本開示の一態様に係る表示システムは、移動体に搭載され、ユーザに対して画像を表示する表示システムであって、前記画像を表す光を出射する表示面を有する表示素子と、前記表示素子の前記表示面から出射した光を反射する第1のミラーと、前記第1のミラーに対向して配置され、位相差板及び偏光素子を含む光学素子と、を備え、前記第1のミラー及び前記光学素子は、前記表示素子とは別体で配置され、前記光学素子は、(i)前記表示素子の前記表示面から出射した光が前記第1のミラーで反射した反射光を透過し、(ii)前記光学素子に前記反射光が出射する側から入射し、且つ、前記第1のミラーで反射した外光を、前記光学素子の前記第1のミラーと対向する面で反射する。
本態様によれば、光学素子は、位相差板及び偏光素子を有し、第1のミラーに対向して配置されている。これにより、例えば移動体の後方からの外光が光学素子に入射した場合であっても、光学素子を透過した外光は、第1のミラーで反射した後に、光学素子の第1のミラーと対向する面で反射する。その結果、外光が第1のミラーに映り込むのを抑制することができる。
本開示の一態様に係る表示システムは、前記表示素子は、前記移動体に固定され、前記表示システムは、さらに、前記移動体に対して回動可能に支持され、前記表示素子の前記表示面から出射した光を入射する入射部と、入射した当該光を前記ユーザの目に向けて出射する出射部と、を有する光学反射部を備え、前記光学反射部は、前記第1のミラーと、前記出射部に配置された前記光学素子と、を有し、前記表示素子の前記表示面から出射した光は、前記第1のミラーで少なくとも1回反射し、前記光学素子の前記位相差板及び前記偏光素子をこの順に透過して前記ユーザの目に入射する。
本態様によれば、光学素子は、位相差板及び偏光素子を有し、光学反射部の出射部に配置されている。これにより、例えば移動体の後方からの外光が光学素子に入射した場合であっても、光学素子を透過した外光は、第1のミラーで反射して光学素子を再度透過した際に、光学素子の偏光作用によって大幅に減衰されるようになる。その結果、外光が第1のミラーに映り込むのを抑制することができる。
例えば、前記光学反射部は、さらに、前記表示素子の前記表示面に対向して配置され、前記表示素子の前記表示面と前記第1のミラーとの間の光路上に配置された第2のミラーを有するように構成してもよい。
本態様によれば、光学反射部は第2のミラーを有するので、表示素子の表示面から出射した光は、光学反射部で複数回反射した後に、光学素子を透過してユーザの目に入射する。これにより、表示素子の表示面から出射した光が第1のミラーで反射するまでの光路長を確保することができ、ユーザ(運転者)の目から画像の虚像の表示位置までの視距離を延ばすことができる。
例えば、前記第2のミラーは、前記光学素子に対向して配置され、前記偏光素子は、反射型偏光板であり、前記表示素子の前記表示面から出射した光は、前記第2のミラーで反射して前記光学素子に向かい、前記光学素子で反射して前記第1のミラーに向かい、前記第1のミラーで反射して前記光学素子に向かい、前記光学素子を透過して前記ユーザの目に入射するように構成してもよい。
本態様によれば、表示素子の表示面から出射した光は、(i)第2のミラーで反射し、(ii)光学素子で反射し、(iii)第1のミラーで反射した後に、光学素子を透過してユーザの目に入射する。これにより、表示素子の表示面から出射した光が第1のミラーで反射するまでの光路長を確保することができ、ユーザの目から画像の虚像の表示位置までの視距離を延ばすことができる。
例えば、前記光学素子は、前記光学反射部の前記入射部と前記出射部とに亘って配置され、前記表示素子の前記表示面から出射した光は、前記光学素子を透過して前記第2のミラーに向かい、前記第2のミラーで反射するように構成してもよい。
本態様によれば、光学素子は、光学反射部の入射部と出射部とに亘って配置されているので、画像の表示に寄与しない不要光が光学素子に入射した際に、当該不要光を光学素子の偏光素子で遮断することができる。
