本開示の車両システムは、周囲のオブジェクトを検知するインフラセンサから見た場合における、前記オブジェクトによって生じる死角領域を示す第1死角情報を、前記インフラセンサを有するインフラシステムから取得する取得部と、前記オブジェクトを検知する車載センサから見た場合における、前記オブジェクトによって生じる死角領域を示す第2死角情報を生成する検知認識部とを備え、前記検知認識部は、前記第1死角情報および前記第2死角情報に基づく各々の死角領域に共通する第1共通死角領域を示す共通死角情報を外部装置に出力する統合部を有する。
このように、取得部は、インフラセンサが検知したオブジェクトから、インフラセンサからオブジェクトを見て死角となる第1死角情報を取得する。検知認識部は、オブジェクトを検知する車載センサから見た場合における死角となる第2死角情報を生成する。統合部は、前記第1死角情報および前記第2死角情報に基づく各々の死角領域を統合することにより、インフラセンサからオブジェクトを見た場合と、車載センサからオブジェクトを見た場合とによる共通する死角となる第1共通死角領域が存在していることを認識することができる。
したがって、この車両システムでは、第1共通死角領域を用いれば、車両が安全に走行を行うことができる。
また、本開示の車両情報処理方法において、周囲のオブジェクトを検知するインフラセンサから見た場合における、前記オブジェクトによって生じる死角領域を示す第1死角情報を、前記インフラセンサを有するインフラシステムから取得し、前記オブジェクトを検知する車載センサから見た場合における、前記オブジェクトによって生じる死角領域を示す第2死角情報を生成し、前記第1死角情報および前記第2死角情報に基づく各々の死角領域に共通する第1共通死角領域を示す共通死角情報を外部装置に出力することを含む。
また、本開示のプログラムは、車両情報処理方法をコンピュータに実行させる。
また、本開示の交通システムは、周囲のオブジェクトを検知するインフラセンサと、前記インフラセンサから見た場合における、前記オブジェクトによって生じる死角領域を示す第1死角情報を車両に出力する情報生成部とを有するインフラシステムと、前記オブジェクトを検知する車載センサと、前記オブジェクトを前記車載センサから見た場合における、前記オブジェクトによって生じる死角領域を示す第2死角情報を生成する検知認識部と、前記第1死角情報および前記第2死角情報に基づく各々の死角領域に共通する第1共通死角領域を示す共通死角情報を外部装置に出力する統合部とを有する車両システムと備える。
また、本開示の交通システムは、前記情報生成部は、さらに、前記インフラセンサが検知を行う所定期間と、前記インフラセンサから前記オブジェクトを見た奥行き方向における前記死角領域の長さとに基づいて、前記オブジェクトによって生じる前記死角領域に存在すると推定される他のオブジェクトの速度を算出し、前記速度を示す速度情報を車両に出力する。
これらの場合においても、上記と同様の作用効果を奏する。
また、本開示の車両システムは、さらに、前記共通死角情報に基づいて車両の走行を制御する判断制御部を備える。
これによれば、判断制御部は、第1共通死角情報に基づいて、車両の走行を制御することができる。例えば、判断制御部は、第1共通死角情報が存在する場合に車両の走行を停止し、第1共通死角情報が存在しない場合に車両を走行することができる。
また、本開示の車両システムは、前記判断制御部は、前記第1共通死角領域の大きさが所定の大きさよりも大きいか否かを判断し、前記第1共通死角領域の大きさが前記所定の大きさ以下であれば、前記車両を走行させ、前記第1共通死角領域の大きさが前記所定の大きさよりも大きければ、前記車両の走行を停止させる。
このように、判断制御部は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさ以下であれば、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在しないと判断することができる。このため、検知すべき他のオブジェクトの最小サイズとなる所定の大きさを決定しておけば、所定の大きさを閾値として、小さな死角領域を無視することができる。この場合、判断制御部は、車両を走行させる判断を行うことができる。
また、判断制御部は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさよりも大きければ、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在していると判断することができる。つまり、判断制御部は、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在している可能性があるため、車両の走行を停止させる判断を行うことができる。
このため、この車両システムでは、車両が走行可能であると判断する機会を増加させることができ、かつ、車両とオブジェクトとが衝突するといった、車両走行時の安全性の低下を招き難い。その結果、この車両システムでは、車両の走行効率を向上させることができる。
また、本開示の車両システムにおいて、前記判断制御部は、少なくとも前記オブジェクトの走行方向および速度に基づいて前記車両を制御するための注視領域を抽出し、前記車載センサから見た場合における、前記オブジェクトによって生じる死角領域と前記注視領域とが共通する第2共通死角領域が生じている場合に、前記車両の走行を停止させる。
このように、判断制御部は、オブジェクトの走行方向および速度に基づいて注視領域を抽出し、注視領域にオブジェクトが存在している場合に、車両の走行を停止させる。このため、車両からオブジェクトを見た場合に、オブジェクトの死角領域に他のオブジェクトが存在していても、車両と他のオブジェクトとの衝突を回避することができる。このため、車両は、安全に走行を行うことができる。
また、本開示の車両システムは、さらに、前記車両の走行を可能にする地図情報が格納される記憶部を備え、前記判断制御部は、少なくとも前記地図情報に前記第1死角情報および前記第2死角情報を重ね合わせる。
このように、地図情報に第1死角情報および第2死角情報を重ね合わせるため、地図情報に第1共通死角領域をマッピングすることができる。このため、判断制御部は、第1共通死角領域が示された地図情報に基づいて車両の走行を制御することができる。
また、本開示の車両システムにおいて、前記判断制御部は、前記車両が所定の走行を開始してから前記所定の走行を完了するまでの予測軌跡を推定し、他のオブジェクトが前記予測軌跡に到達するまでの推定される到達予測期間が、前記車両が予測軌跡を通過完了するまでに推定される通過期間よりも長いか否かを判断し、前記到達予測期間が前記通過期間よりも長い場合、前記車両を走行させ、前記到達予測期間が前記通過期間以下である場合、前記車両の走行を停止させる。
このように、到達予測期間が通過期間よりも大きい場合、オブジェクトの移動速度が遅いため、車両がオブジェクトと衝突する可能性が低いと推定できる。また、到達予測期間が通過期間以下である場合、オブジェクトの移動速度が速いため、車両が第2対向車両と衝突する可能性があると推定できる。このため、判断制御部は、到達予測期間が通過期間よりも大きい場合に車両を走行させ、到達予測期間が通過期間以下である場合に車両の走行を停止させるように制御する。このため、この車両システムでは、より、車両が安全に走行を行うことができる。
また、本開示の車両システムにおいて、前記取得部は、さらに、インフラセンサから見た場合における、前記オブジェクトに関する第1オブジェクト情報を取得し、前記検知認識部は、さらに、前記車載センサから見た場合における、前記オブジェクトに関する第2オブジェクト情報を出力し、前記統合部は、さらに、前記第1オブジェクト情報と、前記第2オブジェクト情報とを統合する。
このように、統合部が第1オブジェクト情報と第2オブジェクト情報とを統合するため、オブジェクトの位置および速度等の情報を精度良く検知することができる。このため、オブジェクトの位置および速度等を確認することができる。
また、本開示のインフラシステムは、車両システムと通信を行うインフラシステムであって、周囲に存在するオブジェクトを検知するインフラセンサと、前記インフラセンサが検知した前記オブジェクトの死角領域を抽出する情報生成部とを備え、前記情報生成部は、さらに、前記インフラセンサが検知を行う所定期間と、前記インフラセンサから前記オブジェクトを見た奥行き方向における前記死角領域の長さとに基づいて、前記オブジェクトによって生じる前記死角領域に存在すると推定される他のオブジェクトの速度を算出し、前記速度を示す速度情報を車両に出力する。
このように、センシング情報生成部は、インフラセンサが検知を行う所定期間と、インフラセンサからオブジェクトを見た奥行き方向における死角領域の長さとに基づいて、死角領域に存在すると推定される他のオブジェクトの速度を算出し、速度を示す速度情報を車両に出力する。このため、速度情報を取得した車両は、速度情報に基づいて車両の走行又は停止等の判断を行うことができる。
また、本開示のインフラ情報処理方法は、周囲に存在するオブジェクトをインフラセンサが検知し、前記インフラセンサが検知した前記オブジェクトの死角領域を抽出し、前記インフラセンサが検知を行う所定期間と、前記インフラセンサから前記オブジェクトを見た奥行き方向における前記死角領域の長さとに基づいて、前記オブジェクトによって生じる前記死角領域に存在すると推定される他のオブジェクトの速度を算出し、前記速度を示す速度情報を車両に出力することを含む。
この場合においても、上記と同様の作用効果を奏する。
また、本開示のインフラシステムにおいて、前記所定期間は、第1の時点から第2の時点までの前記オブジェクトを検知した検知期間であり、前記死角領域の長さは、前記検知期間に前記オブジェクトが進んだ距離と、前記第1の時点における死角領域の長さとの和である。
このように、センシング情報生成部は、オブジェクトを検知した検知期間において、オブジェクトが進んだ距離と、第1の時点における奥行き方向の死角領域の長さとの和から、オブジェクトの死角領域内に存在する他のオブジェクトの速度を推定することができる。このため、センシング情報生成部が速度を示す速度情報を車両に出力すれば、車両は、速度情報に基づいて走行又は停止等を行うことができる。
また、本開示のインフラシステムにおいて、前記所定期間は、前記インフラセンサが周期的に検知するサンプリング周期である。
このように、センシング情報生成部は、サンプリング周期ごとにインフラセンサが検知したオブジェクトの死角領域に存在する他のオブジェクトの速度を推定することができる。このため、センシング情報生成部が速度を示す速度情報を車両に出力すれば、車両は、速度情報に基づいて走行又は停止等の判断を行うことができる。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
以下、本開示の実施の形態に係る車両システム、車両情報処理方法、プログラム、交通システム、インフラシステムおよびインフラ情報処理方法について説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る交通システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、交通システム1は、車両システム50およびインフラシステム3が検知したオブジェクトから、共通する死角領域を算出し、死角領域に基づいて車両5の制御を行うシステムである。本実施の形態における、車両システム50が搭載される車両5は、車両5の走行、停止等の制御を車両システム50が行う自動運転車両を想定している。
交通システム1は、インフラシステム3と、車両システム50とを備える。
インフラシステム3は、周囲に存在するオブジェクトを検知し、検知した情報を車両システム50に送信するシステムである。例えば、インフラシステム3は、道路に存在する車両、人等のオブジェクトを検知するために、所定の領域を検知できる道路脇等の場所に設置される。
インフラシステム3は、インフラセンサ31と、センシング情報生成部33と、情報送信部37とを有する。
インフラセンサ31は、周囲のオブジェクトを検知することができるセンサであり、例えば道路におけるオブジェクトの状況を検知する。具体的には、インフラセンサ31は、例えば、検知可能な検知対象エリア内に存在するオブジェクトの位置、大きさ、速さ等の、オブジェクトに関する第1検知情報を生成する。インフラセンサ31は、例えば、LRF(Laser Range Finder)、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)センサ、カメラ、ミリ波レーダー等である。インフラセンサ31は、生成したオブジェクトに関する第1検知情報をセンシング情報生成部33に出力する。
インフラセンサ31の検知対象エリアについて、図2および図3を用いて説明する。
図2は、道路等に設置したインフラセンサ31の検知対象エリアを水平方向から見た場合の模式図である。図3は、インフラセンサ31、検知対象エリア、検知対象エリア内に存在するオブジェクトを上空から俯瞰した様子を示す模式図である。
