コンベヤー型乾燥機等の装置を用いて行うことができる。この工程は前記乾燥工程と同時に行っても、両工程を逐次的に行ってもよい。
加熱工程は、空気雰囲気下で行ってもよいが、安全性と、得られるポリイミドフィルムの透明性及びYI値と、の観点から、不活性ガス雰囲気下で行うことが推奨される。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。
加熱温度は、(b)有機溶剤の種類に応じて適宜に設定されてよいが、180℃〜450℃が好ましく、200〜400℃がより好ましい。180℃より低いとイミド化が不十分となり、450℃より高いと得られるポリイミドフィルムの透明性の低下、耐熱性の悪化等の不都合を来たすおそれがある。加熱時間は、0.5〜3時間程度とすることが好ましい。
本実施の形態では、上記の加熱工程における周囲雰囲気の酸素濃度は、得られるポリイミドフィルムの透明性及びYI値の観点から、2,000質量ppm以下が好ましく、100質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以下が更に好ましい。酸素濃度が2,000質量ppm以下の雰囲気中で加熱を行うことにより、得られるポリイミドフィルムのYI値を12以下にすることができる。
ポリイミド樹脂膜の使用用途・目的によっては、上記加熱工程の後、支持体から樹脂膜を剥離する剥離工程を含んでもよい。この剥離工程は、支持体上の樹脂膜を、室温〜50℃程度まで冷却した後に、実施することが好ましい。
この剥離工程としては、例えば下記の(1)〜(4)の態様が挙げられる。
(1)前記方法により、ポリイミド樹脂膜/支持体を含む構成体を作製した後、該構造体の支持体側からレーザーを照射して、支持体とポリイミド樹脂膜との界面をアブレーション加工することにより、ポリイミド樹脂を剥離する方法。レーザーの種類としては、固体(YAG)レーザー、ガス(UVエキシマー)レーザー等が挙げられる。波長308nm等のスペクトルを用いることが好ましい(特許文献1、特許文献2等を参照)。
(2)支持体に樹脂組成物を塗工する前に、支持体に剥離層を形成し、その後ポリイミド樹脂膜/剥離層/支持体を含む構成体を得て、ポリイミド樹脂膜を剥離する方法。剥離層としては、パリレン(登録商標、日本パリレン合同会社製)、酸化タングステンを用いる方法;植物油系、シリコーン系、フッ素系、アルキッド系等の離型剤を用いる方法等が挙げられる。(特許文献3、特許文献4等を参照)。
この方法(2)と前記(1)のレーザー照射とを併用してもよい。
(3)支持体としてエッチング可能な金属基板を用いて、ポリイミド樹脂膜/支持体を含む構成体を得た後、エッチャントで金属をエッチングすることにより、ポリイミド樹脂フィルムを得る方法。金属としては、例えば、銅(具体例としては、三井金属鉱業株式会社製の電解銅箔「DFF」)、アルミニウム等を使用することができる。エッチャントとしては、銅に対しては塩化第二鉄等を、アルミニウムに対しては希塩酸等を使用することができる。
(4)前記方法により、ポリイミド樹脂膜/支持体を含む構成体を得た後、ポリイミド樹脂膜表面に粘着フィルムを貼り付けて、支持体から粘着フィルム/ポリイミド樹脂膜を分離し、その後粘着フィルムからポリイミド樹脂膜を分離する方法。
これらの剥離方法の中でも、得られるポリイミド樹脂フィルムの表裏の屈折率差、YI値、及び伸度の観点から、方法(1)又は(2)が適切であり、得られるポリイミド樹脂フィルムの表裏の屈折率差の観点から方法(1)がより適切である。
上記の方法によって得られる樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、1〜200μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜100μmである。
[透明基板、保護膜]
本発明の別の形態は、透明基板及び保護膜である。
本発明の透明基板及び保護膜は、本発明のポリイミド樹脂膜からなり、従来公知の方法を用いることができる。例えば、支持体の表面に前述の樹脂組成物を塗布し、乾燥及び加熱を行い、次いで用途に応じてレジストプロセスを行い、透明基板として使用することができる。
また、前述の樹脂組成物を支持体に塗布し、乾燥及び加熱を行い、支持体から剥離して保護膜として用いることができる。
本発明の透明基板及び保護膜は、十分な透明性を有し、ヤング率が高く、かつ、濾過法等を用いて容易に異物を除去できるため、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置の透明基板又は保護膜を形成するために好適に用いることができる。具体的には、本発明の透明基板は、薄膜トランジスタ(TFT)を形成するための基板、カラーフィルタを形成するための基板、透明導電膜(ITO、IndiumThinOxide)を形成するための基板等を形成するために用いることができる。
更に詳細に説明すると、以下のとおりである。
