JP7130453B2 - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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本発明は、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
近年、インクジェット記録装置は、オフィス印刷や商業印刷分野での利用が増加しつつある。そして、インクジェット記録装置に対しては記録速度のさらなる高速化が要求されている。記録速度を向上させるには、従来のシリアル方式の記録ヘッドを利用して行うマルチパス記録方法よりも、ライン型の記録ヘッド(ラインヘッド)を使用し、いわゆる1パスで画像を記録するインクジェット記録方法が有利である。
但し、ラインヘッドは、装置の構成上、あるノズルからの吐出が休止している期間や、吐出頻度の低いノズルからの回復処理を行いにくいといった特性がある。特に、吐出頻度の低いノズルがあっても、インクの増粘による吐出性の低下を予防するための予備吐出動作を行いにくい場合がある。
一方、ラインヘッドを使用して1パスで画像を記録する場合、ノズルごとの吐出量の違いが画質に影響を及ぼしやすいため、インクの吐出安定性をこれまで以上に向上させる必要がある。例えば、ノズル内での異物の滞留を抑制すべく、吐出口近傍でインクを流動させる機構を備えたプリントヘッドが提案されている(特許文献1)。
特開2007-118611号公報
本発明者らは、記録速度のさらなる高速化を目的とし、特許文献1で提案された、吐出口近傍でインクを流動させる機構を採用したラインヘッドを使用し、1パスで画像を記録することについて検討した。その結果、インクの間欠吐出安定性が向上しうることがわかった。しかし、特許文献1で提案された機構を採用したラインヘッドを用いた場合であっても、インクの特性によっては、高速で記録したベタ画像に微細なムラが発生する場合があるといった新たな課題が生ずることを見出した。
したがって、本発明の目的は、微細なムラの発生が低減された高品質な画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、インクを吐出する吐出口と、前記インクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出素子と、前記吐出口と前記吐出素子の間で連通してその内部に前記インクが流通する第1流路及び第2流路と、を具備する記録ヘッドから前記インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記記録ヘッドが、複数の前記吐出口が配列した吐出口列が配置された吐出素子基板が直線状に配列されているラインヘッドであり、前記吐出口から前記インクを吐出する吐出工程と、前記吐出工程とは別の、前記第1流路内の前記インクを前記第2流路へと流動させる流動工程と、を有し、前記インクが、10ミリ秒における動的表面張力が35mN/m以上48mN/m以下の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
本発明によれば、微細なムラの発生が低減された高品質な画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
記録ヘッドの一例を示す模式図である。 記録ヘッド内におけるインクの流動状態を説明する模式図である。 ラインヘッドの一例を示す斜視図である。 吐出素子基板の断面を示す斜視図である。 インクジェット記録装置の主要部を示す斜視図である。 インクの供給系を示す模式図である。 吐出口近傍におけるインクの流動状態を説明する模式図である。 ラインヘッドの一例を部分的に示す断面図である。 実施例で記録したベタ画像のパターンを説明する模式図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。第1流路及び第2流路を、まとめて「流路」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
<インクジェット記録方法、インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出する吐出口と、インクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出素子と、吐出口と吐出素子の間で連通してその内部にインクが流通する第1流路及び第2流路と、を具備する記録ヘッドを備える。さらに、本発明のインクジェット記録装置は、吐出素子とは別の、第1流路内のインクを第2流路へと流動させる流動手段を備える。また、本発明のインクジェット記録方法は、例えば、上記のインクジェット記録装置を使用し、上記の記録ヘッドからインクを吐出して画像を記録する方法である。すなわち、本発明のインクジェット記録方法は、吐出口からインクを吐出する吐出工程と、吐出工程とは別の、第1流路内のインクを第2流路へと流動させる流動工程と、を有する。
図1は、記録ヘッドの一例を示す模式図である。図1に示す記録ヘッドは、インクを吐出する吐出口1と、インクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出素子4と、吐出口1と吐出素子4の間で連通してその内部にインクが流通する第1流路17及び第2流路18と、を備える。インクは、吐出口1と吐出素子4の間を通って、第1流路17から第2流路18(図1中の矢印の方向)へと流動している。インクが流動していないと、吐出口1のメニスカスからの水分蒸発が進行し、これに伴って吐出口1と吐出素子4の間に存在するインクが徐々に増粘する。このため、吐出休止時間が長い場合、次の吐出動作の際に、インクの流体抵抗が増大して吐出しづらくなる場合がある。これに対して、図1中の矢印の方向へとインクが流動していると、メニスカスから水分が蒸発しても、循環流により吐出口1と吐出素子4の間にインクが次々と供給されるので、インクの増粘が抑制され、吐出しづらい状態を生じにくくすることができる。
上記のように、第1流路17内のインクを第2流路18へと流動させる流動工程を、吐出口1からインクを吐出する吐出工程とは別に設けることで、ラインヘッドを用いた場合に特に課題となるインクの間欠吐出安定性を向上させることができる。しかし、上記のような流動工程を設けた場合であっても、インクの特性によっては、1パスで高速記録して得られる画像に微細なムラが発生するといった新たな課題が生ずることを見出した。このような画像に微細なムラが発生する要因について検討したところ、以下の2つの現象が要因であることが判明した。
1つ目の要因としては、吐出頻度の高いノズルからのインクの吐出量が減少してドット径がバラついてしまうことが挙げられ、生じたバラつきが微細なムラとして認識されていることがわかった。従来、ノズル間で吐出頻度が異なる場合、吐出頻度の低いノズルからのインクの吐出量が、インクの増粘が進むのにしたがって相対的に減少することが知られている。これに対して、今回判明した上記の吐出量の減少は吐出頻度の高いノズルにおいて生じており、従来知られていた現象とは異なる。今回判明した吐出量の減少は、インクの流動工程を有するインクジェット記録方法において特異的に生ずる現象であり、以下に示すようなメカニズムにより発生するものと本発明者らは推測している。
図2は、記録ヘッド内におけるインクの流動状態を説明する模式図である。(a-1)は、インクの吐出頻度が高く、吐出休止時間が短いノズルの状態を示す模式図である。(b-1)は、インクの吐出頻度が低く、吐出休止時間が長いノズルの状態を示す模式図である。(a-1)では、(b-1)よりも水分蒸発量が相対的に少ないため、メニスカスの近傍のインクの増粘は進行しにくく、乾燥によって生じた増粘物も吐出により排出される頻度が高い。したがって、メニスカスの近傍に滞留する増粘物の量が少なく、インクの粘度も低いために、メニスカスが変動しやすい状態にあると考えられる。これに対して、(b-1)では、水分蒸発によりインクの増粘が進行しやすいとともに、生じた増粘物の排出頻度も低い。このため、メニスカスの近傍に増粘物が滞留しやすく、インクの粘度も高くなり、メニスカスが変動しにくい状態にあると考えられる。
