JP7120848B2 - 通線部材および軒天井構造 - Google Patents

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Description

この発明は、通線部材および軒天井構造に関するものである。
例えば、戸建住宅などの建物には、屋根に太陽光パネルを設置したものが存在している(例えば、特許文献1参照)。この場合、太陽光パネルから延びる配線は、先ず、屋根の上面に沿って軒先まで導かれ、その後、軒先部分で反転され、屋根の下面側を通して室内側へと導かれるようにしている。
特開2017-44038号公報
太陽光パネルから延びる配線を軒先側で屋根の上面から下面側へと反転させる部分では、配線を軒先部分の防水部材に貫通させる必要がある。従来、防水部材に対する配線の貫通部分は、手作業でコーキングするなどして防水性を確保していた。そのため、作業効率が良くなく、また、手作業によるコーキングだと施工のバラ付きによってシール不良が発生するおそれがあった。
そこで、本発明は、主に、上記した問題点を解決することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明は、防水性を保持しつつ配線を差し込み可能なシール隙間を形成するシール部と、該シール部を保持可能な本体部とを有し、該本体部は、開口部を有し、前記シール部は、圧縮および変形が可能な一対の水切部材を有し、一対の該水切部材は、圧縮力が予め加えられた状態で、前記開口部内に、前記開口部を塞ぐように収容設置され、前記シール隙間は、一対の前記水切部材どうしが圧着する圧着部分に形成され、前記水切部材は、前記開口部に取付けられる取付基部と、該取付基部から前記シール隙間となる位置へ向けて延びる多数の毛状体とを有し、前記本体部は、前記開口部を有する上枠部と、前記開口部の幅よりも狭い幅を有して前記シール隙間に沿って延びるスリット状開口部を備えた下枠部とを有している通線部材などを特徴とする。
本発明によれば、上記構成によって、配線の貫通部分に対する作業効率を良くすると共に、施工のバラ付きによるシール不良を防止することなどができる。また、水切部材は、取付基部と毛状体とによって気密性が高く追随性の良いシールとなり、シール隙間は、十分な防水性を確保することなどができる。また、本体部は、上枠部と下枠部とを有することによって、本体部の上側の開口部にシール隙間を配すると共に、本体部の下側のスリット状開口部により、シール隙間を通った配線を導く案内空間を確保することなどができる。
本実施の形態にかかる、通線部材を有する防水シートが設置された建物の軒天井構造を示す部分拡大縦断面図である。 通線部材の全体斜視図である。 図2の通線部材の分解斜視図である。このうち、(a)は水切部材、(b)は上枠部、(c)は下枠部である。 通線部材の部品図(平面図)である。このうち、(a)は水切部材、(b)は上枠部、(c)は下枠部である。 折板屋根を有するユニット建物を示す斜視図である。 比較例にかかる、通線部材を有していない防水シートが設置された建物の軒天井構造を示す部分拡大縦断面図である。
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1~図6は、本実施の形態を説明するためのものである。
<構成>以下、構成について説明する。
図1に示すように、戸建住宅や集合住宅などの建物1は、建物本体2と、屋根3とを有している。
そして、建物本体2の最上部に対して一部が張り出すように屋根3を取付けることによって(張出部3a)、軒天井構造を構成する庇部分5が形成される。
この実施例では、屋根3は、ほぼ水平に近い陸屋根とされている。この陸屋根は、多数の山部と谷部とが交互に形成された折版3bを使用した折版屋根とされている。折版3bは、庇部分5の先端(軒先側)へ向かって緩い下り勾配となるように建物本体2の上部に斜めに設置される。折版3bは、タイトフレームなどの取付金具6や、ドリルビスなどの固定具7を用いて建物本体2の上部に固定される。折版3bにおけるタイトフレームなどの取付金具6よりも先端側には、軒先面戸などの閉止部材8や、スーパーシートなどの透湿性・防水性・防風性を有する防水材9が設置される。これらの閉止部材8や防水材9は、建物本体2の上部に設けることもできるし、後述する軒樋13(の建物側の側面13c)の上部の位置に設けることもできる。
