JP3811254B2 - 車両用空調装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱媒体を圧縮して送り出すコンプレッサを備えた車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、車室内のエアコンディショニングを行うために、セミオート・エアコン方式、フルオート・エアコン方式およびリヒート方式等の種々の空調装置が採用されている。
【0003】
この種の空調装置における冷凍サイクルでは、一般的に冷却媒体をコンプレッサで圧縮することにより高温・高圧状態のガス冷媒として吐出し、この高温・高圧のガス冷媒を室外熱交換器に送り込んで凝縮させた後、膨張手段であるエキスパンションバルブ(または、キャピラリチューブ)を通って低温・低圧の霧状となった冷却媒体をエバポレータ(室内熱交換器)に供給する。このため、冷却媒体は、エバポレータ周囲の空気から熱を吸収して蒸発し、気体状の冷媒となって再びコンプレッサに吸入される。
【0004】
ところで、上記の空調装置を暖房モードで使用する場合、室外熱交換器で冷却媒体を外気と熱交換させて吸熱を行うため、外気温度が低下してこの室外熱交換器に着霜が惹起され易い。これにより、室外熱交換器の吸熱量が落ちてしまい、暖房能力が低下するおそれがあるため、通常、除霜運転が行われている。ところが、除霜運転中には、暖房運転が停止されており、この除霜運転が終了してから安定した暖房運転に至るまでに相当な時間がかかってしまうという不具合がある。
【0005】
そこで、例えば、特開平8−258548号公報に開示されているように、室外熱交換器の内部に、第1の流体を流す第1の通路と第2の流体を流す第2の通路とを設ける技術が知られている。従って、例えば、低温低圧の冷媒と駆動モータ等の発熱部品の冷却液とを第1および第2の通路に流すと、これらの間での熱交換を、熱伝導率の高い金属を媒体として行うことができ、着霜の防止が図られるとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術では、二種類の流体間での熱交換が、金属を媒体として間接的に行われるため、この金属が熱伝導率の高い材質であっても、着霜部分を迅速に加熱することが困難となってしまう。これにより、除霜作業が効率的に遂行されず、除霜運転から所望の暖房運転に即座に移行することができないという問題が指摘されている。
【0007】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、着霜を可及的に阻止することができ、暖房性能を有効に向上させることが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、本発明に係る車両用空調装置では、暖房運転時に熱媒体を蒸発させて吸熱を行う熱交換器が、前記熱媒体を流すための第1通路と、暖房運転時に発熱源を冷却した冷却水を流すための第2通路とを、互いに近接して直接設けた配管部材を有している。このため、発熱源からの排熱を介して第1通路の周囲温度が迅速かつ確実に上昇し、熱交換器が着霜することを有効に回避することができる。しかも、熱媒体は、第1通路の周囲に発生した排熱を蒸発熱として吸熱するため、暖房効率が大幅に向上する。
【0009】
さらに、第1通路と第2通路とは、二重の中空構造に設定されるため、熱媒体は、発熱源からの排熱を蒸発熱として確実かつ効率的に吸熱することが可能になる。なお、発熱源は、走行用モータを有しており、電気自動車用空調装置にも、効果的に適用可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用オートエアコン(空調装置)10の概略構成説明図である。
【0011】
オートエアコン10は、車室内に温調および湿調された空気を吹き出すダクト本体14と、このダクト本体14内を流れる空気と冷却媒体(熱媒体)との間で熱交換させることにより前記空気を冷却する冷却媒体回路16と、前記ダクト本体14内を流れる空気と温水との間で熱交換させることにより前記空気を加熱する加熱媒体回路18と、前記ダクト本体14内に配設されて冷風と温風とのエアミックス制御を行うエアミックス手段20とを備える。
【0012】
ダクト本体14は、車室内の前方側にインストルメントパネル(図示せず)を介して配設されており、このダクト本体14の上流側には、車室内の空気を導入する内気導入口24と車室外の空気を導入する外気導入口26とが、切り換えダンパ28を介して開閉自在に設けられる。
【0013】
