以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
図2に、開示する技術(空調システム)を適用した自動車1(車両)を例示する。この自動車1では、ガソリンを燃料とするエンジン2(内燃機関)が搭載されている。ガソリンの燃焼で動力が発生し、自動車1は走行する。自動車1のボディ3の前後方向(自動車1が直進する方向に対しての前後の方向、以下同様)の中間部位に、搭乗者が乗り込むキャビン4(車室)が配置されている。そのキャビン4の前方に、エンジンルーム5(機関室)が配置されている。
エンジンルーム5には、前輪を駆動するエンジン2が設置されている。すなわち、本実施形態では、一般的な前輪駆動(いわゆるFF方式)の自動車1を例示している。エンジン2の前方には、エンジン2の冷却水(単に冷却水ともいう)を冷却するラジエータ6、及び空調装置7の冷媒を冷却するコンデンサ8が配置されている。
空調装置7は、キャビン4の前側の車幅方向かつ車高方向の中間部位から、キャビン4の内部に臨むように配置されている。空調装置7は、デフロスター(DEF)としても利用される。そのため、空調装置7は、キャビン4の前側上部を区画しているフロントガラス3aの直下に配置されている。空調装置7は、搭乗者の操作に応じて、キャビン4の各所に配置された吹出口から、温度調節された空気(冷風又は温風)を吹き出す。それにより、キャビン4は、冷房及び暖房が可能となっている。
図3、図4に、空調装置7の主な構造を示す。空調装置7の内部には、空気が流れる空調ダクト70が形成されている。空調ダクト70の上流端には、1つの導入口70aが設けられ、空調ダクト70の下流端には、DEFを含む複数(図例では3つ)の導出口70bが、開閉可能な状態で設けられている。これら導出口70bが、上述した吹出口に連通している。この空調ダクト70の内部に、エバポレータ71、第1ヒータコア72(第1凝縮器)、第2ヒータコア73(第2凝縮器)、及びエア混合チャンバ74が、上流側から順に配置されている。
図4に示すように、第1ヒータコア72及び第2ヒータコア73の各々は、空気が通過する通風面72c,73cを有する矩形のプレート状に形成されている。これら通風面72c,73cは、空調ダクト70の流路断面に対応した大きさに形成されていて、空気の流れに面するように配置されている。
空調装置7の側方には、空調装置7に空気を送り込むブロワ75(送風機)が付設されている(図5も参照)。ブロワ75は、空調装置7の作動時に駆動され、外気、又はキャビン4の内部の空気を、導入口70aを通じて空調装置7に送り込む。
図3、図4に示すように、エバポレータ71は、コンプレッサ81、膨張弁82など、ヒートポンプサイクル80を構成する公知の装置とともに、冷媒配管76を介してコンデンサ8と接続されている。必要に応じて、エバポレータ71とコンデンサ8との間を、コンプレッサ81の動力によって冷媒が循環する。コンデンサ8で冷却された冷媒が、エバポレータ71で吸熱することにより、空調装置7に導入された空気は、冷却及び乾燥される。
ラジエータ6は、冷却水タンク91、ウォータポンプ92等の装置が設置されていて、冷却水を循環させる冷却経路93を介してエンジン2と接続されている。これらにより、エンジン2を冷却する公知の冷却水循環サイクル90が構成されている。そして、本実施形態の第1ヒータコア72は、冷却水配管77を介して冷却経路93に接続されている。
図4に示すように、冷却水配管77は、冷却水を第1ヒータコア72に導入する冷却水導入配管77aと、冷却水を第1ヒータコア72から導出する冷却水導出配管77bとを有している。第1ヒータコア72は、その側縁部の上端部位に第1導入口72aを有し、その側縁部の下端部位に第1導出口72bを有している。冷却水導入配管77aは第1導入口72aに接続され、冷却水導出配管77bは第1導出口72bに接続されている。
冷却経路93と冷却水配管77との間には、冷却水バルブ95が設置されている。冷却水バルブ95が閉じられていると、冷却水は、第1ヒータコア72に供給されない。冷却水バルブ95を開くことで、冷却水が第1ヒータコア72に供給される。従って、エンジン2の作動時には、ウォータポンプ92の駆動により、冷却水が循環してエンジン2を冷却しており、冷却水バルブ95を開くことで、その冷却水が、冷却水配管77を通じて、第1ヒータコア72を循環する。
エンジン2が始動されて、所定の時間が経過すると、エンジン2は暖まって所定の温度状態で安定するようになる(いわゆる温間時)。その時、冷却水の温度は高温(常温よりも高い温度、例えば60℃以上)になる。従って、そのような状態の下で、冷却水が循環している第1ヒータコア72を空気が通過すると、冷却水と熱交換することにより、第1ヒータコア72が放熱し、その空気は加熱される。
なお、冷却水バルブ95は、開き位置及び閉じ位置のいずれか一方に切り替えるタイプ(いわゆる開閉弁)又は、制御によってその開度の調整ができるタイプ(流量コントロール弁)のいずれであってもよい。また、冷却水バルブ95は必須の構成ではない。車種によっては冷却水バルブ95が無いタイプもある。そのような自動車では、ウォータポンプ92が駆動すると、冷却水は、エンジン2及び第1ヒータコア72の双方を循環する。
第2ヒータコア73は、ヒートパイプサイクル40の凝縮器を構成している(ヒートパイプサイクル40、第2ヒータコア73については後述)。第2ヒータコア73は、第1ヒータコア72を通過した空気が通過するように、第1ヒータコア72の下流側に隣接して配置されている。エンジン2の作動時に、第1ヒータコア72を通過した空気が、必要に応じて、第2ヒータコア73で加熱される。
