JP2015199782A - 鏡面光沢を有する印刷物を形成する印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ノンリーフィングタイプのアルミニウム粉を用いて、印刷側からみて鏡面光輝性の印刷物を形成する。【解決手段】アルミニウム箔粉とイソシアネート化合物とイソシアネート化合物を溶解する希釈溶剤からなる印刷インキであって、アルミニウム箔粉100重量部に対してイソシアネート化合物が50重量部〜150重量部である印刷インキを、該印刷インキの希釈溶剤が浸み込み、かつ、希釈溶剤によりその表面が侵されない樹脂からなる基材表面に印刷することにより鏡面光輝性を有する印刷物を形成する。【選択図】なし
Description
本発明は、鏡面光沢を有する印刷物を形成する印刷方法およびこれにより得られた鏡面光沢を有する印刷物に関する。
従来、金属鏡面光沢調の加飾は、例えば、ホビー用品(釣竿、プラモデル等)、スポーツ用品(テニスラケット、バドミントンラケット、スキー及びスノボ用品、自転車等)、オートバイ、自動車、船舶、家電製品、装飾品、美術工芸品、時計やメガネなどの装身具など幅広い分野で利用されている。金属鏡面光沢調の加飾を基材に施す方法としては、蒸着法、印刷法、箔押し法などが知られている。蒸着法や箔押し法では、鏡面加飾を行うことはできるものの、蒸着法では、金属蒸着のため真空機器を使用しなければならず、また蒸着時のマスキングあるいは蒸着後のエッチングを行うなど、手間とコストがかかる。また、箔押しによる方法も手間とコストがかかる。これに対し、印刷法は量産性に優れ、蒸着法、箔押し法に比べると加飾のための費用を大幅に低減できる。
印刷により金属光沢調の加飾を施す方法においては、顔料としてアルミニウム粉などの金属粉を用いた印刷インキを用いて印刷が行われている。しかし、単に金属粉を含むインキを用いて印刷しても、印刷物は銀白色のメタリックな外観を呈するだけで、鏡面光沢を有するものは形成できない。金属粉を含有する印刷インキにより鏡面加飾を行う方法としては、ステアリン酸に代表される脂肪酸が被覆されたリーフィングタイプの鱗片状のアルミニウム粉を含むインキを用いる方法が知られている。このインキを用いて印刷が行われると、印刷されたインキ層中においてアルミニウム粉は脂肪酸処理による表面張力によりインキ表面に浮上、平行配列し、光輝性を有する印刷物が得られる。しかし、この印刷インキを用いる印刷で得られる鏡面状光輝印刷物の表面は凹凸が激しいため、メタリック的であるのが実情である。またこの印刷インキを用いた場合、アルミニウム粉が脂肪酸処理されているため、アルミニウム粉のバインダー樹脂との親和性、鏡面印刷物上に塗装されるクリヤーコートとの密着性に劣るという問題がある。さらに、クリヤーコートを行った場合あるいは鏡面インキ上に更に印刷が行われた場合、クリヤーコート層を形成する塗液あるいはインキの溶剤が鏡面印刷インキを溶解するような溶剤であると、アルミニウム粉の並びが乱れて鏡面調が消失するという問題もある。
鏡面状光輝印刷法の他の方法として、粒子径5〜20μmのアルミニウム粉末が90%以上含まれているアルミニウム粉末と透明樹脂からなる結合剤との割合が重量比で50:10〜10:30であって、希釈溶剤が前記アルミニウム粉末と前記結合剤の合計重量に対し5〜15倍であるインキを用いて印刷する方法も提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、実際にこのようなインキを使用して印刷を行っても、印刷側から見て高度な鏡面光沢を備えた印刷物を得ることは難しい。
さらに、鱗片状あるいはアルミニウム箔を粉砕した非常に薄く微小なアルミニウム粉末を配合した印刷インキを、透明基材、例えばフィルムまたは板のような平滑な基材面に印刷する方法も知られており(特許文献2および3参照)、この方法に用いられる印刷インキも鏡面インキとして上市されている。この印刷方法によれば、アルミニウム粉末が基材表面に沿って並ぶことにより、印刷側と反対側からインキが印刷されたフィルムあるいは板を通して見ると鏡面調に見える。しかし、この鏡面インキは、印刷側から見た場合は、鏡面光沢を有していないし、さらにこの方法においては印刷面が平滑性を有することが必要であり、使用フィルム、板はPET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、アクリル樹脂等に限られるという問題も有している。また、フィルムあるいは板を通して鏡面光沢を備えた印刷物を見るようにすることが必要であることから、印刷物が用いられる分野やその使用態様が限定されるという問題もある。
