以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
図1は、本実施形態に係る三次元造形装置100の断面図である。図2は、本実施形態に係る三次元造形装置100の平面図である。なお、以下の説明において、左、右、上、下とは、符号Fの方向から三次元造形装置100を見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味することし、三次元造形装置100からユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。また、符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を示している。また、符号X,Y,Zは、それぞれ前後方向、左右方向、上下方向を示している。符号Xは第1方向の一例であり、符号Yは第2方向の一例である。符号Fは第1方向の一方側の一例であり、符号Rrは第1方向の他方側の一例である。また、符号X1、X2は、それぞれ、前方(一方側)から後方(他方側)へ向かう方向、後方(他方側)から前方(一方側)へ向かう方向を示している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、三次元造形装置100の設置態様を何ら限定するものではない。
三次元造形装置100は、3次元モデルデータに基づいて、所定の厚み(一層分の断面形状の厚み)の粉末材料90を硬化させて硬化層91を形成し、これを順次一体的に積層することによって所望の三次元造形物92を造形する装置である。詳しくは、三次元造形装置100は、三次元造形物92の断面形状を表す断面データに基づいて、所定の厚みで敷き詰められた粉末材料90に硬化液を吐出し、粉末材料90同士を固着させて、断面データに即した一層の硬化層91を形成する。そして、硬化層91を一層ずつ上下方向Zに順次積ねることによって、三次元造形物92を造形する。なお、本明細書において「断面形状」とは、造形する三次元造形物92を所定の方向(例えば水平方向)に所定の厚み(典型的には、数十~100μm、例えば100μm(0.1mm)。)でスライスしたときの断面の形状をいう。ただし、所定の厚みは、必ずしも一定の厚みでなくてもよい。また、ここでは上下方向Zが、三次元造形における硬化層91の積層方向に一致する。
粉末材料90については、特に限定されない。粉末材料90の種類は、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア等の無機材料、鉄、アルミニウム、チタンおよびこれらの合金(典型的にはステンレス鋼、チタン合金、アルミニウム合金)等の金属材料、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性ポリアミド等の水溶性の樹脂材料、半水石膏(α型焼石膏、β型焼石膏)、アパタイト、食塩、澱粉、プラスチック等であってもよい。粉末材料90は、上記いずれか1種の材料から構成されていてもよいし、2種以上が組み合わされて構成されていてもよい。粉末材料90は、例えば、無機材料と水溶性の樹脂材料とを含む混合粉体であってもよい。
三次元造形装置100は、ケーシング10と、造形槽20と、造形テーブル24と、造形テーブル昇降装置25と、第1供給・回収槽30と、第1テーブル34と、第1昇降装置35と、第2供給・回収槽40と、第2テーブル44と、第2昇降装置45と、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rと、支持部材70と、前後方向移動機構72と、ヘッドユニット60と、ローラ50と、制御装置80と、を備えている。
ケーシング10は、三次元造形装置100の外装体である。ケーシング10は、中空の箱型形状に形成されている。ケーシング10は、前後方向Xに長い形状を有する。ケーシング10には、造形槽20と、造形テーブル昇降装置25と、第1供給・回収槽30と、第1昇降装置35と、第2供給・回収槽40と、第2昇降装置45と、が設けられている。ケーシング10の上面10Aは平坦である。造形槽20と、第1供給・回収槽30と、第2供給・回収槽40とは、それぞれ独立して設けられている。造形槽20と、第1供給・回収槽30と、第2供給・回収槽40とは、前後方向Xに並んで配置されている。ケーシング10は、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rと、前後方向移動機構72と、が設けられている。ケーシング10は、支持部材70が支持されている。
造形槽20は、ケーシング10に設けられている。造形槽20は、ケーシング10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。造形槽20の前方には、第1供給・回収槽30が配置されている。造形槽20の後方には、第2供給・回収槽40が配置されている。造形槽20は、前後方向Xにおいて、第1供給・回収槽30と、第2供給・回収槽40と、の間に挟まれている。造形槽20は、有底四角筒状である。造形槽20は、上方に向けて開口している。開口部は、ここでは平面視において矩形状である。造形槽20は、三次元造形物が造形される造形空間20Aを有する。造形空間20Aには、第1供給・回収槽30および第2供給・回収槽40から粉末材料90が供給される。造形空間20Aの粉末材料90に硬化液が吐出されて、硬化層91が形成される。
造形テーブル24は、造形槽20の底部に配置されている。造形槽20と造形テーブル24とに囲まれた空間が造形空間20Aである。造形テーブル24は、造形空間20Aの底面を構成している。造形テーブル24の形状は、例えば、平面視において矩形状である。造形テーブル24は、水平である。造形テーブル24には、粉末材料90が載置される。硬化層91の形成時には、造形テーブル24の上に所定の厚みで粉末材料90が敷き詰められる。三次元造形物92は、造形テーブル24の上に造形される。造形テーブル24は、造形テーブル昇降装置25と電気的に接続されている。造形テーブル24は、典型的には造形槽20の内部を、造形槽20の側面に沿って上下方向Zに昇降移動可能に構成されている。