図4に示すように、第2ヒータコア73には、作動液が流れる循環配管41が接続されている。具体的には、循環配管41は、作動液を第2ヒータコア73に導入する作動液導入配管411と、作動液を第2ヒータコア73から導出する作動液導出配管412とを有している。第2ヒータコア73は、その側縁部の上端部位に第2導入口73aを有し、その側縁部の下端部位に第2導出口73bを有している。作動液導入配管411は第2導入口73aに接続され、作動液導出配管412は第2導出口73bに接続されている。従って、第1導入口72aと第2導入口73aは、互いに近接した状態となっている。
図3に示すように、第1ヒータコア72の近傍には、揺動可能なエア混合ドア78が配置されている。エア混合ドア78が揺動することで、第1ヒータコア72の上流側で、エバポレータ71を通過した空気の一部又は全部が、第1ヒータコア72及び第2ヒータコア73をバイパスして流れるように構成されている。
空調装置7の作動時には、第1ヒータコア72及び第2ヒータコア73をバイパスした空気、及び第1ヒータコア72及び第2ヒータコア73を通過した空気(その空気の流れを白抜き矢印で示す)は、エア混合チャンバ74で混合されて温度調節される。エア混合チャンバ74で混合された空気は、各導出口70b及び各吹出口を通じてキャビン4の内部に吹き出される。
図2に示すように、ガソリンの燃焼によってエンジン2で発生する排気ガスは、エンジン2に接続された排気管9を通じて、自動車1の後部から排出される。排気管9は、キャビン4の下側を通過して、エンジンルーム5から後方に延び、その末端が自動車1の後方に臨むように、ボディ3に配置されている。
図5に、空調装置7及び排気管9とともに、キャビン4を区画している隔壁10の前下側部分を示す。隔壁10は、ボディ3と一体に設けられるパネル部材や補強部材で構成されており、ダッシュパネル10a(ダッシュロアパネル)、フロアパネル10b、クロスメンバ10cなどを有している。
ダッシュパネル10aは、車幅方向に拡がって車高方向の中間位置から下方を覆うように設置されている。それにより、ダッシュパネル10aは、ボディ3の内部にあって、キャビン4の前下部とエンジンルーム5とを区画している。空調装置7は、ダッシュパネル10aの内側(キャビン4のある側)の壁面に取り付けられている。
フロアパネル10bは、ダッシュパネル10aの下部に連なり、後方に向かって略水平に拡がっている。それにより、フロアパネル10bは、キャビン4の下部を構成している。ダッシュパネル10aは、キャビン4と車外とを区画している。ダッシュパネル10aの下面は、車外に臨んでいる。
フロアパネル10bの車幅方向の中央部には、前後方向に延びるトンネル部11(凹部)が設けられている。トンネル部11は、キャビン4の側に向かって凹んでいる。図6に示すように、トンネル部11の前端部は、ダッシュパネル10aの下部に連なっている。それにより、トンネル部11の前端部は、ダッシュパネル10aの前方のエンジンルーム5に開放されている。
トンネル部11を横切って車幅方向に延びるように、クロスメンバ10cが、フロアパネル10bの上面に設けられている(図5参照)。クロスメンバ10cは、閉断面構造を形成し、ボディ3の剛性を強化している。
図7にも示すように、排気管9は、キャビン4の下側を前後方向に延びている。排気管9は、トンネル部11に収容されている。すなわち、排気管9のほとんどが、フロアパネル10bの最下面より上方に位置している。排気管9の前端部分は、ダッシュパネル10aに沿うように上方に向かって湾曲し、エンジン2の排気経路に接続されている。
排気管9の前後方向の中間部位には、排気処理装置が付設されている。排気処理装置の多くは、例えば、三元触媒、パーティクルフィルター(PF)などを含み、NOxや煤など、排気ガスに含まれる有害物質を除去する機能を有している。
この自動車1では、排気処理装置として、キャビン4の下側に位置する排気管9の中間部位に、三元触媒を含むアンダーフットキャタ12が配置されている。図示しないが、エンジン2の近傍に位置する排気管9の上端部位にも、三元触媒を含む直キャタリストが配置されている。すなわち、三元触媒を含む排気処理装置としては、アンダーフットキャタ12が、排気管9の最も下流側に位置している。
排気管9の末端部位には、サイレンサ13が配置されている(図2参照)。そして、排気管9の、アンダーフットキャタ12の下流側の部位であって、サイレンサ13の上流側の部位に、排熱回収機構20が設けられている。
(排熱回収機構20)
図8、図9にも示すように、排熱回収機構20は、排気管9を二股に分岐する排熱回収通路21及びバイパス通路22と、切替バルブ23(通路切替装置の一例)とを有している。切替バルブ23は、これら排熱回収通路21及びバイパス通路22の上流側に位置する分岐部位に設置されている。排熱回収通路21及びバイパス通路22は、車幅方向に並んだ状態で、トンネル部11に収容されている。
本実施形態の切替バルブ23は、排気ガスが流れる経路を、排熱回収通路21及びバイパス通路22のいずれか一方に切り替える。すなわち、切替バルブ23は、排気ガスが排熱回収通路21を流れる熱回収位置と、排気ガスがバイパス通路22を流れる熱不回収位置とに切り替える。無通電時の切替バルブ23は、熱不回収位置に位置するように構成されている。排熱回収通路21には、熱回収部25が設けられている。