本発明は上記したような事情に基づいてなされたものであり、リーフィングタイプのアルミニウム粉を用いた場合の問題点であるインキ表面の平滑性の問題、鏡面印刷後に更に印刷やクリヤーコートがなされる際のインキや塗膜との密着性や鏡面消失の問題がなく、また、従来の鏡面インキのように印刷側と反対側から透明フィルムなどを通して見る必要が無く、印刷物の印刷側から見た場合に優れた鏡面光輝性を有する印刷物を形成することのできる印刷方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、印刷対象物表面が平滑でなくとも優れた鏡面光輝性を有する印刷物を形成することのできる印刷方法を提供することをも目的とするものである。
また、本発明は、上記印刷方法によって得られた優れた光輝性を有する鏡面印刷物を提供することをも目的とするものである。
本発明は、以下の印刷方法およびこの印刷方法によって得られた鏡面光輝性を有する印刷物に関する。
(1)アルミニウム箔粉とイソシアネート化合物とイソシアネート化合物を溶解する希釈溶剤からなる印刷インキであって、アルミニウム箔粉100重量部に対してイソシアネート化合物が50重量部〜150重量部である印刷インキを、該印刷インキの希釈溶剤が浸み込み、かつ、希釈溶剤によりその表面が侵されない樹脂からなる基材表面に印刷することにより鏡面光輝性を有する印刷物を形成することを特徴とする印刷方法。
(2)前記基材がポリウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、繊維素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする、上記(1)に記載の印刷方法。
(3)前記希釈溶剤が、沸点が100〜220℃の有機溶剤であり、基材を短時間では溶解せず、膨潤させる程度の、溶解性の低い溶剤であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の印刷方法。
(4)アルミニウム箔粉は、平均粒径が13μm以下であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の印刷方法。
(5)アルミニウム箔粉100重量部に対して希釈溶剤が120重量部〜390重量部であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の印刷方法。
(6)前記基材が、基体上に下地層として設けられたものであることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の印刷方法。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の印刷方法により形成された印刷物。
本発明の印刷方法により、印刷側から見た場合に鏡面光沢を有する印刷物が得られ、インキは基材との密着性に優れるとともに、鏡面インキ上にクリヤーコートや新たな印刷が施された場合にも、リーフィングタイプのアルミニウム箔粉を用いたインキの場合のようなクリヤーコートなどとの密着性の問題、鏡面光沢の消失の問題の無い印刷物を得ることができる。また、従来の鏡面インキを用いた印刷技術では、鏡面光沢を有する印刷物を得るには印刷面が平滑であることが必要とされ、印刷可能な基材がポリカーボネート、PET、アクリル樹脂等に限定されていたが、本発明においては必要に応じ下地層を設けることによりどのような材質のものにも鏡面光輝印刷が可能となると共に、下地層が設けられてよいことから、印刷対象物の表面が従来のように平滑でなくとも鏡面光輝印刷が可能である。このため、従来の印刷技術では鏡面加飾を施す事が不可能であった、塩ビ、ウレタン、オレフィン系のフィルムにも鏡面加飾を行うことが可能である。さらに、従来の鏡面インキを用いた印刷による場合は、鏡面光輝性を有する印刷物は透明フィルムなどを通してのみ見ることが可能となることから、印刷物の利用分野、使用態様が限られていたが、本発明の方法により、より幅広い物品に鏡面光輝印刷を行うことができ、より幅広い分野、幅広い使用態様の印刷物を得ることができる。
以下、本発明の鏡面光輝性を有する印刷物を形成する印刷方法について、更に詳細に説明する。
