JP7129911B2 - コネクタ端子用線材 - Google Patents
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Description
本出願は、2016年11月07日付の日本国出願の特願2016-217048、及び2017年04月25日付の日本国出願の特願2017-086602に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
Feを0.1質量%以上1.5質量%以下、
Pを0.02質量%以上0.7質量%以下、
Sn及びMgの少なくとも一方を合計で0質量%以上0.7質量%以下含有し、
残部がCu及び不純物から構成される。
プレスフィット端子などのコネクタ端子には、導電性に優れ、剛性やばね性が高いことが望まれる。従って、このようなコネクタ端子の素材には、導電性に優れ、高強度であることが望まれる。
上記の本開示のコネクタ端子用線材は、導電性に優れ、高強度なコネクタ端子を形成できる。
最初に本願発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本願発明の一態様に係るコネクタ端子用線材は、
Feを0.1質量%以上1.5質量%以下、
Pを0.02質量%以上0.7質量%以下、
Sn及びMgの少なくとも一方を合計で0質量%以上0.7質量%以下含有し、
残部がCu及び不純物から構成される。
Sn及びMgの少なくとも一方を合計で0.01質量%以上0.7質量%以下含有する形態が挙げられる。
質量比で、Fe/Pが1.0以上10以下である形態が挙げられる。
質量割合で、C,Si,及びMnから選択される1種以上の元素を合計で10ppm以以500ppm以下含む形態が挙げられる。
導電率が40%IACS以上であり、引張強さが600MPa以上である形態が挙げられる。
150℃で200時間以上1000時間以下から選択される所定の時間保持した後の応力緩和率が30%以下である形態が挙げられる。
横断面積が0.1mm2以上2.0mm2以下である形態が挙げられる。
横断面形状が四角形状の角線である形態が挙げられる。
表面の少なくとも一部に、Sn及びAgの少なくとも一方を含むめっき層を備える形態が挙げられる。
以下、本願発明の実施の形態を詳細に説明する。元素の含有量は、断りが無い限り質量割合(質量%又は質量ppm)とする。
(組成)
実施形態のコネクタ端子用線材(以下、銅合金線と呼ぶことがある)は、プレスフィット端子などのコネクタ端子の素材に利用されるものであり、特定の元素を特定の範囲で含む銅合金から構成される。上記銅合金は、Feを0.1%以上1.5%以下、Pを0.02%以上0.7%以下、Sn及びMgの少なくとも一方を合計で0%以上0.7%以下含有し、残部がCu及び不純物から構成されるFe-P-Cu系合金である。上記不純物とは主として不可避なものをいう。以下、元素ごとに詳細に説明する。
Feは、主として、母相であるCuに析出して存在し、引張強さといった強度の向上に寄与する。
Feを0.1%以上含有すると、Fe及びPを含む化合物などを良好に生成でき、析出強化によって強度に優れる銅合金線とすることができる。かつ、上記の析出によってPの母相への固溶を抑制して、高い導電率を有する銅合金線とすることができる。P量や製造条件にもよるが、Feの含有量が多いほど、銅合金線の強度が高くなり易い。高強度化などを望む場合には、Feの含有量を0.2%以上、更に0.35%超、0.4%以上、0.45%以上とすることができる。
Feを1.5%以下の範囲で含有すると、Feを含む析出物などの粗大化を抑制し易い。その結果、粗大な析出物を起点とする破断を低減できて強度に優れる上に、製造過程では伸線加工時などに断線し難く、製造性にも優れる。P量や製造条件にもよるが、Feの含有量が少ないほど、上述の析出物の粗大化などを抑制し易い。析出物の粗大化の抑制(破断、断線の低減)などを望む場合には、Feの含有量を1.2%以下、更に1.0%以下、0.9%未満とすることができる。
実施形態のコネクタ端子用線材においてPは、主としてFeと共に析出物として存在して引張強さといった強度の向上に寄与する、即ち主として析出強化元素として機能する。