図10に、排熱回収通路21(概略断面図)を示す。排熱回収通路21は、上流側絞り部24、熱回収部25、下流側絞り部26、を有している。上流側絞り部24及び下流側絞り部26は、流路断面が緩やかに小さくなるように形成されていて、熱回収部25を流れる排気ガスの流速や乱れを緩和する。従って、これら上流側絞り部24及び下流側絞り部26により、熱回収部25での熱交換が安定する。
熱回収部25は、断面が略矩形に形成されている。熱回収部25の内部には、熱回収器30が配置されている。熱回収部25により、後述するヒートパイプサイクル40の蒸発器が構成されている。
図11にも示すように、熱回収器30は、直方体状の部材からなり、一対のパイプサポート31,31と、複数のガスパイプ32とを有している。各ガスパイプ32は、中空薄板状の金属製パイプからなる。ガスパイプ32の内部は、襞状に折れ曲がった金属板(コルゲートフィン)で仕切られている。
各パイプサポート31は、略矩形の金属板からなる。2つのパイプサポート31,31は、互いに間隔を隔てて、熱回収部25の内部に配置されている。各パイプサポート31は、排気ガスの流れる方向(ガス流方向ともいう、図10に白抜き矢印で示す)に面するように配置されている。各パイプサポート31の外周は、熱回収部25の内面に、隙間無く固定されている。それにより、各パイプサポート31の周囲は密閉されている。
各ガスパイプ32の両端部は、2つのパイプサポート31,31に一体的に取り付けられている。各ガスパイプ32は、各パイプサポート31を貫通している。各ガスパイプ32は、互いに僅かな隙間を隔てて平行するように、両パイプサポート31の間に配置されている。それにより、隣接するガスパイプ32の間には、上下方向に平行して延びる複数の枝流路33が形成されている。
熱回収部25の上部には、液混合室34が設けられている。液混合室34は、熱回収器30の上方に拡がるように形成されている。それにより、各枝流路33は、ガス流方向の全域にわたって、液混合室34と連通している。液混合室34におけるガス流方向の上流側の部位には、上方に突出して幅方向に延びた上側接続室35が形成されている。この上側接続室35の前面に、液流出口36(第1接続部)が設けられている。液流出口36は、上側接続室35における幅方向の一端側に偏った部位に配置されている。
熱回収部25の下部には、下方に突出して幅方向に延びた下側接続室37が形成されている。各枝流路33は、ガス流方向の下流側の一部の領域だけを介して、下側接続室37と連通している。この下側接続室37における幅方向の他端側(液流出口36とは反対側)の側面に、液流入口38(第2接続部)が設けられている。
(ヒートパイプサイクル40)
この自動車1には、排気ガスの熱をキャビン4の暖房に効率よく利用できるように、ヒートパイプサイクル40が設けられている。ヒートパイプサイクル40は、ヒートパイプの技術を利用した熱移動サイクルである。ヒートパイプサイクル40は、第2ヒータコア73及び熱回収部25と、これら第2ヒータコア73及び熱回収部25に接続された循環配管41と、を有している。
第2ヒータコア73、熱回収部25、及び循環配管41の各々の内部は連通している。それにより、これらの内部には、互いに連なって密閉された空間(熱移動空間)が形成されている。熱回収部25では、下側接続室37、枝流路33、液混合室34、及び上側接続室35により、熱移動空間が形成されている。
熱移動空間の内部は高度に減圧されている。そして、熱移動空間の内部には、適量の作動液(水溶液、アルコール、冷媒等)が封入されている。それにより、第2配管41bの一部、下側接続室37、及び枝流路33の一部に、作動液が貯留されている。なお、この作動液の液量は一例である。
循環配管41は、第1配管41aと、第2配管41bとを有している。第1配管41aは、液流出口36に接続されている。第2配管41bは、液流入口38に接続されている。第1配管41aを通じて、熱回収部25で気化した作動液が第2ヒータコア73に送られる。第2配管41bを通じて、第2ヒータコア73で液化した作動液が熱回収部25に送られる。
第2ヒータコア73は、空調装置7の狭い内部に増設されるため、その容量は小さく設計されている。熱回収部25も、分岐した状態でトンネル部11に収容される排熱回収通路21に設けられるため、その容量は小さく設計されている。作動液の量が多いとそれだけ熱容量が増えるため、循環配管41も、その容量が小さくなるように、細管(例えば、内径が2mm以上20mm以下)で構成されている。すなわち、ヒートパイプサイクル40は、コンパクトに構成されている。
図6に示すように、ダッシュパネル10aにおけるトンネル部11の上部に隣接した部位には、開口14が形成されている。図4、図7、図8にも示すように、ダッシュパネル10aの内側に、配管接続部79が設置されている。配管接続部79は、開口14を通じて前方のエンジンルーム5に臨んでいる。配管接続部79は、空調装置7に収容されているエバポレータ71、第1ヒータコア72、及び第2ヒータコア73に接続される配管(冷媒配管76、冷却水配管77、循環配管41)を中継する。
エンジンルーム5に面した配管接続部79の前面には、第2ヒータコア73に接続する継手79aが設置されている。これら継手79aに、熱回収部25から延びる循環配管41が接続されている。この実施形態の循環配管41の主体は、いずれも金属管42(硬質配管)と、ゴム管43(軟質配管)とで構成されている。
金属管42は、熱回収部25に接続されていて、熱回収部25からフロアパネル10bの下側を前方に向かって延びている。金属管42は、排気管9に沿った状態でトンネル部11に収容されている。特に、第1配管41aの金属管42は、排気管9の上部に沿って延びるように配置されている(図7参照)。すなわち、第1配管41aの金属管42は、排気管9よりもトンネル部11の奥に配置されている。