(a-2)及び(b-2)は、(a-1)及び(b-1)のそれぞれについて、インクの流動がある場合を示す。インクが図中の矢印の方向へと流動している場合、(a-2)では、(b-2)よりもメニスカスが液室内部の方向へと引き込まれやすい。このため、吐出口1と吐出素子4の間に存在するインクの量が、(a-2)の方が相対的に少なくなる。このような状態でインクを吐出すると、(a-2)のインクの吐出量は、(b-2)の吐出量よりも相対的に少なくなり、形成されるドットも小さくなる。以上のように、ラインヘッドを用いてベタ画像を1パス記録で高速記録する場合、インクの吐出頻度がノズルごとに異なるためにインクの吐出量もバラついてしまい、ドット径のバラつきが微細なムラとして認識されると考えられる。
本発明者らは、インクの流動工程を設けた記録方法において新たに生じた上記の課題を解決すべく、インクの様々な物性に着目して検討した。その結果、10ミリ秒における動的表面張力が35mN/m以上の水性インクを用いることで、微細なムラの発生が低減された高品質な画像を記録することが可能となることを見出した。インクの10ミリ秒における動的表面張力を35mN/m以上とすることで、メニスカスが引き込まれやすい状況下であっても、毛管力により十分に安定したメニスカスを形成することができる。これにより、インクの吐出量の減少によって発生する微細なムラを抑制することができる。インクの10ミリ秒における動的表面張力が35mN/m未満であると、メニスカスが引き込まれやすい状況下では安定したメニスカスを形成することが困難になる。このため、安定したメニスカスが形成されていないノズルからのインクの吐出量が減少し、画像に微細なムラが発生しやすくなる。
10ミリ秒における動的表面張力によりインクの物性を特定するのは以下の理由による。上述のメカニズムに関連して、メニスカスが引き込まれやすい状況、すなわち、インクの動きが最も大きい時点に近い状態での表面張力を把握する必要がある。その一方で、例えば、1ミリ秒のようなあまりにも寿命時間が短い時点での動的表面張力は、最大泡圧法による測定の原理上、十分に信頼し得る測定値が得られづらい場合があるが、10ミリ秒であれば、精度の高い測定値が得られる。これらの理由から、本発明においては、10ミリ秒における動的表面張力を利用する。
2つ目の要因としては、記録媒体においてドットの広がりが不足することが挙げられ、インクが広がらなかった部分がスジ状のムラとして認識されていることがわかった。上述の通り、インクの10ミリ秒における動的表面張力を35mN/m以上とすることで、メニスカスの引き込まれによるインクの吐出量の低下は抑制される。但し、インクの10ミリ秒における動的表面張力が高くなりすぎると、記録媒体へのインクの濡れ性が低下して、ドットの広がりが小さくなる。このため、インクが広がらなかった部分がスジ状のムラとして認識されたものと本発明者らは推測している。この現象は、インクが濡れ広がりにくい記録媒体に、ラインヘッドを使用してベタ画像を1パスで高速記録するような場合には顕著に生ずる。
本発明者らは、上記の課題を解決すべくさらに検討を行った。その結果、10ミリ秒における動的表面張力が48mN/m以下の水性インクを用いることで、スジ状に発生するムラが低減された高品質な画像を記録することが可能となることを見出した。インクの10ミリ秒における動的表面張力を48mN/m以下とすることで、インクが濡れ広がりにくい記録媒体に、ラインヘッドを使用して1パスで高速に画像を記録するような場合であっても、記録媒体にインクが濡れやすくなる。これにより、スジ状のムラが低減され、高品質な画像を記録することができる。
まとめると、インクの流動工程を実施する記録方法では、10ミリ秒における動的表面張力が35mN/m以上48mN/m以下である水性インクを用いることが重要である。これにより、メニスカスの引き込まれによるインクの吐出量の低下が抑制されるとともに、記録媒体へのインクの濡れ性を高めることができ、微細なムラの発生が低減された高品質な画像を記録することが可能となる。
図3は、ラインヘッドの一例を示す斜視図である。図3に示すように、ラインヘッド11には、吐出口列が配置された吐出素子基板10が直線状に配列されている。吐出素子基板10には、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック(CMYK)の各インクに対応する吐出口列が配列されている。
図4は、吐出素子基板の断面を示す斜視図である。図4に示すように、吐出素子基板10は、吐出口1が形成された吐出口形成部材5と、吐出素子(不図示)が配設された基板3とを備える。吐出口形成部材5と基板3が積層されることで、インクが流動する第1流路17及び第2流路18が形成される。第1流路17は、流入路6中のインクが流入する流入口8から、吐出口1と吐出素子の間の部分までの領域である。また、第2流路18は、吐出口1と吐出素子との間の部分から、流出路7へとインクが流出する流出口9までの領域である。例えば、圧力の高い流入口8と圧力の低い流出口9といったように、流入口8と流出口9との間に圧力差を持たせれば、圧力の高い方から低い方へ(図4中の矢印の方向へ)とインクを流動させることができる。流入路6及び流入口8を通ったインクは、第1流路17内に入る。そして、吐出口1と吐出素子との間の部分を通ったインクは、第2流路18及び流出口9を通って、流出路7へと流れる。
第1流路内のインクを第2流路へと流動させる流動工程は、吐出口からインクを吐出する吐出工程とは別の工程(異なる工程)である。また、流動工程における第1流路から第2流路へのインクの流動は、吐出口と吐出素子の間へのインクの充填とは別に行うことが好ましい。流動工程は、吐出口からインクを排出することなく、第1流路内のインクを第2流路へと流動させる工程であることが好ましい。吐出口からのインクの排出には、予備吐出や吸引などの回復動作が含まれる。記録ヘッドの回復動作の際には、第1流路から第2流路へのインクの流動は停止させてもよい。さらに、流動工程では、吐出素子とは別の流動手段によって、第1流路から第2流路へとインクを流動させることが好ましい。
以下、熱エネルギーを発生する吐出素子を利用し、気泡を発生させてインクを吐出するサーマル方式の記録ヘッドを例に挙げて、本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置のさらなる詳細について説明する。但し、ピエゾ方式の記録ヘッドや、その他の吐出方式が採用された記録ヘッドであっても、本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に適用することができる。ここでは、インク収容部と記録ヘッドの間でインクを循環させる形態を例に挙げて説明するが、それ以外の形態であってもよい。例えば、記録ヘッドの上流側と下流側に2つのインク収容部を設け、一方のインク収容部から他方のインク収容部へとインクを流動させる形態であってもよい。さらに、CMYKの4色のインクを吐出可能な吐出素子基板が直線状に配列されたラインヘッドを例に挙げて説明するが、4色のインクにそれぞれ対応する吐出素子基板を設けたラインヘッドを用いることもできる。また、ラインヘッド以外の記録ヘッドとして、走査させながら画像を記録するシリアルヘッドを用いることもできる。本発明では、サーマル方式でインクを吐出するラインヘッドを用いることが特に好ましい。
図5は、インクジェット記録装置の主要部を示す斜視図である。図5に示すインクジェット記録装置1000は、記録媒体15を搬送する搬送部16と、記録媒体の搬送方向と直交して配置されるラインヘッド11とを備える。インクジェット記録装置1000は、複数の記録媒体15を連続して、又は間欠的に搬送しながら画像を記録するラインヘッド11を備える。記録媒体15としては、カット紙だけでなくロール紙を用いることもできる。記録媒体としては、どのようなものを用いてもよい。なかでも、普通紙や非コート紙などのコート層を有しない記録媒体、及び、光沢紙やアート紙などのコート層を有する記録媒体のような、浸透性を有する紙を用いることが好ましい。
