(本開示の基礎となった知見)
リチウム二次電池の負極には、SEI被膜が形成されることがある。負極にSEI被膜が形成されると、リチウム二次電池の内部抵抗が一時的に高まる。しかし、内部抵抗が一時的に高まった状態は、リチウム二次電池の放電により緩和又は解消できる。本発明者は、その放電を、充電運転及び/又は放電運転の前に実行することを思いついた。そのようにすれば、一時的に高まった内部抵抗を十分に低下させた状態で、リチウム二次電池の放電運転及び/又は充電運転を実行できる。本開示は、発明者のこのような知見に基づいている。
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係る制御方法は、
正極及び負極を含む二次電池であって前記二次電池の充電時において前記負極にリチウム金属が析出する二次電池、の制御方法であって、
前記二次電池の内部抵抗が第1閾値抵抗よりも大きいか否かを判定することと、
前記内部抵抗が前記第1閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、前記二次電池の第1放電を実行することと、
前記第1放電を実行した後に、前記二次電池の充電運転及び前記二次電池の放電運転の少なくとも一方を実行することと、を備える。
第1態様の判定により、二次電池の内部抵抗が一時的に高まった状態を検出できる。第1態様の第1放電により、その状態を緩和又は解消できる。第1態様では、その第1放電の後に充電運転及び放電運転の少なくとも一方を実行する。このため、第1態様によれば、内部抵抗を十分に低下させた状態で、二次電池の放電運転及び/又は充電運転を実行できる。
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る制御方法では、前記第1放電により、前記正極の容量の0%よりも大きく25%以下の容量が、前記二次電池から放電される。
第1放電により放電される容量を第2態様で規定されている範囲にすることは、内部抵抗を短時間で十分に低下できる第1放電を実現するのに適している。
本開示の第3態様において、例えば、第1態様又は第2態様に係る制御方法は、前記内部抵抗が前記第1閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、前記二次電池の第1放電及び前記二次電池の第1充電をこの順で実行することと、前記第1放電及び前記第1充電を実行した後に、前記充電運転としての第2充電及び前記放電運転としての第2放電の少なくとも一方を実行することと、を備える。ここで、前記第2充電は、前記第1充電よりも大きい充電電流での充電である。前記第2放電は、前記第1放電よりも大きい放電電流での放電である。
第3態様の第2充電として、大電流充電を実行できる。第3態様の第2放電として、大電流放電を実行できる。第3態様では、その第2充電及び/又は第2放電の前に、第1放電を実行する。このため、第3態様によれば、内部抵抗を十分に低下させた状態で、大電流充電及び/又は大電流放電を実行できる。
本開示の第4態様において、例えば、第1~第3態様のいずれか1つに係る制御方法は、制御装置を用いて実行され、前記制御装置は、前記二次電池の第3充電と、前記第3充電よりも大きい充電電流で前記二次電池を充電する前記二次電池の第2充電と、を実行できるように構成されており、前記制御方法は、前記第1放電を実行した後に、前記内部抵抗が第2閾値抵抗よりも大きいか否かを判定することと、前記内部抵抗が前記第2閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、前記充電運転として前記第3充電を実行することと、前記内部抵抗が前記第2閾値抵抗以下であると判定された場合に、前記充電運転として前記第2充電を実行することと、を備える。
第4態様によれば、内部抵抗が大きい場合には、第3充電を実行できる。このため、内部抵抗が大きい場合において、内部抵抗の大きさと充電電流の大きさとが相俟ってデンドライトの形成が促成される事態を回避できる。第4態様によれば、内部抵抗が小さい場合には、第2充電を実行できる。このため、内部抵抗の小ささによりデンドライトの形成が抑制され得る状況において、大電流充電により素早く二次電池を充電できる。
本開示の第5態様において、例えば、第1~第4態様のいずれか1つに係る制御方法は、制御装置を用いて実行され、前記制御装置は、前記二次電池の第3放電と、前記第3放電よりも大きい放電電流で前記二次電池を放電する前記二次電池の第2放電と、を実行できるように構成されており、前記制御方法は、前記第1放電を実行した後に、前記内部抵抗が第2閾値抵抗よりも大きいか否かを判定することと、前記内部抵抗が前記第2閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、前記放電運転として前記第3放電を実行することと、前記内部抵抗が前記第2閾値抵抗以下であると判定された場合に、前記放電運転として前記第2放電を実行することと、を備える。
第5態様によれば、内部抵抗が大きい場合には第3放電を実行できる。このため、内部抵抗が大きい場合に大電流放電を行うことに由来する不具合の発生を回避できる。具体的には、放電時には、電池電圧は、内部抵抗と電流値を掛け合わした値だけ低下する。内部抵抗が大きいときに大電流放電を行って電池電圧がシステムを稼動可能な電圧の下限値を下回った場合、システムが異常停止するおそれがある。また、そのような放電時の電池電圧の低下により、電池から取り出すことができる出力が大幅に低下することもありうる。しかし、第5態様によれば、そのような不具合の発生を回避できる。また、第5態様によれば、内部抵抗が小さい場合には、第2放電を実行できる。このため、内部抵抗が小さく上記不具合が発生し難い状況において、大電流放電により素早く二次電池を放電できる。
本開示の第6態様において、例えば、第1~第5態様のいずれか1つに係る制御方法は、前記内部抵抗が前記第1閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、前記二次電池の第1放電及び前記二次電池の第1充電をこの順で実行することと、前記第1放電及び前記第1充電を実行した後に、前記充電運転及び前記放電運転の少なくとも一方を実行することと、前記内部抵抗が前記第1閾値抵抗以下であると判定された場合に、前記第1放電及び前記第1充電を実行せずに、前記二次電池の第2充電及び前記二次電池の第2放電のうちの少なくとも一方を実行することと、を備える。ここで、前記第2充電は、前記第1充電よりも大きい充電電流での充電である。前記第2放電は、前記第1放電よりも大きい放電電流での放電である
本開示の第7態様において、例えば、第1~第6態様のいずれか1つに係る制御方法は、制御装置を用いて実行され、前記制御装置は、前記二次電池の第3充電と、前記第3充電よりも大きい充電電流で前記二次電池を充電する前記二次電池の第2充電と、を実行できるように構成されており、前記制御方法は、前記内部抵抗が前記第1閾値抵抗以下であると判定された場合に、前記第1放電を実行せずに、前記第2充電を実行することを備える。
本開示の第8態様において、例えば、第1~第7態様のいずれか1つに係る制御方法は、制御装置を用いて実行され、前記制御装置は、前記二次電池の第3放電と、前記第3放電よりも大きい放電電流で前記二次電池を放電する前記二次電池の第2放電と、を実行できるように構成されており、前記制御方法は、前記内部抵抗が前記第1閾値抵抗以下であると判定された場合に、前記第1放電を実行せずに、前記第2放電を実行することを備える。
第6態様及び第7態様の第2充電として、大電流充電を実行できる。第6態様及び第7態様によれば、内部抵抗の小ささによりデンドライトの形成が抑制され得る状況において、大電流充電により素早く二次電池を充電できる。第6態様及び第8態様の第2放電として、大電流放電を実行できる。第6態様及び第8態様によれば、内部抵抗が小さく上記不具合が発生し難い状況において、大電流放電により二次電池から大きな出力を取り出すことができる。
本開示の第9態様において、例えば、第1~第8態様のいずれか1つに係る制御方法では、前記内部抵抗の算出値が前記第1閾値抵抗よりも大きい場合に、前記内部抵抗が前記第1閾値抵抗よりも大きいと判定し、前記算出値は、前記二次電池の検出データから算出され、前記検出データは、前記二次電池の電圧の検出値及び前記二次電池の電流の検出値のうちの少なくとも一方を含む。
第9態様によれば、二次電池の内部抵抗を正確に算出できる。
本開示の第10態様において、例えば、第9態様に係る制御方法は、制御装置を用いて実行され、前記制御装置は、前記二次電池のパルス放電又はパルス充電であるパルス通電を実行できるように構成されており、前記算出値の算出に、前記パルス通電中の前記二次電池の電圧である閉回路電圧と、前記パルス通電中の前記二次電池の電流と、前記パルス通電を行う前の非通電時における前記二次電池の電圧である開回路電圧と、を用いる。
第10態様によれば、二次電池の内部抵抗を特に正確に算出できる。
本開示の第11態様において、例えば、第1~第10態様のいずれか1つに係る制御方法では、前記二次電池の温度が閾値温度よりも高いときにも、前記第1放電を実行する。
本発明者の検討によれば、二次電池の内部抵抗の一時的な高まりは、二次電池の通電がなされていない期間において、徐々に大きくなる。二次電池の温度が高いときには、この高まりは速いペースで大きくなる。このため、二次電池の温度が高いときには、この高まりがかなりの程度に達しているおそれがある。この点、第11態様では、二次電池の温度が高いときに第1放電を実行する。このようにすれば、二次電池の内部抵抗が一時的に高まった状態で二次電池の放電運転及び/又は充電運転を実行するのを回避できる。
本開示の第12態様において、例えば、第1~第11態様のいずれか1つに係る制御方法では、カウント時間が閾値時間よりも長いときにも、前記第1放電を実行する。ここで、前記カウント時間は、前回の前記二次電池の通電終了時点又は該通電終了時点よりも後の時点からの継続時間である。前回の前記二次電池の通電終了時点は、前回の前記二次電池の放電終了時点及び前回の前記二次電池の充電終了時点の後のほうを指す。
カウント時間が長いときには、二次電池の内部抵抗の一時的な高まりがかなりの程度に達しているおそれがある。この点、第12態様では、カウント時間が長いときに第1放電を実行する。このようにすれば、二次電池の内部抵抗が一時的に高まった状態で二次電池の放電運転及び/又は充電運転を実行するのを回避できる。
本開示の第13態様において、例えば、第12態様に係る制御方法では、前記カウント時間を示す本来記録されているべき記録値が記録部に記録されていないときにも、前記第1放電を実行する。
カウント時間を示す記録値が記録されていない場合、カウント時間が分からない。この場合、カウント時間が長く、二次電池の内部抵抗の一時的な高まりがかなりの程度に達しているおそれがある。この点、第13態様では、カウント時間を示す記録値が記録されていないときに第1放電を実行する。このようにすれば、二次電池の内部抵抗が一時的に高まった状態で二次電池の放電運転及び/又は充電運転を実行するのを回避できる。
本開示の第14態様において、例えば、第1~第13態様のいずれか1つに係る制御方法では、前記二次電池の完全放電状態において、前記負極の表面に残存するリチウム金属容量は、前記正極の容量の0%以上200%以下である。
第14態様の二次電池は、本開示に係る技術を適用可能な二次電池の一具体例である。
