JP6439807B2 - 平版印刷用光輝性インキ組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、雑誌、書籍、ポスター等の印刷物に使用される平版印刷用インキに関し、特にそのインキがアルミニウムを顔料として含むものであり、更に詳しくは平版印刷適性を保持しながら従来よりも輝度が高く、鏡面光沢のある印刷物が得られる平版印刷用インキに関する。
近年、印刷物の意匠性を向上させる目的でゴールド、シルバー、ブロンズといった金属光沢を付与した印刷物が市場のニーズとして高まっている。
これらの印刷物は従来、グラビア、シルクスクリーン、フレキソなどの印刷膜厚が厚い印刷方式により作成され、例えばフィルムなどの透明な基材に印刷される。これらの印刷物は、印刷層側から、あるいは基材側から見るために用いられる。
上記の印刷は、絵柄の変更に伴う版材の交換に手間がかかる事から、多量少品種の印刷には適しているものの、少量多品種の印刷物には向いていない。また印刷速度が平版印刷に比べ遅く、生産性において不利である。
一方、金属光沢を付与した印刷物の作成に、印刷速度の速い平版印刷が用いられる際には、予め金属層を蒸着した用紙を使用したり、箔押しやインラインホイラーなどによる加工を用いたりする必要がある。これらの用紙や方法では、平版印刷後に後加工を要する、あるいは、特殊な装置を印刷機に設置する必要がある、細部の絵柄形成が困難であることから、生産性、コスト面での負荷が大きい。特に上記の加工は、必要とする絵柄以上の大きさに箔を当て、型抜きすることで必要な絵柄部分のみを使用するもので、不要な部分は使用しないことから、小さな絵柄に使用する際には無駄が多く、環境面、コスト面において課題がある。
上記課題解決のため、金属調光沢を付与するための平版印刷用光輝性インキが開発されているが、上記グラビア、シルクスクリーン、フレキソなどの印刷物に比べ輝度は著しく劣り、現状、鏡面性は無いに等しい。
その理由として、平版印刷用インキに用いる際には、輝度や、基材との密着性のみならず、平版印刷方式特有の、乳化適性やローラー転移性にも留意し素材選定する必要があることが考えられる。例えば、特定のアルミニウム顔料を用いても、併用するバインダーが適切でなければ、印刷適性のみならず鏡面性も発現しない。一般的に平版印刷用インキでは、主としてロジン変性フェノール樹脂が用いられるが、前記樹脂を主成分として用い、かつ希薄なアルミニウム顔料を用いて光輝性インキを作成しても、鏡面性を発現しない。
平版印刷により印刷される印刷物の殆どは、用紙基材に印刷される。一般に用紙基材は、フィルムと異なり表面が粗い。光輝性インキは、基材表面の粗さの影響により輝度が変化するため、用紙基材に対して鏡面性を有する印刷物を得るためには、フィルムへの印刷物と同等以上に印刷表面の平滑さが要求される。
更には、フィルムへ印刷する場合、たとえ印刷表面が平滑でなくても、平滑である基材側から見ることで、輝度を高く見せることが可能である。しかしながら用紙基材ではそれができないため、印刷層自体を十分平滑にしなければならない。
これまで検討されている平版印刷用光輝性インキの例として、特許文献1にはアルミニウム顔料を用いたオフセット印刷についての記載がある。しかしながら、高い輝度、鏡面性を得るためのアルミニウム顔料の形状やバインダー樹脂の種類に関する記載がない。
また特許文献2〜3には、アルミニウムペーストを含有したオフセット印刷方式用のインキに関する記載がある。しかしながら、記載されている印刷機は版材に樹脂凸版を使用したオフセット方式であり、水と油の反発を利用し画像形成を行う平版印刷方式とは異なる。更に特許文献2〜3には、平版印刷用として使用する樹脂、植物油、溶剤などの記載はあるものの、具体的な種類、添加量は明記されておらず、使用する材料次第では、平版印刷にて使用した場合に汚れによる印刷不良を起こしたり、輝度が発現しなかったりする。
更に特許文献4には真珠光沢顔料を用いたオフセット印刷用インクについて記載されており、その中で、アルミニウム小片についても好適との記載がある。しかしながら前記アルミニウム小片の好適な条件についての記載はなく、また前記条件と、高い輝度、特に鏡面性との相関に関する記載もない。
加えて特許文献5には、アルデヒド、ケトン、アクリル樹脂で被覆した顔料、アルキッド樹脂、有機溶剤を混合して製造した顔料ペーストを、樹脂、添加剤、有機溶剤と混合しインキを得る方法が記載されている。しかしながら、高い光沢、鏡面性を得るために、顔料としてどのようなアルミニウム顔料を用いたらよいかに関しての記載がない。