第2配管41bの金属管42は、排気管9の側部に沿って延びるように配置されている。これら金属管42の前端部は、フロアパネル10bの前端部に位置している。
ゴム管43の一端は、金属管42の前端部に接続されている。ゴム管43は、屈曲された状態で、ダッシュパネル10aに沿って延びている。そして、ゴム管43の他端は、継手79aに接続されている。循環配管41は、ダッシュパネル10a又はフロアパネル10bには支持されず、排気管9と継手79a(配管接続部79、更には空調装置7)とによって支持されている。
(空調システム50)
この自動車では、空調装置7にヒートパイプサイクル40を組み込み、冷却水と排気ガスの双方の熱が利用できるように、空調システム50が構成されている。それにより、暖房が、空調装置7のみで行う場合よりも速やかに行えるようになっている。空調システム50には空調制御装置51が備えられていて、この空調制御装置51により、空調システム50は総合的に制御される。
図12に、空調制御装置51の主な構成を示す。空調制御装置51は、プロセッサ51a、メモリ51b、インターフェース51cなど、公知のハードウエアと、ハードウエアに実装された制御プログラムや制御データなどのソフトウエアとで構成されている。ソフトウエアはメモリ51bに記憶されており、プロセッサ51aがソフトウエアを実行する。
空調制御装置51には、インターフェース51cを介して、吸気温度センサSW1、水温センサSW2、室内温センサSW3、切替バルブ23、ブロワ75、及び冷却水バルブ95などの装置が接続されている。図示はしないが、空調制御装置51には、空調装置7を制御するため、コンプレッサ81、ウォータポンプ92、エア混合ドア78、導出口70bなどの装置も接続されている。
図2に示すように、吸気温度センサSW1は、エンジン2の吸気通路(図示せず)に設置されていて、新気(外気)の温度を検知する。水温センサSW2は、冷却経路93に設置されていて、冷却水の温度を検知する。室内温センサSW3は、空調装置7に設置されていて、キャビン4の中の温度を検知する。
自動車1の電源がONされると、それ以降、その電源がOFFされるまで、空調制御装置51には、これらセンサSW1~SW3から信号が入力される。そして、空調制御装置51は、これら信号に基づいて、切替バルブ23、ブロワ75、及び冷却水バルブ95の作動を制御する。
(空調システム50の動作)
自動車1の電源がOFFの時など、常態では、切替バルブ23は熱不回収位置に位置している。そのため、エンジン2の作動中に発生する排気ガスは、バイパス通路22を流れて、従来と同様に排気される。従って、ヒートパイプサイクル40は作動しない。
すなわち、切替バルブ23が熱不回収位置に位置している時、作動液は、ほとんど循環せずに滞留した状態となっている(不循環状態)。バイパス通路22には、排気ガスの通気抵抗になる構造は無い。従って、排気ガスがバイパス通路22を流れる時には、排気ガスの良好な掃気性も得られる。
一方、エンジン2の作動中に搭乗者が空調装置7を操作するなどして、暖房要求があると、ブロワ75が作動し、キャビン4に空気が吹き出される。そして、切替バルブ23は、熱回収位置に切り替わる。それにより、排気ガスは、排熱回収通路21に流れる。排熱回収通路21に導入された排気ガスは、上流側絞り部24で流速や乱れが緩和された後、ガスパイプ32に流入する。
排気ガスがガスパイプ32を通過する過程で、各枝流路33に溜まる作動液が排気ガスの熱を吸収して気化し、作動液の蒸気が発生する。作動液の蒸気は、第1配管41aを通じて第2ヒータコア73に移動する。第2ヒータコア73に移動した作動液の蒸気は、空調装置7に導入される空気に放熱して液化する。第2ヒータコア73で液化した作動液は、作動液の蒸気圧や重力の作用により、熱回収部25へ移動する。
すなわち、切替バルブ23が熱回収位置に切り替わると、排気ガスとの熱交換、及び、空調装置7に導入される空気との熱交換により、作動液は、相変化しながら、循環配管41を通じて、第2ヒータコア73と熱回収部25との間を循環した状態となる(循環状態)。それにより、排気ガスの熱を直接的に利用して、キャビン4の暖房が行える。
空調装置7が元来有している暖房機能では、冷却水との熱交換によって空気を加熱する。そのため、空調装置7のみで暖房を行った場合には、冷却水が暖房できる温度に上昇するまでは、空気を加熱できない。従って、暖房要求があっても、エンジン2の始動時など、冷却水の温度が低い状態からでは、温風を吹き出すまでに、ある程度の時間が必要である。
また、暖房を行うために、エンジン2が暖まっていない状態の下で冷却水を第1ヒータコア72に供給すると、冷却水が第1ヒータコア72で放熱して、冷却水の温度上昇が遅くなる。従って、エンジン2が適切な温度状態に達するのが遅れ、燃費向上等の面でも不利がある。
それに対し、この空調システム50によれば、排気ガスの熱を直接的に利用して、キャビン4の暖房が行える。そのため、冷却水の温度が十分に高温になっていなくても、キャビン4に温風を吹き出すことができる。従って、エンジン2の始動時など、冷却水の温度が低い状態からであっても、暖房が速やかに行える。冷却水を用いずに暖房が行えるので、エンジン2の予熱も速やかに行える。従って、燃費向上等の面でも優れる。
更に、この自動車1では、排気管9にアンダーフットキャタ12が設置されている。アンダーフットキャタ12が含む三元触媒は、適正に機能させるには所定以上の温度が必要である。従って、熱回収部25をアンダーフットキャタ12の上流側に配置すると、アンダーフットキャタ12の機能が損なわれるおそれがある。