本開示の第15態様において、例えば、第1~第14態様のいずれか1つに係る制御方法は、前記内部抵抗が前記第1閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、前記二次電池の第1放電及び前記二次電池の第1充電をこの順で実行することを備え、前記第1充電により前記二次電池に充電される容量は、前記第1放電により前記二次電池から放電される容量の0倍よりも大きく2倍よりも小さい。
第1放電は、電池残存容量を低下させ、電池電圧を低下させ得る。また、第1放電により充電量が低下し過ぎると、主に正極の抵抗が高まり、二次電池の内部抵抗が高まることがある。しかし、第15態様の第1充電によれば、そのような電池電圧の低下及び/又は内部抵抗の高まりを抑制した状態で、二次電池の放電運転及び/又は充電運転を実行できる。
本開示の第16態様において、例えば、第1~第15態様のいずれか1つに係る制御方法では、前記第1放電及び前記充電運転が実行される場合、前記第1放電により前記二次電池から放電される容量は、前記充電運転により前記二次電池に充電される容量よりも小さく、前記第1放電及び前記放電運転が実行される場合、前記第1放電により前記二次電池から放電される容量は、前記放電運転により前記二次電池から放電される容量よりも小さい。
第16態様によれば、第1放電により二次電池のエネルギーが過度に放出されるのを防止できる。
本開示の第17態様に係る制御方法は、正極及び負極を含む二次電池であって前記二次電池の充電時において前記負極にリチウム金属が析出する二次電池、の制御方法であって、前記二次電池の内部抵抗の一時的な高まりを、前記二次電池の第1放電によって緩和又は解消することと、前記第1放電を実行した後に、前記二次電池の充電運転及び前記二次電池の放電運転の少なくとも一方を実行することと、を備える。
第17態様の第1放電によれば、内部抵抗を十分に低下させた状態で、二次電池の放電運転及び/又は充電運転を実行できる。
本開示の第18態様に係る電池システムは、正極及び負極を含む二次電池と、請求項1~17のいずれか一項に記載の制御方法を実行する制御装置と、を備える。
第18態様の電池システムによれば、内部抵抗を十分に低下させた状態で、二次電池の放電運転及び/又は充電運転を実行できる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。この実施の形態によって本開示が限定されるものではない。
本明細書では、第1、第2、第3・・・という序数詞を用いることがある。ある要素に序数詞が付されている場合に、より若番の同種類の要素が存在することは必須ではない。例えば、第2充電という用語は、第2充電とともに第1充電が必ず存在することを意として使用されているわけではない。
本明細書では、SOCという用語を用いることがある。SOCは、State Of Chargeの略語である。SOCは、電池の充電状態を示す指標である。本明細書では、SOCは、正極容量に対する充電量を指す。
本明細書では、SEI被膜という用語を用いることがある。SEIは、Solid Electrolyte Interphaseの略語である。SEI被膜は、非水電解質の成分の分解物による被膜である。
本明細書では、充電時において負極にリチウム金属が析出する二次電池を、リチウム二次電池と称することがある。本明細書では、リチウムイオン電池は、リチウム二次電池には含まれない。
(実施の形態1)
図1に、実施の形態1における電池システムの一例を示す。図1の例では、電池システム1000は、二次電池10と、制御装置100と、を備える。
二次電池10は、正極及び負極を含む。二次電池10では、充電時において、負極にリチウム金属が析出する。二次電池10の完全放電状態において、負極の表面に残存するリチウム金属容量は、例えば、正極の容量の0%以上200%以下である。
「負極の表面に残存するリチウム金属容量」は、負極の表面に残存するリチウム金属1g当たり3861mAhに相当する電気量の大きさを指す。リチウム電池の完全放電状態は、リチウム二次電池が使用される機器分野での所定の電圧範囲において、最も低い電圧までリチウム二次電池を放電した状態である。ここで、「最も低い電圧」は、放電に伴い著しく内部抵抗が増加する電圧を指す。例えば正極の活物質をコバルト酸リチウムとした場合、「最も低い電圧」は2.5V~3.0Vである。この場合、リチウム電池の完全放電状態は、リチウム二次電池の電圧が2.5V~3.0Vの範囲にある状態ということになる。正極活物質の種類により最も低い電圧は変わるが、「最も低い電圧」は、概ね1.5V~3.0Vの範囲の電圧である。換言すると、典型的には、リチウム電池の完全放電状態は、リチウム二次電池の電圧が1.5V~3.0Vの範囲にある状態である。
二次電池10は、リチウム金属負極を有する。リチウム金属負極の表面には、SEI被膜が形成され得る。二次電池10を、例えば55℃以上の高温雰囲気下で放置したり、長期間放置したりすると、SEI被膜の厚みは増加する。二次電池10の充放電時には、リチウムイオンはSEI被膜を通って移動する。このため、SEI被膜の厚みが増加すると、イオンの移動が妨げられ易くなり、二次電池10の内部抵抗が大きくなる。このため、SEI被膜の厚みの増加は、二次電池10の特性を低下させる要因となり得る。特に、SEI被膜の厚みの増加は、二次電池10の大電流充電特性及び大電流放電特性を低下させる要因となり得る。また、SEI被膜が厚く内部抵抗が大きいと、二次電池10の充電時に負極電位が過度に低下することがある。この過度の低下の程度は、大電流充電時には顕在化する。負極電位が過度に低下した状態で二次電池を充電すると、デンドライト状のリチウム金属が析出し易くなる。この析出は、二次電池10の容量の低下、内部短絡等の原因となり得る。内部短絡は、電池内部温度の異常昇温の要因となり得る。しかし、本開示に係る技術によれば、このような不利益が緩和又は解消され得る。
制御装置100は、制御方法を実行する。制御装置100は、例えば、プロセッサとメモリとにより、構成される。当該プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)である。当該プロセッサは、例えば、メモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで、制御方法を実行する。このようにして、制御装置100は、二次電池10を制御する。具体的には、制御装置100は、二次電池10の充電及び/又は放電を制御する。
一例では、図2に示すように、制御方法は、二次電池10の内部抵抗が第1閾値抵抗よりも大きいか否かを判定するステップS1001を備える。制御方法は、内部抵抗が第1閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、二次電池10の第1放電を実行するステップS1101を備える。制御方法は、第1放電を実行した後に、二次電池10の充電運転及び二次電池10の放電運転の少なくとも一方を実行するステップS1500を備える。ステップS1001の判定により、二次電池10の内部抵抗が一時的に高まった状態を検出できる。ステップS1101の第1放電により、その状態を緩和又は解消できる。この例では、その第1放電の後にステップS1500を実行する。このため、この例によれば、内部抵抗を十分に低下させた状態で、二次電池10の放電運転及び/又は充電運転を実行できる。
図2の例において充電運転を実行する場合、内部抵抗を十分に低下させた状態で充電運転を実行できる。このため、充電運転における負極電位の低下を抑制できる。このため、充電運転におけるデンドライトの形成を抑制できる。デンドライトの抑制により、二次電池10の容量の低下幅を縮小できる。このことには、二次電池10の寿命を延ばし得るというメリットがある。大電流充電を繰り返す用途においては、このメリットを特に享受し易い。
図2の例において放電運転を実行する場合、内部抵抗を十分に低下させた状態で放電運転を実行できる。このため、大電流放電時における二次電池10の電圧の低下を抑制でき、大きな電力を取り出し易くなる。また、通電中の二次電池10の電圧が電池システム1000を稼動可能な電圧の下限値を下回ることにより電池システム1000が異常停止する事態を回避し易くなる。
平均温度が高いほど、第1閾値抵抗を低くできる。二次電池10の充電量が大きいほど、第1閾値抵抗を低くできる。第1閾値抵抗は、固定された値であってもよい。
ステップS1101は、二次電池10の内部抵抗の一時的な高まりを、二次電池10の第1放電によって緩和又は解消するステップであり得る。この場合、制御方法は、二次電池10の内部抵抗の一時的な高まりを、二次電池10の第1放電によって緩和又は解消するステップS1101を備えると言える。第1放電を実行した後に、ステップS1500が実行される。
一例では、第1放電により、正極の容量の0%よりも大きく25%以下の容量が、二次電池10から放電される。第1放電により放電される容量をこの例で規定されている範囲にすることは、内部抵抗を短時間で十分に低下できる第1放電を実現するのに適している。第1放電により、正極の容量の5%以上20%以下の容量を、二次電池10から放電させてもよい。
一例では、第1放電及び充電運転が実行される場合、第1放電により二次電池10から放電される容量は、充電運転により二次電池10に充電される容量よりも小さい。第1放電及び放電運転が実行される場合、第1放電により二次電池10から放電される容量は、放電運転により二次電池10から放電される容量よりも小さい。この例によれば、第1放電により二次電池10のエネルギーが過度に放出されるのを防止できる。
一例では、図3及び4に示すように、制御方法は、内部抵抗が第1閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、二次電池10の第1放電のステップS1101及び二次電池10の第1充電のステップS1201をこの順で実行することを備える。制御方法は、第1放電のステップS1101及び第1充電のステップS1201を実行した後に、充電運転としての第2充電を実行するステップS1202及び放電運転としての第2放電を実行するステップS1102の少なくとも一方を備える。図3のフローチャートは、S1102の第2放電を実行する場合のフローチャートである。図4のフローチャートは、ステップS1202の第2充電を実行する場合のフローチャートである。この例の第2充電として、大電流充電を実行できる。この例の第2放電として、大電流放電を実行できる。この例では、その第2充電及び/又は第2放電の前に、第1放電を実行する。このため、この例によれば、内部抵抗を十分に低下させた状態で、大電流充電及び/又は大電流放電を実行できる。
なお、第1放電に続いて第1充電を実行するという技術は、図2の例等、何れの図の例にも適用可能である。
一例では、第1充電により二次電池10に充電される容量は、第1放電により二次電池10から放電される容量の0倍よりも大きく2倍よりも小さい。第1放電は、二次電池10の残存容量を低下させ、二次電池10の電圧を低下させ得る。また、第1放電により二次電池10の充電量が低下し過ぎると、主に正極の抵抗が高まり、二次電池10の内部抵抗が高まることがある。しかし、この例の第1充電によれば、そのような二次電池10の電圧の低下及び/又は内部抵抗の高まりを抑制した状態で、二次電池10の放電運転及び/又は充電運転を実行できる。この例の第1充電によれば、二次電池10の充電量は、第1放電の開始時点の値に近づく。第1充電により二次電池10に充電される容量は、第1放電により二次電池10から放電される容量の、1.5倍よりも小さくてもよく、1.2倍未満よりも小さくてもよく、1.1倍未満よりも小さくてもよい。第1充電により二次電池10に充電される容量は、第1放電により二次電池10から放電される容量の、0.5倍よりも大きくてもよく、0.8倍よりも大きくてもよく、0.9倍よりも大きくてもよい。第1充電により二次電池10に充電される容量は、第1放電により二次電池10から放電される容量と同じであってもよい。