Pを0.02%以上含有すると、Fe及びPを含む析出物などを良好に生成でき、析出強化によって強度に優れる銅合金線とすることができる。また、上記の析出によってPの母相への固溶量が少なくなって、高い導電率を有する銅合金線とすることができる。Fe量や製造条件にもよるが、Pの含有量が多いほど、銅合金線の強度が高くなり易い。高強度化などを望む場合には、Pの含有量を0.05%以上、更に0.1%超、0.11%以上、0.12%以上とすることができる。なお、含有するPのうちの一部が脱酸剤として機能し、母相に酸化物として存在することを許容する。
Pを0.7%以下の範囲で含有すると、Fe及びPを含む析出物などの粗大化を抑制し易く、破断や断線を低減できる。また、過剰なPが母相に固溶することを低減して、高い導電率を有する銅合金線とすることができる。Fe量や製造条件にもよるが、Pの含有量が少ないほど、上述の粗大化などを抑制し易い。析出物の粗大化の抑制(破断、断線の低減)などを望む場合には、Pの含有量を0.6%以下、更に0.55%以下、0.5%以下、0.4%以下とすることができる。
Fe及びPを上述の特定の範囲で含有することに加えて、Pに対してFeを適切に含むことが好ましい。Pに対してFeを同等又はそれ以上含むことで、過剰のPが母相に固溶して導電率が低下することを抑制し易く、より確実に導電率が高い銅合金線とすることができる。また、Pに対してFeを適切に含まない場合にはFe単体が析出したり、Fe及びPを含む析出物などが粗大化したりするなどして析出強化による強度向上効果を適切に得られない恐れがある。しかし、Pに対してFeを適切に含むと、両元素は適切な大きさの化合物などとして母相に存在でき、高導電性及び高強度を良好に望める。定量的には、Pの含有量に対するFeの含有量の割合Fe/Pが、質量比で1.0以上10以下であることが挙げられる。
Fe/Pが1.0以上であれば、上述のように析出強化による強度向上効果を良好に得られて強度に優れる。高強度化などを望む場合には、Fe/Pを1.5以上、更に2.0以上、2.2以上とすることができる。特に、Fe/Pが2.5以上であると導電性により優れる傾向にあり、Fe/Pを3.0以上、更に3.5以上、4.0以上としたり、4.0前後、例えば3.5以上4.5以下としたりすることができる。
Fe/Pが10以下であれば、Pに対するFeの過剰含有を抑制して、上述の粗大化を抑制し易い。析出物の粗大化の抑制などを望む場合には、Fe/Pを8以下、更に7以下、6以下とすることができる。
実施形態のコネクタ端子用線材を構成する銅合金は、Sn及びMgの含有量が0%である形態、即ちSn及びMgの双方を実質的に含まない形態とすることができる。この形態でも、Fe量及びP量や製造条件などを調整することで、導電率が高く、高強度な銅合金線となる。また、この形態は、Sn及びMgの含有に起因する導電率の低下を抑制して、導電性により優れる。
Sn及びMgの少なくとも一方を合計で0.7%以下の範囲で含有すれば、SnやMgがCuに過剰に固溶することによる導電率の低下を抑制して、導電率が高い銅合金線とすることができる。また、SnやMgの過剰固溶に起因する加工性の低下を抑制して、伸線加工などの塑性加工が行い易く、製造性にも優れる。高導電性、良好な加工性などを望む場合には、Sn及びMgの少なくとも一方を含み、その合計含有量を0.6%以下、更に0.55%以下、0.5%以下とすることができる。
実施形態のコネクタ端子用線材を構成する銅合金は、Fe,P,Snなどに対して脱酸効果を有する元素を含むことができる。具体的には、質量割合で、C,Si,及びMnから選択される1種以上の元素を合計で10ppm以上500ppm以下含むことが挙げられる。
上記の合計含有量が500ppm以下であれば、これら脱酸剤元素の過剰含有による導電性の低下を招き難く、導電性に優れる。上記合計含有量が少ないほど、上記導電性の低下を抑制し易いことから、300ppm以下、更に200ppm以下、150ppm以下とすることができる。
Mnのみの含有量、又はSiのみの含有量は、5ppm以上100ppm以下、更に5ppm超50ppm以下が好ましい。Mn及びSiの合計含有量は、10ppm以上200ppm以下、更に10ppm超100ppm以下が好ましい。
C,Mn,Siをそれぞれ上述の範囲で含有すると、上述のFeなどの元素の酸化防止効果を良好に得易い。例えば、銅合金中の酸素の含有量を20ppm以下、15ppm以下、更に10ppm以下とすることができる。
