JP7119741B2 - 化粧材用コーティング剤 - Google Patents
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Description
ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエポキシアクリレートおよびアクリルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のアクリレート樹脂、並びにセルロースナノファイバーを含有する、化粧材用コーティング剤であることを特徴とする。当該アクリレート樹脂は、架橋密度を向上させることにより、硬度を発現することに加え、セルロースナノファイバーの柔軟性および凝集力が組み合わされることにより、硬化収縮抑制、靱性付与の効果が生まれ、結果として化粧材に硬度および密着性を両立させ、更に弾性と柔軟性をもたらす。
アクリレート樹脂はウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエポキシアクリレートおよびアクリルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂をいう。アクリレート樹脂は重量平均分子量が500~70000であることが好ましい。500~50000であることがより好ましく、500~10000であることが更に好ましい。官能基数(不飽和二重結合基数)は2~12であることが好ましく、1~10がより好ましい。
本発明において、ウレタンアクリレートはポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート、またはポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーへ、更にポリアミンを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート等が好ましい。なお、構造中にポリアミンに由来するウレア結合単位を有していてもよい。
上記ポリイソシアネートとしては、単官能イソシアネート及び多官能イソシアネートが挙げられ、多官能イソシアネートの使用が好適であり、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
上記ポリオールは特段限定されないが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられ、中でもポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエステルポリオールは後述のポリエステルアクリレートの説明で使用するポリエステルポリオールと同様に定義されるものであり、ポリエーテルポリオールはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびこれらの共重合体であることが好ましい。ポリオールの数平均分子量としては300~5000であることが好ましい。
また、ポリアミンとしては、モノアミン、ジアミンまたはトリアミンであることが好ましく、ジアミンであることが好ましい。以下に好ましい態様を示す。
ジアミンとしては例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン[別名:1,2-ジアミノプロパン又は1,2-プロパンジアミン]、トリメチレンジアミン[別名:1,3-ジアミノプロパン又は1,3-プロパンジアミン]、テトラメチレンジアミン[別名:1,4-ジアミノブタン]、2-メチル-1,3-プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン[別名:1,5-ジアミノペンタン]、ヘキサメチレンジアミン[別名:1,6-ジアミノヘキサン]、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ダイマージアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、フェニレンジアミン、、キシリレンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン,3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ビス-(sec-ブチル)ジフェニルメタン、グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等二つの1級アミノ基有するジアミン類;
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては以下のものが好適に挙げられる。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
以上のうち、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートから選ばれる(メタ)アクリレートが好ましい。
