JP7130835B1 - 印刷シームレス缶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷シームレス缶の製造工程において、缶と缶との接触や、缶と製缶ラインのガイドとの接触が生じた際に、ブロッキングや傷付きが発生しにくく、不良缶を発生しにくい、印刷シームレス缶の製造方法を提供する。【解決手段】被塗物上に印刷インキ組成物を付与して印刷層を設ける工程と、印刷層上にオーバープリント用ワニスをウェットオンウェットで塗装することにより、塗装膜を設ける工程と、印刷層および塗装膜を焼付け硬化する工程と、を含み、印刷インキ組成物は、樹脂、顔料、溶剤および下記一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩を含み、ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩の含有量は、印刷インキ組成物中、0.1~2.5質量%である、印刷シームレス缶の製造方法。JPEG0007130835000009.jpg2274(一般式(1)中、Mは、カルシウム、亜鉛、ナトリウム、バリウムおよびマグネシウムから選ばれる1種であり、nはMの価数と同数である)【選択図】なし

Description

本発明は、印刷シームレス缶の製造方法に関する。
包装容器としての金属容器は、種々の用途で利用されている。金属容器のうち、印刷シームレス缶は、金属板を最初に打ち抜き、しごきなどの工程を経て有底円筒状に加工し、有底円筒状の胴部に印刷塗装後、ネッキングやフランジング等の加工を施して缶体を仕上げる方法により製造される。シームレス缶への印刷は、通常樹脂凸版を使用されているが、高精細な仕上がりが要求される場合は水無し平版が使用され、ドライオフセット印刷が行われている(特許文献1、2)。
特開2005-314494号公報 特開2009-249435号公報
シームレス缶の印刷では、先ず印刷インキにて印刷層を設け、その上にオーバープリント用ワニスをウェットオンウェットで塗装することにより印刷インキの印刷層およびオーバープリント用ワニスによる塗装膜を形成し、同時に焼付け硬化させる工程が採用されている。この時、印刷インキに含まれる顔料種や顔料濃度によっては、焼付け硬化の工程を経ても硬化塗膜としての性能が不十分となる。そのため、製缶工程で缶と缶の接触や、缶と製缶ラインのガイドとが接触した際に、接触部においてブロッキングが発生したり、缶表面に傷付きが発生したりするなど、しばしば不良缶が発生し得る。そのため、印刷インキの性能を、印刷シームレス缶の製造工程に適するよう改善する必要があった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、印刷シームレス缶の製造工程において、缶と缶との接触や、缶と製缶ラインのガイドとの接触が生じた際に、ブロッキングや傷付きが発生しにくく、不良缶を発生しにくい、印刷シームレス缶の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下の構成を採用することによって、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。上記課題を解決する本発明の印刷シームレス缶の製造方法には、以下の構成が主に含まれる。
(1)シームレス缶上に印刷インキ組成物を転写して印刷層を設ける工程と、前記印刷層上にオーバープリント用ワニスをウェットオンウェットで塗装することにより、塗装膜を設ける工程と、前記印刷層および前記塗装膜を同時に焼付け硬化する工程と、を含み、前記印刷インキ組成物は、樹脂、顔料、溶剤および下記一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩を含み、前記ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩の含有量は、前記印刷インキ組成物中、0.1~2.5質量%である、印刷シームレス缶の製造方法。
Figure 0007130835000001
(一般式(1)中、Mは、カルシウム、亜鉛、ナトリウム、バリウムおよびマグネシウムから選ばれる1種であり、nはMの価数と同数である)
一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩は、親油性であるアルキル基と親水性であるスルホニル基を有していることから、顔料分散剤として使用されている。しかしながら、一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩を含む印刷インキ組成物を用いてシームレス缶上にインキ層を設け、その上にオーバープリント用ワニスをウェットオンウェットで塗装することにより形成された複層塗膜では、一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩は、複層塗膜に対して硬化性向上効果を付与することができる。その結果、本発明の印刷シームレス缶の製造方法は、缶と缶との接触や、缶と製缶ラインのガイドとの接触が生じた際に、ブロッキングや傷付きが発生しにくく、不良缶を発生しにくい。
