JP7141090B2 - イソフラボンを含有するグルテン不使用米粉パンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、イソフラボンを含有するグルテン不使用米粉パンの製造方法に関する。
近年、予防医学の観点から、食品の機能性に注目が集まっている。食品由来の様々な機能性成分が見出されており、機能性食品の開発に利用されている。
女性ホルモンの一つであるエストロゲンと類似した化学構造を有する大豆イソフラボンは、生体内でエストロゲンの受容体と結合し、種々の作用を発揮する。大豆イソフラボンには、骨粗しょう症、乳がん、前立腺がんなどに対する予防効果が期待されており、それを日常的に摂取できる食品の開発が望まれている。大豆イソフラボンは、大豆を原料とするほとんどの食品や食品素材に含まれているが、それらを用いて、大豆イソフラボンを十分量で含有する特定の食品を実際に高品質で製造できるかどうかを予測することは困難である。
特許文献1は、従来の方法では大豆粉を多量に含む小麦粉パンの製造は困難とされていたことを述べている。特許文献1は、従来より多めの水分量を使用し、必要に応じて水溶性食物繊維を添加することによってグルテンの網目構造の形成を促進した小麦粉パン生地と、粘度を適切に調節した大豆粉含有生地とを用いて、膨らみのよい小麦粉パンの製造に成功したことを開示している。
一方、近年、米粉の消費拡大を目的として米粉パンの開発が奨励されている。また、グルテンフリー食品や低グルテン食品が健康面で注目されるようになっており、米粉パンの需要が高まっている。
グルテンは、ふっくらと膨らんだパンを製造する上で重要な成分である。一般的な小麦粉パンの製造においては、小麦粉に水を加えて練り合わせることにより、小麦粉に含まれるタンパク質グリアジンとグルテニンから粘り気と弾力性に富む「グルテン」が生成され、これがパン生地の伸張性及び弾力性を高めることで、発酵・焼成後の小麦粉パンが良好な膨らみや柔らかさを有するようになることが知られている。
これに対し、グリアジンやグルテニンを含まない米粉のみを主原料として用いたパン生地では、生地をミキシングしてもグルテンが生成しない。このため一般的には、小麦粉パンと同じパン製造法では、穀物粉として米粉を100%使用したパンは十分に膨らまないとされている。そこで市販の米粉パンや米粉パン製造用の市販米粉のほとんどには、小麦粉やグルテンが配合されている。
グルテンを含まない米粉パンを製造する技術の開発も進められている。例えば、プラスチック発泡成形技術を利用した製パン方法(特許文献2)、α化米粉やα化澱粉を配合した生地を用いる方法(特許文献3及び4等)、増粘剤を添加する方法(特許文献5等)、などがある。しかし、これらの方法で製造した米粉パンは、小麦粉パンや、グルテン添加して製造した米粉パンに比べてふんわり感、柔らかさなどの点で品質が著しく劣るという問題がある。
本発明者は、所定の損傷澱粉率及び吸水率を示す米粉を用いることにより、膨らみが良くきめの細かい、グルテンや増粘剤を含まない米粉パンを製造する方法を開発している(特許文献6)。
米粉パンについても、食品機能性成分を配合するなどして、その機能性を高めることが期待されている。しかし、米粉パンの膨らみはグルテンの架橋ネットワーク構造によるものではなく、良好な膨らみを生じるメカニズムは個々の製造方法によって異なると考えられ、それらのメカニズムはほとんど解明されていない。そのため、機能性成分の配合による米粉パンの膨らみへの影響を予測することは、小麦粉パンよりもさらに難しいのが現状である。
特許文献7は、増粘剤として知られるサイリウムやα化米粉を使用することにより膨らみを向上させた、米粉と大豆粉を含むグルテンフリーの米粉パンの製造を開示している。しかしサイリウムやα化米粉を使用せずに高品質なグルテンフリーの機能性米粉パンを製造する方法については記載されていない。
特開2006-101727号公報 特開2003-189786号公報 特開2006-174822号公報 特開2007-215401号公報 特開2005-245409号公報 特開2017-23043号公報 特許第6304673号明細書
本発明は、機能性成分を含有する、グルテン及び増粘剤を含まない米粉パンを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、イソフラボンを、グルテンや増粘剤を含まない米粉パンに、パンの品質を損なうことなく十分量で配合できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]イソフラボン、5%以下の損傷澱粉率及び80%以下の吸水率を示す米粉、水及び酵母が配合されており、かつグルテン及び増粘剤を含まないパン生地。
[2]イソフラボンが大豆イソフラボンである、上記[1]に記載のパン生地。
[3]イソフラボンが粗精製又は精製イソフラボンの形態で配合されている、上記[1]又は[2]に記載のパン生地。
[4]米粉100g当たり0.6g以下のイソフラボンを含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載のパン生地。