特表2007−513206号公報 特開2001−146221号公報 特開2002−114934号公報 特開平07−034021号公報 特表2010−523738号公報
本発明の目的は、雑誌、書籍、ポスター等の印刷物に使用され、水と油の反発を利用した印刷メカニズムで印刷される平版印刷用光輝性インキ(以下、単に「インキ」ともいう)であって、従来よりも輝度が高く、鏡面性を有する印刷物が得られる平版印刷用光輝性インキを提供することにある。
本発明者らが誠意研究した結果、アルキッド樹脂、および石油樹脂のうち少なくとも1種類以上の樹脂をバインダー樹脂とするとともに、平均厚さが15〜100nmの偏平状アルミニウム顔料をインキ全量に対し3〜20重量%含む平版印刷用光輝性インキ組成物において、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、アルキッド樹脂をバインダー樹脂としてインキ全量中30〜90重量%含有するとともに、平均厚さが15〜100nmの偏平状アルミニウム顔料をインキ全量に対し3〜20重量%含むことを特徴とする用紙基材用である平版印刷用インキ組成物に関するものである。
さらに、本発明は使用する偏平状アルミニウム顔料の平均粒子径が3〜20μmであることを特徴とする上記の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物に関するものである。
さらに、本発明で使用するアルキッド樹脂の平均分子量が1,000〜120,000であることを特徴とする上記の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物に関するものである。
さらに、本発明で使用されるアルキッド樹脂のインキ中の全樹脂に占める割合が50〜100%であることを特徴とする上記の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物に関するものである。
さらに、本発明はバインダー樹脂としてロジン変性フェノール樹脂を含むことを特徴とする、上記の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物に関するものである。
さらに、本発明で使用される溶剤が植物油、重合植物油、脂肪酸エステル、および非芳香族系石油溶剤から選ばれる1種類以上であることを特徴とする上記の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物に関するものである。
さらに、本発明は上記用紙基材用である平版印刷用インキ組成物を用いて印刷してなる、印刷物の製造方法に関するものである。

本発明によって、雑誌、書籍、ポスター等の印刷物に使用される平版印刷用光輝性インキであって、平版印刷適性を保持しながら、従来よりも輝度が高く、鏡面性を有する印刷物が得られる平版印刷用光輝性インキが得られた。
図1は実施例で用いたアルミニウム顔料4の走査型電子顕微鏡写真(30000倍)である。 図2は実施例で用いたアルミニウム顔料4の走査型電子顕微鏡写真(5000倍)である。
本発明で使用されるアルミニウム顔料は、平均厚さが15〜100nmである偏平状アルミニウム顔料を含むことを特徴とする。なお、前記平均厚さは好ましくは15〜80nm、特に好ましくは15〜50nmである。平均厚さを15nm以上とすることで、用紙基材への密着性が向上し、ブロッキング、後胴残りなどの印刷適性に優れたインキとなる。また、下地の影響、例えば紙繊維による凹凸の影響を受けにくくなり、白味を帯びることなく、輝度が向上し鏡面の様な輝きを有する印刷物が得られる。一方、平均厚さを100nm以下とすると、アルミニウム顔料が紙面上で配向した際、重なり部分の段差が十分小さくなることで、アルミニウム顔料が均一的に配向し、輝度の著しい向上や、鏡面の様な輝きを有する印刷物を得ることができる。
さらに、本発明で使用される偏平状アルミニウム顔料は、平均粒子径が3〜20μmであることが好ましく、より好ましくは3〜15μmであり、更に好ましくは5〜15μmである。平均粒子径を3μm以上とすることで、紙面上で配向した際に粒子感が出ることがないため、光の乱反射を防ぎ輝度を向上できる。一方、20μm以下とすることで、アルミニウム顔料の重なりが好適なものとなり、光の乱反射を防ぐことで、やはり輝度が向上する。また、画像部を均一に隠蔽できるようになり、着肉不良を防ぐことができる。