造形テーブル昇降装置25は、ケーシング10に設けられている。造形テーブル昇降装置25は、造形テーブル24を昇降移動させる装置である。造形テーブル昇降装置25は、造形テーブル24を上下方向Zに移動させる装置である。造形テーブル昇降装置25は、制御装置80に制御される。造形テーブル昇降装置25の構成は、特に限定されない。造形テーブル昇降装置25は、ここでは、造形テーブル支持部材26と、造形テーブル駆動モータ27(図3も参照)と、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。造形テーブル支持部材26は、造形テーブル24の下面に接続されている。造形テーブル支持部材26は、造形テーブル24を下方から支持している。造形テーブル支持部材26は、ボールねじを介して造形テーブル駆動モータ27に接続されている。造形テーブル駆動モータ27は、例えば、サーボモータである。造形テーブル駆動モータ27を駆動させることにより、造形テーブル支持部材26は上下方向Zに移動する。これにより、造形テーブル24は上下方向Zに移動する。造形テーブル24の移動幅は、一層分の断面形状の厚みに対応して予め定められている。造形テーブル駆動モータ27は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。
第1供給・回収槽30は、ケーシング10に設けられている。第1供給・回収槽30は、ケーシング10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。第1供給・回収槽30は、前後方向Xにおいて、造形槽20の隣に並んで配置されている。第1供給・回収槽30は、造形槽20よりも前方に配置されている。第1供給・回収槽30は、有底四角筒状である。第1供給・回収槽30は、上方に向けて開口している。開口部は、ここでは平面視において矩形状である。図2に示すように、第1供給・回収槽30の左右方向Yの長さL1は、ここでは造形槽20の左右方向Yの長さLmと同じである。ただし、Lm<L1であってもよい。第1供給・回収槽30は、造形槽20に粉末材料90を供給する供給槽としての機能と、第2供給・回収槽40から造形槽20に対して過剰に供給された余剰の(言い換えれば、造形空間20Aに収容されずに余った)粉末材料90を回収する回収槽としての機能とを兼ね備えている。第1供給・回収槽30は、粉末材料90が貯留される第1貯留空間30Aを有する。
第1テーブル34は、第1供給・回収槽30の底部に配置されている。第1供給・回収槽30と第1テーブル34とに囲まれた空間が、第1貯留空間30Aである。第1テーブル34は、第1貯留空間30Aの底面を構成している。第1テーブル34の形状は、例えば、平面視において矩形状である。第1テーブル34は、水平である。第1テーブル34には、粉末材料90が載置される。第1貯留空間30Aの最大容積(第1テーブル34が最も下方に位置するときの容積。以下、C1と略す。)は、ここでは、造形空間20Aの最大容積(造形テーブル24が最も下方に位置するときの容積。以下、Cmと略す。)よりも小さい。C1は、ここでは、0.5Cm≦C1<Cm、例えば、0.6Cm≦C1≦0.7Cm、を満たしている。第1貯留空間30Aに貯留可能な粉末材料90の体積は、造形空間20Aに収容可能な粉末材料90の体積よりも小さい。第1テーブル34は、第1昇降装置35と電気的に接続されている。第1テーブル34は、典型的には第1供給・回収槽30の内部を、第1供給・回収槽30の側面に沿って、上下方向Zに昇降移動可能に構成されている。
第1昇降装置35は、ケーシング10に設けられている。第1昇降装置35は、第1テーブル34を昇降移動させる装置である。第1昇降装置35は、第1テーブル34を上下方向Zに移動させる装置である。第1昇降装置35は、制御装置80に制御される。第1昇降装置35の構成は、特に限定されない。第1昇降装置35は、造形テーブル昇降装置25と同じ構成であってもよい。第1昇降装置35は、ここでは、第1支持部材36と、第1駆動モータ37(図3も参照)と、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。第1支持部材36は、第1テーブル34の下面に接続されている。第1支持部材36は、第1テーブル34を下方から支持している。第1支持部材36は、ボールねじを介して第1駆動モータ37に接続されている。第1駆動モータ37は、例えば、サーボモータである。第1駆動モータ37を駆動させることにより、第1支持部材36は上下方向Zに移動する。これにより、第1テーブル34は上下方向Zに移動する。第1テーブル34の移動幅は、例えば造形テーブル24の移動幅に対応して予め定められている。第1駆動モータ37は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。
第2供給・回収槽40は、ケーシング10に設けられている。第2供給・回収槽40は、ケーシング10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。第2供給・回収槽40は、前後方向Xにおいて、造形槽20の隣に並んで配置されている。第2供給・回収槽40は、造形槽20よりも後方に配置されている。第2供給・回収槽40は、前後方向Xにおいて、造形槽20を挟んで第1供給・回収槽30の反対側に設けられている。第2供給・回収槽40は、有底四角筒状である。第2供給・回収槽40は、上方に向けて開口している。開口部は、ここでは平面視において矩形状である。図2に示すように、第2供給・回収槽40は、ここでは第1供給・回収槽30と同形状、同サイズである。第2供給・回収槽40の左右方向Yの長さL2は、ここでは造形槽20の左右方向Yの長さLmと同じである。ただし、Lm<L2であってもよい。第2供給・回収槽40は、造形槽20に粉末材料90を供給する供給槽として機能すると共に、第1供給・回収槽30から造形槽20に対して過剰に供給された余剰の(言い換えれば、造形空間20Aに収容されずに余った)粉末材料90を回収する回収槽として機能する。第2供給・回収槽40は、粉末材料90が貯留される第2貯留空間40Aを有する。
第2テーブル44は、第2供給・回収槽40の底部に配置されている。第2供給・回収槽40と第2テーブル44とに囲まれた空間が、第2貯留空間40Aである。第2テーブル44は、第2貯留空間40Aの底面を構成している。第2テーブル44の形状は、例えば、平面視において矩形状である。第2テーブル44は、水平である。第2テーブル44には、粉末材料90が載置される。第2貯留空間40Aの最大容積(第2テーブル44が最も下方に位置するときの容積。以下C2と略す。)は、ここでは、造形空間20Aの最大容積Cmよりも小さい。C2は、ここでは、0.5Cm≦C2、例えば、0.6Cm≦C2≦0.7Cm、を満たしている。第2貯留空間40Aに貯留可能な粉末材料90の体積は、造形空間20Aに収容可能な粉末材料90の体積よりも小さい。第2貯留空間40Aの最大容積C2は、ここでは第1貯留空間30Aの最大容積C1と同じである。ただし、第2貯留空間40Aの最大容積C2は、第1貯留空間30Aの最大容積C1よりも小さくてもよいし大きくてもよい。第1貯留空間30Aの最大容積C1と第2貯留空間40Aの最大容積C2との比は、例えば、C1:C2=2:1~1:2であってもよい。
