JP7129185B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナーに関する。
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場への適用も始まっている。印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質、高生産性が要求されるようになってきている。例えば、厚紙から薄紙へ紙種が変更されても、紙種に合わせたプロセススピードの変更や定着器の加熱設定温度の変更を行わずに印刷が継続可能な、メディア等速性が求められている。メディア等速に対応していくために、トナーには低温から高温まで幅広い定着温度範囲で適正に定着を完了することが求められるようになってきている。
幅広い定着可能温度で定着を完了させるために、シャープメルト性を有する結晶性樹脂をトナーへ添加し、低温定着性能を向上させたトナーも種々提案されている(特許文献1)。 また、その他の方法としてガラス転移温度の低い樹脂を用いることで、定着温度を下げることが提案されている。ガラス転移温度の低い樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体やエチレン-アクリル酸メチル系共重合体のようなエチレン系エステル基含有共重合体を含有したトナーが提案されている(特許文献2~8)。
特開2011-123352号公報 特開2011-107261号公報 特開平11-202555号公報 特開平8-184986号公報 特開平4-21860号公報 特開平3-150576号公報 特開昭59-18954号公報 特開昭58-95750号公報
引用文献1では、低温定着性は改善されるが、高温高湿環境下における帯電保持性が低下し、トナー飛散が起こることがある。また、高温環境下にさらされることで、結晶性ポリエステルの再結晶化が進行し、トナー物性が変化し、低温定着性が悪化することもある。
また、特許文献2~6で提案されているようなトナー中にこれらのオレフィン系エステル基含有共重合体を一部含有させるだけでは、高速条件での低温定着性を満足することは困難であった。
一方、特許文献7及び8にあるように、これらのオレフィン系エステル基含有共重合体をトナーの主たる樹脂として使用すると、低温定着性は良化するものの高温高湿環境下における帯電保持性が低下する課題が発生した。
以上のように、低温定着性に優れ、高温高湿環境下における帯電保持性を満足させるためには、依然として検討の余地がある。
本発明は、以上のような課題を鑑みたものであり、低温定着性、及び高温高湿環境下における帯電保持性に優れたトナーを提供するものである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、非晶性樹脂を含有するコアと、そのコアを被覆し結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体を含有したシェルを有するトナー粒子を有するトナーを用いることで、低温定着性、及び高温高湿環境下における帯電保持性に優れたトナーとなることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、非晶性樹脂を含有するコアと、結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体を含有し且つ前記コアを被覆するシェルとを有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体は、下記式(1)で示されるユニットY1と下記式(2)で示されるユニットY2とを有し、
前記結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体の水酸基価が、20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、
前記結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体の全質量をX、前記式(1)で示されるユニットY1、前記式(2)で示されるユニットY2の質量をそれぞれa、bとしたとき、(a+b)/Xの値が、0.80以上1.00以下である
ことを特徴とするトナーに関する。
Figure 0007129185000001
(前記式(1)及び(2)中、R1はH又はCH3を示し、R2はH又はCH3を示す。)
本発明によれば、低温定着性、及び高温高湿環境下における帯電保持性に優れたトナーを提供することができる。
以下に本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークが観測される樹脂である。
本発明のトナーは、非晶性樹脂を含有するコアと、結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体を含有し且つ前記コアを被覆するシェルとを有するトナー粒子を有するトナーであって、前記結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体は、下記式(1)で示されるユニットY1と下記式(2)で示されるユニットY2とを有し、前記結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体の水酸基価が、20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、前記結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体の全質量をX、前記式(1)で示されるユニットY1、前記式(2)で示されるユニットY2の質量をそれぞれa、bとしたとき、(a+b)/Xの値が、0.80以上1.00以下であることを特徴とするトナー粒子を有するトナーとしたとき、低温定着性、及び高温高湿環境下における帯電保持性に優れたトナーを得ることを見出した。
Figure 0007129185000002
(前記式(1)及び(2)中、R1はH又はCH3を示し、R2はH又はCH3を示す。)
このような構成を有する本発明のトナーを用いることによる作用効果について、本発明者らは以下のように考える。
本発明の結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体は、非晶性樹脂を含有するコアを被覆するシェルとして使用して、トナーとすることが重要である。低温定着性を向上させるためには、トナー粒子に使用されるメインバインダーのガラス転移温度を低くすることが、有効である。そのための手段として、高いガラス転移温度の樹脂に種々の可塑剤を添加し、ガラス転移温度を低く設計した樹脂をメインバインダーとして使用する方法がある。しかし、低いガラス転移温度のメインバインダーを使用したトナー粒子は、その表面のガラス転移温度が低いために、高温下において分子が運動しやすい状態にある。さらに、高湿環境下ではトナー粒子の表面に水分が吸着されやすくなるため、さらに分子運動性が促進される。その結果、トナー粒子表面の電気抵抗率が低下し、高温高湿環境放置下においてトナーの帯電量が低下し、トナー飛散やカブリなどが発生する。
本発明のトナーは、非晶性樹脂を含有したトナー粒子表面が、低酸価の結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体を含有する被覆層(シェル)を有している。ここで、被覆層とは、トナー粒子表面の一部あるいは全面を樹脂微粒子により被覆している層である。この被覆層が低酸価かつオレフィン部分が高電気抵抗であるため、高湿環境下における水分吸着を抑制し、トナーの帯電量の低下が抑制される。さらに、水酸基部位が、定着時に紙と相互作用することで、紙との密着性が向上することで、定着性を向上する。以上のことから、非晶性樹脂を含有したトナー粒子表面が、結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体を含有する被覆層を有しているトナーは、低温定着性と高温高湿環境下における帯電保持性を両立できると考えられる。ここで、非晶性樹脂を含有するコアを被覆するシェルの平均厚さが0.1μm以上1.0μm以下であり、前記シェルによる前記コアに対する被覆率が90%以上であることが好ましい。これら平均厚さと被覆率の測定法は後述する。
本発明において、その目的を達成するために好ましいトナーの構成を以下に詳述する。
本発明において、オレフィン系水酸基含有共重合体とは、ポリオレフィン骨格に、共重合などの手段で水酸基を有するモノマーユニットが導入された高分子である。具体的には上記式(1)で示されるモノマーユニットY1と、上記式(2)で示されるモノマーユニットY2を有する。
以下、式(1)で示されるモノマーユニットY1、及び、式(2)で示されるモノマーユニットY2に関し具体的に説明する。
式(1)で示されるモノマーユニットY1、及び、式(2)で示されるモノマーユニットY2において、R1がH、及び、R2がHであるオレフィン系水酸基含有共重合体(以下、エチレン-ポバールともいう)が融点を低く設計できるために低温定着性の観点から好ましい。
また、オレフィン系水酸基含有共重合体の全質量をXとし、
