JP7136361B2 - マルチフィラメント及び繊維製品 - Google Patents

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Description

本発明は、着用快適性に優れる衣料用テキスタイルに適した複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントに関するものである。
ポリエステルやポリアミドなどからなる合成繊維は優れた力学特性や寸法安定性を有しているため、衣料用途から非衣料用途まで幅広く利用されている。しかし、人々の生活が多様化し、より良い生活を求めるようになった昨今では、より高度な触感や機能を有する繊維が求められている。
中でも人肌に触れる衣料用テキスタイルにおいては優れた着用快適性が求められる場合が多く、特に天然繊維が有するような、人の着心地に直結する風合いを有した繊維に対する要求が強い。これは麻、羊毛、綿(コットン)、絹などの天然繊維の持つ風合いや機能は非常にバランスに優れたものであり、これらが織り成す複雑な外観や触感に人間が魅力や高級感を感じるからである。
このような天然繊維が実現する心地よい風合いの実現を狙った技術の例として、合成繊維の断面を工夫することにより、布帛内に空気を内包させた空隙構造を形成させ、適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いなどを発現させた技術が種々提案されている。
特許文献1では、中空用紡糸口金を用いて得られた中空繊維に仮撚加工を施して、捲縮を付与すると同時に中空断面を変形させて扁平化させることで、コットンに類似した扁平中空断面形状とねじれを付与する中空繊維が提案されている。該扁平中空繊維では、コットンのようなふくらみや反発感のある風合いが得られるとしている。
また、特許文献2では、易アルカリ溶解性ポリマーを芯成分、難アルカリ溶解性ポリマーを鞘成分とし、かつ芯成分の一部が繊維表面に露出してなる芯鞘複合繊維に仮撚加工を施し、その後アルカリ処理により芯成分を溶出させることで、繊維軸方向に連続した中空部と開口部を有したC型断面形状の中空繊維が提案されている。該芯鞘複合繊維では、織編物とした際にはC型中空の効果で、軽量感や適度な反発感を有しつつ、柔らかな風合いなどを付与できるとしている。
また、特許文献3では、溶剤に対する溶解速度が異なる2種類以上のポリマーが断面方向に積層されて最外層、中間層、最内層を形成する繊維断面を有しており、最外層と最内層を形成するポリマーが易溶解性ポリマーであって、中間層の断面形状が異なる単糸が2種類以上混在した嵩高軽量マルチフィラメントが提案されている。該嵩高軽量マルチフィラメントでは、繊維内部のみならず繊維表面も易溶解性ポリマーで構成することで、易溶解性ポリマーを溶出した後には繊維内外に空隙を形成することができ、さらに溶出後には異なる繊維断面が混在していることから繊維間空隙の潰れが抑制され、軽量感やふくらみに加えて、柔らかな風合いを兼ね備えた布帛が可能であるとしている。
日本国特開昭54-151650号公報 日本国特開平01-052839号公報 日本国特開2019-167646号公報
特許文献1のように、中空繊維に仮撚加工を施すことで繊維内外に空隙構造を付与できれば、天然繊維であるコットンのような風合いをある程度再現できる可能性がある。しかしながら、特許文献1においては、仮撚加工で繊維が密に集束し、中空部を潰しながら変形させることを技術思想としており、衣服として着用した場合に快適と感じるふくらみや反発感のある風合いが不足する場合があった。
また、特許文献2のように、易アルカリ溶解性ポリマーを芯成分、難アルカリ溶解性ポリマーを鞘成分とした芯鞘複合繊維に仮撚加工を施す方法では、製織及び製編後にアルカリ処理を施すことで芯成分が溶出され中空部を形成できることから、仮撚加工で中空部のつぶれが起こらず、高い中空率と捲縮形態による繊維間空隙を形成できる。しかし、芯成分の溶出ムラを防ぐため、大きな開口部を有したC型断面形状としており、隣り合う繊維と繊維が開口部の噛み込みを起こして風合いが硬くなるのみならず、使用し続けることで軽量感や反発感が低下する場合があった。
さらに、特許文献1および特許文献2は共にマルチフィラメントに撚りを掛けた状態で熱セットし、その後解撚することで捲縮を付与する仮撚加工を用いている。このため、高次加工時の熱処理によって捲縮がヘタリやすく、衣服として着用した場合に快適と感じるふくらみが不足する場合がある。さらに、マルチフィラメント中の各繊維が有する捲縮が均一であるためテキスタイルとした際に得られる風合いも単調なものとなり、天然繊維のような複雑な風合いを実現するには、高度な織編をする必要があったり、天然繊維を含むその他素材と混繊等をする必要があった。
一方、特許文献3のように、繊維表面を溶出することで形成される繊維間空隙を利用する方法は、柔軟性という観点では有効であるものの、異なる繊維断面が混在していることで得られる繊維間空隙の潰れ抑制効果には限界があり、ふくらみを感じるほど粗大な繊維間空隙が発現しているとは言い難いものであった。
そこで、本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解消し、繊維内部および繊維間の空隙構造を制御することで、適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いを有した着用快適性に優れるテキスタイルを得るのに適した複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントを提供することにある。
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。
(1)繊維横断面において、溶剤に対する溶解速度が異なる2種類以上のポリマーが繊維中心から繊維表面方向に積層されており、
前記繊維中心を含む最内層が易溶解性ポリマーを含有し、
前記最内層以外の少なくとも1層にて2種類の融点の異なる難溶解性ポリマーが偏在する、複合繊維。
(2)前記繊維横断面において、繊維の内接円径RAと外接円径RBの関係が1.2≦RB/RA≦2.4である、(1)に記載の複合繊維。
(3)前記繊維横断面において、前記易溶解性ポリマーが前記繊維中心から前記繊維表面にかけて連通しており、連通幅が繊維径の10%以下である、(1)または(2)に記載の複合繊維。
(4)前記繊維横断面において、最外層が前記易溶解性ポリマーを含有する、(1)~(3)のいずれかに記載の複合繊維。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の複合繊維から前記易溶解性ポリマーが除去された、中空繊維。
(6)扁平中空繊維を含有するマルチフィラメントであり、
前記扁平中空繊維の長軸の回転角度の変動係数CVが15~50%である、マルチフィラメント。
(7)前記扁平中空繊維は、繊維横断面において扁平度が1.2以上である、(6)に記載のマルチフィラメント。
(8)前記扁平中空繊維は、繊維横断面において少なくとも2種類の融点の異なるポリマーで構成されている、(6)または(7)に記載のマルチフィラメント。
(9)前記扁平中空繊維は、繊維中心から繊維表面方向にかけて開口部を有しており、
前記開口部の幅が繊維径の10%以下である、(6)~(8)のいずれかに記載のマルチフィラメント。
(10)(1)~(4)のいずれかに記載の複合繊維、(5)に記載の中空繊維、又は(6)~(9)のいずれかに記載のマルチフィラメントが一部に含まれる繊維製品。
本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントは、上記した特徴を有することにより、繊維内部および繊維間の空隙構造が緻密に制御され、適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いを実現した着用快適性に優れるテキスタイルを得ることができる。
図1の(a)、図1の(b)、図1の(c)、図1の(d)は、本発明の複合繊維の横断面構造の概略図である。 図2の(a)、図2の(b)、図2の(c)は、本発明の複合繊維の横断面構造の概略図である。 図3の(a)、図3の(b)、図3の(c)、図3の(d)は、本発明の複合繊維の横断面構造の概略図である。 図4の(a)、図4の(b)は、従来の複合繊維の横断面構造の概略図である。 図5は本発明のマルチフィラメントの横断面構造の概略図である。図5の(a)は扁平度を理解するための図である。図5の(b)はマルチフィラメント中の繊維における長軸の回転角度の変動係数CVを理解するための図であり、外枠の破線は撮影画像の上下左右の辺を意味する。 図6の(a)、図6の(b)、図6の(c)は、本発明のマルチフィラメントを構成する繊維の横断面構造の概略図である。 図7の(a)は、実施例6のマルチフィラメントを構成する繊維の横断面構造の概略図である。図7の(b)は、実施例2のマルチフィラメントを構成する繊維の横断面構造の概略図である。 図8は、比較例3のマルチフィラメントを構成する繊維の横断面構造の概略図である。 図9は、本発明のマルチフィラメントを構成する繊維の横断面構造の概略図である。 図10は、本発明のマルチフィラメントが製造可能な複合繊維の一例の横断面構造の概略図である。 図11は、本発明のマルチフィラメントを構成する繊維が有する捲縮形態の一例である。 図12は、本発明の複合繊維の製造方法を説明するための横断面図である。
以下、本発明について望ましい実施形態と共に詳述する。
ふくらみのある柔らかな風合いを有する天然素材として幅広く展開しているコットンの空隙構造を分析すると、扁平状の繊維内部に中空部を有していることに加えて、大小サイズの繊維間空隙が存在していることが分かる。これはコットンが繊維一本ごとにねじれを有していることに由来しており、このねじれを有した繊維が複数本束ねられることで、テキスタイルとした際に複雑な空隙や凹凸を形成し、特異的な触感や風合いが醸し出されると考えられる。
このような天然ならではの複雑な空隙の形成を実現するため、本発明者らが鋭意検討した結果、織編み等の高次加工を施した後に繊維へ捲縮形態を発現させることで、布帛内で複数本集まった繊維が捻じれることにより大小様々なサイズの繊維間空隙を発現することを発見した。さらには、繊維内部の易溶解性ポリマーを溶出して繊維内部に中空部を形成させることで、従来の合成繊維や、これを活用した加工糸では得ることが難しかった複雑な空隙構造を得ることができ、これまでになかった適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いを実現したことが本発明の根幹をなしている。
具体的には、繊維横断面において、溶剤に対する溶解速度が異なる2種類以上のポリマーが繊維中心から繊維表面方向に積層されており、繊維中心を含む最内層が易溶解性ポリマーを含有し、最内層以外の少なくとも1層にて2種類の融点の異なる難溶解性ポリマーが偏在することが本発明の要件となる。
本発明では、溶解処理に用いる溶剤に対して相対的に溶解速度が速いポリマーを易溶解性ポリマー、溶解速度が遅いポリマーを難溶解性ポリマーとする。また高次加工における溶解処理の簡略化や時間短縮を考慮すると、難溶解性ポリマーを基準とした際に、溶解速度比(易溶解性ポリマー/難溶解性ポリマー)が100以上であることが好ましく、1000以上であることがさらに好ましい。溶解速度比を1000以上とすれば、溶解処理を短時間で終了することができるため、工程速度を高めることに加えて、難溶解性ポリマーを不要に劣化させることなく、より品位の高い布帛を得ることができる。