建物本体2の最上部側面(例えば、天井梁94の外側面)における屋根3よりも低い位置には、軒先側へ向かってほぼ水平に延びる庇アーム11が取付けられる。庇アーム11は、屋根3の水下側の端部よりも長く延ばされる。庇アーム11の上には、軒樋受金具12を介して軒樋13が設置される。軒樋13は、底面13aと、一対の側面13b,13cとから成るほぼU字状の断面を有している。軒樋13は、屋根3の水下側の端部の下方(ほぼ真下)の位置に設置される。
庇アーム11の先端側には、軒樋13の外側を覆うようにパラペットなどの軒樋カバー14(化粧カバー)がパラペット受材15やパラペット受金具やパラペット補強金具などの取付金具を介して取付けられる。軒樋カバー14の上部と折版3bの水下側の端部近傍との間には、庇カバー16が架設される。上記した軒先面戸などの閉止部材8は、庇カバー16の折版3b側の部分に設けても良い。
また、庇カバー16の下側には、軒樋カバー14の上部から軒樋13の外側(軒先側)に位置する側面13bの上部へ向かって水はね防止シート17が下り勾配に設置される。
一方、庇アーム11の下面側には、岩綿保温板(ロックウール)などの断熱材が配設され、この断熱材の下側には塩ビ鋼板などの軒天井パネル21が、断熱材を覆うように配設されている。そして、この軒天井パネル21が軒天受材22,23を用いて庇アーム11に取付けられることで、軒天井を形成している。
軒天井パネル21の建物本体2側の端部と建物本体2の外壁24の上端部との間の隙間には、必要に応じて、岩綿保温板などの断熱材25が設置され、また、防水透湿テープなどのシール材26を用いて防水が適宜行われる。
そして、この実施例は、以下のような構成を備えている。
(1)図2(~図4)に示すように、防水性を保持しつつ配線31を貫通可能なシール隙間32を形成するシール部33と、シール部33を保持可能な本体部34とを有する通線部材35を設ける。
ここで、通線部材35は、建物1などにおける配線31の貫通部分36に設置される部材のことである。通線部材35は、建物1の庇部分5に対して設置するのに適したものとされているが、庇部分5以外にも、建物1の各部や建物1以外に使用しても良い。シール隙間32は、単数または複数本の配線31を通し得る長さにするのが好ましい。シール部33および本体部34については、どのようなものとしても良いが、最も好ましいものを後述する。
(2)本体部34は、開口部41を有するものとしても良い。シール部33は、圧縮および変形が可能な一対の水切部材42を有しても良い。一対の水切部材42は、圧縮力が加えられた状態で、開口部41内に、開口部41を塞ぐように収容設置しても良い。シール隙間32は、一対の水切部材42どうしが圧着する圧着部分43に形成される。
ここで、本体部34は、シール部33を保持できれば、どのような形状としても良い。この実施例では、本体部34は、シール部33の外周を保持するものとされている。
開口部41は、本体部34の内側に形成される。開口部41は、本体部34に対して単数または複数設けることができる。この実施例では、開口部41は、本体部34に対して単数設けられている。開口部41は、一対の水切部材42を並べて設置するためのもの(取付開口または第1開口)とされる。開口部41は、一対の水切部材42を収容設置できれば、どのような形状としても良いが、複数本の配線31を通し得るようにする場合には、例えば、細長い形状などとするのが好ましい。この実施例では、開口部41を、軒樋13の延設方向へ延びる横長形状や、軒樋13の延設方向と直交する方向へ延びる縦長形状などとしている。例えば、開口部41は、図3に示すように、一対の長辺41a(第1の対辺)と、一対の短辺41b(第2の対辺)とを有する長方形状のものとすることができる。但し、開口部41は、上記以外の形状(例えば、正方形や平行四辺形や台形などの四角形や多角形やこれらの角を丸めたものや丸型など)や向きを有するものにできる。
水切部材42は、開口部41の辺(長辺41aまたは短辺41b)に沿って延び、対向する一対の辺に対しそれぞれ対向させて取付けられる。この実施例の場合、水切部材42は、開口部41の長辺41aに沿って延びるもの(細長体)とされている。水切部材42は、2つ並べて配置したときに、開口部41の短辺41bの長さW1よりも若干長い(開口部41の短辺方向の)長さW2となるように構成される(W1<W2)。これにより、開口部41内に一対の水切部材42を設置した時に、各水切部材42には、短辺方向に対する圧縮力が加えられる。なお、開口部41の長辺方向については、水切部材42は、開口部41の長さL1と同じ長さ(=L1)にしても良いし、開口部41の長さL1より若干長くしても良い。この実施例では、開口部41の長辺41aとほぼ同じ長さにしている。