一例では、制御方法は、制御装置100を用いて実行される。制御装置100は、二次電池10の第3充電と、第3充電よりも大きい充電電流で二次電池10を充電する二次電池10の第2充電と、を実行できるように構成されている。制御方法は、図5に示すように、第1放電のステップS1101を実行した後に、内部抵抗が第2閾値抵抗よりも大きいか否かを判定するステップS1002を備える。制御方法は、内部抵抗が第2閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、充電運転として第3充電を実行するステップS1203を備える。制御方法は、内部抵抗が第2閾値抵抗以下であると判定された場合に、充電運転として第2充電を実行するステップS1202を備える。二次電池10の内部抵抗が小さいと、二次電池10の充電時において、負極電位が低くなり難く、デンドライトが形成され難い。二次電池10の充電電流が小さいと、二次電池10の充電時において、二次電池10の負極電位が低くなり難く、デンドライトが形成され難い。この点、この例の第2充電として、大電流充電を実行できる。この例の第3充電として、小電流充電を実行できる。この例によれば、内部抵抗が大きい場合には、第3充電を実行できる。このため、内部抵抗が大きい場合において、内部抵抗の大きさと充電電流の大きさとが相俟ってデンドライトの形成が促成される事態を回避できる。この例によれば、内部抵抗が小さい場合には、第2充電を実行できる。このため、内部抵抗の小ささによりデンドライトの形成が抑制され得る状況において、大電流充電により素早く二次電池10を充電できる。
第2閾値抵抗は、第1閾値抵抗と同様の態様で設定され得る。第2閾値抵抗は、第1閾値抵抗と同じであってもよく、第1閾値抵抗よりも小さくてもよく、第1閾値抵抗よりも大きくてもよい。
一例では、制御方法は、制御装置100を用いて実行される。制御装置100は、二次電池10の第3放電と、第3放電よりも大きい放電電流で二次電池10を放電する二次電池10の第2放電と、を実行できるように構成されている。制御方法は、図6に示すように、第1放電のステップS1101を実行した後に、内部抵抗が第2閾値抵抗よりも大きいか否かを判定するステップS1002を備える。制御方法は、内部抵抗が第2閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、放電運転として第3放電を実行するステップS1103を備える。制御方法は、内部抵抗が第2閾値抵抗以下であると判定された場合に、放電運転として第2放電を実行するステップS1102を備える。この例によれば、内部抵抗が大きい場合には第3放電を実行できる。このため、内部抵抗が大きい場合に大電流放電を行うことに由来する不具合の発生を回避できる。具体的には、放電時には、二次電池10の電圧は、内部抵抗と電流値を掛け合わした値だけ低下する。内部抵抗が大きいときに大電流放電を行って二次電池10の電圧が電池システム1000を稼動可能な電圧の下限値を下回った場合、電池システム1000が異常停止するおそれがある。また、そのような放電時の電池電圧の低下により、二次電池10から取り出すことができる出力が大幅に低下することもありうる。しかし、この例によれば、そのような不具合の発生を回避できる。また、この例によれば、内部抵抗が小さい場合には、第2放電を実行できる。このため、内部抵抗が小さく上記不具合が発生し難い状況において、大電流放電により素早く二次電池10を放電できる。
一例では、制御方法は、図7及び8に示すように、内部抵抗が第1閾値抵抗よりも大きいと判定された場合に、二次電池10の第1放電のステップS1101及び二次電池10の第1充電のステップS1201をこの順で実行する。制御方法は、第1放電のステップS1101及び第1充電のステップS1201を実行した後に、充電運転及び放電運転の少なくとも一方を実行するステップS1500を備える。制御方法は、内部抵抗が第1閾値抵抗以下であると判定された場合、第1放電及び第1充電を実行しない。制御方法は、この場合、二次電池10の第2充電のステップS1202及び二次電池10の第2放電のステップS1102のうちの少なくとも一方を実行することを備える。ここで、第2充電は、第1充電よりも大きい充電電流での充電である。第2放電は、第1放電よりも大きい放電電流での放電である。図7のフローチャートは、内部抵抗が第1閾値抵抗以下であると判定された場合にステップS1102の第2放電を実行する場合のフローチャートである。図8のフローチャートは、内部抵抗が第1閾値抵抗以下であると判定された場合にステップS1202の第2充電を実行する場合のフローチャートである。この例の第2充電として、大電流充電を実行できる。このようにすれば、内部抵抗の小ささによりデンドライトの形成が抑制され得る状況において、大電流充電により素早く二次電池10を充電できる。この例の第2放電として、大電流放電を実行できる。このようにすれば、内部抵抗が小さく上記不具合が発生し難い状況において、大電流放電により二次電池10から大きな出力を取り出すことができる。
一例では、制御方法は、制御装置100を用いて実行される。制御装置100は、二次電池10の第3充電と、第3充電よりも大きい充電電流で二次電池10を充電する二次電池10の第2充電と、を実行できるように構成されている。制御方法は、図9に示すように、内部抵抗が第1閾値抵抗以下であると判定された場合に、第1放電を実行しない。制御方法は、その場合、第2充電を実行するステップS1202を備える。この例の第2充電として、大電流充電を実行できる。この例によれば、内部抵抗の小ささによりデンドライトの形成が抑制され得る状況において、大電流充電により素早く二次電池10を充電できる。
一例では、制御方法は、制御装置100を用いて実行される。制御装置100は、二次電池10の第3放電と、第3放電よりも大きい放電電流で二次電池10を放電する二次電池10の第2放電と、を実行できるように構成されている。制御方法は、図10に示すように、内部抵抗が第1閾値抵抗以下であると判定された場合に、第1放電を実行しない。制御方法は、その場合、第2放電を実行することを備える。この例の第2放電として、大電流放電を実行できる。この例によれば、内部抵抗が小さく上記不具合が発生し難い状況において、大電流放電により二次電池10から大きな出力を取り出すことができる。
一例では、内部抵抗の算出値が第1閾値抵抗よりも大きい場合に、内部抵抗が第1閾値抵抗よりも大きいと判定する。算出値は、二次電池10の検出データから算出される。検出データは、二次電池10の電圧の検出値及び二次電池10の電流の検出値のうちの少なくとも一方を含む。この例によれば、二次電池10の内部抵抗を正確に算出できる。この例の制御方法は、例えば、図11に示す電池システム1100を用いて実現できる。電池システム1100は、電池システム1000の構成要素に加え、検出部200を備える。検出部200は、上記検出データを取得する。内部抵抗の算出は、図12に示す工程S1301において実行される。工程1301は、工程S1001の前に実行される。
一例では、制御方法は、制御装置100を用いて実行される。制御装置100は、二次電池10のパルス放電又はパルス充電であるパルス通電を実行できるように構成されている。算出値の算出に、パルス通電中の二次電池10の電圧である閉回路電圧と、パルス通電中の二次電池10の電流と、パルス通電を行う前の非通電時における二次電池10の電圧である開回路電圧と、を用いる。この例によれば、二次電池10の内部抵抗を特に正確に算出できる。
一例では、検出部200は、二次電池10に電流を印加した状態において、二次電池10の端子間電圧を検出する。そのような検出部200の具体例を、図13を用いて説明する。この具体例では、検出部200は、電流印加部270と、電圧計測部220と、を含む。電流印加部270は、例えば電流源である。電圧計測部220は、例えば電圧計である。電流印加部270の出力電流がゼロであるとき、電圧計測部220は、パルス通電を行う前の非通電時における二次電池10の電圧である開回路電圧OCVを測定する。電流印加部270の出力電流がI(≠0)となってから一定時間経過後、電圧計測部220は、二次電池10の閉回路電圧CCVを測定する。上記一定時間が短過ぎることによる電圧測定の精度の低下を防止する観点から、上記一定時間を2~10秒程度にできる。二次電10の内部抵抗Rは、以下の式1で与えられる。
R=(OCV-CCV)/I ・・・(式1)
この具体例では、検出部200は、測定信号を生成する。この測定信号は、制御装置100に入力される。この測定信号は、電圧計測部220の計測結果と相関を有する信号であり得る。電流印加部270として、公知の構成を有する電流印加部が用いられ得る。電圧計測部220として、公知の構成を有する電圧計測部が用いられ得る。
別例では、検出部200は、二次電池10の端子間に電圧を印加した状態において、二次電池10を流れる電流を検出する。そのような検出部200の具体例を、図14を用いて説明する。この具体例では、検出部200は、電圧印加部280と、電流計測部210と、を含む。電圧印加部280は、例えば電圧源である。電流計測部210は、例えば電流計である。電圧印加部280が電圧を出力していないとき、すなわち電圧印加部280が抵抗ゼロの導線として振る舞うときにおける、電流計測部210の検出電流をI1とする。電圧印加部280が電圧V(≠0)を出力しているときにおける、電流計測部210の検出電流をI2とする。二次電10の内部抵抗Rは、以下の式2で与えられる。
R=V/(I1-I2) ・・・(式2)
この具体例では、検出部200は、測定信号を生成する。この測定信号は、制御装置100に入力される。この測定信号は、電流計測部210の計測結果と相関を有する信号であり得る。電圧印加部280として、公知の構成を有する電圧印加部が用いられ得る。電流計測部210として、公知の構成を有する電流計測部が用いられ得る。
式1及び式2では、Rは、直流内部抵抗DC-IRである。ただし、Rは、交流インピーダンスAC-IRであってもよい。
一例では、二次電池10の温度が閾値温度よりも高いときにも、ステップS1101の第1放電を実行する。本発明者の検討によれば、二次電池10の内部抵抗の一時的な高まりは、二次電池10の通電がなされていない期間において、徐々に大きくなる。二次電池10の温度が高いときには、この高まりは速いペースで大きくなる。このため、二次電池10の温度が高いときには、この高まりがかなりの程度に達しているおそれがある。この点、この例では、二次電池10の温度が高いときに第1放電を実行する。このようにすれば、二次電池10の内部抵抗が一時的に高まった状態で二次電池10の放電運転及び/又は充電運転を実行するのを回避できる。この例の制御方法は、例えば、図15に示す電池システム1200を用いて実現できる。電池システム1200は、電池システム1000の構成要素に加え、測定部300を備える。測定部300は、二次電池10の温度を測定する。一具体例では、測定部300は、二次電池10における外装缶の側面の部分の温度を測定する。「外装缶」は、図10のケース本体15に相当する。