流動工程では、インクを連続的に流動させる又は間欠的に流動させることが好ましい。以下、インクを連続的に流動させる方法、及びインクを間欠的に流動させる方法の詳細について説明する。まず、図6を参照しつつ、インクを連続的に流動させる方法について説明する。図6は、インクの供給系を示す模式図である。図6に示すラインヘッド11は、第1循環ポンプ(高圧側)1001、第1循環ポンプ(低圧側)1002、バッファタンク1003、及び第2循環ポンプ1004などに接続されている。説明を簡略化するために、図6では1色のインクが流動する経路のみを示しているが、実際にはCMYKの4色分の流動経路がラインヘッド11にそれぞれ設けられている。
インク収容部であるメインタンク1006に接続されるバッファタンク1003は、大気連通口(不図示)を有しており、インク中の気泡を外部に排出することが可能である。バッファタンク1003は、補充ポンプ1005にも接続されている。画像の記録や吸引回復など、吐出口からインクを吐出(排出)することにより、ラインヘッド11でインクが消費される。補充ポンプ1005は、消費量に対応する量のインクをメインタンク1006からバッファタンク1003へと移送する。
第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002は、液体接続部111から流出させたラインヘッド11内のインクを、バッファタンク1003へと流す。第1循環ポンプとしては、定量的な送液能力を有する容積型ポンプを用いることが好ましい。このような容積型ポンプの具体例としては、チューブポンプ、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、シリンジポンプなどを挙げることができる。吐出ユニット300の駆動時には、第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002によって、共通流入路211及び共通流出路212内にインクを流動させることができる。
負圧制御ユニット230は、相互に異なる制御圧が設定された2つの圧力調整機構を備える。圧力調整機構(高圧側)H及び圧力調整機構(低圧側)Lは、それぞれ、インクから異物を取り除くフィルタ221を設けた供給ユニット220を経由して、吐出ユニット300内の共通流入路211及び共通流出路212に接続されている。吐出ユニット300には、共通流入路211、共通流出路212、並びに吐出素子基板10と連通する流入路6及び流出路7が設けられている。流入路6及び流出路7は、共通流入路211及び共通流出路212と連通しているため、共通流入路211から吐出素子基板10の内部流路を通過して共通流出路212へとインクの一部が流れる流れ(図6中の矢印)が発生する。吐出素子基板10の内部流路におけるインクの流れは、図4中の矢印で示されている。すなわち、図4に示すように、第1流路17内のインクは、吐出口1と吐出素子の間を通って第2流路18へと流動する。
図6に示すように、共通流入路211には圧力調整機構Hが接続されているとともに、共通流出路212には圧力調整機構Lが接続されているため、流入路6と流出路7の間には圧力差が生じている。これにより、流入路6と連通する流入口8(図4)と、流出路7と連通する流出口9(図4)との間にも、圧力差が生じている。流入口と流出口の圧力差によりインクを流動させる場合、インクの流速(mm/s)は、0.1mm/s以上10.0mm/s以下に制御することが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法では、記録ヘッドの回復動作中にも、第1流路内のインクを第2流路へと流動させてもよい。記録ヘッドの回復動作中にインクが流動すると、定常的にインクが流動することになる。定常的にインクが流動すると水分が蒸発しやすくなり、循環するインクの濃度が上昇しやすくなる。インクの濃度上昇を抑制すべく、一定時間の経過によりインクに水を加える機構をインクジェット記録装置に設けることが好ましい。さらに、インクの濃度を検出する検出器をインクジェット記録装置に配設し、検知したインクの濃度上昇と連動させてインクに水を加えることが好ましい。
図7は、吐出口近傍におけるインクの流動状態を説明する模式図である。吐出口近傍におけるインクの流動状態は2種類に大別される。1つ目は、図7(a)に示すような、吐出口のメニスカス12の近傍に循環流が生じない流動状態である。2つ目は、図7(b)に示すような、吐出口のメニスカス12の近傍に循環流が生ずる流動状態である。流路内のインクの流速が同等であっても、メニスカス12の近傍におけるインクの流動状態は一定にならない場合がある。インクがいずれの流動状態になるのかは、流路内のインクの流速よりも、吐出口形成部材の厚さ(c)、流路の高さ(d)、及び吐出口の直径(e)に依存すると考えられる。例えば、流路の高さ(d)と吐出口の直径(e)が同等である場合、吐出口形成部材の厚さ(c)が大きいと、図7(b)に示すようにメニスカス12の近傍に循環流が生じやすくなる。
次いで、図8を参照しつつ、インクを間欠的に流動させる方法について説明する。図8は、ラインヘッドの一例を部分的に示す断面図である。図8に示すように、流入口210から流入したインクは、インクの流動手段である循環ポンプ206の作用によって矢印の方向へと流動し、流出口212から流出する。また、循環ポンプ206は、インクを間欠的に流動させることができるポンプである。このため、循環ポンプ206を駆動させることで、吐出口116と吐出素子216の間にインクを間欠的に流動させることができる。インクを間欠的に流動させる場合、インクの流速(m/s)は、1.0m/s以上10.0m/s以下に制御することが好ましい。
<インク>
本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置で用いるインクは、10ミリ秒における動的表面張力が35mN/m以上48mN/m以下であるインクジェット用の水性インクである。以下、インクを構成する各成分やインクの物性について詳細に説明する。
(色材)
インクに含有させる色材としては、顔料や染料を用いることができる。インク中の色材の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.50質量%以上15.00質量%以下であることが好ましく、1.00質量%以上10.00質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを用いることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。
顔料を水性媒体中に分散させるための樹脂分散剤としては、アニオン性基の作用によって顔料を水性媒体中に分散させうるものを用いることが好ましい。樹脂分散剤としては、後述するような樹脂、なかでも水溶性樹脂を用いることができる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、樹脂分散剤の含有量に対する質量比率で、0.3倍以上10.0倍以下であることが好ましい。
自己分散顔料としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(-R-)を介して結合しているものを用いることができる。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。他の原子団(-R-)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;カルボニル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
染料としては、アニオン性基を有するものを用いることが好ましい。染料の具体例としては、アゾ、トリフェニルメタン、(アザ)フタロシアニン、キサンテン、アントラピリドンなどの染料を挙げることができる。
(樹脂)
インクには、樹脂を含有させることができる。インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上20.00質量%以下であることが好ましく、0.50質量%以上15.00質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定化させるため、すなわち、樹脂分散剤やその補助としてインクに添加することができる。また、(ii)記録される画像の各種特性を向上させるためにインクに添加することができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。また、樹脂は、水性媒体に溶解しうる水溶性樹脂であってもよく、水性媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。樹脂粒子は、色材を内包する必要はない。顔料を分散するための分散剤として樹脂を用いている場合は、分散剤としての樹脂の他に、さらに別の樹脂を含有させることが好ましい。