本発明の複合繊維において、織編み等の組織に左右されることなく、繊維内部に中空部を安定的に形成するためには、繊維横断面において、溶剤に対する溶解速度が異なる2種類以上のポリマーが繊維中心から繊維表面方向に積層されており、繊維中心を含む最内層が易溶解性ポリマーを含有することが必要となる。また、当該最内層は易溶解性ポリマーからなることが好ましい。
テキスタイルとした際に繊維内部に中空部が安定的に形成されていることで、テキスタイルのふくらみや軽量感が向上するのみならず、繊維内部に空気層が存在することにより、各繊維が適度な反発感を有しつつも柔軟に変形することが可能となり、本発明の目的である適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いを得ることができる。
さらに、繊維内部の中空率が大きくなると、より軽量感や柔軟性を顕著に感じることができることから、本発明の複合繊維において、繊維中心を含む最内層が占める面積比率としては10%以上が好ましく、より好ましくは20%以上である。また、最内層の面積比率を高くするほど軽量感という観点では好ましい一方、最内層の溶出過多による強度低下や中空部の潰れが生じやすくなることで反発感が損なわれる場合があることから、当該面積比率の実質的な上限は50%となる。
本発明の複合繊維においては、織編み等の高次加工を施した後に繊維が捲縮形態を発現することが重要となる。布帛内の繊維がそれぞれ捲縮発現して捻じれることで、隣り合う繊維と捲縮形態が絡み合って大小様々なサイズの繊維間空隙を発現することができ、テキスタイルとしたときに適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いを発現するのみならず、微細な繊維間空隙の毛細管現象による吸水速乾性やコイル状の捲縮形態によるストレッチ性といった機能も発現することができるのである。
織編み等の高次加工を施した後に繊維へ捲縮形態を発現させるには、熱処理により捲縮が発現するような潜在捲縮性を有する複合断面とすればよく、繊維横断面において収縮差の異なるポリマーをそれぞれの重心が異なるように配置することで、熱処理後には繊維が高収縮ポリマー側に大きく湾曲し、これが連続することで3次元的なスパイラル構造となる。
すなわち、本発明の目的を達成するには、繊維横断面において収縮差の異なるポリマーが十分な重心間距離を保つよう配置することが重要であり、本発明の複合繊維においては、最内層以外の少なくとも1層にて2種類の融点の異なる難溶解性ポリマーが偏在することが必要となる。
ここで、本発明で言う融点の異なる難溶解性ポリマーが偏在するとは、繊維中心を通って繊維断面を均等に2分割する直線の内、直線を境にして左右または上下の繊維断面における高融点側の難溶解性ポリマーと低融点側の難溶解性ポリマーの面積比率が、どちらかの繊維断面にて100:0~70:30となり、もう片側の繊維断面では30:70~0:100の範囲となるような直線(例えば図1の(a)の直線I)が存在することを意味する。
本発明の複合繊維における複合構造としては、融点の異なる難溶解性ポリマーが偏在していれば特に限定されるものではない。その複合構造としては図1の(a)、図1の(c)のようなサイドバイサイド型、図1の(b)のような海島型、図1の(d)のような偏心芯鞘型の他にもブレンド型などが挙げられる。これらの中でも、重心間距離を広げて捲縮発現力を高めるという観点からすると、融点の異なる難溶解性ポリマーが完全に分離したサイドバイサイド型に接合していることが好ましい。
サイドバイサイド型に接合すれば、融点の異なる難溶解性ポリマーの界面が小さいことから、複合断面におけるポリマー間の重心間距離を最大限広げることができ、捲縮発現力を最大限発揮できる。また、捲縮形態が微細なスパイラル構造になることで優れたストレッチ性を付与することも可能になり、適度な伸縮のある布帛でストレスフリーとなる着用快適性が得られることから好ましい。
本発明の複合繊維の繊維横断面において、繊維の内接円径RAと外接円径RBの関係が1.2≦RB/RA≦2.4であることが好ましい。
ここで、本発明における内接円径RAおよび外接円径RBとは、繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10フィラメント以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影して求める。
撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維を、画像解析ソフトを用いて解析することで、繊維表面と少なくとも2点(例えば図2の(a)のa1、a2)で内接し、繊維の内部にのみ存在して内接円の円周と繊維表面とが交差しない範囲においてとりうる最大の直径を有する円(例えば図2の(a)のA)の直径について算出し、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下で四捨五入した値を内接円径RAとする。
また、繊維表面と少なくとも2点(例えば図2の(a)のb1、b2)で外接し、繊維の外部にのみ存在して外接円の円周と繊維表面とが交差しない範囲においてとりうる最小の直径を有する円(例えば図2の(a)のB)の直径について算出し、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下で四捨五入した値を外接円径RBとする。
また、RB/RAとは上記で各繊維において求めたRBをRAで割った値について算出し、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位で四捨五入した値をRB/RAとする。
本発明の複合繊維においては、その断面形状は限定されるものではないが、織編み等の高次加工を施した後に繊維がそれぞれ捲縮発現して捻じれることで、隣り合う繊維と捲縮形態が絡み合って大小様々なサイズの繊維間空隙を発現することが重要である。この観点からすると、繊維横断面が異形断面であれば繊維が捻じれた際に生まれる繊維間空隙をより複雑かつ増加させることができるため、繊維の内接円径RAと外接円径RBの比であるRB/RA(異形度)が1.2以上であることが好ましい。
さらに、RB/RAを1.5以上とすれば、隣り合う繊維間で捲縮位相が揃うことなく、繊維間空隙を安定的に形成することができ、布帛をスジ等の斑のない均一な外観とできるため、品質管理の観点からより好ましい範囲として挙げられる。また、RB/RAが大きいほど、繊維間空隙を安定的に形成するという観点からは好ましい一方、繊維表面で反射される光に、場合によってはギラツキが生まれるのみならず、エッジのある断面形状により曲げ剛性が必要以上に高くなることで柔軟性が損なわれる場合もあることから、RB/RAの実質的な上限値は2.4となる。
本発明の複合繊維の断面形状を異形断面とする場合には、扁平状、多葉状、多角形状、歯車状、花弁状、星状などのあらゆる異形断面を採用することができるが、適度な反発感と柔軟性をより高めるという観点からすると、繊維形状が図2の(a)のような扁平状または図2の(b)のような多葉状であることが好ましい。図2の(a)のような扁平形状とすれば、扁平断面の長軸に垂直な面に沿って曲げた場合には高い曲げ剛性による反発感が、短軸に垂直な面に沿って曲げた場合には低い曲げ剛性による柔軟性が得られるため、適度な反発感と柔らかさを兼ね備えた風合いを得ることができるのである。
また、マルチフィラメントとした場合には、捲縮形態を発現して繊維がねじれた際に、立体障害による繊維間空隙が増大し、適度な反発感やふくらみをより高めることができるのみならず、扁平繊維の断面の長軸方向が部分的に揃うことで、テキスタイルとした際に隣り合う繊維間で断面の長軸方向が揃っている箇所と揃っていない箇所で空隙や凹凸に差が生まれ、繊維間に複雑な空隙や凹凸を形成できる。これにより、天然ならではの特異的な触感を発現できるという観点からも、やはり扁平状であることが好ましい。
一方、図2の(b)のような多葉状とすれば、繊維表面に凹凸が付与されることによって、光の乱反射によるギラツキの抑制や微細な繊維間空隙による吸水速乾性を高めることができるという観点からは好ましい。ただし、凹凸部の数が多くなりすぎると、凹凸部の間隔が細かくなっていき、その効果は徐々に小さくなってしまうため、本発明における多葉形状が有する凸部の実質的な上限は20個である。
さらに、図2の(c)のような扁平状かつ多葉状とすれば、上記した扁平状と多葉状の特長を兼ね備えることができる。そのため、本発明の目的であるテキスタイルとして適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いを有しつつ、さらには吸水速乾性といった機能も持ち合わせるという観点からすると、扁平状かつ多葉状であることが特に好ましい。
本発明の複合繊維の繊維横断面において、易溶解性ポリマーが繊維中心から繊維表面にかけて連通している連通部を有することが好ましい。
本発明の複合繊維においては、繊維内部に中空部を安定的に形成するため、最内層の易溶解性ポリマーを溶出する必要がある。そして、易溶解性ポリマーの溶剤による溶解除去は繊維表面から除去されてゆくことから、繊維表面から最内層までの連通部を設けることができれば、易溶解性ポリマーの溶解に要する時間を格段に短縮することができるのみならず、易溶解性ポリマーを溶出後に形成される開口部での毛細管現象による吸水性や保水性を付与することも可能となる。この観点からすると、易溶解性ポリマーが繊維中心から繊維表面にかけて連通していることが好ましい。
易溶解性ポリマーによる連通幅としては、繊維径の10%以下とすることが好ましい。
ここで、本発明における繊維径とは、複合繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10フィラメント以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影して求める。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維の直径をμm単位で小数点1桁目まで測定し、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を繊維径(μm)とする。ここで繊維軸に垂直方向の繊維横断面が真円で無い場合はその面積を測定し、真円換算で求められる直径の値を採用した。
また、本発明における連通幅を求めるには、まず、本発明の複合繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。そして、得られた画像の複合繊維において、易溶解性ポリマーが繊維中心から繊維表面にかけて連通している場合には、画像解析ソフトを用いて解析することで、繊維中心Gを通って連通部と平行となる直線S(例えば図3の(c)のS)に対して垂直方向の連通部の幅W(例えば図3の(c)のW)の内、最も短い幅をμm単位で算出する。これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位で四捨五入した値を連通幅とする。
また、各フィラメントにて求めた分断幅を繊維径で割り100を掛けた値を算出し、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下で四捨五入した値を繊維径に対する連通幅の割合(%)とする。
易溶解性ポリマーによる連通幅を繊維径の10%以下とすれば、易溶解性ポリマーを除去した後に形成される開口部が過剰に広すぎることによる繊維同士の噛み込みや開口部のずれによる中空部のつぶれを防ぐことができ、適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いが損なわれることを防ぐことができる。
