JP7120558B2 - せん断応力負荷時のフォンウィルブランド因子高分子マルチマーの保持率のインビトロ測定法 - Google Patents
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Description
一次止血に関与する。高分子領域のマルチマーがより強い血小板凝集能を持つため、止血において特に重要であり、高分子領域のマルチマーが欠損すると止血異常症である後天性フォンウィルブランド症候群(AVWS)を発症する。
vWFは、特異的分解酵素ADAMTS13により分解されることが知られている。また、マルチ
マーを形成しているvWFが、高せん断応力負荷時には伸展構造を取ることによりADAMTS13
分解部位が露出してADAMTS13による分解を受けやすくなり、高分子マルチマーが減少することが知られている。
マーが分解されやすくなり、止血異常症であるAVWSを発症する。
負荷されるせん断応力は簡単な計算式から導き出される概算の値にすぎず、定量的にせん断応力を血液に負荷することはできないので、せん断応力負荷によるAVWSの発症をインビトロで評価できる系ではない。
せん断応力依存的に分解され、患者は止血異常症であるAVWSを発症する。しかし、せん断応力の正確な数値とvWF高分子マルチマーの保持率の定量的相関は明らかにされておらず
、せん断応力に応じたvWF高分子マルチマーの保持率をインビトロで定量的に評価できる
システムはない。
そこで、本発明はインビトロで少量の血液を用い、インビボの補助人工心臓によるせん断応力を再現して、せん断応力下でのvWF高分子マルチマーの保持率を定量的に評価でき
る方法を提供することを課題とする。
[1]せん断応力負荷時のフォンウィルブランド因子(vWF)高分子マルチマーの保持率
の測定法であって、
インビトロで血液試料に10000(s-1)以上の一様なせん断速度でせん断応力を負荷する工程、および
vWFの高分子マルチマーの存在比を解析する工程、
を含む方法。
[2]血液試料が血漿である、[1]に記載の方法。
[3]一様なせん断速度が10000~100000(s-1)である、[2]に記載の方法。
[4]せん断応力の負荷時間を一定にし、10000~100000(s-1)の範囲の一様なせん断速度でせん断応力を複数負荷してvWFの高分子マルチマーの存在比を解析する
、[3]に記載の方法。
[5]血液試料に一様なせん断応力を負荷する時間が300秒以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]せん断応力を一定にし、300秒以下の時間内で負荷時間を変化させてvWFの高分
子マルチマーの存在比を解析する、[5]に記載の方法。
[7]一様なせん断応力が高せん断応力負荷装置により負荷される、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]アガロースゲル電気泳動によりvWFの高分子マルチマーの存在比を解析する、[1
]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]vWFの高分子マルチマーの存在比を、被検者の血液試料におけるvWFの高分子マルチマーの存在比を健常人の血液試料におけるvWFの高分子マルチマーの存在比で除したvWF高分子マルチマーインデックスとして数値化する、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]血液試料が心臓病患者由来である、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]心臓病患者が人工心臓の装着を要する心臓病患者であり、vWFの高分子マルチマ
ーの存在比の解析により人工心臓装着後の後天性フォンウィルブランド症候群の重症度を予測するために行われる、[10]に記載の方法。
[12]せん断応力負荷時のvWF高分子マルチマーの保持率の測定システムであって、せ
ん断応力負荷装置、アガロース電気泳動装置、およびvWFの高分子マルチマー存在比解析
装置を含む、システム。
うことで、定量的に与えたせん断応力によって高分子マルチマーがどれだけ欠損せずに保たれているかをインビトロで簡便に検査することができる。
本発明の方法で解析することにより、補助人工心臓で起こるAVWSをインビトロで再現す
ることができ、AVWSの重症度を予測することができる。あらかじめ流体力学的解析により補助人工心臓内部で生じるせん断応力が判明する場合、そのせん断応力を負荷したときのvWF高分子マルチマーの保持率、すなわちAVWSの重症度を予測することができるので、補
助人工心臓の事前評価がインビトロで行え、補助人工心臓の開発に非常に有用である。このように、本発明の方法は補助人工心臓の種類の選択、さらには、今後の補助人工心臓の開発にも大きく貢献するものである。