二次電池10の温度は、測定部300が有する温度センサの検出値であり得る。この検出値は、現在の検出値であり得る。この検出値は、ある時点から現在までの検出値の平均値であり得る。上記ある時点は、一具体例では、二次電池10と電気的に接続されたリレー回路の前回の遮断時点である。上記ある時点は、別の具体例では、前回の二次電池10の通電終了時点である。前回の二次電池10の通電終了時点は、前回の二次電池10の放電終了時点及び前回の二次電池10の充電終了時点の後のほうを指す。上述の閾値温度は、例えば30~70℃であり、一具体例では55℃である。測定部300は、例えば、温度計である。測定部300を構成する温度計は、接触温度計であってもよく、非接触温度計であってもよい。測定部300を構成する温度計として、一般に公知の構成を有する温度計が用いられ得る。
一例では、カウント時間が閾値時間よりも長いときにも、ステップS1101の第1放電を実行する。ここで、カウント時間は、前回の二次電池10の通電終了時点又は該通電終了時点よりも後の時点からの継続時間である。前回の二次電池10の通電終了時点は、前回の二次電池10の放電終了時点及び前回の二次電池10の充電終了時点の後のほうを指す。カウント時間が長いときには、二次電池10の内部抵抗の一時的な高まりがかなりの程度に達しているおそれがある。この点、この例では、カウント時間が長いときに第1放電を実行する。このようにすれば、二次電池10の内部抵抗が一時的に高まった状態で二次電池10の放電運転及び/又は充電運転を実行するのを回避できる。この例の制御方法は、例えば、図16に示す電池システム1300を用いて実現できる。電池システム1300は、電池システム1000の構成要素に加え、記録部400を備える。記録部400は、上記カウント時間を記録する。記録部400に記録されているカウント時間が閾値時間よりも長いときに、第1充電を実行できる。
カウント時間のカウント開始時点は、一具体例では、二次電池10と電気的に接続されたリレー回路の前回の遮断時点である。カウント開始時点は、別の具体例では、前回の二次電池10の通電終了時点である。カウント時間は、典型的には、カウント開始時点から現在までの時間である。
上述の閾値時間は、例えば、1カ月である。上述の閾値時間を、二次電池10の温度によって変更することもできる。例えば、二次電池10の温度が35℃の場合、上記の閾値時間は、1カ月である。二次電池10の温度が高いほど上記の閾値時間を短くできる。上述の閾値時間は、固定された値であってもよい。
記録部400は、例えば、メモリである。具体的に、記録部400を構成するメモリは、半導体メモリであってもよく、磁気記録デバイスであってもよい。記録部400を構成するメモリとして、一般に公知の構成を有するメモリが用いられ得る。
一例では、カウント時間を示す本来記録されているべき記録値が記録部400に記録されていないときにも、ステップS1101の第1放電を実行する。カウント時間を示す記録値が記録されていない場合、カウント時間が分からない。この場合、カウント時間が長く、二次電池10の内部抵抗の一時的な高まりがかなりの程度に達しているおそれがある。この点、この例では、カウント時間を示す記録値が記録されていないときに第1放電を実行する。このようにすれば、二次電池10の内部抵抗が一時的に高まった状態で二次電池10の放電運転及び/又は充電運転を実行するのを回避できる。
記録値が電池システム1300に記録されていない場合としては、記録値が記録部400から消失された場合が例示される。
各例の技術の一部又は全部は、適宜組み合わされ得る。
(実施の形態2)
実施の形態2により、本開示に係る電池システム及び制御方法の具体例を説明する。実施の形態1の技術の一部又は全部と、実施の形態2の技術の一部又は全部とは、適宜組み合わされ得る。
以下では、図17A、17B及び17Cを参照しながら、実施の形態2の電池システムの例を説明する。以下では、同一又は類似の要素については、同一符号を付し、その説明を省略することがある。
図17Aに示す電池システム3000は、電気自動車(以下、EVと称することがある)5100に組み込まれている。EV5100は、電池システム3000と、電力変換部4100と、電力消費部4200と、接続部4500と、を含む。EV5100は、充電器6000に接続され得る。
この例では、説明の便宜上、電池システム3000を、電力変換部4100、電力消費部4200、充電器6000等の要素と区別している。しかし、このことにより、電池システムの概念が限定的に解釈されるべきではない。電池システムを、これらの要素を含むシステムとして解釈することも可能である。
電池システム3000は、複数の二次電池セル3010と、電流センサ3210と、複数の電圧センサ3220と、複数の温度センサ3300と、電池ECU(Electrical Control Unit)3100と、リレー回路3500と、を含む。
二次電池セル3010は、リチウム二次電池セルである。複数の二次電池セル3010は、直列に接続されている。これにより、二次電池のモジュールが構成されている。以下では、このモジュールを、二次電池モジュール3010と称することがある。二次電池モジュール3010は、その全体で組み電池を構成している。
電流センサ3210は、二次電池セル3010を流れる電流を検出する。1つの二次電池セル3010につき1つの電圧センサ3220及び1つの温度センサ3300が対応付けられている。このことは、各二次電池セル3010の電圧及び温度を測定することを可能にしている。ただし、複数の二次電池セル3010に対して1つの電圧センサ3220及び1つの温度センサ3300を対応付けてもよい。
リレー回路3500は、電流センサ3210と二次電池セル3010との間に設けられている。リレー回路3500は、電流センサ3210と二次電池セル3010とを電気的に切り離すことができる。
電池ECU3100は、電流センサ3210、各電圧センサ3220、各温度センサ3300、リレー回路3500、電力変換部4100、充電器6000等を、電子回路を用いて制御する。
電力変換部4100は、インバータと、DC-DCコンバータと、を含む。このインバータは、直流電力を交流電力に変換することも交流電力を直流電力に変換することもできる双方向インバータである。
電力消費部4200は、電力負荷と、モーターと、を含む。
充電器6000は、放電部6100と、接続部6200と、を含む。放電部6100としては、電子負荷、抵抗放電器等が例示される。
EV5100の電池ECU3100は、電流センサ3210、電力変換部4100、充電器6000等と通信可能である。図17Aでは、図面の便宜上、電池ECU3100が1つの電圧センサ3220及び1つの温度センサ3300と通信可能な様が描かれている。実際には、電池ECU3100は、各電圧センサ3220及び各温度センサ3300と通信可能である。また、便宜上図示は省略されているが、電池ECU3100はリレー回路3500とも通信可能である。EV5100の電力変換部4100は、電力消費部4200と通信可能である。これらの通信は、有線又は無線による通信経路を介して実施され得る。
充電器6000は、EV5100の二次電池モジュール3010を充電できる。この充電を行う場合、接続部6200と接続部4500とが接続される。充電器6000から接続部6200及び4500を介して電力変換部4100に交流電力が流れる。電力変換部4100のインバータにより、交流電力が直流電力に変換される。その後、電力変換部4100のDC-DCコンバータにより、直流電力の電圧が二次電池モジュール3010の充電に適した大きさに変換される。DC-DCコンバータにより得られた直流電力が、二次電池モジュール3010に供給される。こうして、二次電池モジュール3010が充電される。
EV5100の電池システム3000は、電力消費部4200に電力を供給できる。この電力供給を行う場合、二次電池モジュール3010から電力変換部4100に直流電力が供給される。電力変換部4100のDC-DCコンバータにより、直流電力の電圧の大きさが変換される。電力変換部4100のインバータにより、DC-DCコンバータにより得られた直流電力が交流電力に変換される。得られた交流電力が、電力消費部4200に供給される。電力消費部4200のモーターは、この交流電力を用いて図示しないタイヤを回転させる。電力消費部4200の電力負荷は、この交流電力を用いて動作する。
EV5100の電池システム3000は、充電器6000に電力を放出できる。この電力放出を行う場合、接続部6200と接続部4500とが接続される。二次電池モジュール3010から電力変換部4100に直流電力が供給される。電力変換部4100のDC-DCコンバータにより、直流電力の電圧の大きさが変換される。電力変換部4100のインバータにより、DC-DCコンバータにより得られた直流電力が交流電力に変換される。得られた交流電力が、接続部4500及び6200を介して充電器6000に流れる。充電器6000の放電部6100において、交流電力が消費される。
図17Bに示すように、電池システム3000は、ハイブリッドカー(以下、HVと称することがある)5200にも組み込まれ得る。HV5200は、電池システム3000と、電力変換部4100と、電力消費部4700と、エンジンECU4300と、エンジン4400と、を含む。
エンジンECU4300は、電子回路を用いてエンジン4400を制御する。エンジン4400は、図示しないタイヤを回転させる。
電力消費部4700は、電力負荷と、モーターと、を含む。電力負荷は、二次電池モジュール3010の放電時において、その放電電力を消費するための放電部として機能する。電力負荷は、例えば、電動エアコン、リアデフォッガ、電動ヒーター、予め設置された抵抗放電器等である。なお、電力消費部4200の電力負荷も、上記のような放電部として機能するものであってよい。
HV5200の電池ECU3100は、電流センサ3210、各電圧センサ3220、各温度センサ3300、リレー回路3500、電力変換部4100、エンジンECU4300等と通信可能である。電力変換部4100は、電力消費部4700と通信可能である。エンジンECU4300は、エンジン4400と、通信可能である。これらの通信は、有線又は無線による通信経路を介して実施され得る。
HV5200の電池システム3000は、電力消費部4700に電力を供給できる。この電力供給の態様は、EV5100の電池システム3000から電力消費部4200への電力供給の態様と同様である。
HV5200の電力消費部4700のモーターは、回生運転を行うことができる。具体的には、HV5200においてブレーキがかけられた場合、このモーターは、回生運転により、自身から電力変換部4100に交流電力を供給する。電力変換部4100のインバータにより、交流電力が直流電力に変換される。電力変換部4100のDC-DCコンバータにより、直流電力の電圧が二次電池モジュール3010の充電に適した大きさに変換される。DC-DCコンバータにより得られた直流電力が、二次電池モジュール3010に供給される。こうして、二次電池モジュール3010が充電される。このように、電力消費部4700のモーターは、回生運転時に、充電器として機能する。つまり、電力消費部4700は、電力生成部としても機能する。
図17Cに示すように、電池システム3000は、プラグインハイブリッドカー(以下、PHVと称することがある)5300にも組み込まれ得る。PHV5300は、電池システム3000と、電力変換部4100と、電力消費部4700と、エンジンECU4300と、エンジン4400と、接続部4500と、を含む。
充電器6000は、PHV5300の二次電池モジュール3010を充電できる。この充電態様は、充電器6000からEV5100の二次電池モジュール3010への充電態様と同様である。
