JP7125006B2 - 車両用の空調装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用の空調装置に関する。
内燃機関(エンジン)を駆動源とする車両の暖房の熱源には、エンジンの冷却水が専ら用いられている。
しかし、内燃エンジンの始動初期には冷却水の温度が低いため、暖房によって車室内の温度が所定温度に達するまでにはある程度の時間を要していた。
特許文献1には、車両の暖房の熱源に排気ガスの熱を利用するためのヒートパイプシステムが開示されている。
実開平2-127511号公報
特許文献1のヒートパイプシステムは、内燃機関の排気管に取り付けられた蒸発器と、空調用の空気が流れるダクトに設けられた凝縮器と、凝縮器で液化した作動媒体を蒸発器に送る液配管と、蒸発器で蒸発した作動媒体を凝縮器に送るガス配管と、を備えている。
このヒートパイプシステムにおいては、蒸発器において作動媒体(液体)を、排気管を流れる高温の排気ガスによって加熱して気化させる。凝縮器では、ガス配管を介して供給された気体状態の作動媒体が、ダクトを流れる空調用の空気に熱(凝縮潜熱)を放出して液化する。これにより、空調用の空気が凝縮器で加熱され、加熱された空調用の空気によって車室内が暖房される。
なお、凝縮器において液化した作動媒体は、液配管を経て蒸発器へと送られる。そして、蒸発器において液体状態の作動媒体は、排気管を流れる高温の排気ガスによって加熱されて、再び気化することになる。
ヒートパイプシステムでは、作動媒体が状態変化(サイクル)を繰り返しながら、蒸発器と凝縮器との間を循環することによって、排気ガスの熱の一部が、空調用の空気の加熱に有効利用(回収)される。
このような構成のヒートパイプシステムを備えた車両用の空調装置においては、排気ガスが流れる経路を切り替えることで、排気ガスの熱(排熱)を回収しないようにする(排熱非回収)ことも可能である。
排熱非回収時において外気温が低い場合には、ガス配管の凝縮器への接続部近傍で作動媒体が凝縮することがある。
ガス配管が凝縮器に略水平に接続されていると、液化した作動媒体が凝縮器に流入してサイクルが不安定化し、ヒートパイプシステムの構成要素(蒸発器、凝縮器、液配管、ガス配管)の圧力(内圧)が上昇することがあった。
そのため、排熱非回収時においてガス配管の凝縮器への接続部近傍において作動媒体の凝縮が発生したとしても、サイクルが不安定化しないようにすることが求められている。
本発明は、
内燃機関で発生する排気ガスが通流する排気管と、
前記排気ガスの熱を回収するヒートパイプシステムと、を備える車両用の空調装置において、
前記ヒートパイプシステムは、
前記排気管に取り付けられて、前記排気ガスとの熱交換で作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で蒸発した前記作動媒体を液化させる凝縮器と、
前記凝縮器で液化した作動媒体を前記蒸発器に送る液配管と、
前記蒸発器で蒸発した作動媒体を前記凝縮器に送るガス配管と、を有しており、
前記ガス配管の前記凝縮器への接続部近傍に、一旦鉛直下方に引き回されたドレントラップ部を形成した構成の車両用の空調装置とした。
本発明によれば、例えば、排熱非回収時に外気温が低い場合において、ガス配管の凝縮器への接続部近傍で作動媒体が凝縮しても、この凝縮した作動媒体は、ガス配管に形成されたドレントラップ部に溜まる。
このため、凝縮によって液化した作動媒体の凝縮器への流入が防がれ、ヒートパイプシステムのサイクルが不安定化することを好適に防止できる。
車両用の空調装置の概略構成を説明する図である。 車両用の空調装置の基本構成を説明する図である。 車両用の空調装置における凝縮器と液配管とガス配管の配置を説明する図である。 排熱回収器を説明する図である。 車両用の空調装置におけるエバポレータとヒータコアと凝縮器の配置を説明する図である。 凝縮器を説明する図である。 比較例にかかる凝縮器を説明する図である。 変形例にかかる車両用の空調装置を説明する図である。
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる車両用の空調装置1の概略構成を説明する図である。
図2は、車両用の空調装置1の基本構成を説明する図であって、ヒートパイプシステム4と、冷凍サイクル5と、冷却水循環サイクル6の回路構成を説明する図である。
図3は、車両用の空調装置1における凝縮器43と液配管42とガス配管41の配置を説明する図である。
図4は、車両用の空調装置1における排熱回収器35と液配管42とガス配管41の配置を説明する図である。
図5は、車両用の空調装置1(ダクト11)におけるエバポレータ53とヒータコア63と凝縮器43の配置を説明する図である。