第1貯留空間30Aの最大容積C1と第2貯留空間40Aの最大容積C2との合計は、造形空間20Aの最大容積Cmと同じかそれよりも大きい。すなわち、Cm≦(C1+C2)である。上記Cmと上記C1と上記C2とは、概ね、1.1Cm≦(C1+C2)≦2Cm、例えば、1.2Cm≦(C1+C2)≦1.5Cm、を満たしていてもよい。第2テーブル44は、第2昇降装置45と電気的に接続されている。第2テーブル44は、典型的には第2供給・回収槽40の内部を、第2供給・回収槽40の側面に沿って、上下方向Zに昇降移動可能に構成されている。
第2昇降装置45は、ケーシング10に設けられている。第2昇降装置45は、第2テーブル44を昇降移動させる装置である。第2昇降装置45は、第2テーブル44を上下方向Zに移動させる装置である。第2昇降装置45は、制御装置80に制御される。第2昇降装置45の構成は、特に限定されない。第2昇降装置45は、第1昇降装置35と同じ構成であってもよい。第2昇降装置45は、ここでは、第2支持部材46と、第2駆動モータ47(図3も参照)と、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。第2支持部材46は、第2テーブル44の下面に接続されている。第2支持部材46は、第2テーブル44を下方から支持している。第2支持部材46は、ボールねじを介して第2駆動モータ47に接続されている。第2駆動モータ47は、例えば、サーボモータである。第2駆動モータ47を駆動させることにより、第2支持部材46は上下方向Zに移動する。これにより、第2テーブル44は、上下方向Zに移動する。第2テーブル44の移動幅は、例えば造形テーブル24の移動幅に対応して予め定められている。第2駆動モータ47は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。
左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、ケーシング10に設けられている。左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、前後方向Xに延びている。左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、左右方向Yに平行に配置されている。左ガイドレール12Lは、右ガイドレール12Rよりも左方に配置されている。左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、支持部材70の前後方向Xへの移動をガイドする。前後方向Xは、支持部材70の走査方向に対応する。左ガイドレール12Lの前端および右ガイドレール12Rの前端は、第2供給・回収槽40の前端よりも前方に位置している。左ガイドレール12Lの後端および右ガイドレール12Rの後端は、第1供給・回収槽30の後端よりも後方に位置している。左右方向Yにおいて、左ガイドレール12Lと右ガイドレール12Rとの間には、造形槽20と第1供給・回収槽30と第2供給・回収槽40とが設けられている。なお、本実施形態では、ケーシング10に左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rが設けられているが、ガイドレールの設置位置や数は特に限定されない。
支持部材70は、ケーシング10の上面10Aに配置されている。支持部材70は、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに摺動自在に係合している。支持部材70は、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに沿って前後方向Xに移動可能に構成されている。支持部材70は、左ガイドレール12Lに係合する左脚部70Lと、右ガイドレール12Rに係合する右脚部70Rと、左脚部70Lの上端と右脚部70Rとの上端とを連結する連結部70Cと、を備えている。左脚部70Lおよび右脚部70Rは、上下方向Zに延びている。連結部70Cは左右方向Yに延びている。連結部70Cは、造形槽20と第1供給・回収槽30と第2供給・回収槽40との上方に位置している。支持部材70には、ヘッドユニット60とローラ50とが支持されている。支持部材70は、前後方向移動機構72と電気的に接続されている。支持部材70は、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに沿って前後方向Xに往復移動可能に構成されている。
前後方向移動機構72は、支持部材70をケーシング10に対して前後方向Xに相対的に移動させる機構である。前後方向移動機構72は、ローラ50およびヘッドユニット60を、造形槽20と第1供給・回収槽30と第2供給・回収槽40とに対して、前後方向Xに相対的に移動させる機構である。なお、説明の便宜上、前後方向移動機構72は図2のみに示し、他の図では図示を省略している。前後方向移動機構72の構成は、特に限定されない。前後方向移動機構72は、ここでは、左ガイドレール12Lの前端側に配置されたプーリ73Fと、左ガイドレール12Lの後端側に配置されたプーリ73Rと、右ガイドレール12Rの前端側に配置されたプーリ74Fと、右ガイドレール12Rの後端側に配置されたプーリ74Rと、プーリ73Fとプーリ74Fとを連結する連結ロッド75Aと、プーリ73Rと、プーリ74Rとを連結する連結ロッド75Bと、プーリ73Fとプーリ73Rとに巻き掛けられた左側ベルト76Lと、プーリ74Fとプーリ74Rとに巻き掛けられた右側ベルト76Rと、連結ロッド75Aを回転させる第1モータ77(図3参照)と、を備えている。左側ベルト76Lは、左脚部70Lに固定されている。右側ベルト76Rは、右脚部70Rに固定されている。
第1モータ77は、制御装置80と電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。第1モータ77が駆動すると連結ロッド75Aが回転し、左側ベルト76Lおよび右側ベルト76Rが走行する。これにより、支持部材70が左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに沿って前後方向Xに往復移動する。支持部材70が前後方向Xに往復移動すると、これに伴って、支持部材70に支持されているヘッドユニット60とローラ50とが、共に前後方向Xに往復移動する。前後方向移動機構72は、制御装置80に制御される。なお、本実施形態では、第1モータ77は連結ロッド75Aを回転させるように構成されているが、第1モータ77は連結ロッド75Bを回転させるように構成されていてもよい。