さらに、連通幅を繊維径の5%以下とすれば、易溶解性ポリマーを溶出後に形成される開口部起因での繊維摩耗によるフィブリル化を抑制できるのみならず、機能剤を塗布するといった後加工を施した場合に、中空部に入った機能剤が洗濯等で脱落するのを防ぎ、機能剤の性能耐久性を大幅に向上させることができるため、より好ましい範囲として挙げられる。ただし、連通幅を狭くしすぎると、易溶解性ポリマーの溶解が困難となることから、連通幅の実質的な下限は繊維径の1%である。
本発明の複合繊維の繊維横断面において、最外層が易溶解性ポリマーを含有することが好ましく、最外層が易溶解性ポリマーからなることがより好ましい。ただし、本発明でいう最外層とは繊維表面の80%以上を含む層のことをいう。
最外層を易溶解性ポリマーとすれば、易溶解性ポリマーを除去した際におのずと繊維間空隙が広がり、織編物の結束点で固定された繊維が可動できることによる柔軟性や高い空隙率での見かけ密度の低下による軽量感の向上効果を得ることができる。
この観点からすると、複合繊維の繊維横断面における最外層の占める面積比率は高い方が好ましく、面積比率を10%以上とすれば、布帛組織に左右されることなく柔軟性や軽量感の向上効果を十分に得られるため、好ましい範囲として挙げられる。ただし、面積比率が高すぎると、曲げ剛性の低下による反発感の低下も引き起こす場合があることから、実質的な上限は30%となる。
本発明の複合繊維によって、一旦、織編み等の高次加工を施した後に熱処理により捲縮形態を発現させ、その後最内層の易溶解性ポリマーを除去して難溶解性ポリマーのみからなる中空繊維、および該中空繊維からなるマルチフィラメントを得ることができる。該マルチフィラメントからは、その特異な繊維断面形状や繊維間空隙から、適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いを有しつつ、さらには吸水速乾性やストレッチ性といった機能も持ち合わせた着用快適性に優れるテキスタイルを得ることが可能となる。
さらにマルチフィラメントとして、天然ならではの複雑な空隙や凹凸の形成による特異的な触感や風合いを最大限発揮させるため、本発明者らが鋭意検討した結果、扁平繊維のねじれを制御し、断面の長軸方向を適度に揃えることで、従来の合成繊維や、これを活用した加工糸では得ることが難しかった複雑な空隙や凹凸が形成できることを発見した。
すなわち、ねじれを有していない扁平繊維からなるマルチフィラメントでは、繊維の断面の長軸方向が全て揃ってしまうことで得られる空隙は小さく、凹凸も平坦な物となる。一方、仮撚加工でねじれを付与した扁平繊維からなるマルチフィラメントの場合には、繊維一本ごとのねじれが均一かつ解撚の際に断面の長軸方向がそれぞれ異なる方向を向くことから、空隙や凹凸は得られるものの単調なものとなってしまう場合がある。
これに対して、マルチフィラメント中の扁平繊維の断面の長軸方向が部分的に揃うようにねじれを制御すれば、テキスタイルとした際に隣り合う繊維間で断面の長軸方向が揃っている箇所と揃っていない箇所で空隙や凹凸に差が生まれ、繊維間に複雑な空隙や凹凸を形成できる。これにより、天然ならではの特異的な触感を発現できることに加えて、繊維内部に中空部を設けることで、繊維間の複雑な空隙や凹凸と相まって適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いも発現できるのである。
この着想に基づいた繊維の設計により本発明は構成されており、具体的には、本発明のマルチフィラメントは、扁平中空繊維を含有する。本発明のマルチフィラメントは、好ましくは扁平中空繊維からなり、該マルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数CVが15~50%であることが本発明の要件となる。
本発明においては、テキスタイルを構成する繊維が扁平中空繊維であることが重要となる。
繊維断面を図5の(a)のような扁平断面とすれば、扁平断面の長軸に垂直な面に沿って曲げた場合には高い曲げ剛性による反発感が、短軸に垂直な面に沿って曲げた場合には低い曲げ剛性による柔軟性が得られるため、適度な反発感と柔らかさを兼ね備えた風合いを得ることができるのである。
上記効果を発現するには扁平度が1.2以上であることが好ましく、さらに好ましくは、扁平度を1.5以上とすることである。係る範囲とすることにより、扁平中空繊維がねじれた際の立体障害により繊維間空隙が形成され、テキスタイルとした際のふくらみも得られる。
また、扁平度が高いほど、繊維間空隙を安定的に形成するという観点からは好ましい一方、繊維表面で反射される光に、場合によっては外観ムラ(ギラツキ)が生まれるのみならず、エッジのある断面形状により曲げ剛性が必要以上に高くなることで柔軟性が損なわれる場合もあることから、本発明における扁平度の上限は2.4となる。
ここで、本発明で言う扁平度とは、マルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影して求める。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維を、画像解析ソフトを用いて解析することで、図5の(a)に示すように繊維外周の任意の点のうち最も距離が離れた2点(c1、c2)を結んだ直線(c1-c2)を長軸とし、長軸の中点を通って長軸と直行する直線(d1-d2)を短軸として、長軸の長さを短軸の長さで割った値について算出する。これを繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位で四捨五入した値を扁平度とする。
また、繊維内部に中空部を有することで、テキスタイルのふくらみや軽量感が向上するのみならず、各繊維が適度な反発感を有しつつも柔軟に変形することが可能となり、上述した扁平断面による効果をより際立たせることができる。
さらに繊維内部の中空率が大きくなると、よりふくらみや軽量感を顕著に感じることができることから、本発明のマルチフィラメント中の扁平中空繊維においては、繊維中心を含む中空部が占める面積比率としては10%以上が好ましい。また、繊維束における空隙率を向上させ、軽量感を際立たせることに加えて、布帛とした場合の柔軟性を際立たせるには、中空部の面積比率が20%以上であることがより好ましい範囲としてあげることができる。係る範囲の場合には、前述した扁平断面の場合に、単繊維の変形に方向性が生まれるとともに、本発明の特徴である捩れた形態を呈することにより、繊維束は複雑な変形となり、従来の糸加工では味わえないなんとも心地の良い触感になるのである。
該中空部の面積比率を高くするほど繊維束やテキスタイルの軽量感を顕著化するという観点では好適である。しかし、繊維を構成するポリマーの厚みが薄くなると強度低下や中空部の潰れが生じやすくなり、本発明の目的とする心地よい反発感がうまく発揮出来ない部分が出てくる可能性があることから、本発明における中空部の面積比率の実質的な上限は50%となる。
ここで、本発明で言う中空率とは、マルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影して求める。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維が、例えば図5の(a)のHのような中空部を有していた場合、画像解析ソフトを用いて解析することで、繊維の中空部を含む外形から求められる面積と中空部の面積をそれぞれ求め、中空部の面積を繊維の中空部を含む外形から求められる面積で割り、100を掛けた値を算出する。これを繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を中空率(%)とする。
また繊維断面形状としては図5の(a)のような扁平状であることに加えて、繊維表面に凸部を有した断面形状(多葉状、多角形状、歯車状、花弁状、星状など)を組み合わすことが好ましい。光の乱反射による外観ムラ(ギラツキ)の抑制や微細な繊維間空隙による吸水性を高めることができるためである。ただし、凸部の数が多くなりすぎるとその効果は徐々に小さくなることから、凸部の実質的な上限は20である。
本発明において、マルチフィラメント中の扁平繊維の断面の長軸方向が部分的に揃うようにねじれを制御すれば、テキスタイルとした際に隣り合う繊維間で断面の長軸方向が揃っている箇所と揃っていない箇所で空隙や凹凸に差が生まれる。この本発明の特徴となる繊維間に生まれる複雑な空隙やテキスタイル表面への凹凸形成ができる要件として、マルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数CVが15~50%であることが重要となる。
本発明で言う長軸の回転角度の変動係数とは、マルチフィラメントからなる布帛において、布帛の長さ方向に垂直かつマルチフィラメントの繊維軸方向に垂直な布帛断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で20本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影して求める。得られた画像の繊維において、繊維が扁平断面を有していた場合には、画像解析ソフトを用いて解析することで、図5の(b)に示すように繊維外周の最も距離が離れた2点(c1、c2)を結んだ直線(c1-c2)を長軸とし、扁平中空繊維の長軸の中点を通りかつ撮影した画像の下辺と平行な直線を、長軸の中点を中心に反時計回りに回転させ、長軸と直線の傾きが一致した時の回転角度(θ)を評価する。
この評価を同じ画像のマルチフィラメントの中から無作為に抽出した繊維20本(図5の(b)中の(1)~(20))について行った結果の標準偏差と平均値を求め、標準偏差を平均値で割り100を掛けた値を算出し、小数点第1位で四捨五入した値を、長軸の回転角度の変動係数CV(%)とする。
本発明においては、マルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数CVは15%以上である必要があり、係る範囲とすることにより、断面の長軸方向が不揃いとなることで発現したテキスタイル表面に凹凸により、生地表面を触った際には摩擦変動が大きいことに起因したさらっとした触感を発現する。さらに、該繊維間では複雑な空隙が生まれ、繊維内部の中空部と相まって適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いも発現することになる。
本発明で言う長軸の回転角度の変動係数CVは25~40%であることがより好ましく、係る範囲においては、凹凸のピッチが細かくなり、さらっとした触感が際立つのみならず、繊維間空隙が増加することで布帛とした際には見かけ密度が低下し、ふくらみ向上効果も加わることとなる。一方、変動係数CVが大きくなりすぎると凹凸が細かすぎて摩擦変動も小さくなり、単調な触感に近づくことから、変動係数CVは50%が実質的な上限となる。
マルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数を制御するには、仮撚加工等でねじれの異なる扁平中空繊維を別々に作製し、その後交絡等で混繊して束ねるといった手法が考えられる。また、熱処理により捲縮発現するような潜在捲縮性を有した扁平中空繊維を用いて、織編み等の高次加工を施した後に扁平中空繊維へ捲縮形態を発現させることができれば、捲縮発現の際に繊維間の捲縮位相差が局所的に生まれることで、容易にマルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数CVを目的の範囲とすることができる。
この観点からすると、熱処理により捲縮発現するような潜在捲縮性を有した繊維とするために、本発明のマルチフィラメント中の扁平中空繊維において、繊維横断面が少なくとも2種類の融点の異なるポリマーで構成されることが好ましい。融点の異なるポリマーで構成すれば、融点差からくる収縮差によって熱処理後には繊維が高収縮ポリマー側に大きく湾曲し、これが連続することで3次元的なスパイラル構造となる。