[空調装置1の構成]
図1に示すように、車両Vの前部では、運転席71の前方(図1の左方)に空調装置1が設置されている。
車両Vのファイアウォール72よりも前方のエンジンルームには、駆動源である内燃機関(ENG)2が収容されている。
内燃機関2は、ガソリンなどの燃料の燃焼によって発生する熱エネルギーを運動エネルギー(駆動力)に変換するものである。内燃機関2には、燃料の燃焼により発生した排気ガスの排気系として、排気管3が接続されている。
排気管3は、フロア74の下面に沿って、車両後方(図1の右方)に向かって延びている。内燃機関2での燃料の燃焼によって発生する高温の排気ガスは、排気管3を車両後方に向かって流れて大気中に排出される。
排気管3の途中には、排気ガスを浄化するための触媒31と、排熱回収器35と、消音器である不図示のマフラーと、が設けられている。排気管3では、触媒31と、排熱回収器35と、マフラーとが、排気ガスの流れ方向に沿って設けられている。
排熱回収器35は、排気ガスの熱の一部を回収するためのものである。排熱回収器35においては、図1および図4に示すように、排気管3が二股状に分岐して熱回収路32とバイパス路33とが形成されている。
熱回収路32とバイパス路33は、排気ガスの流れ方向下流において合流して排気管3の排熱回収器35の下流側部分に接続されている。
図1に示すように、熱回収路32とバイパス路33の上流側の分岐部と、下流側の合流部には、切替ドア34a、34bが、それぞれ回動可能に設けられている。
切替ドア34a、34bは、触媒31側から排熱回収器35に流入する排気ガスを、熱回収路32またはバイパス路33に選択的に流すために設けられている。
ここで、図1では、熱回収路32とバイパス路33が、上下に並んで配置されており、熱回収路32の方がバイパス路33よりも上側に位置している場合を例示している。
図4では、熱回収路32とバイパス路33が、水平方向に並んで配置されている場合を例示している。熱回収路32とバイパス路33の並びは、図1と図4の態様の何れでも良い。
排熱回収器35の熱回収路32には、排気ガスとの熱交換により、排気ガスの熱の一部を回収する蒸発器44が設けられている。
蒸発器44は、排気ガスの熱を作動媒体R4に回収するヒートパイプシステム4の構成要素である。車両用の空調装置1では、ヒートパイプシステム4で回収した排気ガスの熱を、空調装置1における空調用の空気Airの加熱に利用する。
図2に示すように、空調装置1は、ヒートパイプシステム4の他に、空調用の空気Airの冷却に用いられる冷凍サイクル5と、空調用の空気Airの加熱に用いられる冷却水循環サイクル6とを有している。
空調装置1の内部には、空調用の空気Airが通流するダクト11が形成されている。
ダクト11の内部には、ダクト11における空気Airの通流方向における上流側から順番に、シロッコファン12と、エバポレータ53と、ヒータコア63と、凝縮器43と、エア混合チャンバ14とが設けられている。
シロッコファン12(送風機)は、空調装置1の作動時に駆動されて、車室70(図1参照)内の空気(内気)および/または車室70外の空気(外気)を吸引する。シロッコファン12は、吸引した空気を、シロッコファン12の下流側に配置されたエバポレータ53に向けて送出する。
エバポレータ53では、熱媒体R5が蒸発する際の気化熱で、エバポレータ53を通過する空気Airを、冷却、除湿する。
空気Airの通流方向におけるエバポレータ53の下流側には、冷却水循環サイクル6のヒータコア63が設けられている。
ヒータコア63では、内燃機関2の冷却水R6(熱媒体)との熱交換で、ヒータコア63を通過する空気Airを加熱する。
空気Airの通流方向におけるヒータコア63の下流側には、ヒートパイプシステム4の凝縮器43が設けられている。
凝縮器43では、作動媒体R4との熱交換で、凝縮器43を通過する空気を加熱する。
空調装置1において凝縮器43は、ダクト11内を通流する空気の通流方向で、エバポレータ53の下流側に設けられている。エバポレータ53と凝縮器43との間であって、凝縮器43から見た上流側には、ヒータコア63が配置されている。
空調装置1では、ヒータコア63を通過した空気Airが、そのまま凝縮器43を通過する。
図5に示すように、ヒータコア63と凝縮器43の各々は、空気が通過する通風面63c、43cを有する矩形のプレート状に形成されている。
これら通風面63c、43cは、ダクト11の流路断面に対応した大きさに形成されており、ダクト11内の空気Airの流れに直交する向きで設けられている。