(2)前記印刷シームレス缶の製造方法で使用される印刷インキ組成物において、使用される樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性されたアルキッド樹脂であり、前記脂肪酸の含有量は、アルキッド樹脂中、35~65質量%であり、前記アルキッド樹脂の重量平均分子量は、3,000~30,000である、(1)記載の印刷シームレス缶の製造方法。
このような構成における本発明の印刷シームレス缶の製造方法に採用される印刷インキ組成物は、印刷適性および得られる塗膜の物性が優れ、金属印刷用インキが必要とする性能においてバランスがよい。
(3)前記印刷インキ組成物を転写して印刷層を設ける工程は、樹脂凸版を使用したドライオフセット法、水無し平版を使用したドライオフセット法から選ばれる1種の方法である、(1)または(2)記載の印刷シームレス缶の製造方法。
このような構成における本発明の印刷シームレス缶の製造方法は、樹脂凸版を使用したドライオフセット法では、凸部に印刷インキを着けシームレス缶に対して適度な圧力を掛けながら転写することから、鮮明で力強い画像が得られる。一方、水無し平版を使用したドライオフセット法では、刷版の網点の滲みや太りを抑えることができ、更に印刷による汚れを防止することができる。
本発明によれば、印刷シームレス缶の製造工程において、缶と缶との接触や、缶と製缶ラインのガイドとの接触が生じた際に、ブロッキングや傷付きが発生しにくく、不良缶の発生を抑制できる、印刷シームレス缶の製造方法を提供することができる。
<印刷シームレス缶の製造方法>
本発明の一実施形態の印刷シームレス缶の製造方法は、シームレス缶上に印刷インキ組成物を転写して印刷層を設ける工程と、印刷層上にオーバープリント用ワニスをウェットオンウェットで塗装することにより、塗装膜を設ける工程と、印刷層および塗装膜を焼付け硬化する工程と、を含む。印刷インキ組成物は、樹脂、顔料、溶剤および下記一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩を含む。ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩の含有量は、印刷インキ組成物中、0.1~2.5質量%である。以下、それぞれについて説明する。
Figure 0007130835000002
(一般式(1)中、Mは、カルシウム、亜鉛、ナトリウム、バリウムおよびマグネシウムから選ばれる1種であり、nはMの価数と同数である)
(印刷インキ組成物)
本実施形態の印刷インキ組成物(以下、インキ組成物ともいう)は、樹脂、顔料、溶剤および一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩を含む。
・樹脂
樹脂は特に限定されない。一例を挙げると、樹脂は、アルキッド樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等である。これらの中でも、本実施形態の樹脂は、高速印刷において、優れた印刷適性や塗膜物性を発現し得る点から、アルキッド樹脂であることが好ましく、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性されたアルキッド樹脂であることがより好ましい。
脂肪酸で変性されたアルキッド樹脂は、脂肪酸または脂肪酸の水素添加物、油またはその水素添加物、1価の酸等で変性した樹脂であってもよい。アルキッド樹脂の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、アルキッド樹脂の製造方法は、油を原料とするエステル交換法、脂肪酸を原料とする脂肪酸法など、公知の方法である。
多塩基酸は、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族2塩基酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式2塩基酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フマル酸等の脂肪族2塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物等の多塩基酸等である。多塩基酸は、併用されてもよい。