式(1)で示されるモノマーユニットY1の質量をaとし、
式(2)で示されるモノマーユニットY2の質量をbとしたときに、
低温定着性や帯電維持性の観点から、樹脂成分に含まれるオレフィン系水酸基含有共重合体における(a+b)/Xの値は、0.80以上1.00以下であり、0.95以上1.00以下であることが好ましく、1.00であることがさらに好ましい。
該オレフィン系水酸基含有共重合体は、該モノマーユニットY1及びモノマーユニットY2以外のモノマーユニットを含有してもよい。本発明の効果を損なわなければ特に限定はされないが、例えば、下記式(3)で示されるモノマーユニットや、下記式(4)で示されるモノマーユニットや、下記式(5)で示されるモノマーユニットなどが挙げられる。
これらは、オレフィン系水酸基含有共重合体を製造する共重合反応の際に、相当するモノマーを添加することや、オレフィン系水酸基含有共重合体を高分子反応により変性させることで導入することができる。
Figure 0007129185000003
(前記式(5)中、R3はH又はCH3を示し、R4はCH3又はC25を示す。)
低温定着性、帯電保持性及び耐ホットオフセット性の観点から、モノマーユニットY2の含有量は、オレフィン系水酸基含有共重合体の全質量に対して、2.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。該モノマーユニットY2の含有量が20.0質量%以下であることで、水分吸着が低下し、トナーの帯電保持性がより向上する。一方、モノマーユニットY2の含有量が2.0質量%以上であることで、水酸基による紙との相互作用により定着性が向上する。
上記各式で示されるモノマーユニットの質量[a]及び[b]、並びに、モノマーユニットY2の含有量は一般的な分析手法を用いて測定することができる。例えば、核磁気共鳴法(1H-NMR)や熱分解ガスクロマトグラフィー法などの手法が適用できる。
また、本発明の結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体の融点は、80℃以上150℃以下であることが好ましい。トナーの耐久性の観点から、融点は80℃以上であり、90℃以上であることが好ましい。一方、低温定着性の観点から、融点は150℃以下であり、130℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましい。また、融点を150℃以下にすることによって帯電保持性が向上した。オレフィン系水酸基含有共重合体の融点は、例えば、水酸基を有するモノマーユニット(すなわち、モノマーユニットY2)の含有量で制御することができる。
オレフィン系水酸基含有共重合体の軟化点(Tm)は、トナー使用時の衝撃や圧力に耐える観点から、100℃以上150℃以下であることが好ましい。該軟化点(Tm)は、オレフィン系水酸基含有共重合体の分子量を変えることで制御することが可能であり、分子量を大きくすることで軟化点を上げることができる。
該オレフィン系水酸基含有共重合体の製造方法は、特に限定されないが、製造の容易性から、エチレン-酢酸ビニル共重合体を加水分解する製造方法が挙げられる。
具体的には、酢酸ビニル由来のモノマーユニットの含有量が4質量%以上34質量%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体を、トルエンとエタノールの混合溶媒中で水酸化ナトリウムを用いて90℃の条件でリフラックスする製造方法が挙げられる。
該オレフィン系水酸基含有共重合体の酸価は、20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上130mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が50mgKOH/g以上であることで、紙との十分な密着性が発現し、150mgKOH/g以下にすることで帯電性がより向上する。
該オレフィン系水酸基含有共重合体の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、10質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。トナー中の該オレフィン系水酸基含有共重合体の含有量は、原材料の仕込み量により、決定することができる。含有量が上記範囲である場合、帯電性の環境変動を抑えつつ、紙との密着性を向上させることができる。
オレフィン系水酸基含有共重合体は、オレフィン系酸基含有共重合体をさらに含有してもよい。
オレフィン系酸基含有共重合体とは、主成分である、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンに、酸基を有する成分をランダム共重合、ブロック共重合、又はグラフト共重合させた樹脂、及びそれらの樹脂を高分子反応により改変させたものである。
該酸基を有する成分として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、スルホン酸ビニルなどが挙げられる。
また、物性に影響しない程度であれば、ポリオレフィンや上記酸基を有する成分以外の成分を含んでもよい。
トナーの高温保管性の観点から、該ポリオレフィン及び上記酸基を有する成分以外の成分由来のモノマーユニットの含有量は、オレフィン系酸基含有共重合体中に20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは実質的に0質量%である。
また、低温定着性の観点から、主成分であるポリエチレンと酸基を有する成分との共重合体であることが好ましい。
さらに、トナーと紙との密着性の観点から、酸基を有する成分は、アクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。低温定着性、高温保管性及び密着性を向上させる観点から、エチレン-アクリル酸共重合体、及びエチレン-メタクリル酸共重合体などが好適に例示できる。
オレフィン系水酸基含有共重合体のトナー粒子表面への被覆は、外添法、乳化凝集法、メカノフュージョン法、流動床型、湿式コーティング法などの公知の方法に従って実施できる。外添法によれば、混合装置を使用することで、オレフィン系水酸基含有共重合体をトナー粒子表面に外添することで実施できる。混合装置としては、例えば、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッドなどが挙げられる。乳化凝集法では、オレフィン系水酸基含有共重合体粒子分散液をトナー粒子分散液に添加し、上記樹脂粒子をトナー粒子表面に付着させることによって、被覆層を形成することができる。得られたトナーは、濾過、純水による洗浄、真空乾燥などの一般的な単離精製方法によって反応系から容易に単離できる。メカノフュージョン法によれば、例えば、トナー粒子表面に環オレフィン系水酸基含有共重合体粒子を静電吸着させた後、機械的衝撃にてトナー粒子表面を加圧し、環状ポリオレフィン樹脂の一部あるいは全量を溶融させて被覆層を形成する。メカノフュージョン法を実施するには、市販の各種メカノフュージョン装置を利用できる。また、流動床コーティング法によれば、トナー粒子の流動床を形成し、この流動床中にオレフィン系水酸基含有共重合体の溶液またはオレフィン系水酸基含有共重合体粒子を噴霧塗布し、溶液に含まれる溶媒を乾燥させて被覆層を形成することによって製造される。流動床コーティング法を実施するには、例えば、流動床式コーティング装置等を利用できる。また、湿式コーティング法には、たとえば、浸漬法、流動化ベッド法などがある。流動化ベッド法によれば、上昇する加圧ガス流によってトナー粒子を平衡の高さにまで上昇させ、つぎにトナー粒子が落下までにオレフィン系水酸基含有共重合体溶液を噴霧塗布する操作を繰り返すことによって、被覆層が形成される。湿式コーティング法を実施するには、たとえば、スプレーコーティング装置、スプレードライヤーなどを利用できる。
本発明に用いられる非晶性樹脂は、トナーに通常用いられる公知の重合体を使用することが可能である。
具体的には、下記の重合体を用いることが可能であり、これらは2つ以上組み合わせて用いても良い。
ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、非晶性ポリエステル、結晶性ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。これらの中で、低分子量であっても強度に優れるため、低温定着性と機械的強度とを両立できる非晶性ポリエステルが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価もしくは3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価もしくは3価以上のカルボン酸)、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとが用いられる。ここで、分岐ポリマーを作成する場合には、結着樹脂の分子内において部分架橋することが有効であり、そのためには、3価以上の多官能化合物を使用することが好ましい。従って、ポリエステルユニットの原料モノマーとして、3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステル、及び/又は3価以上のアルコールを含むことが好ましい。