実施形態のコネクタ端子用線材を構成する銅合金の組織として、Fe及びPを含む析出物や晶出物が分散する組織が挙げられる。析出物などの分散組織、好ましくは微細な析出物などが均一的に分散する組織を有することで、析出強化による高強度化、PなどのCuへの固溶低減による高い導電率の確保を期待できる。
実施形態のコネクタ端子用線材の横断面形状は、素材として供するコネクタ端子の形状などに応じて適宜選択できる。代表的には、横断面形状が長方形や正方形などの四角形状の角線が挙げられる。横断面形状は、塑性加工条件を調整することで変更できる。例えば、ダイスを用いる場合にはダイス形状を適宜選択することで、上記角線の他、横断面形状が円形状や楕円形状、六角形などの多角形状などの線材とすることもできる。
実施形態のコネクタ端子用線材の大きさは、素材として供するコネクタ端子が得られる範囲で適宜選択できる。例えば、素材である線材からプレスフィット端子を製造する場合、この線材を切削して、所定の形状、大きさに切り出すことがある。このようなコネクタ端子の素材に利用する場合には、切削除去分を含んだ大きさにするとよい。例えば、コネクタ端子用線材の横断面積が0.1mm2以上2.0mm2以下であるものとしたり、上述の角線では、幅が0.1mm以上3.0mm以下程度、厚さが0.1mm以上3.0mm以下程度であるものとしたりすることができる。
実施形態のコネクタ端子用線材は、上述の特定の組成の銅合金で構成されて、導電性及び強度の双方に優れる。定量的には、コネクタ端子用線材は、導電率が40%IACS以上であること、及び引張強さが600MPa以上であることの少なくとも一方、好ましくは双方を満たすことが挙げられる。
より高導電率を望む場合には、導電率を45%IACS以上、更に50%IACS以上、55%IACS以上とすることができる。
より高強度を望む場合には、引張強さを610MPa以上、更に620MPa以上、630MPa以上とすることができる。
実施形態のコネクタ端子用線材は、そのままでもプレスフィット端子などのコネクタ端子の素材に利用できる。実施形態のコネクタ端子用線材を、その表面の少なくとも一部にめっき層を備えるめっき付線材とすることができる。めっき付線材を素材に用いることでめっき付コネクタ端子を容易に製造でき、めっき付コネクタ端子の製造性の向上に寄与する。めっき付コネクタ端子におけるめっきが望まれる箇所にのみ、めっき層を備えるめっき付線材とすることができるが、表面全体にめっき層を備えるめっき付線材とすると、めっき作業を行い易く、製造性に優れる。表面全体にめっき層を備えるめっき付線材の製造過程では、最終形状、最終の大きさの線材にめっき層を形成することができる。一方、最終以前の段階の素材にめっきを施し、このめっき後に最終形状、最終の大きさなどにする塑性加工を施すことができる。この場合、めっきの対象が単純な形状で比較的大きな素材となるため、めっきを施し易く、均一的な厚さのめっき層を備えるめっき付線材を得易い。
実施形態のコネクタ端子用線材は、各種のコネクタ端子の素材に利用できる。上述のように導電性に優れる上に、高強度であり、剛性やばね性、応力緩和特性にも優れるため、実施形態のコネクタ端子用線材は、導電性及び強度の双方に優れることが望まれるプレスフィット端子などの素材に好適に利用できる。その他、実施形態のコネクタ端子用線材は、導電性及び強度の双方に優れることが望まれる各種の分野への利用が期待できる。
実施形態のコネクタ端子用線材は、特定の組成の銅合金で構成されるため、導電性に優れる上に、高強度である。この効果を試験例1で具体的に説明する。このようなコネクタ端子用線材をコネクタ端子の素材に利用して、切削加工などを適宜施すことで、導電性に優れる上に、高強度なコネクタ端子を提供できる。また、高強度であることで、応力緩和特性にも優れるコネクタ端子を提供できると期待される。
実施形態のコネクタ端子用線材は、例えば、以下の工程を備える製造方法によって製造することができる。以下、各工程の概要を列挙し、その後に工程ごとに詳細に説明する。
<伸線工程>上記鋳造材、又は上記鋳造材に加工を施した加工材に、伸線加工を施して所定の大きさの伸線材を製造する。
<成形工程>上記所定の大きさの伸線材に塑性加工を施して、所定の形状のコネクタ端子用線材を製造する。
<熱処理工程>上記<連続鋳造工程>以降、<成形工程>前の素材に時効処理を施す。
<めっき工程>対象となる線材の表面の少なくとも一部に、Sn及びAgの少なくとも一方を含むめっき層を形成して、めっき付線材を製造する。