インフラセンサ31が検知する際に死角となる死角領域の種類は、2つに大別できる。
まず、1つ目は、図2に示すように、インフラセンサ31の検知可能範囲(FOV:Field Of View)に起因する死角領域である。インフラセンサ31は、例えば道路等に設置される状況を想定する。インフラセンサ31は、設置状況によって検知可能範囲が変化する。インフラセンサ31の検知可能範囲は、領域CA02で示す。ここで、インフラセンサ31が道路を検知する際に、死角領域と検知領域とに分けて考えると、領域CA02の先にある道路の領域CA03も検知可能範囲となる。また、領域CA02以外の死角領域CA04、CA05の先にある道路の死角領域CA06、CA07が死角領域となる。つまり、インフラセンサ31の検知可能範囲に起因する死角領域は、インフラセンサ31の設置状況によって固有に決定される。
次に、2つ目は、図3に示すように、インフラセンサ31の検知対象エリア内C01に、オブジェクトC04が存在する場合に、オブジェクトC04によって生じる影(オクルージョン)に起因する死角領域C05である。死角領域C05は、インフラセンサ31の検知可能範囲に起因する死角領域C03と異なり、オブジェクトC04の存在位置によって発生場所が変化する。言い換えれば、オブジェクトC04を検知するインフラセンサ31の位置を変えれば、オブジェクトの死角となる死角領域C05も変化する。オブジェクトC04によって生じる死角領域C05は、死角領域C03、領域C06、C07、検知可能範囲C02およびオブジェクトC04を検知対象エリアから除いた領域である。
オブジェクトC04は、一つしか存在していないため、オクルージョンによって生じる死角領域C05も単一の領域となる。しかし、インフラセンサ31の検知対象エリアC01内に、複数のオブジェクトが存在している場合には、オクルージョンによって生じる死角領域C05の大きさ、領域の数も拡大する。また、オブジェクトC04が移動する場合、オブジェクトC04の存在位置によってインフラセンサ31から死角となる部分も変化する。そのため、死角領域C05もオブジェクトC04の存在位置に応じて変化することとなる。
このようにして、インフラセンサ31がオブジェクトを検知する際の検知可能範囲C02によって起因する死角領域C03と、オクルージョンによって生じる死角領域C05とを抽出する。そのため、既定の検知対象エリアC01では、死角領域C03および死角領域C05をインフラセンサ31が検知した第1検知情報から抽出可能な領域となる。
図1に示すように、センシング情報生成部33は、インフラセンサ31から取得した第1検知情報から、オブジェクトを示す第1オブジェクト情報と、オブジェクトによって生じる死角領域を示す第1死角情報とを生成する。センシング情報生成部33は、情報生成部の一例である。
具体的には、センシング情報生成部33は、オブジェクト検知部34と、死角情報生成部35とを有する。
オブジェクト検知部34は、第1検知情報から検知対象エリア内に存在するオブジェクトを抽出し、インフラセンサ31から見た場合における、オブジェクトの大きさ、形、速度、位置等の情報である第1オブジェクト情報を生成する。オブジェクト検知部34は、生成した第1オブジェクト情報を死角情報生成部35および情報送信部37に出力する。
死角情報生成部35は、インフラセンサ31が検知したオブジェクトの死角領域を抽出する。死角情報生成部35が生成する死角領域について具体的に説明する。
図4は、図3の死角領域C03および死角領域C05だけを抽出した説明図である。図4に示すように、インフラセンサ31の検知対象エリアD01を、グリッドを用いて表現している。図3の検知対象エリアC01は検知対象エリアD01に対応し、図3の死角領域C03は領域D02に対応し、図3の死角領域C05は領域D03に対応している。
死角情報生成部35は、オブジェクト検知部34が生成した第1オブジェクト情報から、インフラセンサ31から見た場合における、図3で示すようにオクルージョンによる死角領域C05を算出し、検知可能範囲C02に起因する死角領域C03を算出する。死角情報生成部35は、検知可能範囲C02に起因する死角領域C03と、オクルージョンに起因する死角領域C05とを重ね合わせることで、図4で示すようにインフラセンサ31から見た場合のオブジェクトの図4の死角領域D02、D03を抽出する。そして、死角情報生成部35は、死角領域D02、D03の位置、大きさ、速さ等である第1死角情報を生成し、情報送信部37に出力する。
検知対象エリアD01内に死角領域が存在しているか否かの判断は、検知対象エリアD01の内部を細かいグリッドに分割し、各グリッドが死角領域D02又は死角領域D03と重なり合う部分が存在しているか否かによる。各グリッドが死角領域D02又は死角領域D03と重なり合う部分は、死角領域に対応したグリッドであると判断できる。一方、各グリッドが死角領域D02又は死角領域D03と重なり合わない部分は、インフラセンサ31が検知することができたグリッドと判断できる。
なお、グリッドのサイズに関しては、より細かいグリッドを用いれば、もともとの死角領域D02、D03の再現度は向上するがデータサイズが大きくなってしまう。このため、グリッドの1つのサイズは、1つのオブジェクトを上空から見た場合と同程度であればよい。一例を挙げれば、人物検知を行う場合では、1辺を20cm程度に設定してもよい。なお、グリッドのサイズは20cm以上でもよく、20cm以下でもよい。
センシング情報生成部33は、オブジェクト検知部34で生成された第1オブジェクト情報および死角情報生成部35によって生成された第1死角情報を、情報送信部37を介して車両システム50に送信する。
情報送信部37では、第1オブジェクト情報および第1死角情報を送信可能な形に変換して車両システム50に送信してもよい。情報送信部37が車両システム50に送信を行うメディアの一例としては、920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯等のアンライセンスバンドの電波を利用してもよく、700MHz帯、5.9GHz帯等の交通安全支援システム向けのバンドの電波を利用してもよい。また、無線送信の際にデータのロスに対応するため、データの再送制御、FEC(Forward Error Correction)等を利用して送信データの冗長性を上げる工夫をしてもよい。インフラシステム3が車両システム50に第1オブジェクト情報および第1死角情報の送信を行う際には、車両システム50が解釈可能となるよう、座標系の情報を付与してもよい。座標系の情報の一例としては、平面直角座標系に代表されるような一般的な座標系に対応付けてもよく、インフラセンサ31を中心とした座標系で送信を行ってもよい。
図5は、インフラシステム3が車両システム50に送信するデータフォーマットの一例を示す図である。
図5に示すように、送信データは、データを一意に認識可能なデータIDのフィールドDA01と、データが作成された時刻を表すタイムスタンプのフィールドDA02と、座標系の情報を示すフィールドDA03と、第1オブジェクト情報を記載するフィールドDA04と、第1死角情報を記載するフィールドDA05とを有する。情報送信部37は、送信データのパケットを作成する際に、送信するネットワークのMTU(Maximum Transfer Unit)に合わせて、送信データを分割して送信してもよい。
車両システム50は、車両5に搭載され、第1死角情報に基づいて車両5の制御を行うシステムである。車両システム50は、車載センサ51と、検知認識部52と、判断制御部55と、地図データベース56と、情報受信部57とを有する。
車載センサ51は、周辺の状況を検知するセンサであり、例えば、車両5の走行方向を含む車両5の周囲に存在するオブジェクトを検知する。具体的には、車載センサ51は、例えば、検知可能な検知対象エリア内に存在するオブジェクトの位置、大きさ等のオブジェクトに関する第2検知情報を生成する。車載センサ51は、例えば、LRF、カメラ、LIDARセンサ、ミリ波レーダー等である。車載センサ51は、生成したオブジェクトに関する第2検知情報を検知認識部52に出力する。
検知認識部52は、車載センサ51が取得したオブジェクトに関する第2検知情報から、車載センサ51から見た場合における、オブジェクトの大きさ、形、速度、位置等の情報である第2オブジェクト情報と、オブジェクトによって生じる死角領域を示す第2死角情報とを生成する。また、検知認識部52は、インフラシステム3から情報受信部57を介して第1オブジェクト情報および第1死角情報を受信する。
検知認識部52は、オブジェクト統合部53と、死角情報統合部54とを有する。
オブジェクト統合部53は、車載センサ51から取得した第2検知情報に基づいて、検知対象エリア内に存在するオブジェクトの検知を行い、車載センサ51が検知したオブジェクトの位置、大きさ、速さ等である第2オブジェクト情報を生成する。オブジェクト統合部53は、統合部の一例である。
オブジェクト統合部53は、第2検知情報から生成した第2オブジェクト情報と、インフラシステム3から取得した第1オブジェクト情報とを統合したオブジェクト統合情報を判断制御部55に出力する。判断制御部55は、道路等の情報が格納されている地図データベース56から、車両5の周囲の地図情報を読み出し、オブジェクト統合情報を地図情報にマッピングするオブジェクトマップ情報を生成し、死角情報統合部54に出力する。なお、オブジェクト統合部53が地図データベース56から、車両5の周囲の地図情報を読み出し、オブジェクトマップ情報を生成してもよく、死角情報統合部54に出力してもよい。
死角情報統合部54は、オブジェクト統合部53が生成した第2オブジェクト情報から、図3に記載のようにオクルージョンによる死角領域を算出する。また、死角情報統合部54は、車載センサ51の第2検知情報に含まれる検知可能範囲に起因する死角領域を算出する。死角情報統合部54は、オクルージョンに起因する死角領域と、検知可能範囲に起因する死角領域とを重ね合わせることで、車載センサ51から見た場合の死角領域を抽出する。これにより、死角情報統合部54は、車載センサ51から見た場合における、死角領域の位置、大きさ等である第2死角情報を生成する。死角情報統合部54は、統合部の一例である。
死角情報統合部54は、第1死角情報および第2死角情報に基づく各々の死角領域に共通する第1共通死角領域を示す共通死角情報を外部装置に出力する。具体的には、死角情報統合部54は、第2検知情報から生成した第2死角情報に含まれる死角領域と、インフラシステム3から取得した第1死角情報に含まれる死角領域とが共通する第1共通死角領域を抽出する。死角情報統合部54は、抽出した第1共通死角領域を示す共通死角情報を外部装置に出力する。外部装置は、例えば、判断制御部55、地図データベース56等である。また、外部装置は、他にも、車両5が備える表示部、車両5を駆動制御する駆動制御部等であってもよい。
死角情報統合部54は、第1共通死角領域を示す共通死角情報をオブジェクトマップ情報にさらにマッピングするマップ情報を生成する。つまり、マップ情報は、第1、2オブジェクト情報および第1、2死角情報が重ね合わされた地図情報となる。具体的には、マップ情報は、地図情報が示す地図に第1死角情報が示す死角領域と、第2死角情報が示す死角領域とがマッピングされた情報である。死角情報統合部54は、マップ情報を判断制御部55に出力する。また、マップ情報には、共通死角情報以外の第1死角情報および第2死角情報もマッピングされている。なお、マップ情報には、少なくとも第1死角情報および第2死角情報が重ね合わされている。
判断制御部55は、共通死角情報に基づいて車両5の走行を制御する。具体的には、判断制御部55は、検知認識部52から提供されたマップ情報から、車両5が走行しても安全であるか否かの判断を行い、安全であると判断した場合には車両5を走行させ、危険があると判断した場合には車両5の走行を停止させる等の制御を行う。例えば、判断制御部55は、車両5のエンジン、ブレーキ、ステアリング等を含むアクチュエータ58を制御する。
判断制御部55は、少なくともオブジェクトの走行方向および速度に基づいて車両5を制御するための注視領域を考慮する。判断制御部55は、車載センサ51から見た場合における、オブジェクトによって生じる死角領域と注視領域とが共通する第2共通死角領域が生じている場合に、車両5の走行を停止させる。判断制御部55は、注視領域に基づいて車両5を走行又は停止させる判断を下す。この注視領域について、図6を用いて説明する。
図6は、車両5走行時に、死角が原因となって事故が発生する典型的な一例を示す図である。図6では、車両5が交差点での右折時に、第1対向車両E01の陰から飛び出してきた第2対向車両E02と地点Pで衝突する右直事故を起こす直前を例示している。なお、図10で示す右折は、例示であり右折の場合に限定されず、左折、Uターン、旋回等でもよい。第1対向車両E01は、オブジェクトの一例である。第2対向車両E02は、他のオブジェクトの一例である。