本発明の印刷方法においては、印刷インキとして、アルミニウム箔粉とイソシアネート化合物とイソシアネート化合物を溶解することのできる希釈溶剤からなる印刷インキが用いられる。本発明の印刷インキに用いられるアルミニウム箔粉は、非常に薄く微小なアルミニウム粉末からなるもので、ノンリーフィングタイプであり、好ましくは、厚さ(平均厚さ)が0.8μm以下、より好ましくは0.5μm以下、平均粒径(平均長径)は好ましくは13μm以下、より好ましくは12μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。箔粉の大きさが大きくなると、印刷後のインキ層中で沈降し易くなり、アルミ箔粉が鏡面状に並ばないまま溶剤が揮発してしまい鏡面調の外観が得られ難くなり、またスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの印刷において、筋や印刷むらを生じ易くなる。なお、平均粒径の下限値は特にはないが、平均粒径4μm以下のものは製造することが難しいのが現状である。アルミニウム箔粉の平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定して得られたものである。アルミニウム箔粉の製法としては、アルミニウム地金を展延しながら粉砕加工したもの、アルミニウムを薄いフィルムに蒸着し、粉末にしたもの、輝度の高い箔を極めて精密に粉砕したものものなど従来種々の製法が知られている。本発明において用いられる鏡面インキでは、これら何れの製法によったものであってもよいが、箔を砕いて作製したものが好ましいものである。また、箔粉は爆発の恐れもあることから、通常酢酸ブチルなどの有機溶剤中に分散されたペーストとして用いられる。ペーストに用いられる溶剤は、インキの希釈溶剤としても働くため、後述の希釈溶剤と同様の特性を有するものであることが好ましく、溶剤の具体例としては、後述の希釈溶剤で具体的に挙げられているものが好ましいものとして挙げられる。
一方、イソシアネート化合物は、単体でも空気中の水分と反応し重合硬化することから、印刷されたのちインキ層は乾燥により重合硬化し、これによりアルミニウム箔粉相互間並びにアルミニウム箔粉と基材とが強固に固定される。従来、印刷インキには、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、エポキン樹脂などのバインダー樹脂が用いられ、インキの乾燥によりバインダー樹脂により着色顔料などが固定されると共にインキ層と基材との密着性が図られていた。このとき、ノンリーフィングタイプの金属粉末を着色剤として用いた場合、印刷面側から見て鏡面光輝性を有する印刷物は得られない。本発明においては、従来用いられていたバインダー樹脂に替えてイソシアネート化合物を用いることにより初めて金属光沢を有する印刷物が得られるもので、後記するように、イソシアネート化合物に替えて従来用いられているバインダー樹脂を用いたのでは、本発明の鏡面光沢を有する印刷物を作製することはできない。これは、バインダー樹脂を用いたのではインキ層中でのアルミニウム箔粉の移動が制約され、印刷後にアルミニウム箔粉の移動によりアルミニウム箔粉が印刷面に平行に並ぶことができないと考えられる。一方、イソシアネート化合物が用いられる場合には、イソシアネート化合物自体はインキ層中でのアルミニウム箔粉の移動に影響を与えず、アルミニウム箔粉が整列した後にイソシアネートが反応して重合硬化し、配列した状態でアルミニウム箔粉が固定されることによるものと考えられる。
本発明において用いられるイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物であれば特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびトリメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートおよびビフェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、これらのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、またはこれらイソシアネートにより形成されたイソシアヌレート環を有する3量体、多官能イソシアネート樹脂等が挙げられる。
前記した通り、従来印刷インキのバインダー樹脂として用いられているアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ブチラール樹脂、繊維素系樹脂等の樹脂をイソシアネート化合物の全てに替えて用いることはできないが、本発明の効果が得られる範囲、例えばイソシアネート化合物と同部数以下であれば、これらバインダー樹脂を添加することは可能である。しかし、イソシアネート化合物のみからなることが好ましい。