この捲縮発現力を高めるには融点の異なるポリマーが十分な重心間距離を保つような複合断面とすることが好適であり、この観点からすると、融点の異なるポリマーを図6の(a)のようなサイドバイサイド型に接合することがより好ましい。すなわち、融点の異なるポリマーの界面が小さいことにより、複合断面におけるポリマー間の重心間距離を最大限広げることができ、捲縮発現力を最大限発揮できる。
さらには、捲縮形態が微細なスパイラル構造になることで優れたストレッチ性を付与することも可能になり、適度な伸縮のある布帛でストレスフリーとなる着用快適性が得られることとなる。
さらに、マルチフィラメント中の扁平中空繊維を、単繊維毎に融点の異なるポリマーの接合面の方向(角度)が無作為となる断面形状(図9の4種は当該断面形状の一例)とすることが特に好ましく、重心間距離の違いにより熱処理にて発現する捲縮形態が単繊維毎に異なることで、繊維間での捲縮位相差も高めることができるのである。この効果により、マルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数(CV)をより最適な範囲へと近づけることができる。
本発明のマルチフィラメントにおいて、マルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数を目的の範囲としつつ、織編み等の組織に左右されることなく、扁平中空繊維の中空部を安定的に形成するためには、下記の複合繊維を用いることが好ましい。すなわち、繊維横断面において、溶剤に対する溶解速度が異なる2種類以上のポリマーが繊維中心から繊維表面方向に積層されており、繊維中心を含む最内層が易溶解性ポリマーからなり、最内層以外の少なくとも1層が融点の異なる2種類の難溶解性ポリマーからなる複合繊維を用いることが好ましい。
該複合繊維へ織編み等の高次加工を施した後に熱処理により捲縮形態を発現させ、その後最内層の易溶解性ポリマーを除去すれば、高次加工時に中空部が潰れることなく安定的に形成された扁平中空繊維からなるマルチフィラメントが得られ、かつ捲縮発現によりマルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数を目的の範囲とできるのである。
本発明のマルチフィラメント中の扁平中空繊維において、熱処理により捲縮形態を発現する場合には、捲縮山数が5山/cm以上の捲縮形態を有することが好ましい。
ここで、本発明で言う捲縮山数とは、以下の方法で求めることができる。すなわち、マルチフィラメントからなる布帛において、塑性変形させないよう布帛からマルチフィラメントを抜き出し、マルチフィラメントの片方の末端を固定する。もう片方の末端へ1mg/dtexの荷重をかけて30秒間以上経過後に、マルチフィラメントの繊維軸方向へ2点間の距離が1cmとなる任意の箇所にマーキングを施す。
その後、塑性変形させないようマルチフィラメントから繊維を分繊し、予めつけておいたマーキングの間が元の1cmとなるように調整してスライドガラス上に固定する。このサンプルをデジタルマイクロスコープにて1cmのマーキングが観察できる倍率で画像を撮影する。撮影した画像においてマルチフィラメントが図11のような繊維がねじれた捲縮形態を有していた場合には、マーキング間に存在する捲縮山の数を求める。この動作を同じポリマーから構成される繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位で四捨五入した値を捲縮山数(山/cm)とする。
捲縮山数が5山/cm以上の捲縮形態を有していれば、捲縮発現の際に繊維間の捲縮位相差が局所的に生まれることで、マルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数CVを目的の範囲とすることができる。
さらに捲縮山数を10山/cm以上とすれば、繊維間での排除体積効果で繊維間空隙が増大することによるふくらみの向上効果が得られるのみならず、捲縮形態が微細なスパイラル構造になることでストレッチ性も付与できることから、より好ましい範囲として挙げられる。
ストレッチ性の付与という観点では、この捲縮山数は増加させることが好適となるが、捲縮山数が過剰になると、マルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数CVも大きくなり、織編物等の組織によっては、単調な触感となる場合がある。よって、好適な触感の発現を目的とする本発明における捲縮山数の実質的な上限は50山/cmとなる。
本発明のマルチフィラメント中の扁平中空繊維においては、繊維中心から繊維表面方向にかけて開口部を有していることが好ましい。中空部へと連通する開口部を有していれば、開口部での毛細管現象による吸水性が発現するのみならず、繊維表面積が増えることで、機能剤を塗布するといった後加工を施した際には機能剤の有効面積も増大し、機能剤の性能を向上することも可能となる。
また開口部の幅としては、繊維径の10%以下であることが好ましい。ここで、本発明における繊維径とは、マルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10フィラメント以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影して求める。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維の面積を測定し、真円換算で求められる直径をμm単位で小数点1桁目まで測定し、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を繊維径(μm)とする。ここで繊維軸に垂直方向の繊維横断面に中空部が存在する場合には、繊維の面積に中空部の面積も加えることとする。
また本発明における開口部の幅とは、以下の方法で求めることができる。すなわち、マルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。得られた画像の繊維において、繊維中心から繊維表面にかけて開口部を有していた場合には、画像解析ソフトを用いて解析することで、繊維中心Gを通って開口部と平行となる直線S’(例えば図6の(b)のS’)に対して垂直方向の開口部の幅W’(例えば図6の(b)のW’)の内、最も短い幅をμm単位で算出する。これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位で四捨五入した値を開口部の幅とする。また各フィラメントにて求めた開口部の幅を繊維径で割り100を掛けた値を算出し、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下で四捨五入した値を本発明の言う繊維径に対する開口部の幅の割合(%)とする。
本発明において、この開口部の幅を繊維径の10%以下とすることが好ましい。すなわち、係る範囲においては、開口部が過剰に広すぎることによる繊維同士の噛み込みや開口部のずれによる中空部のつぶれを防ぐことができ、軽量感や適度な反発感といった風合いが損なわれることを防ぐことができる。
また、開口部の幅を繊維径の5%以下とすることがより好ましく、開口部起因での繊維摩耗によるフィブリル化を抑制できるのみならず、機能剤を塗布するといった後加工を施した際に、中空部に入った機能剤が洗濯等で脱落するのを防ぎ、機能剤の性能耐久性を大幅に向上させることができる。ただし、開口部の幅を狭くしすぎると、開口部での毛細管現象による吸水性が弱まる場合や機能剤を塗布した際に中空部へ機能剤が十分に入り込めない場合があることから、本発明における開口部の幅の実質的な下限は繊維径の1%である。
本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメント中の扁平中空繊維を構成するポリマーとしては、熱可塑性ポリマーであると加工性に優れることから好ましい。繊維を構成するポリマー群としては、例えばポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリル酸メチル系、ポリフェニレンサルファイド系などのポリマー群およびその共重合体が好ましい。
特に高い界面親和性を付与することができ、複合断面異常のない繊維が得られるという観点から、本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメント中の扁平中空繊維に用いる熱可塑性ポリマーは、全て同ポリマー群およびその共重合体であることが好ましい。
また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。特に難溶解性ポリマーに酸化チタンを1.0質量%以上含有することが好ましい。そうすれば、易溶解性ポリマーを溶解した際に、難溶解性ポリマーの表面に析出していた酸化チタンも脱落することで表面に凹凸が生まれ、光を乱反射することで光の入射角による反射の増減(ギラツキ)を抑制できるといった外観の良化のみならず、繊維内部の酸化チタンにより防透けや紫外線遮蔽といった機能性も得られる。
易溶解性ポリマーとしては、例えば、ポリエステルおよびその共重合体、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリエチレン、ポリビニールアルコールなどの溶融成形可能で、他の成分よりも易溶出性を示すポリマーから選択することが好適である。
また、易溶解性ポリマーの溶出工程を簡易化するという観点では、易溶解性ポリマーは、水系溶剤あるいは熱水などに易溶出性を示す共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリビニールアルコールなどが好ましい。特に、結晶性を維持しながらもアルカリ水溶液などの水系溶剤に対して易溶出性を示すため、加熱下で擦過が付与される仮撚加工等においても、複合繊維間の融着等が起こらないという高次加工通過性の観点から、5-ナトリウムスルホイソフタル酸が5mol%から15mol%が共重合されたポリエステルおよび前述した5-ナトリウムスルホイソフタル酸に加えて重量平均分子量500から3000のポリエチレングリコールが5質量%から15質量%の範囲で共重合されたポリエステルが好ましい。
本発明における融点の異なる難溶解性ポリマーとは、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリル酸メチル系、ポリフェニレンサルファイド系などの溶融成形可能な熱可塑性ポリマー群およびその共重合体の中から、融点が10℃以上異なるポリマーの組合せをいう。
本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメント中の扁平中空繊維においては、融点の異なる難溶解性ポリマーの収縮差により捲縮形態を発現することが目的である。よって、融点の異なる難溶解性ポリマーの組合せとしては、1種類を高収縮の低融点ポリマーとし、もう1種類を低収縮の高融点ポリマーとして使用することが好ましい。特に、剥離を抑制して高次加工の安定性や布帛に使用耐久性を付与するという観点からすると、ポリマーの組合せとしては、エステル結合のポリエステル系、アミド結合のポリアミド系といった主鎖中に存在する結合が同一である同じポリマー群の中から選択することがより好ましい。