[5]パン生地が、大豆粉を含まない、上記[1]~[4]のいずれかに記載のパン生地。
[6]砂糖、塩、及び油脂から選択される1つ以上をさらに含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載のパン生地。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のパン生地から製造される、イソフラボンを含み、グルテン及び増粘剤を含まない米粉パン。
[8]上記[1]~[6]のいずれかに記載のパン生地を、発酵させ、焼成することを含む、米粉パンの製造方法。
[9]前記パン生地を調製する工程をさらに含む、上記[8]に記載の方法。
本発明によれば、イソフラボンを十分量で含有する、グルテンや増粘剤を含まない米粉パンを製造することができる。
図1は、大豆粉を様々な量で配合した、異なるイソフラボン添加量の米粉パンの断面の写真である。A~Eの各写真の下に、焼成後の米粉パン1g当たりのイソフラボン添加量を示す。 図2は、粗精製イソフラボンを様々な量で配合した、異なるイソフラボン添加量の米粉パンの断面の写真である。A~Hの各写真の下に、焼成後の米粉パン1g当たりのイソフラボン添加量を示す。 図3は、焼成した米粉パン1g当たりのイソフラボン添加量とパンの比容積(mL/g)との関係を示すグラフである。白抜き四角は大豆粉配合米粉パン、黒塗り丸は粗精製イソフラボン配合米粉パンを示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、イソフラボンを配合した、グルテン及び増粘剤を含まない米粉パンとその製造に関する。本発明は、所定の性状の米粉を使用して、グルテン構成タンパク質やそれを含む穀物粉(小麦粉など)、グルテン、増粘剤等を使用することなく、米粉パンを製造する方法(特開2017-23043号公報)を利用し、イソフラボンを配合した、米粉パンの製造に関する。
より具体的には、本発明は、イソフラボン、5%以下の損傷澱粉率及び80%以下の吸水率を示す米粉、水及び酵母が配合されており、かつグルテン及び増粘剤を含まないパン生地を、発酵後、焼成することを含む、米粉パンの製造方法を提供する。
本発明はまた、イソフラボン、5%以下の損傷澱粉率及び80%以下の吸水率を示す米粉、水及び酵母が配合されており、かつグルテン及び増粘剤を含まないパン生地、及びそれを用いて製造された米粉パンを提供する。
本発明において、米粉とは、イネ(Oryza sativa)の種子(生米)を粉砕して得られた粉末を指す。米粉の原料となる米は、限定するものではないが、うるち米が好ましい。うるち米は、例えば、ジャポニカ米、インディカ米、又はジャバニカ米であってよく、さらに、それらに属する様々な品種の米であってよい。米の品種としては、以下に限定するものではないが、例えば、タカナリ、ミズホチカラ、ゆめふわりなどの、米粉用米として好適とされる品種であってもよいし、アミロース含有率が高い、中程度、又は低い品種などであってもよい。米粉はまた、様々な品種の米粉の混合物であってもよい。なお、本発明で原料として用いる米粉は、米を加熱によりα化(糊化)した後に乾燥及び粉末化して得られるα化米粉を含む必要はない。
本発明では、米粉の所定の性状、特に、5%以下の損傷澱粉率及び80%以下の吸水率を示す米粉を使用する。一実施形態では、米粉の損傷澱粉率が3%以上、例えば4%以上又は4.5%以上であることも好ましい。好適な一実施形態では、吸水率が72%以上、例えば74%以上又は75%以上であることも好ましい。以下に限定するものではないが、好ましい実施形態では、米粉の損傷澱粉率は3%~5%であり、吸水率は72%~80%である。一実施形態では、米粉の損傷澱粉率は4.5%~5%であり、吸水率は74%~80%、好ましくは75%~77%である。
米粉の損傷澱粉率は常法により測定することができる。本発明では、損傷澱粉測定キットStarch Damage Assay Kit(Megazyme社)又はそれと同等のキット若しくは試薬を使用して損傷澱粉率を決定することができる。具体的には、まず、米粉100mgとアミラーゼ溶液(50U/ml)を別々の容器で40℃で約5分、プレインキュベーションした後、米粉に1mLのアミラーゼ溶液を加え、ボルテックスミキサーで混合し、40℃で10分間反応させる。次いで硫酸溶液(0.2%v/v)を8ml添加し、ボルテックスミキサーで混合して反応を停止させ、3,000rpmで5分遠心する。上清の0.1mlを採取し、0.1mlのアミログルコシダーゼ溶液を加えて40℃で10分間反応させた後、4mlのグルコース測定試薬GOPOD(グルコースオキシダーゼ及びペロキシダーゼ)溶液を加え、40℃で20分間反応させる。さらに反応液について510nmで吸光度を測定する。150mg/mlのグルコース標準液及び緩衝液(ブランク)についてGOPOD溶液を加えて反応させ、吸光度の測定を行い、検量線を作成する。この検量線に基づいて米粉の損傷澱粉率(%)を決定することができる。
米粉の吸水率は常法により測定することができる。具体的には、米粉(乾燥状態)10gを50mLチューブに入れ、50mLの目盛までイオン交換水を添加した後、室温で一晩放置し、3000rpmで30分間遠心した後、上清を捨て、吸水後の米粉重量(米粉と米粉に吸収された水の合計重量)を測定する。測定値に基づいて、米粉の吸水率を以下の式で算出することができる。