イソシアネート化合物は、上記アルミニウム箔粉100重量部に対して固形分比で50重量部〜150重量部、好ましくは75重量部〜125重量部の量で用いられる。
また、希釈溶剤は、インキを印刷可能な粘度に調整するために用いられるものであり、従来印刷インキの希釈溶剤として用いられているものの中から、イソシアネート化合物を溶解することのできるものを任意に選択することができる。また、溶剤の揮発性はそれほど高くないもの、例えば、沸点が100℃〜220℃の有機溶剤が好ましい。使用量も任意でよいが、アルミニウム箔粉の10%溶剤ペースト100重量部に対して、通常30重量部〜300重量部、好ましくは50重量部〜100重量部の量で用いられる。アルミニウム箔粉ペーストに含まれる溶剤をも考慮すると、アルミニウム箔粉100重量部に対し120重量部〜390重量部、好ましくは140重量部〜190重量部である。
イソシアネート化合物を溶解することのできる希釈溶剤としては、基材(基体あるいは下地層)を破壊することなく浸み込むものであることが必要である。また、揮発性などをも考慮すると、例えば、シクロヘキサノン(アノン)(沸点:155.6℃)、イソホロン(沸点:215℃)、メチルイソブチルケトン(沸点:116℃)、シクロヘキサノール(沸点:161℃)、キシロール(沸点:144℃)、酢酸ブチル(沸点:126℃)、ソルベッソ150(芳香族系炭化水素:東燃ゼネラル石油)(初留点:184℃)、ソルベッソ100(芳香族系炭化水素:東燃ゼネラル石油)(初留点:162℃)、等が好ましいものとして挙げられる。
また、本発明で用いられる印刷インキには、添加剤として従来印刷インキにおいて用いられる消泡剤、表面調整剤等を適宜添加することができる。
このようにして調整された印刷インキにおいて、インキの粘度は適用される印刷方法により異なるものの、通常、25℃におけるフォードカップ#4による測定で35〜150秒であることが好ましい。印刷インキの粘度が低すぎると印刷を行うことができず、一方高すぎるとアルミニウム箔粉の移動、配列が妨げられ、鏡面光輝となりにくくなる。また、印刷方法としては、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、グラビア印刷など任意の方法を採用することができるが、アルミニウム箔粉が基材表面に並ぶようにするためには、厚膜印刷であることが好ましいことから、スクリーン印刷方法が好ましい。
一方、印刷される基材としては、前記希釈溶剤が浸み込む樹脂であり、かつその表面が侵されない樹脂であることが必要である。このような樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、繊維素系樹脂等が挙げられる。基材は印刷対象物品であっても、当該物品(基体)の表面に形成された下地層であってもよい。下地層は、インキ層、コーティング層またはコーティングフィルム層、貼り合わせフィルム層であってよい。基材表面は製膜性があり柔軟な性質を持つ樹脂であることが好ましい。このため、例えば上記樹脂の層またはフィルム、好ましくはウレタン系の樹脂の層あるいはフィルムを、印刷対象となる物品表面に印刷、コーティングなどの方法により形成した下地層であることが好ましい。印刷対象となる物品材質が上記特性を有さない、すなわち希釈溶剤が浸み込まないか、あるいは希釈溶剤によりその表面が侵されるような樹脂である場合には、物品表面に印刷、コーティング、貼り合わせなどにより下地層が形成される。本発明において、下地層が形成された場合には、この下地層が基材となる。また、印刷が施される基材の表面は、必ずしも従来の鏡面インキを用いて印刷する場合のように鏡面状である必要はない。このように、本発明の方法によれば、任意の材質、表面状態の物品に鏡面光輝印刷を行うことができる。
下地層を形成する方法としては、簡便に下地層を形成することができることから、上記樹脂を溶剤に溶解したインキあるいはコーティング組成物を印刷あるいはコーティングして形成する方法が好ましい方法として挙げられる。前記下地形成用インキあるいはコーティング組成物には、下地層と印刷される鏡面光輝印刷インキとの密着性を上げるために、下地層に架橋剤としてイソシアネート化合物が添加されてもよい。添加する場合は、上記下地を形成するためのインキあるいはコーティング組成物に、樹脂100重量部に対してイソシアネート化合物を固形分比で5重量部〜50重量部、好ましくは10〜30重量部用いることが望ましい。使用されるイソシアネート化合物は、上記鏡面印刷用インキにおいて例示されたものと同様のもの、より好ましくは適用される鏡面形成用インキで用いられるイソシアネート化合物と同じものを用いることが望ましい。また、下地層形成用インキあるいはコーティング組成物には、消泡剤、表面調整剤等の添加剤が適宜添加されてもよい。印刷インキまたはコーティング組成物の印刷適性あるいは塗布特性を調整するための溶剤または希釈溶剤は、含まれる樹脂の溶解性を考慮して、従来印刷インキまたはコーティング組成物に用いられている希釈溶剤から任意のものを使用することが可能である。
