JP7140176B2 - 錫合金めっき液 - Google Patents
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Description
本実施形態の錫合金めっき液で作られる錫合金は、錫(Sn)と、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、ビスマス(Bi)より選ばれた所定金属との合金であり、例えば、SnAg合金、SnCu合金、SnAu合金、SnBi合金等の2元合金、SnCuAg合金等の3元合金が挙げられる。
本実施形態の錫合金めっき液において用いられる少なくとも第一錫塩を含む可溶性塩(A)は、水に溶解して二価の錫イオンを生成する塩である。可溶性塩の例としては、ハロゲン化物、硫酸塩、酸化物、炭素数9未満のアルカンスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩及びアルカノールスルホン酸塩が挙げられる。アルカンスルホン酸塩の具体例としては、メタンスルホン酸塩及びエタンスルホン酸塩が挙げられる。アリールスルホン酸塩の具体例としては、ベンゼンスルホン酸塩、フェノールスルホン酸塩、クレゾールスルホン酸塩及びトルエンスルホン酸塩が挙げられる。アルカノールスルホン酸塩の具体例としては、イセチオン酸塩が挙げられる。
本実施形態の錫合金めっき液において用いられる錫より貴な金属の可溶性塩(B)は、水に溶解する塩である。錫より貴な金属としては、銀、銅、金及びビスマスより選ばれる少なくとも1種又は2種以上の金属を挙げることができる。これらの錫より貴な金属の可溶性塩(B)の例は、可溶性錫塩(A)の例と同じである。これらの金属の中で、銀又は銅を含むことが好ましい。これは、はんだ濡れ性、実装強度、曲げ性及びリフロー性に優れ、ウィスカーが生成しにくいなどの効果があるからである。錫と銀の合金(SnAg合金)は、共晶組成(Sn-3.5質量%Ag)での融点が221℃と低融点であり、また錫と銅の合金(SnCu合金)は、共晶組成(Sn-1.7質量%Cu)での融点227℃と低融点であり、いずれも、はんだ濡れ性、実装強度、曲げ性及びリフロー性に優れ、ウィスカーが生成しにくいなどの利点がある。錫より貴な金属の可溶性塩(B)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本実施形態のめっき液における錫より貴な金属の可溶性塩(B)の含有量は、金属の量に換算して、好ましくは0.01g/L以上10g/L以下の範囲、更に好ましくは0.1g/L以上2g/L以下の範囲である。錫より貴な金属の可溶性塩(B)の含有量が過度に少ない場合、又は過度に多い場合は、析出するはんだ合金の組成を共晶組成とすることができず、はんだ合金としての特性が得られなくなる。
分子内に炭素原子を9個~18個含むアルカンスルホン酸又はその塩からなるレベリング剤(C)は、めっき皮膜を均一かつ緻密に形成するとともにめっき皮膜を平滑にし、更にビアフィリング性を高め、ボイドの発生を抑制するために添加される。分子内に炭素原子を9個~18個含むアルカンスルホン酸は、次の式(1)又は式(2)で示され、分子内に炭素原子を9個~18個含むアルカンスルホン酸塩は、次の式(3)又は式(4)で示される。
R1-SO3H ……(1)
R2-HC(SO3H)-R3 ……(2)
R1-SO3Na ……(3)
R2-HC(SO3Na)-R3 ……(4)
式(1)及び式(3)において、R1はアルキル基であり、分子内にR1の炭素原子の数(分子内の総炭素数)が9個~18個、好ましくは10個~17個である。また、式(2)及び式(4)において、R2及びR3はアルキル基であり、分子内の炭素原子の合計数(分子内の総炭素数)が9個~18個、好ましくは10個~17個である。
分子内にフェニル基を1個以上含むノニオン系界面活性剤(D)(以下、フェニル基含有ノニオン系界面活性剤(D)という)は、錫合金めっき液と被めっき物との親和性を高める作用と、錫合金めっき膜形成時にめっき膜の表面に吸着してめっき膜内の錫合金の結晶成長を抑制して、結晶を微細化することにより、めっき膜の外観向上、被めっき物との密着性向上、膜厚均一化などの作用がある。