ヘッドユニット60は、支持部材70に支持されている。ヘッドユニット60は、連結部70Cに固定されている。ヘッドユニット60は、前後方向Xに並ぶ3つのラインヘッド62と、ラインヘッド62を収容するケース64と、を備えている。ラインヘッド62は、造形空間20Aに収容された粉末材料90に硬化液を吐出する装置である。なお、硬化液は、粉末材料90を構成する粒子同士を固着させることが可能な液体(粘性体を含む。)であればよく、特に限定されない。硬化液は、例えば、水、ワックス、バインダ等を含む液体等であってもよい。硬化液は、粉末材料90が水溶性の樹脂材料を含む場合に、例えば水であってもよい。ラインヘッド62は、吐出ヘッドの一例である。
ラインヘッド62は、ケーシング10よりも上方に位置している。ラインヘッド62は、造形槽20よりも上方に位置している。ラインヘッド62の下端は、ケース64の下面よりも下方に突出している。ラインヘッド62は、硬化液を吐出する複数のノズル(図示せず)を有する。ラインヘッド62の左右方向Yの長さLhは、造形槽20の左右方向Yの長さLmと同じかそれよりも長い。複数のノズルは、左右方向Yに直線状に並んでいる。ラインヘッド62における硬化液の吐出機構は特に限定されず、例えばインクジェット方式である。ラインヘッド62は、支持部材70の移動に伴って前後方向Xに往復移動する。ラインヘッド62は、ここでは左右方向Yには移動しない。ラインヘッド62は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。ラインヘッド62のノズルからの硬化液の吐出は、制御装置80によって制御される。
ローラ50は、支持部材70に支持されている。ローラ50は、左脚部70Lおよび右脚部70Rに取り付けられている。ローラ50は、ラインヘッド62よりも前方に配置されている。ローラ50の下端50Bは、ラインヘッド62の下端よりも下方に位置している。ローラ50の下端50Bは、ケーシング10よりも上方に位置している。ローラ50は、ケーシング10の上面10Aとの間に所定のクリアランス(間隙)が形成されるように配置されている。ローラ50は、長尺の円筒形状を有している。図2に示すように、ローラ50の左右方向Yの長さLrは、造形槽20の左右方向Yの長さLmよりも長く、第1供給・回収槽30の左右方向Yの長さL1よりも長く、第2供給・回収槽40の左右方向Yの長さL2よりも長い。ローラ50は、支持部材70の移動に伴って、少なくとも第1供給・回収槽30の前端から第2供給・回収槽40の後端までの間を、前後方向Xに水平移動する。ローラ50は、ケーシング10の上面10Aに沿って前後方向Xに水平移動する。
ローラ50は、第1テーブル34に載置されている粉末材料90を造形槽20へと搬送する。ローラ50は、第2テーブル44に載置されている粉末材料90を造形槽20へと搬送する。ローラ50は、造形槽20の前方および後方から、それぞれ造形テーブル24の上に粉末材料90を供給する。ローラ50は、造形テーブル24の上に供給された粉末材料90上を移動して、粉末材料90の表面を平らに均す。粉末材料90は、ローラ50によって造形テーブル24上の全面に万遍なく敷き詰められる。粉末材料90は、造形槽20内に所定の厚みで敷き詰められる。造形槽20内に敷き詰められる粉末材料90の上面の高さは、ローラ50の下端50Bの高さである。ローラ50は、造形槽20に収容しきれなかった余剰の粉末材料90を、第1供給・回収槽30または第2供給・回収槽40へと搬送する。
ローラ50は、左右方向Yに延びた回転軸を中心として、支持部材70に回転可能に支持されている。ローラ50は、回転軸が左右方向Yと平行になるように配置されている。ローラ50は、第2モータ52に接続されている。第2モータ52は、左脚部70Lに設けられている。第2モータ52は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。ローラ50は、第2モータ52を駆動することによって、第1回転方向R1または第1回転方向R1と逆の第2回転方向R2に回転する。ローラ50は、粉末材料90を下方から上方に向かって押し上げる(掬い上げる)ように回転する。図1に示すように、ローラ50は、前方から後方へ向かう方向X1に水平移動するときに、第1回転方向R1に回転する。図1において、第1回転方向R1は反時計回りの方向である。ローラ50は、後方から前方へ向かう方向X2に水平移動するときに、第2回転方向R2に回転する。図1において、第2回転方向R2は時計回りの方向である。
制御装置80は、三次元造形装置100の全体の動作を制御する。制御装置80の構成は特に限定されない。制御装置80は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶部と、を備えている。本実施形態では、制御装置80は、ケーシング10の内部に設けられている。ただし、制御装置80は、ケーシング10の外部に設置されたコンピュータ等であってもよい。この場合、制御装置80は、有線または無線を介して三次元造形装置100と通信可能に接続されている。
図3は、制御装置80のブロック図である。制御装置80は、造形テーブル駆動モータ27と、第1駆動モータ37と、第2駆動モータ47と、第1モータ77と、ラインヘッド62と、第2モータ52と、通信可能に接続され、これらを制御可能に構成されている。制御装置80は、第1制御部81と、第2制御部82と、吐出制御部83と、を備えている。制御装置80の各部の機能は、例えばプログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVD等の記録媒体から読み込まれるものであってもよいし、インターネット等を通じてダウンロードされるものであってもよい。制御装置80の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路等によって実現可能なものであってもよい。
第1制御部81は、造形槽20内に第1の厚みT1(図5参照)で粉末材料90を敷き詰める第1制御を実行する。なお、第1の厚みT1は、必ずしも毎回同じである必要はない。第1制御部81は、造形テーブル駆動モータ27を制御して、造形テーブル24を下方に移動させるように構成されている。このときの造形テーブル24の下方への移動幅は、第1の厚みと同じT1である。移動幅T1は、一層分の断面形状の厚みよりも小さく、典型的には、一層分の断面形状の厚みを偶数分割した厚み、例えば、作業効率を考慮して、一層分の断面形状の厚みの1/2であってもよい。あるいは、一層分の断面形状の厚みの1/4、1/6であってもよい。これにより、造形テーブル24の上方に、厚みT1の空間が形成される。