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられる多価アルコールモノマーとしては、以下の多価アルコールモノマーを使用することができる。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
Figure 0007129185000004
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
式(B)で示されるジオール類;
Figure 0007129185000005
が挙げられる。
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。これらのうち、好ましくはグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが用いられる。これらの2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられる多価カルボン酸モノマーとしては、以下の多価カルボン酸モノマーを使用することができる。
2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n-ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、特に1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。これらの2価のカルボン酸等及び3価以上のカルボン酸は、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
ポリエステル樹脂を主成分とするならば他の樹脂成分を含有するハイブリッド樹脂であっても良い。例えば、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂とのハイブリッド樹脂が挙げられる。ハイブリッド樹脂のような、ビニル系樹脂やビニル系共重合ユニットとポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、ビニル系樹脂やビニル系共重合ユニット及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応を行う方法が好ましい。
例えば、ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。ビニル系共重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、本発明の結着樹脂の酸価は15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。さらに、本発明の結着樹脂の水酸基価は2mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが、低温定着性と保存性の観点から好ましい。さらにガラス転移温度は、30℃以上80℃以下であることが好ましい。30℃以上であると、保存性が良くなり、且つ高温高湿度環境下で樹脂の分子運動に起因した抵抗低下が抑えられ帯電性が良化する。一方、ガラス転移温度80℃より高い場合は定着性に劣る。また、ガラス転移温度が40℃以上であることが保存性の観点からより好ましい。また、ガラス転移温度が70℃以下であることが定着性の観点からより好ましい。また、軟化温度(Tm)は、70℃以上150℃以下であることが好ましく、80℃以上140℃以下であることがより好ましく、80℃以上130℃以下であることがさらに好ましい。Tmが上記の温度範囲内であれば、耐ブロッキング性と耐オフセット性との両立が良好に図られ、さらに、高温時において定着時のトナー溶融成分の紙への染込みが程度となり、良好な表面平滑性が得られる。
また、本発明の結着樹脂は、高分子量の結着樹脂Aと低分子量の結着樹脂Bを混ぜ合わせて使用しても良い。高分子量の結着樹脂Aと低分子量の結着樹脂Bの含有比率(A/B)は質量基準で10/90以上60/40以下であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
高分子量の結着樹脂Aのピーク分子量は10000以上20000以下であることが、耐ホットオフセット性の観点から好ましい。また、高分子量の結着樹脂の酸価は15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。
低分子量の結着樹脂Bの数平均分子量は1500以上3500以下であることが、低温定着性の観点から好ましい。また、低分子量の結着樹脂の酸価は10mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。
本発明では、コアの非晶性樹脂に相溶できる結晶性ポリエステルを必要に応じて使用することができる。本発明に用いられる結晶性ポリエステルは、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールと、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を縮重合して得られる。
本発明で用いられる結晶性ポリエステルの含有量が、前記非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対し、1質量部以上30質量部以下である。
結晶性ポリエステルの含有量が上述の範囲であると、低温定着性が向上する。結晶性ポリエステルの含有量が1質量部より少ない場合では、低温定着性が向上しない。また、含有量が30質量部多い場合では、トナー中に結晶性ポリエステルが微分散することができず、やはり低温定着性が向上しない場合がある。
本発明のトナーに用いられるワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸の如き脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如きアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、低温定着性、耐ホットオフセット性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス、もしくはカルナバワックスの如き脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本発明においては、耐ホットオフセット性がより向上する点で、炭化水素系ワックスがより好ましい。
本発明では、ワックスは、結着樹脂100質量部あたり1質量部以上20質量部以下で使用されることが好ましい。
また、示差走査熱量測定(DSC)装置で測定される昇温時の吸熱曲線において、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度としては45℃以上140℃以下であることが好ましい。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内であるとトナーの保存性と耐ホットオフセット性を両立できるため好ましい。
<着色剤>
トナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28の如き塩基性染料。
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下で使用されることが好ましい。
<荷電制御剤>
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩或いはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩或いはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
<無機微粒子>
本発明のトナーには、必要に応じて無機微粒子を含有させることもできる。無機微粒子は、トナー粒子に内添しても良いし外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好ましい。無機微粉体は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m2/g以上400m2/g以下の無機微粉体が好ましく、耐久性安定化のためには、比表面積が10m2/g以上50m2/g以下の無機微粉体であることが好ましい。流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粉体を併用してもよい。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができる。
<現像剤>
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが、また長期にわたり安定した画像が得られるという点で好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、或いは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)等、一般に公知のものを使用できる。