図2に示すように、ダクト11内においてヒータコア63と凝縮器43は、上下方向に沿わせた向きで設けられている。ヒータコア63と凝縮器43は、上下方向における上側のほうを、下側よりも車両後方側に位置させている。すなわち、ダクト11内においてヒータコア63と凝縮器43は、鉛直線に対して傾いた状態で隣接して配置されている。
ヒータコア63とエバポレータ53との間には、ミックスドア13が設けられている。ミックスドア13は、エバポレータ53を通過した空気のヒータコア63側への流入量を調整するために設けられている。
ミックスドア13が、エバポレータ53を通過した空気のヒータコア63側への流入を阻止する位置(図3、仮想線参照)に配置されると、エバポレータ53を通過した空気がそのままエア混合チャンバ14に供給される。
ミックスドア13が、エバポレータ53を通過した空気のエア混合チャンバ14側への流入を阻止する位置(図3、実線参照)に配置されると、エバポレータ53を通過した空気Airが、ヒータコア63と凝縮器43側を通過する。ヒータコア63と凝縮器43側を通過した空気Airは、最終的にエア混合チャンバ14に供給される。
空調装置1では、図示しない制御装置が、車室70内の設定温度等に応じてミックスドア13の位置を変更することで、ヒータコア63側を通過する空気の量が調整される。
エア混合チャンバ14では、エバポレータ53を通過する際に冷却された空気Airと、ヒータコア63および凝縮器43を通過する際に加熱された空気Airと、が混合されて、所望の温度に調整される。
エア混合チャンバ14には、デフダクト側の流入口15と、ベントダクト側の流入口16と、フットダクト側の流入口17と、が開口している。各流入口15、16、17には、図示しない制御装置により駆動される開閉弁が設けられている。
流入口15に流入した空気Airは、図示しないデフ吹出口から、車両Vのフロントウインドウに向けて送出される。流入口16に流入した空気Airは、図示しないベント吹出口から、乗員の上半身に向けて送出される。流入口17に流入した空気Airは、図示しないフット吹出口から、乗員の足元に向けて送出される。
エア混合チャンバ14で温度が調節された空気Air(空調用の空気Air)は、少なくともひとつの流入口15、16、17を通って、車室70に供給されて、車室70内を空調する。
図2に示すように、空気Airの冷却に関与するエバポレータ53は、冷凍サイクル5が備える冷媒配管50上に設けられている。冷媒配管50は、気体状態の熱媒体R5が通流するガス配管51と、液体状態の熱媒体R5が通流する液配管52と、を有している。
冷凍サイクル5は、エバポレータ53の他に、膨張弁54と、コンプレッサ55と、コンデンサ56と、を有している。
膨張弁54は、コンデンサ56とエバポレータ53とを連絡させる液配管52に設けられており、液配管52を通流する液体状態の熱媒体R5を減圧膨張させる。
エバポレータ53は、膨張弁54から供給された熱媒体R5を減圧下で蒸発させる。
コンプレッサ55は、エバポレータ53とコンデンサ56とを連絡させるガス配管51に設けられており、エバポレータ53で蒸発した熱媒体R5を吸引して、高温高圧に圧縮する。
コンデンサ56は、ガス配管51を介してコンプレッサ55側から供給された高温高圧の熱媒体R5を、外気との熱交換で冷却して凝縮させる。
冷凍サイクル5では、コンプレッサ55の動力によって、エバポレータ53とコンデンサ56との間を熱媒体R5が循環する。コンデンサ56で冷却された熱媒体R5が、エバポレータ53で蒸発する際に吸熱することにより、ダクト11を通流する空気Airが、冷却および除湿される。
空気Airの加熱に関与するヒータコア63は、冷却水循環サイクル6が備える冷却経路60に、冷却水導入配管61と冷却水導出配管62を介して接続されている。
冷却経路60は、第1経路601と、第2経路602と、を有している。第1経路601は、内燃機関2と、ラジエータ67と、冷却水バルブ64と、ウォータポンプ66とが、冷却水の通流路に沿って設けられた循環路である。ラジエータ67には、冷却水タンク65が付設されている。
冷却水バルブ64は、開位置および閉位置の何れか一方に切り替えるタイプ(いわゆる開閉弁)、または制御によってその開度の調整ができるタイプ(流量コントロール弁)の何れであってもよい。
第2経路602は、第1経路601における冷却水の通流方向で、内燃機関2の下流側と、ウォータポンプ66の上流側に接続されている。第2経路602は、ラジエータ67と冷却水バルブ64を迂回する迂回路である。ヒータコア63から延びる冷却水導入配管61と冷却水導出配管62は、第2経路602に接続されている。
冷却水循環サイクル6では、冷却水バルブ64を開いた状態で、ウォータポンプ66が駆動されると、第1経路601側と、第2経路602側を冷却水R6が通流する。
冷却水バルブ64を閉じた状態で、ウォータポンプ66が駆動されると、第2経路602側を冷却水R6が通流する。