図6では、上下方向の第1の道路R1と、第1の道路R1と交差する左右方向の第2の道路R2とからなる十字路を示す。上方向に進む車両5は、第1の道路R1と第2の道路R2と交差する交差点で右折しようとし、交差点で待機している。一方で、車両5の対向する側には、下方向に進む第1対向車両E01が交差点で右折しようと交差点で待機している。このような状況において、車両5の車載センサ51が周囲のオブジェクトE03、E21、E22等の情報を検知した場合に、オブジェクトの1つである第1対向車両E01の影になる領域が、斜線で示す死角領域E09となる。この死角領域E09に第2対向車両E02が存在していても、車両5の車載センサ51は、第2対向車両E02を認識することができない。このため、車両5が第1対向車両E01の背後の死角を考慮せずにそのまま走行すれば、車両5が第2対向車両E02と地点Pにおいて衝突する危険性がある。
そこで、車両5が交差点を右折する際に、所定領域E08と死角領域E09とが共通する第1共通死角領域E10がある場合、第1共通死角領域E10に第2対向車両E02が存在していると仮定すると、車両5が第2対向車両E02と衝突する可能性があると考えられる。この場合では、第2対向車両E02が交差点の車両5に近いため、車両5が右折する際に、直進してきた第2対向車両E02と衝突する可能性がある。ここで、ドットのハッチを付した破線で示す所定領域E08は、車両5が右折する際の軌跡と第2対向車両E02が直進する軌跡との交点から、第2対向車両E02が直進してきた側に向かって延びる任意の領域である。
また、第1対向車両E01から遠く離れた死角領域E09内に、第3対向車両E07が存在している場合がある。第3対向車両E07は、所定領域E08の外側に位置している。この場合では、第3対向車両E07が車両5から遠いため、第3対向車両E07が直進してきても、交差点に到達するまでに時間が掛かり、車両5と第3対向車両E07とが衝突する可能性は低くなる。第3対向車両E07は、他のオブジェクトの一例である。
これらの観点から、実際に車両5が右折をする際に注意をしなければならない領域は、死角領域E09から第3対向車両E07を除いた所定領域E08となる。つまり、この所定領域E08が、注視領域となる。
図1に示すように、注視領域は、車両システム50の地図データベース56内にあらかじめ領域の情報として記憶されていてもよい。また、判断制御部55が必要に応じて注視領域を呼び出してもよく、地図データベース56に含まれる車線等の情報に基づいて、判断制御部55が自動的にオブジェクトマップ情報に示されるマップ、マップ情報に示されるマップ等に注視領域をマッピングしてもよい。
このように、車両5は、走行計画に従って注視領域を逐次作成し、注視領域内に衝突する可能性があるオブジェクトが存在していないことを確認してから右折を行えば、右直事故を回避できる。
また、判断制御部55は、車両5を走行又は停止させる判断を下す際に、第2対向車両E02が交差点に到達する期間に基づいて行う。
図7は、オブジェクトと車両5の予測軌跡との関係を示す模式図である。
図7に示すように、判断制御部55は、車両5が方向転換を行う際に通過する予測軌跡を推定し、車両5が予測軌跡を通過完了するまでに推定される通過期間を算出する。ここでいう予測軌跡は、車両5が所定の走行を開始してから所定の走行を完了するまでの軌跡であり、例えば右折する場合を例にあげると、車両5が右折を開始してから右折を完了するまでの間に、車両5が走行すると予測できる軌跡であり、R01で示される。ここでいう方向転換は、右折、左折、Uターン、旋回等を含む意味である。
判断制御部55は、車載センサ51の第2検知情報又はインフラセンサ31からの第1検知情報に基づいて、第2対向車両E02の移動速度vを取得する。第2対向車両E02の移動速度の取得方法は、例えば、ドップラー速度のようなセンサ側で検知可能な値を利用してもよく、検知認識部52で時系列的にトラッキングすることで取得した値を利用してもよい。
判断制御部55は、第2対向車両E02が車両5の予測軌跡R01に到達するまでの推定される到達予測期間を算出する。具体的には、第2対向車両E02の現在位置から車両5の予測軌跡R01までの距離をdとし、第2対向車両E02が予測軌跡R01に到達するまでの推定される到達予測期間をEtとし、第2対向車両E02の移動速度をvとすると、第2対向車両E02が予測軌跡R01に到達するまでの到達予測期間は、Et=d/vで算出される。なお、距離dは、注視領域E08の奥行き方向の最大長さであってもよい。
判断制御部55は、第2対向車両E02が予測軌跡に到達するまでに推定される到達予測期間Etが、車両5が予測軌跡を通過完了するまでの推定される通過期間tよりも長いか否かを判断する。
車両5が予測軌跡を通過完了するまでの期間が短い場合には、第2対向車両E02が予測軌跡に到達するまでの期間が長い場合等があるため、到達予測期間Etが通過期間tよりも長ければ、車両5と第2対向車両E02とが衝突する可能性が低いと推定できる。このため、判断制御部55は、車両5を走行させる。
一方、車両5が予測軌跡を通過完了するまでの到達予測期間が長い場合には、第2対向車両E02が予測軌跡に到達する期間が短い場合等があるため、到達予測期間Etが通過期間t以下であれば、車両5が第2対向車両E02と衝突する可能性があると推定できる。このため、判断制御部55は、車両5の走行を停止させる。
なお、到達予測期間Etが通過期間tよりも長いか否かの判断は、車両5と他のオブジェクトとが衝突する可能性があるか否かの判断を行う一例であり、例えば、単に到達予測期間Etが通過期間tよりも大きいか否かを判断するだけでなく、到達予測期間Etと通過期間tとの差分値が規定値以上であるか否かに基づいて判断してもよい。この場合、例えば、判断制御部55は、規定値を大きく取ることで、通過期間tが到達予測期間Etより十分に小さくなれば衝突の可能性が低いと推定してもよい。
また、図7では、車両5は、インフラセンサ31が第2対向車両E02を検知した場合、インフラシステム3から第2対向車両E02の移動速度、大きさ、位置等を示す情報を取得してもよい。この場合では、インフラシステム3が距離dを算出してもよく、車両5が距離dを算出してもよい。
さらに、判断制御部55は、車両5を走行又は停止させる判断を下す際に、第1共通死角領域の大きさに基づいて行う。つまり、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさよりも大きいか否かを判断する。
判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさ以下であれば、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在しないと判断し、車両5を走行させる。一方、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさよりも大きければ、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在している可能性があるため、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在していると判断し、車両5の走行を停止させる。
他のオブジェクトと車両5との衝突の可能性を算出する際に、衝突の可能性のある他のオブジェクトが人であるか自動車であるか等について、ある程度の推定を行う必要がある。ここで、衝突が想定される他のオブジェクトが人間以上の大きさであるとすると、所定の大きさは、おのずと検知を行わなければならない他のオブジェクトの最小サイズが決定される。例えば、人間を上空から見た場合に、40cm四方以上の大きさを占めるとすると、所定の大きさは、最小の検知すべき他のオブジェクトサイズが40cm四方となる。なお、この車両システム50において、死角情報は死角領域を正確に再現するため、所定の大きさは、できるだけ小さいことが好ましい。したがって、所定の大きさは、40cm四方以上であることに限定されない。
第1共通死角領域が所定の大きさ以下となる場合では、第1共通死角領域が小さな領域であると考えられるため、第1共通死角領域の中には、検知すべき他のオブジェクトが存在していないと推定することができる。
地図データベース56は、車両5の走行を可能にする地図情報を記憶する記憶装置である。地図情報は、例えば判断制御部55が図示しない通信部によってネットワークを介して外部のサーバから平面直角座標等の地図情報を取得してもよい。なお、地図情報には、予め注視領域が含まれていてもよい。地図データベース56は、記憶部の一例である。
情報受信部57は、インフラシステム3から第1オブジェクト情報、第1死角情報等を取得する受信装置である。情報受信部57は、取得部の一例である。なお、検知認識部52がインフラシステム3から第1オブジェクト情報、第1死角情報等を取得することができてもよい。この場合、検知認識部52が取得部の一例となる。
[動作]
次に、交通システム1の動作について、図8を用いて説明する。
図8は、実施の形態1に係る車両システム50の動作を示すフローチャートである。
図8に示すように、まず、判断制御部55は、現在の車両5が存在する地図上での位置を算出する(S1)。ここで、車両5の地図上での位置の算出には、車載センサ51を利用する。例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システム、LRFから取得したデータ等を利用することによって、地図上での車両5の位置を算出してもよい。
次に、判断制御部55は、車両5の地図データベース56から注視領域の抽出を行う(S2)。注視領域の抽出は、車両5が走行中あるいは走行を予定している領域について行われる。
次に、検知認識部52は、車載センサ51が検知した第2検知情報を用いて、車両5の周りのオブジェクトの検知処理を行う。具体的には、検知認識部52のオブジェクト統合部53は、検知対象エリア内に存在するオブジェクトの検知を行い、第2オブジェクト情報を生成する(S3)。
次に、判断制御部55は、ステップS2で抽出した注視領域内に、オブジェクト以外の対向車両等の他のオブジェクトと衝突する可能性があるか否かを判断する(S4)。
判断制御部55は、他のオブジェクトと衝突する可能性があると判断した場合(S4でYes)に、車両5のアクチュエータ58に制御信号を送信し、車両5の走行を停止させる(S13)。そして、判断制御部55は、ステップS1に戻り同様のフローを行う。他のオブジェクトが存在しているか否かを判断する方法については後述する。
一方、他のオブジェクトと衝突する可能性がないと、判断制御部55が判断した場合(S4でNo)に、検知認識部52は、オブジェクト統合部53が算出した第2オブジェクト情報を用いて、第2死角情報を生成する(S5)。なお、他のオブジェクトと衝突する可能性がないには、他のオブジェクトと衝突する可能性が低い場合も含まれる。後述するステップS8においても同様である。
次に、判断制御部55は、オブジェクトによって生じる死角領域と注視領域とが共通する第2共通死角領域が存在するか否かを判断する(S6)。
判断制御部55は、第2共通死角領域が存在すると判断した場合(S6でYes)に、インフラシステム3から取得した第1オブジェクト情報および第1死角情報を取得する(S7)。
一方、判断制御部55は、第2共通死角領域が存在していないと判断した場合(S6でNo)に、他のオブジェクトが検知されない場合に、車両5のアクチュエータ58に制御信号を送信し、車両5を走行させる(S12)。つまり、注視領域と第2死角情報が示す死角領域とが共通している死角領域が存在していない場合に、注視領域内に死角が存在していないと言える。このため、車両5の走行によって他のオブジェクトと衝突する危険性が低いと考えられ、判断制御部55は、他のオブジェクトが検知されない場合に、車両5を走行させる(S12)。そして、判断制御部55は、ステップS1に戻り同様のフローを行う。
なお、ステップS6でNoであっても、他のオブジェクトが検知された場合には、判断制御部55は車両5の走行を停止させ、他のオブジェクトが検知されなくなった場合に、判断制御部55は車両5を走行させる。
次に、判断制御部55は、ステップS7でインフラシステム3から取得した第1オブジェクト情報および第1死角情報に基づいて、ステップS2で抽出した注視領域内に、他のオブジェクトと衝突する可能性があるか否かを判断する(S8)。他のオブジェクトが存在しているか否かを判断する方法については後述する。
判断制御部55は、注視領域内に他のオブジェクトと衝突する可能性があると判断した場合(S8でYes)に、車両5のアクチュエータ58に制御信号を送信し、車両5の走行を停止させる(S13)。そして、判断制御部55は、ステップS1に戻り同様のフローを行う。
一方、注視領域内に他のオブジェクトと衝突する可能性がないと、判断制御部55が判断した場合(S8でNo)に、検知認識部52は、マップ情報を判断制御部55に出力する。具体的には、オブジェクト統合部53が第2オブジェクト情報と第1オブジェクト情報とを地図情報に統合したオブジェクトマップ情報を出力し、死角情報統合部54がオブジェクトマップ情報に第2死角情報と第1死角情報とを統合したマップ情報を出力する(S9)。
次に、判断制御部55は、マップ情報に基づいて、第1死角情報が示す死角領域と、第2死角情報が示す死角領域とに共通する第1共通死角領域が存在するか否かを判断する(S10)。