このような同じポリマー群での低融点ポリマーと高融点ポリマーの組合せとしては、例えばポリエステル系として共重合ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン/ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー/ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー/ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド系としてナイロン66/ナイロン610、ナイロン6‐ナイロン66共重合体/ナイロン6または610、PEG共重合ナイロン6/ナイロン6または610、熱可塑性ポリウレタン/ナイロン6または610、ポリオレフィン系としてエチレン‐プロピレンゴム微分散ポリプロピレン/ポリプロピレン、プロピレン‐αオレフィン共重合体/ポリプロピレンなどの種々の組み合わせが挙げられる。
これらの中でも、高い曲げ剛性から繊維内部の中空部の潰れを抑制し、かつ染色した際に良好な発色性が得られるという観点から、融点の異なる難溶解性ポリマーはポリエステル系の組合せとすることが好ましい。
また、共重合ポリエチレンテレフタレートにおける共重合成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートとの収縮差を最大化できるという観点からは、イソフタル酸を5~15mol%が共重合されたポリエチレンテレフタレートとすることが好ましい。
また、環境問題に注目が集まる中、本発明においても植物由来のバイオポリマーやリサイクルポリマーを用いることは環境負荷低減の観点からも好適なことであり、上記した本発明に用いられるポリマーは、ケミカルリサイクル、マテリアルリサイクルおよびサーマルリサイクルのいずれの手法で再資源化されたリサイクルポリマーを用いることができる。
バイオポリマーやリサイクルポリマーを用いる場合にも、ポリエステル系樹脂はそのポリマー特性として、本発明の特徴を顕著化することができ、上記した通り、高い曲げ剛性から繊維内部の中空部の潰れを抑制し、かつ染色した際に良好な発色性が得られる。これらの観点から、リサイクルポリエステルは本発明に好適に用いることができる。
本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメント中の扁平中空繊維における低融点側の難溶解性ポリマーと高融点ポリマーである難溶解性ポリマーの面積比率としては、低融点/高融点が70/30~30/70の範囲であることが好ましい。かかる範囲であれば、低融点ポリマーが熱処理で高収縮する際の目付詰まりによる風合い硬化の影響を受けることなく、収縮差による捲縮形態を十分に発現でき、より粗大化な繊維間空隙を得ることができる。
本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメント中の扁平中空繊維は、風合いをより柔軟にするという観点から、繊維径は20μm以下とすることが好ましい。係る範囲とすれば、柔軟性に加えて反発感も十分に得ることができ、パンツやシャツ等のハリコシのある風合いが求められる衣料用途に好適な範囲となる。
さらに、繊維径を15μm以下することがより好ましく、そうすることで繊維束や繊維束からなる布帛は、より柔軟性を増し、肌に触れるインナーやブラウス等の衣料用途に好適に用いられる。ただし、繊維径が8μm未満になると、繊維径が細すぎることから曲げ回復性が低下する部分が発生する場合や、発色性も低下する場合がある。よって、本発明における繊維の繊維径は8μm以上とすることが好適である。
また、本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントが少なくとも1部に含まれる本発明の繊維製品においては、繊維製品とした際に隣り合う繊維間で断面の長軸方向が揃っている箇所と揃っていない箇所で空隙や凹凸に差が生まれ、繊維間に複雑な空隙や凹凸を形成でき、特異的なさらっとした触感を発現できる。さらに繊維内部に中空部を設けていることで、繊維間の複雑な空隙や凹凸と相まって適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いも実現した着用快適性に優れるテキスタイルが得られる。
よって、本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントは、ジャケット、スカート、パンツ、下着などの一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材に加えて、その快適性を生かしてカーペット、ソファーなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、健康用品などの生活用途など多岐に渡る繊維製品に好適に用いることができる。
以下に本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントの製造方法の一例を詳述する。
本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントを製糸する方法としては長繊維の製造を目的とした溶融紡糸法、湿式および乾湿式などの溶液紡糸法、シート状の繊維構造体を得るのに適したメルトブロー法およびスパンボンド法などが挙げられるが、生産性を高めるという観点から、溶融紡糸法が好適である。
また、溶融紡糸法においては、後述する複合口金を用いることにより製造可能であり、その際の紡糸温度については、用いるポリマー種のうち、主に高融点や高粘度ポリマーが流動性を示す温度とすることが好ましい。この流動性を示す温度としては、分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点から融点+60℃の間で設定すると安定して製造することができる。
紡糸速度については、500~6000m/分程度にするとよく、ポリマーの物性や繊維の使用目的によって変更可能である。特に、高配向とし力学特性を向上させるという観点からすると、500~4000m/分とし、その後延伸することで、繊維の一軸配向を促進できるため、好ましい。延伸に際しては、ポリマーのガラス転移温度など、軟化できる温度を目安として、予熱温度を適切に設定することが好ましい。予熱温度の上限としては、予熱過程で繊維の自発伸長により糸道乱れが発生しない温度とすることが好ましい。例えば、ガラス転移温度が70℃付近に存在するPET(ポリエチレンテレフタレート)の場合には、通常この予熱温度は80~95℃程度で設定される。
また、本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントにおける口金での単孔当たりにおける吐出量としては、0.1~10g/分・孔程度にすると安定して製造することが可能となる。吐出されたポリマー流は、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラーで引き取られる。その後、加熱ローラーで延伸され、所望の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントとなる。
また、2種類以上のポリマーからなる本発明の複合繊維において、使用するポリマーの溶融粘度比を5.0未満、溶解度パラメータ値の差を2.0未満とすることで、安定的に複合ポリマー流を形成でき、良好な複合断面の繊維を得ることができるため好ましい。
2種類以上のポリマーからなる本発明の複合繊維を製造する際に用いる複合口金としては、例えば日本国特開2011-208313号公報に記載される複合口金が好適に用いられる。
本発明の図12に示した複合口金は、上から計量プレート1、分配プレート2および吐出プレート3の大きく3種類の部材が積層された状態で紡糸パック内に組み込まれ、紡糸に供される。ちなみに図12は、Aポリマー、Bポリマー、Cポリマーといった3種類のポリマーを用いた例である。従来複合口金では、3種類以上のポリマーを複合化することは困難であり、やはり図12に例示したような微細流路を利用した複合口金を用いることが好ましい。
図12に例示した口金部材では、計量プレート1によって各吐出孔当たりのポリマー量および各分配孔当たりのポリマー量が計量される。計量されたポリマー流は、分配プレート2によって単繊維の複合断面になるように配置され、分配プレート2で形成された複合ポリマー流は、吐出プレート3によって圧縮されて吐出される。
複合口金の説明が錯綜するのを避けるために、図示されていないが、計量プレート1より上に積層する部材に関しては、紡糸機および紡糸パックに合わせて、流路を形成した部材を用いればよい。計量プレート1を、既存の流路部材に合わせて設計することで、既存の紡糸パックおよびその部材がそのまま活用することができる。
このため、特に該口金のために紡糸機を専有化する必要はない。また、実際には流路-計量プレート間あるいは計量プレート1-分配プレート2間に複数枚の流路プレートを積層するとよい。これは、口金断面方向および単繊維の断面方向に効率よく、ポリマーが移送される流路を設け、分配プレート2に導入される構成とすることが目的である。吐出プレート3より吐出された複合ポリマー流は、上述の製造方法に従い、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラーで引き取られる。その後、加熱ローラーで延伸加工が施され、所望の複合繊維となる。
本発明の複合繊維から最内層の易溶解性ポリマーを溶出して難溶解性ポリマーのみからなる中空繊維を得るためには、易溶解性ポリマーが溶解可能な溶剤などに該複合繊維を浸漬して易溶解性ポリマーを除去すればよい。易溶解性ポリマーが、5-ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどが共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸等の場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いることができる。
本発明の複合繊維をアルカリ水溶液にて処理する方法としては、例えば、該複合繊維からなる繊維構造体とした後で、アルカリ水溶液に浸漬させればよい。この時、アルカリ水溶液は50℃以上に加熱すると、加水分解の進行を早めることができるため、好ましい。また、流体染色機などを利用すれば、一度に大量に処理をすることができるため、工業的な観点から好ましい。
以下実施例を挙げて、本発明の複合繊維および中空繊維について具体的に説明する。
実施例および比較例については下記の評価を行った。
A.ポリマーの溶融粘度
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフによって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、窒素雰囲気下で加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、せん断速度1216s-1の値をポリマーの溶融粘度として評価した。
B.ポリマーの融点
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、約5mgを秤量し、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、0℃から300℃まで昇温速度16℃/分で昇温後、300℃で5分間保持してDSC測定を行った。昇温過程中に観測された融解ピークより融点を算出した。測定は1試料につき3回行い、その平均値を融点とした。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も高温側の融解ピークトップを融点とした。
C.繊度
100mの繊維の重量を測定し、その値を100倍した値を算出した。この動作を10回繰り返し、その平均値の小数点第2位を四捨五入した値を繊度(dtex)とした。