遊離酸(E)としては、塩化水素、臭化水素、硫酸、アルカンスルホン酸(炭素原子の数:1~6)、アリールスルホン酸又はアルカノールスルホン酸が挙げられる。アルカンスルホン酸の具体例としては、メタンスルホン酸(炭素原子の数:1)や、エタンスルホン酸(炭素原子の数:2)が挙げられるが、本実施の形態のレベリング剤(C)として用いられる炭素原子の数が7以上18以下であるアルカンスルホン酸は、遊離酸(E)としては用いられない。アリールスルホン酸の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸又はトルエンスルホン酸が挙げられる。アルカノールスルホン酸の具体例としては、イセチオン酸が挙げられる。遊離酸(E)は、錫合金めっき液の導電性を高める作用がある。また、遊離酸(E)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本実施形態の錫合金めっき液における遊離酸の含有量は、好ましくは5g/L以上500g/L以下の範囲、更に好ましくは30g/L以上300g/L以下の範囲である。
本実施形態の錫合金めっき液は、酸化防止剤、錫用の錯体化剤、pH調整剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。
本実施形態の錫合金めっき液は、必要に応じて酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤は錫合金めっき液中のSn2+の酸化防止を目的としたものである。酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸又はその塩、ピロガロール、ヒドロキノン、フロログルシノール、トリヒドロキシベンゼン、カテコール、クレゾールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ヒドロキノンスルホン酸又はその塩などが挙げられる。例えば、酸性浴では、ヒドロキノンスルホン酸又はその塩、中性浴ではアスコルビン酸又はその塩などが好ましい。また、酸化防止剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本実施形態の錫合金めっき液における酸化防止剤の添加量は、一般に0.01g/L以上20g/L以下の範囲、好ましくは0.1g/L以上10g/L以下の範囲、より好ましくは0.1g/L以上5g/L以下の範囲である。
本実施形態の錫合金めっき液は、酸性、弱酸性、中性などの任意のpH領域の錫合金めっき浴に適用できる。Sn2+イオンは強酸性(pH:<1)では安定であるが、酸性から中性付近(pH:1~7)では白色沈澱を生じ易い。このため、本実施形態の錫合金めっき液を中性付近の錫めっき浴に適用する場合には、Sn2+イオンを安定化させる目的で、錫用の錯体化剤を添加するのが好ましい。
本実施形態の錫合金めっき液は、必要に応じてpH調整剤を含むことができる。pH調整剤の例としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられる。また、pH調整剤としては、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸類、ホウ酸類、リン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類なども有効である。
メタンスルホン酸錫水溶液に、遊離酸としてのメタンスルホン酸と、銀の錯体化剤として3,6-ジチア-1,8-オクタンジオールと、フェニル基含有ノニオン系界面活性剤としてポリオキシエチレンフェニルエーテル(フェノールにエチレンオキシド(EO)を5モル付加縮合して得られたもの)と、アルカンスルホン酸又はその塩からなるレベリング剤として1-ノナンスルホン酸ナトリウムとを混合して溶解させた後、更にメタンスルホン酸銀液を加えて混合した。そして、最後にイオン交換水を加えて、下記組成のSnAgめっき液(錫合金めっき液)を建浴した。なお、メタンスルホン酸錫水溶液は、金属錫板を、メタンスルホン酸銀水溶液は、金属銀板を、それぞれメタンスルホン酸水溶液中で電解させることにより調製した。
メタンスルホン酸錫(Sn2+として):50g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として):0.5g/L
3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール(銀用の錯体化剤として):1g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として):100g/L
ポリオキシエチレンフェニルエーテル(フェニル基含有ノニオン系界面活性剤):5g/L