吸水率(%)=(吸水後の米粉重量-吸水前の米粉重量(10g))/吸水前の米粉重量(10g)×100
一実施形態では、本発明で用いる米粉は、好ましくは200μm以下、より好ましくは70~130μmの最頻粒径を示すものであってもよい。米粉について、粒度分布測定装置(LS13320[ベックマンコールター]又はそれと同等の装置)を使用し、マニュアルに従って乾式法による粒度分布の計測を行い、その粒度分布計測値から米粉の最頻粒径を求めることができる。
本発明で用いる上記の米粉は、公知の米粉製造技術を用いて製造することができるが、例えば、湿式気流粉砕法を用いて製造することができる。上記の米粉は市販品として入手することもできる。
本発明では、上記の米粉、水及び酵母と共に、イソフラボンを、米粉パンの原料として用いる。本発明における「イソフラボン」は、イソフラボン基本骨格を有するフラボノイド(イソフラボン類)を指す。本発明で用いるイソフラボンは、植物由来であっても非植物由来であってもよく、特に限定されないが、例えば作物植物由来であってよく、好ましくは大豆由来(大豆イソフラボン)である。イソフラボンは、配糖体(例えば、大豆イソフラボンでは、ダイジン、ゲニスチン、及びグリシチン、並びにそれらのアセチル化物及びマロニル化物)と非配糖体であるアグリコン(例えば、大豆イソフラボンでは、ダイゼイン、ゲニステイン、及びグリシテイン)に分類される。本発明において単に「イソフラボン」と称する場合には、上記の配糖体とアグリコンの両方を指すものとする。
一実施形態では、イソフラボンは、粗精製又は精製イソフラボンの形態で、他のパン生地原料と共にパン生地に配合されてもよい。粗精製又は精製イソフラボンは、粗精製又は精製大豆イソフラボンであってもよい。本発明において、粗精製イソフラボンは、イソフラボンを40w/w%~90w/w%の純度で含む。本発明において、精製イソフラボンは、イソフラボンを90w/w%超~100w/w%の純度で含む。粗精製イソフラボン及び精製イソフラボンとして様々な製品が市販されている。一実施形態では、50w/w%以上、例えば、50w/w%~70w/w%、又は50w/w%~60w/w%の純度でイソフラボンを含む粗精製イソフラボンを使用してもよい。
本発明に係るパン生地は、イソフラボン、5%以下の損傷澱粉率及び80%以下の吸水率を示す米粉、水及び酵母を含む。本発明に係るパン生地は、米粉100g当たり、好ましくは0.7g以下、より好ましくは0.6g以下のイソフラボンを含み、例えば、米粉100g当たり0.5g以下、0.45g以下、又は0.4g以下のイソフラボンを含んでもよい。一実施形態では、本発明に係るパン生地は、米粉100g当たり0.05g~0.7g、0.1g~0.6g、又は0.3~0.5gのイソフラボンを含んでもよい。ここでのイソフラボンの量は、イソフラボン総量(配糖体+アグリコン)を指す。粗精製又は精製イソフラボンの形態でイソフラボンをパン生地に配合する場合には、米粉100g当たりのイソフラボンの添加量は、粗精製又は精製イソフラボン中に含まれるイソフラボン量に基づいて算出される。
本発明に係るパン生地は、大豆粉を含まないことが好ましい。大豆粉は、大豆の粉砕物であり、典型的には、生大豆、又は加熱乾燥大豆の粉砕工程を経て得られるものである。一実施形態では、本発明に係るパン生地は、大豆粉などの、米粉以外の穀物粉を含まない。本発明において穀物粉とは、イネ科又はマメ科作物の種子の粉砕物を指す。
本発明では、上記イソフラボン、上記米粉、水及び酵母が配合されており、かつグルテン及び増粘剤を含まないパン生地を用いて米粉パンを製造する。パン生地中の水の量は、例えば、米粉の量の70~120重量%、70~100重量%、80~90重量%、又は86~90重量%であってよい。パン生地中の水は、水として添加したものであってよいが、他の原料の一成分として添加したものであってもよい。例えば、パン生地中の水は、パン生地に添加した飲料等に由来する水分であってもよい。常温の水又は飲料等を原料として米粉に添加してもよいし、加温又は冷却した水又は飲料等を加えてもよい。本発明に係るパン生地中の水の量は、上記米粉、上記イソフラボン、及び場合により他のパン生地原料を用いたグルテン及び増粘剤を含まない米粉パンの高品質な製造に適した量である。
パン生地に配合する酵母は、パンの発酵に使用できる任意の酵母であってよいが、典型的には、パン酵母(パン製造に使用されるサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株)である。本発明で用いる酵母は、グルテン構成タンパク質を分泌しない。酵母は、ドライイーストであっても生イーストであってもよい。また酵母は、いわゆる発酵種(スターター)に含まれるものであってもよい。発酵種は、自然界に存在する酵母を発酵・増殖させて得られる発酵物であり、パン酵母以外に乳酸菌等の多様な微生物を含み得る。そのような発酵種を酵母の供給源として、パン生地に混合してもよい。但しグルテン及び増粘剤を含まないパン生地を調製するために、発酵種の調製もグルテン及び増粘剤を含まない原料を用いて行う必要がある。当業者であれば、パン製造に適した酵母の配合量は適宜調節することができるが、一般的には、乾燥重量で米粉の量の0.5~5質量%となる量の酵母を用いればよい。酵母は、例えば、最初から米粉と共にミキシングしてもよいし、一旦ミキシングした後の生地に添加してさらにミキシングしてもよい。予備発酵を行った後の酵母を米粉又はパン生地に添加してもよいし、予備発酵を行うことなく酵母を米粉又はパン生地に添加してもよい。