本発明において、ポリエステルアクリレートは、水酸基を有するポリエステル(ポリエステルポリオールという)と、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとのエステル化によって得られるポリエステルアクリレートのほか、カルボキシル基を有するポリエステル(ポリエステルポリカルボン酸という)と(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルその他の水酸基を有する(メタ)アクリレートとのエステル化によって得られるポリエステルアクリレートなどが好ましい。
多価アルコールのうちトリオールとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびそのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンおよびそのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物などが好適に挙げられる。
上記のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとは、カルボキシル基を有する単官能または多官能の(メタ)アクリレートをいう。該当する化合物としては、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸が挙げられ、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレートが好ましい。
本発明において、ポリエポキシアクリレートは、グリシジル基を有する化合物とカルボキシル基を有する化合物の反応物であり、不飽和二重結合基を有する化合物をいう。(ただし、下記アクリルアクリレートに該当する場合を除く)例えば、グリシジル基を有する化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの水酸基またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物の反応により得られるポリエポキシアクリレートが挙げられる。代表例としてビスフェノール型、エポキシ化油型、フェノールノボラック型、脂環型が挙げられる。ビスフェノール型ポリエポキシアクリレートとしては、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるビスフェノール型ジグリシジルエーテルと水酸基またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応して得られるものである。
本発明において、アクリルアクリレートとは、主鎖がアクリル樹脂であり、側鎖あるいは末端に不飽和二重結合基を有する化合物をいう。主鎖がアクリル樹脂である点で上記ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートおよびポリエポキシアクリレートとは区別されるものである。例えば、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル樹脂と、水酸基を有する(メタ)アクリレートとのエステル化反応により得られるアクリルアクリレート、側鎖にカルボキシル基を有するアクリル樹脂と、グリシジル基を有する(メタ)アクリレートとのエステル化反応により得られるアクリルアクリレートなどが好適に挙げられる。側鎖にカルボキシル基を有するアクリル樹脂は(メタ)アクリル酸や、マレイン酸その他の酸性モノマーとアクリルモノマーを重合させることで製造可能である。アクリルモノマーは単官能であることが好ましい。アクリルアクリレートの重量平均分子量は500~100000であることが好ましく、500~50000であることがより好ましい。官能基数としては2~20であることが好ましく、2~10であることがより好ましい。
セルロースナノファイバーとは、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーであるセルロースのことを示し、その調製方法については特に限定されない。通常、セルロースナノファイバーは、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状を取る。
本発明のコーティング剤は、更にアクリルポリオールを含むことが好ましい。アクリルポリオールは、後述のイソシアネート化合物と架橋するために水酸基価5~120mgKOH/gであることが好ましく、プラスチック基材との密着性を向上させる効果を有し、かつ、上記アクリレート樹脂およびセルロースナノファイバーと親和するため被膜の性能をより向上させる。水酸基価は、7~100mgKOH/gが好ましく、水酸基価7~50mgKOH/gがより好ましい。
次にイソシアネート化合物について説明する。イソシアネート化合物はアクリルポリオールと架橋してプラスチック基材との密着性を付与する役割であるため必須であるが、分子中にイソシアネート基を2つ以上有する化合物が好ましく、構造に関しては特に制限は無い。
