JP7124452B2 - 表面改質剤 - Google Patents
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Description
一方、顔料や無機フィラー等の固体表面や基材表面から高分子がブラシのように伸長したポリマーブラシは、高分子と基材が直接結合するため、耐久性や安定性に優れていると考えられる。具体的には、遷移金属触媒や有機テルル触媒、ヨウ素化合物を用いたリビングラジカル重合などによる研究開発が進められている(特許文献1)。また、顔料分散剤に関しても、顔料誘導体を使用せずに、色素化合物のハロゲン置換によってリビングラジカル重合を用いた色素ポリマーの研究開発も近年盛んに進められている(特許文献2)。
しかしながら、このような遷移金属触媒や有機テルル系触媒、ヨウ素化合物触媒を用いるリビングラジカル重合系の場合には、反応後に大量の触媒を製品から完全に除去することが容易でないことや工業的に触媒を除去することが難しい欠点がある(特許文献3)。
また、不要となった触媒を廃棄する際に環境上の問題が発生し得るという欠点があった。
一般式(1)
(一般式(1)中、R1はメチレン基またはエチレン基である。)
無水トリカルボン酸クロリド(E)中の酸クロライド基、または
テトラカルボン酸無水物(F)の分子内中の1つの酸無水物基を反応させてなる、片末端領域に1つ以上の酸無水物基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2-2)である表面改質剤に関する。
前記無水トリカルボン酸クロリド(E)が、下記化学式(3)で表される化合物(H1)であり、
前記テトラカルボン酸無水物(F)が下記一般式(4)で表される化合物(H2)である、前記表面改質剤に関する。
一般式(2)
(一般式(2)中、R2は、ヘテロ原子を有していてもよい二~四価の炭化水素基であり、n1は1~3の整数である。)
化学式(3)
一般式(4)
(一般式(4)中、k1は1又は2である。)
一般式(5)
(一般式(5)中、(A)は(メタ)アクリル系重合体残基であり、
R5は直接結合又は、アルキレン基、アリーレン基、及びアルキレンオキサイド基からなる群より選ばれる二価の基であり、
L1は直接結合又は-O-C(=O)-であり、
X1は下記一般式(6)、一般式(7)、又は一般式(8)で示される四価の基であり、
Y1は水素原子又は-COOHである。)
一般式(6)
一般式(7)
(一般式(7)中、k2は1又は2である。)
一般式(8)
(一般式(8)中、Q1は、直接結合又は炭素数が1~20である二価の基である。)
(1-1):分子内に2つのカルボキシル基と1つ以上のチオール基とを有する化合物の存在下に、エチレン性不飽和単量体を重合し、片末端領域に2つのカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A1)を得た後、前記2つのカルボキシル基を酸無水物基に変性し、片末端領域に無水物基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2)を得る。
[具体例(I)]
<工程(1-1):片末端領域に無水物基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2)の合成>
分子内に2つのカルボキシル基と1つ以上のチオール基とを有する化合物である一般式(1)で表される化合物(D)の存在下に、エチレン性不飽和単量体を重合し、片末端領域に2つのカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A1)を得る(下記スキーム(1))。
分子内に2つのカルボキシル基と1つ以上のチオール基とを有する化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
その中でも、生産上やコストなどの観点から、無水酢酸を触媒に使用する系がより好ましい。また、これらの方法に限定されるものではない。
<工程(1-2):片末端領域に無水物基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2)>
分子内に1つ以上の水酸基と1つ以上のチオール基とを有する化合物である下記一般式(2)で表される化合物(G)の存在下に、エチレン性不飽和単量体を重合してなる、片末端領域に1つ以上の水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(A1’)を得る(下記スキーム(6))。
(スキーム(6)中、(A)は任意のエチレン性不飽和単量体を重合した(メタ)アクリル系重合部であり、(メタ)アクリル系重合体(A1’)残基である。R2は、前記一般式(2)と同様である。)
一般式(5)
(一般式(5)中、(A)は(メタ)アクリル系重合体残基であり、
R5は直接結合又は、アルキレン基、アリーレン基、及びアルキレンオキサイド基からなる群より選ばれる二価の基であり、
L1は直接結合又は-O-C(=O)-であり、
X1は下記一般式(6)、一般式(7)、又は一般式(8)で示される四価の基であり、
Y1は水素原子又は-COOHである。)
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等の複素環式(メタ)アクリレート類;
メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレ―ト類;
(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ-ト、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;
及び、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類があげられる。
なお、本実施形態において、(メタ)アクリレートとはメタクリレート及びアクリレートの各々を示し、(メタ)アクリルアミドとはメタクリルアミド及びアクリルアミドの各々を示す。
(メタ)アクリル系重合体(A1)または(A1’)を重合する方法は特に限定されず、従来公知の方法で重合することができる。また、任意に重合開始剤を併用することもできる。ただし、これらに限定されるものではない。
本発明の(メタ)アクリル系重合体(A2)は酸無水物基の反応性を利用して、様々な材料に対する表面改質剤として利用することができる。