多価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAなどの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの4価以上のアルコール等である。多価アルコールは、併用されてもよい。
油、脂肪酸は、アマニ油、キリ油、サフラワー油、大豆油、トール油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマワリ油、ヤシ油、これら油の脂肪酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等である。油、脂肪酸は併用されてもよい。また、これらの脂肪酸以外の一塩基酸として、安息香酸、p-t-ブチル安息香酸、アビエチン酸などが併用されてもよい。
アルキッド樹脂の重量平均分子量は、3,000以上であることが好ましく、4,000以上であることがより好ましい。また、アルキッド樹脂の重量平均分子量は、30,000以下であることが好ましく、25,000以下であることがより好ましい。アルキッド樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、塗膜物性が充分となり、印刷適性においてミスチィングが抑制されやすい。また、アルキッド樹脂は、樹脂粘度が適切であり、得られるインキ組成物は、インキ形状、塗膜物性、印刷適性のバランスがよい。なお、本実施形態において、重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography,SEC)により測定した値である。
アルキッド樹脂の酸価は特に限定されない。一例を挙げると、酸価は、0.1mgKOH/g以上であることが好ましく、1.0mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、酸価は、30mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、適正な流動性を確保でき転移性への影響を極力回避することができる。本実施形態において、酸価は、樹脂1g中に含まれている遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で定義される。単位はmgKOH/gである。
アルキッド樹脂に含まれる脂肪酸の含有量は、アルキッド樹脂中、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、アルキッド樹脂に含まれる脂肪酸の含有量は、アルキッド樹脂中、65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。脂肪酸の含有量が上記範囲内であることにより得られるインキ組成物は、高速印刷における転移性や機上安定性が優れ、塗膜物性も優れる。
本実施形態の樹脂は、アルキッド樹脂に加え、従来、用いられるインキ用樹脂が併用されてもよい。すなわち、印刷適性、塗膜物性等の要求性能に応じて、インキ組成物は、アルキッド樹脂と相溶する公知の樹脂が併用され得る。インキ用樹脂は、上記したアルキッド樹脂以外のアルキッド樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、石油樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、アミノ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等である。
樹脂の含有量は、所定のインキタックバリューに調整できればよく、特に限定されない。一例を挙げると、樹脂の含有量は印刷インキ組成物中、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、樹脂の含有量は、印刷インキ組成物中、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
・顔料
顔料は特に限定されない。一例を挙げると、顔料は、各種無機顔料または有機顔料である。
無機顔料、有機顔料は、耐熱性、耐光性、耐レトルト処理性を有するものであることが好ましい。無機顔料は、酸化チタン、シリカ、カーボンブラック等である。有機顔料は、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン系顔料等である。顔料は、併用されてもよい。