本発明に係るパン生地は、グルテン及び増粘剤を含まない他の原料を含んでもよい。本発明に係るパン生地は、例えば、砂糖などの糖類、塩、及び油脂から選択される1つ以上をさらに含んでもよい。油脂は、菜種油、オリーブ油などの植物油脂、バターなどの動物油脂、ショートニング、マーガリン等の任意の油脂又はそれらの混合物であってよい。
本発明において「塩」とは、食品グレード又は医薬品グレードの塩(塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムを主成分とするもの;食塩)を意味するものとする。塩は主成分の塩化ナトリウムに加えて、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の他の無機塩類を含んでいてもよい。任意の塩製品を、本発明に係るパン生地に配合する塩として用いることができる。例えば、市販の精製塩などの高純度塩(ほぼ塩化ナトリウムのみを含有する)や、未精製塩(塩化ナトリウムを主成分とするが、他の無機塩類をより多い量で含有する)などを用いることができる。精製塩(乾燥重量で99%以上の塩化ナトリウムを含有する)をパン生地に添加する場合、精製塩の量はその塩化ナトリウム含量とほぼ等しいことから、パン生地における塩の含有量は、精製塩の添加量に基づいて計算することができる。一方、未精製塩(乾燥重量で99%未満の塩化ナトリウムを含む)をパン生地に添加する場合、パン生地における塩含有量は、添加した未精製塩のナトリウム含量から算出される塩化ナトリウム相当量に基づいて計算する。なお塩化ナトリウム相当量は、ナトリウム含量に2.54を乗算することによって算出される。
本発明において砂糖としては、白砂糖、黒砂糖、キビ砂糖、ショ糖等の任意の砂糖を用いることができる。また、他の糖類(ぶどう糖、果糖、蜂蜜、麦芽糖、黒糖、グラニュー糖等;但し多糖類を除く)を用いることもできる。
本発明に係るパン生地は、グルテン及び増粘剤を含まない限り、乳化剤、保存料、香料、着色料等の食品添加物を含んでもよい。
本発明に係るパン生地は、グルテン構成タンパク質や、グルテン構成タンパク質を含む穀物粉(小麦粉、ライムギ粉、大麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉等)を含まない。本発明に係るパン生地は、穀物粉としては米粉のみを含むことが好ましく、5%以下の損傷澱粉率及び80%以下の吸水率を示す上記の米粉のみを含むことが特に好ましい。本発明に係るパン生地はまた、グルテン、グルテン構成タンパク質、及びグルテン構成タンパク質を含む穀物粉(小麦粉、ライムギ粉、大麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉等)のいずれも原料として使用せずに作製され、グルテンを含まない。ここで、パン生地がこれらの成分を「含まない」とは、パン生地中にこれらの成分が有効量で存在しないことを意味する。グルテン、グルテン構成タンパク質、又は他の穀物粉が、生地の原料としては使用されていないにもかかわらず、パン生地又はパン製造工程においてごく微量に混入した場合は、そのパン生地中には有効量のグルテン、グルテン構成タンパク質、又は他の穀物粉が存在しないため、当該パン生地はそれらを含まないものと判定される。より具体的には、パン生地中のグルテンの混入量が、米粉の量の0.5重量%未満(好ましくは0.1重量%未満)である場合、そのパン生地中には有効量のグルテンは存在せず、本発明に係るそのようなパン生地はグルテンを含まないものとする。また、パン生地中のグルテン構成タンパク質又は他の穀物粉の混入量が、米粉の量の1.0重量%未満(好ましくは0.1重量%未満)である場合、そのパン生地中には有効量のグルテン構成タンパク質又は他の穀物粉が存在せず、本発明に係るそのようなパン生地はグルテン構成タンパク質又は他の穀物粉を含まないものとする。
好ましい実施形態では、本発明に係るパン生地は、より厳密に、「グルテンフリー」であってもよい。本発明において「グルテン」は、小麦粉由来の小麦グルテンの他、他の穀物粉由来のグルテン様タンパク質も包含する。グルテンは、穀物粉に含まれるグルテン構成タンパク質(小麦粉の場合、グリアジンとグルテニン)が水の存在下で反応することで生じる。小麦のグリアジンに対応するグルテン構成タンパク質は、大麦ではホルダイン、ライ麦ではセカリン、オーツ麦ではアベニンと呼ばれる。本発明において「グルテンフリー」とは、グルテンの含有量が当該食品の総重量(総質量)の0.002%以下(20mg/kg以下)であることを意味する。これは2008年にコーデックス(Codex)委員会が「グルテンフリー」の基準として設定した値である。典型的には、グルテンフリー製品専用の製造ラインを用いて本発明に係るパン生地等を製造することにより、小麦粉やグルテン等の混入を防止し、グルテンフリーのパン生地を製造することができる。
