JP7133920B2 - 伸縮性経編地及びこれを用いた衣料 - Google Patents
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Description
しかしながら、縫合や接着により縁始末を実施した場合、その始末部位は2枚重ね以上の厚みとなり審美性を損なうと共に、厚みの増加による曲げ剛力の増加によって、肌に沿わない着用上の不快感を与えることになる。
例えば、以下の特許文献1には、編組織が非弾性糸と弾性糸とを同行させた1×1編み組織であって、かつ各編針において非弾性糸と弾性糸のうち少なくとも1方が閉じ目により編成された伸縮性たて編地が開示されている。
また、以下の特許文献2には、非弾性糸と弾性糸とを組み合わせて編成された伸縮性経編地であって、非弾性糸が1コース毎に1ウェール分の振り幅で左右交互に振られて全てのコースでループを形成する編成組織Aと、弾性糸が1コース毎に複数ウェール分の振り幅で左右交互に振られて全てのコースでループを形成する編成組織Bとを備えることにより、裁ち放しで縫製されたとしても、裂けやホツレが生じにくくなっている伸縮性経編地が開示されている。
更に以下の特許文献3には、相対向する一対のハーフセット編みからなる非弾性糸編成組織と、相対向する一対のハーフセット編みからなる弾性糸編成組織とを必須の編成組織とし、かつ、メッシュ組織を備える経編地も開示されている。
しかしながら、特許文献1~3に開示された編地ではいずれも、弾性糸はループを形成している。
更に経編地の特徴として、タテ、ヨコ、ナナメでの伸縮性について等方性を得難く、また、上記のような弾性糸がループを形成する経編地では、等方性が顕著に得られないため、カーリングやホツレを助長させる構造となっていた。
以上に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、等方性の伸縮性を発揮することができ、また容易にパワー変化が可能であり、更に裁断状態のままで縁始末が不要な伸縮性経編地、及びかかる伸縮性経編地からなり、裁断されたままで縁始末がされていない衣料を提供することである。
[1]非弾性糸と少なくとも2種類の挿入弾性糸からなる伸縮性経編地であって、該非弾性糸がループの連結により形成される組織を支持組織とし、該非弾性糸と第1弾性糸の編地中のアンダーラッピング方向が同一方向となると共に重なり同行する部分が含まれる組織を地編組織とし、かつ、該地編組織中の非弾性糸と第1弾性糸が重なり同行する部分を第2弾性糸が通過するように構成されることを特徴とする前記伸縮性経編地。
[2]非弾性糸と少なくとも3種類の挿入弾性糸からなる伸縮性経編地であって、第3弾性糸が、前記地編組織中の非弾性糸と第1弾性糸が重なり同行する部分を通過するように構成されながらも、第2弾性糸の挿入方向とは線対称方向に挿入されている、前記[1]に記載の伸縮性経編地。
[3]前記第1弾性糸を除く第2以降の弾性糸がハーフセットに糸入れされて、メッシュ構造を示す、前記[1]又は[2]に記載の伸縮性経編地。
[4]更に綿が交編されている、前記[1]~[3]のいずれかに記載の伸縮性経編地。
[5]前記非弾性糸を上筬に用い、前記第1弾性糸を挿入糸として下筬に用いる経編機で編成したとき、下筬に挿入された第1弾性糸が、上筬の非弾性糸の上に重なるイベージョンラップ現象が生じている、前記[1]~[4]のいずれかに記載の伸縮性経編地。
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の伸縮性経編地が裁断されたままで、縁始末不要な状態の縁が形成されている衣料。
本実施形態の伸縮性経編地は、非弾性糸と少なくとも2種類の挿入弾性糸からなる伸縮性経編地であって、該非弾性糸がループの連結により形成される組織を支持組織とし、該非弾性糸と第1弾性糸の編地中のアンダーラッピング方向が同一方向となると共に重なり同行する部分が含まれる組織を地編組織とし、かつ、該地編組織中の非弾性糸と第1弾性糸が重なり同行する部分を第2弾性糸が通過するように構成されることを特徴とする。