シール隙間32となる圧着部分43は、開口部41の短辺方向のほぼ中央部に形成される。圧着部分43は、開口部41の長辺方向とほぼ平行な直線状に形成するのが好ましい。
(3)水切部材42は、開口部41に取付けられる取付基部51と、取付基部51からシール隙間32となる位置へ向けて延びる多数の毛状体52とを有しても良い。
ここで、水切部材42は、全体が均一な部材で構成することなどもできるが、取付基部51と毛状体52とを有するものとするのが好ましい。取付基部51は、水切部材42における、開口部41の辺(長辺41aまたは短辺41b)に取付けられる部分である。この実施例では、取付基部51は、長辺41aに沿って延びて、長辺41aに取付けるようにした、ほぼ均一肉厚(開口部41の短辺方向の厚み51aが全長に亘ってほぼ一定)のものとなっている。取付基部51は、開口部41に対して接着剤や両面テープなどによって取付けられる。
取付基部51は、毛状体52と一体に形成しても良いし、毛状体52とは別体に形成して毛状体52を植設して一体化するようにしても良い。また、取付基部51は、毛状体52と同一素材または同系素材で形成しても良いし、毛状体52とは別素材で形成しても良い。
毛状体52は、ブラシの毛のような細長形状のものである。毛状体52は、取付基部51のシール隙間32側の部分に設けられる。毛状体52は、取付基部51に対してシール性を確保できるようにほぼ隙間のない状態で密に設けられる。これにより、毛状体52は、毛状シール部を構成する。そして、水切部材42は、ブラシシールとして機能するものとなる。毛状体52の太さや断面形状などは、防水性が確保できればどのようなものとしても良い。例えば、毛状体52の断面形状は、丸型にしても角型にしても良い。毛状体52は、開口部41の短辺方向に対してほぼ均一な長さ52aとするのが好ましい。
水切部材42のうち、少なくとも毛状体52は、ゴム系発泡材料53やその他の変形復帰性や撥水性などを有する素材で形成しても良い。ゴム系発泡材料53は、例えば、EPDM発泡体やその他のゴム系材料などとすることができる。
(4)本体部34は、開口部41を有する上枠部61と、開口部41の幅W1よりも狭い幅W3(幅W1>幅W3)を有してシール隙間32に沿って延びるスリット状開口部64を備えた下枠部65とを有しても良い。
ここで、上枠部61は、必要な開口部41が貫通形成できればどのようなものとしても良いが、開口部41の形状に合わせて、開口部41よりも一回り程度大きいものとするのが好ましい。例えば、開口部41を軒樋13の延設方向へ延びる横長の長方形状とした場合、上枠部61は、軒樋13の延設方向へ延びる横長の長方形状の枠体や、長方形状の枠体に近似した長円形や多角形状やその他の形状の枠体などとすることができる。また、開口部41を上記以外の形状にした場合についても同様にすることができる。上枠部61は、どのような厚みとしても良いが、水切部材42とほぼ同じ厚み(T)にするのが好ましい。但し、上枠部61の厚みと水切部材42の厚みとは、若干であれば異なっていても良い。
スリット状開口部64は、開口部41(取付開口または第1開口)に連通すると共に、シール隙間32と重なるもの(第2開口)として設けられる。スリット状開口部64は、開口部41に合わせて、開口部41の長辺41aとほぼ同じ長さL1の長辺64aを有するように形成するのが好ましい。但し、スリット状開口部64の長辺64aの長さは、若干であれば開口部41の長辺41aの長さと異なっていても良い。
開口部41およびスリット状開口部64の幅W1,W3は、短辺方向の寸法のことである。スリット状開口部64の幅W3は、開口部41の幅W1とほぼ同じにしたり、開口部41の幅W1より大きくしたりすることもできるが、開口部41の幅W1よりも小さくするのが、シール隙間32を通った配線31を貫通部分36へ安定して導くためには好ましい(幅W3<幅W1)。これにより、スリット状開口部64を、貫通部分36への配線31の案内空間にすることができる。また、配線31を通したときに、スリット状開口部64は、毛状体52の先端部の逃げ空間になると共に、スリット状開口部64の周縁部は、毛状体52の基部に対する押さえ部にもなる。