ダクト本体14内には、切り換えダンパ28側に近接してブロア30が配設され、このブロア30の下流側に冷却媒体回路16を構成するエバポレータ(室内熱交換器)32が配設される。エバポレータ32の下流側には、加熱媒体回路18を構成するヒータコア34が配設されるとともに、このヒータコア34の入口側にエアミックス手段20が装着される。エアミックス手段20は、エアミックスダンパ36を備え、このエアミックスダンパ36がエアミックスモータ38を介して開度0%の位置から開度100%の位置の範囲内で任意の角度に回動自在である。
【0014】
ダクト本体14の下流側には、電気自動車のフロントウインドシールドの内面に向かって空気を吹き出すデフ吹き出し口40と、乗員の頭部側に向かって空気を吹き出すフェイス吹き出し口42と、乗員の足元側に向かって空気を吹き出すフット吹き出し口44とが設けられる。デフ吹き出し口40、フェイス吹き出し口42およびフット吹き出し口44には、それぞれデフダンパ46、フェイスダンパ48およびフットダンパ50が回動自在に取り付けられている。
【0015】
エバポレータ32は、内部に流入した冷却媒体とダクト本体14内にブロア30により送られてくる空気との間で熱交換させることにより、この冷却媒体を蒸発気化させるとともに、前記空気を冷却する機能を有する。このエバポレータ32を含む冷却媒体回路16は、電動コンプレッサ52を備え、この電動コンプレッサ52の吸入口側と前記エバポレータ32の導出口側とを繋ぐ低圧側の冷媒管路54aには、アキュムレータ56が介装される。
【0016】
電動コンプレッサ52は、吸入口より内部に吸入された冷却媒体(ガス冷媒)を圧縮して高温、高圧の冷却媒体として吐出口側から冷媒管路54b側に吐出する。アキュムレータ56は、冷却媒体を液冷媒とガス冷媒とに分離してガス冷媒のみを電動コンプレッサ52に供給する機能を有する。
【0017】
冷媒管路54bは、その先端側で冷媒管路54c、54dに分岐するとともに、この冷媒管路54cが冷媒管路54e、54fに分岐する。冷媒管路54cには、第1電磁弁60が設けられ、冷媒管路54fには、第2電磁弁62が設けられるとともに、この冷媒管路54fが冷媒管路54aに連結される。冷媒管路54eには、室外熱交換器64が配設され、この室外熱交換器64は、暖房運転時に低温、低圧の気液二相状態の冷却媒体と室外ファン66により吹き付けられる外気とを熱交換させて冷却媒体を蒸発気化させる一方、冷房運転時に高温、高圧のガス冷媒と室外ファン66により吹き付けられる外気とを熱交換させてガス冷媒を凝縮液化させる機能を有する。
【0018】
冷媒管路54dには、暖房用の第1キャピラリチューブ70が設けられており、この冷媒管路54dと冷媒管路54eとは、冷媒管路54gとして一体化されてエバポレータ32の導入側に連結される。この冷媒管路54gには、第3電磁弁68と冷房用の第2キャピラリチューブ72とが並列されている。
【0019】
加熱媒体回路18は、ヒータコア34に温水を循環供給するための温水循環路74を備え、この温水循環路74にウォータポンプ76および燃焼ヒータ78が配設される。温水循環路74の一部には、所定の長さにわたって冷却媒体回路16の冷媒管路54bを囲繞して二重管構造を有する外管部80が設けられ、前記冷媒管路54bおよび前記外管部80により媒体熱交換器82が構成される。この媒体熱交換器82は、電動コンプレッサ52から吐出されて高温、高圧となった冷却媒体が冷媒管路54bを流れる際、温水循環路74の外管部80を通る加熱媒体としての温水と前記冷却媒体との間で熱交換させることにより前記温水を加熱する機能を有する。
【0020】
図2に示すように、室外熱交換器64は、冷却媒体を流すための第1通路84と、暖房運転時に駆動系(発熱源)86を冷却して高温になった冷却水を流すための第2通路88とが、互いに近接して直接設けられた一対のヘッダー部(配管部材)90を有する。図3に示すように、ヘッダー部90の中央部分には、冷却媒体用の第1通路84が断面円形状を有して設けられるとともに、複数の断面略長円状の冷却水用の第2通路88が、この第1通路84を中心に周回して設けられ、これにより、前記ヘッダー部90は、二重の中空構造に設定される。
【0021】
各ヘッダー部90には、複数本の扁平状チューブ92が互いに平行に配列されてそれぞれの両端部が連結される一方、前記ヘッダー部90の下端側に水管路94の両端部が固定される。チューブ92には、多数のフィン96が設けられており、このチューブ92内には、冷却媒体を流すための冷媒通路98が形成され、この冷媒通路98が各ヘッダー部90の第1通路84に連通する。各ヘッダー部90の第2通路88は、水管路94を介して連通している。
【0022】