グルテンを含まない米粉パンの製造においては通常、増粘剤が使用されるが、本発明に係るパン生地は、グルテンだけでなく、増粘剤も含まない。増粘剤としては、食品分野で使用できる多種多様な増粘剤、例えば増粘多糖類、ゲル化剤等が挙げられる。増粘剤の例としては、アルギン酸、アラビアガム、カラギナン、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ペクチン、セルロース、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム(サイリウム)、グルコマンナン、ゼラチン、寒天、大豆多糖類、タピオカ澱粉、コーンスターチ、葛澱粉、片栗粉、ばれいしょ澱粉並びにそれらの誘導体(アセチル化物、エステル化物、分解物など)があるが、これらに限定されない。なお本発明の方法のパン生地又はパン製造中に、米粉、酵母又は他の原料から増粘作用のある成分が副次的に生成したとしても、そのような成分は「増粘剤」には含めないものとする。ここで、本発明に係るパン生地が増粘剤を「含まない」とは、パン生地中に有効量の増粘剤が存在しないことを意味する。増粘剤が生地の原料としては使用されていないにもかかわらず、パン生地又はパン製造工程においてごく微量に混入した場合は、そのパン生地中には有効量の増粘剤が存在しないため、本発明に係るそのようなパン生地は増粘剤を含まないものと判定される。より具体的には、パン生地中の増粘剤の混入量が、米粉の量の0.05重量%未満(好ましくは0.005重量%未満)である場合、そのパン生地中には有効量の増粘剤が存在せず、本発明に係るそのようなパン生地は増粘剤を含まないものとする。
なお本発明において、グルテン、グルテン構成タンパク質、米粉以外の穀物粉、又は増粘剤を「含まない」ものとする上記基準は、パン生地だけでなく、米粉パンについても同様に適用される。
本発明に係るパン生地は、上記のようなパン原料から常法により調製することができ、具体的には、イソフラボン、米粉、水、酵母、及び必要に応じて他の原料を1以上の工程によりミキシングすることにより調製することができる。食品加工分野において「ミキシング」とは、粉体及び液体を含む原料混合物をその成分を均一に分散させるように練ることをいう。本発明においてミキシングは、例えばミキシング装置やホームベーカリー等の攪拌機能により行うこともできるし、手で行うこともできる。ミキシングは、製パンにおいてミキシングに用いられる通常の温度で行えばよく、特に制限するものではないが、一般的には室温程度、例えば4℃~32℃程度、好ましくは15~30℃で行えばよい。ミキシングは当業者に公知の通常のミキシング時間、例えばミキシング工程1回につき3分~40分程度で行うことができるが、好ましくはミキシング工程1回につき10~30分程度行えばよい。ミキシングは1回でもよいし、複数回行ってもよい。
本発明に係るパン生地は、イソフラボン、米粉、水、酵母、及び必要に応じて他の原料を1つに混ぜ合わせ、それを1工程でミキシングすることを含む方法により調製してもよい。あるいは本発明に係るパン生地は、2以上のミキシング工程を含む方法で調製することもできる。一実施形態では、例えば、イソフラボン、米粉、水、及び必要に応じて他の1以上の原料を1つに混ぜ合わせ、ミキシングした後、酵母、砂糖などの糖類、及び必要に応じて他の1以上の原料(例えば、塩、油脂など)をさらに添加し、ミキシングすることにより、本発明に係るパン生地を調製することもできる。最終的なミキシング後に、他の原料(例えば、ナッツ類、チーズ、果実など)をさらに添加(例えば混合、包み込み、トッピング又は埋め込み)してもよい。イソフラボン、米粉及び水のミキシングの後、一定時間放置して十分な浸漬時間を置いてから、酵母等の他の原料を添加してもよい。米粉と水のミキシングの後、イソフラボン、及び酵母等の他の原料を添加してもよい。
一実施形態では、米粉、水、及び場合により他の原料を、混合する前に、予め冷蔵庫などで4~10℃程度に冷やしておいてもよい。イソフラボンも、混合する前に、予め冷蔵庫などで4~10℃程度に冷やしておいてもよい。
上記のようにして調製したパン生地は、必要に応じて容器に入れたり、分割又は成形したりした後、パン製造に用いられる任意の方法で発酵させることができる。本発明に係るパン生地は、通常は、例えば、発酵に適した温度(4~50℃、通常は25~45℃)下に通常は20分~4時間程度(より一般的には25分~2時間程度)置くことにより、発酵させることができる。発酵は、1回の発酵工程のみで行ってもよいし、2回以上の発酵工程で行ってもよい。例えばパン生地について、好ましくは比較的低温(例えば15~32℃)で15分~2時間程度(より一般的には30分~90分程度)置くことにより発酵させる一次発酵(フロアタイムとも呼ぶ)を行ってもよい。一次発酵によりある程度発酵が進んだ段階で、さらに4℃~45℃(より好ましくは25~42℃)で通常は15分~2時間程度(より一般的には30分~90分程度)にわたりさらに発酵させてもよい(ホイロと呼ばれる最終発酵)。本発明に係るパン生地は、ミキシング後、最初に生地をパン成形用の容器(型)に入れて発酵工程を開始することにより、最終発酵の完了まで中断なしで発酵工程を行ってもよい。本発明では、本発明に係るパン生地を発酵段階で顕著に膨らませることができる。