、インビトロで血液試料に10000(s-1)以上の一様なせん断速度でせん断応力を負荷する工程、およびvWFの高分子マルチマーの存在比を解析する工程、を含む方法である
。
~80分子のマルチマーとして存在する。vWFのマルチマーパターンは、例えば、後述の
実施例で示したようなアガロースゲル電気泳動で解析することができ、このうち、高分子マルチマーとしては、アガロースゲル電気泳動で分離後に染色して得られるvWFのマルチ
マーのバンドパターンにおいて、下(最も低分子)から数えて11番目以上のバンドとして検出されるマルチマーを意味する。ちなみに11番目のバンドはvWFの22量体であり
、高分子マルチマーは22量体以上のマルチマーを意味する。
する。高分子マルチマーの全vWFマルチマーに対する割合(高分子マルチマーの存在比)
は、例えば、血液試料をアガロースゲル電気泳動で分離した後に、タンパク質を膜に転写し、抗vWF抗体を用いたウエスタンブロットによりvWFを染色して得られるvWFマルチマー
のバンドパターンを画像解析することによって算出することができる。具体的には、画像処理ソフトを使用して、11番目以上のバンドの濃さと全バンドの濃さをそれぞれ算出し、前者を後者で除することによって高分子マルチマーの全vWFマルチマーに対する割合を
得ることができる。
vWF高分子マルチマーインデックス=(被検者における高分子マルチマーの全vWFマルチマーに対する割合)/(対照者(健常人)における高分子マルチマーの全vWFマルチマーに
対する割合)
vWF高分子マルチマーインデックスはAVWSの血液学的重症度の指標とすることができる
。なお、AVWSの血液学的重症度とは、出血合併症発生リスクを意味する。例えば、vWF高
分子マルチマーインデックスが一定の値以下であるときに出血合併症発症リスクが高いと評価することができ、より具体的には40%以下である時に出血合併症リスクが高いAVWSとして評価することができる。
血液試料としては被検対象から単離された血液試料であればよく、vWFマルチマーを含
む限り全血でも血漿でもよいが、せん断応力を負荷した後に電気泳動を行うという解析のしやすさにおいては血漿を用いることが好ましい。
被検対象は特に制限されないが、vWF高分子マルチマーの保持率に基づく病態を予測・
解析するという観点からは、心臓病患者または心臓病が疑われる被検者が好ましく、補助人工心臓の適用が必要とされる心臓病患者がより好ましい。
単離される血液試料は特にどの血管から単離されたものでもよいが、試料の入手しやすさから、末梢血を用いることが好ましい。
血液試料は単離後すぐにせん断応力負荷試験に供してもよいし、血漿として凍結保存したのち、解凍してせん断応力負荷試験に供してもよい。
内筒の直径は特に制限されないが、本発明の方法では6ml以下の微量の血液試料で解析することが可能なため、例えば、直径100mm以下、好ましくは直径75mm以下、より好ましくは直径約50mmとすることができる。せん断応力負荷中の試料の温度を一定に保つため、外筒の周囲には恒温水が流れる構造とすることが好ましい。
インビトロで行うことができる。せん断速度の上限は用いる血液試料の種類やせん断応力負荷時間にもよるが、血漿を用いる場合、例えば、100000(s-1)である。なお、全血試料を用いる場合は、粘度を考慮して、例えば、せん断速度の上限を40000(s-1)とすることができる。
布に変化が見られる限り、特に制限されることはなく、ほんの一瞬であっても(0秒を超えていれば)よいが、通常は0.05秒~20秒である。
血液試料に一様なせん断応力を負荷するときの温度は、生体内での状況を模擬するために、約37℃とすることが好ましい。
なお、負荷するせん断応力の値またはせん断応力の負荷時間を変えて複数点においてvWFの高分子マルチマー解析を行うことが好ましい。例えば、複数の血液試料を用意し、せ
ん断応力の負荷時間を一定にし、10000~100000(s-1)の範囲の一様なせん断速度でせん断応力を複数負荷して、それぞれについてvWFの高分子マルチマーの存在比
を解析することが挙げられる。これにより、せん断応力とvWFの高分子マルチマー保持率
との関係を解析することができる。
一方、複数の血液試料を用意し、せん断応力を一定にし、300秒以下の時間内で負荷時間を変化させて複数の時点でのvWFの高分子マルチマーの存在比を解析することもでき
、これにより、vWFの高分子マルチマー保持率の時間変化を解析することもできる。
よるせん断応力負荷を再現し、かつ、補助人工心臓装着後に起こりうるAVWSの重症度を予測することができる。したがって、人工心臓の種類の選択が可能である。例えば、補助人工心臓には軸流型と遠心型があるが、一般に前者の方がせん断応力は高いので、AVWSの重症度が高いと予測される患者には遠心型を選択するという判断も可能となる。
子マルチマーインデックス値が用意されているならば、それを指標に、解析対象はAVWSが重症化する危険性が高いかどうかを調べることができる。