それに対し、この自動車1では、熱回収部25がアンダーフットキャタ12の下流側に配置されている。従って、ヒートパイプサイクル40で排熱を利用しても、アンダーフットキャタ12の機能を維持できる。
(ヒートパイプサイクル40の異常高圧の抑制)
空調装置7は、キャビン4が狭くならないようにコンパクトに構成されていて、その内部には多数の装置が密集した状態で収容されている。そのため、第2ヒータコア73は、図4に示したように、第1ヒータコア72の下流側の、狭く限られたスペースに設置されている。従って、通気性が悪く、ブロワ75が作動していない時はもちろん、ブロワ75が作動していても空気の流動が弱まるため、第2ヒータコア73は放熱し難くなっている。
更に、第2ヒータコア73は、第1ヒータコア72の下流側に隣接して配置されている。従って、第1ヒータコア72と第2ヒータコア73の双方で熱交換が行われた場合、第1ヒータコア72で加熱された空気は、ほとんどそのままの温度状態で第2ヒータコア73に流入する。
また更に、第1導入口72aと第2導入口73aは、互いに近接した状態となっている。第1ヒータコア72と第2ヒータコア73の双方の熱交換による暖房時には、第1導入口72aに、温度の高い冷却水が導入され、第2導入口73aに、温度の高い作動液が導入される。従って、ヒートパイプサイクル40における第2導入口73aの周辺部位、具体的には、作動液導入配管411又は第2ヒータコア73における第2導入口73aの周辺部位は、ヒートパイプサイクル40の他の部位に比べて、特に、熱移動空間が異常高圧になり易い。
そのため、ヒートパイプサイクル40によって暖房が行われた場合、第2ヒータコア73が過度に加熱され、熱移動空間が異常高圧になるおそれがある。熱移動空間が異常高圧になると、循環配管41等、ヒートパイプサイクル40が破損するおそれがある(特に細管の接続部位の負担が大きい)。
そこで、この空調システム50では、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を抑制及び予防することにより、キャビン4の暖房が安定的かつ効果的に行えるように工夫されている。具体的には、切替バルブ23及び/又は冷却水バルブ95を利用して、ヒートパイプサイクル40の異常高圧の抑制及び予防の制御が行えるように構成されている。
(切替バルブ23を利用した制御)
空調制御装置51は、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を抑制するために、所定の条件が成立すると切替バルブ23を制御する。
すなわち、ヒートパイプサイクル40の内圧、つまり熱移動空間が所定の内圧上限値(第1上限値)に達した場合、空調制御装置51が、排熱回収通路21を流れる排気ガスの量を減少させるために、切替バルブ23を制御し、排気ガスが流れる経路を、排熱回収通路21からバイパス通路22に切り替える。
内圧上限値には、例えば、ヒートパイプサイクル40の耐圧限界に近い上限値を用いることができる。内圧上限値は、メモリ51bに設定されており、変更可能である。ヒートパイプサイクル40の内圧は、既設のセンサSW1~SW3などで検知できる状態量から推定してもよいし、ヒートパイプサイクル40に圧力センサを設置し、その圧力センサで直接検知してもよい。
なお、前者に関しては、予め実験等により、排気ガス、冷却水、外気の温度等、内圧の要因と内圧との相関データを収集すれば、その相関データと、実測される排気ガス、冷却水、外気の温度等とから、ヒートパイプサイクル40の内圧を推定できる。また、ヒートパイプサイクル40の内圧は、第2導入口73aの周辺部位を判断の基準位置とするのが好ましい。
ヒートパイプサイクル40の内圧が内圧上限値に達すると、排気ガスの流れる経路は、排熱回収通路21からバイパス通路22に切り替わる。それにより、作動液は、排気ガスと熱交換できなくなるので、ヒートパイプサイクル40の内圧は、一気に低下する。従って、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を抑制できる。排気ガスがバイパス通路22を流れるので、排気ガスの掃気性も向上する。
更に、この空調システム50では、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を予防し、キャビン4の暖房がよりいっそう安定的かつ効果的に行えるように工夫されている。
具体的には、第2ヒータコア73に流入する空気の温度が所定の温度上限値(第2上限値)に達した場合にも、空調制御装置51が、切替バルブ23を制御して、排気ガスが流れる経路を、排熱回収通路21からバイパス通路22に切り替える。
上述したように、第1ヒータコア72で空気が加熱されると、その空気は、構造上、ほとんどそのままの温度状態で第2ヒータコア73に流入する。それにより、ヒートパイプサイクル40の第2ヒータコア73及びその周辺部位が異常高圧になり易くなっている。従って、第2ヒータコア73に流入する空気の温度に基づいて、切替バルブ23を制御すれば、ヒートパイプサイクル40の異常高圧が予防できる。
温度上限値には、例えば、その温度で空気が第2ヒータコア73に流入した場合に、ヒートパイプサイクル40の内圧が内圧上限値に達するおそれのある値を用いることができる(温度上限値に対応するヒートパイプサイクル40の内圧は、内圧上限値よりも低いのが好ましい)。温度上限値も、内圧上限値と同様に、メモリ51bに設定されており、変更可能である。