偏平状アルミニウム顔料の平均厚さや平均粒子径は、走査型電子顕微鏡によって測定することができる。具体的には、平均厚さは図1に示すような顔料粒子の厚みが確認できる走査型電子顕微鏡写真(図1は倍率30000倍。写真は必要に応じて複数枚用いて良い。また、倍率、加速電圧、測定距離などは画像により厚さを測定できる範囲で変更しても良い。)から、顔料の厚みが確認できる部分を100か所抽出し、顔料の厚さを測定し、その値を平均することで求めることができる。また、平均粒子径は図2に示すような顔料粒子全体が確認できる走査型電子顕微鏡写真(図1は倍率5000倍。写真は必要に応じて複数枚用いて良い。また、倍率、加速電圧、測定距離などは画像により厚さを測定できる範囲で変更しても良い。)から、粒子径が確認できる粒子を100個抽出し、顔料の粒子径(計測した粒子の面積に相当する円の直径)を測定し、その値を平均することで求めることができる。
アルミニウム顔料は一般的に、アルミニウム塊(インゴット)を溶融した後フレークまたは固形状で取り出し、更に溶剤中でミル粉砕し、粒径、厚さ及び表面状態を整形することで製造される(粉砕法)。必要に応じて、表面処理を加えた後でミルから取り出し、溶剤中に分散されたアルミニウムペーストが得られる。
一方アルミニウム顔料は、蒸着法によっても製造できる。蒸着法とは、フィルム上に剥離層を均一に塗り、更にその上にアルミニウム層を薄く展開したのち、剥離層を溶かすことで、薄膜状アルミニウム顔料を採取する。得られたアルミニウム顔料を攪拌し、粒径を整える手法である。
本発明に関しては、平均厚さが15〜100nm、かつ平均粒子径が3〜20μmの範囲内であれば、上記どちらの製法で精製された偏平状アルミニウム顔料を用いてもよいが、蒸着法で精製された偏平状アルミニウム顔料の方が、顔料膜厚が均一なために印刷した際の印刷物表面においても均一の薄膜を形成しやすく、輝度が出やすいため好ましく選択される。
またアルミニウム顔料には、印刷層内での分散状態による分類があり、リーフィングタイプやノンリーフィングタイプが知られている。この分類は、表面処理状態の違いによる影響であり、具体的にはリーフィングタイプのものは、ステアリン酸などの高級脂肪酸で表面を処理することで、印刷層表面に浮き出るものである。印刷層表面で配向するため、光沢性を発現しやすい。一方、ノンリーフィングタイプのものは印刷層内で均一に分散されており、リーフィングタイプの様に表面に浮き出るものは少ない。そのため、UV光重合や、マンガン、亜鉛、コバルトといったドライヤーを添加した酸化重合など、乾燥が早いインキを用いた際には輝度が出にくい欠点はあるものの、逆に乾燥が浸透乾燥、熱乾燥など遅いインキに用いれば、問題なく輝度を発現できる。
本発明に使用される偏平状アルミニウム顔料は、何れのタイプも使用可能であるが、リーフィングタイプの方が、輝度の発現が早く、また輝度も高いため好ましい。
本発明に使用される偏平状アルミニウム顔料の添加量は、インキ全量中に3〜20重量%である必要があり、好ましくは3〜15重量%、より好ましくは4〜10重量%である。偏平状アルミニウム顔料の比率を3重量%以上とすることで、画像を均一に覆うに十分な量となり、色の抜け等の画像欠陥がなくなる。また、下地の影響を受けなくなるため、白味を帯びることなく、光沢性に優れる画像が得られる。一方、20重量%以下とすることで、印刷後の基材上で偏平状アルミニウム顔料同士が過度に重なることがなく、均一で乱反射を起こしにくい印刷表面が得られ、結果として輝度が向上し、鏡面の様な輝きがを有する印刷物が得られる。
本発明の平版印刷用光輝性インキでは、バインダー樹脂として、アルキッド樹脂、及び石油樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む。バインダー樹脂として上記の樹脂を用い、かつ、上記で述べた偏平状アルミニウム顔料と併用することで、平版印刷適性を保持しながら従来よりも輝度が高く、鏡面性を有する印刷物が得られる理由は定かではないが、例えば以下の理由が考えられる。すなわち、アルキッド樹脂や石油樹脂は、構造中に芳香環を含み、この芳香環が偏平状アルミニウム顔料の表面に吸着することで、互いの凝集を防ぎ、インキ中でも前記顔料が均一に分散されると考えられる。それによって、印刷後のインキ層内では偏平状アルミニウム顔料が偏ることなく存在し、均一に配向することで優れた光沢性や鏡面性が発現すると考えられる。また均一に分散されることで、インキの粘弾性が平版印刷に好適なものとなり、印刷時のトラブルも抑制できると考えられる。
さらには、アルキッド樹脂や石油樹脂は、分子構造上立体障害が少なくアルミニウムの配向を阻害しない点が考えられる。また、アルキッド樹脂や石油樹脂は平版印刷に必要な乳化適性、ローラー転移性、粘弾性をインキに付与できる点が挙げられる。