本発明の透明基板は、従来のガラス基板の課題であった、耐破損性を向上することができ、また、基板の軽量化、薄型化を実現できると考えられる。また、本発明の透明基板は、透明性が高く、基板内に含まれる異物の数が少ないため、視認性に優れる。さらに、本発明の透明基板はヤング率が高いため、耐擦傷性に優れ、フレキシブルディスプレイの基板としても用いることができる。
本発明の保護膜は、フレキシブルディスプレイ基板、カラーフィルタ用保護膜等として用いることができ、太陽電池の表面保護膜等としても用いることができる。
以下、本発明について、実施例に基づき更に詳述するが、これらは説明のために記述されるものであって、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における各種評価は次のとおりに行った。
(重量平均分子量及び数平均分子量の測定)
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、それぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記の条件により測定した。
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)に対して、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたもの。
重量平均分子量を算出するための検量線:スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成。
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV‐2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製
(黄色度(YI値)の評価)
実施例及び比較例のそれぞれで調製した樹脂組成物を、表面にアルミ蒸着層を設けた6インチシリコンウェハー基板に、硬化後膜厚が20μmになるようにバーコートによりコートし、前記基板上に塗膜を形成した。この塗膜付き基板を、80℃において40分間プリベークした後、縦型キュア炉(光洋リンドバーグ社製、型式名VF−2000B)を用いて、窒素雰囲気下で、350℃において1時間の加熱硬化処理を施して、ポリイミド膜が形成されたウェハーを作製した。このウェハーを希塩酸水溶液に浸漬してポリイミド膜を剥離することにより、ポリイミド膜を得た。
得られたポリイミド膜のYI(膜厚10μm換算)を、日本電色工業(株)製(Spectrophotometer:SE600)を用い、D65光源にて測定した。
(ヤング率の評価)
上記(黄色度(YI値)の評価)と同様にしてポリイミド膜が形成されたウェハーを作製した。ダイシングソー(株式会社ディスコ製 DAD 3350)を用いて該ウェハー上のポリイミド樹脂膜に3mm幅の切れ目を入れた後、希塩酸水溶液に一晩浸して樹脂膜片を剥離し、乾燥させた。これを、長さ50mmにカットし、サンプルとした。
上記のサンプルにつき、TENSILON(オリエンテック社製 UTM−II−20)を用いて、試験速度40mm/min、初期加重0.5fsにてヤング率を測定した。
(異物の個数評価)
基板として8インチシリコンウェハーを用いたこと、及び硬化後膜厚が1μmであること以外は上記(黄色度(YI値)の評価)と同様にしてポリイミド膜が形成されたウェハーを作製した。該ウェハー上のポリイミド樹脂膜中に含まれる異物の個数をTOPCON WM−75にて測定した。評価基準は以下の通りである。
○:直径3μm以下の異物が500個未満
×:直径3μm以下の異物が500個以上
(表面平滑性評価)
基板として10cm×10cmの無アルカリガラスを用いたこと以外は(黄色度(YI値)の評価)と同様にしてポリイミド膜が形成されたウェハーを作成した。該ガラス基板上のポリイミド膜の任意10点について、膜厚を測定し、以下の基準に基づいて表面平滑性を評価した。
◎:10点の膜厚の最大値と最小値の差が0μm以上〜1μm未満
○:10点の膜厚の最大値と最小値の差が1μm以上〜2μm未満
×:10点の膜厚の最大値と最小値の差が2μm以上
[ポリイミド前駆体の合成]
[合成例1]
500mlセパラブルフラスコを窒素置換し、そのセパラブルフラスコに、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を、重合後の固形分含有量が12質量%となる量を入れ、更に、ジアミンとして1,4−シクロヘキサンジアミン(CHDA)5.65g(49.0mmol)を入れ、撹拌してCHDAを溶解させた。その後、テトラカルボン酸二無水物としてp−フェニレンビス(トリメリテート酸無水物)18.33g(40.0mmol)及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)4.44g(10.0mmol)を加えた。次いで、窒素フロー下、120℃において15分撹拌し、その後室温で24時間攪拌し、ポリアミド酸のNMP溶液P−1を得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)は、82,000であった。