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際のキャリア混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下、好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。
<製造方法>
本発明のトナーの製造方法は、乳化凝集法、溶融混練法、溶解懸濁法など従来公知のトナー製造方法であれば特に限定されるものではない。
溶融混練法は、トナー粒子の原材料であるトナー組成物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕することを特徴とする。製造方法の例を挙げて説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、ポリエステル樹脂A、ポリエステル樹脂B、有機金属化合物、必要に応じてワックス、着色剤等の他の成分を、所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に他原材料等を分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)の如き分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。中でも、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)は、分級と同時にトナー粒子の球形化処理を行うことができ、転写効率の向上という点で好ましい。
また、必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)を用いて、球形化処理などのトナー粒子の表面処理を行うこともできる。
トナーの平均円形度は、転写性の向上とクリーニング性を両立する観点から0.930以上0.985以下であることが好ましい。粉砕法にてトナーを製造する場合、上記平均円形度のトナーを製造するには、トナー粒子に球形化処理などの表面処理や熱処理による表面処理を行うことで製造することができる。
他の製造方法として乳化凝集法について説明する。
乳化凝集法とは、目的の粒子径に対して、十分に小さい樹脂微粒子を前もって準備し、その樹脂微粒子を水系媒体中で凝集することによりコア粒子を製造する製造方法である。乳化凝集法では、樹脂微粒子の乳化工程、凝集工程、融合工程、冷却工程、洗浄工程を経てトナー粒子が製造される。また必要に応じて、冷却工程後にシェル化工程を加え、コアシェルトナーにすることもできる。
<樹脂微粒子の乳化工程>
ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂微粒子は公知の方法で調製できる。例えば、前記樹脂を有機溶剤に溶かして水系媒体に添加し、界面活性剤や高分子電解質と共にホモジナイザーなどの分散機により水系媒体に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を除去することにより、樹脂粒子分散液を作製することができる。溶解させるために使用する有機溶剤としては、前記樹脂を溶解させるものであればどのようなものでも使用可能であるが、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、クロロホルムなどが溶解性の観点から好ましい。
また、水系媒体中に前記樹脂と界面活性剤、塩基等を加え、クレアミックス、ホモミキサー、ホモジナイザーなどの高速剪断力をかける分散機により実質的に有機溶媒を含まない水系媒体で乳化分散することが環境負荷の点からこの好ましい。特に、沸点が100℃以下の有機溶剤の含有量が、100μg/g以下であることが好ましい。上記の範囲外の場合、トナーを製造する際、有機溶剤を除去、回収する工程が新たに必要になり、廃水処理対策に負荷がかかる。なお水系媒体中の有機溶剤含有量はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて測定することができる。
乳化時に使用する界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、カルボン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。当該界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂微粒子の体積基準のメジアン径は0.05μm以上1.0μm以下が好ましく、0.05μm以上0.4μm以下がより好ましい。1.0μm超ではトナー粒子として適切な重量平均粒径4.0μm以上7.0μm以下のトナー粒子を得ることが困難になりやすい。なお体積基準のメジアン径は動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA-EX150:日機装社製)を使用することで測定可能である。
<凝集工程>
凝集工程とは、上述の樹脂微粒子、色材微粒子、離型剤微粒子を必要量に応じて混合し混合液を調製し、ついで、調製された混合液中に含まれる粒子を凝集し、凝集体を形成させる工程である。当該凝集体を形成させる方法としては、例えば凝集剤を上記混合液中に添加・混合し、温度、機械的動力等を適宜加える方法が好適に例示できる。
上記凝集剤としては、例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩;カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩;鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩があげられる。
前記凝集剤の添加・混合は、混合液中に含まれる樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以下の温度で行うことが好ましい。この温度条件下で上記混合を行うと、凝集が安定した状態で進行する。上記混合は、公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサー等を用いて行うことができる。
ここで形成される凝集体の重量平均粒径としては、特に制限はないが、通常、得ようとするトナー粒子の重量平均粒径と同じ程度になるよう4.0μm以上7.0μm以下に制御するとよい。制御は、例えば、上記凝集剤等の添加・混合時の温度と上記撹拌混合の条件を適宜設定・変更することにより容易に行うことができる。なお、トナー粒子の粒度分布はコールター法による粒度分布解析装置(コールターマルチサイザーIII:コールター社製)にて測定できる。
<融合工程>
融合工程とは、上記凝集体を、樹脂のガラス転移点(Tg)以上に加熱し融合することで、凝集体表面を平滑化させた粒子を製造する工程である。一次融合工程に入る前に、トナー粒子間の融着を防ぐため、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤等を適宜投入することができる。
キレート剤の例としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びそのNa塩等のアルカリ金属塩、グルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム、ニトロトリアセテート(NTA)塩、COOH及びOHの両方の官能性を含む多くの水溶性ポリマー類(高分子電解質)が挙げられる。
上記加熱の温度としては、凝集体に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)から、樹脂が熱分解する温度の間であればよい。加熱・融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。即ち、加熱・融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には10分乃至10時間である。
<冷却工程>
冷却工程とは、上記粒子を含む水系媒体の温度を、コア用樹脂のガラス転移点(Tg)より低い温度まで冷却する工程である。冷却をTgより低い温度まで行わないと、粗大粒子が発生してしまう。具体的な冷却速度は0.1℃/分以上50℃/分以下である。
<被覆工程>
また本発明では必要に応じて、下記の洗浄乾燥工程の前に被覆工程を入れることができる。被覆工程はこれまでの工程で作製した粒子に、樹脂微粒子を新たに添加し付着させて、被覆させる工程である。
ここで添加する結着樹脂微粒子はコアに使用した結着樹脂微粒子と同一の構造でも良いし、異なる構造の結着樹脂微粒子でも良い。
<洗浄乾燥工程>
上記工程を経て作製した粒子を、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムでpHを調整されたイオン交換水で洗浄ろ過を行い、続いて、イオン交換水で洗浄、ろ過を複数回行う。その後、乾燥し、乳化凝集トナー粒子を得ることができる。
次に、本発明に関わる各物性の測定方法について記載する。