本発明の鏡面光沢を有する印刷物が得られる効果は、インキ溶剤が浸み込まない樹脂基材に対しては見られないことからすると、インキ溶剤が基材に浸み込む際にアルミニウム箔粉が基材表層に平行に並び、鏡面調の外観が得られるものと考えられる。このことから、インキ溶剤が基材に浸み込むことは本発明の効果を得るに必須のことである。基材への浸み込みの程度及び基材の溶解性の試験、これとの関連での基材の使用可能可否は以下のように判断される。
<基材への希釈溶剤の浸み込みの程度及び基材の溶解性試験並びに基材使用可否判定方法>
樹脂を0.3μm厚に製膜して試験サンプルを作製し、このサンプルを50mm角で切り出し、サンプル中央部分にシリンジで計り取った希釈溶剤(例えば、アノン)0.2mlを滴下する。滴下10秒後に乾いた布で希釈溶剤を拭き取り、希釈溶剤滴下跡の面の状態を目視により観察した。また、滴下跡の面の状態に関連して基材として使用可能かどうかの可否判断を、表1の使用可否判断基準に従って判断した。
樹脂を0.3μm厚に製膜して試験サンプルを作製し、このサンプルを50mm角で切り出し、サンプル中央部分にシリンジで計り取った希釈溶剤(例えば、アノン)0.2mlを滴下する。滴下10秒後に乾いた布で希釈溶剤を拭き取り、希釈溶剤滴下跡の面の状態を目視により観察した。また、滴下跡の面の状態に関連して基材として使用可能かどうかの可否判断を、表1の使用可否判断基準に従って判断した。
本発明において基材(基体材料あるいは下地層)として好ましいものとして例示されたポリウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、繊維素系樹脂等は、アノンに対していずれも上記表1の「滴下跡は残るが溶解しない」との条件に適合するものであった。一方、アクリル樹脂は溶解し、一方ポリエチレンテレフタレート(PET)は「滴下跡が残らず溶解しない」ものであり、「滴下跡は残るが溶解しない」との条件に適合しないものであった。このように、「印刷インキの希釈溶剤が浸み込み、かつ、希釈溶剤によりその表面が侵されない」とは、上記試験法により「滴下跡は残るが溶解しない」との特性を有するものであり、また、本発明において、「短時間で溶解しない」とは10秒程度の接触によっては溶解しないものであり、またこれとともに、樹脂を膨潤させることのできる溶剤を「溶解性が低い溶剤」という。
本発明の印刷用インキを用いて基材の印刷を行った後、インキの乾燥が行われる。乾燥条件は、印刷インキで用いられているイソシアネート化合物や希釈溶剤の種類などによって異なるものの、一般的には80℃、30分程度とすることが好ましい。
インキ乾燥後、必要であれば、さらに通常のインキを用いての印刷あるいはクリヤーコートが行われてもよい。基材上に通常の印刷インキにより印刷がなされている場合、該印刷面が本発明の要件を満たす場合には、この印刷面上に本発明の印刷インキを用いて鏡面印刷を行うことも可能であるし、本発明の要件を満たさない場合には、上記下地層を形成し、この下地層上に本発明の印刷方法により鏡面光輝印刷が行われてもよい。
一方、本発明の印刷方法により形成された鏡面インキ層上に必要に応じ設けられるクリヤー層を形成する材料としては、公知の市販されている紫外線硬化型透明クリヤーなど任意のものを使用することができる。紫外線硬化型クリヤーインキとしては、ポリエステルアクリル系、ウレタンアクリル系、エポキシアクリル系のアクリル変性樹脂やエポキシ樹脂系などのクリヤーインキが知られており、これらの中から選択されればよい。市販の紫外線硬化型透明クリヤーとしては、例えば商品名:UVSPS5300(帝国インキ製造製)、UV 5410(セイコーアドバンス製)などが挙げられる。これら紫外線硬化型透明クリヤーは、通常、重合性モノマーあるいはオリゴマー、バインダーとなる樹脂あるいはオリゴマー、光重合開始剤、必要に応じ添加された添加剤とからなっている。また上記されたと同様の性能を示す組成物、例えば重合性ウレタンオリゴマー100重量部と重合性アクリルモノマー0〜35重量部との混合物に、光重合開始剤0.1〜10重量部を添加した組成物に、印刷、例えばスクリーン印刷などで通常使用される補助的添加剤である消泡剤、レベリング剤、増粘剤、紫外線吸収剤、充填剤、粘度調整用有機溶剤などを添加したものを使用することができる