判断制御部55は、第1共通死角領域が存在していると判断した場合(S10でYes)に、無視できる死角領域であるか否かを判断する(S11)。無視できる死角領域であるか否かの判断については、後述する。
一方、判断制御部55は、第1共通死角領域が存在していないと判断した場合(S10でNo)に、インフラセンサ31の死角領域と車載センサ51の死角領域とが共通する死角が存在していないことを意味する。このため、判断制御部55は、他のオブジェクトが検知されない場合に、車両5のアクチュエータ58に制御信号を送信し、車両5を走行させる(S12)。
なお、ステップS10でNoであっても、他のオブジェクトが検知された場合には、判断制御部55は車両5の走行を停止させ、他のオブジェクトが検知されなくなった場合に、判断制御部55は車両5を走行させる。
判断制御部55は、無視できる死角領域であると判断した場合(S11でYes)に、車両5を走行させる(S12)。そして、判断制御部55は、ステップS1に戻り同様のフローを行う。
一方、判断制御部55は、無視できる死角領域ではないと判断した場合(S11でNo)に、車両5の走行を停止させる(S13)。そして、判断制御部55は、ステップS1に戻り同様のフローを行う。
次に、他のオブジェクトと車両5とが衝突する可能性の判断について、図8および図9を用いて説明する。
図9は、図8のステップS4、S8の判断を示すフローチャートである。
まず、判断制御部55は、他のオブジェクトの移動速度を取得する(S21)。
次に、判断制御部55は、車両5が右折を行う際に通過する予測軌跡と、その予測軌跡を通過して右折完了するまでに掛かる通過期間tとを算出する(S22)。
次に、判断制御部55は、他のオブジェクトが車両5の予測軌跡に到達するまでの到達予測期間Etを算出する(S23)。
次に、判断制御部55は、到達予測期間Etが通過期間tよりも大きいか否かを判断する(S24)。
判断制御部55は、到達予測期間Etが通過期間tよりも大きいと判断した場合(S24でYes)、車両5と他のオブジェクトとが衝突する可能性が低いと言えるため、車両5と他のオブジェクトとが衝突する危険性が低いと判断する(S25)。そして、判断制御部55は、図8のステップS4でNoと判断し、ステップS5に進む。また、図8のステップS8でNoと判断し、ステップS9に進む。
一方、判断制御部55は、到達予測期間Etが通過期間t以下であると判断した場合(S24でNo)、車両5と他のオブジェクトとが衝突する可能性があると言えるため、車両5と他のオブジェクトとが衝突する危険性があると判断する(S26)。そして、判断制御部55は、図8のステップS4でYesと判断し、ステップS13に進む。また、図8のステップS8でYesと判断し、ステップS13に進む。
次に、図8のステップS11における、無視できる死角領域であるか否かの判断について、図10を用いて説明する。
図10は、図8のステップS11の判断を示すフローチャートである。
図10に示すように、まず、判断制御部55は、図8のステップS11から、インフラセンサ31から見た死角領域と車載センサ51から見た死角領域とが共通する第1共通死角領域を抽出する(S31)。
次に、判断制御部55は、第1共通死角領域が所定の大きさよりも大きいか否かを判断する(S32)。
判断制御部55は、第1共通死角領域が所定の大きさよりも大きいと判断した場合(S32でYes)、第1共通死角領域に他のオブジェクトが存在している可能性があると判断できるため、無視できない死角領域であると判断する(S33)。そして、判断制御部55は、図8のステップS11でNoと判断し、ステップS13に進む。
一方、判断制御部55は、第1共通死角領域が所定の大きさ以下であると判断した場合(S32でNo)、第1共通死角領域に他のオブジェクトが存在していないと判断できるため、無視できる死角領域であると判断する(S34)。そして、判断制御部55は、図8のステップS11でYesと判断し、ステップS12に進む。
次に、車両5が他のオブジェクトを回避する手順について説明する。
図11は、車載センサ51およびインフラセンサ31からそれぞれオブジェクトを見た場合に生じる死角領域を示す模式図である。
図11で示すように、交差点内に車両5と第1対向車両E01とが存在している状況において、注視領域E08と死角領域E09とが共通する第1共通死角領域E10に第2対向車両E02が存在している場合、車両5からは第2対向車両E02を認識することができない。このままでは、車両5は、第1共通死角領域E10があることを認識するだけでは、第1対向車両E01が注視領域に存在する場合に車両5の走行を停止する判断を行わなければならない。このように、車載センサ51からの第2検知情報だけでは、第1対向車両E01がいなくなるまで、車両5を走行させることができない。これでは、非効率的な車両5の運行を行わなければならなくなる。
そこで、車両システム50を備えた車両5は、交差点の周囲に存在するインフラセンサ31から第1検知情報を取得する。つまり、インフラセンサ31は、検知可能エリアに存在する第1対向車両E01を検知し、第1検知情報を送信する。これにより、車両5から第1対向車両E01を見た場合における死角領域E09の一部を検知することができる。
しかし、インフラセンサ31から検知する場合においても、第1対向車両E01のオクルージョンによる死角領域E11が生じている。縦線で示す範囲が死角領域E11である。
ここで、死角情報統合部54は、第1共通死角領域E10と、インフラセンサ31からの死角領域E11とを重ね合わせると、注視領域E08内で、インフラセンサ31の死角領域E11と車載センサ51の死角領域E09とが共通する第1共通死角領域E1aを抽出できる。
車両システム50を備えた車両5は、死角領域E1aが存在している場合に、死角領域E1aの大きさ等を考慮して、他のオブジェクトが存在していると判断した場合に走行を停止し、他のオブジェクトが存在していないと判断した場合に走行する。
この車両システム50では、第1共通死角領域E10に衝突の危険性のある第2対向車両E02が存在し、車両5がその存在を認識することができない場合に、判断制御部55が走行しても安全であるとの誤った判断を行い難い。このため、この車両システム50では、他のオブジェクトとの衝突を回避し、安全性を確保しながら車両5の運行を行うことができる。
また、この車両システム50では、死角領域E1aの大きさ等を考慮して、他のオブジェクトが存在しているか否かを判断するため、単に死角が存在するというだけで車両5の走行を停止するといった非効率的な運行が抑制される。
[作用効果]
次に、本実施の形態における車両システム50、車両情報処理方法、プログラム、交通システム1、インフラシステムおよびインフラ情報処理方法の作用効果について説明する。
上述したように、本実施の形態に係る車両システム50は、周囲のオブジェクトを検知するインフラセンサ31から見た場合における、オブジェクトによって生じる死角領域を示す第1死角情報を、インフラセンサ31を有するインフラシステム3から取得する情報受信部57と、オブジェクトを検知する車載センサ51から見た場合における、オブジェクトによって生じる死角領域を示す第2死角情報を生成する検知認識部52とを備える。そして、検知認識部52は、第1死角情報および第2死角情報に基づく各々の死角領域に共通する第1共通死角領域を示す共通死角情報を外部装置に出力する死角情報統合部54を有する。
このように、情報受信部57は、インフラセンサ31が検知したオブジェクトから、インフラセンサ31からオブジェクトを見て死角となる第1死角情報を取得する。検知認識部52は、オブジェクトを検知する車載センサ51から見た場合における死角となる第2死角情報を生成する。死角情報統合部54は、第1死角情報および第2死角情報に基づく各々の死角領域を統合することにより、インフラセンサ31からオブジェクトを見た場合と、車載センサ51からオブジェクトを見た場合とによる共通する死角となる第1共通死角領域が存在していることを認識することができる。
したがって、この車両システム50では、第1共通死角領域を用いれば、車両5が安全に走行を行うことができる。
また、本実施の形態に係る車両情報処理方法は、周囲のオブジェクトを検知するインフラセンサ31から見た場合における、オブジェクトによって生じる死角領域を示す第1死角情報を、インフラセンサ31を有するインフラシステム3から取得し、オブジェクトを検知する車載センサ51から見た場合における、オブジェクトによって生じる死角領域を示す第2死角情報を生成し、第1死角情報および第2死角情報に基づく各々の死角領域に共通する第1共通死角領域を示す共通死角情報を外部装置に出力することを含む。また、本実施の形態に係るプログラムは、車両情報処理方法をコンピュータに実行させる。また、本実施の形態に係る交通システム1は、周囲のオブジェクトを検知するインフラセンサ31と、インフラセンサ31から見た場合における、オブジェクトによって生じる死角領域を示す第1死角情報を車両5に出力する情報生成部とを有するインフラシステム3と、オブジェクトを検知する車載センサ51と、オブジェクトを車載センサ51から見た場合における、オブジェクトによって生じる死角領域を示す第2死角情報を生成する検知認識部52と、第1死角情報および第2死角情報に基づく各々の死角領域に共通する第1共通死角領域を示す共通死角情報を外部装置に出力する死角情報統合部54とを有する車両システム50と備える。
このような車両情報処理方法、プログラムおよび交通システム1においても、上述と同様の作用効果を奏する。
また、本実施の形態に係る車両システム50は、さらに、共通死角情報に基づいて車両5の走行を制御する判断制御部55を備える。
この構成によれば、判断制御部55は、共通死角情報に基づいて、車両5の走行を制御することができる。例えば、判断制御部55は、第1共通死角情報が存在する場合に車両5の走行を停止し、第1共通死角情報が存在しない場合に車両5を走行することができる。
また、本実施の形態に係る車両システム50において、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさよりも大きいか否かを判断する。また、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさ以下であれば、車両5を走行させる。そして、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさよりも大きければ、車両5の走行を停止させる。
このように、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさ以下であれば、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在しないと判断することができる。このため、検知すべき他のオブジェクトの最小サイズとなる所定の大きさを決定しておけば、所定の大きさを閾値として、小さな死角領域を無視することができる。この場合、判断制御部55は、車両5を走行させる判断を行うことができる。
また、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさよりも大きければ、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在していると判断することができる。つまり、判断制御部55は、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在している可能性があるため、車両5の走行を停止させる判断を行うことができる。
このため、この車両システム50では、車両5が走行可能であると判断する機会を増加させることができ、かつ、車両5とオブジェクトとが衝突するといった、車両5走行時の安全性の低下を招き難い。その結果、この車両システム50では、車両5の走行効率を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る車両システム50において、判断制御部55は、少なくともオブジェクトの走行方向および速度に基づいて車両5を制御するための注視領域を抽出する。そして、判断制御部55は、車載センサ51から見た場合における、オブジェクトによって生じる死角領域と注視領域とが共通する第2共通死角領域が生じている場合に、車両5の走行を停止させる。
このように、判断制御部55は、オブジェクトの走行方向および速度に基づいて注視領域を抽出し、注視領域にオブジェクトが存在している場合に、車両5の走行を停止させる。このため、車両5からオブジェクトを見た場合に、オブジェクトの死角領域に他のオブジェクトが存在していても、車両5と他のオブジェクトとの衝突を回避することができる。このため、車両5は、安全に走行を行うことができる。
また、本実施の形態に係る車両システム50は、さらに、車両5の走行を可能にする地図情報が格納される記憶部を備える。そして、判断制御部55は、少なくとも地図情報に第1死角情報および第2死角情報を重ね合わせる。