D.複合繊維の断面パラメータ(RB/RA)
複合繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面をHITACHI製走査型電子顕微鏡(SEM)で10フィラメント以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影して求めた。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維をコンピューターソフトウェアの三谷商事製WinROOFを用いて解析することで、繊維表面と少なくとも2点(例えば図2の(a)のa1、a2)で内接し、繊維の内部にのみ存在して内接円の円周と繊維表面とが交差しない範囲においてとりうる最大の直径を有する円(例えば図2の(a)のA)の直径について算出した。これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下で四捨五入した値を内接円径RAとした。
また、繊維表面と少なくとも2点(例えば図2の(a)のb1、b2)で外接し、繊維の外部にのみ存在して外接円の円周と繊維表面とが交差しない範囲においてとりうる最小の直径を有する円(例えば図2の(a)のB)の直径について算出した。これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下で四捨五入した値を外接円径RBとした。各繊維において求めたRBをRAで割った値について算出し、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位で四捨五入した値をRB/RAとした。
E.繊維径
複合繊維およびマルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で10フィラメント以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影して求めた。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維の面積を測定し、真円換算で求められる直径をμm単位で小数点1桁目まで測定した。これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を繊維径(μm)とした。ここで繊維軸に垂直方向の繊維横断面に中空部が存在する場合には、繊維の面積に中空部の面積も加えることとした。
F.連通幅
複合繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影した。得られた画像の複合繊維において、易溶解性ポリマーが繊維中心から繊維表面にかけて連通していた場合には、コンピューターソフトウェアの三谷商事製WinROOFを用いて解析することで、繊維中心Gを通って連通部と平行となる直線S(例えば図3の(c)のS)に対して垂直方向の連通部の幅W(例えば図3の(c)のW)の内、最も短い幅をμm単位で算出した。これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位で四捨五入した値を連通幅とした。また各フィラメントにて求めた分断幅を繊維径で割り100を掛けた値を算出し、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下で四捨五入した値を繊維径に対する連通幅の割合(%)とした。
G.扁平度
マルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面をHITACHI製走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影して求めた。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維を、画像解析ソフトを用いて解析することで、図5の(a)に示すように繊維外周の任意の点のうち最も距離が離れた2点(c1、c2)を結んだ直線(c1-c2)を長軸とし、長軸の中点を通って長軸と直行する直線(d1-d2)を短軸として、長軸の長さを短軸の長さで割った値について算出した。これを繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位で四捨五入した値を扁平度とした。
H.中空率
マルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面をHITACHI製走査型電子顕微鏡(SEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影して求めた。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維が中空部を有していた場合、画像解析ソフトを用いて解析することで、繊維の中空部を含む外形から求められる面積と中空部の面積をそれぞれ求め、中空部の面積を繊維の中空部を含む外形から求められる面積で割り、100を掛けた値を算出した。これを繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値を中空率(%)とした。
I.開口部の幅
マルチフィラメントをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影した。得られた画像の繊維において、繊維中心から繊維表面にかけて開口部を有していた場合には、画像解析ソフトを用いて解析することで、繊維中心Gを通って開口部と平行となる直線S’(例えば図6の(b)のS’)に対して垂直方向の開口部の幅W’(例えば図6の(b)のW’)の内、最も短い幅をμm単位で算出した。これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位で四捨五入した値を開口部の幅とした。また各フィラメントにて求めた開口部の幅を繊維径で割り100を掛けた値を算出し、これを10フィラメントについて行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下で四捨五入した値を繊維径に対する開口部の幅の割合(開口部の割合)(%)とした。
J.捲縮山数(山/cm)
マルチフィラメントからなる布帛において、塑性変形させないよう布帛からマルチフィラメントを抜き出し、マルチフィラメントの片方の末端を固定し、もう片方の末端へ1mg/dtexの荷重をかけて30秒間以上経過後に、マルチフィラメントの繊維軸方向へ2点間の距離が1cmとなる任意の箇所にマーキングを施した。その後、塑性変形させないようマルチフィラメントから繊維を分繊し、予めつけておいたマーキングの間が元の1cmとなるように調整してスライドガラス上に固定し、このサンプルをデジタルマイクロスコープにて1cmのマーキングが観察できる倍率で画像を撮影した。撮影した画像においてマルチフィラメントが図11のような繊維がねじれた捲縮形態を有していた場合には、マーキング間に存在する捲縮山の数を求めた。この動作を同じポリマーから構成される繊維10本について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位で四捨五入した値を捲縮山数(山/cm)とした。
K.長軸の回転角度の変動係数CV
マルチフィラメントからなる布帛において、布帛の長さ方向に垂直かつマルチフィラメントの繊維軸方向に垂直な布帛断面をHITACHI製走査型電子顕微鏡(SEM)で20本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影した。得られた画像の繊維において、繊維が扁平断面を有していた場合には、画像解析ソフトを用いて解析することで、図5の(b)に示すように繊維外周の任意の点のうち最も距離が離れた2点(c1、c2)を結んだ直線(c1-c2)を長軸とし、扁平中空繊維の長軸の中点を通りかつ撮影した画像の下辺と平行な直線を、長軸の中点を中心に反時計回りに回転させ、長軸と直線の傾きが一致した時の回転角度(θ)を評価した。この評価をマルチフィラメントの中から無作為に抽出した繊維20本について行った結果の標準偏差と平均値を求めた。標準偏差を平均値で割り100を掛けた値を算出し、小数点第1位で四捨五入した値を、長軸の回転角度の変動係数CV(%)とした。
L.風合い評価(軽量感、柔軟性、反発感、滑らかさ、ざらつき感)
経糸方向のカバーファクター(CFA)が800、緯糸方向のカバーファクター(CFB)が1200となるように繊維本数を調整し、3/1ツイル織物を作製した。ただし、ここで言うCFAおよびCFBとは、織物の経密度および緯密度をJIS-L-1096:2010 8.6.1に準じて2.54cmの区間にて測定し、CFA=経密度×(経糸の繊度)1/2、CFB=緯密度×(緯糸の繊度)1/2の式より求めた値である。得られた織物について精練、湿熱処理、アルカリ処理、熱セットを行った後、以下の手法を用いて軽量感、柔軟性、反発感、滑らかさ、ざらつき感の5つの風合いを評価した。
軽量感は、以下の方法で評価した。すなわち、テロテック製定圧厚さ測定器(PG-14J)を用いて、20cm×20cmの織物の厚み(cm)を一定圧力下(0.7kPa)で測定し、織物の体積を算出した後、該織物の重量(g)を得られた体積で除した値を織物の見掛け密度(g/cm)とした。得られた見掛け密度から軽やかさをそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
◎:優れた軽量感(見掛け密度≦0.34)
○:良好な軽量感(0.34<見掛け密度≦0.44)
×:軽量感に劣る(0.44<見掛け密度)
柔軟性は、カトーテック製純曲げ試験機(KES-FB2)を用いて以下の方法で評価した。すなわち、20cm×20cmの織物を有効試料長20cm×1cmで把持し、緯糸方向に最大曲率±2.5cm-1の条件下で曲げた。そのときの、曲率0.5cm-1と1.5cm-1の単位幅当たりの曲げモーメント(gf・cm/cm)の差を曲率差1cm―1で除した値と曲率-0.5cm-1と-1.5cm-1の単位幅当たりの曲げモーメント(gf・cm/cm)の差を曲率差1cm―1で除した値の平均値を算出した。この動作を1箇所あたり3回行い、これを合計10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第4位を四捨五入した後に100で割った値を曲げ硬さB×10-2(gf・cm/cm)とした。得られた曲げ硬さB×10-2から柔軟性をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
◎:優れた柔軟性(曲げ硬さB×10-2≦1.0)
○:良好な柔軟性(1.0<曲げ硬さB×10-2≦2.0)
×:柔軟性に劣る(2.0<曲げ硬さB×10-2
反発感は、以下の方法で評価した。すなわち、カトーテック製純曲げ試験機(KES-FB2)を用いて、20cm×20cmの織物を有効試料長20cm×1cmで把持し、緯糸方向に曲げたときの、曲率±1.0cm-1におけるヒステリシスの幅(gf・cm/cm)を算出した。この動作を1箇所あたり3回行い、これを合計10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第4位を四捨五入した後に100で割った値を曲げ回復2HB×10-2(gf・cm/cm)とした。得られた曲げ回復2HB×10 から反発感をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
◎:優れた反発感(曲げ回復2HB×10-2≦1.0)
○:良好な反発感(1.0<曲げ回復2HB×10-2≦2.0)
×:反発感に劣る(2.0<曲げ回復2HB×10-2