溶体化処理は、過飽和固溶体を形成することを目的の一つとする熱処理であり、連続鋳造工程以降、時効処理前の任意の時期に施すことができる。
中間熱処理は、連続鋳造工程以降成形工程までに塑性加工が施された場合に、加工に伴う歪みを除去して、加工性の向上を目的の一つとする熱処理であり、条件によってはある程度の時効や軟化も期待できる。中間熱処理は、伸線加工前の上述の加工材、伸線加工途中の中間伸線材、伸線加工後成形工程前の最終寸法の伸線材などに施すことが挙げられる。
この工程では、上述したFe,P,適宜Sn,Mgを特定の範囲で含む特定の組成の銅合金の溶湯を連続鋳造して鋳造材を作製する。ここで、溶解時の雰囲気を真空雰囲気とすると、Fe,P,適宜Snなどの元素の酸化を防止できる。一方、溶解時の雰囲気を大気雰囲気とすると、雰囲気制御が不要であり、生産性を向上できる。この場合、雰囲気中の酸素による上記元素の酸化防止のために、上述のC,Mn,Si(脱酸剤元素)を利用することが好ましい。
MnやSiは、これらを含む原料を別途用意して、上記溶湯中に混合することが挙げられる。この場合、上記湯面における木炭片や木炭粉などがつくる隙間から露出する箇所が雰囲気中の酸素に接触しても、湯面近傍での酸化を抑制できる。上記原料には、MnやSiの単体、MnやSiとFeとの合金などが挙げられる。
この工程では、上記鋳造材や上記鋳造材に加工を施した上記加工材、この加工材に中間熱処理を施した中間熱処理材などに、少なくとも1パス、代表的には複数パスの伸線加工(冷間)を施して、所定の大きさの伸線材を作製する。複数パスを行う場合、パスごとの加工度は、組成や上記所定の大きさなどに応じて適宜調整するとよい。複数パスを行う場合、パス間に中間熱処理を行うと上述のように加工性などを高められる。
この工程は、塑性加工によって、最終形状のコネクタ端子用線材を製造する。この塑性加工は、圧延加工などとすることができるが、所定の形状のダイスを用いた伸線加工とすることができる。この場合、長尺なコネクタ端子用線材を連続的に製造でき、量産に適する。上記ダイスとして、例えば、四角形状の貫通孔を有する異形ダイスを利用すれば、横断面形状が四角形である角線を製造できる。
中間熱処理をバッチ処理とする場合、例えば、以下の条件が挙げられる。
{中間熱処理条件}
(熱処理温度)300℃以上550℃以下、好ましくは350℃以上500℃以下
(保持時間)1時間以上40時間以下、好ましくは3時間以上20時間以下
この工程では、素材(代表的には過飽和固溶体)からFeやPを含む析出物を析出させる人工時効を主たる目的として熱処理(時効処理)を施す。この熱処理によって、上記の析出物などの析出強化による強度向上効果と、Cuへの固溶低減による高い導電率の維持効果とを良好に図ることができる。また、この熱処理によって、ある程度の軟化も期待でき、この熱処理以降に伸線加工などの塑性加工を行う場合に加工性に優れる。
{時効条件}
(熱処理温度)350℃以上550℃以下、好ましくは400℃以上500℃以下
(保持時間)1時間以上40時間以下、好ましくは3時間以上20時間以下
上記の範囲から、組成(元素の種類、含有量)、加工状態などに応じて選択するとよい。具体例として、後述の試験例1を参照するとよい。
上述の<成形工程>前の素材にめっき層を形成する場合、例えば、断面円形状の丸線の伸線材などにめっき層を形成できる。この場合、めっき対象が単純な形状である上に、ある程度太いため、均一的な厚さのめっき層を精度よく形成し易く、製造性に優れる。
上述の<成形工程>後の最終形状の線材にめっき層を形成する場合、成形工程で塑性加工を受けた際に、めっき層を損傷する恐れが無い。
種々の組成の銅合金線を種々の製造条件で作製して、特性を調べた。
電気銅(純度99.99%以上)と、表1に示す各元素を含有する母合金、又は元素単体とを原料として用意した。用意した原料を高純度カーボン製の坩堝(不純物量が20質量ppm以下)を用いて、大気溶解して銅合金の溶湯を作製した。銅合金の組成(残部Cu及び不純物)を表1に示す。「-(ハイフン)」は添加していないことを意味する。
上記溶湯に対するSi,Mnの含有量が表1に示す「微量元素」の「Si」、「Mn」の量(質量ppm)となるように、鉄合金の量を調整して溶湯に混合した。
(A)連続鋳造(線径φ12.5mm)
⇒コンフォーム押出(線径φ9.5mm)
⇒伸線加工(線径φ2.6mm又はφ1.6mm)
⇒熱処理(表1の時効処理の条件)
⇒伸線加工(線径φ1.0mm)
⇒中間熱処理(表1の軟化処理の条件)