本発明において、ラジカル重合性単量体(以下「単量体」と略記することがある)は、ラジカル重合可能な骨格を1個以上有する化合物の総称である。本発明の化粧材用コーティング剤の一実施形態において、化粧材用コーティング剤は、上記必須成分に加えて、単量体を含んでもよい。
本発明の化粧材用コーティング剤は、各種活性化エネルギー線の照射によって重合反応が進行し、硬化可能であり、コーティング剤には必要に応じて活性エネルギー線重合開始剤を含んでもよい。開始剤を使用することによって、コーティング剤の重合反応を促進することができる。本発明の一実施形態において、上記活性化エネルギーは紫外線であることが好ましく、紫外線の照射によって重合反応を進行させる場合、コーティング剤は、開始剤を含むことが好ましい。
本発明にて使用するコーティング剤は耐候性やコーティング剤の経時安定性を向上させるために紫外線吸収剤、光安定剤を含有することが特に好ましい。紫外線吸収剤とは、一般的に波長約200~400nmの紫外線を吸収して熱や赤外線などのエネルギーに変化させて放出させる効能を有する化合物である。紫外線吸収剤としては、例えば、無機系紫外線吸収剤として、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物微粒子を用いることができる。また有機系紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤,トリアジン系紫外線吸収剤,ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤,ジフェニルメタノン系紫外線吸収剤,2-シアノプロペン酸エステル系紫外線吸収剤、アントラニレート系紫外線吸収剤、ケイヒ酸誘導体系紫外線吸収剤、カンファー誘導体系紫外線吸収剤、ベンザルマロネート誘導体系紫外線吸収剤、レゾルシノール系紫外線吸収剤、オキザリニド系紫外線吸収剤、クマリン誘導体系紫外線吸収剤等が使用できる。中でもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
光安定剤とは、光劣化で発生するラジカルを捕捉する化合物をいい、例えば、チオール系、チオエーテル系、ヒンダードアミン系化合物等のラジカル捕捉剤、及びベンゾフェノン系、ベンゾエート系化合物等の紫外線吸収剤等を使用することができ、これらは単独又は2種以上を併用して使用してもよい。なかでも、相溶性及び耐光安定性をより向上できる観点から、ヒンダードアミン系化合物を使用することが好ましい。
本発明にて使用するコーティング剤は、有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、また、これらの混合物が挙げられる。
コーティング剤の製造方法としては、必要なそれぞれの原料をディスパーなどで30分~3時間程度撹拌することにより製造することができる。なお、混合しにくく、粘度等が不均一になりやすい場合はローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いてもよい。
本発明の実施態様の一例として、プラスチック基材上に表面保護層が積層された積層体が挙げられる。本コーティング剤は、各種プラスチック基材の表面保護層として有効に用いられるものであり、プラスチック基材、またはプライマーが塗布されたプラスチック基材に、本発明のコーティング剤を塗布・乾燥後、活性エネルギー線を照射することにより硬化される。なお、表面保護層の下にプライマー層が用いられていてもよい。
本発明において使用するプラスチック基材とは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、紙、アルミなど、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状もしくはシート状の基材を示し、更に各基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどがコート処理されていてもよく、さらにコロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。
JIS-K5600に準ずる密着性評価方法とはサンプルの塗工物表面を鋭利なカッターナイフの刃先で約1mm角の碁盤目状の切れ込みを入れる。碁盤目は10×10のマス目とし、そこにニチバン(株)社製セロテープ(登録商標)を貼り合わせた後、強制的に引き剥がし、その時の表面状態を観察する。評価は、10×10=100マスのうち塗膜が剥がれずに残存したマス数で評価を行う。
マルテンス硬さとは、圧子を測定対象に押込み、一定の深さの凹みに作るのに要した「荷重」で硬さの度合いを示した指標である。なお、用いる圧子の形状はピラミッド形状(対面角90度)である。測定方法としては微小押込み硬さ試験機でマルテンス硬さを測定できる。
弾性変形回復率とは微小押込み硬さ試験機で一定荷重で一定の距離を圧子で押込み、荷重を0にしたとき凹みが「弾性」によりどれだけ回復するかを示す数値である。