また、第1制御部81は、第1駆動モータ37を制御して、第1テーブル34を上方に移動させるように構成されている。これにより、第1貯留空間30Aに貯留されている粉末材料90の一部または全部を、第1供給・回収槽30の上端よりも上方に押し上げる。通常、第1供給・回収槽30の上端よりも上方に押し上げられる粉末材料90の体積V1(図5参照)は、平面視における造形テーブル24の面積と上記下方への移動幅T1とを乗じた体積よりも多い。すなわち、粉末材料90は、通常、上記厚みT1の空間に収容される量よりも多めに供給される。
また、第1制御部81は、第1テーブル34を上方に移動させるときに、第2駆動モータ47を制御して、第2テーブル44を下方に移動させるように構成されていてもよい。このときの第2テーブル44の下方への移動幅は、余剰の粉末材料90の体積を平面視における第2テーブル44の面積で除した高さと同じかそれよりも大きい。なお、余剰の粉末材料90の体積は、第1供給・回収槽30の上端よりも上方に押し上げられる粉末材料90の体積V1から、平面視における造形テーブル24の面積と上記下方への移動幅T1とを乗じた体積を差し引くことで、求められる。これにより、第2貯留空間40Aを広げて、第2供給・回収槽40に、余剰の粉末材料90を回収するための空間を適切に確保することができる。
第1制御部81は、第2モータ52を制御して、ローラ50を第1回転方向R1に回転させる。第1制御部81は、少なくとも造形テーブル24を下方に移動させかつ第1テーブル34を上方に移動させた後に、ローラ50を第1回転方向R1に回転させながら、第1モータ77を制御して、支持部材70を前方から後方へ向かう方向X1に水平移動させる。これにより、第1供給・回収槽30の上端よりも上に盛り上がって積まれた粉末材料90が造形槽20の側に移動させられ、造形テーブル24の上で均される。この一連の動作によって、造形槽20内に第1の厚みT1で粉末材料90が敷き詰められる。また、造形槽20に収容されずに余った粉末材料90は、そのままローラ50によってさらに後方に移動させられ、第2供給・回収槽40に回収される。
第2制御部82は、造形槽20内に第2の厚みT2(図7参照、ただし、第1の厚み1と第2の厚みT2との合計は、一層分の断面形状の厚み以下である。)で粉末材料90を敷き詰める第2制御を実行する。なお、第2の厚みT2は、必ずしも毎回同じである必要はない。第2制御部82は、造形テーブル駆動モータ27を制御して、造形テーブル24を下方に移動させるように構成されている。このときの造形テーブル24の下方への移動幅は、第2の厚みと同じT2である。三次元造形物92の上下方向Zでの均質性を高める観点からは、移動幅T2が移動幅T1と同じであるとよい。ただし、移動幅T2は、移動幅T1と異なっていてもよい。移動幅T2は、一層分の断面形状の厚みよりも小さく、典型的には、一層分の断面形状の厚みを偶数分割した厚み、例えば、作業効率を考慮して、一層分の断面形状の厚みの1/2であってもよい。あるいは、一層分の断面形状の厚みの1/4、1/6であってもよい。これにより、造形テーブル24の上方に、厚みT2の空間が形成される。
また、第2制御部82は、第2駆動モータ47を制御して、第2テーブル44を上方に移動させるように構成されている。これにより、第2貯留空間40Aに貯留されている粉末材料90の一部または全部を、第2供給・回収槽40の上端よりも上方に押し上げる。通常、第2供給・回収槽40の上端よりも上方に押し上げられる粉末材料90の体積V2(図7参照)は、平面視における造形テーブル24の面積と上記下方への移動幅T2とを乗じた体積よりも多い。すなわち、粉末材料90は、通常、上記厚みT2の空間に収容される量よりも多めに供給される。
また、第2制御部82は、第2テーブル44を上方に移動させるときに、第1駆動モータ37を制御して、第1テーブル34を下方に移動させるように構成されていてもよい。このときの第1テーブル34の下方への移動幅は、余剰の粉末材料90の体積を平面視における第1テーブル34の面積で除した高さと同じかそれよりも大きい。なお、余剰の粉末材料90の体積は、第2供給・回収槽40の上端よりも上方に押し上げられる粉末材料90の体積V2から、平面視における造形テーブル24の面積と上記下方への移動幅T2とを乗じた体積を差し引くことで、求められる。これにより、第1貯留空間30Aを広げて、第1供給・回収槽30に、余剰の粉末材料90を回収するための空間を適切に確保することができる。
第2制御部82は、第2モータ52を制御して、ローラ50を第2回転方向R2に回転させる。第2制御部82は、少なくとも造形テーブル24を下方に移動させかつ第2テーブル44を上方に移動させた後に、ローラ50を第2回転方向R2に回転させながら、第1モータ77を制御して、支持部材70を後方から前方へ向かう方向X2に水平移動させる。これにより、第2供給・回収槽40の上端よりも上に盛り上がって積まれた粉末材料90が造形槽20の側に移動させられ、造形テーブル24の上で均される。この一連の動作によって、造形槽20内に第2の厚みT2で粉末材料90が敷き詰められる。また、造形槽20に収容されずに余った粉末材料90は、そのままローラ50によってさらに前方に移動させられ、第1供給・回収槽30に回収される。
本実施形態では、一層の硬化層91を形成するときに、第1制御と第2制御とを少なくとも1回ずつ実行する。製造効率を向上する観点等からは、第1制御と第2制御とを各1回実行するとよい。ただし、第1制御および/または第2制御を、それぞれ独立して、複数回(例えば第1制御および第2制御を2回ずつ)実行してもよい。また、第1制御で造形テーブル24の上に敷き詰められた総厚みと、第2制御で敷き詰められた総厚みとは、同じであってもよいし異なっていてもよい。そして、造形槽20の造形テーブル24の上に、一層分の断面形状の厚みで粉末材料90を敷き詰める。
吐出制御部83は、第1モータ77を制御して、支持部材70を前後方向Xに水平移動させるように構成されている。また、吐出制御部83は、ラインヘッド62を制御して、造形テーブル24の上に一層分の断面形状の厚みで敷き詰められた粉末材料90に対して、ラインヘッド62から硬化液を吐出する。吐出制御部83は、ラインヘッド62のノズルから硬化液を吐出するタイミングや硬化液の量を制御するように構成されている。本実施形態において、吐出制御部83は、第2制御においてローラ50が造形テーブル24に粉末材料90を敷き詰めているときに、ラインヘッド62から硬化液を吐出するように構成されている。言い換えれば、支持部材70が後方から前方へ向かう方向X2に1回移動するときに、第2の厚みT2での粉末材料90の敷き詰めと、ラインヘッド62からの硬化液の吐出と、をあわせて行うように構成されている。これにより、三次元造形物92を効率良く造形することができる。