第2ヒータコア73に流入する空気の温度は、外気の温度と冷却水の温度から間接的に求めることができる。外気及び冷却水の温度であれば、既設のセンサを利用して検知できる。従って、空調システム50を安価で実現できる。なお、第2ヒータコア73の上流側に温度センサを設置して、その温度センサで直接検知してもよい。
第2ヒータコア73に流入する空気の温度が温度上限値に達すると、排気ガスの流れる経路は、排熱回収通路21からバイパス通路22に切り替わる。それにより、作動液は、排気ガスと熱交換できなくなるので、ヒートパイプサイクル40の内圧は、一気に低下する。従って、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を予防できる。排気ガスがバイパス通路22を流れるので、排気ガスの掃気性も向上する。
(冷却水バルブ95を利用した制御)
冷却水バルブ95を利用して、ヒートパイプサイクル40の異常高圧の抑制及び予防の制御を行うようにしてもよい。その場合、空調制御装置51は、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を抑制するために、所定の条件が成立すると冷却水バルブ95を制御する。
すなわち、第1ヒータコア72及び第2ヒータコア73の双方の熱交換で暖房が行われている条件の下で、ヒートパイプサイクル40の内圧が内圧上限値に達した場合、空調制御装置51は、第1ヒータコア72に供給される冷却水の量が減少するように、冷却水バルブ95の開度を制御する。開閉弁であれば閉じ位置に、流量コントロール弁であれば閉じ方向に制御する。
第1ヒータコア72に供給される冷却水の量が減少すると、第1ヒータコア72で作動液に移行する時間当たりの熱量が減少する。それにより、第1ヒータコア72を通過した後の空気の温度(第2ヒータコア73に流入する空気の温度)が低下する。その結果、ヒートパイプサイクル40の内圧も低下するので、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を抑制できる。
更に、この制御でも、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を予防し、キャビン4の暖房がよりいっそう安定的かつ効果的に行えるようにするのが好ましい。
具体的には、第2ヒータコア73に流入する空気の温度が温度上限値に達した場合にも、空調制御装置51は、冷却水バルブ95の開度を制御して、第1ヒータコア72に供給される冷却水の量を減少させる。それにより、第1ヒータコア72を通過した後の空気の温度が低下する。その結果、ヒートパイプサイクル40の内圧も低下するので、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を予防できる。
なお、冷却水バルブ95の制御での温度上限値は、上述した切替バルブ23の制御での温度上限値と同じ値でも異なる値でもよい。
(切替バルブ23の利用による制御例)
図13、図14を参照して、切替バルブ23を利用した、ヒートパイプサイクル40の異常高圧の抑制及び予防に関する制御例を示す。この制御例は、外気の温度の低い環境下において、自動車1の始動時に暖房が要求された場合の制御を示している。また、冷却水バルブ95は開閉式である。
図14の上段のグラフ(a)は、冷却水の温度の経時変化を示している。その下のグラフ(b)は、第2ヒータコア73の内圧の経時変化を示している。その下のグラフ(c)は、切替バルブ23の作動状態を示している。そのグラフ(c)の「A」は、切替バルブ23が熱回収位置に位置している状態を示している。そのグラフ(c)の「B」は、切替バルブ23が熱不回収位置に位置している状態を示している。そして、その下のグラフ(d)は、冷却水バルブ95の作動状態(開閉状態)を示している。なお、各グラフの変化は例示であり、その時間的なタイミングは一致するように表してある。
自動車1の電源がONになると、吸気温度センサSW1、水温センサSW2、及び室内温センサSW3から空調制御装置51に検出信号が入力される。そして、エンジン2が始動されると、それに伴って排気ガスが排気管9を通じて排出され、冷却水は徐々に温度が上昇していく。
常態の切替バルブ23は、熱不回収位置にあるため、エンジン2の始動開始時には、排気ガスはバイパス通路22を通じて排出される。従って、ヒートパイプサイクル40は作動せず、作動液は不循環状態となっている。
空調制御装置51は、暖房要求の指示に従い、水温センサSW2の検出値から、冷却水の温度Twが、第1基準温度T0以上か否かを判断する(ステップS10)。第1基準温度T0は、例えば、エンジン2が適切な温度状態に達していて、余った熱で暖房できるような温度である。従って、冷却水の温度Twが第1基準温度T0以上であれば、第1ヒータコア72のみの熱交換により、効果的に暖房できる。空調制御装置51は、冷却水バルブ95を開くように制御する(ステップS11)。
冷却水の温度Twが第1基準温度T0より低い場合、第1ヒータコア72での熱交換のみでは、適切な暖房が行えない。また、燃費向上等の観点からは、エンジン2の予熱を優先するのが好ましい。従って、その場合、空調制御装置51は、冷却水バルブ95を閉じるように制御する(ステップS12)。そして、ブロワ75を作動させるとともに、切替バルブ23を熱回収位置に切り替え、ヒートパイプサイクル40による暖房を開始する(ステップS13、S14)。
図14に示すように、この制御例では、制御開始時の冷却水の温度Twは、第1基準温度T0より低いので、冷却水バルブ95は閉じるように制御され、切替バルブ23は熱回収位置に切り替えられる。