第1経路601は、内燃機関2を通って設けられており、冷却水R6は、内燃機関2の領域を通過する際に、内燃機関2の排熱で加熱される一方で、内燃機関2を冷却する。
内燃機関2の排熱で加熱された冷却水R6のうち、第1経路601側を通過する冷却水R6は、ラジエータ67を通過する際に、外気との熱交換で冷却される。
第2経路602側を通過する冷却水R6の一部は、ヒータコア63を通って、第1経路601に循環し、残りの一部は、ヒータコア63を通らずに第1経路601に循環する。
図5に示すように、ヒータコア63は、第1導入口63bと第1導出口63aと、を有している。
第1導出口63aは、ヒータコア63の側縁部の上端部位に設けられている。第1導入口63bは、ヒータコア63の側縁部の下端部位に設けられている。
第1導入口63bには、冷却経路60(第2経路602)に接続された冷却水導入配管61が接続されている。第1導出口63aには、冷却経路60(第2経路602)に接続された冷却水導出配管62が接続されている。
図2に示すように、ヒータコア63では、冷却経路60(第2経路602)側から供給された高温の冷却水R6と、空気Airとの熱交換を行って空気Airを加熱する。
空気Airとの熱交換で温度が低下した冷却水R6は、冷却水導出配管62を介して、冷却経路60(第2経路602)内に戻される。
空気Airの加熱に関与する凝縮器43は、ヒートパイプシステム4が備える作動媒体R4の循環路40(ガス配管41と液配管42)上に設けられている。
循環路40は、金属材料からなる筒状管を環状に配置して、内部に作動媒体R4を減圧封入したものである。
ヒートパイプシステム4は、前記した蒸発器44のほかに、凝縮器43(インターナルコンデンサI/C)を有している。蒸発器44と凝縮器43は、ガス配管41と液配管42で接続されている。
蒸発器44では、液体状態の作動媒体R4(例えば、水)が、排気ガスとの熱交換で加熱されて蒸発する。
ガス配管41は、蒸発器44で蒸発して気体状態になった作動媒体R4を、凝縮器43に供給する機能を果たす。
凝縮器43では、気体状態の作動媒体R4が、凝縮器43を通過する空気Airとの熱交換で冷却されて凝縮する。
液配管42は、凝縮器43で凝縮して液体状態になった作動媒体R4を、蒸発器44に供給する機能を果たす。
ヒートパイプシステム4では、作動媒体R4が、気体と液体との間での状態変化(サイクル)を繰り返しながら、蒸発器44と凝縮器43との間を循環する。
ヒートパイプシステム4では、排気ガスの排熱を利用して作動媒体R4を加熱することで、排気ガスの熱の一部を作動媒体R4に回収している。
そして、作動媒体R4に回収した熱を利用して、凝縮器43を通過する空気Airを加熱しているので、排気ガスの熱を有効に利用している。
図5に示すように凝縮器43は、気体状態の作動媒体R4の導入口43aと、液体状態の作動媒体R4の排出口43bと、を有している。
導入口43aは、凝縮器43の側縁部の上端部位に設けられている。排出口43bは、凝縮器43の側縁部の下端部位に設けられている。
導入口43aには、蒸発器44から延びるガス配管41が接続されている。排出口43bには、蒸発器44まで延びる液配管42が接続されている。
図6は、凝縮器43を説明する図である。図6の(a)は、凝縮器43の斜視図である。図6の(b)は、(a)におけるA-A線に沿って、ガス配管41と液配管42を切断した断面図である。図6の(c)は、凝縮器43を側方から見た図であって、ガス配管41に設けたドレントラップ部41Xを説明する図である。なお、図6の(c)では、説明の便宜上、ドレントラップ部41Xの領域に交差したハッチングを付して示している。
図7は、比較例にかかる凝縮器43Aを説明する図である。図7の(a)は、凝縮器43Aの斜視図である。図7の(b)は、凝縮器43Aを側方から見た図である。
図6の(a)、(c)に示すように、液配管42における凝縮器43との接続部の近傍領域420では、液配管42が屈曲した形状で形成されている。液配管42の近傍領域420は、筒状のパイプを屈曲させて形成したものである。
近傍領域420は、配管接続部310を水平線方向に貫通する第1領域420aと、第1領域420aの先端から下方に延びる第2領域420bと、第2領域420bの下端から水平線方向に延びる第3領域420cと、を有している。
第3領域420cは、ヒータコア63(図5参照)の側方を通って、凝縮器43に近づく方向に延びており、第3領域420cの先端は、凝縮器43の下端部位に開口する排出口43bに接続されている。
第1領域420aは、ヒータコア63の冷却水導入配管61および冷却水導出配管62と共に配管接続部310を貫通しており、空調装置1の外部に引き出されている。