各ヘッダー部90の第1通路84は、冷媒管路54eに連通しており、各ヘッダー部90の第2通路88は、タンク部99を介して駆動系86を構成する冷却回路100に連通する。図4に示すように、駆動系86は、走行用モータ102と、このモータ102に電気エネルギを供給するバッテリ104とを備え、前記モータ102および前記バッテリ104に冷却水を循環供給するための冷却回路100が設けられる。
【0023】
冷却回路100は、冷却水循環路106と、この冷却水循環路106に沿って冷却水を循環させ、ラジエータ108、モータ102およびバッテリ104を収容するバッテリ収納ボックス110内に前記冷却水を供給するためのポンプ112とを備える。冷却水循環路106は、三方弁114を介して分岐する水路116を有しており、この水路116は、各ヘッダー部90の第2通路88に連通している。
【0024】
このように構成されるオートエアコン10の動作について、以下に説明する。
【0025】
先ず、運転モードが冷房運転、暖房運転、除湿運転および送風運転の場合におけるそれぞれの冷却媒体回路16の経路が、表1に示されている。
【0026】
【表1】
Figure 0003811254
【0027】
そこで、運転モードが暖房運転では、表1および図1に示すように、第1および第3電磁弁60、68が閉塞されるとともに、第2電磁弁62が開放される。このため、電動コンプレッサ52から吐出される冷却媒体は、冷媒管路54b、54dから第1キャピラリチューブ70を通って減圧され、気液二相状態で室外熱交換器64を通って気化した後、第2電磁弁62、冷媒管路54f、54aを通ってアキュムレータ56から前記電動コンプレッサ52に循環される。
【0028】
その際、加熱媒体回路18では、ウォータポンプ76の駆動作用下に温水循環路74に沿って温水が循環されており、媒体熱交換器82を構成する外管部80に前記温水が供給されている。従って、外管部80の内方に冷媒管路54bを介して高温、高圧の冷却媒体が流れることにより、この外管部80内の温水が加熱される。この温水は、ヒータコア34の内部に導入され、このヒータコア34を通過する空気を所定の温度に加熱する。
【0029】
一方、走行中では、図4に示すように、バッテリ104から供給される電気エネルギを介してモータ102が駆動されており、このバッテリ104および前記モータ102を冷却するために冷却回路100が駆動される。すなわち、ポンプ112の駆動作用下に、冷却水循環路106に沿って冷却水が循環されている(図4中、二点鎖線矢印参照)。これにより、モータ102およびバッテリ104等を冷却して高温となった冷却水が、ラジエータ108を通ることによって外部の空気と熱交換されて低温となるために、前記モータ102およびバッテリ104等の冷却を連続して行うことができる。
【0030】
ところで、オートエアコン10により暖房運転が行われる際、気液二相状態の冷却媒体が、室外熱交換器64を構成するチューブ92の冷媒通路98を通る際に外気と熱交換することにより、吸熱を行って気化する。このため、外気温度が低下してチューブ92の周囲やフィン96等に着霜が惹起され易い。
【0031】
しかしながら、第1の実施形態では、室外熱交換器64を構成するヘッダー部90が、冷却媒体を流すための第1通路84と、暖房運転時に駆動系86を冷却して高温になった冷却水を流すための第2通路88とを、互いに近接して直接設けている。そこで、暖房運転時には、図4に示すように、三方弁114を介して水路116がポンプ112を含む駆動系86の冷却水循環路を形成しており、モータ102およびバッテリ104等を冷却して高温となった冷却水が室外熱交換器64に供給される(図4中、二点実線矢印参照)。
【0032】
これにより、図2および図3に示すように、冷却媒体がヘッダー部90の中央部分に設けられた第1通路84に導入される一方、高温の冷却水がこの第1通路84を周回して設けられた複数の第2通路88に導入される。従って、駆動系86からの排熱を介してヘッダー部90自体を直接加熱することができ、第1通路84の周囲温度が迅速かつ確実に上昇される。このため、第1通路84に導入された冷却媒体は、該第1通路84の周囲に発生した排熱を蒸発熱として吸熱することが可能になり、暖房効率が大幅に向上するとともに、室外熱交換器64が着霜することを確実に阻止することができるという効果が得られる。
【0033】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るオートエアコンを構成する室外熱交換器120の概略構成説明図であり、図6は、図5中、VI−VI線断面図である。
【0034】