実施例中の重量平均分子量は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、重量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
またマルテンス硬さおよび弾性変形回復率は微小押込み硬さ試験機(フィッシャースコープHM・2000:フィッシャー・インストルメンツ社製)にて測定を行った。
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、乾燥空気吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソシアヌレート構造を有するヘキサメチレンジイソシアネートの3量体を29.3部(0.05モル)、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(水酸基価122mgKOH/g)を70.7部(0.15モル)、重合禁止剤としてp‐メトキシフェノール0.08部、反応触媒として2-エチルヘキサン酸スズ0.02部を仕込み、80℃で5時間反応させウレタンアクリレートUA1(重量平均分子量は10,000)70部と、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下「PET4A」)30部の混合物を得た。
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート44.4部(0.2モル)、分子量1000のポリテトラメチレングリコール100部(0.1モル)、反応触媒として2-エチルヘキサン酸スズ0.02部を仕込み、80℃で反応させた。残存イソシアネート基が5.2%となった時点で、2-ヒドロキシエチルアクリレート20.7g(0.18モル)、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.04gをさらに仕込み、80℃で3時間反応させ、ウレタンアクリレートUB1(重量平均分子量2,700)を得た。
リグノセルロース試料として、針葉樹由来のサーモメカニカルパルプ(以下「TMP」という)を使用した。TMPは、針葉樹木材チップを熱水中で機械的に解繊することによって得られる繊維である。元の針葉樹のセルロース、ヘミセルロース、リグニン含有量比率とTMPの含有比率は、サーモメカニカルパルプ製造中に変化していない。まず、TEMPO(0.0625g)、NaBr(0.625g)をイオン交換水(375mL)中に溶かし、その中に、絶乾重量で5gの未乾燥TMPを分散させた。リグニン量によっても上下するが、市販の約12%NaClO水溶液を、NaClO分として100mmol~130mmolになるように測り取り、TMP、TEMPO、NaBrを含む常温の水分散液中に、スターラーで攪拌している状態で添加した。pHスタット(東亜電波社製:pHを一定に保つようにアルカリや酸を常に添加する装置)を用いて、反応中は反応液がpH10を保つように、0.5M NaOH水溶液を添加するようにセットした。酸化反応が進むとセルロースミクロフィブリル表面にカルボキシル基(R-COOH)が生成するために、pHが下がってくる。これを0.5M NaOH水溶液で中和してpHを10に保つことになる。酸化反応の終点をNaOH水溶液の消費が止まった時点とすると、酸化反応は2~3時間で終了した。反応後に反応液中に残存している繊維状固形分(TEMPO酸化物)を、G3のガラスフィルター上で蒸留水によって十分に濾過洗浄を行った。
上記TEMPO酸化物0.3gを精秤し、pH3に調製後、0.05M NaOH水溶液を定速注入し、伝導度測定(東亜DKK社製伝導度装置pH/ion/EC/DO meter MN-60Rを用いて常温で測定)を行い、伝導度の変化の無い範囲をカルボキシル基の量とした。この伝導度滴定により、TMPのTEMPO触媒酸化反応で固形分として回収されたセルロース部分に導入されたカルボキシル基量が、ナノファイバー化するのに十分な量(1mmol/g以上)であることを確認した。
上記TEMPO酸化物をエタノールで分散させ、固形分濃度5.0%にした分散液を超音波ホモジナイザーで3分ほど処理すると、完全に透明な分散液が得られた。親水化処理したカーボングリッドに上記分散液をキャストし、酢酸ウラニルによって染色したものを透過型電子顕微鏡で観察したところ、TMPの短軸の数平均繊維径が約4nmのナノファイバーに変化していることを確認し、CNF1を得た。透過型電子顕微鏡像を図1に示す。
製造例1と同様に製造し、TMPの短軸の数平均繊維径が約1nmのナノファイバーをCNF2、TMPの短軸の数平均繊維径が約50nmのナノファイバーをCNF3とした。
反応容器にメチルメタクリレート(以下「MMA」)90部、n‐ブチルアクリレート(以下「BA」)7部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(以下「2HEA」)3部、酢酸エチル150部、イソプロピルアルコール100部、及び1.2部のアゾビスイソブチロニトリルを加えて混合し、窒素ガス雰囲気下、70℃で8時間重合し、水酸基を有するアクリルポリオールAP1を得た。得られた樹脂溶液の固形分は40重量%、重量平均分子量は54,000、ガラス転移温度は101.7℃、水酸基価は14.5mgKOH/gであった。