スリット状開口部64の幅W3は、開口部41の幅W1よりも小さければ、どのような寸法にしても良いが、配線31を通し得るように、配線31の太さや幅とほぼ同じか、それよりも若干大きい寸法にするのが好ましい。この実施例では、スリット状開口部64の幅W3は、開口部41の幅W1の半分程度またはそれ以下としている。または、スリット状開口部64の幅W3は、水切部材42の短辺方向の長さ(取付基部51の厚み51a+毛状体52の長さ52a)とほぼ同じかそれよりも短い程度とされている。
下枠部65は、スリット状開口部64が形成できるのであれば、どのようなものとしても良い。例えば、下枠部65は、上枠部61とほぼ同じ大きさや形状のものとすることができる。また、例えば、下枠部65は、上枠部61よりも大きなものとすることができる。また、例えば、下枠部65は、上枠部61よりも小さなもの、例えば、スリット状開口部64の形状に合わせて、スリット状開口部64よりも一回り程度大きなものなどとすることができる。但し、下枠部65は、開口部41の内部に落ち込まないように、開口部41よりは大きくするのが好ましい。この実施例では、下枠部65を、上枠部61とほぼ同じ長方形状や、長方形状に近似した長円形や多角形状やその他の形状などとしている。そして、下枠部65の幅Wおよび長さLを、上枠部61の幅Wおよび長さLとほぼ同じにしている。
下枠部65は、どのような厚みT1にしても良いが、上枠部61の厚みTとほぼ同じ(T1=T)にするのが好ましい。この実施例では、上枠部61および下枠部65は、同じ厚みの板材から作られた枠状体(矩形枠)などとされている。上枠部61および下枠部65は、例えば、PE発泡体やその他の素材で構成することができる。上枠部61と下枠部65は、二段に重ねた状態で一体に接着固定される。上枠部61と下枠部65との接着には、接着剤や両面テープなどを使用することができる。なお、本体部34は、上枠部61および下枠部65以外の部材を介在させて、三段以上の多段構造にすることも可能である。
(5)本体部34は、裏面に接着部71を有しても良い。
ここで、接着部71は、防水部材に対して簡単に接着固定できるようにするために、本体部34に予め設けられるものである。接着部71は、下枠部65の裏面(上枠部61とは反対側の面)に設けられる。接着部71には、例えば、両面テープなどを用いることができる。この場合、接着部71は、接着層と剥離紙とを備えたものになる。なお、本体部34は、裏面に接着部71を有さないものとすることも構造的には可能であるが、この場合には、本体部34は、接着剤や両面テープなどを用いて防水部材に固定すれば良い。
(6)図2に示すように、本体部34は、外側面に止水堰75を有していても良い。
ここで、止水堰75は、本体部34の周辺の雨水76が、本体部34を乗り越えてシール部33へ到達しないようにするための高さを有する壁部などのことである。止水堰75は、本体部34の外側面の全部または一部に設けることができる。例えば、止水堰75は、本体部34の上側に位置する辺部(上辺部)のみに対して設けることも可能である。
この実施例では、本体部34を、所要の厚みT,T1(例えば、それぞれ15mm~30mm程度)を有する上枠部61と下枠部65を重ねて一体化した多段構造のものとすることで、本体部34を十分に高くして、本体部34の全周を、想定した雨量では越えられない止水堰75にしている。想定した雨量は、例えば、台風時や豪雨時の雨量や、その地域の統計上の最大雨量など、任意に設定することができる。なお、上枠部61と下枠部65の厚みT,T1は、上記した値に限るものではない。
そして、上枠部61と下枠部65とを同じ形状および大きさにして、外側面を面一に揃えた状態で上下に一体化することで、本体部34の外側面には段差や凹凸がなくなるので、雨水76を本体部34の外側面に沿ってスムーズに流すことができる。
例えば、図1に示すように、本体部34を側方から見て斜めに設置した場合には、主に、本体部34の上側となった辺部(上辺部)が止水堰75として機能する。そして、図2に示すように、本体部34の上辺部の周辺の雨水76は、本体部34の両側に位置する辺部(側辺部)の側へ迂回されて下方へ流下される。この際、本体部34の上辺部を水平に対して傾くように配置することで、本体部34の上辺部の周辺の雨水76を、傾きの下側に位置する本体部34の側辺部へ向けて積極的に案内する案内壁部として使用することができる。
(7)図1に示すように、上記通線部材35を、防水性を有するシート本体81に取付けて防水シート82を形成しても良い。
ここで、シート本体81は、例えば、CPPフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルム)やその他の材質のフィルムなどで構成することができる。