その後、空調制御装置51は、連続的に、第2ヒータコア73の内圧が内圧上限値Ps以上か否かを判断する(ステップS15)。そして、図14のグラフ(b)に仮想線で示すように、第2ヒータコア73の内圧が過度な高圧になったとする。
その場合、空調制御装置51は、第2ヒータコア73の内圧が内圧上限値Ps以上であると判断し、図14のグラフ(c)に仮想線で示すように、切替バルブ23を熱不回収位置に切り替える(ステップS16)。それにより、第2ヒータコア73の内圧は低下する。それとともに、内圧の異常を報知する(ステップS17)。なお、通常であれば、第2ヒータコア73の内圧が内圧上限値Ps以上になることはない。
また、空調制御装置51は、冷却水の温度Twが、第1基準温度T0に達したか否かを判断している(ステップS18)。そして、図14のグラフ(a)に示すように、冷却水の温度が第1基準温度T0に達すると、図14のグラフ(c)、(d)に示すように、切替バルブ23を熱不回収位置に切り替え、冷却水バルブ95を開くように制御する(ステップS19)。それにより、空調装置7本来の暖房に切り替わる。排気ガスはバイパス通路22を通過するので、排気ガスの掃気性も従来と同じ状態に復帰する。
(変形例)
この変形例では、切替バルブ23を利用した制御を、冷却水バルブ95が無いタイプの自動車1に適用した場合を例示する。冷却水バルブ95が無い点を除けば、この変形例は、上述した実施形態と内容は同じである。従って、その構造等の説明は省略する。
図15、図16を参照して、この変形例での、切替バルブ23を利用した、ヒートパイプサイクル40の異常高圧の抑制及び予防に関する制御例を示す。この制御例の状況は、上述した実施形態の制御例に対応している。冷却水バルブ95が無いので、エンジン2の作動中は、エンジン2及び第1ヒータコア72の双方に冷却水が供給される。
空調制御装置51は、暖房要求の指示に従い、水温センサSW2の検出値から、冷却水の温度Twが暖房可能な第1基準温度T0以上か否かを判断する(ステップS20)。冷却水の温度Twが第1基準温度T0以上であれば、第1ヒータコア72での熱交換によって暖房ができる。従って、空調制御装置51は、空調装置7本来の暖房を行う(ステップS21)。排気ガスは、バイパス通路22を通過するため、排気ガスの掃気性も従来と同じである。
しかし、この制御例では、図16のグラフ(a)に示すように、制御開始時の冷却水の温度Twは、第1基準温度T0より低い。従って、第1ヒータコア72での熱交換では、適切な暖房が行えないので、空調制御装置51は、ブロワ75を作動させるとともに、切替バルブ23を熱回収位置に切り替え、ヒートパイプサイクル40による暖房を開始する(ステップS22、S23)。
その後、空調制御装置51は、連続的に、第2ヒータコア73の内圧が内圧上限値Ps以上か否かを判断する(ステップS24)。そして、図16のグラフ(b)に仮想線で示すように、第2ヒータコア73の内圧が過度に高圧になると、空調制御装置51が第2ヒータコア73の内圧が内圧上限値Ps以上であると判断する。そうした場合、空調制御装置51は、図16のグラフ(c)に仮想線で示すように、切替バルブ23を熱不回収位置に切り替えて(ステップS25)、内圧の異常を報知する(ステップS26)。
またその後、空調制御装置51は、連続的に、水温センサSW2の検出値から、冷却水の温度Twが温度上限値T1以上か否かについても判断する(ステップS27)。第1ヒータコア72には、冷却水が循環しているため、その温度上昇に伴って、第ヒータコア72に流入する空気の温度も上昇する。それにより、第2ヒータコア73が過剰に加熱され、ヒートパイプサイクル40が内圧異常になるおそれある。
しかし、空調制御装置51は、冷却水の温度Twが温度上限値T1以上であると判断すると、切替バルブ23を熱不回収位置に切り替える(ステップS28)。それにより、作動液は、排気ガスと熱交換できなくなるので、ヒートパイプサイクル40の内圧は、一気に低下する。従って、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を予防できる。
その後の暖房は、冷却水を用いた第1ヒータコア72での熱交換によって継続される。
(冷却水バルブ95の利用による制御例)
図17、図18を参照して、冷却水バルブ95を利用した、ヒートパイプサイクル40の異常高圧の抑制及び予防に関する制御例を示す。冷却水バルブ95には、開度が調整できるタイプが用いられている。
この制御例も、外気の温度の低い環境下において、自動車1の始動時に暖房が要求された場合の制御を示している。図18の各グラフの内容は、図14の各グラフに対応しているため、その説明は省略する。
上述した実施形態と同様に、エンジン2の始動初期は、冷却水の温度が低いため、第1ヒータコア72による熱交換では暖房できない。また、エンジン2の予熱を優先するため、ヒートパイプサイクル40が作動され、第2ヒータコア73による熱交換で暖房が行われる。従って、この制御例では、切替バルブ23は熱回収位置にある状態、冷却水バルブ95は全閉された状態、及びブロワ75は作動した状態が初期条件となっている(ステップS30)。
そのような状況の下、空調制御装置51は、水温センサSW2の検出値から、冷却水の温度Twが、第2基準温度T2以上か否かを判断する(ステップS31)。第2基準温度T2は、例えば、エンジン2は適切な温度状態に達していないが、冷却水の温度が外気の温度よりもある程度高くなって、暖房できるような温度である。従って、冷却水の温度Twが第2基準温度T2以上であれば、第1ヒータコア72の熱交換によっても暖房できる。