本発明の平版印刷用光輝性インキにアルキッド樹脂を用いる場合、その重量平均分子量は1,000〜120,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜30,000であり、更に好ましくは1,000〜10,000である。重量平均分子量が1,000以上であれば、平版印刷用インキに粘度をつけることができ、印刷時に汚れにくなることから、粘度を付与させるための増粘剤の添加を抑制できる。一般に、増粘剤を過剰添加すると、印刷紙面上の入射光と反射光の間で屈折を起こし易くなり光沢が低下する原因となるが、本発明では、重量平均分子量を1,000以上とすることで、前記光沢の低下を抑制できる。また、120,000以下とすることで、アルミニウム顔料の配向阻害が起こらず、鏡面的な輝きが発現するとともに、印刷面のザラツキが防止できる。
一方、本発明の平版印刷用光輝性インキに石油樹脂を用いる場合、上記アルキッド樹脂の場合と同様の理由により、その重量平均分子量は500〜5,000であることが好ましく、より好ましくは800〜3,000であり、更に好ましくは800〜2,000である。なお、アルキッド樹脂と好適な重量平均分子量範囲が異なるのは、分子構造の違いにより反応性が異なるためである。
なお、上記重量平均分子量は、公知の方法、例えばゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定できる。
本発明では、上記2種類の樹脂を単独で用いても良いし、併用しても良い。しかし、アルミニウム顔料の分散安定性と配向のしやすさの点から、少なくともアルキッド樹脂を含むことがより好ましい。その場合、本発明において使用されるアルキッド樹脂の添加量は、インキ全量中30〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは50〜80重量%である。添加量が30重量%以上であれば、アルミニウム顔料の配向を阻害する材料や光を乱反射する材料の添加量が抑えられ、輝度の低下を防止できる。また90重量%以下であれば、顔料比率の低下による輝度、濃度低下、インキの軟調化及び過乳化を引き起こすことがなくなり、輝度の向上に加え、印刷適性も保持したインキを得ることができるため好ましい。
またアルキッド樹脂を含む場合、インキ中の全樹脂量に対する配合量の比は50〜100重量%であることが好ましい。50重量%以上とすることで、樹脂構造が複雑な石油樹脂や、ロジン変性フェノール樹脂等の樹脂の比率を減らし、アルミニウム顔料の配向を好適なものとすることができ、結果として鏡面的な輝きの発現や、印刷面のザラツキ低減が可能となる。
本発明の平版印刷用光輝性インキ組成物は、必要に応じてロジン変性フェノール樹脂を併用することができる。その際、ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量は5,000〜20,0000であることが好ましい。5,000以上とすることで、粘弾性付与の効果が大きく画像欠陥を防止でき、200,000以下とすることでアルミニウム顔料の配向を阻害することなく、輝度が高く鏡面性を有する画像が得られる。
本発明のインキに用いられる溶剤は従来公知のものを任意に用いることができるが、上記バインダー樹脂との相溶性やインキの粘弾性、乾燥性を好適なものとする観点から、植物油、重合植物油、脂肪酸エステル、および非芳香族系石油溶剤から選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。なおこれらの材料は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
なお上記「植物油」とは、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応物であるトリグリセライド、エステル交換反応により生成されたモノグリセライド、ジグリセライドを表す。なお、前期脂肪酸は飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でも良い。
本発明で使用される植物油として代表的なものは、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。特に大豆油、ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、キリ油が好ましい。
本発明において使用される「重合植物油」とは、例えば上記に列挙した1種類以上の植物油を、酸素を吹き込みながら加熱・攪拌し、重合することにより得られる。ただし、このときの重合反応は熱重合でもよく、酸化重合が必須であるわけではない。重合植物油の製造に用いる植物油としては特に、大豆油、ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、キリ油が好ましい。