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
<結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体のユニット質量比の測定>
上記式(1)で示されるモノマーユニットのアルキレン基の水素原子、上記式(2)で示されるモノマーユニットの水酸基が結合するメチン基の水素の積分比をそれぞれ比較することで、各モノマーユニットの含有比率が算出できる。
具体的には、エチレン-ポバール共重合体における各モノマーユニットの含有比率は以下の方法で算出する。
0.00ppmの内部標準としてのテトラメチルシラン、及び、添加剤としてテトラフルオロ酢酸(TFA)を含む重ジメチルスルホキシド(DMSO)0.5mLに、試料約5mgを溶解させる。得られた溶液を試料管に入れ、繰り返し時間を2.7秒、積算回数を16回の条件で1H-NMRスペクトルを測定する。
1.1-1.4ppmのピークがエチレンに由来するモノマーユニットのCH2-CH2に相当し、3.0-4.0ppm付近のピークがビニルアルコールに由来するモノマーユニットのCHに相当する。それらのピークの積分値の比を計算して、各モノマーユニットの含有比率を算出する。
<樹脂の酸価の測定>
樹脂の酸価は、試料1g中に含まれる、遊離脂肪酸又は樹脂酸のような酸成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。該酸価は、JIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<樹脂の水酸基価の測定>
水酸基価とは、試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。結着樹脂の水酸基価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス等に触れないように、褐色びんにて保存する。
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム35gを20mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.5モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.5モル/l塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した樹脂の試料1.0gを200ml丸底フラスコに精秤し、これに前記のアセチル化試薬5.0mlを、ホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。
フラスコの口に小さな漏斗をのせ、約97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。
1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5mlで漏斗およびフラスコの壁を洗う。
指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
結着樹脂の試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B-C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)、D:結着樹脂の酸価(mgKOH/g)である。
<樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、樹脂約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30乃至100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。さらに、温度60乃至90℃の範囲における温度―吸熱量曲線の最大吸熱ピークの面積から求められる熱量を吸熱量とする。
<樹脂の融点の測定>
上記融点は示査走査熱量計(DSC)を用いて測定することができる。具体的には、試料を0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温から昇温速度10℃/minでサンプルを昇温しながら熱量測定を行う。次いで、得られたDSC曲線より、吸熱ピークのピーク温度を融点とする。また、トナー中に存在する結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体の融点も同様の手法で測定できる。その際に、トナー中に存在する離型剤による融点が観察される場合がある。離型剤の融点と結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体の融点の判別は、トナーからヘキサン溶媒を使用したソックスレー抽出によって離型剤を抽出し、離型剤単体の示査走査熱量測定を上記方法で行い、得られた融点とトナーの融点を比較することにより行う。
<ワックス、結晶性ポリエステルのDSC吸熱量(ΔH)の測定>
本発明におけるワックス、結晶性ポリエステルの最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
トナーを試料とする場合において、最大吸熱ピーク(結着樹脂由来の最大吸熱ピーク)がワックス及び結晶性ポリエステル以外の樹脂の吸熱ピークと重なっていない場合には、得られた最大吸熱ピークの吸熱量をそのままワックス及び結晶性ポリエステルに由来する最大吸熱ピークの吸熱量として扱う。一方、トナーを試料とする場合において、ワックス及び結着樹脂以外の樹脂の吸熱ピークが結着樹脂の最大吸熱ピークと重なっている場合は、ワックス及び結着樹脂以外の樹脂に由来する吸熱量を、得られた最大吸熱ピークの吸熱量から差し引く必要がある。
なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことを意味する。また、最大吸熱ピークの吸熱量(ΔH)はピークの面積から装置付属の解析ソフトを用いて計算により求める。
<樹脂の軟化点の測定>
本発明において、非晶性樹脂の軟化温度の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」(島津製作所社製)を用いて行った。尚、CFT-500Dは、上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させながら溶融してシリンダ底部の細管孔から押し出し、この際のピストンの降下量(mm)と温度(℃)から流動曲線をグラフ化できる装置である。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化温度(Tm)とした。
尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。
まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量(流出終了点、Smaxとする)と、流出が開始した時点におけるピストンの降下量(最低点、Sminとする)との差の1/2を求めた(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、ピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度を、1/2法における溶融温度とした。
測定試料は、約1.2gの結着樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、標準手動式ニュートンプレス NT-100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。測定における具体的な操作は、装置に付属のマニュアルに従って行なう。
CFT-500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:60℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):5.0kgf(49N)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
<GPCによる重量平均分子量の測定>
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102~107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。尚、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF-801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合せや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せを挙げることができる。
また、試料は以下のようにして作製する。