次に、図4~図8を参照しつつ、三次元造形物92を造形するときの三次元造形装置100の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、一層分の断面形状が厚み0.1mmである硬化層91を上方に次々に積層してゆくことによって、三次元造形物92を製造する場合を例として説明する。本実施形態の製造方法は、第1工程と第2工程と第3工程とを包含する。第1工程は、第1供給工程と第1敷詰工程とをこの順に包含する。第2工程は、第2供給工程と第2敷詰工程とをこの順に包含する。第3工程は、吐出工程を包含する。以下、各工程について説明する。
図4は、造形を開始する前の状態を表す三次元造形装置100の断面図である。図4に示すように、造形待機時、すなわち、三次元造形が行われていないときには、支持部材70およびヘッドユニット60がホームポジションHPで待機している。ホームポジションHPは、第2供給・回収槽40よりも後方に位置している。造形テーブル24は、造形テーブル駆動モータ27によって初期位置に移動される。造形テーブル24の初期位置は、造形槽20内の最も高い位置である。造形テーブル24は、造形の工程が進むにつれて、次第に造形槽20内の低い位置に移動してゆく。第1テーブル34は、第1駆動モータ37によって初期位置に移動される。第1テーブル34の初期位置は、ここでは第1供給・回収槽30内の最も低い位置よりも上方の位置である。初期位置は、第1テーブル34が下方に移動可能な位置である。第1貯留空間30Aには、上面10Aと面一になるように、粉末材料90が貯留されている。第2テーブル44は、第2駆動モータ47によって初期位置に移動される。第2テーブル44の初期位置は、ここでは第1テーブル34の初期位置と同じ高さである。第2貯留空間40Aには、上面10Aと面一になるように、第1貯留空間30Aと同じ粉末材料90が貯留されている。第2貯留空間40Aに貯留されている粉末材料90の体積は、第1貯留空間30Aに貯留されている粉末材料90の体積と同じである。
図5は、第1供給工程を表す三次元造形装置100の断面図である。第1供給工程において、第1制御部81は、造形テーブル駆動モータ27を制御して、造形テーブル24を下方に移動させる。このときの造形テーブル24の下方への移動幅T1は、一層分の断面形状の厚みよりも小さく、予め定められている。移動幅T1は、ここでは一層分の断面形状の半分、すなわち0.05mmである。また、第1制御部81は、第1駆動モータ37を制御して、第1テーブル34を上方に移動させる。これにより、第1貯留空間30Aの粉末材料90の一部が、第1供給・回収槽30の上端よりも上に盛り上がって積まれる形になる。また、第1制御部81は、第2駆動モータ47を制御して、第2テーブル44を下方に移動させる。このときの第2テーブル44の下方への移動幅は、第1テーブル34の上方への移動幅と同じであってもよく、それよりも大きくあるいは小さくてもよい。さらに、第1制御部81は、第1モータ77を制御して、支持部材70をホームポジションHPから待機位置SPまで移動する。待機位置SPは、第1供給・回収槽30よりも前方に位置している。
図6は、第1敷詰工程を表す三次元造形装置100の断面図である。第1敷詰工程は、第1供給工程に続いて実施される。第1敷詰工程において、第1制御部81は、第2モータ52を制御して、ローラ50を第1回転方向R1、すなわち図5,図6における反時計回りの方向に回転させる。第1制御部81は、ローラ50を第1回転方向R1に回転させた状態で、第1モータ77を制御して、支持部材70を前方から後方へ向かう方向X1に水平移動させる。第1制御部81は、支持部材70を待機位置SPからホームポジションHPまで移動する。これにより、第1供給工程において第1供給・回収槽30の上端よりも上に盛り上がって積まれた粉末材料90が、ローラ50で後上方に向かって押し上げられながら造形槽20の側に移動させられ、造形テーブル24の上で均される。この一連の動作によって、造形テーブル24の上に一層分の断面形状の厚み(0.1mm)よりも小さい第1の厚みT1(0.05mm)で粉末材料90が敷き詰められる。また、造形槽20に収容されずに余った粉末材料90は、そのままローラ50によってさらに後方に移動させられ、第2供給・回収槽40に回収される。
図7は、第2供給工程を表す三次元造形装置100の断面図である。第2供給工程は、第1敷詰工程に続いて実施される。第2供給工程において、第2制御部82は、造形テーブル駆動モータ27を制御して、造形テーブル24を下方に移動させる。このときの造形テーブル24の下方への移動幅T2は、一層分の断面形状の厚みよりも小さく、予め定められている。移動幅T2は、ここでは第1供給工程における移動幅T1と同じであり、一層分の断面形状の半分、すなわち0.05mmである。また、第2制御部82は、第2駆動モータ47を制御して、第2テーブル44を上方に移動させる。これにより、第2貯留空間40Aの粉末材料90の一部が、第2供給・回収槽40の上端よりも上に盛り上がって積まれる形になる。また、第2制御部82は、第1駆動モータ37を制御して、第1テーブル34を下方に移動させる。このときの第1テーブル34の下方への移動幅は、第2テーブル44の上方への移動幅と同じであってもよく、それよりも大きくあるいは小さくてもよい。
図8は、第2敷詰工程を表す三次元造形装置100の断面図である。第2敷詰工程は、ここでは第2供給工程に続いて実施される。第2敷詰工程において、第2制御部82は、第2モータ52を制御して、ローラ50を第2回転方向R2、すなわち図7,図8における時計回りの方向に回転させる。第2制御部82は、ローラ50を第2回転方向R2に回転させた状態で、第1モータ77を制御して、支持部材70を後方から前方へ向かう方向X2に水平移動させる。第2制御部82は、支持部材70をホームポジションHPから待機位置SPまで移動する。これにより、第2供給工程において第2供給・回収槽40の上端よりも上に盛り上がって積まれた粉末材料90が、ローラ50で前上方に向かって押し上げられながら造形槽20の側に移動させられ、造形テーブル24の上で均される。この一連の動作によって、造形テーブル24の上に一層分の断面形状の厚み(0.1mm)よりも小さい第2の厚みT2(0.05mm)で粉末材料90が敷き詰められる。第1供給工程および第1敷詰工程に続いて、第2供給工程および第2敷詰工程を行う場合は、第1の厚みの粉末材料90の上に、第2の厚みで粉末材料90が敷き詰められる。
本実施形態では、第1工程および第2工程を各1回行うことにより、造形テーブル24の上に、一層分の断面形状の厚み(0.1mm)で粉末材料90が敷き詰められる。また、造形槽20に収容されずに余った粉末材料90は、そのままローラ50によってさらに前方に移動させられ、第1供給・回収槽30に回収される。