なお、図3に示すように、空調装置1の外部に引き出された液配管42は、車両Vのファイアウォール72を貫通して、内燃機関2の収容部(エンジンルーム)内に達している。
エンジンルーム内において液配管42は、ファイアウォール72に沿って、フロア74側の下方に延びたのち、フロア74の下面に沿って車両Vの後方側に延びている。そして、液配管42は、車両Vの前方側から排熱回収器35(蒸発器44)に接続されている(図4参照)。
図6の(a)、(c)に示すように、ガス配管41における凝縮器43との接続部の近傍領域410では、ガス配管41が屈曲した形状で形成されている。ガス配管41の近傍領域410もまた、筒状のパイプを屈曲させて形成したものである。
近傍領域410は、配管接続部310を水平線方向に貫通する第1領域410aと
第1領域410aの先端から下方に延びる第2領域410bと、第2領域410bの下端から水平線方向に延びる第3領域410cと、を有している。
ガス配管41の第1領域410aは、ヒータコア63(図5参照)の冷却水導入配管61および冷却水導出配管62、そして液配管42の第1領域420aと共に、配管接続部310を貫通しており、空調装置1の外部に引き出されている。
なお、図3に示すように、空調装置1の外部に引き出されたガス配管41は、車両Vのファイアウォール72を貫通して、内燃機関2の収容部(エンジンルーム)内に達している。
エンジンルーム内においてガス配管41は、ファイアウォール72に沿って、フロア74側の下方に延びたのち、フロア74の下面に沿って車両Vの後方側に延びている。そして、ガス配管41は、車両Vの前方側から排熱回収器35(蒸発器44)に接続されている(図4参照)。
ガス配管41の第3領域410cは、液配管42の第3領域420cの上方を、凝縮器43に近づく方向(図6の(c)における右方向)に延びている。ガス配管41の第3領域410cは、液配管42の第3領域420cに対して略平行に設けられている。
第3領域410cは、ヒータコア63(図5参照)の側方を通って、凝縮器43の近傍まで及んでおり、第3領域410cの先端には、水平線に対して傾斜した第4領域410dが接続されている。
第4領域410dは、水平線方向で凝縮器43に近づくにつれて(図6の(c)における右側に向かうにつれて)、凝縮器43の上端部位に近づく向きで傾斜している。
側面視において第4領域410dは、凝縮器43の側縁に重なる位置まで延びている。
第4領域410dの先端には、凝縮器43の上端部位から、凝縮器43の側縁に沿って下端部位側に延びる第5領域410eが接続されている。
そのため、ガス配管41の近傍領域410は下方に大きく屈曲しており、ガス配管41を、一旦鉛直下方に引き回した形状のドレントラップ部41X(図6の(c)、交差するハッチングを付した領域)が形成されている。
ガス配管41におけるドレントラップ部41Xでは、第1領域410aから第4領域410dまでの範囲が、液配管42の第1領域420aから第3領域420cに沿って配置されている。
凝縮器43の側方から見てドレントラップ部41Xは、第2領域410bから第5領域410eまでの範囲が、下方に窪んだ凹形状に形成されている。
ガス配管41の近傍領域410と液配管42の近傍領域420は、互いに近接して配置されており、空調装置1の内部における近傍領域410、420の専有面積が抑えられるようになっている。
なお、図6の(b)に示すように、液配管42の径D2は、ガス配管41の径D1よりも小さく設定されている(D2<D1)。
[車両用の空調装置1の作用]
次に、車両用の空調装置1の作用について説明する。
冬季などにおいて車両Vの車室70内を暖房する必要がある場合には、ミックスドア13が、図3において実線で示す位置に配置される。
さらに、排熱回収器35に設けられた切替ドア34a、34bが、図1において実線で示す位置に設定される。
図2に示すように、内燃機関2の始動初期においては、冷却水循環サイクル6の冷却水R6の温度が低い。そのため、冷却水R6がヒータコア63を通流しても、ヒータコア63は、暖房に殆ど寄与しない。
一方、内燃機関2から排出される排気ガスの温度は、内燃機関2の始動初期においても十分に高い。そのため、ヒートパイプシステム4で回収した排気ガスの熱を、車室70内に供給する空気Airの加熱に用いることで、車室70内の暖房を、内燃機関2の始動初期から実施できる。
すなわち、ヒートパイプシステム4においては、内燃機関2から排出される高温の排気ガスは、排熱回収器35の熱回収路32を通過する際に、熱回収路32に設置された蒸発器44において、液体状態にある作動媒体R4を加熱して蒸発(気化)させる。