試料をTHF中に入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうし、THFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm以上0.5μm以下、例えばマイショリディスクH-25-2(東ソー社製)など使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が0.5mg/ml以上5.0mg/ml以下となるように調製する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<乳化微粒子の粒径の測定>
乳化微粒子など粒子の粒度分布は、動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い測定する。具体的には、前記測定装置の試料導入部で、透過率が測定範囲内(70乃至95%)になるように、測定試料を調整し、体積分布を測定した。体積分布基準の50%粒径は、累積50%に相当する粒子径(メジアン径)である。
<トナー粒子表面におけるシェル被覆率の測定>
トナー粒子表面の走査電子顕微鏡(SEM)によるシェル被覆率の評価は、以下のように実施することができる。
トナー粒子の表面をルテニウム染色することによって、結晶性樹脂が明瞭なコントラストが得られる。これは、結晶性樹脂と非晶性樹脂に密度の差などがあるため、染色に強弱ができるためだと考えられる。
染色させるトナーをシャーレに入れ、塩化ルテニウム20μL、10質量%過ヨウ素酸ナトリウム20μLを入れ、すぐに蓋を閉め5分間静置する。次にチオ硫酸ナトリウム100μLを加え、クエンチさせるために、さらに5分間静置する。最後に塩酸200μLを加える。
染色されたトナーは、電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製:S-4800、印加電圧2.0kV)を用いて、染色トナーのSEM画像を取得した。
無作為に選んだ20個のトナー粒子について、取得した画像を2値化し、トナー粒子表面のシェルの被覆率を算出した。
<トナー粒子表面におけるシェルの厚さ測定>
トナー粒子表面のシェルの厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、以下のようにして実施することができる。
オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)およびナフタレン膜(20nm)を施し、光硬化性樹脂D800(日本電子社)で包埋したのち、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度1mm/sで膜厚60nm(or70nm)のトナー断面を作製した。
得られた断面を真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いて、RuO4ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、TEM(JEOL社、JEM2800)を用いてSTEM観察を行った。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelで取得した。
得られた画像については、画像処理ソフト「Image-Pro Plus(Media Cybernetics社製)」にて2値化(閾値120/255段階)を行う。
得られた画像を2値化することでトナー粒子中のシェルを抽出し、その厚さを計測する。1つのトナー粒子に対して、上下左右の4箇所を厚さを測定し、トナー粒子1つ当たりの平均のシェルの厚さを算出する。同様の計測を、無作為に選んだ20個のトナー粒子に対して行い、その平均値を算出し、トナー粒子表面のシェルの平均厚さを求めた。
以下の実施例において、部数は質量部基準である。
<結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E1の製造例>
エチレン-酢酸ビニル共重合体A(酢酸ビニルに由来するモノマーユニットの含有量:15質量%、酸価:0mgKOH/g、重量平均分子量:110000、軟化点(Tm):128℃、融点:86℃)100部を、トルエン500mLとエタノール500mLの混合溶媒中に90℃で溶解させた。
続いて、水酸化ナトリウム10部を添加し、6時間リフラックスを行った。その後、エタノールで洗浄することで共重合体E1(エチレン-ポバール共重合体;すなわち、結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体)を得た。得られた共重合体E1の物性を表1に示す。
<結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E2の製造例>
エチレン-酢酸ビニル共重合体Aの代わりにエチレン-酢酸ビニル共重合体B(酢酸ビニルに由来するモノマーユニットの含有量:15質量%、酸価:0mgKOH/g、Tm:98℃、融点:81℃)を使用した以外はE1の製造例と同様に共重合体E2を製造した。
<結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E3の製造例>
エチレン-酢酸ビニル共重合体Aの代わりにエチレン-酢酸ビニル共重合体C(酢酸ビニルに由来するモノマーユニットの含有量:15質量%、酸価:0mgKOH/g、Tm:155℃、融点:89℃)を使用した以外はE1の製造例と同様に共重合体E3を製造した。
<結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E4の製造例>
エチレン-酢酸ビニル共重合体Aの代わりにエチレン-酢酸ビニル共重合体D(酢酸ビニルに由来するモノマーユニットの含有量:5質量%、酸価:0mgKOH/g、Tm:140℃、融点:105℃)を使用した以外はE1の製造例と同様に共重合体E4を製造した。
<結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E5の製造例>
エチレン-酢酸ビニル共重合体Aの代わりにエチレン-酢酸ビニル共重合体E(酢酸ビニルに由来するモノマーユニットの含有量:3質量%、酸価:0mgKOH/g、Tm:138℃、融点:110℃)を使用した以外はE1の製造例と同様に共重合体E5を製造した。
<結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E6の製造例>
エチレン-酢酸ビニル共重合体Aの代わりにエチレン-酢酸ビニル共重合体F(酢酸ビニルに由来するモノマーユニットの含有量:22質量%、酸価:0mgKOH/g、Tm:141℃、融点:116℃)を使用した以外はE1の製造例と同様に共重合体E6を製造した。
<結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E7の製造例>
エチレン-酢酸ビニル共重合体Aの代わりにエチレン-酢酸ビニル共重合体E(酢酸ビニルに由来するモノマーユニットの含有量:26質量%、酸価:0mgKOH/g、Tm:144℃、融点:118℃)を使用した以外はE1の製造例と同様に共重合体E7を製造した。
<結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E9の製造例>
オートクレーブにキシレン50部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で160℃まで昇温した。スチレン90部、酢酸ビニル10部、ジ-t-ブチルパーオキサイド3部、およびキシレン20部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を160℃にコントロールしながら、3時間連続的に滴下し重合させた。更に同温度で1時間保ち重合を完了させ、溶媒を除去し、スチレン-酢酸ビニル共重合体(Tm:140℃、融点:117℃)を得た。
エチレン-酢酸ビニル共重合体Aの代わりに、前記スチレン-酢酸ビニル共重合体を使用した以外はE1の製造例と同様に共重合体E9を製造した。
Figure 0007129185000006
<非晶性樹脂A1の製造例>
窒素導入管、冷却管、撹拌機及び熱電対を装備した5Lの四つ口フラスコを窒素で置換した後、表2に示した原料モノマー及びオクチル酸錫(II)を投入し、180℃で昇温後、10時間反応させた。さらに15mmHgで5時間反応させた後、第二の反応工程として、表2に従い無水トリメリット酸を加え、180℃で3時間反応させて、非晶性樹脂A1を得た。樹脂物性を表2に示した。
<非晶性樹脂B1の製造例>
非晶性ポリエステル樹脂A1製造例において、表2に示した原材料を用い、第二の反応工程において、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が表2に示す所望の温度に到達したのを確認して、反応を停止した以外は樹脂A1の製造例とほぼ同様にして、非晶性樹脂B1を合成した。樹脂物性を表2に示した。
Figure 0007129185000007
<非晶性樹脂C1>
オートクレーブにキシレン50質量部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で160℃まで昇温した。スチレン90部、n-ブチルアクリレート10部、ジ-t-ブチルパーオキサイド5部、およびキシレン20部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を160℃にコントロールしながら、3時間連続的に滴下し重合させた。更に同温度で1時間保ち重合を完了させ、溶媒を除去し、非晶性樹脂C1を得た。得られた非晶性樹脂C1の数平均分子量(Mn)は3000で、ガラス転移温度(Tg)は60℃、軟化点(Tm)は90℃であった。