クリヤーコートは、例えば、印刷、好ましくはスクリーン印刷にて行われ、メタルハライドランプによって紫外線を照射して硬化させることで積層することができる。
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例、比較例により何ら限定されるものではない。なお、箔粉の厚さ、粒子径は、特に断りがない限り、平均厚さ、平均粒径である。
実施例1
厚さ0.3μm、粒子径8μmのノンリーフィングタイプアルミニウム箔粉が酢酸ブチル中に固形分10%で分散されているアルミニウムペースト100重量部に、イソホロンジイソシアネートに基づく脂環式ポリイソシアネート(VESTANAT T1890;エボニック・テグサ・ジャパン)を10重量部、希釈剤としてシクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部とを配合して鏡面インキAを作製した。
厚さ0.3μm、粒子径8μmのノンリーフィングタイプアルミニウム箔粉が酢酸ブチル中に固形分10%で分散されているアルミニウムペースト100重量部に、イソホロンジイソシアネートに基づく脂環式ポリイソシアネート(VESTANAT T1890;エボニック・テグサ・ジャパン)を10重量部、希釈剤としてシクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部とを配合して鏡面インキAを作製した。
透明塩化ビニルフィルム粘着シートに、ウレタン樹脂:ニッポラン5196(日本ポリウレタン)100重量部、イソシアネート:VESTANAT T1890(エボニック・テグサ・ジャパン)1重量部、消泡剤:BYK053(ビックケミー・ジャパン)1重量部、希釈剤:キシロール200重量部からなる組成物をシルクスクリーン印刷により100メッシュで印刷し、40℃で一時間乾燥し下地層を形成した。得られた下地層について、先に示した<基材への希釈溶剤の浸み込みの程度及び基材の溶解性試験法>に従い、鏡面インキAの希釈溶剤として用いられているシクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部からなる混合溶剤による滴下跡の面の状態を観察したところ、滴下跡は残るが溶解してはいなかった。
得られた下地層上に、上記鏡面インキAを用い、350メッシュシルクスクリーン版でスクリーン印刷し、40℃で一日乾燥させて印刷物を作製した。得られた印刷物の外観を目視により評価し下記評価基準に基づいて評価した。
○: 鏡面光沢有り
×: 鏡面光沢無し
結果を表2に示す。
○: 鏡面光沢有り
×: 鏡面光沢無し
結果を表2に示す。
また、印刷インキの密着性の評価を以下のようにして行った。評価の結果を表2に示す。
<密着性の評価>
印刷物にカッターで傷をつけ、セロテープ(登録商標:ニチバン)を貼り付けて45°の角度で剥がし、インキの剥がれの有無を下記評価基準に基づいて評価した。
○: 剥がれ無し
×: 剥がれ有り
<密着性の評価>
印刷物にカッターで傷をつけ、セロテープ(登録商標:ニチバン)を貼り付けて45°の角度で剥がし、インキの剥がれの有無を下記評価基準に基づいて評価した。
○: 剥がれ無し
×: 剥がれ有り
実施例2
アルミニウム箔粉を、厚さ0.3μm、粒子径10μmのノンリーフィングタイプアルミニウム箔粉とすることを除き実施例1と同様にして、鏡面インキBを作製した。
アルミニウム箔粉を、厚さ0.3μm、粒子径10μmのノンリーフィングタイプアルミニウム箔粉とすることを除き実施例1と同様にして、鏡面インキBを作製した。
この鏡面インキBを用いることを除き実施例1と同様にして印刷物を作製した。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
実施例3
アルミニウム箔粉を、厚さ0.3μm、粒子径12μmのノンリーフィングタイプアルミニウム箔粉とすることを除き実施例1と同様にして、鏡面インキCを作製した。
アルミニウム箔粉を、厚さ0.3μm、粒子径12μmのノンリーフィングタイプアルミニウム箔粉とすることを除き実施例1と同様にして、鏡面インキCを作製した。
この鏡面インキCを用いることを除き実施例1と同様にして印刷物を作製した。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