続いて、吐出工程において、吐出制御部83は、ラインヘッド62を制御して、造形テーブル24の上の厚み0.1mmの粉末材料90に対し、ラインヘッド62のノズルから硬化液を吐出する。本実施形態では、ラインヘッド62がローラ50と同じ支持部材70に支持されており、ローラ50と共に前後方向Xに移動する。そのため、第2制御部82が支持部材70を後方から前方へ向かう方向X2に水平移動させ、ローラ50が造形テーブル24に粉末材料90を敷き詰めているときに、ラインヘッド62のノズルから硬化液を吐出することができる。これにより、効率的に一層分の硬化層91を形成することができる。
一層分の硬化層91が形成されると、第1制御部81および第2制御部82が、造形槽20内に粉末材料90を一層分の硬化層91の厚みで再び敷き詰める。吐出制御部83は、一層分の硬化層91の厚みで再び敷き詰められた粉末材料90に対して、再び硬化液を吐出する。これにより、上記で形成した第1層目の硬化層91の上に、第2層目の硬化層91が形成される。そして、この第1制御部81および第2制御部82が粉末材料90を敷き詰める操作と、吐出制御部83が一層分の硬化層91の厚みで再び敷き詰められた粉末材料90に対して硬化液を吐出する操作とを、三次元造形物92の造形が完了するまで繰り返す。これにより、第1~第nの硬化層91(nは2以上の整数)が上下方向Zに積み上げられた三次元造形物92を製造することができる。
以上のように、三次元造形装置100では、前後方向Xにおいて、造形槽20が第1供給・回収槽30と第2供給・回収槽40との間に挟まれており、一方の供給・回収槽から粉末材料90が供給されるとき、他方の供給・回収槽が余剰の粉末材料90を回収する回収槽として機能する。これにより、粉末材料90の回収のみを専門で行う回収槽は不要となり、造形が完了した後に回収槽に回収された粉末材料90をユーザが供給槽に戻す作業も必要なくなる。したがって、造形が完了した後の作業で粉末材料90が舞い上がることを抑制すると共に、ユーザの手間を省いて、ユーザの利便性を向上することができる。
本実施形態の三次元造形装置100は、前後方向移動機構72と電気的に接続された制御装置80をさらに備える。制御装置80は、ケーシング10および敷詰部材50のいずれか一方を他方に対して前後方向Xに相対的に移動させて、第1供給・回収槽30に貯留されている粉末材料90を、所定の厚みよりも薄い第1の厚みT1で造形空間20Aに敷き詰める第1制御を実行する第1制御部81と、ケーシング10および敷詰部材50のいずれか一方を他方に対して前後方向Xに相対的に移動させて、第2供給・回収槽40に貯留されている粉末材料90を、上記所定の厚みよりも薄い第2の厚みT2(ただし、上記第1の厚みと上記第2の厚みとの合計は、上記所定の厚み以下である。)で造形空間20Aに敷き詰める第2制御を実行する第2制御部82と、を備え、一層の硬化層91を形成するときに、上記第1制御と上記第2制御とを少なくとも1回ずつ実行するように構成されている。
ところで、本発明者の検討によれば、従来の三次元造形装置では、通常、造形槽の一方向のみから粉末材料が供給される。このため、造形槽内の場所によって敷き詰められた粉末材料に密度のばらつき(敷きムラ)が生じることがある。すなわち、供給槽から遠い側では、供給槽に近い側に比べて相対的に粉末材料の密度が低くなる。このことにより、供給槽から遠い側で、相対的に三次元造形物の強度が低下したり、表面平滑性が低下したり、エッジ部分がダレやすくなったりすることがある。また、三次元造形物のサイズが大きい場合には、上記した不具合が部分的に生じて三次元造形物が不均質になってしまうことがある。
これに対して、本実施形態の三次元造形装置100では、一層の硬化層91を形成するときに、造形槽20の前後方向Xの両側からそれぞれ粉末材料90が供給される。これにより、造形槽20内に敷き詰められた粉末材料90の前後方向Xにおける敷きムラを軽減することができる。言い換えれば、前後方向Xにおいて粉末材料90の密度を均質化することができる。これにより、均質性の向上した三次元造形物92を得ることができ、造型品質を向上することができる。
本実施形態の三次元造形装置100によれば、制御装置80は、一層の硬化層91を形成するときに、上記第1制御と上記第2制御とをそれぞれ1回実行するように構成されている。このように第1制御と第2制御とを各1回のみとすることで、一層の硬化層91をより短時間で形成することができる。したがって、造型品質の向上した三次元造形物92を効率良く得ることができる。
本実施形態の三次元造形装置100によれば、上記第1制御で敷き詰める上記第1の厚みと、上記第2制御で敷き詰める上記第2の厚みとが、同じ厚みである。これにより、前後方向Xにおける粉末材料90の敷きムラを一層軽減することができる。したがって、前後方向Xの均質性がより良く向上した三次元造形物92を得ることができる。
本実施形態の三次元造形装置100によれば、制御装置80は、第2制御によってローラ50が粉末材料90を敷き詰めているときにラインヘッド62から粉末材料90に硬化液を吐出する吐出制御部83を備えている。このように、粉末材料90の供給が完全に完了する前に、粉末材料90の供給された部分から順に、硬化液を吐出して硬化層91を形成することにより、造型品質の向上した三次元造形物92を効率良く得ることができる。すなわち、粉末材料90を敷き詰める工程と、硬化液を吐出する工程とが完全に区分けされている場合と比べて、三次元造形物92の造形に要する時間を短縮することができる。
本実施形態の三次元造形装置100によれば、第1供給・回収槽30内に配置され、粉末材料90が載置される第1テーブル34と、制御装置80と電気的に接続され、第1テーブル34を昇降移動させる第1昇降装置35と、第2供給・回収槽40内に配置され、粉末材料90が載置される第2テーブル44と、制御装置80と電気的に接続され、第2テーブル44を昇降移動させる第2昇降装置45と、をさらに備える。造形槽20と、第1供給・回収槽30と、第2供給・回収槽40とは、それぞれ、ケーシング10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。第1制御部81は、第1昇降装置35を制御して第1テーブル34を上昇させ、第1供給・回収槽30に貯留されている粉末材料90を第1供給・回収槽30の上端よりも上方に押し上げた後、前後方向移動機構72を制御して造形槽20およびローラ50のいずれか一方を前後方向Xの前方Fから後側Rrに移動させ、第1供給・回収槽30の上端よりも上方に押し上げられた粉末材料90を造形槽20の側に移動させ、第1の厚みT1で造形空間20Aに敷き詰めるように構成されており、第2制御部82は、第2昇降装置45を制御して第2テーブル44を上昇させ、第2供給・回収槽40に貯留されている粉末材料90を第2供給・回収槽40の上端よりも上方に押し上げた後、前後方向移動機構72を制御して造形槽20およびローラ50のいずれか一方を前後方向Xの後側Rrから前方Fに移動させ、第2供給・回収槽40の上端よりも上方に押し上げられた粉末材料90を造形槽20の側に移動させ、第2の厚みT2で造形空間20Aに敷き詰めるように構成されている。