このように、地図情報に第1死角情報および第2死角情報を重ね合わせるため、地図情報に第1共通死角領域をマッピングすることができる。このため、判断制御部55は、第1共通死角領域が示された地図情報に基づいて車両5の走行を制御することができる。
また、本実施の形態に係る車両システム50において、判断制御部55は、車両5が所定の走行を開始してから所定の走行を完了するまでの予測軌跡を推定する。また、判断制御部55は、他のオブジェクトが予測軌跡に到達するまでの推定される到達予測期間が、車両5が予測軌跡を通過完了するまでの推定される通過期間よりも長いか否かを判断する。さらに、判断制御部55は、到達予測期間が通過期間よりも長い場合、車両5を走行させる。そして、判断制御部55は、到達予測期間が通過期間以下である場合、車両5の走行を停止させる。
このように、到達予測期間Etが通過期間tよりも大きい場合、オブジェクトの移動速度が遅いため、車両5がオブジェクトと衝突する可能性が低いと推定できる。また、到達予測期間Etが通過期間t以下である場合、オブジェクトの移動速度が速いため、車両5が第2対向車両E02と衝突する可能性があると推定できる。このため、判断制御部55は、到達予測期間Etが通過期間tよりも大きい場合に車両5を走行させ、到達予測期間Etが通過期間t以下である場合に車両5の走行を停止させるように制御する。このため、この車両システム50では、より、車両5が安全に走行を行うことができる。
また、本実施の形態に係る車両システム50において、情報受信部57は、さらに、インフラセンサ31から見た場合における、オブジェクトに関する第1オブジェクト情報を取得する。また、検知認識部52は、さらに、車載センサ51から見た場合における、オブジェクトに関する第2オブジェクト情報を出力する。そして、オブジェクト統合部53は、さらに、第1オブジェクト情報と、第2オブジェクト情報とを統合する。
このように、オブジェクト統合部53が第1オブジェクト情報と第2オブジェクト情報とを統合するため、オブジェクトの位置および速度等の情報を精度良く検知することができる。このため、オブジェクトの位置および速度等を確認することができる。
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2に係る交通システム200の構成の一例を示すブロック図である。
図13に示すように、交通システム200は、車両システム250およびインフラシステム203が検知したオブジェクトから、共通する死角領域を算出し、死角領域に基づいて車両205の制御を行うシステムである。本実施の形態における、車両システム250が搭載される車両205は、車両205の走行、停止等の制御を車両システム250が行う自動運転車両を想定している。
交通システム200は、インフラシステム203と、車両システム250とを備える。
インフラシステム203は、周囲に存在するオブジェクトを検知し、検知した情報を車両システム250に送信するシステムである。例えば、インフラシステム203は、道路に存在する車両、人等のオブジェクトを検知するために、所定の領域を検知できる道路脇等の場所に設置される。
インフラシステム203は、インフラセンサ31と、センシング情報生成部233と、判断部38と、情報送信部37とを有する。
インフラセンサ31は、周囲のオブジェクトを検知することができるセンサであり、例えば道路におけるオブジェクトの状況を検知する。具体的には、インフラセンサ31は、例えば、検知可能な検知対象エリア内に存在するオブジェクトの位置、大きさ、速さ等の、オブジェクトに関する第1検知情報を生成する。インフラセンサ31は、例えば、LRF(Laser Range Finder)、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)センサ、カメラ、ミリ波レーダー等である。インフラセンサ31は、生成したオブジェクトに関する第1検知情報をセンシング情報生成部233に出力する。
図13に示すように、センシング情報生成部233は、オブジェクト検知部34、及び死角情報生成部35の他に、算出部39を有する。
センシング情報生成部233の算出部39は、さらに、インフラセンサ31が検知を行う所定期間と、インフラセンサ31からオブジェクトを見た奥行き方向における死角領域の長さとに基づいて、オブジェクトによって生じる死角領域に存在すると推定される他のオブジェクトの速度を算出し、速度を示す速度情報を車両205に出力する。なお、他のオブジェクトの速度の算出は、算出部39に限定されず、例えば、判断部38が行ってもよい。
具体的には、算出部39は、第1死角情報に示される死角領域内に存在するオブジェクトの速度を計算する。インフラセンサ31からオブジェクトが見え始める時間をt0とし、インフラセンサ31がオブジェクトを時間t0の次にインフラセンサ31が検知した時間をt1とし、オブジェクトの速度をVmとし、オブジェクトによって生じたオブジェクトの奥行き方向における死角領域の距離をLb0とする。この場合、時間t0と時間t1とで表されるサンプリング周期をTとすると、死角領域に存在する他のオブジェクトの平均最大速度は、次の式(1)で表される。
ここでいうサンプリング周期は、インフラセンサ31が周期的に検知する周期であり、所定期間の一例である。インフラセンサ31は、サンプリング周期ごとに第1検知情報を生成する。
オブジェクト検知部34は、インフラセンサ31がサンプリング周期ごとにオブジェクトを検知するため、今回生成した第1オブジェクト情報に、前回生成した第1オブジェクト情報を紐付け、判断部38に出力する。なお、前回生成した第1オブジェクト情報が存在しない場合は、紐付けを行うことなく、第1オブジェクト情報を判断部38に出力する。なお、紐付けられた過去の第1オブジェクト情報が存在しない場合は、インフラセンサ31がオブジェクトを最初に検知した場合である。
死角情報生成部35は、インフラセンサ31が周期的に検知するサンプリング周期ごとにオブジェクトを検知するため、今回生成した第1死角情報に、前回生成した第1死角情報を紐付け、判断部38に出力する。なお、紐付けられた過去の第1死角情報が存在しない場合は、紐付けを行うことなく、第1死角情報を判断部38に出力する。
また、第1の時点taからインフラセンサ31が検知した第2の時点をtbとし、第1の時点taにおけるオブジェクトによって生じた奥行き方向における死角領域の距離をLb1とする。この場合、オブジェクトの速度をVとし、第1の時点taから第2の時点tbまでの期間を検知期間Tcとすると、検知期間Tcの間にオブジェクトが進んだ距離Lv1は、Lv1=V×Tcで算出される。死角領域に存在する他のオブジェクトの平均最大速度は、次の式(2)で表される。
ここでいう検知期間は、第1の時点から第2の時点までのオブジェクトを検知した期間であり、所定期間の一例である。
判断部38は、センシング情報生成部233が生成した第1死角情報に他の第1死角情報が紐付けられているか否かを判断する。第1死角情報に他の第1死角情報が紐付けられていないと、判断部38が判断した場合、算出部39は、式(1)を用いて、第1死角情報に示される死角領域内に存在するオブジェクトの速度を計算する。第1死角情報に他の第1死角情報が紐付けられていないと判断する場合は、インフラセンサ31がオブジェクトを初めて検知した場合であることを意味し、インフラセンサ31がオブジェクトを検知した過去の情報が存在していないことを意味する。
第1死角情報に他の第1死角情報が紐付けられていると、判断部38が判断した場合に、算出部39は、前回生成した第1オブジェクト情報と、オブジェクト検知部34が今回生成した第1オブジェクト情報とから、オブジェクトの移動距離を算出する。そして、算出部39は、式(2)を用いて、第1死角情報に示される死角領域内に存在するオブジェクトの速度を計算する。第1死角情報に他の第1死角情報が紐付けられていると判断する場合は、インフラセンサ31がオブジェクトを所定期間以上検知していることを意味し、インフラセンサ31がオブジェクトを検知した過去の情報が存在していることを意味する。
判断部38は、式(1)又は式(2)を用いて計算したオブジェクトの速度を示す速度情報を、情報送信部37を介して車両205の車両システム250に送信する。
車両システム250は、判断制御部55と、情報受信部57とを有する。つまり、本実施の形態では、実施の形態1のような、車載センサ51、検知認識部52、地図データベース56を有していなくてもよいが、これらを有していてもよい。
判断制御部55は、オブジェクトの速度を示す速度情報をインフラシステム203から所得し、車両205を走行又は停止等をさせる判断を行う。以下、判断制御部55が行う車両205を走行又は停止等をさせる判断について、図14および図15を用いて説明する。
図14は、第1対向車両E01が停止している場合における第2対向車両E02を示す模式図である。図14の(a)は、第1の時点において第1対向車両E01によって生じた死角領域に第2対向車両E02が侵入し、第1対向車両E01に向かって走行する図である。図14の(b)は、第2の時点において第1対向車両E01によって生じた死角領域に第2対向車両E02が第1対向車両E01に向かって走行している図である。図14の(b)では、第2対向車両E02が距離L0走行した様子を示している。
図14に示すように、オブジェクトが停止している場合、第1対向車両E01によって生じた死角領域に第2対向車両E02が存在していると推定する。この場合において、第1対向車両E01の死角領域の長さもL0とし、検知を行った第1の時点をtaとし、所定期間経過後に検知を行った第2の時点をtbとする。式(2)を用いると、例えば、tb-taの所定期間内で第2対向車両E02が第1対向車両E01の死角領域内に存在している場合は、第2対向車両E02の速度がVm=L0/(tb-ta)以下であると推定される。所定期間tb-taが経過しても、インフラセンサ31が第2対向車両E02を検知できない場合は、第2対向車両E02の走行速度がさほど速くないと推定できる。
ここでいう死角領域の長さは、検知期間にオブジェクトが進んだ距離と、第1の時点における死角領域の長さとの和である。図14では、オブジェクトが停止しているため、死角領域の長さは、第1の時点における死角領域の長さとなる。
図15は、第1対向車両E01がゆっくり進んでいる場合における第2対向車両E02を示す模式図である。図15の(a)は、第1の時点において第1対向車両E01によって生じた死角領域に第2対向車両E02が侵入し、第1対向車両E01に向かって走行する図である。図15の(b)は、第2の時点において第1対向車両E01によって生じた死角領域に第2対向車両E02が第1対向車両E01に向かって走行している図である。図15の(b)では、第2対向車両E02が距離L1走行した様子を示している。
図15に示すように、また、オブジェクトがゆっくりと車両205に向かって進んでいる場合、第1対向車両E01自身は、ゆっくりと進んでいるため、車両205に危険性を与える可能性は低くなる。しかし、この場合では、第1対向車両E01によって生じる死角領域の発生時間が長くなる。この死角領域に第2対向車両E02が存在していると推定すると、例えば所定期間が数秒程度では、第1対向車両E01が進む距離は短く、この死角領域の大きさもさほど変化していないと考えられる。ここで、所定期間tb-taが経過しても、インフラセンサ31が第2対向車両E02を検知できない場合は、第2対向車両E02の走行速度がさほど速くないと推定できる。
図15では、オブジェクトが進んでいるため、死角領域の長さは、検知期間にオブジェクトが進んだ距離Lv1と、第1の時点における死角領域の長さLb1との和であるLv1+Lb1となる。この場合、第2対向車両E02の速度がVm=(Lv1+Lb1)/(tb-ta)以下と推定できる。
これらのことから、車両205の予測軌跡から他のオブジェクトまでの距離をLaとし、車両205が交差点を曲がり始めてから曲がり終えるまでの時間、言い換えれば、車両205が予測軌跡を通過するまでの時間をtcとすると、Vm<La/tcの条件を満たしているか否かを判断すれば、第2対向車両E02と車両205とが衝突するか否かが判断できると考えられる。
判断制御部55は、オブジェクトの速度Vmが他のオブジェクトの速度La/tcよりも小さいかを判断する。判断制御部55は、オブジェクトの速度Vmが他のオブジェクトの速度La/tcよりも小さいと判断した場合に、車両205を走行させるように、アクチュエータ58を制御する。つまり、第1対向車両E01の死角領域内に第2対向車両E02が存在していても、第2対向車両E02の走行速度は、さほど速くないと推定できる。このため、車両205と第2対向車両E02とが衝突し難いと判断できるため、判断制御部55は、車両205を走行させる。
一方、判断制御部55は、オブジェクトの速度Vmが他のオブジェクトの速度La/tc以上であると判断した場合に、車両205を停止させるように、アクチュエータ58を制御する。つまり、第2対向車両E02が第1対向車両E01の死角領域を脱出するため、第2対向車両E02の走行速度は、速いと推定できる。このため、車両205と第2対向車両E02とが衝突する可能性があると判断できるため、判断制御部55は、車両205を停止させる。