防水シート82は、防水性を有する建築資材(防水部材)などとして建物1の各部に広く使用することができる。また、上記防水シート82は、建物1以外の分野でも広く使用することができる。通線部材35は、シート本体81に予め取付けておくこともできるし、防水シート82の施工時に取付けることもできるが、シート本体81に対して予め取付けておくのが、施工を容易化する上では好ましい。
シート本体81には、通線部材35を取付ける部分に、予め配線31の貫通部分36となる孔部を形成しておくようにする。あるいは、配線31の貫通部分36は、シート本体81に対する通線部材35の取付け後や、防水シート82の建物1などに対する施工後などに、配線31や工具などでシート本体81を直接突き破ることで形成するようにしても良い。
(8)図1に示すように、軒天井構造(庇部分5)を、軒樋13と軒樋カバー14との間に上記防水シート82が設置されたものとしても良い。
ここで、防水シート82は、軒樋カバー14の上部から軒樋13の外側の側面13bの上部へ向けて設けられる水はね防止シート17などに使用することができる。この場合、通線部材35は、軒樋カバー14と軒樋13との中間の位置などに取付けるようにする。通線部材35は、配線31の位置に合わせて、軒樋13の延設方向や、軒樋13の延設方向と交差する方向に対し、単数または複数設けることができる。通線部材35を取付ける向きは、取付位置の状況や配線31の状況に応じて最適に設定される。そして、通線部材35へ建物1や屋根3に設置される配線31を差し込むことで、水はね防止シート17を貫通させるようにする。
(9)建物1を、軒天井構造(庇部分5)に上記防水シート82が備えられたものとしても良い。
ここで、建物1は、どのようなものとしても良いが、ユニット建物91とするのが好ましい。ユニット建物91は、要するに、工場で予め製造した複数の建物ユニット92(図5)などを建築現場へ搬送して現場で組み立てることによって、短期間のうちに建物1を構築できるようにしたものである。
ユニット建物91には、鉄骨系のものや木質系のものなどが存在している。鉄骨系のユニット建物91の場合、図5に示すように、建物本体2を構成する建物ユニット92(例えば、鋼製ユニット)は、例えば、4本のユニット柱93の上端部間と下端部間を4本の梁(天井梁94や床梁95)でそれぞれ矩形状に連結して成るボックスラーメン構造のユニットフレームを有するものなどとされる。ユニットフレームの外面側には外壁24(図1)などが取付けられる。但し、建物1は、ユニット建物91に限るものではない。
そして、この建物1の屋根3の上部に、太陽電池パネル96を設置する。太陽電池パネル96は、下面側から配線31(太陽光配線)が引き出される。この配線31は、例えば、図1に示すように、庇部分5の先端(軒先側)へ向かって屋根3(折版3b)の上面を水下側へ延ばされると共に、防水シート82を上から下に貫通して軒樋13の下側へ導かれ、軒天井パネル21の上を通して建物本体2の内部へ向かうように取り回される。この際、防水シート82が、通線部材35を有していることで、防水性を保持しつつ通線部材35の位置から配線31を容易に通すことが可能になる。
なお、通線部材35には、太陽光配線以外にも、例えば、電話線や、アンテナ線や、防犯カメラやインターホンなどの信号線や、電気配線などの各種の配線31を通すことなども可能である。この場合、通線部材35や、通線部材35を有する防水シート82は、庇部分5以外の位置に設けることもできる。
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
例えば、図6に示すような軒天井構造を有する建物1の場合、屋根3に降った雨水76は、軒樋13に集められて、軒樋13から建物1の外部へ排出される。また、軒樋カバー14の上部の雨水76も、水はね防止シート17を伝わって軒樋13に集められ、建物1の外部へと排出される。
そして、屋根3の上部に太陽電池パネル96を設置した建物1の場合、太陽電池パネル96の配線31に対する貫通部分36が、水はね防止シート17に設けられるので、庇カバー16および水はね防止シート17を伝わった雨水76の一部や、配線31を伝わって流下してきた雨水76が、貫通部分36を通して水はね防止シート17から漏れるおそれがある。
水はね防止シート17から雨水76が漏れると、漏れた雨水76は、庇部分5の内部に入り、軒天井パネル21の上面を伝わって建物本体2内(屋内)へ侵入するおそれがある。