⇒成形(異形ダイスを用いた角伸線加工、0.64mm×0.64mm≒0.4mm2、又は縦0.64mm×横1.50mm≒1mm2)
⇒錫めっき層の形成(厚さ1.5μm)
(B)連続鋳造(線径φ12.5mm)
⇒冷間圧延(線径φ9.5mm)
⇒中間熱処理(温度:400℃~550℃から選択、保持時間:4時間~16時間から選択)
⇒皮剥ぎ(線径φ8mm)
⇒伸線加工(線径φ2.6mm又はφ1.6mm)
⇒熱処理(表1の時効処理の条件)
⇒伸線加工(線径φ1.0mm)
⇒中間熱処理(表1の軟化処理の条件)
⇒成形(異形ダイスを用いた角伸線加工、0.64mm×0.64mm≒0.4mm2、又は縦0.64mm×横1.50mm≒1mm2)
⇒錫めっき層の形成(厚さ1.5μm)
(C)連続鋳造(線径φ12.5mm)
⇒伸線加工(線径φ9.5mm)
⇒皮剥ぎ(線径φ8mm)
⇒伸線加工(線径φ2.6mm又はφ1.6mm)
⇒熱処理(表1の時効処理の条件)
⇒伸線加工(線径φ1.0mm)
⇒中間熱処理(表1の軟化処理の条件)
⇒成形(異形ダイスを用いた角伸線加工、0.64mm×0.64mm≒0.4mm2、又は縦0.64mm×横1.50mm≒1mm2)
⇒錫めっき層の形成(厚さ1.5μm)
表1に示すように試料No.1-1~No.1-23の銅合金線は、導電率が40%IACS以上であり、かつ引張強さが600MPa以上であり、試料No.1-101,No.1-102に比較して、高い導電率と高強度とをバランスよく備えることが分かる。この理由の一つとして、試料No.1-1~No.1-23では、Fe,P,適宜Sn,Mgを上述の特定の範囲で含む特定の組成の銅合金から構成されていることが考えられる。この結果、Fe,Pの含有に基づく析出強化による強度向上効果とPなどの母相への固溶低減によるCuの導電率の維持効果とが得られた、適宜SnやMgの固溶強化による強度向上効果も得られた、と考えられる。別の理由の一つとして、ここではFe/Pが1.0以上10以下を満たすことで、FeとPとの化合物が適切に析出して、過剰なPの固溶を低減できたため、と考えられる。また、別の理由の一つとして、ここでは、C,Mn,Siを適切に含むことでFe,P,Snなどの酸化を防止でき、Fe,Pによる強度向上効果、適宜Snによる強度向上効果、固溶低減によるCuの導電率の維持効果を得易くなったためと考えられる。
ここでは、Fe/Pが2.5以上(試料No.1-6,No.1-7)、更に2.9以上(試料No.1-15,No.1-16)、3.0以上(試料No.1-10,No.1-11)、3.5以上(試料No.1-2,No.1-3,No.1-17,No.1-18)であると、導電率が高くなり易いといえる。
Fe及びPに加えて、Snを含んだり(試料No.1-17,No.1-18)、Mgを含んだり(試料No.1-15,No.1-16)すると、SnやMgが微量でも、高い導電性を有すると共に、高強度であることが分かる。これらの試料から、Fe及びPを特定の範囲で含み、Mg及びSnを含まない銅合金線であっても、導電性に優れる上に高強度である、定量的には導電率が40%IACS以上、引張強さが600MPa以上を満たすと期待される。
Fe及びPに加えて、Snを含有する場合、Snの含有量が多いほど強度が高い傾向にあり、少ないほど導電率が高い傾向にある(例えば、試料No.1-22,No.1-23とNo.1-20,No.1-21とNo.1-17,No.1-18とを比較参照)。
Fe及びPに加えて、Mgを含有する場合、Mgの含有量が多いほど強度が高い傾向にあり、少ないほど導電率が高い傾向にある(例えば、試料No.1-10,No.1-11とNo.1-15,No.1-16とを比較参照)。
Fe及びPに加えて、Sn及びMgの双方を含有する場合、Snのみ又はMgのみを含有する場合に比較して、強度がより高くなり易い(例えば、試料No.1-4,No.1-5(双方)とNo.1-2,No.1-3(Snのみ)、No.1-15,No.1-16(Mgのみ)とを比較参照)。更に、導電率がより高く、強度がより高い場合がある(例えば、試料No.1-6,No.1-7(双方)とNo.1-2,No.1-3(Snのみ)、No.1-10,No.1-11(Mgのみ)とを比較参照)。
例えば、試験例1の銅合金の組成、角線の幅及び厚さ、熱処理条件などを適宜変更できる。
Claims (12)
- Feを0.1質量%以上1.5質量%以下、