情報受信部57は、インフラシステム203から第1オブジェクト情報、第1死角情報等を取得する受信装置である。
[動作]
次に、交通システム200の動作について、図16を用いて説明する。
図16は、実施の形態2に係る車両システム250の動作を示すシーケンス図である。
図16に示すように、まず、インフラセンサ31は、オブジェクトの死角領域に進入した他のオブジェクトの位置、速度等を検知し(S201)、第1検知情報を生成する。そして、インフラセンサ31は、第1検知情報をセンシング情報生成部233に出力する。なお、図8では、オブジェクトが1つの場合について例示しているが、オブジェクトが複数ある場合は、各々のオブジェクトに対応する各々の第1検知情報をセンシング情報生成部233に出力する。
次に、センシング情報生成部233のオブジェクト検知部34は、第1検知情報からオブジェクトの検知を行い、インフラセンサ31から見た場合における、オブジェクトの速度、位置等の情報である第1オブジェクト情報を生成する(S202)。オブジェクト検知部34は、第1オブジェクト情報を死角情報生成部35に出力する。
次に、死角情報生成部35は、第1オブジェクト情報を取得し、オクルージョンに起因する死角領域を算出し、オブジェクトによって生じる死角領域を示す第1死角情報を生成する(S203)。第1死角情報は、インフラセンサ31が検知したオブジェクトによって生じる死角領域の速度、位置等である。
インフラシステム203では、インフラセンサ31がサンプリング周期ごとにオブジェクトを検知するため、インフラセンサ31がオブジェクトを検知するごとに、オブジェクト検知部34が第1オブジェクト情報を生成し、かつ、死角情報生成部35が第1死角情報を生成する。このため、オブジェクト検知部34は、今回生成した第1オブジェクト情報に、前回生成した第1オブジェクト情報を紐付け、判断部38に出力する。また、死角情報生成部35は、今回生成した第1死角情報に、前回生成した第1死角情報を紐付け、判断部38に出力する。
次に、判断部38は、第1死角情報に他の第1死角情報が紐付けられているか否かを判断する(S204)。なお、判断部38は、第1死角情報に規定数以上の他の第1死角情報が紐付けられているか否かで判断してもよい。
第1死角情報に他の第1死角情報が紐付けられていないと、判断部38が判断した場合(S204でNo)に、センシング情報生成部233の算出部39は、式(1)を用いて、第1死角情報に示される死角領域内に存在する他のオブジェクトの速度を計算する(S205)。
一方、第1死角情報に他の第1死角情報が紐付けられていると、判断部38が判断した場合(S204でYes)に、算出部39は、死角領域を発生させるオブジェクトの移動距離と、第1の時点におけるオブジェクトによって生じた奥行き方向における死角領域の距離との和を算出する(S206)。算出部39は、オブジェクト検知部34が第1の時点で生成した第1オブジェクト情報と、オブジェクト検知部34が第2の時点で生成した第1オブジェクト情報とから、オブジェクトの移動距離を算出する。
次に、算出部39は、式(2)を用いて、第1死角情報に示される死角領域内に存在する他のオブジェクトの速度を計算する(S207)。
そして、ステップS205、又は、S206およびS207を経て、センシング情報生成部233は、オブジェクトの速度を示す速度情報を、情報送信部37を介して車両205の車両システム250に送信する(S208)。
次に、車両システム250の判断制御部55は、速度情報を取得し、速度情報が示すオブジェクトの速度Vmが、他のオブジェクトの速度La/tcよりも小さいか否かを判断する(S211)。
判断制御部55は、オブジェクトの速度Vmが他のオブジェクトの速度La/tc以上であると判断した場合(S211でNo)、オブジェクトの死角領域内に他のオブジェクトが存在していれば、車両205がオブジェクトと衝突する危険性があると判断し、車両205のアクチュエータ58に制御信号を送信し、車両205の走行を停止させる(S212)。
一方、判断制御部55は、オブジェクトの速度Vmが他のオブジェクトの速度La/tcよりも小さいと判断した場合(S211でYes)、オブジェクトの死角領域内に他のオブジェクトが存在していても、車両205がオブジェクトと衝突する危険性が低いと判断し、車両205のアクチュエータ58に制御信号を送信し、車両205を走行させる(S213)。
このようにして、このインフラシステム203では、オブジェクトの死角領域の存在する他のオブジェクトの速度を算出し、オブジェクトの速度が示す速度情報を車両205に送信することで、車両205が安全に通行を行うことができるか否かを判断することができる。このため、車両205は、安全に通行を行うことができる。
[作用効果]
次に、本実施の形態におけるインフラシステム203およびインフラ情報処理方法の作用効果について説明する。
上述したように、本実施の形態に係るインフラシステム203は、周囲に存在するオブジェクトを検知するインフラセンサ31と、インフラセンサ31が検知したオブジェクトの死角領域を抽出するセンシング情報生成部233とを備える。そして、センシング情報生成部233は、さらに、インフラセンサ31が検知を行う所定期間と、インフラセンサ31からオブジェクトを見た奥行き方向における死角領域の長さとに基づいて、オブジェクトによって生じる死角領域に存在すると推定される他のオブジェクトの速度を算出し、速度を示す速度情報を車両205に出力する。
このように、センシング情報生成部233は、インフラセンサ31が検知を行う所定期間と、インフラセンサ31からオブジェクトを見た奥行き方向における死角領域の長さとに基づいて、死角領域に存在すると推定される他のオブジェクトの速度を算出し、速度を示す速度情報を車両205に出力する。このため、速度情報を取得した車両205は、速度情報に基づいて車両205の走行又は停止等の判断を行うことができる。
したがって、このインフラシステム203では、車両205が安全に通行を行うことができる。
また、本実施の形態に係るインフラ情報処理方法は、周囲に存在するオブジェクトをインフラセンサ31が検知し、インフラセンサ31が検知したオブジェクトの死角領域を抽出し、インフラセンサ31が検知を行う所定期間と、インフラセンサ31からオブジェクトを見た奥行き方向における死角領域の長さとに基づいて、オブジェクトによって生じる死角領域に存在すると推定される他のオブジェクトの速度を算出し、速度を示す速度情報を車両205に出力することを含む。
このインフラ情報処理方法においても、インフラシステム203と同様の作用効果を奏する。
また、本実施の形態に係るインフラシステム203において、所定期間は、第1の時点から第2の時点までのオブジェクトを検知した検知期間である。そして、死角領域の長さは、検知期間にオブジェクトが進んだ距離と、第1の時点における死角領域の長さとの和である。
このように、センシング情報生成部233は、オブジェクトを検知した検知期間において、オブジェクトが進んだ距離と、第1の時点における奥行き方向の死角領域の長さとの和から、オブジェクトの死角領域内に存在する他のオブジェクトの速度を推定することができる。このため、センシング情報生成部233が速度を示す速度情報を車両205に出力すれば、車両205は、速度情報に基づいて走行又は停止等の判断を行うことができる。
また、本実施の形態に係るインフラシステム203において、所定期間は、インフラセンサ31が周期的に検知するサンプリング周期である。
このように、センシング情報生成部233は、サンプリング周期ごとにインフラセンサ31が検知したオブジェクトの死角領域に存在する他のオブジェクトの速度を推定することができる。このため、センシング情報生成部233が速度を示す速度情報を車両205に出力すれば、車両205は、速度情報に基づいて走行又は停止等の判断を行うことができる。
(実施の形態3)
本実施の形態に係るインフラシステム303の構成について、図17を用いて説明する。
図17は、実施の形態3に係る交通システム300の構成の一例を示すブロック図である。
本実施の形態では、車両システム350が、さらに、車載センサ51と、検知認識部52と、地図データベース56とを有する点で実施の形態1と異なっている。また、本実施の形態の交通システム300は、特に明記しない場合は、実施の形態1等と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
図17に示すように、車両システム350は、判断制御部55および情報受信部57の他に、車載センサ51と、検知認識部52と、地図データベース56とを備える。
車載センサ51は、周辺の状況を検知するセンサであり、例えば、車両305の走行方向を含む車両305の周囲に存在するオブジェクトを検知する。具体的には、車載センサ51は、例えば、検知可能な検知対象エリア内に存在するオブジェクトの位置、大きさ等のオブジェクトに関する第2検知情報を生成する。車載センサ51は、例えば、LRF、カメラ、LIDARセンサ、ミリ波レーダー等である。車載センサ51は、生成したオブジェクトに関する第2検知情報を検知認識部52に出力する。
検知認識部52は、車載センサ51が取得したオブジェクトに関する第2検知情報から、車載センサ51から見た場合における、オブジェクトの大きさ、形、速度、位置等の情報である第2オブジェクト情報と、オブジェクトによって生じる死角領域を示す第2死角情報とを生成する。また、検知認識部52は、インフラシステム303から情報受信部57を介して第1オブジェクト情報および第1死角情報を受信する。
検知認識部52は、オブジェクト統合部53と、死角情報統合部54とを有する。
オブジェクト統合部53は、車載センサ51から取得した第2検知情報に基づいて、検知対象エリア内に存在するオブジェクトの検知を行い、車載センサ51が検知したオブジェクトの位置、大きさ、速さ等である第2オブジェクト情報を生成する。オブジェクト統合部53は、統合部の一例である。
オブジェクト統合部53は、第2検知情報から生成した第2オブジェクト情報と、インフラシステム303から取得した第1オブジェクト情報とを統合したオブジェクト統合情報を判断制御部55に出力する。判断制御部55は、道路等の情報が格納されている地図データベース56から、車両305の周囲の地図情報を読み出し、オブジェクト統合情報を地図情報にマッピングするオブジェクトマップ情報を生成し、死角情報統合部54に出力する。なお、オブジェクト統合部53が地図データベース56から、車両305の周囲の地図情報を読み出し、オブジェクトマップ情報を生成してもよく、死角情報統合部54に出力してもよい。
死角情報統合部54は、オブジェクト統合部53が生成した第2オブジェクト情報から、図3に記載のようにオクルージョンによる死角領域を算出する。また、死角情報統合部54は、車載センサ51の第2検知情報に含まれる検知可能範囲に起因する死角領域を算出する。死角情報統合部54は、オクルージョンに起因する死角領域と、検知可能範囲に起因する死角領域とを重ね合わせることで、車載センサ51から見た場合の死角領域を抽出する。これにより、死角情報統合部54は、車載センサ51から見た場合における、死角領域の位置、大きさ等である第2死角情報を生成する。死角情報統合部54は、統合部の一例である。
死角情報統合部54は、第1死角情報および第2死角情報に基づく各々の死角領域に共通する第1共通死角領域を示す共通死角情報を外部装置に出力する。具体的には、死角情報統合部54は、第2検知情報から生成した第2死角情報に含まれる死角領域と、インフラシステム303から取得した第1死角情報に含まれる死角領域とが共通する第1共通死角領域を抽出する。死角情報統合部54は、抽出した第1共通死角領域を示す共通死角情報を外部装置に出力する。外部装置は、例えば、判断制御部55、地図データベース56等である。また、外部装置は、他にも、車両305が備える表示部、車両305を駆動制御する駆動制御部等であってもよい。
死角情報統合部54は、第1共通死角領域を示す共通死角情報をオブジェクトマップ情報にさらにマッピングするマップ情報を生成する。つまり、マップ情報は、第1、2オブジェクト情報および第1、2死角情報が重ね合わされた地図情報となる。具体的には、マップ情報は、地図情報が示す地図に第1死角情報が示す死角領域と、第2死角情報が示す死角領域とがマッピングされた情報である。死角情報統合部54は、マップ情報を判断制御部55に出力する。また、マップ情報には、共通死角情報以外の第1死角情報および第2死角情報もマッピングされている。なお、マップ情報には、少なくとも第1死角情報および第2死角情報が重ね合わされている。
判断制御部55は、共通死角情報に基づいて車両305の走行を制御する。具体的には、判断制御部55は、検知認識部52から提供されたマップ情報から、車両305が走行しても安全であるか否かの判断を行い、安全であると判断した場合には車両305を走行させ、危険があると判断した場合には車両305の走行を停止させる等の制御を行う。例えば、判断制御部55は、車両305のエンジン、ブレーキ、ステアリング等を含むアクチュエータ58を制御する。