滑らかさとざらつき感は、以下の方法で評価した。すなわち、カトーテック製自動化表面試験機(KES-FB4)を用いて、20cm×20cmの織物の10cm×10cmの範囲をピアノ線で巻かれた1cm×1cmの端子に50gの荷重をかけて、1.0mm/secの速さで滑らすことで平均摩擦係数MIUと平均摩擦係数の変動MMDを求めた。この動作を1箇所あたり3回行い、これを合計10箇所について行った。その結果について、平均摩擦係数MIUについては単純な数平均を求め、小数点第2位を四捨五入した値を摩擦係数とした。得られた摩擦係数から滑らかさを次の基準に基づき3段階判定した。
◎:優れた滑らかさ(摩擦係数<0.5)
○:良好な滑らかさ(0.5≦摩擦係数<1.0)
×:滑らかさに劣る(1.0≦摩擦係数)
また、平均摩擦係数の変動MMDについては単純な数平均を求め、小数点第4位を四捨五入した値を摩擦変動とした。得られた摩擦変動からざらつき感を次の基準に基づき3段階判定した。
◎:優れたざらつき感(0.9≦摩擦変動)
○:良好なざらつき感(0.5≦摩擦係数<0.9)
×:ざらつき感に劣る(摩擦係数<0.5)
M.機能評価(吸水速乾性、ストレッチ性)
経糸方向のカバーファクター(CFA)が800、緯糸方向のカバーファクター(CFB)が1200となるように繊維本数を調整し、3/1ツイル織物を作製した。ただし、ここで言うCFAおよびCFBとは、織物の経密度および緯密度をJIS-L-1096:2010 8.6.1に準じて2.54cmの区間にて測定し、CFA=経密度×(経糸の繊度)1/2、CFB=緯密度×(緯糸の繊度)1/2の式より求めた値である。得られた織物について精練、湿熱処理、アルカリ処理、熱セットを行った後、以下の手法を用いて吸水速乾性、ストレッチ性の2つの機能を評価した。
吸水速乾性は、以下の方法で評価した。すなわち、10cm×10cmの織物に水を0.1cc滴下後、温度20度で相対湿度65RH%の環境下で、5分ごとに織物の重量を測定し、残留水分率が1.0%以下となる時間(分)を求めた。この動作を合計3箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下を四捨五入した値を水分拡散時間(分)とした。得られた水分拡散時間から吸水速乾性をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
◎:優れた吸水速乾性(水分拡散時間≦20)
○:良好な吸水速乾性(20<水分拡散時間≦40)
×:吸水速乾性に劣る(40<水分拡散時間)
ストレッチ性は、以下の方法で評価した。すなわち、JIS L1096:2010の第8.16.1項に記載の伸び率A法(定速伸長法)に準じて行った。なお、ストリップ法の17.6N(1.8kg)荷重時を採用し、試験条件は、サンプル幅5cm×長さ20cm、クランプ間隔10cm、引張速度20cm/分とした。また、初荷重は、JIS
L1096:2010の方法に準じて、試料幅1m相当の重さを使用した。織物のヨコ方向に試験を3回行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下を四捨五入した値を布帛伸長率(%)とした。得られた布帛伸長率からストレッチ性をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
◎:優れたストレッチ性(15≦伸長率)
○:良好なストレッチ性(5≦伸長率<15)
×:ストレッチ性に劣る(伸長率<5)
N.耐摩耗性
経糸方向のカバーファクター(CFA)が1100、緯糸方向のカバーファクター(CFB)が1100となるように繊維本数を調整し、平織物を作製した。得られた織物について、分散染料Sumikaron Black S-3B(10%owf)を用いて黒色に染色した。染色後の織物を直径10cmの円形に切り出し、蒸留水で湿潤させて円盤に取り付けた。更に30cm角に切り出した織物を乾いたまま水平の板の上に固定した。
蒸留水で湿潤させた織物が取り付けられた円盤を水平な板の上に固定された織物に対して水平に接触させ、円盤の中心が直径10cmの円を描くように、荷重420g、速度50rpmで10分間円盤を円運動させ、2枚の織物を摩擦させた。摩擦終了後4時間放置してから、円盤に取り付けた織物の変褪色の程度を、変褪色用グレースケールを用い、0.5級刻みで1~5級の級判定を実施した。得られた級判定の結果から耐摩耗性を次の基準に基づき3段階判定した。
◎:優れた耐摩耗性(級判定:4級以上)
○:良好な耐摩耗性(級判定:3級または3.5級)
×:耐摩耗性に劣る(級判定:3級未満)
[実施例1]
ポリマー1として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%、ポリエチレングリコールを9質量%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)を準備した。
ポリマー2としてイソフタル酸を7mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET、溶融粘度:140Pa・s、融点:232℃)を準備した。
ポリマー3としてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点:254℃)を準備した。
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマー1/ポリマー2/ポリマー3を重量比で20/40/40となるように計量して、図5に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させた。図3の(a)に示すような扁平状の複合繊維であって、最内層および繊維中心から繊維表面にかけた連通部にポリマー1が配置され、最外層にポリマー2とポリマー3がサイドバイサイド型に接合された複合構造となるように、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-36フィラメント(繊維径12μm)の複合繊維を製造した。
得られた複合繊維の内接円径RAと外接円径RBの比RB/RAは1.8であった。また連通幅が0.5μmと、繊維径12μmに対して4%の割合であり、本発明の複合繊維であることが確認できた。
得られた複合繊維を製織し、80℃での精練処理および130℃での湿熱処理を施した後、90℃に加熱した1質量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)中にて処理することで、易溶解性ポリマーであるポリマー1を99%以上除去した。この時、繊維中心から繊維表面にかけて連通部が存在することにより、最内層のポリマー1は溶出処理を開始して10分間以内に速やかに溶出されるものであった。
その後、180℃で熱セットを加えることで、図2の(b)に示すような扁平度1.8、中空率18%、捲縮山数が17山/cmの扁平中空繊維からなるマルチフィラメントで構成される織物を得た。また、該扁平中空繊維は開口部を有しており、開口部の幅は0.5μmと繊維径に対して4%の割合であった。
当該マルチフィラメントで構成される織物は、マルチフィラメント中の扁平中空繊維における長軸の回転角度の変動係数CVが27%であった。よって、断面の長軸方向が不揃いとなることでテキスタイル表面に凹凸が発現した。これにより、生地表面を触った際には滑らか(摩擦係数:0.3)でありながらざらつき感(摩擦変動:0.9×10-2)が大きいことに起因したさらっとした触感を感じることができた。さらに、当該織物は、繊維間では複雑な空隙が生まれ、繊維内部の中空部と相まって、適度な反発感(曲げ回復2HB:0.9×10-2gf・cm/cm)やふくらみ(見掛け密度:0.33g/cm)のある柔らかな風合い(曲げ硬さB:0.9×10-2gf・cm/cm)を有した。また、当該織物は、優れたストレッチ性(布帛伸長率:16%)や開口部が存在することによる吸水速乾性(水分拡散時間:25分)を有しており、人の着心地に直結する風合いや機能を両立した着用快適性に優れた織物であった。
さらに、当該織物は、開口部が狭いことで、織物の加工後にも繊維内部の空隙が潰れずに維持されていたのみならず、機能剤を塗布した際に中空部に入った機能剤が洗濯等で脱落せず、機能剤の性能耐久性が大幅に向上するものであった。また、当該織物は、開口部起因でのフィブリル化による変褪色もない良好な耐摩耗性(フロスティング:4級)も有していることが分かった。結果を下記表に示す。
[実施例2、3]
断面形状を図3の(b)のような多葉状(実施例2)、図3の(c)のような扁平多葉状(実施例3)に変更した以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例2においては、繊維表面に凹凸が形成されることで、光の乱反射により布帛の光沢ムラ(ギラツキ)が抑制され、微細な繊維間空隙により吸水速乾性が高まるものであった。
実施例3においては、扁平状かつ多葉状であることで、扁平が捻じれることで生じる複雑な繊維間空隙と多葉状による繊維表面凹凸での微細な繊維間空隙が相まって、軽量感、反発感といった風合いや吸水速乾性といった機能がより向上するものであった。結果を下記表に示す。
[実施例4]
複合構造を図3の(d)のような易溶解性ポリマーが最外層に存在するような構造に変更した以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例4においては、最外層の易溶解性ポリマーを除去した際に生じる繊維間空隙の効果で、織編物の結束点で固定された繊維が可動できることにより柔軟性が向上し、高い空隙率での見かけ密度の低下により軽量感が向上するものであった。結果を下記表に示す。
[実施例5、6]
繊維の内接円径RAと外接円径RBの比であるRB/RA(異形度)をRB/RA=1.3(実施例5)、図1の(c)のようなRB/RA=1.0(実施例6)に変更した以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例5、6においては、異形度が小さくなることに伴い、ねじれた際の立体障害の効果が小さくなることでざらつき感が減少する一方で、熱処理にて発現する捲縮形態が微細になりコイル状に近づくことで、ストレッチ性が増大するのみならず、微細な繊維間空隙が増加し柔軟性も向上するものであった。結果を下記表に示す。
[実施例7]
複合繊維の断面形状が融点の異なるポリマーの接合面及び連通部が直線上にある断面であって、その直線の方向(角度)が無作為となる(図10の4種は当該断面形状の一例)よう変更した以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例7においては、重心間距離の違いにより熱処理にて発現する捲縮形態が単繊維毎に異なることで、長軸の回転角度の変動係数CVも高まり、ざらつき感が強まることでさらっとした触感がより際立つのみならず、繊維間空隙が増加することで軽量感も向上するものであった。結果を下記表に示す。
[比較例1]
ポリマー2をポリマー3と同じPETに変更した以外は実施例1に従い実施した。
比較例1においては、繊維内部の中空部により一定の軽量感は得られるものの、捲縮形態が発現しないことから、テキスタイル表面の凹凸感が無く、ざらつき感に欠けることに加えて、繊維間空隙も発現しないことから柔軟性や反発感にも欠けるものであった。また吸水速乾性やストレッチ性といった機能も有していなかった。結果を下記表に示す。
[比較例2]
延伸後に加工速度を250m/分、延伸倍率を1.05倍としたローラー間で、180℃に設定したヒーターにて加熱しながら、フリクションディスクを用い、仮撚数が3000T/mとなるような回転数にて仮撚加工を施した以外は全て比較例1に従い実施した。