実施例4
イソシナネート:VESTANAT T1890(エボニック・テグサ・ジャパン)の量を10重量部から20重量部に変更し、また希釈剤をシクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部からシクロヘキサノール100重量部に変更することを除き実施例1と同様にして、鏡面インキDを作成した。
イソシナネート:VESTANAT T1890(エボニック・テグサ・ジャパン)の量を10重量部から20重量部に変更し、また希釈剤をシクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部からシクロヘキサノール100重量部に変更することを除き実施例1と同様にして、鏡面インキDを作成した。
鏡面インキとして鏡面インキDを用いることを除き実施例1と同様にして印刷物を作製した。なお、下地層に対するシクロヘキサノールの浸み込み、溶解程度を、先の<基材への希釈溶剤の浸み込みの程度及び基材の溶解性試験法>により確認したところ、下地層に滴下跡は残るが溶解してはいなかった。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
実施例5
イソシナネート:VESTANAT T1890(エボニック・テグサ・ジャパン)の量を10重量部から20重量部に変更することを除き実施例1と同様にして、鏡面インキEを作成した。
イソシナネート:VESTANAT T1890(エボニック・テグサ・ジャパン)の量を10重量部から20重量部に変更することを除き実施例1と同様にして、鏡面インキEを作成した。
鏡面インキとして鏡面インキEを用いることを除き実施例1と同様にして印刷物を作製した。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
実施例6
希釈剤をシクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部からシクロヘキサノール50重量部とシクロヘキサノン50重量部に変更し、さらにアクリル樹脂:アクリディック57−773(DIC製)を10重量部添加することを除き実施例1と同様にして、鏡面インキFを作成した。
希釈剤をシクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部からシクロヘキサノール50重量部とシクロヘキサノン50重量部に変更し、さらにアクリル樹脂:アクリディック57−773(DIC製)を10重量部添加することを除き実施例1と同様にして、鏡面インキFを作成した。
鏡面インキとして鏡面インキFを用いることを除き実施例1と同様にして印刷物を作製した。なお、下地層に対するシクロヘキサノール50重量部とシクロヘキサノン50重量部の混合溶剤の浸み込み程度を、先の<基材への希釈溶剤の浸み込みの程度及び基材の溶解性試験法>により確認したところ、下地層に滴下跡は残るが溶解してはいなかった。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
実施例7
下地層を設けないことを除き実施例1と同様にして印刷物を作製した。なお、塩化ビニル樹脂フィルムに対する希釈溶剤の浸みこみの程度を、先の<基材への希釈溶剤の浸み込みの程度及び基材の溶解性試験法>により確認したところ、塩化ビニル樹脂フィルム上に滴下跡は残るが溶解してはいなかった。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
下地層を設けないことを除き実施例1と同様にして印刷物を作製した。なお、塩化ビニル樹脂フィルムに対する希釈溶剤の浸みこみの程度を、先の<基材への希釈溶剤の浸み込みの程度及び基材の溶解性試験法>により確認したところ、塩化ビニル樹脂フィルム上に滴下跡は残るが溶解してはいなかった。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
比較例1
イソシナネート:VESTANAT T1890(エボニック・テグサ・ジャパン)の量を10重量部から4重量部に変更することを除き実施例1と同様にして、鏡面インキGを作成した。
イソシナネート:VESTANAT T1890(エボニック・テグサ・ジャパン)の量を10重量部から4重量部に変更することを除き実施例1と同様にして、鏡面インキGを作成した。
この鏡面インキGを用いることを除き実施例1と同様にして印刷物を作製した。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