本実施形態の三次元造形装置100によれば、第1制御部81は、第2昇降装置45を制御して第2テーブル44を下降させ、第2貯留空間40Aを広げるように構成されており、第2制御部82は、第1昇降装置35を制御して第1テーブル34を下降させ、第1貯留空間30Aを広げるように構成されている。これにより、余剰の粉末材料90を回収するための空間を適切に確保することができる。
本実施形態の三次元造形装置100によれば、ローラ50は、制御装置80と電気的に接続され、前後方向Xと平面視において交差する左右方向Yに延びた回転軸を中心として回転可能なローラ50であり、第1制御部81は、ローラ50を第1回転方向R1に回転させるように構成されており、第2制御部82は、ローラ50を第1回転方向R1とは逆の第2回転方向R2に回転させるように構成されている。ローラ50を用いることで、平坦な表面を安定して形成することができる。また、進行方向に応じてローラ50の回転方向を変えることにより、1つのローラで、造形槽20の前後方向Xの両側から、造形槽20内に安定して粉末材料90を敷き詰めることができる。したがって、前後方向Xにおける粉末材料90の敷きムラを一層軽減することができる。
本実施形態の三次元造形装置100によれば、左右方向Yから見た側面視において、造形槽20を正面として、第1供給・回収槽30が向かって左側にあり、第2供給・回収槽40が向かって右側にあるときに、ローラ50の第1回転方向R1は反時計回りの方向である。これにより、第1供給・回収槽30の粉末材料90がローラ50で下方から上方に向かって押し上げられ、第1貯留空間30Aに潜りこみにくくなる。そのため、第1供給・回収槽30から造形槽20に粉末材料90を安定して搬送することができる。また、本実施形態の三次元造形装置100によれば、左右方向Yから見た側面視において、造形槽20を正面として、第1供給・回収槽30が向かって左側にあり、第2供給・回収槽40が向かって右側にあるときに、ローラ50の第2回転方向R2は時計回りの方向である。これにより、第2供給・回収槽40の粉末材料90がローラ50で下方から上方に向かって押し上げられ、第2貯留空間40Aに潜りこみにくくなる。そのため、第2供給・回収槽40から造形槽20に安定して粉末材料90を搬送することができる。
本実施形態の三次元造形装置100によれば、ローラ50とラインヘッド62とが搭載されている支持部材70をさらに備え、前後方向移動機構72は、支持部材70をケーシング10に対して前後方向Xに移動させるように構成されている。ローラ50とラインヘッド62とを同じ(例えば単一の)支持部材70に搭載することで、三次元造形装置100の構造を簡素化して、部品点数や組み付け工数を削減することができる。また、三次元造形装置100の製造コストを低減することができる。
本実施形態の三次元造形装置100によれば、第1貯留空間30Aの容積と、第2貯留空間40Aの容積と、が同じである。これにより、造形槽20の前後方向Xの両側から、バランスよく粉末材料90を供給することができる。
本実施形態の三次元造形装置100によれば、第1貯留空間30Aの容積と第2貯留空間40Aの容積との合計が、造形空間20Aの容積よりも大きい。これにより、大きな三次元造形物を製造する場合であっても、造形の途中で粉末材料90を補充する必要がなく、造形が完了するまで安定して粉末材料90を供給することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述した実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上述した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上述した実施形態の一部を、他の変形態様に置き換えることも可能であり、上述した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
上述した実施形態では、第1工程および第2工程を各1回行うことにより、造形テーブル24の上に、一層分の断面形状の厚みで粉末材料90を敷き詰めていたが、これに限定されない。例えば、第1制御と第2制御とを実行する回数は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第1制御および/または第2制御を、複数回行ってもよい。また、第1制御で造形テーブル24の上に敷き詰める第1の厚みT1と、第2制御で敷き詰める第2の厚みT2とは、同じ厚みであってもよいし異なっていてもよい。また、第1制御および/または第2制御を複数回行うとき、第1の厚みT1および/または第2の厚みT2は、毎回同じであってもよいし各回で異なっていてもよい。
上述した実施形態では、敷詰部材が棒状の回転体(ローラ50)であったがこれに限定されない。敷詰部材は、回転不能であってもよい。敷詰部材は、例えば、ブレード、スキージ、ヘラ等の板状部材でもよい。
上述した実施形態では、三次元造形装置100は、吐出ヘッドとしてラインヘッド62を備えていたが、これに限定されない。例えば、吐出ヘッドとして、前後方向Xに直線状に配置された複数のノズルを有し、左右方向Yに移動可能に構成されたいわゆるシャトル型の吐出ヘッドを備えていてもよい。また、三次元造形装置100は、吐出ヘッドとして、硬化液以外の吐出液、例えば、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー液を吐出するインクヘッドをさらに備えていてもよい。
上述した実施形態では、ケーシング10に対して支持部材70を前後方向Xに相対的に移動させていたが、これに限定されない。例えば、支持部材70をケーシング10に固定し、支持部材70に対して造形槽20、第1供給・回収槽30および第2供給・回収槽40を前後方向Xに相対的に移動させてもよい。
上述した実施形態では、ローラ50は、ラインヘッド62と一体となって移動可能に構成されていたが、これに限定されない。ローラ50は、ラインヘッド62とは異なる支持部材に支持され、独立して移動可能に構成されていてもよい。また、ローラは1つでなく、複数であってもよい。