顔料の含有量は、種類や目的によって適宜調整される。一例を挙げると、顔料の含有量は、インキ組成物中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、顔料の含有量は、インキ組成物中、60質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。顔料の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、分散安定性が優れ、塗膜物性においては、顔料濃度が高いことによる弊害を回避できる。
・溶剤
溶剤は、金属印刷用インキ組成物に用いられる公知の炭化水素系溶剤が好ましく、沸点が200℃~400℃程度の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、アルキルベンゼンなどの芳香族系炭化水素、高級アルコール等がより好ましい。溶剤は、併用されてもよい。
溶剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、溶剤の含有量は、インキ組成物中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、インキ組成物中、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、インキ組成物は、金属印刷に適したインキタックバリューに調整されやすい。
・ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩
本実施形態のジノニルナフタレンスルホン酸金属塩は、下記一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩である。
Figure 0007130835000003
(一般式(1)中、Mは、カルシウム、亜鉛、ナトリウム、バリウムおよびマグネシウムから選ばれる1種であり、nはMの価数と同数である)
また、本実施形態のジノニルナフタレンスルホン酸金属塩は、ジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩、ジノニルナフタレンスルホン酸亜鉛塩、ジノニルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム塩、ジノニルナフタレンスルホン酸マグネシウム塩等である。本実施形態のジノニルナフタレンスルホン酸金属塩の工業的市販品は、K-SPERSE131、K-SPERSE152、K-SPERSE152MS(以上、キングインダストリーズ社製)等が例示される。
一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩の含有量は、インキ組成物中、0.1質量%以上であればよく、0.2質量%以上であることが好ましい。また、一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩の含有量は、インキ組成物中、2.5質量%以下であればよく、2.0質量%以下であることが好ましい。一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩の含有量が0.1質量%未満である場合、インキ組成物は、特に顔料濃度が高い場合に、硬化性が不十分となる。一方、一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩の含有量が2.5質量%を超える場合、インキ組成物は、硬化が過剰に促進され、塗膜の加工性が劣る。
・その他の任意成分
本実施形態のインキ組成物は、上記成分のほか、インキ組成物に通常配合される添加剤が任意成分として配合されてもよい。任意成分は、顔料分散剤、ドライヤー、滑剤、粘度調整剤、保存安定剤等である。
本実施形態のインキ組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、インキ組成物は、3本ロールミル、ボールミル、ビーズミル等を用いて常法によって調製され得る。
印刷シームレス缶の製造方法の説明に戻り、本実施形態の印刷シームレス缶の製造方法により製造される印刷シームレス缶は、金属基材を有底円筒状に打ち抜いたものである。
金属基材は、アルミニウム板、鉄板、これらにポリエステルフイルムなどをラミネート処理した被覆板等である。これらの基材は、化成処理、メッキ処理、サイズ塗装やホワイトコーティング、シルバーコーティング等が施されてもよい。
本実施形態の印刷シームレス缶の製造方法は、被塗物であるシームレス缶上に印刷インキ組成物を転写して印刷層を設ける工程と、印刷層上にオーバープリント用ワニスをウェットオンウェットで塗装することにより、塗装膜を設ける工程と、印刷層および塗装膜を焼付け硬化する工程とを含む。
・印刷層を設ける工程
印刷層を設ける工程は、樹脂凸版を使用したドライオフセット法、水無し平版を使用したドライオフセット法から選ばれる1種の方法であることが好ましい。これらの刷版を使用することにより、本実施形態のシームレス缶の製造方法は、1分間に千数百缶以上の高速印刷であっても、シームレス缶の胴部に鮮明な文字や画像を形成できる。