PHV5300の電池システム3000は、電力消費部4700に電力を供給できる。この電力供給の態様は、HV5200の電池システム3000から電力消費部4700への電力供給の態様と同様である。
PHV5300の電池システム3000は、充電器6000に電力を放出できる。この電力放出の態様は、EV5100の電池システム3000から充電器6000への電力放出の態様と同様である。
PHV5300の電力消費部4700のモーターは、回生運転を行うことができる。この回生運転の態様は、HV5200の電力消費部4700のモーターの回生運転の態様と同様である。
図1の二次電池10は、図17A、17B及び17Cの1つの二次電池セル3010に対応し得る。二次電池10は、複数の二次電池セル3010に対応し得る。二次電池10は、全ての二次電池セル3010に対応し得る。
図1の制御装置100は、図17A、17B及び17Cの電池ECU3100により実現され得る。図14の記録部400は、電池ECU3100により実現され得る。
図11の検出部200は、図17A、17B及び17Cの電流センサ3210を有し得る。検出部200は、1つの電圧センサ3220を有し得る。検出部200は、複数の電圧センサ3220を有し得る。検出部200は、全ての電圧センサ3220を有し得る。
図13の測定部300は、図17A、17B及び17Cの1つの温度センサ3300を有し得る。測定部300は、複数の温度センサ3300を有し得る。測定部300は、全ての温度センサ3300を有し得る。
図17A及び図17Cの例では、二次電池モジュール3010において第1放電が実行された場合、放電された電力は、放電部6100で消費され得る。図17B及び図17Cの例では、二次電池モジュール3010において第1放電が実行された場合、放電された電力は、電力消費部4700の電力負荷で消費され得る。
図17A~17Cから理解されるように、二次電池モジュール3010の放電時の電力放出先として機能する放電部は、充電器6000に含まれていてもよく、電力消費部4200又は4700に含まれていてもよい。二次電池モジュール3010の充電時の電力供給元として機能する充電器は、充電器6000であってもよく、電力消費部4200又は4700に含まれていてもよい。より一般化すると、放電部は、車5100,5200及び5300の内部にあってもよく、車5100,5200及び5300の外部にあってもよい。充電器についても同様である。電池ECU3100の他に、エンジンECU4300のようなECUがあってもよく、そのようなECUがなくてもよい。接続部4500及び6200から見て充電器6000側にECUがあってもよい。複数の二次電池セル3010は、組み電池を構成していてもいなくてもよい。電池システム3000が有する二次電池の数は、複数であっても1つであってもよい。
以下、実施の形態2の制御方法を、図18のフローチャートを参照しながら説明する。以下では、図17Aの例に制御方法を適用する場合について、説明する。ただし、この制御方法は、図17B及び17Cの例にも適用可能である。
図18の制御方法では、大電流充電が行われる場合がある。先に説明したとおり、二次電池の内部抵抗が高いときに大電流充電を行うと、デンドライトが形成され易い。そこで、この制御方法では、第1放電を行うことがある。第1放電は、内部抵抗を下げ、デンドライトの形成を抑制し得る。ただし、第1放電を実行することは、二次電池の内部のエネルギーの一部を放出することを意味する。そのため、この制御方法では、第1放電は、その必要性が高い場合に実行される。その必要性は、トリガ条件1及びトリガ条件2により判定される。
ステップS2001において、充電器6000をEV5100に接続し、リレー回路3500をオンし、電池ECU3100を起動させる。
次に、ステップS2002において、前回のリレー回路3500の遮断時点から現在までの経過時間と、前回のリレー回路3500の遮断時点から現在までの二次電池の平均温度と、を確認する。この例では、経過時間及び平均温度は、電池ECU3100に記録されている。この確認後に、フローはステップS2003に進む。
先に説明したとおり、図1の二次電池10は、1つの二次電池セル3010に対応し得る。二次電池10は、複数の二次電池セル3010に対応し得る。二次電池10は、二次電池モジュール3010全体に対応し得る。このため、ステップS2002で確認する平均温度は、1つの二次電池セル3010の平均温度であり得る。ステップS2002で確認する温度は、複数の二次電池セル3010の平均温度の平均値であり得る。ステップS2002で確認する温度は、全ての二次電池セル3010の平均温度の平均値であり得る。要するに、二次電池10が1つの二次電池セル3010によって構成される場合、その二次電池セル3010の平均温度を、ステップS2002の平均温度として採用できる。二次電池10が複数の二次電池セル3010によって構成される場合、それらの二次電池セル3010の平均温度の平均値を、ステップS2002の平均温度として採用できる。また、二次電池10が複数の二次電池セル3010によって構成される場合、1つの二次電池セル3010の平均温度を代表値として取得し、その代表値をステップS2002の平均温度として採用してもよい。
(1.トリガ条件1 経過期間による判定)
ステップS2003において、上記経過時間が閾値時間よりも長いか否かを判断する。この例では、閾値時間は、上記平均温度に応じて変更される。平均温度が高いほど閾値時間を短くできる。一具体例では、平均温度が25℃である場合、閾値時間は3カ月程度である。平均温度が35℃である場合、閾値時間は1カ月程度である。平均温度が45℃である場合、閾値時間は14日程度である。電池システム3000は、平均温度と閾値時間との対応関係を表す定数表を有し得る。具体的には、電池ECU3100は、この定数表を有し得る。ステップS2003において、経過時間が閾値時間よりも長いと判定された場合は、フローはステップS2004に進む。一方、経過時間が閾値時間以下であると判定された場合は、フローはステップS2101に進む。
上記平均温度が異常に高い場合には、フローをステップS2007に進め、二次電池セル、具体的にはモジュール3010の第1放電を実行してもよい。例えば、上記平均温度が異常閾値温度よりも大きいときに、第1放電を実行することができる。異常閾値温度は、例えば、55℃以上である。
ステップS2004において、二次電池セル3010の第1パルス放電が実行される。具体的には、二次電池モジュール3010の第1パルス充電が実行される。第1パルス放電は、例えば、0.1Cレート以上の電流で、2~10秒間程度実行される。第1パルス放電の際の放電電流の具体例は、0.1~1Cレートである。ここで、1Cレートは、1時間で二次電池が完全に放電される電流を指す。第1パルス充電の実行後に、フローは、ステップS2005に進む。
ステップS2005において、二次電池の内部抵抗が算出される。内部抵抗は、例えば、図13の測定系及び上記の式1に基づいて算出される。内部抵抗の算出は、電池ECU3100で行われてもよく、充電器6000で行われてもよい。内部抵抗の算出後に、フローは、ステップS2006に進む。
先に説明したとおり、図1の二次電池10は、1つの二次電池セル3010に対応し得る。二次電池10は、複数の二次電池セル3010に対応し得る。二次電池10は、二次電池モジュール3010全体に対応し得る。このため、1つの二次電池セル3010の開回路電圧OCV及び閉回路電圧CCVを測定し、これらの電圧OCV及びCCVからステップS2005で用いる内部抵抗を算出してもよい。1つの二次電池セル3010の開回路電圧OCV及び閉回路電圧CCVを特定し、これらの電圧OCV及びCCVから内部抵抗を算出し、同様の測定及び算出を他の二次電池セル3010についても実行し、得られた内部抵抗の合計値をステップS2005の内部抵抗として採用してもよい。もちろん、全ての二次電池セル3010の内部抵抗の合計値をステップS2005の内部抵抗として採用することもできる。複数の二次電池セルが構成するモジュール3010の開回路電圧OCV及び閉回路電圧CCVを特定し、これらの電圧OCV及びCCVからモジュールの内部抵抗を算出し、この内部抵抗をステップS2005の内部抵抗として採用してもよい。要するに、二次電池10が1つの二次電池セル3010によって構成される場合、その二次電池セル3010の内部抵抗を、ステップS2005の内部抵抗として採用できる。二次電池10が複数の二次電池セル3010によって構成される場合、それらの二次電池セル3010の内部抵抗の合計値を、ステップS2005の内部抵抗として採用できる。二次電池10が複数の二次電池セル3010によって構成される場合、それらのセルが構成するモジュール3010の開回路電圧OCV及び閉回路電圧CCVを特定し、これらの電圧OCV及びCCVからモジュールの内部抵抗を算出し、この内部抵抗をステップS2005の内部抵抗として採用してもよい。二次電池10が複数の二次電池セル3010によって構成される場合、1つの二次電池セル3010の開回路電圧OCV及び閉回路電圧CCVを特定し、これらの電圧OCV及びCCVからそのセルの内部抵抗を代表値として算出し、その代表値をステップS2005の内部抵抗として採用してもよい。
(2.トリガ条件2 電池内部抵抗による判定)
ステップS2006において、ステップS2005で算出された内部抵抗が第1閾値抵抗よりも大きいか否かを判定する。この例では、第1閾値抵抗は、上記平均温度及び二次電池の充電量に応じて変更される。平均温度が高いほど、第1閾値抵抗を低くできる。二次電池の充電量が大きいほど、第1閾値抵抗を低くできる。電池システム3000は、平均温度及び/又は充電量と第1閾値抵抗との対応関係を表す定数表を有し得る。具体的には、電池ECU3100がこの定数表を有し得る。内部抵抗が第1閾値抵抗よりも大きいと判定された場合は、フローはステップS2007に進む。一方、内部抵抗が第1閾値抵抗以下であると判定された場合は、フローはステップS2102に進む。
(3.第1放電)
ステップS2007において、二次電池セル3010の第1放電が実行される。具体的には、二次電池モジュール3010の第1放電が実行される。図18から理解されるように、第1放電は、上記1.及び2.の判定によりその必要性があると判定された場合に実行される。この例では、第1放電による電力の放出先は、充電器6000の放電部6100である。この例では、第1放電により、所定の電気量が放電される。第1放電の放電電流は、例えば2Cレートである。放電電流をこの程度に大きくすることにより、短時間の第1放電により二次電池セル3010の内部抵抗を低下させることができる。ただし、放電電流が大きいと、二次電池セル3010及び/又は放電部6100の温度が上昇し易い。また、放電部6100の放電能力には上限がある。当業者であれば、これらを考慮して放電電流を適度に低い値に設定できる。この例では、第1放電により、二次電池セル3010の正極の容量の0%よりも大きく25%以下の容量が、二次電池セル3010から放出される。このようにすれば、短時間で二次電池セル3010の内部抵抗を低下させることができる。第1放電により、二次電池セル3010の正極の容量の5%以上20%以下の容量を、二次電池セル3010から放出させてもよい。一具体例では、第1放電により、二次電池セル3010の正極の容量の10%の容量が、二次電池セル3010から放出される。この例では、第1放電の途中で二次電池セル又はモジュール3010の電圧が低下して下限値に達した場合、設定されていた放電量が放電されていなくても、第1放電を終了する。第1放電の後に、フローは、ステップS2008に進む。