本明細書において「樹脂が水溶性である」とは、その樹脂を酸価と等モル量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しない状態で水性媒体中に存在することを意味する。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、以下のようにすることができる。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
水溶性樹脂の酸価は、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。水溶性樹脂の重量平均分子量は、3,000以上15,000以下であることが好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の重量平均分子量は、1,000以上2,000,000以下であることが好ましい。動的光散乱法により測定される樹脂粒子の体積平均粒子径は、100nm以上500nm以下であることが好ましい。
樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂などを挙げることができる。なかでも、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂が好ましい。
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有するモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα-メチルスチレンの少なくとも一方のモノマーに由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性モノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性モノマー、これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマーなどを挙げることができる。酸性モノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性モノマーを重合することで形成することができる。疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有するモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどを挙げることができる。
ウレタン系樹脂は、例えば、ポリイソシアネートと、それと反応する成分(ポリオールやポリアミン)とを反応させて得ることができる。また、架橋剤や鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。
ポリイソシアネートは、その分子構造中に2以上のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネートや芳香族ポリイソシアネートなどを用いることができる。脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの環状構造を有するポリイソシアネート;などを挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
上記のポリイソシアネートとの反応によってウレタン樹脂を構成するユニットとなる成分としては、ポリオールを用いることができる。本発明における「ポリオール」とは、分子中に2以上のヒドロキシ基を有する化合物を意味する。具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどの酸基を有しないポリオール;酸基を有するポリオール;などを挙げることができる。
酸基を有しないポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどの数平均分子量が450~4,000程度である長鎖ポリオールなどを挙げることができる。
酸基を有するポリオールとしては、構造中に、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基などの酸基を含むポリオールを挙げることができる。特に、酸基を有しないポリオールに加えて、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸などの酸基を有するポリオールをさらに用いて合成された水溶性ウレタン樹脂を用いることが好ましい。酸基は塩の形態であってもよい。塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。水溶性ウレタン樹脂が酸基を有する場合、通常、酸基がアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物やアンモニア水などの中和剤により中和されることで水溶性を呈する。
ポリアミンとしては、ジメチロールエチルアミン、ジエタノールメチルアミン、ジプロパノールエチルアミン、ジブタノールメチルアミンなどの複数のヒドロキシ基を有するモノアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジンなどの2官能ポリアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミンなどの3官能以上のポリアミン;などを挙げることができる。なお、便宜上、複数のヒドロキシ基と、1つの「アミノ基、イミノ基」を有する化合物も「ポリアミン」として列挙した。
ウレタン樹脂を合成する際には、架橋剤や鎖延長剤を用いることができる。通常、架橋剤はプレポリマーの合成の際に用いられ、鎖延長剤は予め合成されたプレポリマーに対して鎖延長反応を行う際に用いられる。基本的には、架橋剤や鎖延長剤としては、架橋や鎖延長など目的に応じて、水や、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンなどから適宜に選択して用いることができる。鎖延長剤として、ウレタン樹脂を架橋させることができるものを用いることもできる。
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのα-オレフィン重合体を挙げることができる。α-オレフィン重合体は、エチレン単位、プロピレン単位などのα-オレフィン単位を主構成単位とする。このα-オレフィン重合体は、エチレンの単独重合体やプロピレンの単独重合体であってもよく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、及び4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンの共重合体であってもよい。共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの共重合体の組み合わせなどを挙げることができる。
[樹脂粒子]
インクは、樹脂粒子を含有することが好ましい。樹脂粒子を含有するインクを用いることで、メニスカスをより安定化することができる。樹脂粒子は、水溶性樹脂のような分子同士の絡み合いが少ないため、インクの流動とともにメニスカスの近傍に迅速に移動しやすい。すなわち、メニスカスの近傍に配向した樹脂粒子の粒子間相互作用によってメニスカスが安定化し、吐出頻度の高いノズルにおけるインクの吐出量低下をさらに抑制し、微細なムラの発生をより有効に低減することができると考えられる。樹脂粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、オレフィン系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子などを挙げることができる。
[水溶性ウレタン樹脂]