[合成例2〜11]
上記合成例1において、表1に記載の種類及び量のジアミン及びテトラカルボン酸二無水物をそれぞれ使用し、表1に記載の固形分濃度で合成した以外は、合成例1と同様にして、ポリアミド酸のNMP溶液を得た。得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)及び、硬化膜の評価結果をそれぞれ表1に示した。
[ポリアミド酸溶液の濾過精製]
上記合成例1〜11で得られたポリアミド酸のNMP溶液を、MEMBRANE FILTER(材質:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、孔径:3μm)を用いて、圧力0.3kPaで加圧濾過した。それぞれの溶液の濾過速度を、表1にそれぞれ示した。
[実施例1〜7、比較例1〜4]
上記合成及び濾過により得られたポリアミド酸溶液について、上記に記載の方法により評価した結果を、表1に示した。また、濾過できなかったポリアミド酸溶液(濾過速度0g/min)については、未濾過のポリアミド酸溶液の評価結果を示した。
Figure 0006795920
表1中の化合物名の略称は、それぞれ、以下の意味である。
(ジアミン)
CHDA:1,4−シクロヘキサンジアミン
(テトラカルボン酸二無水物)
TAHQ:p−フェニレンビス(トリメリテート酸無水物)
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
BPDA:ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
上記の結果から、本発明に係るポリイミド前駆体から得られるポリイミド膜は、YIが低く、
かつ、ヤング率が高く、さらにポリイミド樹脂膜中の異物が十分に低減され、表面平滑性に優れる樹脂膜であることが確認された。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。
本発明のポリイミド前駆体は、例えば、フレキシブルディスプレイの透明基板、又は保護膜として利用することができる。

Claims (11)

  1. 下記一般式(1)及び(2)で示される構造単位を有する共重合体であるポリイミド前駆体。
    Figure 0006795920
    Figure 0006795920
    {式中、複数ある場合のRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表し、nは0以上4以下、Xは下記式(3)〜(5)で表される部分構造からなる群より選ばれる少なくとも1種である。}
    Figure 0006795920
    Figure 0006795920
    Figure 0006795920
  2. 前記式(1)のnが0である請求項1に記載のポリイミド前駆体。
  3. 前記式(2)のXが前記式(3)又は(4)で表される部分構造である請求項1または2に記載のポリイミド前駆体。
  4. 前記式(2)のXが前記式(3)で表される部分構造である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。
  5. 前記式(1)で示される構造単位と前記式(2)で示される構造単位とのモル比が(1):(2)=80:20〜40:60である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体と、有機溶剤と、を含有する樹脂組成物。
  7. 下記一般式(7)及び(8)で示される構造単位を有する共重合体であるポリイミド。
    Figure 0006795920
    Figure 0006795920
    {式中、複数ある場合のRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基のいずれかを表し、nは0以上4以下、Xは下記式(3)〜(5):
    Figure 0006795920
    Figure 0006795920
    Figure 0006795920
    で表される部分構造からなる群より選ばれる少なくとも1種である。}
  8. 請求項7に記載のポリイミドを含む、樹脂膜。
  9. 請求項6に記載の樹脂組成物を支持体の表面上に塗布する工程と、
    塗布した樹脂組成物を乾燥し、溶媒を除去する工程と、
    前記支持体及び前記樹脂組成物を加熱してポリイミドを形成する工程と、
    を含む、ポリイミドの製造方法。
  10. 請求項7に記載のポリイミドを含む透明基板。
  11. 請求項7に記載のポリイミドを含む保護膜。
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