表1に記載の原料および仕込み比にて、合成例3と同様の操作で、固形分は40重量%のアクリルポリオール(AP2~AP4)を得た。なお、原料の略称は以下に表されるものである。
IBXA:イソボニルアクリレート
2EHA:2‐エチルヘキシルアクリレート
4HBA:4‐ヒドロキシブチルアクリレート
CHA:シクロヘキシルアクリレート
なお、表1におけるガラス転移温度(Tg)は、各モノマーの、ホモポリマーにおけるガラス転移温度から算出した計算値であり、水酸基価(OH価)は4HBAあるいは2HEAのモル数から算出した計算値である。
なお、各モノマーから算出したガラス転移温度(Tg)は下記(式1)から算出した。
(式1)1/Tg(P)=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3
Tg(P):共重合体のガラス転移温度(ケルビン)
Tg1,2,3:配合した各モノマーのホモポリマーにおけるガラス転移温度(ケルビン)
W1,2,3:配合した各モノマーの重量分率(W1+W2+W3=1)
酸素濃度が10%以下に置換された遮光されたガラス容器に、アクリルポリオールAP1を5.5部、イソシアネート化合物NCO1(ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート硬化剤 固形分100%)を0.5部、ウレタンアクリレートUA1組成物(PET4Aとの混合物)を37部、ウレタンアクリレートUB1を8部 セルロースナノファイバーCNF1の分散体を5部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(「DPHA」)を5部、アルキルフェノン系開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(「1173」)を3部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である2-(2H-ベンゾトリアゾル-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノル(「571」)1部を攪拌機にて十分に攪拌を行い、充分に脱泡を行った後、化粧用コーティング剤S1を得た。
ポリプロピレンフィルム(厚さ60μm、フタムラ化学株式会社製、品名FOS)のコロナ処理面に、化粧用コーティング剤S1を溶剤(酢酸エチル)にてザーンカップ#4で粘度10秒となるようにに希釈し、その硬化膜の膜厚が6μmになるようにグラビア印刷方式で印刷し、60℃で乾燥した。その後、120W/cmの高圧水銀ランプ1灯、照射距離15cm、積算光量300mJ/cm2で照射して紫外線硬化させた。その後、温度25℃にて48時間保持して、化粧用コーティング剤S1を用いた積層体を得た。
(化粧用コーティング剤S2~S16およびT1~T2の製造)
表2に示した原料および配合組成を用いた以外は実施例1と同様の手順で化粧用コーティング剤S2~S16およびT1~T2およびそれらの積層体を得た。なお、表2において、空欄は、配合なしを表す。なお、表2における略称は以下を示す。
UA1:ウレタンアクリレートUA1組成物(PET4Aとの混合物)
NCO2:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクトであるイソシアヌレート硬化剤 固形分100%
NCO3:イソホロンジイソシアネートであるイソシアヌレート硬化剤 固形分100%
810:ダイセル・オルネクス(株)社製 ポリエステルアクリレート「EBECRYL810」(官能基数:4、重量平均分子量:1000、硬化物のガラス転移温度(Tg):31℃)
600:ダイセル・オルネクス社製 ポリエポキシアクリレート「EBECRYL600」(官能基数:2、重量平均分子量:500、硬化物のTg:67℃)
616:ダイセル・オルネクス社製 アクリルアクリレート「IRR616」(官能基数:3、重量平均分子量:900)
ETAC:酢酸エチル
化粧用コーティング剤S1~S16およびT1~T2の積層体について、以下の方法で鉛筆硬度、JIS-K5600での密着性、微小押込み硬さ試験機によるマルテンス硬さ、微小押込み硬さ試験機による弾性変形回復率、スチールウールによる硬度、耐スクラッチ性、及び耐溶剤性を測定し、結果を表3に示す。
化粧用コーティング剤S1~S16およびT1~T2を用いた積層体についてJIS-K-5600に準拠し、鉛筆硬度試験機(HEIDON社製Scratching Tester HEIDON-14)を用い、鉛筆の芯の硬さを種々変えて、荷重500gにて5回試験をした。5回中、1回も傷がつかない、もしくは1回のみ傷が付く時の芯の硬さを、その塗工物の鉛筆硬度とした。実用的な要求物性は鉛筆硬度が2H以上のものである。
化粧用コーティング剤S1~S16およびT1~T2を用いた積層体についてJIS K5400のクロスカットテープ法で、テープ剥離後の硬化層の残存マス数を目視で評価を行なった。評価「△」、「△×」、「×」以外であれば、実際の使用時に特に問題ない。