上記のようにして調製した本発明に係るパン生地は、任意の方法で、例えば密封容器又は密封袋などにパッケージングしてもよい。本発明に係るパン生地について、例えば殺菌、冷蔵、冷凍等の処理を行ってもよい。
本発明は上記のようなパン生地の調製(製造)方法を提供する。本発明に係るパン生地の調製方法は、ミキシング工程に加えて、場合により分割工程、成形工程、1回以上の発酵工程、パッケージング工程、殺菌工程、及び冷蔵又は冷凍工程等の1つ以上の任意の工程を含んでもよい。
本発明はまた、上記のような方法で調製した本発明に係るパン生地も提供する。本発明に係るパン生地は、焼成完了前のものを指す。本発明に係るパン生地はまた、例えば殺菌、冷蔵、又は冷凍等の処理を行ったパン生地も包含する。本発明に係るパン生地は、レトルトパウチ製品であってもよい。本発明に係るパン生地はまた、部分焼成されているが焼成が完了していない生地も包含する。本発明に係るパン生地は、焼成完了前である限り、ミキシング等により調製された生地を容器に入れたり、成形したり、生地に他の食材を混ぜたり包み込んだり載せたり埋め込んだりしたものも包含する。
本発明に係るパン生地を、発酵後、焼成(ベーキング)することにより、米粉パンを製造することができる。生地の焼成は、常法により行うことができる。具体的には、生地をオーブン、電子レンジ、釜等の任意の手段で加熱(例えば100℃~240℃での加熱)することにより焼成工程を実施すればよい。焼成時間は、一般的には5分~100分程度である。焼成温度や焼成時間は、当業者であれば適宜調節することができる。本発明に係るパン生地は、焼成後も良好な膨らみを示す。本発明に係る米粉パンは、焼成後の比容積が3mL/g以上であることが好ましく、例えば、3.85mL/g以上、特に3.9mL/g以上であることがさらに好ましい。本発明において、パンの比容積(パン比容積)は、焼成後のパンの容積(mL)を、焼成後のパンの重量(g)で除算することにより算出することができる。
焼き上がったパンに、さらにナッツ類、果実、クリーム、シロップ等をトッピングしたり、惣菜やハム等を挟んだりして、菓子パンや調理パン等を製造することもできる。このようにして加工されたパンも本発明に係るパンの範囲に含まれる。本発明に係る米粉パンは、食パン、ロールパン、丸パン、総菜パン、菓子パン等の任意の形態のパンであってよい。
本発明は、本発明に係るパン生地を用いた上記のような米粉パンの製造方法も提供する。本発明の米粉パンの製造方法はまた、本発明に係るパン生地を調製する工程をさらに含んでもよい。したがって本発明は、本発明のパン生地の調製方法によりパン生地を調製し、上記のように発酵させ、焼成することを含む米粉パンの製造方法も提供する。なお、本発明のパン製造方法では、原料の混合から発酵・焼成までの一連の作業を1つのホームベーカリーやパン製造ラインで連続して行ってもよい。
本発明の方法によって製造される米粉パンは、グルテンも増粘剤も含まないにもかかわらず、十分量のイソフラボンを含み、かつ良好な膨らみを示すことができる。一実施形態では、本発明に係る米粉パンは、0.25w/w%以下、0.01~0.2w/w%、又は0.05~0.15w/w%のイソフラボン(イソフラボン総量)を含有することができる。一実施形態では、本発明に係る米粉パンは、イソフラボンを、0.15w/w%以下、0.005~0.12w/w%、又は0.03~0.1w/w%のアグリコン換算量(アグリコンと配糖体のアグリコン部分の合計量)で含有することができる。好ましい実施形態では、本発明に係る米粉パンは、さらに、きめの細かさ、味・香りと食感、そして色合いのうちの少なくとも1つ(好ましくは全て)の点で優れている。本発明の方法によれば、イソフラボンを十分量で含み、かつ高い製パン性を示す高品質なパン生地及び米粉パンを製造することができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)大豆粉を配合した米粉パンの作製
大豆粉を配合した米粉パンを、ホームベーカリー(KBD-X100、タイガー魔法瓶株式会社)の「無添加グルテンフリー食パン」メニューを使用して、同機の取り扱い説明書に従って作製した。
具体的には、ホームベーカリーのパンケースに米粉(「リ・ファリーヌ」、群馬製粉株式会社)と、大豆粉(「ダイズラボ」、マルコメ株式会社)を、様々な比率(表1:合計250g)で入れ、プラスチック棒で軽くかき混ぜた。これに水220gを追加し、スタートキーを押して撹拌を開始した。米粉、大豆粉、及び水は予め冷蔵庫で冷やしたものを使用した。21分後、砂糖24g、塩4g、ドライイースト(「スーパーカメリア」、日清フーズ株式会社)4.5g、菜種油4gを添加し、スタートキーを押して撹拌を再開した。その後の発酵・焼成はプログラムに従って自動的に実施された。なお、使用した大豆粉について大豆イソフラボン含有率を測定したところ、100g当たり大豆イソフラボン0.4g(0.4w/w%)であった。使用した米粉(「リ・ファリーヌ」)の損傷澱粉率は4.7%、吸水率は75.9%、最頻粒径は116.3μmであった。