また、樹脂の重量平均分子量(Mw)、アミン価、酸無水物価の測定方法は以下の通りである。
酸無水物価は、以下のようにして求められる。具体的には、酸無水物基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2)をa(g)秤量した後にキシレン中に溶解させ、酸無水物基の当量以上のオクチルアミンをb(mmol)添加することで酸無水物基と1級アミノ基を反応させた。その後、室温まで冷却し、残存するオクチルアミン量を、0.1Mエタノール性過塩素酸を用いて滴定することにより定量した。滴定量をc(ml)とすると、以下の式から(メタ)アクリル系重合体(A2)の酸無水物価Xが求められる。
X=(b-0.1×c)/a
AIBN:2,2-アゾビスイソブチロニトリル
MMA:メチルメタクリレート
nBMA:ノルマルブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
(実施例1;表面改質剤溶液(T-1))
(工程(1-1))
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、トルエン330部、および共重合成分としてMMA150部、nBMA150部、MAA20部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器を80℃に加熱して、メルカプタン系連鎖移動剤として2-メルカプトコハク酸14.4部、AIBN3.2部を添加し、12時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。
得られた溶液を50℃まで冷却した後、無水酢酸9.8部を反応容器に仕込み、100℃で9時間反応させた。酸無水物価の測定で、95%以上の連鎖移動剤の末端ジカルボン酸が酸無水物化するまで反応させた。固形分が50重量%の片末端領域に無水物基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2)である表面改質剤溶液(T-1)を得た。
(工程(1-2))
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、トルエン330部、および共重合成分としてMMA150部、nBMA150部、MAA20部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器を80℃に加熱して、メルカプタン系連鎖移動剤として2-メルカプトエタノール14.4部、AIBN3.2部を添加して、12時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。
得られた溶液を50℃まで冷却させた後、無水トリメリット酸クロリド38.8部を反応容器に仕込み、75℃で4時間反応させた。FT-IRの測定で、原料の無水トリメリット酸クロリドの酸クロリド部位の吸収ピークが消失するまで反応させた。固形分が50重量%の表面改質剤溶液(T-2)を得た。
(工程(1-2))
無水トリメリット酸クロリドをピロメリット酸無水物40.2部に変えた以外は、実施例2と同様にして片末端領域に無水物基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2)である表面改質剤溶液(T-3)を得た。なお、本明細書で実施例3は、参考例である。
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、トルエン330部、および共重合成分としてMMA150部、nBMA150部、MAA20部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器を80℃に加熱して、メルカプタン系連鎖移動剤として2-メルカプトエタノール14.4部、AIBN3.2部を添加して、12時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。固形分が50重量%の表面改質剤溶液(T-4)を得た。
(顔料分散体(U-1))
顔料としてC.I.ピグメントレッド57:1を15部、表面改質剤溶液(T-1)12.5部(固形分40重量%)、溶剤としてトルエン72.5部を用いて、ビーズミルにより処理して、顔料分散体(U-1)を調整した。
表面改質剤の種類を表11に示すように変更した以外は顔料分散体(U-1)と同様にして、顔料分散体(U-2~3)、比較用の顔料分散体(U-4)を調整した。
得られた顔料分散体の粘度を、E型粘度計(東京計器製)を用いて測定した。また、得られた顔料分散体を遮光ガラス容器に充填し、密閉状態で23℃にて14日間静置した後、E型粘度計を用いて再度粘度を測定した。そして、調整直後の粘度に対する14日間保存後の粘度の増加率を算出し、増加率が5%未満の場合をA、5%以上10%未満の場合をB、10%以上の場合をCとして評価した。
Claims (7)
- 分子内に2つのカルボキシル基と1つ以上のチオール基とを有する化合物の存在下、エチレン性不飽和単量体を重合して片末端領域に2つのカルボキシル基を有する(メタ)アクリル系重合体(A1)を得る、次いで前記(メタ)アクリル系重合体(A1)が有する2つのカルボキシル基を酸無水物基に変性する、片末端領域に無水物基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2-1)である表面改質剤の製造方法。
- 分子内に1つ以上の水酸基と1つ以上のチオール基とを有する化合物の存在下、エチレン性不飽和単量体を重合して片末端領域に1つ以上の水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体(A1’)を得る、次いで前記(メタ)アクリル系重合体(A1’)が有する1つ以上の水酸基と、無水トリカルボン酸クロリド(E)中の酸クロライド基、またはテトラカルボン酸無水物(F)の分子内中の1つの酸無水物基を反応させる、片末端領域に1つ以上の酸無水物基を有する(メタ)アクリル系重合体(A2-2)である表面改質剤の製造方法。
- コーティング用であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の表面改質剤の製造方法。
- 顔料分散用であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の表面改質剤の製造方法。
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