これまでは、配線31の貫通部分36からの水浸入を防止するために、貫通部分36を手作業でコーキングするなどの対策が行われていたが、コーキングは作業効率が良いとは言えず、また、施工のバラ付きなどによってシール不良が生じる可能性がある。
そこで、配線31の貫通部分36に対する作業効率を良くすると共に、施工のバラ付きによるシール不良を防止する必要がある。
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
(効果1)防水性を保持しつつ配線31を貫通可能なシール隙間32を形成するシール部33と、シール部33を保持可能な本体部34とを有する通線部材35を設けた。これにより、通線部材35を単純な構成でコンパクト且つ安価なものにすることができる。そして、配線31を通線部材35のシール隙間32へ差し込むことで、シール部33はシール隙間32の一部が配線31に合わせて防水性が失われないように局所的に変形され、その他の部分については変形されないままの状態に保たれるため、防水性を保持した状態で配線31を通線部材35に貫通させることができる。
そして、配線31の貫通部分36に通線部材35を使用することで、シール不良を生じることなく簡単且つ確実に配線31を施工することができる。そして、例えば、配線31の貫通部分36に通線部材35を用いない場合には、配線31の貫通部分36を手作業でコーキングする必要が生じるが、このような場合と比べて、通線部材35を用いると作業効率が良くなるので、施工時間を短縮すると共に施工の手間やコストを削減することができる。また、施工のバラ付きによるシール不良も確実に防止できる。
(効果2)本体部34は、開口部41を有するものとしても良い。シール部33は、圧縮および変形が可能な一対の水切部材42を有しても良い。一対の水切部材42は、圧縮力が加えられた状態で、開口部41内に、開口部41を塞ぐように収容設置されても良い。シール隙間32は、一対の水切部材42どうしが圧着する圧着部分43に形成されても良い。
これにより、開口部41を、一対の水切部材42で塞いでシールすることができる。そして、開口部41に設置された一対の水切部材42は、互いの圧着部分43をシール隙間32として使用することができる。そのため、配線31をシール隙間32へ差込むと、一対の水切部材42どうしの圧着部分43は、配線31が通る部分が局所的に変形されて配線31の挿通を許容し、挿通後には変形した部分が元に戻ろうとする。そのため、局所的に変形した部分が配線31の周囲に圧着するので、防水性を保持しつつ配線31を通すことが可能になる。
(効果3)水切部材42は、開口部41に取付けられる取付基部51と、取付基部51からシール隙間32となる位置へ向けて延びる多数の毛状体52とを有しても良い。
これにより、水切部材42は、ブラシシールとなる。ブラシシールは、多数の毛状体52によって、気密性が高く追随性の良いシールとなる。水切部材42は、取付基部51を開口部41に取付けることで、多数の毛状体52がシール隙間32へ向けられる。そして、一対の水切部材42を開口部41の対辺に取付けることで、一対の水切部材42の多数の毛状体52は、相対向する方向からシール隙間32へ向けて延び、互いに接することで、多数の毛状体52の先端部間にシール隙間32が形成される。シール隙間32では、水切部材42が圧縮力を加えられた状態で開口部41に取付けられることによって、相対向する多数の毛状体52の先端部どうしが、互いに圧着状態となる。この際、相対向する多数の毛状体52は、先端部どうしが、互いに突き当たったり、互いに入り込み合ったり、互いに避け合ったりすることで、複雑に重なった状態となる。これにより、シール隙間32は、十分な防水性を確保することができる。
そして、上記したようなシール隙間32へ配線31を通すことで、一対の水切部材42は、配線31の周辺にある一部の毛状体52のみが局所的に横へ逃げるように変形される。横へ逃げた一部の毛状体52は、復帰しようとして配線31の周囲に圧着する。そのため、漏水を引き起こすような隙間が生じないので、配線31が貫通された状態でも防水性が確保される。