すなわち、先ず非弾性糸はルーピング組織を形成しながら同一ウェールでリピートするか又はウェールを渡り、その移動方向と同一になるように又は一部が同一になるように第1弾性糸が挿入されて地編組織を形成する。この時、アンダーラッピング方向も同一方向とすることによって、イベージョンラップ現象が起こり、挿入する弾性糸がルーピング構造を形成する非弾性糸を巻き込むように編成される。その結果、地糸の非弾性糸が、第1弾性糸と第2弾性糸を束ねてコイル状に巻きつくような形となり、そして生地の仕上げ加工、熱セット時に、しわなどが入らないように生地を張る動作をすることで非弾性糸のテンションは高くなり、束ね状態の弾性糸を包んで締め付ける力が働く。これにより同じコースを通過した複数の弾性糸は密着した状態となり、セット熱により表面が変形又は溶融した弾性糸同士はしっかり一体化することとなる。また、前記したように束ねて締め付ける組織構造であるため、使用する弾性糸は低融点弾性糸に限らず、一般的によく使用される融点の高い弾性糸でも十分なほつれ止め性能を示すこととなる。尚、図1のL1(非弾性糸)の直線部分はアンダーラッピング、曲線部分はオーバーラッピング(ルーピング構造)を示している。
伸縮性経編地の製造には、カールマイヤー社製 RSE-5N、仕掛幅130インチ(330cm)、28ゲージ/インチ(2.54cm)のラッセル編機を使用し、各筬と糸種、配置と編成条件を以下のように設定して実施した。
また、上記の編機で製造した白生地(生機)は、一般的に使用される染色加工(精練→プレセット→染色→ファイナルセット)にて仕上げ、伸縮性に優れる経編地を得た。
組織図を図1に示す。
L1(非弾性糸を配置する第一筬)にナイロン44dtex/34f(東レ株式会社製 ミラコスモ)をフルセットで配置し、組織を12/21/23/21/12/10//の6コースリピートのルーピング構造とした。
L2(第1弾性糸を配置する第二筬)にロイカ(登録商標、旭化成株式会社製、ポリウレタン弾性糸、タイプC-804)155dtexをフルセットで配置し、組織を22/11/33/11/22/00//の6コースリピートの挿入構造とした。
L3(第2弾性糸を配置する第三筬)にL2と同じロイカ(登録商標)155dtexをフルセットで配置し、組織を11/00/22/11/33/22/44/22/33/11/22/00//の12コースリピートの挿入構造とした。
新たにL4(第3弾性糸を配置する第四筬)を使用して、図2の組織とした以外は実施例1と同様に実施した。
L4(第3弾性糸を配置する第四筬)にL2、L3と同じロイカ(登録商標)155dtexをフルセットで配置し、組織を44/22/33/11/22/00/11/00/22/11/33/22//の12コースリピートの挿入構造とした。
L3、L4をハーフセットとする以外は実施例2と同様に実施し、良好なメッシュ構造経編地を得た。但しL3とL4の糸の配置は下記の通りであった:
L3:2in2out
L4:1in2out1in。
本構成時のL3、L4の糸配置状態を図3に示す。
更にL5を使用して綿を交編させ、図4の組織とした以外は実施例3に実施して、吸湿性が良好なメッシュ構造経編地を得た。
L5には、綿 120双糸(日清紡株式会社製)をフルセットで配置し、組織を11/00/11/00/11/00//の6コースリピートの挿入組織とした。
L2(第1弾性糸)をロイカ(登録商標)78dtex、L3(第2弾性糸)、L4(第3弾性糸)をそれぞれ44dtexとする以外は実施例3と同様に実施し、薄手軽量メッシュ構造経編地を得た。
組織図を図5に示す。
L1(非弾性糸を配置する第一筬)にナイロン44dtex/34f(東レ株式会社製 ミラコスモ)をフルセットで配置し、組織を12/21/23/21/12/10//の6コースリピートのルーピング構造とした。