ムであって、せん断応力負荷装置、アガロース電気泳動装置、およびvWFの高分子マルチ
マー存在比解析装置を含む、システムである。
せん断応力負荷装置は上述したような共軸二重円筒式の回転型レオメーターが例示される。アガロース電気泳動装置は、電気泳動槽、電源を含み、さらに、ブロッティング装置などを含んでもよい。vWFの高分子マルチマー存在比解析装置は画像解析装置が例示され
る。
vWF multimer analysis protocol
Gelの作成;
1.0% agarose Gel; Separating gel buffer + Agarose
Glass platesを準備。
56℃でGlass platesを温める。
Separating gel buffer を必要分とり、Agarose を加える。
Agaroseの結晶が完全に溶けきるまで撹拌しながら電子レンジで加熱。ゲルを電動ピ
ペットでガラスプレートに満ちるまで注ぎ、コームを入れる。
室温で約40分間ゆっくり冷却し、4℃で保存。
Tris 3.0g
Glycine 15.0g
SDS 0.5g
Glycerol 150ml
Water
Total 500ml
Plasma 10μl
Sample buffer 240μl
total 250μl
Sample bufferに血漿を加えた後、56℃で20分温める。
その後速やかに氷で 3 分間冷やし、-80℃で保存する。
[Sample buffer (50ml)]
3M Tris(pH 6.8) 174μl
0.5M EDTA 208μl
20%SDS 5ml
1%BPB 1ml
50%Glycerol 43.6ml
total 50ml
Sample buffer は4℃で保存。
ゲルよりコームを外し、ガラスプレートを泳動槽に取り付け、反対側にも取り付ける。
上下槽にbufferを注ぎ、wellを洗浄する。
サンプルを37℃で解凍。wellを洗い、sampleをapplyする。
3mA, 10-12hrもしくは2mA, 20hrの設定(いずれもゲル1枚に対して)で電気泳動を行
う。
[Running Gel buffer]
Tris 6.0g
Glycine 30.0g
SDS 1.0g
Water 1000ml
Total 1000ml
Semi-dry blotting
濾紙8枚とPVDF membraneを用意。
PVDF membraneを親水化し、30分陽極buffer2で振盪する。
陽極buffer1に3枚の濾紙を、陽極buffer2に1枚の濾紙とPVDF membraneを、陰極buffer
に4枚の濾紙を浸す。
下から順に
陽極buffer1に浸った3枚の濾紙
陽極buffer2に浸った1枚の濾紙
PVDF membrane
ゲル
陰極bufferに浸った4枚の濾紙
と重ねてSemi-dry blottingを行う(0.4A 60min)。
[陽極buffer2] 25mM Tris + 20% Methanol
[陰極 buffer] 25mM Tris + 40mM 6-Aminohexanoic acid + 20% Methanol
スキムミルクとPBS-Tを加えてブロッキングを行う。
一次抗体を加えて1時間、置く。
*一次抗体: polyclonal rabbit anti-human vWF antibody (DAKO)
PBS-Tにて3回洗浄する。
Immuno Star zeta(和光純薬) を加えて LAS 4000(GE Healthcare)によりvisualizationする。
ImageJ を用いて画像を取り込む。
図1のようにbandをscanしてdensityの図を表示。
1~5本目までのbandをsmall multimer、6~10本目までをmedium multimer、1
1本目以降をlarge multimerとして、値を測定する。
vWF large multimerのratio(高分子マルチマー面積/全面積)を求める。
vWF large multimer Index(対象患者の高分子マルチマー比/健常人の高分子マルチマー比)を求める。
LVADを装着し、消化管出血(GIB)を発症しなかった心臓病患者29名とGIBを発症した患者12名について、末梢血を採取し、血漿を調製して上記のvWFマルチマー解析を行っ
た。患者の内訳を表1に示す。
ンデックスを算出し、プロットした結果を図2に示す。出血患者でvWFマルチマーインデ
ックスが小さい傾向が見られた。このことは出血とAVWSが密接に関わっていることを示している。
(Duraheart、EVAHEART、HVAD)のLVADを装着しているが、vWFマルチマーインデックスを人工心臓のタイプで群分けしてプロットしたところ、図3に示すように、軸流型装着患者でvWFマルチマーインデックスが小さい傾向が見られた。このことは、軸流型においてせ
ん断応力が遠心型より高いという事実と一致している。しかしながら、軸流型装着患者において、vWFマルチマーインデックスが高く、出血を発症していない患者も見られたこと