インクは、水溶性ウレタン樹脂を含有することが好ましい。水溶性樹脂のなかでも、水溶性ウレタン樹脂は、メニスカスの近傍において速やかに相互作用するとともに、安定な分子膜を形成する。このため、水溶性ウレタン樹脂を含有するインクを用いることで、吐出頻度の高いノズルにおけるインクの吐出量低下をさらに抑制し、微細なムラの発生をより有効に低減することができる。
[ブロック共重合体]
インクは、ブロック共重合体を含有することが好ましい。ブロック共重合体は、通常、同種又は同様の性質を有する単量体に由来する複数のブロックが配列された構造を有する。インクジェット用の水性インクに一般的に用いられるブロック共重合体は、以下のような構造を有する。例えば、疎水性ブロック(Aブロック)及びイオン性の親水性ブロック(Bブロック)を有するABブロック構造;このABブロック構造に、さらにノニオン性の親水性ブロック(Cブロック)が加わったABCブロック構造;などがある。すなわち、ブロック共重合体は、親水性ブロックと疎水性ブロックがそれぞれ局在化した構造を有するため、界面活性能が高く、メニスカスの近傍に速やかに配向する。このため、ブロック共重合体を含有するインクを用いると、メニスカスが安定化し、吐出頻度の高いノズルにおけるインクの吐出量低下をさらに抑制し、微細なムラの発生をより有効に低減することができる。
ブロック共重合体は、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法、グループトランスファー重合法、原子移動ラジカル重合法、可逆的付加開裂連鎖移動重合法などの通常の合成方法によって合成することができる。ブロック共重合体は、樹脂粒子ではなく水溶性樹脂であることが好ましい。
(多価アルコール誘導体)
インクは、3価以上の多価アルコールにXモルのエチレンオキサイド基及びYモルのプロピレンオキサイド基が付加した多価アルコール誘導体を含有することが好ましい。この多価アルコール誘導体は、{Y/(X+Y)}×100(%)の値が、70%以上90%以下の化合物である。
多価アルコール誘導体は、3価以上の多価アルコールのヒドロキシ基の水素原子を除く部分に、エチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基が付加した構造を有する、アルキレンオキサイド変性多価アルコール化合物である。多価アルコール誘導体は、下記一般式(2)で表される構造を有する。
Figure 0007130453000001
一般式(2)中、Lは、ヒドロキシ基以外のアルコール残基を表す。Rは、それぞれ独立に、エチレンオキサイド基又はプロピレンオキサイド基を表す。nは、3以上の整数であり、アルキレンオキサイド基の数を意味する。多価アルコール誘導体1分子中の合計のnの値は、X+Yの値と等しい。mは、3以上の整数であり、多価アルコールの価数と等しい。一般式(2)中、Rで表されるエチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基は、ブロック構造であっても、ランダム構造であってもよい。Rで表されるエチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基のモル数や割合は、多価アルコール誘導体の1分子の全体に付加したエチレンオキサイド基及びプロピレンオキサイド基のモル数の平均値として、複数のRに平均的に付加したものとして算出する。
エチレンオキサイド基は、-CH2CH2O-で表される。また、プロピレンオキサイド基は、-CH2CH(CH3)O-で表される。多価アルコール誘導体1分子中の、エチレンオキサイド基のモル数X及びプロピレンオキサイド基のモル数Yで表される、{Y/(X+Y)}×100(%)の値は、70%以上90%以下である。
この多価アルコール誘導体は、分子構造中に、エチレンオキサイド基の繰り返し構造、及びプロピレンオキサイド基の繰り返し構造を有する。エチレンオキサイド基の繰り返し構造はインク中の水分子と水素結合し、プロピレンオキサイド基の繰り返し構造は相対的に疎水性が高いため気液界面側に配向しやすい。したがって、インクに多価アルコール誘導体を含有させることで、メニスカスに分子膜が形成されたような状態となり、メニスカスを安定化することができる。多価アルコールが3価以上であると、メニスカスがより安定化される。{Y/(X+Y)}×100(%)の値が70%未満であると、親水性が高すぎるため、メニスカスからの水分蒸発とともに液室内部へとインクが移動しやすくなり、メニスカス近傍に存在する分子が減少することがある。一方、{Y/(X+Y)}×100(%)の値が90%超であると、疎水性が高すぎるためにメニスカス近傍の存在量が多くなる。このため、水素結合のネットワークに取り込まれる水分子の量が減少してメニスカス近傍のインクの粘度が高くなる場合がある。したがって、多価アルコール誘導体を添加することにより期待される作用が生じにくくなり、微細なムラの発生をより有効に低減する効果が十分に得られない場合がある。
多価アルコール誘導体の主骨格となる多価アルコールは、3価以上である。多価アルコールは10価以下であることが好ましく、3価以上6価以下であることがさらに好ましい。多価アルコールとしては、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、オリゴ糖アルコール、パラチニット、トレイトール、アラビニトール、リビトール、イジトール、ボレミトール、ペルセイトール、オクチトール、ガラクチトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、及びこれらの縮合物などを挙げることができる。なかでも、ソルビトールが特に好ましい。
インク中の多価アルコール誘導体の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.50質量%以上4.00質量%以下であることが好ましい。多価アルコール誘導体の含有量が0.50質量%未満であると、多価アルコール誘導体によるメニスカスの安定化作用がやや弱くなるため、微細なムラの発生をより有効に低減する効果が十分に得られない場合がある。一方、多価アルコール誘導体の含有量が4.00質量%超であると、インクの粘度が高くなるため、間欠吐出安定性がやや低下する場合がある。
多価アルコール誘導体の分子量は、1,500以上25,000以下であることが好ましく、2,000以上15,000以下であることがさらに好ましく、3,000以上10,000以下であることがさらに好ましい。なお、多価アルコール誘導体におけるエチレンオキサイド基やプロピレンオキサイド基のモル数は分布を有する場合がある。この場合、モル数の平均値を利用して分子量を算出することができる。
(界面活性剤)
インクは、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、疎水性基が大気側に向くとともに、親水性基がインク側に向くようにして、気液界面に配向するため、メニスカスをさらに安定化することができる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを挙げることができる。なかでも、インクの信頼性の観点から、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの炭化水素系の界面活性剤;パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などのフッ素系の界面活性剤;ポリエーテル変性シロキサン化合物などのシリコーン系の界面活性剤などを挙げることができる。なかでも、炭化水素系の界面活性剤が好ましく、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物がさらに好ましい。
アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物のなかでも、下記一般式(1)で表される化合物を用いることが特に好ましい。
Figure 0007130453000002
(前記一般式(1)中、x及びyは、それぞれエチレンオキサイド基の付加数を表す)