本発明において使用される「脂肪酸エステル」の例としては、上記に列挙した1種類以上の植物油、例えば大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油、ナタネ油等から製造される植物油エステルが挙げられる。その他の例としては脂肪酸モノアルキルエステル化合物が挙げられる。このうちモノエステルを構成する脂肪酸としては炭素数16〜20の飽和または不飽和脂肪酸が好ましく、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が例示できる。また脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成する、アルコール由来のアルキル基としては炭素数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が例示できる。これらアルコールは、単独で、または2種以上を組合わせて使用できる。
本発明で使用できる「非芳香族系石油溶剤」としては、パラフィン系、ナフテン系、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。また非芳香族系石油溶剤の市販品の例として、JXエネルギー社製AF5、AF6などがある。なお、混入している芳香族炭化水素の含有量が、前記非芳香族系石油溶剤全量中1重量%以下であることが好ましい。
また本発明で非芳香族系石油溶剤を用いる場合、そのアニリン点は60〜130℃であることが好ましい。アニリン点を130℃以下とすることで、インキ中のバインダー樹脂の溶解性に優れ、インキの流動性を十分確保できるため、レベリングが向上し光沢に優れる印刷物が得られる。また、60℃以上とすることで、乾燥時にインキ層からの溶剤の離脱性が良化し、乾燥性に優れたインキとなる。
また本発明の平版印刷用光輝性インキ組成物は、エーテル類を併用することもできる。代表的なものは、ジ−n−オクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジへプチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジデシルエーテル、ノニルへキシルエーテル、ノニルヘプチルエーテル、ノニルオクチルエーテル等が挙げられる。
更に本発明の平版印刷用光輝性インキ組成物には、必要に応じて金属ドライヤーを添加することができる。金属ドライヤーとしては、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛錯体などが挙げられる。
更に本発明の平版印刷用光輝性インキ組成物には、必要に応じて増粘剤を添加することができる。増粘剤としては、カルボン酸系共重合体、特開2013−213112記載のゲル状脂肪酸グリセリド、及びイソブテン、ノルマルブテンからなる長鎖状炭化水素共重合体などが挙げられる。
更に本発明の平版印刷用光輝性インキ組成物には、必要に応じてゲル化剤、顔料分散剤、乾燥抑制剤、酸化防止剤、耐摩擦向上剤、裏移り防止剤、非イオン系界面活性剤、多価アルコールなどの添加剤を適宜使用することができる。
本発明にて用いる基材は、平版印刷方式にて印刷される用紙基材であれば、塗工紙、微塗工紙、非塗工紙など何でも良いが、用紙表面が平滑な塗工紙のほうが輝度が発現しやすく好ましい。
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に何等限定されるものではない。尚、本発明において「部」「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「重量部」「重量%」を意味する。
<アルミニウム顔料の粒子径・厚さの測定条件>
アルミニウム顔料の粒子径及び厚さは 日本電子(株)製走査型電子顕微鏡(JSM−6390LA)を用い、前述した方法にて計測した。
<重量平均分子量の測定条件>
重量平均分子量測定には、東ソー(株)製ゲルパーメーションクロマトグラフィー(商品名 HLC−8020)および東ソー(株)製カラム(商品名 TSK−GEL)を用いた。
<粘度の測定条件>
樹脂、ワニス及びインキの粘度は、Thermo ELECTRON CORPORATION社製「HAAKE Rheostress600」を用い、25℃、シェアレート117/sの条件で測定した。
<光沢度の測定条件>
村上色彩技術研究所製デジタル光沢計GM−26Dを用い、下記の条件にて20°光沢度を測定した。
測定面積:約3×3mm