ステップS2008において、二次電池セル3010の第1充電が実行される。具体的には、二次電池モジュール3010の第1充電が実行される。第1充電の充電電流は、第1放電の放電電流よりも小さい。現実には、第1放電を行っても内部抵抗が十分には低下せず、内部抵抗の一時的な高まりが十分には緩和されていない状態で第1充電を行う場合があり得る。しかし、第1充電の電流値を第1放電の電流値よりも小さくすれば、そのような場合に被る不利益を小さくできる。第1充電の充電電流は、例えば0.5Cレートである。例えば、第1充電により、二次電池セル3010の正極の容量の0%よりも大きく25%以下の容量が、二次電池セル3010に充電される。第1充電により、二次電池セル3010の正極の容量の5%以上20%以下の容量を、二次電池セル3010に充電してもよい。一具体例では、第1充電により、二次電池セル3010の正極の容量の10%の容量が、二次電池セル3010に充電される。第1充電の後に、フローは、ステップS2009に進む。
ステップS2009において、二次電池セル3010の第2パルス放電が実行される。具体的には、二次電池モジュール3010の第2パルス放電が実行される。第2パルス放電は、ステップS2004の第1パルス放電と同様である。第2パルス充電の実行後に、フローは、ステップS2010に進む。
ステップS2010において、ステップS2005と同様に、二次電池の内部抵抗が算出される。内部抵抗の算出後に、フローは、ステップS2011に進む。
(4.大電流通電の可否の判定)
ステップS2011において、ステップS2010で算出された内部抵抗が第2閾値抵抗よりも大きいか否かを判定する。この例では、第2閾値抵抗は、上記平均温度及び二次電池の充電量に応じて変更される。平均温度が高いほど、第2閾値抵抗を低くできる。二次電池の充電量が大きいほど、第2閾値抵抗を低くできる。電池システム3000は、平均温度及び/又は充電量と第2閾値抵抗との対応関係を表す定数表を有し得る。具体的には、電池ECU3100は、この定数表を有し得る。この例では、第2閾値抵抗は、第1閾値抵抗と同じである。内部抵抗が第2閾値抵抗よりも大きいと判定された場合は、フローはステップS2012に進む。一方、内部抵抗が第2閾値抵抗以下であると判定された場合は、フローはステップS2103に進む。
ステップS2101、ステップS2102及びステップS2103において、二次電池セル3010の第2充電が許可される。この例では、電池ECU3100が、充電器6000に対して、シグナルを送信することによってこの許可を行う。この許可が行われた後には、二次電池セル3010の第2充電が実行される。具体的には、二次電池モジュール3010の第2充電が実行される。この例では、第2充電は、急速充電である。
ステップS2012において、二次電池セル3010の第3充電が許可される。この例では、電池ECU3100が、充電器6000に対して、シグナルを送信することによってこの許可を行う。この許可が行われた後には、二次電池セル3010の第3充電が実行される。具体的には、二次電池モジュール3010の第3充電が実行される。この例では、第3充電は、通常の電流での充電である。ステップS2012は、急速充電を禁止するステップであるとも言える。第3充電の充電電流は、第2充電の充電電流よりも小さい。
本発明者の検討によると、二次電池の負極におけるSEI被膜の厚みは、二次電池の通電がなされていない期間において、徐々に大きくなる。二次電池の温度が高いときには、この厚みは速いペースで大きくなる。二次電池の温度が高いときには、この厚みがかなりの程度に達している可能性がある。本発明者の検討によると、上記のようなSEI被膜の厚みの変化により、二次電池の内部抵抗が、以下にように変化する。二次電池の内部抵抗の一時的な高まりは、二次電池の通電がなされていない期間において、徐々に大きくなる。二次電池の温度が高いときには、この高まりは速いペースで大きくなる。このため、二次電池の温度が高いときには、この高まりがかなりの程度に達している可能性がある。
図18の例では、ステップS2003のトリガ条件1は、前回のリレー回路3500の遮断時点からの経過時間に基づいている。ステップS2006のトリガ条件2は、二次電池の内部抵抗に基づいている。上記のようなSEI被膜の厚み及び内部抵抗の変化の態様を考慮すると、トリガ条件1及び2に基づいて第1放電を行うことは、SEI被膜の厚みの増加により内部抵抗が増加した場合に第1放電を行うことに適している。このようにすることは、内部抵抗を効果的に低下させ得るタイミングで第1放電を実行することに寄与する。
一方、図18の例では、二次電池の内部抵抗に基づいて、ステップS2011の「4.大電流通電の可否を判定」を行っている。ステップS2011において内部抵抗が第2閾値抵抗よりも大きいと判定された場合には、内部抵抗が大きい原因がSEI被膜の厚み以外にあることが予想される。
図18の例では、ステップS2006及びステップS2011の2回にわたり、内部抵抗に基づいた判定を行っている。このようにすれば、実用的な頻度で第1放電を実行できる。また、このようにすれば、図18のフローチャートに基づく制御が過度に長期化するのを回避できる。ただし、SEI被膜の厚みが原因で内部抵抗が高まっていることが明らかである場合には、ステップS2006及びステップS2011及びこれらに関連する内部抵抗の計算の一部又は全部を省略してもよい。
以下、本開示を実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)正極の作製
正極活物質として、Li、Ni、Co及びAlを含有するリチウム含有遷移金属酸化物(NCA)を準備した。導電材として、アセチレンブラック(AB)を準備した。結着材として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。正極集電体として、アルミニウム箔を準備した。リチウム含有遷移金属酸化物と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンとを、混合した。この混合は、NCA:AB:PVdF=95:2.5:2.5の質量比で行った。得られた混合物に、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて撹拌した。こうして、正極合材スラリーを調製した。次に、得られた正極合材スラリーをアルミニウム箔の両面に塗布した後、乾燥して、ローラーを用いて正極合材の塗膜を圧延した。最後に、得られた正極集電体と正極合材との積層体を、所定の電極サイズに切断した。このようにして、正極集電体の両面に正極合材層を備える正極を作製した。
(2)負極の作製
厚み10μmの電解銅箔を準備した。この電解銅箔を、所定の電極サイズに切断した。このようにして、負極を作製した。
(3)非水電解質の調製
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを、混合した。この混合は、EC:DMC=3:7の容積比で行った。得られた混合溶媒に、LiB(C6F5)4を0.5モル/L、LiPF6を1モル/Lとなるようにそれぞれ溶解させた。こうして、液体の非水電解質を調製した。
(4)電池の作製
セパレータとして、ポリエチレン薄膜を準備した。Al層を備えるラミネートシートで形成された、袋状の外装体を準備した。上記(1)で得られた正極に、Al製のタブを取り付けた。上記(2)で得られた負極に、Ni製のタブを取り付けた。不活性ガス雰囲気中で、正極と負極とを上記ポリエチレン薄膜を介して渦巻状に捲回した。こうして、捲回型の電極体を作製した。上記外装体に、得られた電極体を収容し、上記(3)で得られた非水電解質を注入し、その後、外装体を封止した。このようにして、リチウム二次電池を作製した。
上記(4)で得られたリチウム二次電池に対し、長期保存を想定した放置を行った。具体的には、このリチウム二次電池を、55℃雰囲気下に6日以上放置し、その後、室温すなわち25℃雰囲気下に1時間以上放置した。これらの放置前におけるリチウム二次電池の内部抵抗と、これらの放置後におけるリチウム二次電池の内部抵抗と、を測定した。表1に示すように、放置前の内部抵抗に対する放置後の内部抵抗のパーセンテージは208%であった。55℃の保存により、内部抵抗が107%増加していたことが確認された。この内部抵抗の増加は、二次電池の負極におけるSEI被膜の厚みの増加に起因していると思われる。なお、内部抵抗の測定は、図13の測定系及び上記の式1を用いて行った。この点は、後述の実施例2及び比較例1についても同様である。
55℃及び室温での保存後の上記電池を、2C-レートで270秒間放電した。この放電は、第1放電に対応する。次に、この電池を、0.5C-レートで1080秒間充電した。この充電は、第1充電に対応する。これにより、この電池の充電状態を、放置直後の充電状態へ復帰させた。つまり、これにより、この電池のSOCを、第1放電の開始時点のSOCに戻した。次に、この電池に対して、大電流充電を模擬した試験を実施した。具体的には、この電池を、2C-レートの電流値で30s間充電した。この充電は、第2充電に対応する。充電中の電池の電圧を計測及び記録した。
[実施例2]
実施例1と同手順で作成した電池を、55℃雰囲気下に7日以上放置し、その後、室温すなわち25℃雰囲気下に1時間以上放置した。これらの放置前の内部抵抗に対する放置後の内部抵抗のパーセンテージは100%を上回っていた。実施例2の電池でも、実施例1の電池と同様、放置により二次電池の負極におけるSEI被膜の厚みが増加したと考えられる。これらの放置後の電池を、2C-レートで270秒間放電した。この放電は、第1放電に対応する。次に、この電池を、2C-レートで30秒間充電した。この充電は、第2充電に対応する。充電中の電池の電圧を計測及び記録した。
[比較例1]
実施例1と同手順で作成した電池を、55℃雰囲気下に7日以上放置した。放置前の内部抵抗に対する放置後の内部抵抗のパーセンテージは100%を上回っていた。比較例1の電池でも、実施例1の電池と同様、放置により二次電池の負極におけるSEI被膜の厚みが増加したと考えられる。この放置後に、この電池を、室温すなわち25℃雰囲気下で1時間以上さらに放置した。この放置後、直ちに2C-レートで30s間充電を行った。この充電は、第2充電に対応する。充電中の電池の電圧を計測及び記録した。
実施例1、実施例2及び比較例1について、第2充電の開始から1秒経過後の電池の開回路電圧OCV及び閉回路電圧CCVの差分を測定した。表2に、この差分を示す。表2に、比較例1のこの差分に対する実施例1、実施例2及び比較例1の同差分のパーセンテージを、併せて示す。
実施例1、実施例2及び比較例1の放置条件では、正極抵抗の変化は僅かであると考えられる。このため、表2の上記差分が小さいことは、SEI被膜の形成に伴う内部抵抗の増加幅が大きいことを示している。また、このことは、第2充電中の負極電位の過渡的な低下幅が大きいことを示している。
実施例1では、比較例1に比べ、上記差分が45mV以上低下し、上記パーセンテージが30%以上低下している。実施例2では、比較例1に比べ、上記差分が21mV以上低下し、上記パーセンテージが16%以上低下している。これらの結果から、第1放電により、内部抵抗の増加幅及び負極電位の過渡的な低下幅が縮小されていることが把握される。
(検証実験等)
先に述べたとおり、リチウム二次電池の負極電位が低い場合には、充電時にデンドライトが形成され易い。本発明者は、この事実を確認するための、第1の検証実験を行った。具体的には、市販のリチウムイオン電池の電解液及び正極と、リチウム金属負極と、を組み合わせることによって、リチウム二次電池を2つ作製した。一方のリチウム二次電池を、通常の電流で充電した。他方のリチウム二次電池を、通常の4倍の電流で充電した。