Pを0.02質量%以上0.7質量%以下、
Snを0.01質量%以上0.7質量%以下、
C,Si,及びMnの三つの元素を合計で10質量ppm以上500質量ppm以下含み、
残部がCu及び不純物から構成され、
導電率が40%IACS以上であり、引張強さが600MPa以上である、
コネクタ端子用線材。 - Feを0.1質量%以上1.5質量%以下、
Pを0.02質量%以上0.7質量%以下、
Sn及びMgを合計で0.01質量%以上0.7質量%以下、
C,Si,及びMnの三つの元素を合計で10質量ppm以上500質量ppm以下含み、
残部がCu及び不純物から構成され、
導電率が40%IACS以上であり、引張強さが600MPa以上である、
コネクタ端子用線材。 - 横断面積が0.1mm2以上2.0mm2以下である請求項1又は請求項2に記載のコネクタ端子用線材。
- 横断面形状が四角形状の角線である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ端子用線材。
- 質量比で、Fe/Pが1.0以上10以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ端子用線材。
- 片持ち梁式の耐熱試験を行った場合の応力緩和率が30%以下であり、前記耐熱試験の試験条件は負荷応力が0.2%耐力の50%であり、加熱温度が150℃であり、保持時間が200時間以上1000時間以下の範囲から選択されたいずれかの時間である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ端子用線材。
- Feを0.1質量%以上1.5質量%以下、
Pを0.02質量%以上0.7質量%以下、
Sn及びMgの少なくとも一方を合計で0質量%以上0.7質量%以下含有し、
残部がCu及び不純物から構成され、
質量比で、Fe/Pが1.0以上10以下であり、
導電率が40%IACS以上であり、引張強さが600MPa以上であり、
横断面積が0.1mm2以上2.0mm2以下である、
コネクタ端子用線材。 - Feを0.1質量%以上1.5質量%以下、
Pを0.02質量%以上0.7質量%以下、
Sn及びMgの少なくとも一方を合計で0質量%以上0.7質量%以下含有し、
残部がCu及び不純物から構成され、
導電率が40%IACS以上であり、引張強さが600MPa以上であり、
横断面積が0.1mm2以上2.0mm2以下であり、
片持ち梁式の耐熱試験を行った場合の応力緩和率が30%以下であり、前記耐熱試験の試験条件は負荷応力が0.2%耐力の50%であり、加熱温度が150℃であり、保持時間が200時間以上1000時間以下の範囲から選択されたいずれかの時間である、
コネクタ端子用線材。 - Feを0.1質量%以上1.5質量%以下、
Pを0.02質量%以上0.7質量%以下、
Sn及びMgの少なくとも一方を合計で0質量%以上0.7質量%以下含有し、
残部がCu及び不純物から構成され、
質量比で、Fe/Pが1.0以上10以下であり、
導電率が40%IACS以上であり、引張強さが600MPa以上であり、
横断面形状が四角形状の角線である、
コネクタ端子用線材。 - Feを0.1質量%以上1.5質量%以下、
Pを0.02質量%以上0.7質量%以下、
Sn及びMgの少なくとも一方を合計で0質量%以上0.7質量%以下含有し、
残部がCu及び不純物から構成され、
導電率が40%IACS以上であり、引張強さが600MPa以上であり、
横断面形状が四角形状の角線であり、
片持ち梁式の耐熱試験を行った場合の応力緩和率が30%以下であり、前記耐熱試験の試験条件は負荷応力が0.2%耐力の50%であり、加熱温度が150℃であり、保持時間が200時間以上1000時間以下の範囲から選択されたいずれかの時間である、
コネクタ端子用線材。 - 質量割合で、C,Si,及びMnから選択される1種以上の元素を合計で10ppm以上500ppm以下含む請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のコネクタ端子用線材。
- 表面の少なくとも一部に、Sn及びAgの少なくとも一方を含むめっき層を備える請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のコネクタ端子用線材。
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