一般式(1)で表される化合物は、界面への配向速度が速く、メニスカスに迅速に配向しうる。このため、インクの流動速度が速い又は吐出によるメニスカスの振動が大きいなどの、メニスカスが引き込まれやすい状況下であっても、メニスカスを安定化することができる。一般式(1)中、x+yは、1.3以上10.0以下であることが好ましい。インク中の一般式(1)で表される化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以上3.00質量%以下であることがさらに好ましい。
(水性媒体)
本発明のインクジェット記録方法で用いるインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。水性インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。また、水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。
(その他添加剤)
インクには、上記成分以外にも必要に応じて、消泡剤、その他の界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤など種々の添加剤を含有させてもよい。
(動的表面張力)
本発明のインクジェット記録方法で用いるインクは、10ミリ秒における動的表面張力が35mN/m以上48mN/m以下の水性インクである。インクの動的表面張力は、最大泡圧法により測定される。最大泡圧法は、測定対象の液体中に浸したプローブ(細管)の先端に発生させた気泡を放出するために必要な最大圧力を測定し、測定した最大圧力から液体の表面張力を求める方法である。具体的には、プローブの先端に連続的に気泡を発生させながら最大圧力を測定する。プローブの先端に新たな気泡の表面が発生した時点から、最大泡圧(気泡の曲率半径とプローブ先端部分の半径が等しくなる時点)に達するまでの時間を「寿命時間」と呼ぶ。すなわち、最大泡圧法は、動きがある状態の液体の表面張力を測定する方法である。インクの10ミリ秒における動的表面張力は、水溶性有機溶剤や界面活性剤の種類及び含有量などにより容易に調整することができる。
(粘度)
インクの粘度は、3.0mPa・s以上であることが好ましく、5.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。インクの粘度を3.0mPa・s以上とすることで、安定なメニスカスを形成することができ、吐出頻度の高いノズルにおけるインクの吐出量低下をさらに抑制することができる。インクの粘度は、回転式粘度計などにより測定することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
酸価150mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン-アクリル酸エチル-アクリル酸共重合体(樹脂1)を用意した。樹脂1 20.0部を、その酸価と等モルの水酸化カリウムで中和するとともに、適量の純水を加え、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である樹脂1の水溶液を調製した。顔料(カーボンブラック)10.0部、樹脂1の水溶液15.0部、及び純水75.0部を混合して混合物を得た。得られた混合物と0.3mm径のジルコニアビーズ200部をバッチ式の縦型サンドミル(アイメックス製)に入れ、水冷しながら5時間分散させた後、遠心分離して粗大粒子を除去した。ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液1を調製した。
また、顔料の種類を、それぞれC.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントレッド122、及びC.I.ピグメントイエロー74に変更した。このこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤(樹脂1)の含有量が3.0%の顔料分散液2~4を調製した。
<樹脂の分析条件>
樹脂の酸価は、電位差自動滴定装置を使用し、水酸化カリウム/エタノール滴定液で電位差滴定することにより測定及び算出した。樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。また、樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって確認した。まず、樹脂(樹脂粒子、ウレタン樹脂、ブロック共重合体)を含む液体を純水で希釈して、樹脂(固形分)の含有量が1.0%である試料を調製した。次いで、調製した試料中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断した。この際の測定条件を以下に示す。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(商品名「UPA-EX150」、日機装製)を使用した。
[測定条件]
SetZero:30秒
測定回数:3回
測定時間:180秒
合成した後述の樹脂粒子1~4については、上記の方法によって粒子径を測定することができた。一方、樹脂粒子1~4以外の樹脂については粒子径を測定することができず、水溶性樹脂であることが確認された。
<樹脂粒子の合成>
(樹脂粒子1)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、メタクリル酸n-ブチル18.0部、メタクリル酸0.35部、重合開始剤(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル))2.0部、及びn-ヘキサデカン2.0部を入れた。反応系に窒素ガスを導入し、0.5時間撹拌した。乳化剤(商品名「NIKKOL BC15」、日光ケミカルズ製)の6.0%水溶液78.0部を反応系に滴下し、0.5時間撹拌して混合物を得た。超音波照射機で超音波を3時間照射して混合物を乳化させた後、窒素雰囲気下、80℃で4時間重合反応を行った。反応系を25℃まで冷却した後、ろ過し、適量の純水を添加して、樹脂粒子(固形分)の含有量が25.0%である樹脂粒子1の水分散液を調製した。
(樹脂粒子2)
メタクリル酸n-ブチルをメタクリル酸エチルに変更したこと以外は、前述の樹脂粒子1と同様の手順で、樹脂粒子(固形分)の含有量が25.0%である樹脂粒子2の水分散液を調製した。
(樹脂粒子3)
フラスコにネオペンチルグリコール22.0部、1,4-ブタンジオール15.0部、1,2-ブタンジオール9.0部、アジピン酸54.0部、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.003部を添加し、120℃で溶融させた。撹拌しながら3~4時間かけて220℃に昇温し、この温度で10時間保持した後、100℃に冷却して、数平均分子量1,000のポリエステルポリオールを調製した。調製したポリエステルポリオールを25℃に冷却した。
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、上記で得たポリエステルポリオール60.0部、イソホロンジイソシアネート36.0部、ジメチロールプロピオン酸4.0部、及びメチルエチルケトン60.1部を入れた。窒素ガス雰囲気下で5時間反応させた。次いで、樹脂を中和するために必要な水酸化カリウム水溶液を添加して撹拌した後、さらに適量の純水を加えて十分に撹拌した。その後、加熱減圧下でメチルエチルケトンを留去して、樹脂粒子(固形分)の含有量が25.0%である樹脂粒子3の水分散液を調製した。
(樹脂粒子4)
特開平11-100406号公報の「実施例1」に記載の流動床反応器を使用し、重合時の圧力(全圧)を30kg/cm2Gとして、エチレン:プロピレン(質量比)=50.0:50.0のα-オレフィン重合体を気相重合により合成した。分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)により測定したα-オレフィン重合体の重量平均分子量は、6,500であった。