から、患者によって高せん断応力に対してある程度耐性を有し、軸流型を装着してもAVWSが起きにくい場合があることが分かる。このことが補助人工心臓装着前に分かると、補助人工心臓の機種選定に有用と考えられる。そこで、インビトロで血液試料にせん断応力を負荷し、vWFマルチマーインデックスを解析できる系について検討した。
pmで10分、60分、120分と所定時間回転させてせん断応力をかけて、その後、vWFマルチマー解析を行った。その結果、図4に示すように、10分間せん断応力をかけた場合でもマルチマーパターンのデータにばらつきがみられ、60分、120分の場合は高分子マルチマーが消失した上に、中分子マルチマーも減少したため、vWFマルチマー分布の解析を
行うことができなかった。
s-1のせん断速度で健常人由来の血漿4mlに対して、せん断応力を1分、10分、30分と所定時間負荷し、その後、vWFマルチマー解析を行った。その結果、図5に示すように、安定
したパターンは得られず、また、時間に依存した高分子マルチマーの明確な減少は見られなかったので、Rheologia Iでは補助人工心臓における短時間での高せん断応力が再現で
きないと考えられた。
析を行った。その結果、図6、図7に示すように、vWF高分子マルチマーはせん断応力依
存的に減少し、せん断応力とvWF高分子マルチマー保持率との間に相関を得ることができ
た。
マルチマー解析で算出したvWFマルチマーインデックスを時間とともにプロットした結果
を図8に示す。vWF高分子マルチマーはせん断応力負荷時間依存的に減少し、せん断応力
負荷時間とvWF高分子マルチマー保持率との間に相関を得ることができた。
せん断応力に応じたAWVSを定量的に再現できることが分かった。
本発明の方法によれば、患者のせん断応力に対するAVWSの重症度をあらかじめ予測でき、人工心臓による副作用も予測できる。また、今後の補助人工心臓開発において、せん断応力による出血傾向発現の指標となりうる。
Claims (9)
- せん断応力負荷時のフォンウィルブランド因子(vWF)高分子マルチマーの保持率の測定
法であって、
インビトロで血液試料に20000~45000(s-1)の一様なせん断速度でせん断応力を、vWFのマルチマー分布に変化が見られる時間であって、300秒以下の時間、負荷
する工程、および
vWFの高分子マルチマーの存在比を解析する工程、
を含む方法。 - 血液試料が血漿である、請求項1に記載の方法。
- せん断応力の負荷時間を、vWFのマルチマー分布に変化が見られる時間であって、300
秒以下の時間内で一定にし、20000~45000(s-1)の範囲の一様なせん断速度でせん断応力を複数負荷してvWFの高分子マルチマーの存在比を解析する、請求項1また
は2に記載の方法。 - せん断応力を20000~45000(s-1)の範囲内で一定にし、vWFのマルチマー分
布に変化が見られる時間であって、300秒以下の時間内で負荷時間を変化させてvWFの
高分子マルチマーの存在比を解析する、請求項1または2に記載の方法。 - 一様なせん断応力が共軸二重円筒式の回転型レオメーターにより負荷される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
- アガロースゲル電気泳動によりvWFの高分子マルチマーの存在比を解析する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。 - vWFの高分子マルチマーの存在比を、被検者の血液試料におけるvWFの高分子マルチマーの存在比を健常人の血液試料におけるvWFの高分子マルチマーの存在比で除したvWF高分子マルチマーインデックスとして数値化する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
- 血液試料が心臓病患者由来である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
- せん断応力負荷時のvWF高分子マルチマーの保持率の測定システムであって、血液試料に
20000~45000(s‐1)の一様なせん断速度でせん断応力を、vWFのマルチマ
ー分布に変化が見られる時間であって、300秒以下の時間負荷する手段を備えたせん断応力負荷装置、アガロース電気泳動装置、およびvWFの高分子マルチマー存在比解析装置
を含む、システム。
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JP2017186730A JP7120558B2 (ja) | 2017-09-27 | 2017-09-27 | せん断応力負荷時のフォンウィルブランド因子高分子マルチマーの保持率のインビトロ測定法 |
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