図19Aに、通常の電流で充電したリチウム二次電池のリチウム金属負極の電子顕微鏡画像を示す。図19Bに、通常の4倍の電流で充電したリチウム二次電池のリチウム金属負極の電子顕微鏡画像を示す。図19A及び図19Bの画像は、倍率を5000倍として取得したものである。後者の充電では、前者の充電に比べて、充電電流が大きいため、負極電位の低下幅が大きい。図19A及び図19Bに示されているように、その後者の充電では、前者の充電に比べて、針状体が顕著に発生している。このことから、負極電位の低下幅が大きいと、デンドライト状のリチウム金属が増加し易いことが分かる。
二次電池の充電時における負極電位の低下幅は、充電電流を小さくすると、小さくなる。事実、特許文献2には、充電電流を0.5mA/cm2以下に設定することでデンドライトを抑制することが記載されている。しかし、そのようにすると、充電に要する時間が長くなる。これでは、二次電池のユーザーの利便性が損なわれる。これを考慮すると、負極電位の低下幅を、別のアプローチで小さくすることが望ましい。
そこで、本発明者は、二次電池の内部抵抗を小さくすることにより、負極電位の低下幅を小さくすることを検討した。検討を通じ、本発明者は、二次電池の内部抵抗は、一時的に高まることがあることを見出した。
本発明者は、負極に形成されるSEI被膜が二次電池の内部抵抗が一時的に高まった状態を招いている、一方、この状態は二次電池の放電により緩和又は解消されるとの仮説を立てた。具体的には、以下のような仮説を立てた。二次電池が、高温雰囲気下で放置されたり、長時間放置されたりする。この放置により、負極の表面におけるSEI被膜の厚みが増加する。この厚みの増加により、充放電時にイオンが電極に移動し難くなる。こうして、内部抵抗が一時的に高まった状態に至る。この状態において、二次電池の放電を実行すると、負極の表面に形成されたSEI被膜の一部又は全部が脱落する。これにより、二次電池の内部抵抗が一時的に高まった状態が緩和又は解消される。
本発明者は、二次電池の内部抵抗が一時的に高まった状態が放電によって緩和又は解消されるとの仮説を検証するために、第2の検証実験を行った。第2の検証実験では、第1の検証実験で用いたリチウム二次電池と同様のリチウム二次電池を作製した。以下、このリチウム二次電池を、サンプルAと称することがある。第2の検証実験では、市販のリチウムイオン電池の電解液及び正極と、黒鉛負極と、を組み合わせることによって、別の二次電池も作製した。以下、この二次電池を、サンプルBと称することがある。
サンプルAの容量及びサンプルBの容量を測定した。容量測定後に、サンプルAの電圧及びサンプルBの電圧を、充電量が正極容量に対して50%となる電圧に調整した。つまり、これらの電圧を、SOCが50%となる電圧に調整した。この調整後に、サンプルA及びサンプルBの内部抵抗を、図13の測定系及び上記の式1に基づいて測定した。
次に、サンプルA及びサンプルBを、45℃雰囲気下に30日以上放置した。この放置により、二次電池の負極におけるSEI被膜の厚みが増加したと考えられる。その後、サンプルA及びサンプルBの内部抵抗を、図13の測定系及び上記の式1に基づいて測定した。
次に、サンプルA及びサンプルBを、完全に放電させた。この放電の後、サンプルA及びサンプルBを充電した。この充電により、サンプルA及びサンプルBの充電状態を元の充電状態に戻した。つまり、この充電により、サンプルA及びサンプルBのSOCを、放電の開始時点のSOCに戻した。その後、サンプルA及びサンプルBの内部抵抗を、図13の測定系及び上記の式1に基づいて測定した。
サンプルA及びBについて、上記の放電前の内部抵抗に対する上記の充電後の内部抵抗の比率を計算した。これらの計算結果を、表3に示す。
サンプルAでは、内部抵抗の比率は、46%であった。つまり、サンプルAでは、放電及び充電の後には、内部抵抗が54%低下していた。サンプルBでは、内部抵抗の比率は、84%であった。つまり、サンプルBでは、放電及び充電の後には、内部抵抗が16%低下していた。この結果は、負極がリチウム金属負極の場合には、負極が黒鉛負極の場合に比べ、内部抵抗が大幅に低下し得ることを示している。
サンプルAでは、充電終了時点においては、放電開始時点に比べ、内部抵抗が大幅に低かった。これは、放電により脱落した負極表面のSEI被膜の量が充電により負極表面に再形成されたSEI被膜の量よりも多く、再形成されたSEI被膜が脱落前に比べて薄いためと考えられる。
具体的には、サンプルAでは、放電によりチウム金属負極が電解液中に溶解し、この溶解に伴って負極表面のSEI被膜が脱落し、内部抵抗が大幅に低下したと考えられる。これに対し、サンプルBでは、黒鉛のエッジ面に形成されたSEI被膜は電解液中に溶出し難く、このこと等が原因で内部抵抗が僅かに低下するにとどまったものと思われる。
次に、放電量と、内部抵抗の一時的に高まりの緩和の程度と、の関係を検証するための、第3の検証実験を行った。具体的には、第1の検証実験で用いたリチウム二次電池と同様のリチウム二次電池を作製した。このリチウム二次電池を、満充電状態になるまで充電した。次に、このリチウム二次電池を、室温すなわち25℃に1ヶ月放置した。
この放置後に、リチウム二次電池を放電した。その後、リチウム二次電池を充電した。これにより、リチウム二次電池の充電状態を元の充電状態に戻した。つまり、この充電により、サンプルA及びサンプルBのSOCを、放電の開始時点のSOCに戻した。
充電の終了時点の内部抵抗は、放電の開始時点の内部抵抗に比べて低かった。ただし、その低下幅は、放電量によって異なっていた。具体的には、第3の検証実験では、放電量及び充電量を、正極容量の5%~40%の範囲で変化させた。放電量が40%の場合に、内部抵抗の低下幅が最も大きかった。放電量が40%の場合の内部抵抗の低下幅を100%としたときの、各放電量についての内部抵抗の低下幅を、表4にまとめる。
表4は、放電量が増加すると、内部抵抗の低下幅は大きくなることを示している。一方、表4は、放電量が大きくなると、内部抵抗の低下させる効果が飽和していくことを示している。これらを考慮すると、放電量を、例えば25%以下、具体的には5~20%に設定できる。
(二次電池の構成例)
以下、本開示に係る二次電池として採用可能なリチウム二次電池の構成例を説明する。
[非水電解質]
非水電解質は、1種類以上のリチウム塩を含む。非水電解質は、液状であってもよいし、ゲル状であってもよい。液状の非水電解質は、リチウム塩と、これを溶解させる非水溶媒とを含む。ゲル状の非水電解質は、例えば、リチウム塩とマトリックスポリマー、あるいは、リチウム塩と非水溶媒とマトリックスポリマーとを含む。マトリックスポリマーは、例えば、非水溶媒を吸収してゲル化する材料であって、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂等が例示される。
リチウム塩としては、例えば、LiBF4、LiClO4、LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(SO2CF3)2(ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム)、LiN(CmF2m+1SO2)x(CnF2n+1SO2)y(m及びnは、それぞれ独立して0又は1以上の整数であり、x及びyは、それぞれ独立して0、1又は2であり、x+y=2を満たす。)等のイミド塩類、オキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩や、LiB(C6H5)4、LiB(C6H3F2)4、LiB(C6F5)4、LiB(C6H3(CF3)2)4等が挙げられる。
(非水溶媒)
非水溶媒としては、例えば、エステル、エーテル、ニトリル(アセトニトリル等)、アミド(ジメチルホルムアミド等)が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。非水溶媒は、水素の少なくとも一部がフッ素等のハロゲン原子で置換されたハロゲン置換体であってもよい。
上記エステルとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等の鎖状カルボン酸エステル等が挙げられる。
上記エーテルとしては、例えば、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等の鎖状エーテル等が挙げられる。
非水電解質は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、リチウムホウ素化合物よりも低い電位で分解する化合物であってもよい。リチウムホウ素化合物由来の被膜の上に、さらに添加剤に由来する被膜が形成されることにより、SEI被膜の均一性が高まる。これにより、デンドライトの生成がさらに抑制され易くなって、放電容量及びサイクル特性がより向上する。このような添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニルエチルカーボネート(VEC)等が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
[負極]
負極は、充電時にリチウム金属が析出する電極である。リチウム金属は、主に負極の正極と対向する表面に析出する。析出するリチウム金属は、非水電解質中のリチウムイオンに由来し、放電により、再び非水電解質に溶解する。
負極は、例えば、金属リチウム及び/又はリチウム合金により構成される。あるいは、負極は、金属リチウム及び/又はリチウム合金以外の導電性材料で構成される負極集電体を備えていてもよい。この場合、負極集電体の少なくとも正極との対向面に、リチウム金属を含む負極活物質層が形成されてもよい。負極活物質層は、例えば、箔状のリチウム金属の貼り付け、リチウム金属の電析又は蒸着等によって形成される。この場合、高い容量密度を得る為に、形成するリチウム金属負極の容量は、正極容量に対して200%以内であることが望ましい。
ただし、電池の完全放電状態において、負極は、実質的に放電可能なリチウム金属を有さなくてもよい。電池の体積エネルギー密度が高まるためである。つまり、負極は、上記のような負極集電体を備える一方、完全放電状態において負極活物質層を備えていなくてもよい。この場合、電池の放電後、負極は負極集電体のみにより構成されており、充電により、負極集電体の表面にリチウム金属が析出して、リチウム金属層である負極活物質層が形成される。
電池の完全放電状態とは、リチウム二次電池が使用される機器分野での所定の電圧範囲において、最も低い電圧までリチウム二次電池を放電した状態である。完全放電状態において、負極が実質的に放電可能なリチウム金属を有さないことは、下記のようにして調べることが可能である。例えば、完全放電状態のリチウム二次電池を分解して負極を取り出し、エステル等の非水溶媒で洗浄し、乾燥する。得られた負極と、対極としてリチウム金属とを備える試験電池を作製して、負極が放電できない場合、負極は完全放電状態であるといえる。
(負極集電体)
負極集電体は、金属リチウム及び/又はリチウム合金以外の導電性材料で構成される。特に、負極集電体は、リチウム金属と反応しない金属材料により構成されてもよい。ここで、負極集電体がリチウム金属と反応しないとは、負極集電体がリチウム金属との合金あるいは金属間化合物を形成しないことを指す。このような金属材料としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。上記金属材料は、導電性の観点から、Cuであってもよい。