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を備えた500mLセパラブルフラスコに、上記で得たα-オレフィン重合体100.0部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート100.0部を入れた。窒素雰囲気下、180℃に保持した油浴中で溶融させ、系内の温度が170℃になるように撹拌しながら油浴の温度を調整した。撹拌しながら、アクリル酸2-エチルヘキシル3.0部、メタクリル酸ベンジル7.0部、無水マレイン酸5.0部、及びジ-t-ブチルパーオキサイド(商品名「パーブチルD」、日本油脂製)0.4部を添加した。系内の温度を170℃に保持して30分間反応させた後、アクリル酸2-エチルヘキシル3.0部、メタクリル酸ベンジル7.0部、無水マレイン酸5.0部、及びジ-t-ブチルパーオキサイド0.4部を添加した。同様にして、アクリル酸、メタクリル酸ベンジル、及びジ-t-ブチルパーオキサイドを30分毎に合計5回添加した。
系内の温度を170℃に保持した状態でGPCによりモニタリングし、反応物の重量平均分子量が8,000となったところで反応を停止した。系内の温度を50℃に下げ、アスピレーターでフラスコ内を1時間減圧して、溶媒、未反応の単量体、ジ-t-ブチルパーオキサイド、及びジ-t-ブチルパーオキサイドの分解物を除去した。減圧終了後、反応物を取り出して冷却し、無水マレイン酸で変性した酸変性ポリオレフィン(固形物)を得た。GPCにより測定した酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量は16,000であった。
撹拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた1000mLセパラブルフラスコに酸変性ポリオレフィン100.0gを入れ、130℃に保持した油浴中で溶融させた。油浴の温度を130℃に保持した状態で、8mol/Lの水酸化カリウム水溶液を、酸価に対してモル比で0.8倍となるように添加した後、強く撹拌しながら80℃のイオン交換水300gを少量ずつ加えた。内容物の粘度は上昇したが、そのままイオン交換水を加え続けると粘度は低下した。冷却して内温が30℃になった後、内容物を100メッシュのナイロン濾布でろ過し、適量の純水を添加して、樹脂粒子(固形分)の含有量が25.0%である樹脂粒子4の水分散液を調製した。
<ウレタン樹脂の合成>
(ウレタン樹脂1)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び冷却管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール39.3g、イソホロンジイソシアネート44.5g、及びジブチル錫ジラウレート0.007gを入れた。窒素ガス雰囲気下、温度100℃で5時間反応させた後、温度65℃以下に冷却した。ジメチロールプロピオン酸13.2g、ネオペンチルグリコール3.0g、及びメチルエチルケトン150.0gを添加し、温度80℃で反応させた。その後、温度40℃に冷却し、メタノール20.0gを加えて反応を停止させた。次いで、適量のイオン交換水を添加し、ホモミキサーで撹拌しながら、樹脂を中和するために必要な水酸化カリウム水溶液を添加した。その後、加熱減圧下でメチルエチルケトン及び未反応のメタノールを留去して、酸価55mgKOH/g、重量平均分子量15,000のウレタン樹脂1を含み、樹脂(固形分)の含有量が20.0%であるウレタン樹脂1の水溶液を調製した。
(ウレタン樹脂2)
数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコールを、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコールに変更した。このこと以外は、前述のウレタン樹脂1と同様の手順で、酸価55mgKOH/g、重量平均分子量15,000のウレタン樹脂2を含み、樹脂(固形分)の含有量が20.0%であるウレタン樹脂2の水溶液を調製した。
<ブロック共重合体の合成>
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、及び還流管を備えた四つ口フラスコを窒素置換した後、ジメチルホルムアミド100.0部、及びペンタメチルジエチレントリアミン0.5部を入れた。表1に示す種類及び量の単量体A、及び重合開始剤(クロロエチルベンゼン)0.07部を入れ、撹拌しながら温度80℃まで加熱した。次いで、塩化銅(I)を加えて、単量体Aに由来するユニットで構成されるブロックAを重合した。分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)で分子量をモニタリングし、単量体Aの重合が完了した後、表1に示す種類及び量の単量体Bを添加して重合を続行した。
GPCで分子量をモニタリングし、単量体Bの重合が完了した後、表1に示す種類及び量の単量体Cを添加して重合を続行した。また、単量体Dについても同様の方法で添加して重合を続行した。重合を停止させた後、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を用いてカルボン酸エステル基を加水分解してカルボン酸基とした。35.0%塩酸水溶液2.8部を添加し、25℃で10分間撹拌した後にろ過した。純水で3回洗浄後に乾燥して、ブロック共重合体1及び2を得た。
1H-NMRを測定し、カルボン酸基の化学シフト(ピーク)の存在によりTMSエステルが加水分解されていることを確認した。さらに、1H-NMRを測定して各ブロックを構成する単量体の構成比を算出した。ブロック共重合体の各種特性を表1に示す。また、表1中の各成分の詳細を以下に示す。
BzMA:メタクリル酸ベンジル
BMA:メタクリル酸n-ブチル
TMS-MAA:メタクリル酸トリメチルシリル
MAA:メタクリル酸
MMA:メタクリル酸メチル
得られたブロック共重合体をテトラヒドロフランに溶解した後、ブロック共重合体の酸価と等モル量の水酸化カリウムを加えた。適量の純水を添加して撹拌した後、減圧条件下にてテトラヒドロフランを除去した。適量の純水を添加して、樹脂(固形分)の含有量が20.0%であるブロック共重合体1及び2の水溶液を調製した。
Figure 0007130453000003
<ランダム共重合体の合成>
表2の上段に記載の単量体(単位:部)を常法により共重合させて、ランダム共重合体1及び2を合成した。ランダム共重合体の酸価と等モル量の水酸化カリウムを加えた。さらに、適量の純水を添加して、樹脂(固形分)の含有量が20.0%であるランダム共重合体1及び2の水溶液を調製した。ランダム共重合体の各種特性を表2に示す。また、表2中の各成分の詳細を以下に示す。
St:スチレン
BA:アクリル酸n-ブチル
BzMA:メタクリル酸ベンジル
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
Figure 0007130453000004
<多価アルコール誘導体の用意>
表3に示す多価アルコール誘導体(化合物1~3)を用意した。表3中、「m」及び「n」は、下記式(A)中の「m」及び「n」の値である。
Figure 0007130453000005
Figure 0007130453000006
<インクの調製>
表4-1~4-4の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過して、各インクを調製した。「ゾニールFS-3100」は、デュポン製のフッ素系のノニオン性界面活性剤の商品名である。「アセチレノールE13」、「アセチレノールE60」、及び「アセチレノールE100」は、いずれも一般式(1)で表される、川研ファインケミカル製の界面活性剤の商品名である。「アセチレノールE13」、「アセチレノールE60」、及び「アセチレノールE100」の一般式(1)中の「x+y」の値は、それぞれ、「1.3」、「6.0」、及び「10.0」である。
表4-1~4-4の下段に、インクの10ミリ秒における動的表面張力γ10(mN/m)及び粘度η(mPa・s)を示す。インクの動的表面張力γ10は、最大泡圧法による動的表面張力計(商品名「BUBBLE PRESSURE TENSIOMETER BP-2」、KRUSS製)を使用し、25℃の条件下で測定した。インクの粘度ηは、E型粘度計(商品名「RE-85L」、東機産業製)を使用し、25℃の条件下で測定した。
Figure 0007130453000007
Figure 0007130453000008
Figure 0007130453000009
Figure 0007130453000010