室外熱交換器120は、鉛直方向に蛇行する扁平状チューブ122を備え、このチューブ122には、多数のフィン123が設けられている。チューブ122内には、暖房運転時に図示しない駆動系を冷却して高温になった冷却水を流す水通路124と、この水通路124を中心に周回する複数の冷媒通路126とが設けられ、これにより、前記チューブ122は、二重の中空構造に設定される。
【0035】
図5および図7に示すように、チューブ122の両端部は、水通路124が所定の長さだけ外方に突出しており、この突出する水通路124に水路116が連結されている。冷媒通路126は、チューブ122の両端縁部でタンク130に連通しており、このタンク130に冷媒管路54eが連結されている。
【0036】
このように構成される第2の実施形態では、室外熱交換器120を構成するチューブ122が、中央部分に水通路124を有し、この水通路124の周囲に複数の冷媒通路126を設けた二重の中空構造に設定されている。このため、暖房運転時に、高温の冷却水が水通路124に導入される一方、冷却媒体がこの水通路124を周回して設けられた複数の冷媒通路126に導入される。
【0037】
これにより、駆動系からの排熱を介してチューブ122自体が直接加熱され、冷媒通路126の周囲温度が迅速に上昇されて、前記冷媒通路126に導入された冷却媒体は、該冷媒通路126の周囲に発生した排熱を蒸発熱として吸熱することが可能になる。従って、暖房効率が大幅に向上するとともに、着霜を確実に阻止することができる等、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0038】
なお、第1の実施形態では、室外熱交換器64を構成するヘッダー部90のみを二重の中空構造に設定しているが、この室外熱交換器64を構成するチューブ92を、第2の実施形態に係るチューブ122と同様に、二重の中空構造に設定してもよい。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る車両用空調装置では、暖房運転時に、配管部材の第1通路に熱媒体を流す一方、この配管部材の第2通路に発熱源を冷却した冷却水を流すことにより、前記発熱源からの排熱を介して前記第1通路の周囲温度が迅速かつ確実に上昇し、熱交換器が着霜することを有効に回避することができる。しかも、熱媒体は、第1通路の周囲に発生した排熱を蒸発熱として吸熱するため、暖房効率が大幅に向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用オートエアコンの概略構成説明図である。
【図2】前記オートエアコンを構成する室外熱交換器の概略構成説明図である。
【図3】図2中、III−III線断面図である。
【図4】駆動系の冷却回路説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る車両用オートエアコンを構成する室外熱交換器の概略構成説明図である。
【図6】図5中、VI−VI線断面図である。
【図7】図5に示す室外熱交換器を構成するチューブの端部拡大断面図である。
【符号の説明】
10…オートエアコン 16…冷却媒体回路
18…加熱媒体回路 52…電動コンプレッサ
64…室外熱交換器 84…第1通路
86…駆動系 88…第2通路
90…ヘッダー部 92…チューブ
94…水管路 98…冷媒通路
100…冷却回路 102…モータ
104…バッテリ 106…冷却水循環路
108…ラジエータ 112…ポンプ
114…三方弁 116…水路
120…室外熱交換器 122…チューブ
124…水通路 126…冷媒通路

Claims (2)

  1. 熱媒体を圧縮して送り出すコンプレッサと、
    冷房運転時に、前記コンプレッサから吐出された前記熱媒体を凝縮させることにより放熱を行う一方、暖房運転時に、前記熱媒体を蒸発させることにより吸熱を行う熱交換器と、
    を備え、
    前記熱交換器は、前記熱媒体を流すための第1通路と、暖房運転時に発熱源を冷却した冷却水を流すための第2通路とが、互いに近接して直接設けられた配管部材と、
    前記配管部材の外部に設けられる複数のフィンと、
    を有し、
    前記第1通路と前記第2通路とは、前記第2通路を中心にして前記第1通路を前記第2通路の周囲に配置した二重の中空構造に設定されることを特徴とする車両用空調装置。
  2. 請求項1記載の空調装置において、前記発熱源は、走行用モータを有することを特徴とする車両用空調装置。
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