少なくとも毛状体52は、ゴム系発泡材料53で形成されても良い。このように、少なくとも毛状体52を、軽量で圧縮および変形・復帰がし易いゴム系発泡材料53で形成することで、多数の毛状体52どうしの密着性が高まると共に、軽い力でシール隙間32に配線31を差し込むことが可能になる。また、少なくとも毛状体52を、ゴム系発泡材料53で形成することで、水切部材42を軽量化すると共に、撥水性を持たせることができる。そのため、水切部材42の取扱性を良くし、防水性を高めると共に、シール隙間32に配線31を通したときのシール隙間32の配線31に対する追随性を良くできる。
(効果4)本体部34は、上枠部61と下枠部65とを有しても良い。これにより、上枠部61の開口部41に水切部材42を取付けることで、本体部34の上側にシール隙間32を配置することができる。また、下枠部65にスリット状開口部64を設けることで、シール隙間32を(貫通部分36から離して)シール隙間32へ配線31を通し易くすると共に、本体部34の下側に、シール隙間32を通った配線31を貫通部分36へ導かせるなどのための案内空間を確保することができる。
また、上枠部61と下枠部65とを上下に設けることで、本体部34の高さ寸法を大きくすることができる。これにより、通線部材35を取り扱いし易いものにすることができる。また、後述するように、本体部34の周囲の雨水76をシール部33へ入り込み難くすることもできる。
(効果5)本体部34は、裏面に接着部71を有しても良い。これにより、裏面の接着部71で本体部34を防水部材に簡単に貼付けることができると共に、防水部材の任意の位置にシール隙間32を有する通線部材35を設置して配線31を容易に貫通させることができるようになる。
(効果6)本体部34は、外側面に止水堰75を有しても良い。これにより、本体部34の周囲の雨水76が、本体部34を越えてシール部33へ入り込み難くでき、防水性を高めることができる。更に、雨水76が止水堰75に沿って本体部34の外側を導かれることで、シール部33へ入らないように雨水76を逃がすことができる。
(効果7)防水シート82は、防水性を有するシート本体81に上記した通線部材35を備えたものとすることで、上記した通線部材35と同じ効果を得ることができる。また、防水シート82は、建物1などの防水部分に容易に施工して、防水性を保持した状態で容易に配線31を通せるものとすることができる。
(効果8)天井構造は、軒樋13と軒樋カバー14との間に上記した通線部材35を備えた防水シート82を設置することで、上記した防水シート82と同じ効果を得ることができる。また、天井構造に上記した防水シート82を用いることで庇部分5からの水漏れを確実に防止することができる。
(効果9)建物1は、軒天井構造に上記した防水シート82を備えることで、上記した防水シート82と同じ効果を得ることができる。また、庇部分5に対する防水施工を容易化して、工期短縮やコスト低減などを図ることができる。更に、建物1の屋根3に太陽電池パネル96を設置する場合に、太陽電池パネル96から延びる配線31を、防水性を確保しつつ簡単に取り回すことができる。
1 建物
2 建物本体
3 屋根
5 庇部分(軒天井構造)
13 軒樋
14 軒樋カバー
31 配線
32 シール隙間
33 シール部
34 本体部
35 通線部材
41 開口部
42 水切部材
43 圧着部分
51 取付基部
52 毛状体
53 ゴム系発泡材料
61 上枠部
64 スリット状開口部
65 下枠部
71 接着部
76 雨水
75 止水堰
81 シート本体
82 防水シート(防水部材)
W1 幅
W3 幅

Claims (2)

  1. 防水性を保持しつつ配線を差し込み可能なシール隙間を形成するシール部と、該シール部を保持可能な本体部とを有し、
    該本体部は、開口部を有し、前記シール部は、圧縮および変形が可能な一対の水切部材を有し、一対の該水切部材は、圧縮力が予め加えられた状態で、前記開口部内に、前記開口部を塞ぐように収容設置され、前記シール隙間は、一対の前記水切部材どうしが圧着する圧着部分に形成され
    前記水切部材は、前記開口部に取付けられる取付基部と、該取付基部から前記シール隙間となる位置へ向けて延びる多数の毛状体とを有し、
    前記本体部は、前記開口部を有する上枠部と、前記開口部の幅よりも狭い幅を有して前記シール隙間に沿って延びるスリット状開口部を備えた下枠部とを有していることを特徴とする通線部材。
  2. 請求項に記載の通線部材が、防水性を有するシート本体に取付けられ、該シート本体および前記通線部材が、軒樋と軒樋カバーとの間に設置されていることを特徴とする軒天井構造。
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