<評価>
図5に示す主要部を有するインクジェット記録装置のインク収容部(不図示)に各インクを充填し、温度25℃、相対湿度50%の環境で、以下に示す各評価を行った。記録ヘッドとしては、図6に示す構成を有するライン型の記録ヘッドを使用した。この記録ヘッドは、1つのノズルにつき、吐出口と吐出素子の間で連通する第1流路及び第2流路を具備し、ポンプを利用して第1流路内のインクを第2流路へと流動させるものである。ノズル列1列当たりのノズル数は1024個、ノズル密度は600dpi、1ノズル当たりのインク吐出量は5ngである。以下の評価では、ノズル列を2列分使用し、1/600インチ×1/600インチの単位領域にインク滴を3滴付与する条件で、15インチ/秒の速度で記録媒体を搬送して画像を記録した。また、記録ヘッド内のインクの温度が40℃となるように加温した。
(画像ムラ)
まず、ラインヘッドを構成するノズル列2列分の吐出口のうちの、記録媒体の幅方向における半分に当たる吐出口を使用して、図9に示す「パターン1」のベタ画像を3枚分の記録媒体に記録した。記録媒体としては、商品名「高品位専用紙HR-101S」(キヤノン製)を使用した。次いで、ラインヘッドを構成するノズル列2列分の吐出口のうちの、記録媒体の幅方向における全体に当たる吐出口を使用して、図9に示す「パターン2」のベタ画像を1枚分に記録媒体に記録した。インクの循環流速を1.0mm/sとした場合と、10.0mm/sとした場合で上記2つのパターンのベタ画像を記録した。また、循環ポンプを停止し、インクを流動させない条件で記録したものを参考例1~3とした。記録した「パターン2」のベタ画像を目視で確認して、以下に示す評価基準にしたがって画像ムラを評価した。本発明においては、以下に示す評価基準で、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベル、「C」、及び「D」を許容できないレベルとした。結果を表5に示す。
AA:ベタ画像のどの部分にもムラが生じていなかった。
A:吐出しはじめ(記録媒体の端部)の10ドット以下の領域でムラが生じていた。
B:吐出しはじめ(記録媒体の端部)の10ドットを超えて50ドット以下の領域でムラが生じていた。
C:吐出しはじめ(記録媒体の端部)の50ドットを超えて100ドット以下の領域でムラが生じていた。
D:吐出しはじめ(記録媒体の端部)の100ドットを超えた領域でムラが生じていた。
Figure 0007130453000011

Claims (19)

  1. インクを吐出する吐出口と、前記インクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出素子と、前記吐出口と前記吐出素子の間で連通してその内部に前記インクが流通する第1流路及び第2流路と、を具備する記録ヘッドから前記インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記記録ヘッドが、複数の前記吐出口が配列した吐出口列が配置された吐出素子基板が直線状に配列されているラインヘッドであり、
    前記吐出口から前記インクを吐出する吐出工程と、
    前記吐出工程とは別の、前記第1流路内の前記インクを前記第2流路へと流動させる流動工程と、を有し、
    前記インクが、10ミリ秒における動的表面張力が35mN/m以上48mN/m以下の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記インクの粘度が、3.0mPa・s以上である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記インクが、樹脂粒子を含有する請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記インクが、水溶性ウレタン樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記インクが、ブロック共重合体を含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記インクが、3価以上の多価アルコールにXモルのエチレンオキサイド基及びYモルのプロピレンオキサイド基が付加した、{Y/(X+Y)}×100(%)の値が70%以上90%以下の多価アルコール誘導体を含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記インクが、界面活性剤を含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記界面活性剤が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項7に記載のインクジェット記録方法。
    Figure 0007130453000012
    (前記一般式(1)中、x及びyは、それぞれエチレンオキサイド基の付加数を表す)
  9. 前記記録ヘッドが、複数の前記吐出口のそれぞれに対応する、複数の前記第1流路が1つの流入路に連通しているとともに、複数の前記第2流路が1つの流出路に連通している請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記流動工程において、前記吐出口から前記インクを排出することなく、前記インクを流動させる請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  11. さらに、前記流動工程における前記インクの流動を停止して前記記録ヘッドの回復動作を行う回復工程を有する請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記流動工程において、前記インクの吐出方向と交差する方向に前記インクを流動させる請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  13. 前記流動工程において、前記吐出素子とは別の流動手段によって前記インクを流動させる請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  14. 前記流動工程において、前記第1流路に連通する流入口と前記第2流路に連通する流出口との間の圧力差で前記インクを流動させる請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  15. 前記圧力差で流動させる前記インクの流速が、0.1mm/s以上10.0mm/s以下である請求項14に記載のインクジェット記録方法。
  16. 前記流動工程において、前記インクを間欠的に流動させる請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  17. 間欠的に流動させる前記インクの流速が、1.0m/s以上10.0m/s以下である請求項16に記載のインクジェット記録方法。
  18. 前記記録ヘッドが、熱エネルギーを発生する吐出素子を利用してインクを吐出するサーマル方式の記録ヘッドである請求項1乃至17のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  19. インクを吐出する吐出口と、前記インクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出素子と、前記吐出口と前記吐出素子の間で連通してその内部に前記インクが流通する第1流路及び第2流路と、を具備する記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置であって、
    前記記録ヘッドが、複数の前記吐出口が配列した吐出口列が配置された吐出素子基板が直線状に配列されているラインヘッドであり、
    さらに、前記吐出素子とは別の、前記第1流路内の前記インクを前記第2流路へと流動させる流動手段を備え、
    前記インクが、10ミリ秒における動的表面張力が35mN/m以上48mN/m以下である水性インクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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