蒸発器44で蒸発して気体状態になった作動媒体R4(水蒸気)は、ガス配管41を通ってダクト11内の凝縮器43に流入する。
凝縮器43に流入した気体状態の作動媒体R4は、凝縮器43を通過する空調用の空気(内気または外気)との間での熱交換により凝縮する。
凝縮器43において気体状態の作動媒体R4は、空調用の空気に凝縮潜熱を放出して凝縮(液化)する。これにより、空調用の空気Airが加熱される。
そして、凝縮器43において液化した作動媒体R4(水)は、液配管42を通って排熱回収器35に設けられた蒸発器44に流入する
蒸発器44に流入した液体状態の作動媒体R4は、排熱回収器35内の熱回収路32を流れる排気ガスによって再び加熱されて蒸発(気化)することで、排気ガスの熱の一部を再び回収する。
作動媒体R4が、状態変化(気化と液化)を繰り返しながら閉回路(循環路40)を循環することによって、内燃機関2から排出される排気ガスの熱の一部が回収され、回収された熱によって車室70内が暖房される。
内燃機関2が始動されて、所定の時間が経過すると、内燃機関2は暖まって所定の温度状態で安定するようになる(いわゆる温間時)。
その時、冷却水R6の温度は高温(常温よりも高い温度、例えば60℃以上)になる。従って、そのような状態の下で、冷却水が循環しているヒータコア63を空気が通過すると、冷却水と熱交換することにより、ヒータコア63が放熱し、その空気は加熱される。
そして、内燃機関2の始動後に冷却水R6の温度が高くなると、高温の冷却水R6が、冷却水導入配管61を通ってヒータコア63内に流入した後、冷却水導出配管62を通って、冷却経路60に戻される。
ここで、ヒートパイプシステム4においては、排熱回収器35に設けられた切替ドア34a、34bの切り替えによって、排気ガスの熱の回収と非回収が選択される。
すなわち、切替ドア34a、34bが図1において実線で示す位置にあるときには、前述のように排気ガスが排熱回収器35内の熱回収路32を流れ、排気ガスの熱の一部が蒸発器44において作動媒体R4によって回収される。
これに対して、切替ドア34a、34bが図1において破線で示す位置に切り替えられると、内燃機関2から排気管3へと排出される排気ガスは、排熱回収器35において熱回収路32をバイパスしてバイパス路33へと流れる。このため、排気ガスの熱は、排熱回収器35において回収されない。
ところで、排気ガスの熱が排熱回収器35において回収されない排熱非回収時においても外気温度が低い場合には、ガス配管41の凝縮器43との接続部近傍(近傍領域410)において気体状態の作動媒体(水蒸気)が冷却されて凝縮(液化)することがある。
ここで、図7に示す凝縮器43Aのように、ガス配管41Aにおける凝縮器43Aの近傍領域410Aが、水平線に沿う向きで配置されている場合には、排熱非回収時に液化した作動媒体R4(水)が、ガス配管41Aの近傍領域410Aに溜まることがある。
かかる場合、以下のようなことがあった。
(I)近傍領域410Aに溜まった液体状態の作動媒体(水)が、ガス配管41Aから凝縮器43Aに流入する。
本実施形態にかかる空調装置1では、エバポレータ53と凝縮器43との間にヒータコア63が位置しており、ヒータコア63を通過する際に加熱された空気Airが、凝縮器43を通過する仕様となっている。
そのため、ヒートパイプシステム4による排熱の回収を実施していない時(排熱非回収時)にも、温度の高い空気が凝縮器43を通過する。
この状態で、ガス配管41Aの近傍領域410Aに溜まった液体状態の作動媒体(水)が、ガス配管41Aから凝縮器43Aに流入すると、流入した液体状態の作動媒体(水)が、凝縮器43Aを通過する空気との熱交換で加熱されて、蒸発することがある。
かかる場合、蒸発した作動媒体が、ガス配管41A内を移動して、ヒートパイプシステム4内で意図しない熱輸送が起こることがあり、ヒートパイプシステム4のサイクルが不安定になる。
その結果、ヒートパイプシステム4の圧力上昇が起こる可能性がある。
本実施の形態においては、図6に示すように、ガス配管41の凝縮器43への接続部の近傍領域410に、ドレントラップ部41Xが設けられている。
このドレントラップ部41Xは、ガス配管41が一旦鉛直下方に引き回されるように屈曲させて形成した領域である。
そのため、排熱非回収時にガス配管41において気体状態の作動媒体R4(水蒸気)が凝縮によって液化しても、この液化した作動媒体(水)が、ガス配管41に形成されたドレントラップ部41Xに溜まるようになっている。
このため、液化した動作媒体(水)の凝縮器43への流入が防がれるので、ヒートパイプシステム4のサイクルが安定化して圧力上昇が抑えられる。
以上の通り、本実施形態にかかる車両用の空調装置1は、以下の構成を有している。
(1)空調装置1は、
内燃機関2で発生する排気ガスを排出する排気管3と、