1-ノナンスルホン酸ナトリウム(アルカンスルホン酸塩からなるレベリング剤として):1g/L
イオン交換水:残部
フェニル基含有ノニオン系界面活性剤の種類及びその含有割合と、アルカンスルホン酸又はその塩からなるレベリング剤の種類及びその含有割合を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてSnAgめっき液(錫合金めっき液)を建浴した。なお、実施例2~9、15、17、及び比較例2~7のSnAgめっき液において、フェニル基含有ノニオン系界面活性剤は、エチレンオキシド(EO)を表2に示すモル数(EO付加モル数)だけ付加縮合して得たけれども、プロピレンオキシド(PO)は添加しなかった。また、実施例10~14、16及び18のSnAgめっき液において、フェニル基含有ノニオン系界面活性剤は、エチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)の双方を表2に示すそれぞれのモル数(EO付加モル数及びPO付加モル数)だけ付加縮合して得た。更に、表2中、分類A~Oで示されるフェニル基含有ノニオン系界面活性剤と、分類A~Sで示されるアルカンスルホン酸又はその塩からなるレベリング剤を表1に示す。
R1-SO3H ……(1)
R2-HC(SO3H)-R3 ……(2)
R1-SO3Na ……(3)
R2-HC(SO3Na)-R3 ……(4)
式(1)及び式(3)におけるR1と、式(2)及び式(4)におけるR2及びR3は、アルキル基である。また、表2のアルカンスルホン酸又はその塩の欄における『含有割合』は、SnAgめっき液を100質量%としたときのアルカンスルホン酸又はその塩の含有割合である。
実施例1~18及び比較例1~7のSnAgめっき液(錫合金めっき液)を電解液とし、この電解液を液温30℃に調整して、電解液にシリコンウェーハ(中央に直径75μmの円形の露出部を残した状態で、表面に厚さ50μmのレジスト膜を形成した。)を浸漬し、4ASDの電流密度で電解めっきを行って、シリコンウェーハの円形の露出部に厚さ40μmのバンプを形成した。次に、このバンプが形成されたシリコンウェーハ表面から有機溶媒でレジストを剥離した。更に、レーザ顕微鏡(オリンパス社製:OLS3000)を用いて、バンプ頭頂部の中央付近10μm四方の算術平均表面粗さRaを算出した。そして、Raが0.5μm未満であったものを『良』とし、Raが0.5μm以上0.7μm未満であったものを『可』とし、Raが0.7μm以上であったものを『不可』とした。
表1及び表2から明らかなように、比較例1では、フェニル基を有しないノニオン系界面活性剤を含むSnAgめっき液を用いてバンプを形成した。このため、バンプ頭頂部の表面粗さRaは0.94μmと大きくなり不可であった。
実施例3及び比較例2のめっき液を用いて形成されたバンプの外観を走査型電子顕微鏡にて撮影した。その結果を図1及び図2に示す。
比較例2のめっき液を用いて形成されたバンプの頭頂部の表面粗さは図2から明らかなように大きかったのに対し、実施例3のめっき液を用いて形成されたバンプの頭頂部の表面粗さは図1から明らかなように小さかった。
Claims (4)
- (A)少なくとも第一錫塩を含む可溶性塩と、
(B)錫よりも貴な金属の可溶性塩と、
(C)分子内に炭素原子を9個~18個含むアルカンスルホン酸又はその塩からなるレベリング剤と、
(D)分子内にフェニル基を1個以上含むノニオン系界面活性剤と、
(E)遊離酸と
を含み、
前記可溶性錫塩(A)の含有量は、錫の量に換算して、5g/L以上200g/L以下の範囲にあり、
前記錫より貴な金属の可溶性塩(B)の含有量は、金属の量に換算して、0.01g/L以上10g/L以下の範囲にあり、
前記アルカンスルホン酸又はその塩からなるレベリング剤(C)の含有量は、0.01g/L~1g/Lの範囲にあり、
前記ノニオン系界面活性剤(D)の含有量は、0.01g/L以上50g/L以下の範囲にあり、
前記遊離酸(E)の含有量は、5g/L以上500g/L以下の範囲にある錫合金めっき液。 - 前記アルカンスルホン酸又はその塩の分子内の炭素原子の数が10個~17個である請求項1記載の錫合金めっき液。
- 前記アルカンスルホン酸が第二級アルカンスルホン酸又はその塩である請求項1記載の錫合金めっき液。
- 前記錫よりも貴な金属が、銀又は銅である請求項1ないし3いずれか1項に記載の錫合金めっき液。
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