比較例2
下地層の樹脂をウレタン樹脂:ニッポラン5196(日本ポリウレタン)100重量部をアクリル樹脂:ダイヤナールBR50(三菱レイヨン:固形分40%キシロール溶液)100重量部に変更することを除き実施例1と同様にして、印刷物を作製した。なお、得られた下地層に対する希釈溶剤(シクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部の混合溶剤)の浸み込み、溶解程度を、先の<基材への希釈溶剤の浸み込みの程度及び基材の溶解性試験法>に従い観察したところ、滴下箇所が溶解していた。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
下地層の樹脂をウレタン樹脂:ニッポラン5196(日本ポリウレタン)100重量部をアクリル樹脂:ダイヤナールBR50(三菱レイヨン:固形分40%キシロール溶液)100重量部に変更することを除き実施例1と同様にして、印刷物を作製した。なお、得られた下地層に対する希釈溶剤(シクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部の混合溶剤)の浸み込み、溶解程度を、先の<基材への希釈溶剤の浸み込みの程度及び基材の溶解性試験法>に従い観察したところ、滴下箇所が溶解していた。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
比較例3
透明塩化ビニルフィルム粘着シートに厚さ70μmのPETフィルムを貼り合わせて下地層とした。得られた下地層に対する希釈溶剤(シクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部の混合溶剤)の浸み込み、溶解程度を、先の<基材への希釈溶剤の浸み込みの程度及び基材の溶解性試験法>に従い確認したところ、滴下跡が残らず溶解していなかった。下地層であるPETフィルム上に、実施例1と同様にして印刷物を作製した。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
透明塩化ビニルフィルム粘着シートに厚さ70μmのPETフィルムを貼り合わせて下地層とした。得られた下地層に対する希釈溶剤(シクロヘキサノール70重量部とシクロヘキサノン30重量部の混合溶剤)の浸み込み、溶解程度を、先の<基材への希釈溶剤の浸み込みの程度及び基材の溶解性試験法>に従い確認したところ、滴下跡が残らず溶解していなかった。下地層であるPETフィルム上に、実施例1と同様にして印刷物を作製した。得られた印刷物の光輝度およびインキの密着性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、本発明の印刷方法により、鏡面光輝性、基材との密着性に優れた印刷物が形成された。
Claims (7)
- アルミニウム箔粉とイソシアネート化合物とイソシアネート化合物を溶解する希釈溶剤からなる印刷インキであって、アルミニウム箔粉100重量部に対してイソシアネート化合物が50重量部〜150重量部である印刷インキを、該印刷インキの希釈溶剤が浸み込み、かつ、希釈溶剤によりその表面が侵されない樹脂からなる基材表面に印刷することにより鏡面光輝性を有する印刷物を形成することを特徴とする印刷方法。
- 前記基材がポリウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、繊維素系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする、請求項1に記載の印刷方法。
- 前記希釈溶剤が、沸点が100〜220℃の有機溶剤であり、基材を短時間では溶解せず、膨潤させる程度の、溶解性の低い溶剤であることを特徴とする、請求項1または2に記載の印刷方法。
- アルミニウム箔粉は平均粒径が13μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷方法。
- アルミニウム箔粉100重量部に対して希釈溶剤が30重量部〜300重量部であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷方法。
- 前記基材が、基体上に下地層として設けられたものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷方法により形成された印刷物。
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