判断制御部55は、少なくともオブジェクトの走行方向および速度に基づいて車両305を制御するための注視領域を考慮する。判断制御部55は、車載センサ51から見た場合における、オブジェクトによって生じる死角領域と注視領域とが共通する第2共通死角領域が生じている場合に、車両305の走行を停止させる。判断制御部55は、注視領域に基づいて車両305を走行又は停止させる判断を下す。この注視領域について、図18を用いて説明する。
図18は、車両305走行時に、死角が原因となって事故が発生する典型的な一例を示す図である。図18では、車両305が交差点での右折時に、第1対向車両E01の陰から飛び出してきた第2対向車両E02と地点Pで衝突する右直事故を起こす直前を例示している。なお、図18で示す右折は、例示であり右折の場合に限定されず、左折、Uターン、旋回等でもよい。第1対向車両E01は、オブジェクトの一例である。第2対向車両E02は、他のオブジェクトの一例である。
図18では、上下方向の第1の道路R1と、第1の道路R1と交差する左右方向の第2の道路R2とからなる十字路を示す。上方向に進む車両305は、第1の道路R1と第2の道路R2と交差する交差点で右折しようとし、交差点で待機している。一方で、車両305の対向する側には、下方向に進む第1対向車両E01が交差点で右折しようと交差点で待機している。このような状況において、車両305の車載センサ51が周囲のオブジェクトE03、E21、E22等の情報を検知した場合に、オブジェクトの1つである第1対向車両E01の影になる領域が、斜線で示す死角領域E09となる。この死角領域E09に第2対向車両E02が存在していても、車両305の車載センサ51は、第2対向車両E02を認識することができない。このため、車両305が第1対向車両E01の背後の死角を考慮せずにそのまま走行すれば、車両305が第2対向車両E02と地点Pにおいて衝突する危険性がある。
そこで、車両305が交差点を右折する際に、所定領域E08と死角領域E09とが共通する第1共通死角領域E10がある場合、第1共通死角領域E10に第2対向車両E02が存在していると仮定すると、車両305が第2対向車両E02と衝突する可能性があると考えられる。この場合では、第2対向車両E02が交差点の車両305に近いため、車両305が右折する際に、直進してきた第2対向車両E02と衝突する可能性がある。ここで、ドットのハッチを付した破線で示す所定領域E08は、車両305が右折する際の軌跡と第2対向車両E02が直進する軌跡との交点から、第2対向車両E02が直進してきた側に向かって延びる任意の領域である。
また、第1対向車両E01から遠く離れた死角領域E09内に、第3対向車両E07が存在している場合がある。第3対向車両E07は、所定領域E08の外側に位置している。この場合では、第3対向車両E07が車両305から遠いため、第3対向車両E07が直進してきても、交差点に到達するまでに時間が掛かり、車両305と第3対向車両E07とが衝突する可能性は低くなる。第3対向車両E07は、他のオブジェクトの一例である。
これらの観点から、実際に車両305が右折をする際に注意をしなければならない領域は、死角領域E09から第3対向車両E07を除いた所定領域E08となる。つまり、この所定領域E08が、注視領域となる。
図17に示すように、注視領域は、車両システム350の地図データベース56内にあらかじめ領域の情報として記憶されていてもよい。また、判断制御部55が必要に応じて注視領域を呼び出してもよく、地図データベース56に含まれる車線等の情報に基づいて、判断制御部55が自動的にオブジェクトマップ情報に示されるマップ、マップ情報に示されるマップ等に注視領域をマッピングしてもよい。
このように、車両305は、走行計画に従って注視領域を逐次作成し、注視領域内に衝突する可能性があるオブジェクトが存在していないことを確認してから右折を行えば、右直事故を回避できる。
また、判断制御部55は、車両305を走行又は停止させる判断を下す際に、第2対向車両E02が交差点に到達する期間に基づいて行う。
図19は、オブジェクトと車両305の予測軌跡との関係を示す模式図である。
図19に示すように、判断制御部55は、車両305が方向転換を行う際に通過する予測軌跡を推定し、車両305が予測軌跡を通過完了するまでに推定される通過期間を算出する。ここでいう予測軌跡は、車両305が所定の走行を開始してから所定の走行を完了するまでの軌跡であり、例えば右折する場合を例にあげると、車両305が右折を開始してから右折を完了するまでの間に、車両305が走行すると予測できる軌跡であり、R01で示される。ここでいう方向転換は、右折、左折、Uターン、旋回等を含む意味である。
判断制御部55は、車載センサ51の第2検知情報又はインフラセンサ31からの第1検知情報に基づいて、第2対向車両E02の移動速度vを取得する。第2対向車両E02の移動速度の取得方法は、例えば、ドップラー速度のようなセンサ側で検知可能な値を利用してもよく、検知認識部52で時系列的にトラッキングすることで取得した値を利用してもよい。
判断制御部55は、第2対向車両E02が車両305の予測軌跡R01に到達するまでの推定される到達予測期間を算出する。具体的には、第2対向車両E02の現在位置から車両305の予測軌跡R01までの距離をdとし、第2対向車両E02が予測軌跡R01に到達するまでの推定される到達予測期間をEtとし、第2対向車両E02の移動速度をvとすると、第2対向車両E02が予測軌跡R01に到達するまでの到達予測期間は、Et=d/vで算出される。なお、距離dは、注視領域E08の奥行き方向の最大長さであってもよい。
判断制御部55は、第2対向車両E02が予測軌跡に到達するまでに推定される到達予測期間Etが、車両305が予測軌跡を通過完了するまでの推定される通過期間tよりも長いか否かを判断する。
車両305が予測軌跡を通過完了するまでの期間が短い場合には、第2対向車両E02が予測軌跡に到達するまでの期間が長い場合等があるため、到達予測期間Etが通過期間tよりも長ければ、車両305と第2対向車両E02とが衝突する可能性が低いと推定できる。このため、判断制御部55は、車両305を走行させる。
一方、車両305が予測軌跡を通過完了するまでの到達予測期間が長い場合には、第2対向車両E02が予測軌跡に到達する期間が短い場合等があるため、到達予測期間Etが通過期間t以下であれば、車両305が第2対向車両E02と衝突する可能性があると推定できる。このため、判断制御部55は、車両305の走行を停止させる。
なお、到達予測期間Etが通過期間tよりも長いか否かの判断は、車両305と他のオブジェクトとが衝突する可能性があるか否かの判断を行う一例であり、例えば、単に到達予測期間Etが通過期間tよりも大きいか否かを判断するだけでなく、到達予測期間Etと通過期間tとの差分値が規定値以上であるか否かに基づいて判断してもよい。この場合、例えば、判断制御部55は、規定値を大きく取ることで、通過期間tが到達予測期間Etより十分に小さくなれば衝突の可能性が低いと推定してもよい。
また、図19では、車両305は、インフラセンサ31が第2対向車両E02を検知した場合、インフラシステム303から第2対向車両E02の移動速度、大きさ、位置等を示す情報を取得してもよい。この場合では、インフラシステム303が距離dを算出してもよく、車両305が距離dを算出してもよい。
さらに、判断制御部55は、車両305を走行又は停止させる判断を下す際に、第1共通死角領域の大きさに基づいて行う。つまり、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさよりも大きいか否かを判断する。
判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさ以下であれば、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在しないと判断し、車両305を走行させる。一方、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさよりも大きければ、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在している可能性があるため、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在していると判断し、車両305の走行を停止させる。
他のオブジェクトと車両305との衝突の可能性を算出する際に、衝突の可能性のある他のオブジェクトが人であるか自動車であるか等について、ある程度の推定を行う必要がある。ここで、衝突が想定される他のオブジェクトが人間以上の大きさであるとすると、所定の大きさは、おのずと検知を行わなければならない他のオブジェクトの最小サイズが決定される。例えば、人間を上空から見た場合に、40cm四方以上の大きさを占めるとすると、所定の大きさは、最小の検知すべき他のオブジェクトサイズが40cm四方となる。なお、この車両システム350において、死角情報は死角領域を正確に再現するため、所定の大きさは、できるだけ小さいことが好ましい。したがって、所定の大きさは、40cm四方以上であることに限定されない。
第1共通死角領域が所定の大きさ以下となる場合では、第1共通死角領域が小さな領域であると考えられるため、第1共通死角領域の中には、検知すべき他のオブジェクトが存在していないと推定することができる。
地図データベース56は、車両305の走行を可能にする地図情報を記憶する記憶装置である。地図情報は、例えば判断制御部55が図示しない通信部によってネットワークを介して外部のサーバから平面直角座標等の地図情報を取得してもよい。なお、地図情報には、予め注視領域が含まれていてもよい。地図データベース56は、記憶部の一例である。
情報受信部57は、インフラシステム303から第1オブジェクト情報、第1死角情報等を取得する受信装置である。情報受信部57は、取得部の一例である。なお、検知認識部52がインフラシステム303から第1オブジェクト情報、第1死角情報等を取得することができてもよい。この場合、検知認識部52が取得部の一例となる。
[動作]
次に、交通システム1の動作について、図20を用いて説明する。
図20は、実施の形態3に係る車両システム350の動作を示すシーケンス図である。図20では、図16のインフラシステム303の動作を示すシーケンス図と同様であるため、図16のインフラシステム303側のフローを省略している。図16のステップS208で出力された速度情報は、例えば図20の後述するステップS327で取得される。
図20に示すように、まず、判断制御部55は、現在の車両305が存在する地図上での位置を算出する(S321)。ここで、車両305の地図上での位置の算出には、車載センサ51を利用する。例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システム、LRFから取得したデータ等を利用することによって、地図上での車両305の位置を算出してもよい。
次に、判断制御部55は、車両305の地図データベース56から注視領域の抽出を行う(S322)。注視領域の抽出は、車両305が走行中あるいは走行を予定している領域について行われる。
次に、検知認識部52は、車載センサ51が検知した第2検知情報を用いて、車両305の周りのオブジェクトの検知処理を行う。具体的には、検知認識部52のオブジェクト統合部53は、検知対象エリア内に存在するオブジェクトの検知を行い、第2オブジェクト情報を生成する(S323)。
次に、判断制御部55は、ステップS322で抽出した注視領域内に、オブジェクト以外の対向車両等の他のオブジェクトと衝突する可能性があるか否かを判断する(S324)。
判断制御部55は、他のオブジェクトと衝突する可能性があると判断した場合(S324でYes)に、他のオブジェクトの速度VmがLa/tcよりも小さいか否かを判断する(S333)。判断制御部55は、速度VmがLa/tcよりも小さいと判断した場合(S333でYes)に、車両305のアクチュエータ58に制御信号を送信し、車両305を走行させる(S332)。一方、判断制御部55は、他のオブジェクトの速度VmがLa/tc以上であると判断した場合(S333でNo)に、車両305のアクチュエータ58に制御信号を送信し、車両305の走行を停止させる(S334)。そして、判断制御部55は、ステップS321に戻り同様のフローを行う。他のオブジェクトが存在しているか否かを判断する方法については後述する。
一方、他のオブジェクトと衝突する可能性がないと、判断制御部55が判断した場合(S324でNo)に、検知認識部52は、オブジェクト統合部53が算出した第2オブジェクト情報を用いて、第2死角情報を生成する(S325)。なお、他のオブジェクトと衝突する可能性がないには、他のオブジェクトと衝突する可能性が低い場合も含まれる。後述するステップS328においても同様である。
次に、判断制御部55は、オブジェクトによって生じる死角領域と注視領域とが共通する第2共通死角領域が存在するか否かを判断する(S326)。
判断制御部55は、第2共通死角領域が存在すると判断した場合(S326でYes)に、インフラシステム303から取得した第1オブジェクト情報および第1死角情報を取得する(S327)。