樹脂凸版を使用したドライオフセット法は、先ず、樹脂凸版の凸部に印刷インキを載せ、凸部に載った印刷インキを一旦ゴム製のブランケット上に転写し文字や画像を形成する。次に、樹脂凸版を使用したドライオフセット法は、シームレス缶を、ブランケット上を回転させながら印刷インキをブランケットからシームレス缶の胴部に転写させ、シームレス缶の胴部に文字や画像を形成する。本実施形態の印刷シームレス缶の製造方法は、樹脂凸版を使用したドライオフセット法によって印刷層を設けることにより、凸部に印刷インキを載せ、シームレス缶に対して適度な圧力を掛けながら転写することから、鮮明で力強い画像が得られる。
水無し平版を使用したドライオフセット法は、画線部とシリコーンゴム層が形成された非画線部から構成された水無し平版を用いる。水無し平版を使用したドライオフセット法は、先ず、印刷インキを水無し平版に供給する。この際、非画線部では、シリコーンゴム層により、印刷インキがはじかれる。一方、画線部では、インキ層が形成される。水無し平版を使用したドライオフセット法は、次に、ゴム製のブランケット上に印刷インキ層が形成された水無し平版から印刷インキを転写し、文字や画像を形成し、更に、シームレス缶を、ブランケット上を回転させながら印刷インキをブランケットからシームレス缶の胴部に転写させ、シームレス缶の胴部に文字や画像を形成する。本実施形態の印刷シームレス缶の製造方法は、水無し平版を使用したドライオフセット法によって印刷層を設けることにより、刷版の網点の滲みや太りを抑えることができ、更に印刷による汚れを防止することができる。
印刷層の膜厚は特に限定されない。一例を挙げると、印刷層の膜厚は、0.3μm以上であることが好ましく、0.4μm以上であることがより好ましい。また、印刷層の膜厚は、6.0μm以下であることが好ましく、4.0μm以下であることがより好ましい。印刷層の膜厚が上記範囲内であることにより、印刷シームレス缶の製造方法は、製缶工程において、トラブルが未然に防がれやすい。
・塗装膜を設ける工程
塗装膜を設ける工程は、印刷層上にオーバープリント用ワニスをウェットオンウェットで塗装することにより、塗装膜を設ける工程である。
オーバープリント用ワニスは特に限定されない。一例を挙げると、オーバープリント用ワニスは、通常、金属印刷に用いられるものであれば、水性タイプまたは溶剤タイプのどちらであってもよい。
塗装膜の膜厚は特に限定されない。一例を挙げると、塗装膜の膜厚は、3.0μm以上であることが好ましく、6.0μm以上であることがより好ましい。また、塗装膜の膜厚は、30.0μm以下であることが好ましく、20.0μm以下であることがより好ましい。塗装膜の膜厚が上記範囲内であることにより、得られる印刷シームレス缶は、光沢などの外観が優れ、インキ層の保護を目的とした塗膜物性の優れた塗装膜が得られやすい。
・焼付け硬化する工程
焼付け硬化する工程は、印刷層および塗装膜を焼付け硬化する工程である。
焼付け条件は特に限定されない。一例を挙げると、焼付け条件は、第一の焼き付けとして180℃~300℃の温度で3秒~90秒程度、第二の焼き付けとして180℃~300℃の温度で30秒~150秒程度加熱硬化させる。ただし、缶種によっては、焼付けが一度であってもよい。これにより、複層塗膜からなる印刷シームレス缶が製造される。
以上、本実施形態によれば、上記したインキ組成物を用いて印刷シームレス缶が製造される。この場合、一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩は、親油性であるアルキル基と親水性であるスルホニル基とを有している。そのため、一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩は、顔料分散剤として使用されている。しかしながら、得られる複層塗膜は、一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩により、硬化性向上効果が付与される。その結果、本発明のシームレス缶の製造方法は、缶と缶との接触や、缶と製缶ラインのガイドとの接触が生じた際に、ブロッキングや傷付きが発生しにくく、不良缶を発生しにくい。
以下、実施例と比較例とにより本発明をより詳細に説明する。本発明は、これらに限定されない。なお、表中の各数値は質量基準によるものである。
(アルキッド樹脂の合成)
(アルキッド樹脂(1))
ヤシ油脂肪酸110部、イソフタル酸50部、ペンタエリスリトール60部を常法にてエステル化し、脂肪酸含有量55%、酸価5mgKOH/g、水酸基価140mgKOH/g、重量平均分子量15,500のアルキッド樹脂(1)を得た。なお、脱水量は20.0部であった。