測定窓面積:直径10mm
光源ランプ:ハロゲンランプ(12V、50W)
なお、上記光沢度が高い程、鏡面性が高いことを示し、特に100以上の物は極めて高い鏡面性を有することを示す。
<アルキッド樹脂1製造例>
大豆白絞油 300部、無水フタル酸 50部を仕込み、280℃で2時間撹拌後、ペンタエリスリトール 30部、キシレン 100部を添加し200℃で3時間撹拌した。その後、250℃に昇温し更に3時間撹拌することで、重量平均分子量 5,000、酸価14.0、粘度10.7Pasのアルキッド樹脂1を得た。
<アルキッド樹脂2製造例>
大豆白絞油 220部、無水フタル酸80部を仕込み280℃で2時間撹拌後、ペンタエリスリトール 30部、パラトルエンスルホン酸0.02部、キシレン100部を添加し200℃で3時間撹拌した。その後、250℃に昇温し更に7時間撹拌することで、重量平均分子量 100,000、酸価19.4 、粘度 669.0Pasのアルキッド樹脂2を得た。
<アルキッド樹脂3製造例>
大豆白絞油200部、無水フタル酸100部を仕込み280℃で2時間撹拌後、ペンタエリスリトール 30部、パラトルエンスルホン酸0.02部、キシレン100部を添加し200℃で3時間撹拌した。その後、250℃に昇温し更に10時間撹拌することで、重量平均分子量 150,000、酸価9.6 、粘度 820.0Pasのアルキッド樹脂3を得た。
<アルキッド樹脂4製造例>
大豆白絞油 400部、無水フタル酸 20部を仕込み280℃で2時間撹拌後、ペンタエリスリトール 30部、キシレン 100部を添加し200℃で3時間撹拌した。その後、250℃に昇温し更に30分撹拌することで、重量平均分子量 700、酸価8.8 、粘度 6.0Pasのアルキッド樹脂4を得た。
<石油樹脂ワニス1製造例>
石油樹脂(JXエネルギー製 ニッセキネオポリマー120、重量平均分子量1500)40部、大豆油60部を仕込み、140℃に昇温させ、同温で30分間攪拌した後放冷し、石油樹脂ワニス1を得た。
<石油樹脂ワニス2製造例>
石油樹脂(JXエネルギー製 ニッセキネオポリマー160、重量平均分子量3500)20部と石油樹脂(JXエネルギー製 ニッセキネオポリマー130、重量平均分子量1800)20部と大豆油60部を仕込み、160℃に昇温させ、同温で60分間攪拌した後放冷し、石油樹脂ワニス2を得た。
<ロジン変性フェノール樹脂ワニス1製造例>
特開平09−24976記載の製法で合成した重量平均分子量130,000、酸価 24.3であるロジン変性フェノール樹脂 38部、大豆油30部、非芳香族系溶剤であるAFソルベント5号(新日本石油株式会社製、アニリン点88.2度)31部を仕込み、180℃に昇温させ、同温で30分間攪拌した後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1.0部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み190℃で30分間攪拌してロジン変性フェノール樹脂ワニス1を得た。
<ロジン変性フェノール樹脂ワニス2製造例>
特開2016−155907記載の製法で合成した重量平均分子量10,000、酸価 23.6であるロジン変性フェノール樹脂44部、大豆油29部、非芳香族系溶剤であるAFソルベント5号(新日本石油株式会社製、アニリン点88.2度)26部を仕込み、190℃に昇温させ、同温で30分間攪拌した後放冷し、ゲル化剤としてエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド1.0部(川研ファインケミカル(株)製ALCH)を仕込み190℃で30分間攪拌してロジン変性フェノール樹脂ワニス2を得た。
<インキ製造例>
表1記載のアルミニウム顔料、アルキッド樹脂、石油樹脂ワニス、ロジン変性フェノール樹脂ワニスを、表2〜3の配合比で、ミキサーで混合・撹拌しながら投入し、撹拌したまま80℃まで昇温した。120分撹拌を続けたのち、30℃に冷却し、更に、金属ドライヤー(東洋インキ(株)製MKドライヤー)を2.0部、耐摩擦コンパウンド(東洋インキ(株)製 ニュー耐摩擦コンパウンド)を1.0部、乳化抑制剤としてイソトリデカノールを表2〜3の配合比でミキサーで攪拌した。その後、増粘剤(JXエネルギー製 ポリブテンHV−1900)、重合植物油、キリ油を用い、インキの粘度を30.0Pas〜40.0Pasに調整することで、実施例1〜30、比較例1〜11のインキを得た。
表1
表2
表3
<評価内容>
実施例1〜32、比較例1〜11のインキをそれぞれ、下記印刷条件の下、単色ベタと網点(1〜100%の10%刻み)が入った絵柄にて印刷を行い、