一方、判断制御部55は、第2共通死角領域が存在していないと判断した場合(S326でNo)に、他のオブジェクトが検知されない場合に、車両305のアクチュエータ58に制御信号を送信し、車両305を走行させる(S332)。つまり、注視領域と第2死角情報が示す死角領域とが共通している死角領域が存在していない場合に、注視領域内に死角が存在していないと言える。このため、車両305の走行によって他のオブジェクトと衝突する危険性が低いと考えられ、判断制御部55は、他のオブジェクトが検知されない場合に、車両305を走行させる(S332)。そして、判断制御部55は、ステップS321に戻り同様のフローを行う。
なお、ステップS326でNoであっても、他のオブジェクトが検知された場合には、判断制御部55は車両305の走行を停止させ、他のオブジェクトが検知されなくなった場合に、判断制御部55は車両305を走行させる。
次に、判断制御部55は、ステップS327でインフラシステム303から取得した第1オブジェクト情報および第1死角情報に基づいて、ステップS322で抽出した注視領域内に、他のオブジェクトと衝突する可能性があるか否かを判断する(S328)。他のオブジェクトが存在しているか否かを判断する方法については後述する。
判断制御部55は、注視領域内に他のオブジェクトと衝突する可能性があると判断した場合(S328でYes)に、車両305のアクチュエータ58に制御信号を送信し、S333に進みS333の処理を行う。
一方、注視領域内に他のオブジェクトと衝突する可能性がないと、判断制御部55が判断した場合(S328でNo)に、検知認識部52は、マップ情報を判断制御部55に出力する。具体的には、オブジェクト統合部53が第2オブジェクト情報と第1オブジェクト情報とを地図情報に統合したオブジェクトマップ情報を出力し、死角情報統合部54がオブジェクトマップ情報に第2死角情報と第1死角情報とを統合したマップ情報を出力する(S329)。
次に、判断制御部55は、マップ情報に基づいて、第1死角情報が示す死角領域と、第2死角情報が示す死角領域とに共通する第1共通死角領域が存在するか否かを判断する(S330)。
判断制御部55は、第1共通死角領域が存在していると判断した場合(S330でYes)に、無視できる死角領域であるか否かを判断する(S331)。無視できる死角領域であるか否かの判断については、後述する。
一方、判断制御部55は、第1共通死角領域が存在していないと判断した場合(S330でNo)に、インフラセンサ31の死角領域と車載センサ51の死角領域とが共通する死角が存在していないことを意味する。このため、判断制御部55は、他のオブジェクトが検知されない場合に、車両305のアクチュエータ58に制御信号を送信し、車両305を走行させる(S332)。
なお、ステップS330でNoであっても、他のオブジェクトが検知された場合には、判断制御部55は車両305の走行を停止させ、他のオブジェクトが検知されなくなった場合に、判断制御部55は車両305を走行させる。
判断制御部55は、無視できる死角領域であると判断した場合(S331でYes)に、車両305を走行させる(S332)。そして、判断制御部55は、ステップS321に戻り同様のフローを行う。
一方、判断制御部55は、無視できる死角領域ではないと判断した場合(S331でNo)に、ステップS333に進む。
他のオブジェクトと車両305とが衝突する可能性の判断については、図9及び図10と同様であるため、その説明を省略する。
[作用効果]
次に、本実施の形態における車両システム350の作用効果について説明する。
このような車両システム350において、情報受信部57は、インフラセンサ31が検知したオブジェクトから、インフラセンサ31からオブジェクトを見て死角となる第1死角情報を取得する。検知認識部52は、オブジェクトを検知する車載センサ51から見た場合における死角となる第2死角情報を生成する。死角情報統合部54は、第1死角情報および第2死角情報に基づく各々の死角領域を統合することにより、インフラセンサ31からオブジェクトを見た場合と、車載センサ51からオブジェクトを見た場合とによる共通する死角となる第1共通死角領域が存在していることを認識することができる。この車両システム350では、第1共通死角領域を用いれば、車両305が安全に走行を行うことができる。
また、判断制御部55は、共通死角情報に基づいて、車両305の走行を制御することができる。例えば、判断制御部55は、第1共通死角情報が存在する場合に車両305の走行を停止し、第1共通死角情報が存在しない場合に車両305を走行することができる。
また、本実施の形態に係る車両システム350において、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさ以下であれば、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在しないと判断することができる。このため、検知すべき他のオブジェクトの最小サイズとなる所定の大きさを決定しておけば、所定の大きさを閾値として、小さな死角領域を無視することができる。この場合、判断制御部55は、車両305を走行させる判断を行うことができる。
また、判断制御部55は、第1共通死角領域の大きさが所定の大きさよりも大きければ、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在していると判断することができる。つまり、判断制御部55は、第1共通死角領域内に他のオブジェクトが存在している可能性があるため、車両305の走行を停止させる判断を行うことができる。
このため、この車両システム350では、車両305が走行可能であると判断する機会を増加させることができ、かつ、車両305とオブジェクトとが衝突するといった、車両305走行時の安全性の低下を招き難い。その結果、この車両システム350では、車両305の走行効率を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る車両システム350において、判断制御部55は、オブジェクトの走行方向および速度に基づいて注視領域を抽出し、注視領域にオブジェクトが存在している場合に、車両305の走行を停止させる。このため、車両305からオブジェクトを見た場合に、オブジェクトの死角領域に他のオブジェクトが存在していても、車両305と他のオブジェクトとの衝突を回避することができる。このため、車両305は、安全に走行を行うことができる。
また、本実施の形態に係る車両システム350では、地図情報に第1死角情報および第2死角情報を重ね合わせるため、地図情報に第1共通死角領域をマッピングすることができる。このため、判断制御部55は、第1共通死角領域が示された地図情報に基づいて車両305の走行を制御することができる。
また、本実施の形態に係る車両システム350では、到達予測期間Etが通過期間tよりも大きい場合、オブジェクトの移動速度が遅いため、車両305がオブジェクトと衝突する可能性が低いと推定できる。また、到達予測期間Etが通過期間t以下である場合、オブジェクトの移動速度が速いため、車両305が第2対向車両E02と衝突する可能性があると推定できる。このため、判断制御部55は、到達予測期間Etが通過期間tよりも大きい場合に車両305を走行させ、到達予測期間Etが通過期間t以下である場合に車両305の走行を停止させるように制御する。このため、この車両システム350では、より、車両305が安全に走行を行うことができる。
また、本実施の形態に係る車両システム350では、オブジェクト統合部53が第1オブジェクト情報と第2オブジェクト情報とを統合するため、オブジェクトの位置および速度等の情報を精度良く検知することができる。このため、オブジェクトの位置および速度等を確認することができる。
(その他変形例)
以上、本開示の実施の形態1~3に係る車両システム、車両情報処理方法、プログラムおよび交通システムについて説明したが、本開示の実施の形態1~3は上述の実施の形態1~3に限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態1~3において、1つのインフラセンサに限定されず、複数のインフラセンサを用いてもよい。図12は、車載センサ51および複数のインフラセンサ31からそれぞれオブジェクトを見た場合に生じる死角領域を示す模式図である。具体的には、図12に示すように、2つのインフラセンサ31、131が交差点の周囲に存在している。インフラセンサ31が第1死角情報を車両5に提供する場合に、第1共通死角領域E1aを抽出することができる。また、インフラセンサ31から見て交差点の対角線上にインフラセンサ131が設置されたとすると、インフラセンサ131のから見て対向車両E03によって生じる死角領域はE12となる。ここで、インフラセンサ131および車両5に共通する第1共通死角領域E10とインフラセンサ131によって生じる死角領域E12とから、重複する死角領域は存在しない。すなわち、車両5から見て死角であった死角領域のすべてがインフラセンサ31、131からの検知によって検知可能になっているということがわかる。車両システムでは、車両システム内の検知認識部によって複数のインフラセンサ31からの情報を統合し、判断制御部で注視領域に死角が残っていないかどうかを確認するため、インフラセンサ31を複数設置し検知可能な領域においては、より多くの範囲についての情報を判断制御部で利用することができる。
また、上記実施の形態1~3において、例えば車両が方向転換する場合、判断制御部は、車載センサが検知した第2検知情報に基づいて、対向車両の方向指示器の点滅状況、対向車両が道路上のどのレーンに存在しているか等から対向車両の軌道を予測してもよい。例えば、対向車両の方向指示器が右折する指示を出していた場合は、車両側から見て左側に曲がると認識できる。また、対向車両が道路上の右折レーンに存在している場合には、方向指示器が点滅していなくても、その後に車両側から見て左側に曲がると認識できる。
また、上記実施の形態1~3において、情報生成部は、オブジェクトの速度を検知し、オブジェクトの速度が所定速度以下であれば、他のオブジェクトの速度を推定してもよい。この構成によれば、オブジェクトの速度が所定速度以下であれば、オブジェクトの進行速度が遅いと判断できる。この場合、インフラセンサ側からオブジェクトを見れば、オブジェクトによって生じている死角領域から他のオブジェクトが突然検知される場合がある。このため、情報生成部は、オブジェクトの速度が所定速度以下であれば、他のオブジェクトの速度を推定する。また、オブジェクトの速度が所定速度よりも大きければ、死角領域に他のオブジェクトが存在していても、車両とオブジェクトとが衝突する可能性があるため、車両は、走行を停止する。このため、車両は、走行することが出来るため、効率的な運行を実現することができる。
また、上記実施の形態1、2において、車両システムは、実施の形態3の地図データベースを有していてもよい。この場合、判断制御部は、地図データベースから、車両の周囲の地図情報を読み出し、インフラシステムから得た第1オブジェクト情報および第1死角情報を地図情報にマッピングした情報を生成し、この情報を外部装置に出力してもよい。
また、上記実施の形態2、3において、実施の形態1に上記実施の形態2、3を組み合わせることで、例えば、車両が交差点において曲がる場合に、車両に対する第1対向車両が存在する環境下では、対向車両によって死角領域が生じる。この場合において、車両は、死角領域に隠れた第2対向車両が存在しているか否かを推定することで、車両にとって交差点に死角領域が生じていても、車両は曲がることができるか否かを判断することができる。つまり、単に安全だけを考えれば、停止しておればよいと考えられるが、車両の運行効率という観点から、死角が存在しなくなるまで車両を停止させておくことは現実的でない。このように、車両は曲がることができるか否かを判断することで、車両の運行効率を向上させることができる。
また、上記実施の形態1~3において、各処理部は典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続および設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
なお、上記各実施の形態1~3において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の実施の形態1~3は例示された数字に制限されない。
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
以上、一つまたは複数の態様に係る車両システム、車両情報処理方法、プログラムおよび交通システムについて、実施の形態1~3に基づいて説明したが、本開示の実施の形態1~3は当該複数の態様に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態1~3に施したものや、異なる実施の形態1~3における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。