L2(第1弾性糸を配置する第二筬)にロイカ(登録商標、旭化成株式会社製、ポリウレタン弾性糸、タイプC-805)44dtexをフルセットで配置し、組織を10/12//の2コースリピートのルーピング構造とした。
比較例1は、弾性糸が挿入構造ではなくルーピング構造を有する事例である。
組織図を図6に示す。
L1(非弾性糸を配置する第一筬)にナイロン44dtex/34f(東レ株式会社製 ミラコスモ)をフルセットで配置し、組織を10/12//の2コースリピートのルーピング構造とした。
L2(第1弾性糸を配置する第二筬)にロイカ(登録商標)155dtexをフルセットで配置し、組織を11/00//の2コースリピートの挿入構造とした。
L3(第2弾性糸を配置する第三筬)にL2と同じロイカ(登録商標)155dtexをフルセットで配置し、組織を11/00/22/11/33/22/44/22/33/11/22/00//の12コースリピートの挿入構造とした。
比較例2は、非弾性糸がルーピング構造、第1、第2弾性糸ともに挿入構造により形成される経編地であるが、非弾性糸と第1弾性糸の動き方が、アンダーラッピングにおいて同一方向ではない事例である。
[カール性]
経100mm×緯100mmの試験生地を、標準状態である温度20±2℃、相対湿度65±4%RHの雰囲気中に一晩(12時間以上)平場の上で放置し、経又は緯方向でめくり上がりが強い方の生地端面の接線と平場の角度を15度単位で計測し、カール性として評価した。0度は全くカールが見られない状態であり、90度までは使用に耐えうる状態、90度を超えるものは衣服が着用時にめくれ上がったり、衣服になる前の縫製工程にて折れ込みが起こり得る水準であり、好ましくない。
以下の評価基準で裁ち端を評価した:
○:裁ち端の非弾性糸の長さが1mm未満で、非弾性糸のフィラメントがほとんどばらけていない
△:裁ち端の非弾性糸の長さが1mm未満で、非弾性糸のフィラメントがばらけている
×:裁ち端の非弾性糸の長さが1mm以上である
尚、ばらけの程度に関しては、1本の非弾性糸の中のフィラメント最外糸同志の角度が60°を超えるものを「ばらけている」と判断した。
JIS L-0217 の付表1[記号別の試験方法-洗い方(水洗い)]の番号103に規定の試験方法(103法)により実施した。
L2 第二筬(第1弾性糸)
L3 第三筬(第2弾性糸)
L4 第四筬(第3弾性糸)
L5 第五筬(綿 120双糸)
Claims (5)
- 非弾性糸と少なくとも3種類の挿入弾性糸からなる伸縮性経編地であって、該非弾性糸がループの連結により形成される組織を支持組織とし、該非弾性糸と第1弾性糸の編地中のアンダーラッピング方向が同一方向となると共に重なり同行する部分が含まれる組織を地編組織とし、かつ、該地編組織中の非弾性糸と第1弾性糸が重なり同行する部分を第2弾性糸が通過し、かつ、第3弾性糸が、該地編組織中の非弾性糸と第1弾性糸が重なり同行する部分を通過するように構成されながらも、第2弾性糸の挿入方向とは線対称方向に挿入されていることを特徴とする前記伸縮性経編地。
- 前記第1弾性糸を除く第2以降の弾性糸がハーフセットに糸入れされて、メッシュ構造を示す、請求項1に記載の伸縮性経編地。
- 更に綿が交編されている、請求項1又は2に記載の伸縮性経編地。
- 前記非弾性糸を上筬に用い、前記第1弾性糸を挿入糸として下筬に用いる経編機で編成したとき、下筬に挿入された第1弾性糸が、上筬の非弾性糸の上に重なるイベージョンラップ現象が生じている、請求項1~3のいずれか1項に記載の伸縮性経編地。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の伸縮性経編地が裁断されたままで、縁始末不要な状態の縁が形成されている衣料。
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