(アルキッド樹脂(2))
ヤシ油脂肪酸80部、無水フタル酸60部、ペンタエリスリトール76部を常法にてエステル化し、脂肪酸含有量40%、酸価3mgKOH/g、水酸基価210mgKOH/g、重量平均分子量8,400のアルキッド樹脂(2)を得た。なお、脱水量は16.0部であった。
(アルキッド樹脂(3))
ヤシ油脂肪酸80部、無水フタル酸28部、イソフタル酸30部、ペンタエリスリトール76部を常法にてエステル化し、脂肪酸含有量40%、酸価2mgKOH/g、水酸基価220mgKOH/g、重量平均分子量21,000のアルキッド樹脂(3)を得た。なお、脱水量は14.0部であった。
アルキッド樹脂(1)~(3)の配合およびパラメーターを表1に示す。
Figure 0007130835000004
(印刷インキ組成物の調製)
金属印刷インキでは、しばしば顔料濃度が高いインキが所望される。しかしながら、顔料濃度が高過ぎると塗膜物性や印刷適性で弊害が生じるおそれがある。そこで、顔料濃度が25%のインキの色調を基準として、±10%の顔料濃度のインキをそれぞれ作製し、各顔料濃度における塗膜物性を評価した。
アルキッド樹脂(1)~(3)を用い、表2~表4に示される配合で、実施例1~27、比較例1~18の印刷インキを調製した。なお、表中における顔料はモノアゾ系顔料(大日精化工業(株)製「セイカファーストレッド1547」)で、溶剤はアルキルベンゼン(日本石油(株)製「リニアアルキルベンゼン」)である。また、K-SPERSE131は、ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩と溶剤がそれぞれ50%含まれている。したがって、表2~表4のK-SPERSE131の配合量では、ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩の実質的な含有量は、配合量の50%となり、その値を()内に示した。
表2は、アルキッド樹脂(1)を使用して調製されたインキの配合とその塗膜物性とを示す。表3は、アルキッド樹脂(2)を使用して調製されたインキの配合とその塗膜物性とを示す。表4は、アルキッド樹脂(3)を使用して調製されたインキの配合とその塗膜物性とを示す。
実施例1~27および比較例1~18で調製した印刷インキについて、以下の方法でテストパネルを作製し、そのテストパネルを用いて、塗膜物性として、硬化性、耐ブロッキング性、耐折り曲げ性を評価した。
(テストパネルの作製)
実施例1~27および比較例1~18で調製した印刷インキについて、RIテスター((株)小久保精密製)と4分割ロールを用いて、インキ組成物0.1ccをホワイトコーティング塗装アルミニウム板(色調評価)およびアルミニウム板(硬化性、耐ブロッキング性、耐折り曲げ性)上に展色した。その後、公知の溶剤系オーバープリント用ワニスを、簡易式ロールコーターにて、溶剤系オーバープリント用ワニスが固形量換算で50mg~60mg/100cm2となるように、印刷インキ層の上にウェットオンウェット方式で塗装し、電気オーブンにて加熱硬化した。焼付け乾燥条件としては、第一の焼付けとしてテストパネルが200℃で30秒間維持されるように焼付け、その後、第二の焼付けとしてテストパネルが200℃で120秒間維持されるように焼付けを行なった。
(色調)
作製したテストパネルの色調はX-rite社製濃度計によって測定した。得られた光学濃度(マゼンタ)OD値より以下のように評価した。なお、金属容器を装飾するのに好ましい濃度を基準色調とした。
◎:OD値は、1.7以上であった(高濃度)。
○:OD値は、1.4以上1.7未満であった(基準色調)。
△:OD値は、1.4未満であった(低濃度のため実用レベルの色調ではなかった)。
(硬化性)
実施例および比較例で得られたインキを用いて作製したテストパネルについて、鉛筆硬度をJIS K 5600-5-4に準拠した方法により評価した。すなわち、複層塗膜の塗膜表面を鉛筆の芯で傷付け、表面に傷が確認できた時に用いた鉛筆の硬さを評価した。具体的には、ある硬さの鉛筆を用いて評価を行い、傷が付かなかった場合、1つ上の硬さの鉛筆により評価を行うという作業を繰り返した。傷が付かない最も硬い鉛筆の硬度をその塗膜の鉛筆硬度とした。
評価用鉛筆:三菱鉛筆(株)製「鉛筆硬度試験用鉛筆」
引っ掻き角度:45°
測定環境:25℃
評価基準:金属容器の製造および搬送時に外面に不良を発生させない基準の鉛筆硬度として2H以上を合格とした。
◎:傷が付かない最も硬い鉛筆の硬度は、3H以上であった。
○:傷が付かない最も硬い鉛筆の硬度は、2Hであった。
×:傷が付かない最も硬い鉛筆の硬度は、H以下であった。
(耐ブロッキング性)