比較例2においては、仮撚加工により捲縮形態は得られるものの、テキスタイル表面の凹凸は単調となり、ざらつき感に欠けるものであった。結果を下記表に示す。
[比較例3]
複合構造を図4の(b)のような丸状で融点の異なる難溶解性ポリマーが繊維中心から繊維表面に向かう方向に積層された構造に変更した以外は実施例1に従い実施した。
比較例2においては、最内層の易溶解性ポリマーの除去により繊維内部に空隙が形成されることで一定の軽量感は得られるものの、融点の異なる難溶解性ポリマーが偏在しておらず熱処理による捲縮形態がほとんど発現していないことから、柔軟性や反発感、ざらつき感に欠けることに加えて、吸水速乾性やストレッチ性といった機能も有していないものであった。結果を下記表に示す。
[比較例4]
ポリマー2としてイソフタル酸を7mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET、溶融粘度:140Pa・s、融点:232℃)、ポリマー3としてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点:254℃)を準備した。
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマー2/ポリマー3を重量比で50/50となるように計量して、図4の(a)に示すような中空状の複合繊維であって、中空率が20%、ポリマー2とポリマー3がサイドバイサイド型に接合された複合構造となるように、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-36フィラメント(繊維径13μm)の複合繊維を製造した。
得られた複合繊維を製織し、80℃での精練処理および130℃での湿熱処理を施した後、180℃で熱セットを加えることで、上記複合繊維で構成される織物を得た。
比較例4においては、繊維製造時に既に繊維内部に中空を有していることから、製織過程や熱処理による捲縮発現で中空が潰れてしまい、織物とした際には軽量感が損なわれるのみならず、柔軟性や反発感にも欠けるものであった。結果を下記表に示す。
[実施例8、9]
易溶解性ポリマーによる連通幅を繊維径に対して8%(実施例8)、16%(実施例9)に変更した以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例8、9においては、易溶解性ポリマーの除去後に形成される開口部が大きくなるほど、手で触った際に開口部が指に引っ掛かることで摩擦係数が増すのみならず、水滴を滴下した際に水滴と接触する繊維表面積が増加することで、吸水速乾性も向上するものであった。結果を下記表に示す。
[実施例10、11]
ポリマー2/ポリマー3の重量比を60/20(実施例10)、20/60(実施例11)と変更した以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例10、11においては、高収縮側であるポリマー2の比率を多くするほど、より捲縮形態が強く発現して、得られる織物の軽量感が増すものであった。また、低収縮成分であるポリマー3を多くするほど、熱セットでの高収縮側の高い収縮率による目詰まりが抑えられ、柔軟性に優れるものであった。結果を下記表に示す。
[実施例12、13]
ポリマー1/ポリマー2/ポリマー3の重量比を10/45/45(実施例12)、30/35/35(実施例13)と変更した以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例12、13においては、ポリマー3の重量比を小さくして中空率が小さくなると、曲げ硬さが大きくなることから、特徴的な弾力のある触感が得られるものであった。また、ポリマー3の重量比を大きくして中空率を大きくすると、繊維内部に内包される空気が増えることで、軽量感が増すのみならず、柔軟性や反発感にも優れるものであった。結果を下記表に示す。
[実施例14、15]
繊維径を17μm(実施例14)、24μm(実施例15)となるように吐出量を変更した以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例14、15においては、繊維径を大きくすることで熱処理にて発現する捲縮形態のループが大きくなり、ざらつき感や軽量感が向上することに加えて、曲げ硬さが大きくなることから、特徴的な弾力のある触感が得られた。結果を下記表に示す。
[実施例16]
ポリマー3を酸化チタンが5.0質量%含有されたポリエチレンテレフタレート(TiO含有PET)に変更した以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例16においては、易溶解性ポリマーを除去した際に、ポリマー3の表面に析出していた酸化チタンも脱落することで表面に凹凸が生まれ、光を乱反射することで光の入射角による反射の増減(ギラツキ)を抑制できるといった布帛外観の変化のみならず、繊維内部の酸化チタンにより防透けや紫外線遮蔽といった機能性も得られるものであった。結果を下記表に示す。
[実施例17]
ポリマー2をポリプロピレンテレフタレート(PPT)に変更した以外は全て実施例1に従い実施した。
実施例17においては、PPTが有するゴム弾性の特性が相まって、より軽量感や柔軟性に優れた風合いを発現するのみならず、ストレッチ機能も大幅に向上するものであった。また、PPTはPET対比低屈折率であることから、得られた織物は発色性にも優れるものであった。結果を下記表に示す。
[実施例18]
ポリマー1として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%、ポリエチレングリコールを9質量%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)、ポリマー2としてナイロン6-ナイロン66共重合体(N6-66共重合体、溶融粘度:240Pa・s、融点:195℃)、ポリマー3としてナイロン6(N6、溶融粘度:190Pa・s、融点:223℃)を準備した。
これらのポリマーを280℃で別々に溶融後、ポリマー1/ポリマー2/ポリマー3を重量比で20/40/40となるように計量して、図5に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させた。図2の(a)に示すような扁平状の複合繊維であって、最内層にポリマー1が配置され、最外層にポリマー2とポリマー3がサイドバイサイド型に接合された複合構造となるように、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-36フィラメント(繊維径12μm)の複合繊維を製造した。
得られた複合繊維を製織し、80℃での精練処理および130℃での湿熱処理を施した後、90℃に加熱した1質量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)中にて処理することで、易溶解性ポリマーであるポリマー1を99%以上除去した。その後、180℃で熱セットを加えることで、図6の(a)に示すような扁平度1.8、中空率20%、捲縮山数が12山/cmの扁平中空繊維からなるマルチフィラメントで構成される織物を得た。
実施例18においては、ポリエステル対比低密度かつ低弾性のナイロンの特性が相まって、優れた軽量感が得られるのみならず、より柔軟性に優れた風合いを発現するものであった。結果を下記表に示す。
Figure 0007136361000001
Figure 0007136361000002
Figure 0007136361000003
Figure 0007136361000004
Figure 0007136361000005
Figure 0007136361000006
Figure 0007136361000007
Figure 0007136361000008
Figure 0007136361000009
Figure 0007136361000010
Figure 0007136361000011
Figure 0007136361000012
なお、表中の略号の意味は以下のとおりである。
PET:ポリエチレンテレフタレート
PEG:ポリエチレングリコール
SSIA:5-ナトリウムスルホイソフタル酸
IPA:イソフタル酸
PPT:ポリプロピレンテレフタレート
N6:ナイロン6
N6-66共重合体:ナイロン6-ナイロン66共重合体
TiO:酸化チタン
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2020年08月18日出願の日本特許出願(特願2020-137899)及び2020年11月24日出願の日本特許出願(特願2020-194085)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントは、繊維内部および繊維間の空隙構造を緻密に制御したことで、適度な反発感やふくらみのある柔らかな風合いを実現した着用快適性に優れるテキスタイルが得られる。よって、本発明の複合繊維、中空繊維およびマルチフィラメントは、ジャケット、スカート、パンツ、下着などの一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材に加えて、その快適性を生かしてカーペット、ソファーなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、健康用品などの生活用途など多岐に渡る繊維製品に好適に用いることができる。
x: 易溶解性ポリマー
y: 低融点側の難溶解性ポリマー
z: 高融点側の難溶解性ポリマー
a1、a2: 繊維表面と内接円の交点
b1、b2: 繊維表面と外接円の交点
c1、c2: 繊維外周上にあり、最も距離が離れた2点
d1、d2: 繊維外周上にあり、最も距離が離れた2点を結んだ直線の中点を通って直行する直線と繊維表面の交点
A: 繊維表面と少なくとも2点で内接し、繊維の内部にのみ存在して内接円の円周と繊維表面とが交差しない範囲においてとりうる最大の直径を有する円
B: 繊維表面と少なくとも2点で外接し、繊維の内部にのみ存在して外接円の円周と繊維表面とが交差しない範囲においてとりうる最小の直径を有する円
G: 繊維中心
H: 中空部
I: 繊維中心を通って繊維断面を均等に2分割する直線の内、直線を境にして左右また
は上下の繊維断面における高融点側の難溶解性ポリマーと低融点側の難溶解性ポリマーの面積比率が、どちらかの繊維断面にて100:0~70:30となり、もう片側の繊維断面では30:70~0:100の範囲となる直線
S: 繊維中心Gを通って連通部と平行となる直線
W: 直線Sに対して垂直方向の連通部の幅
S’: 繊維中心Gを通って開口部と平行となる直線
W’: 直線S’に対して垂直方向の開口部の幅
1: 計量プレート
2: 分配プレート
3: 吐出プレート

Claims (5)

  1. 扁平中空繊維を含有するマルチフィラメントであり、
    前記扁平中空繊維の長軸の回転角度の変動係数CVが15~50%である、マルチフィラメント。
  2. 前記扁平中空繊維は、繊維横断面において扁平度が1.2以上である、請求項に記載のマルチフィラメント。
  3. 前記扁平中空繊維は、繊維横断面において少なくとも2種類の融点の異なるポリマーで構成されている、請求項1または2に記載のマルチフィラメント。
  4. 前記扁平中空繊維は、繊維中心から繊維表面方向にかけて開口部を有しており、
    前記開口部の幅が繊維径の10%以下である、請求項1~3のいずれかに記載のマルチフィラメント。
  5. 求項1~4のいずれかに記載のマルチフィラメントが一部に含まれる繊維製品。
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