・鏡面光沢、印刷面のザラツキ
・汚れ耐性、
・紙面の着肉性、ガサツキ
について確認、評価した。
<印刷条件>
印刷機 :LITHRONE26 ((株)小森コーポレーション)
用紙 :ミラーコート・プラチナ(127.9g/m2)(王子製紙(株))
湿し水 :アクワユニティC 2.0%水道水希釈液 (東洋インキ(株))
印刷速度:6000枚/時
版 :SUPERIA XP−F(富士フィルム(株))
印刷部数:2000枚
ベタ部印刷直後濃度:0.45±0.03
測定条件:X−Rite社 分光濃度計eXact
(D50、2度視野、ISO Status E、絶対白色基準)
<鏡面光沢の評価方法>
上記印刷物のベタ部について、上記方法で測定した光沢値と、目視で確認した印刷表面のザラツキで、鏡面光沢を評価した。評価基準は以下の通りとし、△以上が実用範囲である。
◎:測定光沢値 ≧100、且つ、印刷表面にザラツキがなかった
〇:測定光沢値 ≧100、且つ、印刷表面に若干のザラツキが見られた
△:測定光沢値 ≧70〜99、且つ、印刷表面に若干のザラツキが見られた。
×:測定光沢値 ≦69以下、且つ/若しくは、印刷表面のザラツキが酷かった。
<汚れ耐性の評価方法>
上記印刷条件で、湿し水の水量値を20から200部毎に下げていき、目視で印刷物上に汚れが見られたときの水量値を確認することで、汚れ耐性を評価した。評価基準は以下の通りとし、△以上が実用範囲である。
◎:水量値が10でも汚れが発生しなかった
〇:水量値が10〜12において汚れが発生した
△:水量値が13〜15において汚れが発生した
×:水量値が16以上でも汚れが発生した
<着肉性の評価方法>
上記印刷条件で印刷を行い、パイリングや白抜けの有無を確認することで、着肉性の評価を行った。評価基準は以下の通りとし、△以上が実用範囲である。
◎:パイリング、白抜けなどはなく着肉性は良好であった
〇:若干パイリングが見られたが、着肉性は許容範囲内であった。
△:若干白抜けが見られたが、着肉性は許容範囲内であった。
×:パイリング、白抜けが目立ち、着肉性不良であった。
表2〜3の結果より、アルミニウム顔料と、バインダー樹脂と、溶剤とを含む平版印刷用インキ組成物であって、前記バインダー樹脂が、アルキッド樹脂、及び石油樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含み、前記アルミニウム顔料が、平均厚さが15〜100nmである偏平状アルミニウム顔料を、インキ全量に対し3〜20重量%含む平版印刷用インキ組成物は、光輝性、平版印刷適性のいずれにおいても良好な結果であった。

Claims (7)

  1. アルミニウム顔料と、バインダー樹脂と、溶剤とを含む用紙基材用である平版印刷用インキ組成物であって、
    前記バインダー樹脂が、アルキッド樹脂を、インキ全量中30〜90重量%含有し、
    前記アルミニウム顔料が、平均厚さが15〜100nmである偏平状アルミニウム顔料を、インキ全量に対し3〜20重量%含むことを特徴とする、平版印刷用インキ組成物。
  2. 前記偏平状アルミニウム顔料の平均粒子径が、3〜20μmであることを特徴とする、請求項1記載の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物。
  3. 前記アルキッド樹脂の重量平均分子量が1,000〜120,000である、請求項1または2記載の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物。
  4. 前記バインダー樹脂が、アルキッド樹脂を、平版印刷用インキ組成物に含まれる樹脂全量中50〜100重量%含むことを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物。
  5. 前記バインダー樹脂が、更にロジン変性フェノール樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物。
  6. 前記溶剤が、植物油、重合植物油、脂肪酸エステル、および非芳香族系石油溶剤から選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする、請求項1〜5いずれか記載の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物。
  7. 請求項1〜6いずれか記載の用紙基材用である平版印刷用インキ組成物を用いて印刷してなる、印刷物の製造方法。
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