排気ガスの熱を回収するヒートパイプシステム4と、を備える。
ヒートパイプシステム4は、
排気管3に取り付けられて、排気ガスとの熱交換で作動媒体R4を蒸発させる蒸発器44と、
蒸発器44で蒸発した作動媒体R4を液化させる凝縮器43と、
凝縮器43で液化した作動媒体R4を蒸発器44に送る液配管42と、
蒸発器44で蒸発した作動媒体R4を凝縮器43に送るガス配管41と、を有している。
ガス配管41の凝縮器43への接続部近傍の領域(近傍領域410)に、一旦鉛直下方に引き回されたドレントラップ部41Xが形成されている。
このように構成すると、例えば、排熱非回収時の外気温が低い場合において、ガス配管41の凝縮器43への接続部近傍(近傍領域410)で作動媒体R4が凝縮しても、この凝縮した作動媒体R4は、ガス配管41に形成されたドレントラップ部41Xに溜まることになる
このため、凝縮によって液化した作動媒体R4の凝縮器43への流入が防がれ、ヒートパイプシステム4のサイクルが不安定化することを好適に防止できる。
本実施形態にかかる車両用の空調装置1は、以下の構成を有している。
(2)凝縮器43の側縁部の上端部位に作動媒体R4の導入口43aが設けられている。
凝縮器43の側縁部の下端部位に作動媒体R4の排出口43bが設けられている。
導入口43aには、蒸発器44から延びるガス配管41の近傍領域410が接続されている。
排出口43bには、蒸発器44まで延びる液配管42の近傍領域420が接続されている。
空調装置1の内部では、ガス配管41の近傍領域410(ドレントラップ部41Xが設けられた領域)と、液配管42の近傍領域420は、空調装置1の設置状態を基準とした上下方向で、互いに近接して配置されている。
ガス配管41の近傍領域410は、下方に位置する液配管42の近傍領域420に沿わせて配置されている。
このように構成すると、ガス配管41の近傍領域410を、下方に位置する液配管42の近傍領域420に沿わせて配置することで、ガス配管41(近傍領域410)と液配管42(近傍領域420)の上方に広いスペースを確保することができる。
これにより、スペースを有効に利用することができるので、ダクト11内の各種機器のレイアウト性が高められる。
本実施形態にかかる車両用の空調装置1は、以下の構成を有している。
(3)液配管42の径D2を、ガス配管41の径D1よりも小さく設定した(D2<D1)。
このように構成すると、液配管42に溜まっている液状の作動媒体(水)を差圧によって蒸発器44へと素早く戻すことができる。これにより、ヒートパイプシステム4において蒸発器44による熱回収を再開させたときのヒートパイプシステム4の始動性が高められる。
ガス配管41にドレントラップ部41Xを設けて、凝縮した作動媒体R4(水)がドレントラップ部41Xに捕捉されるようにしたので、蒸発器44への作動媒体R4の戻りが悪くなる可能性がある。かかる場合、ヒートパイプシステム4の始動時の立ち上がりに影響が及ぶ場合がある。上記構成を採用して、蒸発器44への作動媒体R4の戻りを改善したことで、ヒートパイプシステム4の始動時の立ち上がりへの影響を抑制できる。
本実施形態にかかる車両用の空調装置1は、以下の構成を有している。
(4)ダクト11内には、内燃機関2の冷却水との熱交換により、ダクト11を流れる空調用の空気Airを加熱するヒータコア63が設けられている。
このように構成すると、ヒータコア63と凝縮器43の両方を用いて、空調用の空気Airを加熱することが可能になる。冬季における空調装置1の暖房運転の立ち上がりが向上する。
本実施形態にかかる車両用の空調装置1は、以下の構成を有している。
(5)凝縮器43は、ダクト11における空調用の空気Airの通流方向で、ヒータコア63の下流側に配置されている。
このように構成すると、冬季における内燃機関2の始動直後において、ヒータコア63での空調用の空気Airの加熱不足を、凝縮器43で補うことができる。
なお、本実施の形態では、ヒートパイプシステム4を循環する作動媒体R4として、水を例示した。作動媒体R4には、水以外の任意の流体(例えば、HFCなどのフロン系冷媒)を使用することができる。
図8は、変形例にかかる車両用の空調装置1Aを説明する図である。
前記した車両用の空調装置1Aでは、凝縮器43が、ダクト11における空調用の空気Airの通流方向で、ヒータコア63の下流側に配置されている場合を例示した(図3参照)。本件発明は、この態様にのみ限定されない。図8に示す空調装置1Aのように、凝縮器43が、ダクト11における空調用の空気Airの通流方向で、ヒータコア63の上流側に配置されている構成としても良い。
このように、変形例にかかる空調装置1Aは、以下の構成を有している。