空調制御装置51は、冷却水の温度Twが第2基準温度T2以上と判断すると、暖房要求の内容、外気の温度、キャビン4の中の温度、排気ガスの温度、エンジン2の予熱の状態など、自動車1の温度に関する状態量に基づいて、第1ヒータコア72に供給する冷却水の流量の目標値を算出する(ステップS32)。そして、空調制御装置51は、その目標値の流量が得られるように、冷却水バルブ95の開度を調整する(ステップS33)。
それにより、冷却水と排気ガスの双方の熱を利用して暖房が行える。従って、暖房がよりいっそう速やかに行える。
その後、空調制御装置51は、連続的に、第2ヒータコア73の内圧が内圧上限値Ps以上か否かを判断する(ステップS34)。そして、図18のグラフ(b)に仮想線で示すように、第2ヒータコア73の内圧が過剰な高圧になると、空調制御装置51が第2ヒータコア73の内圧が内圧上限値Ps以上であると判断する。そうした場合、空調制御装置51は、図18のグラフ(d)に仮想線で示すように、冷却水バルブ95を閉じて(ステップS35)、内圧の異常を報知する(ステップS36)。これと共に、切替バルブ23を熱不回収位置に切り替えてもよい。
またその後、空調制御装置51は、連続的に、水温センサSW2の検出値から、冷却水の温度Twが温度上限値T1以上か否かについても判断する(ステップS37)。そして、空調制御装置51は、冷却水の温度Twが温度上限値T1以上であると判断すると、第2ヒータコア73に流入する空気の温度が上昇しないように、冷却水の温度上昇に応じて、第1ヒータコア72に供給する冷却水の流量の目標値を算出する(ステップS38)。
当初の目標値は、冷却水の量を減少させる値である。その後の目標値は、第2ヒータコア73に流入する空気の温度が上昇しない範囲であれば、変更してもよい。空調制御装置51は、そのような目標値の流量が得られるように、冷却水バルブ95の開度を調整する(ステップS39)。
それにより、第2ヒータコア73の内圧の上昇が抑制されるので、ヒートパイプサイクル40の異常高圧を予防できる。熱交換量の低下を抑制できるので、暖房も速やかに行える。
そうして、空調制御装置51は、図18のグラフ(a)に示すように、冷却水の温度が第1基準温度T0に達すると(ステップS40でYes)、図18のグラフ(c)、(d)に示すように、切替バルブ23を熱不回収位置に切り替え、冷却水バルブ95が全開になるように制御する(ステップS41)。それにより、空調装置7本来の暖房に切り替わる。排気ガスはバイパス通路22を通過するので、排気ガスの掃気性も従来と同じ状態に復帰する。
切替バルブ23を利用した制御及び冷却水バルブ95を利用した制御は、それぞれ独立して行ってもよいし、双方を必要に応じて適宜組み合わせて行ってもよい。上述した制御例も、適宜選択して組み合わせてもよい。
開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
通路切替装置は、切替バルブ23に限らない。バイパス通路22と排熱回収通路21とを切り替えることができるものであればよい。
また、切替バルブ23を利用した制御に関する実施形態では、切替バルブ23が、排気ガスが流れる経路を、排熱回収通路21及びバイパス通路22のいずれか一方に切り替える場合を例示したが、それに限らない。切替バルブ23の開度が制御できる場合には、排熱回収通路21を流れる排気ガスの量を調整しながら、排気ガスが流れる経路を切り替える制御を行ってもよい。
具体的には、ヒートパイプサイクル40の内圧が内圧上限値Psに達した場合、空調制御装置51が、切替バルブ23を制御し、ヒートパイプサイクル40の内圧に応じて、排熱回収通路21を流れる排気ガスの量を減少させるようにすればよい。そうすれば、ヒートパイプサイクル40の内圧を円滑に減少させることができ、ヒートパイプサイクル40の内圧異常を安定して抑制できる。
同様に、第2ヒータコア73に流入する空気の温度が温度上限値T1に達した場合にも、空調制御装置51が、切替バルブ23を制御し、第2ヒータコア73に流入する空気の温度に応じて、排熱回収通路21を流れる排気ガスの量を減少させるようにすればよい。そうすれば、ヒートパイプサイクル40の内圧を円滑に減少させることができ、ヒートパイプサイクル40の内圧異常を安定して予防できる。
また、冷却水バルブ95を利用した制御に関する実施形態では、開度が調整できるタイプの冷却水バルブ95が用いられている場合を例示した。しかし、開閉式の冷却水バルブ95が用いられている場合や、冷却水バルブ95が無い場合においても、このような制御を適用することは可能である。
例えば、冷却水バルブ95の代わりに、ウォータポンプ92の出力を調整することでも、第1ヒータコア72に供給される冷却水の量の調整はできる。すなわち、第1ヒータコア72に供給される冷却水の量の調整ができればよく、その手段(冷却水量調整手段)は冷却水バルブ95に限らない。
開示する技術が適用できる車両は、ガソリンエンジン2で駆動するものに限らない。ディーゼルエンジン2を搭載した自動車1、又は、エンジン2とモータとを併用した電気自動車1にも、開示する技術は適用できる。要は、運転時に排気ガスを排出する車両であればよい。
車両の駆動方式は、FFに限らず、FR、RR、MRでもよい。すなわち、エンジン2の配置は、車両の前部に限らない。排気管には、NOx吸収還元触媒(NSC)、尿素選択還元触媒(SCR)、排気ガスを再循環させる外部EGRなどの排気処理装置が設置されていてもよい。