○・・・・・・・100マス/100マス。
○△・・・・・・90マス/100マス。
△・・・・・・・50~80マス/100マス。
△×・・・・・・30~50マス/100マス。
×・・・・・・・0~30マス/100マス。
化粧用コーティング剤S1~S16およびT1~T2を用いた積層体について、マルテンス硬さを微小押込み硬さ試験機にて測定を行った。実用的な要求物性は数値が100~250N/mm2である。
(測定条件)
装置:微小硬度計フィッシャースコープHM2000(フィッシャーインスツルメンツ製)
圧子:ビッカース圧子(四面ダイヤモンド錐体)
試験雰囲気:温度23℃、湿度50%
測定プログラム:層の表面に、ビッカース圧子に0.5mN/秒の条件で徐々に荷重を増加させながら荷重を加え、10mNに達した後10秒保持し、保持後0.5mN/秒の条件で荷重を減少させながら荷重を除荷した。
ISO14577の規格に基づいて算出されるマルテンス硬さ(N/mm2)を測定値とした。
化粧用コーティング剤S1~S16およびT1~T2を用いた積層体について、弾性変形回復率を微小押込み硬さ試験機にて測定を行った。実用的な要求物性は50%以上のものであり、70%以上であれば良好である。(測定条件)装置:微小硬度計フィッシャースコープHM2000(フィッシャーインスツルメンツ製)
圧子:ビッカース圧子(四面ダイヤモンド錐体)
試験雰囲気:温度23℃、湿度50%
測定プログラム:層の表面に、前記ビッカース圧子に0.5mN/秒の条件で徐々に荷重を増加させながら荷重を加え、10mNに達した後10秒保持し、保持後0.5mN/秒の条件で荷重を減少させながら荷重を除荷し、除荷後、更に10秒間保持を行う。ここで、弾性変形回復率は上記測定条件で測定され、以下の式にて得られる。
弾性変形回復率=[(hmax-hmim)/hmax ]×100
hmax:10mNで10秒保持した後の最も深く圧子が押し込まれた際の押込み深さ
hmim:除荷後、更に10秒間保持した後の押込み深さ
化粧用コーティング剤S1~S16およびT1~T2を用いた積層体について、学振試験機にセットし、スチールウールのNo.0000を用いて、荷重500gおよび1000gで10回学振させた。取り出した塗工物について、キズの付き具合を以下の5段階の目視で判断した。評価「△」、「△×」、「×」以外であれば、実際の使用時に特に問題ない。
○・・・・・・・キズが全くない。
○△・・・・・・僅かにキズが付いている。
△・・・・・・・キズは付いているが、基材は見えていない。
△×・・・・・・キズが付き、一部塗工物が剥がれている。
×・・・・・・・塗工物が剥がれてしまい、基材が剥き出しの状態。
化粧用コーティング剤S1~S16およびT1~T2を用いた積層体について、ガードナー社製のHofmannスクラッチ試験機にて、荷重を変化させて塗工物表面に傷がつかない最大荷重を測定した。評価「△」、「×」以外であれば、実際の使用時に特に問題ない。
○・・・・・・・荷重1000g以上で傷つきなし。
△・・・・・・・荷重500~1000gで傷つきなし。
×・・・・・・・荷重500gで傷つきあり。
化粧用コーティング剤S1~S16およびT1~T2を用いた積層体について、硬化層表面を酢酸エチル、あるいはイソプロピルアルコールを十分に含ませたウエスで塗工表面擦り、その外観変化とウエスの着色程度で評価した。評価「△」、「△×」、「×」以外であれば、実際の使用時に特に問題ない。
○・・・・・・・溶剤で擦った跡が残らない。
○△・・・・・・溶剤で擦った跡が僅かに残るが、ウエスは着色しない。
△・・・・・・・溶剤で擦った跡が残り、ウエスがやや着色する。
△×・・・・・・溶剤で擦った跡が大きく残るか、もしくはウエスが著しく着色する。
×・・・・・・・溶剤で擦った跡が大きく残り、かつウエスが著しく着色する。
Claims (5)
- ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエポキシアクリレートおよびアクリルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のアクリレート樹脂、水酸基価が10~120mgKOH/gであるアクリルポリオール、並びにセルロースナノファイバーを含有する化粧材用コーティング剤。
- 前記セルロースナノファイバーは、短軸の数平均繊維径が3~40nmである請求項1に記載の化粧材用コーティング剤。
- 前記アクリレート樹脂は、重量平均分子量が500~10000であり不飽和結合数が2~12であるウレタンアクリレートを含有する、請求項1または2に記載の化粧材用コーティング剤。
- 前記ウレタンアクリレートは、イソシアヌレート構造、ポリエーテル構造およびポリエステル構造より選ばれる少なくとも一種の構造を有する、請求項1~3いずれかに記載の化粧材用コーティング剤。
- プラスチック基材上に、請求項1~4いずれかに記載の化粧材用コート剤からなる硬化層を有する化粧材用積層体。
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