実施例および比較例で得られたインキを用いて作製したテストパネルについて、耐ブロッキング性を評価した。具体的には、アルミニウム板に印刷インキを塗布し、その上にウェットオンウェット方式で溶剤系オーバープリント用ワニスを塗装したテストパネルと、アルミニウム板に溶剤系オーバープリント用ワニスのみを塗装したテストパネルを、電気オーブンで第一の焼付けを行い加熱硬化した。次に、上記で得られた印刷インキと溶剤系オーバープリント用ワニスを塗装したテストパネルと、溶剤系オーバープリント用ワニスのみを塗装したテストパネルの塗膜同士を重ね合わせてクリップで挟んで固定した。その後、第二の焼付けを行い更に加熱硬化した。加熱硬化後、室温まで冷却し固定していたクリップを取り除き、重ね合わせていたテストパネルを静かに剥がし、剥離抵抗および塗膜表面の状態にて耐ブロッキング性を評価した。評価基準を下記に示す。
◎:剥離抵抗がなく、塗膜表面に異常がなかった(使用可)。
○:若干の剥離抵抗があったが、塗膜表面に異常がなかった(使用可)。
△:若干の剥離抵抗があり、塗膜表面に異常があった(使用不可)。
×:剥離抵抗強く、塗膜表面に異常があった(使用不可)。
(耐折り曲げ性)
実施例および比較例で得られたインキを用いて作製したテストパネルについて、複層塗膜の柔軟性を評価するため耐折り曲げ性を評価した。すなわち、複層塗膜が形成された面が外側になるように、180°折り曲げることで折り曲げ箇所に負荷が生じることから、折り曲げ後の複層塗膜の割れとアルミニウム板からの塗膜の剥がれの程度を観察した。
◎:複層塗膜に割れは発生せず、塗膜の剥がれも無かった。
○:複層塗膜に割れが僅かに見られたが、塗膜の剥がれは無かった。
△:複層塗膜に微小な割れが発生し、僅かな塗膜の剥がれが発生した。
×:複層塗膜に明確な割れと塗膜の剥がれが発生した。
Figure 0007130835000005
Figure 0007130835000006
Figure 0007130835000007
表2~4に示されるように、本発明の実施例に記載の印刷インキ組成物を用いた場合、比較例の印刷インキ組成物を用いた場合と比べて、硬化性、耐ブロッキング性、密着性など、塗膜性能が実用レベルであった。また、顔料濃度が高くなるほど塗膜物性は低下する傾向が見られた。このことは、顔料濃度が上がると樹脂の含有量が下がり、顔料と樹脂との相互作用のバランスが崩れ、塗膜物性が低下することを示していると考えられる。
以上より、本発明は、印刷シームレス缶の製造方法において、分散剤として使用されているジノニルナフタレンスルホン酸金属塩を含む印刷インキの印刷層の上に、オーバープリント用ワニスをウェットオンウェットで塗装し、その後同時に焼付け硬化させる製缶工程において、複層塗膜の硬化性が改善されることを見出した。その結果、印刷シームレス缶の製造工程において、缶と缶との接触や、缶と製缶ラインのガイドとの接触が生じた際に、ブロッキングや傷付きが発生しにくく、不良缶の発生を抑制することができる。

Claims (3)

  1. シームレス缶上に印刷インキ組成物を転写して印刷層を設ける工程と、
    前記印刷層上にオーバープリント用ワニスをウェットオンウェットで塗装することにより、塗装膜を設ける工程と、
    前記印刷層および前記塗装膜を焼付け硬化する工程と、を含み、
    前記印刷インキ組成物は、樹脂、顔料、溶剤および下記一般式(1)で表されるジノニルナフタレンスルホン酸金属塩を含み、
    前記ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩の含有量は、前記印刷インキ組成物中、0.1~2.5質量%であり、
    前記ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩は、ジノニルナフタレンスルホン酸カルシウム塩である、印刷シームレス缶の製造方法。
    Figure 0007130835000008
    (一般式(1)中、Mは、カルシウム、亜鉛、ナトリウム、バリウムおよびマグネシウムから選ばれる1種であり、nはMの価数と同数である)
  2. 前記樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性されたアルキッド樹脂であり、
    前記脂肪酸の含有量は、アルキッド樹脂中、35~65質量%であり、
    前記アルキッド樹脂の重量平均分子量は、3,000~30,000である、請求項1記載の印刷シームレス缶の製造方法。
  3. 前記印刷層を設ける工程は、樹脂凸版を使用したドライオフセット法、水無し平版を使用したドライオフセット法から選ばれる1種の方法である、請求項1または2記載の印刷シームレス缶の製造方法。
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