(非晶性樹脂A1、B1、C1分散液)
非晶性樹脂A1、B1、C1を、それぞれイオン交換水80%、非晶性樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、加熱100℃の条件でキャビトロンを運転し、非晶性樹脂A1、B1、C1の分散液(固形分:20%)を得た。
<結晶性ポリエステルD1の製造例>
・1,6-ヘキサンジオール:
34.5部(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸:
65.5部(0.29モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。
その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステルD1を得た。
得られた結晶性ポリエステルD1の数平均分子量(Mn)4000で、軟化点(Tm)は70℃であった。
(結晶性ポリエステルD1分散液)
結晶性ポリエステルD1を80部、イオン交換水720部を各々ステンレスビーカーに入れ、100℃に加熱した。結晶性ポリエステルD1が溶融した時点で、ホモジナイザーを用いて撹拌した。次いで、アニオン性界面活性剤(固形分:20%)2.0部を滴下しながら、乳化分散を行い、結晶性ポリエステルD1分散液(固形分:10%)を得た。
<樹脂微粒子1分散液の製造例>
・トルエン(和光純薬製) 300部
・結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E1 100部
を混合し、90℃で溶解させた。
別途、イオン交換水700部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7部、ラウリン酸ナトリウム1.5部、及びN,N-ジメチルアミノエタノール0.8部を加え90℃で加熱溶解させた。
次いで、上記のトルエン溶液と水溶液を混ぜ合わせ、超高速撹拌装置T.K.ロボミックス((株)プライミクス製)を用いて7000rpmで撹拌した。さらに、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)用いて200MPaの圧力で乳化した。
その後、エバポレーターを用いて、トルエンを除去し、イオン交換水で濃度調整を行い樹脂微粒子1の濃度20%の水系分散液(樹脂微粒子1分散液)を得た。該樹脂微粒子1の体積基準のメジアン径を動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装製)を用いて測定したところ、0.50μmであった。
<樹脂微粒子2~8分散液の製造例>
結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E1の代わりに結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E2~E8を使用した以外は樹脂微粒子1分散液の製造例と同様に樹脂微粒子2~8を製造した。
<樹脂微粒子9分散液の製造例>
・トルエン(和光純薬製) 300部
・結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体E 100部
を混合し、90℃で溶解させた。
別途、イオン交換水700部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7部、ラウリン酸ナトリウム1.5部、及びN,N-ジメチルアミノエタノール1.0部を加え90℃で加熱溶解させた。
次いで、上記のトルエン溶液と水溶液を混ぜ合わせ、超高速撹拌装置T.K.ロボミックス((株)プライミクス製)を用いて7000rpmで撹拌した。さらに、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)用いて200MPaの圧力で乳化した。
その後、エバポレーターを用いて、トルエンを除去し、イオン交換水で濃度調整を行い樹脂微粒子の濃度20%の水系分散液(樹脂微粒子9分散液)を得た。該樹脂微粒子9の体積基準のメジアン径を動的光散乱式粒度分布径(ナノトラック:日機装製)を用いて測定したところ、0.30μmであった。
(結晶性ポリエステル分散液)
結晶性ポリエステルD1を80部、イオン交換水720部を各々ステンレスビーカーに入れ、100℃に加熱した。結晶性ポリエステルC1が溶融した時点で、ホモジナイザーを用いて撹拌した。次いで、アニオン性界面活性剤(固形分:20%)2.0部を滴下しながら、乳化分散を行い、結晶性ポリエステルD1分散液(固形分:10%)を得た。
(着色剤分散液)
・C.I.ピグメントブルー15:3 1000部
・アニオン界面活性剤 150部
・イオン交換水 9000部
以上を混合し、溶解した後、高圧衝撃式分散機を用いて分散した。得られた着色剤分散液における着色剤粒子の体積平均粒径D50は0.16μm、着色剤濃度は23%であった。
(離型剤分散液)
・炭化水素ワックス(日本精蝋社製FNP0090;最大吸熱ピークのピーク温度90℃) 45部
・アニオン性界面活性剤 5部
・イオン交換水 150部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が210nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(ワックス濃度:20%)を調製した。
<トナー1の製造例(乳化凝集法)>
・非晶性樹脂A1分散液 70部(樹脂相当分)
・非晶性樹脂B1分散液 30部(樹脂相当分)
・結晶性ポリエステルD1分散液 10部(樹脂相当分)
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザーで混合・分散した。これにポリ塩化アルミニウム0.15部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。その後、
・着色剤分散液 7部(着色剤相当分)
・離型剤分散液 5部(離型剤相当分)
以上を追加し、さらにポリ塩化アルミニウム0.05部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。
撹拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌するように撹拌機の回転数を調整しながら、60℃まで昇温し、60℃で15分保持した後、0.05℃/分で昇温しながら10分ごとに、コールターマルチサイザーIII(アパーチャー径:50μm、ベックマン-コールター社製)にて粒径を測定し、体積平均粒径が5.0μmとなったところで、
・樹脂微粒子1分散液 15部(樹脂相当分)
を3分間かけて投入した。投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で96℃まで昇温し、96℃で保持した。30分ごとに光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、平均円形度が0.960になったところで、1℃/分で20℃まで降温して粒子を固化させた。
その後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることにより、トナー粒子1を得た。
100部のトナー粒子1に対して、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0部、イソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)を1.0部、ヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業(株)製)で回転数30s-1、回転時間10min.で混合して、トナー1を得た。
得られたトナー1のDSC測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。
<トナー2の製造例(溶融混練法)>
・非晶性樹脂A1 70部
・非晶性樹脂B1 30部
・結晶性ポリエステルD1 10部
・炭化水素ワックス(日本精蝋社製FNP0090;最大吸熱ピークのピーク温度90℃) 5部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7部
・3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物(CA剤) 0.3部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度150℃に設定した二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF-300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子2を得た。運転条件は、分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1とした。