(6)凝縮器43は、ダクト11における空調用の空気Airの通流方向で、ヒータコア63の上流側に配置されている。
凝縮器43が、ダクト11における空調用の空気Airの通流方向で、ヒータコア63の上流側に配置されていると、凝縮器43を通過する空調用の空気Airは、ヒータコア63よって温められる前の温度の低い空気となる。
そうすると、凝縮器43がヒータコア63の下流側に配置されている場合よりも、凝縮器43内の作動媒体(水)が気化することを好適に防止できる。これにより、排熱非回収時に、作動媒体(水)の蒸発に起因するヒートパイプシステム4内での熱輸送の発生を防止できる。
これにより、排熱非回収時のヒートパイプシステム4における圧力上昇が効果的に抑制されることになる。
ヒートパイプシステム4において圧力上昇が発生すると、ヒートパイプシステム4のサイクルが不安定化する。上記のように構成することで、圧力上昇が効果的に抑制される結果、ヒートパイプシステム4のサイクルの一層の安定化が図られる。
その他、変形例にかかる空調装置1Aにおいても、前記した空調装置1において得られたのと同様の効果が得られる。
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
1、1A 空調装置
11 ダクト
12 シロッコファン
13 ミックスドア
14 エア混合チャンバ
15、16、17 流入口
2 内燃機関
3 排気管
31 触媒
310 配管接続部
32 熱回収路
33 バイパス路
34a、34b 切替ドア
35 排熱回収器
4 ヒートパイプシステム
40 循環路
41、41A ガス配管
41X ドレントラップ部
410、410A 近傍領域
410a、420a 第1領域
410b、420b 第2領域
410c、420c 第3領域
410d 第4領域
410e 第5領域
42 液配管
420 近傍領域
43、43A 凝縮器
43a 導入口
43b 排出口
43c 通風面
44 蒸発器
5 冷凍サイクル
50 冷媒配管
51 ガス配管
52 液配管
53 エバポレータ
54 膨張弁
55 コンプレッサ
56 コンデンサ
6 冷却水循環サイクル
60 冷却経路
601 第1経路
602 第2経路
61 冷却水導入配管
62 冷却水導出配管
63 ヒータコア
63a 第1導出口
63b 第1導入口
63c 通風面
64 冷却水バルブ
65 冷却水タンク
66 ウォータポンプ
67 ラジエータ
70 車室
71 運転席
72 ファイアウォール
74 フロア
Air 空気
R4 作動媒体
R5 熱媒体
R6 冷却水(熱媒体)
V 車両

Claims (6)

  1. 内燃機関で発生する排気ガスが通流する排気管と、
    前記排気ガスの熱を回収するヒートパイプシステムと、を備える車両用の空調装置において、
    前記ヒートパイプシステムは、
    前記排気管に取り付けられて、前記排気ガスとの熱交換で作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
    前記蒸発器で蒸発した前記作動媒体を液化させる凝縮器と、
    前記凝縮器で液化した前記作動媒体を前記蒸発器に送る液配管と、
    前記蒸発器で蒸発した前記作動媒体を前記凝縮器に送るガス配管と、を有しており、
    前記ガス配管の前記凝縮器への接続部近傍に、一旦鉛直下方に引き回されたドレントラップ部を形成したことを特徴とする車両用の空調装置。
  2. 前記ガス配管を前記液配管に沿わせて配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用の空調装置。
  3. 前記液配管の径を前記ガス配管の径よりも小さく設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用の空調装置。
  4. 前記凝縮器が配置されたダクト内には、前記内燃機関の冷却水との熱交換により、前記ダクトを通流する空調用の空気を加熱するヒータコアが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の車両用の空調装置。
  5. 前記凝縮器は、前記ダクトにおける前記空調用の空気の通流方向で、前記ヒータコアの下流側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用の空調装置。
  6. 前記凝縮器は、前記ダクトにおける前記空調用の空気の通流方向で、前記ヒータコアの上流側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用の空調装置。
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