焼成した翌日、各パンを、重量計測、及びレーザー体積計(SELNAC-WinVM2100A、株式会社アステックス)による形状計測に供試した。得られた測定値に基づき、パンの膨張性の指標である比容積(mL/g)を、パン1g当たりのパンの容積として算出した。さらに、得られた米粉パンについて、「きめ」、「味・香りと食感」、及び「色合い」の官能評価を、10年以上製パン研究の経験を有する評価者が行った。結果を表1及び図1に示す。
Figure 0007141090000001
表1中、焼成した米粉パンの「膨らみ」について、比容積3.8mL/g以上をA、3.5mL/g以上3.8mL/g未満をB、3.0mL/g以上3.5mL/g未満をC、3.0mL/g未満をDとして表した。また、焼成した米粉パンの「きめ」、「味・香りと食感」、及び「色合い」の官能評価の結果は、A(非常によい)、B(よい)、C(あまりよくない)、D(悪い)で表した。「色合い」については、大豆粉無添加の米粉パン(試料番号1-1)の色合い(断面の色)と同等である場合を最もよいと評価した。図1には、焼成した米粉パンの断面の写真を示す。
表1及び図1に示されるように、大豆粉10gの配合により、パンの膨らみや「きめ」の評価が低下した。大豆粉20g以上を配合すると、膨らみと「きめ」の評価はさらに低下し、味・香りと食感、及び色合いも悪くなった。大豆粉の配合量が100gを超えると生地が硬くなり、撹拌用の羽根が空回りするなどパンの作製が困難になった。以上の試験により、大豆粉は米粉パンの製パン性を低下させることが示された。
(2)大豆イソフラボンを配合した米粉パンの作製
大豆粉の代わりに大豆イソフラボンを配合した米粉パンを、ホームベーカリー(KBD-X100、タイガー魔法瓶株式会社)の「無添加グルテンフリー食パン」メニューを使用して、同機の取り扱い説明書に従って作製した。
具体的には、ホームベーカリーのパンケースに米粉(「リ・ファリーヌ」、群馬製粉株式会社)250gと、様々な量(表2)の粗精製イソフラボン(「ソヤフラボンHG」、不二製油株式会社)を入れ、プラスチック棒で軽くかき混ぜた。これに水220gを追加し、スタートキーを押して撹拌を開始した。米粉と水は予め冷蔵庫で冷やしたものを使用した。21分後、砂糖24g、塩4g、ドライイースト(「スーパーカメリア」、日清フーズ株式会社)4.5g、菜種油4gを添加し、スタートキーを押して撹拌を再開した。その後の発酵・焼成はプログラムに従って自動的に実施された。なお、使用した粗精製イソフラボンは、大豆イソフラボンを55.8w/w%(イソフラボン総量)で含有する。使用した米粉(「リ・ファリーヌ」)の損傷澱粉率は4.7%、吸水率は75.9%、最頻粒径は116.3μmであった。
焼成した翌日、各パンを、重量計測、及びレーザー体積計(SELNAC-WinVM2100A、株式会社アステックス)による形状計測に供試した。得られた測定値に基づき、パンの膨張性の指標である比容積(mL/g)を、パン1g当たりのパンの容積として算出した。さらに、得られた米粉パンについて、「きめ」、「味・香りと食感」、及び「色合い」の官能評価を、10年以上製パン研究の経験を有する評価者が実施した。結果を表2及び図2に示す。
Figure 0007141090000002
表2中、焼成した米粉パンについての「膨らみ」、「きめ」、「味・香りと食感」、及び「色合い」の評価結果を、表1と同様の基準で表した。図2には、焼成した米粉パンの断面の写真を示す。図3に、表1及び表2に基づく、焼成した米粉パン1g当たりのイソフラボン添加量とパンの比容積(mL/g)との関係をグラフで示す。
0.272w/w%までのイソフラボン添加量の米粉パン(試料番号2-2、2-3)は、良好な膨らみを示し、「きめ」、「味・香りと食感」、及び「色合い」の官能評価も「非常によい」という結果が得られた。この結果は、大豆粉を配合した米粉パン(表1)がパンの膨らみやきめなどの製パン性の低下を示した結果とは対照的であった。一方でイソフラボン添加量が0.398w/w%以上になると、膨らみは見られるものの、その比容積は大きく低下した(表2、図3)。
試料番号2-3(イソフラボン添加量0.272w/w%)の焼成後のパンに含まれるイソフラボンを一般財団法人食品分析センターにおいて定量したところ、0.15w/w%のイソフラボン総量(非配糖体であるアグリコンと配糖体の合計量)、0.089w/w%のアグリコン換算量(アグリコンと配糖体のアグリコン部分の合計量)が示された。また試料番号2-6(イソフラボン添加量0.654w/w%)の焼成後のパンに含まれるイソフラボンを一般財団法人食品分析センターにおいて定量したところ、0.34w/w%のイソフラボン総量(非配糖体であるアグリコンと配糖体の合計量)、0.19w/w%のアグリコン換算量が示された。この定量結果によれば、試料番号2-3のパン50~60g(食パン1枚相当)は、少なくとも、およそ75~90mgのイソフラボン総量、44.5~53.4mgのアグリコン換算量を示すことになる。したがって試料番号2-3のパン1枚で、日本の食品安全委員会が設定した大豆イソフラボンの上乗せ摂取量の目安(1日当たり、アグリコン換算量で30mg)を十分に達成できる量のイソフラボンの摂取が可能になることが示された。