得られたトナー粒子2 100部に、樹脂微粒子1 15部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業(株)製)で、回転数30s-1、回転時間10minで混合した。
更に、トナー粒子2 100部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0質量部、イソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)1.0部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業(株)製)で回転数30s-1、回転時間10min.で混合して、トナー2を得た。
得られたトナー2のDSC測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。
<トナー3~23の製造例(乳化凝集法)>
トナー1の製造例において、表3に記載の材料を、表3に従い配合して製造した以外は、トナー1の製造例とほぼ同様にして、トナー3~23を得た。
Figure 0007129185000008
Figure 0007129185000009
<磁性キャリア粒子1の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe23 62.7部
MnCO3 29.5部
Mg(OH)2 6.8部
SrCO3 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe23d
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
・工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。そのスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性キャリア粒子1を得た。
<重合体溶液1の調製>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、メチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。得られた重合体溶液1を30部、トルエン40部、メチルエチルケトン30部に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラック 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m2/g、DBP吸油量75ml/100g)
を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散をおこなった。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過をおこない、被覆樹脂溶液1を得た。
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに被覆樹脂溶液1を充填トナー粒子1の100部に対して樹脂成分として2.5部になるように投入した。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
<二成分系現像剤1~23の製造例>
以上のトナー1~23と磁性キャリア1で、トナー濃度が8.0質量%になるようにV型混合機(V-10型:株式会社徳寿製作所)で0.5s-1、回転時間5minで混合し、二成分系現像剤1~23を得た。
〔実施例1〕
上記二成分系現像剤1を用いて、下記の低温定着性評価及び帯電保持性評価を行った。
以下の評価方法に基づいて評価し、その結果を表4に示す。
<評価1:低温定着性評価>
紙:CF-C104(104.0g/m2
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:0.90mg/cm2
評価画像:上記A4用紙の中心に25cm2の画像を配置
定着試験環境:低温低湿環境:温度15℃/湿度10%RH(以下「L/L」)
紙上のトナーの載り量が上記になるように、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーを調整した後、プロセススピードを300mm/sec、定着温度を130℃に設定し低温定着性を評価した。画像濃度低下率の値を低温定着性の評価指標とした。画像濃度低下率は、X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を用い、先ず、中心部の画像濃度を測定する。次に、画像濃度を測定した部分に対し、4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけてシルボン紙により定着画像を摺擦(5往復)し、画像濃度を再度測定する。そして、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)を測定した。
評価基準は以下の様にした。
A:濃度低下率1.0%未満 (非常に優れている)
B:濃度低下率1.0%以上5.0%未満 (優れている)
C:濃度低下率5.0%以上10.0%未満(従来技術レベル)
D:濃度低下率10.0%以上 (従来より劣る)
<評価2:帯電保持性評価>
キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C9075PROを使用し、高温高湿環境下(30℃/80%Rh)において、画像出力した。出力画像は単色モードのシアンの4A横で10cm幅の縦帯画像で、紙上のシアンの反射濃度が1.35になるように調整した。評価紙は、コピー用紙GF-C081(A4、坪量81.4g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。その後、現像器を取り出して150時間放置し、本体を立ち上げてから現像器を本体内に戻し、同じ現像条件で再度同じ画像の画像出力を行った。得られた出力画像の反射濃度を、X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を用いて9か所の平均値を測定し、放置前後の反射濃度と比較して以下の基準により評価した。
(評価基準:放置前後の出力画像の反射濃度差)
A:Δ0.05未満 (非常に優れている)
B:Δ0.05以上Δ0.10未満(優れている)
C:Δ0.10以上Δ0.20未満(従来技術レベル)
D:Δ0.20以上 (従来より劣る)
〔実施例2~18、比較例1~5〕
表4に示す現像剤2~18、及び比較例1~5を用いて、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示した。
Figure 0007129185000010

Claims (5)

  1. 非晶性樹脂を含有するコアと、結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体を含有し且つ前記コアを被覆するシェルとを有するトナー粒子を有するトナーであって、
    前記結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体は、下記式(1)で示されるユニットY1と下記式(2)で示されるユニットY2とを有し、
    前記結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体の水酸基価が、20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、
    前記結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体の全質量をX、前記式(1)で示されるユニットY1、前記式(2)で示されるユニットY2の質量をそれぞれa、bとしたとき、(a+b)/Xの値が、0.80以上1.00以下である
    ことを特徴とするトナー。
    Figure 0007129185000011
    (前記式(1)及び(2)中、R1はH又はCH3を示し、R2はH又はCH3を示す。)
  2. 前記シェルの平均厚さが0.1μm以上1.0μm以下であり、前記シェルによる前記コアに対する被覆率が90%以上である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記結晶性オレフィン系水酸基含有共重合体の含有量が、前記トナー粒子100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である請求項1または2に記載のトナー。
  4. 前記非晶性樹脂が非晶性ポリエステルである請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
  5. 前記コアが、さらに結晶性ポリエステルを含有する請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー。
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