負極集電体の形態としては、例えば、多孔質あるいは無孔のシートが挙げられる。このようなシートの例は、箔、フィルム等である。負極集電体として銅箔を用いる場合、銅箔の主成分がCuであってもよい。ここで、銅箔の主成分がCuであるとは、Cuが銅箔の50質量%以上を占めていることを指す。負極集電体として銅箔を用いる場合、銅箔は、実質的にCuのみで構成されてもよい。負極集電体の厚みは特に限定されず、例えば、5~20μmである。
(保護層)
負極は、少なくとも正極との対向面に保護層を備えてもよい。保護層は、固体電解質、有機物及び無機物よりなる群から選択される少なくとも1つを含む。これにより、負極表面における反応が均一になり易くなって、デンドライトの生成がさらに抑制される。
固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、リン酸固体電解質、ペロブスカイト型固体電解質、ガーネット型固体電解質等を挙げることができる。
硫化物固体電解質は、硫黄成分を含有し、リチウムイオン伝導性を有する。硫化物固体電解質は、例えば、リチウム(Li)、硫黄(S)及び第三成分(A)を有する化合物である。第三成分Aとしては、例えば、P、ゲルマニウム(Ge)、B、シリコン(Si)、ヨウ素(I)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、砒素(As)が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。具体的な硫化物固体電解質としては、Li2S-P2S5(Li2S:50モル%、P2S5:50モル%)、70Li2S-30P2S5(Li2S:70モル%、P2S5:30モル%)、80Li2S-20P2S5(Li2S:80モル%、P2S5:20モル%)、Li2S-SiS2(Li2S:50モル%、SiS2:50モル%)、LiGe0.25P0.75S4等が例示される。
リン酸固体電解質は、リン酸成分を含有し、リチウムイオン伝導性を有する。具体的なリン酸固体電解質としては、Li1+XAlXTi2-X(PO4)3(ただし、0<X<2)、Li1+YAlYGe2-Y(PO4)3(ただし、0<Y<2)等のリチウムを含むリン酸化合物が例示される。X及びYは、0<X≦1であってもよく、0<Y≦1であってもよい。さらに具体的には、Li1.5Al0.5Ti1.5(PO4)3が例示される。
ガーネット型固体電解質は、ガーネット型の結晶構造を有する化合物であり、一般にA3B2C3O12の組成式で表される。このようなガーネット型固体電解質は、例えば、ジルコン酸リチウムランタン等のLi、ランタン(La)及びジルコニウム(Zr)を含有する複合酸化物である。具体的には、Li7La3Zr2O12が例示される。
ペロブスカイト型固体電解質は、ペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物であり、一般にABO3の組成式で表される。ペロブスカイト型固体電解質は、例えば、チタン酸リチウムランタン等のLi、La及びチタン(Ti)を含有する複合酸化物である。具体的には、(LaLi)TiO3、La1-3xLi3xTiO3が例示される。
有機物としては、ポリエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸メチル等のリチウム導電性ポリマーが例示される。無機物としては、SiO2、Al2O3、酸化マグネシウム(MgO)等のセラミックス材料が例示される。
保護層は、ガーネット型固体電解質を含んでいてもよい。特に、保護層は、Li7La3Zr2O12を含んでいてもよい。保護層は、リン酸固体電解質を含んでいてもよい。特に、保護層は、リチウムを含むリン酸化合物を含んでいてもよい。
[正極]
正極は、例えば、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合材層とを備える。正極合材層は、例えば、正極活物質と導電材と結着材とを含む。正極合材層は、正極集電体の両面に形成されてもよい。正極は、例えば、正極集電体の両面に、正極活物質と導電材と結着材とを含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延することにより得られる。
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出する材料である。正極活物質としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属フッ化物、ポリアニオン、フッ素化ポリアニオン、遷移金属硫化物等が挙げられる。正極活物質は、製造コストが安く、平均放電電圧が高い点で、リチウム含有遷移金属酸化物であってもよい。
リチウム含有遷移金属酸化物を構成する金属元素としては、例えば、Mg、Al、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、Ti、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、Fe、コバルト(Co)、Ni、Cu、亜鉛(Zn)、Ga、Ge、イットリウム(Y)、Zr、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)が挙げられる。上記金属元素は、Co、Ni、Mn、Alであってもよい。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
導電材としては、例えば、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、黒鉛等の炭素材料が挙げられる。結着材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
正極集電体の材質としては、例えば、Al、SUS、Ti及びそれらの合金等の金属材料が挙げられる。上記材質は、安価で薄膜化しやすい点で、Al及びAl合金であってもよい。正極集電体の形態としては、例えば、多孔質あるいは無孔のシートが挙げられる。金属材料のシートとは、例えば、金属箔、金属フィルム、金属メッシュ等である。正極集電体の表面には、カーボン等の炭素材料が塗布されていてもよい。これにより、抵抗値の低減、触媒効果の付与、正極合剤層と正極集電体との結合強化等が期待できる。
[セパレータ]
セパレータには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートとしては、例えば、微多孔を有する薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質は特に限定されないが、なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレンとプロピレンとの共重合体等のオレフィン樹脂、セルロース等であってもよい。セパレータは、多孔性シートの積層体であってもよい。例えば、セパレータは、セルロース繊維により形成される不織布と熱可塑性樹脂繊維により形成される不織布との積層体であってもよいし、ポリエチレン薄膜とポリプロピレン薄膜との積層体であってもよい。セパレータの表面には、ポリアミド樹脂が塗布されていてもよい。これにより、セパレータの耐久性の向上が期待できる。また、セパレータと正極との界面、及び/又は、セパレータと負極との界面には、無機フィラーを含む耐熱層が形成されていてもよい。
[リチウム二次電池の具体的構成例]
以下、リチウム二次電池の具体的構成例を、図面を参照しながら説明する。図20は、本実施形態の一例であるリチウム二次電池10の縦断面図である。図21は、本実施形態の一例である電極体14の構成を示す断面図である。リチウム二次電池10において、充電時に負極12上にリチウム金属が析出し、放電時に当該リチウム金属が非水電解質(図示せず)に溶解する。
リチウム二次電池10は、円筒形で金属製の電池ケースを備える円筒形電池である。ただし、本開示のリチウム二次電池の形状はこれに限定されない。リチウム二次電池の形状は、その用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、リチウム二次電池は、コイン電池、角形の金属製ケースを備える角形電池、Al層を含むラミネートシート等により形成される外装体を備えたラミネート電池等であってもよい。
電池ケースは、ケース本体15及び封口体16によって構成される。電池ケースには、電極体14と非水電解質とが収容される。ケース本体15と封口体16の間にはガスケット27が配置されており、電池ケース内の密閉性が確保されている。
ケース本体15は、有底円筒形状の金属製容器である。ケース本体15は、例えば、その側面部を外側からプレスして形成された段部21を有する。段部21は、ケース本体15の周方向に沿って環状に形成されていてもよい。この場合、段部21の上面で封口体16が支持される。
封口体16は、電池ケースの内側から順に、フィルタ22、下弁体23、絶縁部材24、上弁体25及びキャップ26が積層されることにより形成されている。上記各部材は、例えば円板形状又はリング形状である。下弁体23と上弁体25とは、各々の中央部で互いに接続されるとともに、各々の周縁部の間には絶縁部材24が介在している。フィルタ22と下弁体23とは、各々の中央部で互いに接続している。上弁体25とキャップ26とは、各々の中央部で互いに接続している。つまり、絶縁部材24を除く各部材は、互いに電気的に接続されている。
下弁体23には、図示しない通気孔が形成されている。そのため、異常発熱等により電池ケースの内圧が上昇すると、上弁体25がキャップ26側に膨れて、下弁体23から離間する。これにより、下弁体23と上弁体25との電気的接続が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体25が破断し、キャップ26に形成された図示しない開口部からガスが排出される。
電極体14は、正極11と負極12とセパレータ13とを有している。正極11及び負極12は、セパレータ13を介して渦巻状に捲回されている。ただし、電極体の形状はこれに限定されない。電極体は、例えば、円盤状の正極及び負極を備えていてもよいし、複数の正極及び複数の負極がセパレータを介して交互に積層された積層型であってもよい。円盤状の正極及び負極は、コイン電池に適用可能である。
電極体14を構成する正極11、負極12及びセパレータ13は、いずれも帯状に形成されている。電極体14において、正極11と負極12とは、電極体14の径方向に交互に積層されている。つまり、各電極の長手方向が捲回方向であり、各電極の幅方向が軸方向である。電極体14の軸方向の両端部には、絶縁板17及び18がそれぞれ配置される。
図21に示すように、正極11は、正極集電体30及び正極合材層31を備える。正極11は、正極リード19を介して、キャップ26にある正極端子と電気的に接続されている。正極リード19の一端は、例えば、正極11の長手方向の中央付近に接続されている。正極11から延出した正極リード19は、絶縁板17に形成された図示しない貫通孔を通って、フィルタ22まで延びている。正極リード19の他端は、フィルタ22の電極体14側の面に溶接されている。
図21に示すように、負極12は、負極集電体40を備える。負極12は、負極リード20を介して、ケース本体15にある負極端子と電気的に接続している。負極リード20の一端は、例えば、負極12の長手方向の端部に接続されている。負極リード20の他端は、例えば、ケース本体15の底部内面に溶接されている。