[参考例1]米粉の性状評価とパン比容積との関係
所定の損傷澱粉率及び吸水率を有する米粉を用いて、高い製パン性を示す、グルテン及び増粘剤を含まない米粉パンを製造することができる。特開2017-23043号公報に記載されているように、ホームベーカリー(SD-BH105、パナソニック株式会社製)のパンケースに、試料1~9(表3)のいずれかの米粉160g、水140gを入れ、「ドライイーストコース」のプログラムを用いて室温で20分間攪拌によりミキシングし、砂糖を15g、パン用乾燥酵母(日清フーズ社製)を5g、バター(カルピス株式会社製)を2g、塩を1.6g添加した後、「ドライイーストコース」のプログラムを用いてさらに室温で20分間攪拌によりミキシングし、得られた生地175gを角形パンケース(容量800mL)に計りとり、オーブンレンジ(EMO-C16C、三洋電機株式会社)で40℃、30分間程度発酵させた後、発酵生地を180℃で24分間焼成して、グルテン及び増粘剤を含まない米粉パンを製造したところ、得られた米粉パンは以下のような比容積を示した。
Figure 0007141090000003
試料1、2、及び7の米粉を用いたパンは高い比容積を示した。特に、試料7の米粉を用いた場合、小麦粉やグルテンを原料に含むパンとよく似た、きめの整ったパンが製造された。
試料1~9の米粉については、以下のように損傷澱粉率、及び吸水率が測定された。
1)損傷澱粉率の測定
損傷澱粉測定キット(Starch Damage Assay Kit; Megazyme社)を使用して、以下のようにして各米粉の損傷澱粉率を求めた。
まず、米粉100mgをチューブに入れ、このチューブ及びアミラーゼ溶液(50U/ml)を40℃で約5分、プレインキュベーションした。チューブ中の米粉に1mLのアミラーゼ溶液を加え、ボルテックスミキサーで混合し、40℃で10分間反応させた。硫酸溶液(0.2%v/v)を8ml添加し、ボルテックスミキサーで混合することにより、その反応を停止させた。次いで、3,000rpmで5分遠心した。上清の0.1mlを採取し、別のチューブに入れ、そこに0.1mlのアミログルコシダーゼ溶液を加えて40℃で10分間反応させた。さらに4mlのグルコース測定試薬GOPOD(グルコースオキシダーゼ及びペロキシダーゼ)溶液を加え、40℃で20分間反応させた。反応液について510nmで吸光度を測定した。一方、150mg/mlのグルコース標準液及び緩衝液(ブランク)についてGOPOD溶液を加えて反応させ、吸光度の測定を行い、検量線を作成した。この検量線に基づいて各米粉の損傷澱粉率(%)を決定した。
2)吸水率の測定
米粉(乾燥状態)10gを50mLチューブに入れ、50mLの目盛までイオン交換水を添加した後、室温で一晩放置した。このチューブを3000rpmで30分間遠心した後、上清を捨て、吸水後の米粉重量(米粉と米粉に吸収された水の合計重量)を測定した。吸水率は以下の式で算出した。
吸水率(%)=(吸水後の米粉重量-吸水前の米粉重量(10g))/吸水前の米粉重量(10g)×100
各米粉について決定した損傷澱粉率(%)及び吸水率を表4に示す。
Figure 0007141090000004
米粉の損傷澱粉率はパン比容積と強い相関を示した。特に大きなパン比容積を得るのに好適な米粉の損傷澱粉率は、5%以下であることが示された。
また、米粉の吸水率はパン比容積と強い相関を示す。特に大きなパン比容積を得るのに好適な米粉の吸水率は、80%以下であることが示された。
本発明は、イソフラボンの日常的な上乗せ摂取のために有用な食品、例えば、イソフラボンの1日摂取目安量をパン1枚で摂取可能な米粉パンの提供に有用である。

Claims (8)

  1. イソフラボン、5%以下の損傷澱粉率及び80%以下の吸水率を示す米粉、水及び酵母が配合されており、大豆粉を含まず、かつグルテン及び増粘剤を含まないパン生地であって、米粉100g当たり0.1g~0.6gのイソフラボンを含み、イソフラボンが大豆イソフラボンである、パン生地。
  2. 前記イソフラボンが粗精製又は精製イソフラボンの形態で配合されている、請求項1に記載のパン生地。
  3. 砂糖、塩、及び油脂から選択される1つ以上をさらに含む、請求項1又は2に記載のパン生地。
  4. 焼成後の比容積が3mL/g以上である米粉パンを製造するための、請求項1~のいずれか1項に記載のパン生地。
  5. 請求項1~のいずれか1項記載のパン生地から製造される、大豆イソフラボンを含み、大豆粉を含まず、グルテン及び増粘剤を含まない米粉パン。
  6. 焼成後の比容積が3mL/g以上である、請求項に記載の米粉パン。
  7. 請求項1~のいずれか1項記載のパン生地を、発酵後、焼成することを含む、米粉パンの製造方法。
  8. 前記パン生地を調製する工程をさらに含む、請求項に記載の方法。
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