例えば、前記光学反射部は、さらに、前記入射部に配置され、前記表示素子と前記第2のミラーとの間に配置されたハーフミラーを有し、前記表示素子の前記表示面から出射した光は、前記ハーフミラーを透過して前記第2のミラーに向かい、前記第2のミラーで反射して前記ハーフミラーに向かい、前記ハーフミラーで反射して前記光学素子に向かい、前記光学素子で反射して前記第1のミラーに向かい、前記第1のミラーで反射して前記光学素子に向かい、前記光学素子を透過して前記ユーザの目に入射するように構成してもよい。
本態様によれば、表示素子の表示面から出射した光は、(i)第2のミラーで反射し、(ii)ハーフミラーで反射し、(iii)光学素子で反射し、(iv)第1のミラーで反射した後に、光学素子を透過してユーザの目に入射する。これにより、表示素子の表示面から出射した光が第1のミラーで反射するまでの光路長を確保することができ、ユーザの目から画像の虚像の表示位置までの視距離を延ばすことができる。
例えば、前記光学反射部は、さらに、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置されたハーフミラーを有し、前記表示素子の前記表示面から出射した光は、前記第2のミラーで反射して前記ハーフミラーに向かい、前記ハーフミラーを透過して前記第1のミラーに向かい、前記第1のミラーで反射して前記ハーフミラーに向かい、前記ハーフミラーで反射して前記光学素子に向かい、前記光学素子を透過して前記ユーザの目に入射するように構成してもよい。
本態様によれば、表示素子の表示面から出射した光は、(i)第2のミラーで反射し、(ii)第1のミラーで反射し、(iii)ハーフミラーで反射した後に、光学素子を透過してユーザの目に入射する。これにより、表示素子の表示面から出射した光が第1のミラーで反射するまでの光路長を確保することができ、ユーザの目から画像の虚像の表示位置までの視距離を延ばすことができる。
例えば、前記光学素子は、前記表示素子と前記第1のミラーとの間に配置され、前記表示素子の前記表示面から出射した光は、前記光学素子を透過して前記第1のミラーに向かい、前記第1のミラーで反射して前記光学素子に向かい、前記光学素子で反射して前記第1のミラーに向かい、前記第1のミラーで再度反射して前記光学素子に向かい、前記光学素子を透過して前記ユーザの目に入射するように構成してもよい。
本態様によれば、表示素子の表示面から出射した光は、(i)第1のミラーで反射し、(ii)光学素子で反射し、(iii)第1のミラーで再度反射した後に、光学素子を透過してユーザの目に入射する。これにより、表示素子の表示面から出射した光が第1のミラーで反射するまでの光路長を確保することができ、ユーザの目から画像の虚像の表示位置までの視距離を延ばすことができる。
例えば、前記移動体は収納部を有し、前記表示素子及び前記光学反射部の前記入射部は、前記収納部に収納され、前記光学反射部の前記出射部は、前記収納部の外部に露出され
ているように構成してもよい。
本態様によれば、表示素子及び光学反射部の入射部は、移動体の収納部に収納されている。これにより、表示素子の表示面から出射した光が、光学反射部の外部に漏れるのを抑制することができる。
例えば、前記光学反射部の前記出射部には、近赤外線を反射し、且つ、可視光を透過する近赤外反射部が配置されているように構成してもよい。
本態様によれば、例えば移動体の後方からの外光が光学反射部の出射部に入射した場合であっても、当該外光に含まれる近赤外線を近赤外反射部により遮断することができ、近赤外線に起因する表示素子の表示面の温度上昇や、第1のミラーの焦点近傍の温度上昇を抑制することができる。
例えば、前記光学反射部は、さらに、前記入射部に配置された開口部を有し、前記第1のミラー及び前記光学素子を内部に収納する筐体と、前記筐体の前記開口部を覆うように配置された透光カバーと、を有するように構成してもよい。
本態様によれば、透光カバーが筐体の開口部を覆うように配置されているので、塵埃等が当該開口部を通して筐体の内部に侵入するのを抑制することができる。
例えば、前記表示素子及び前記第1のミラーは、上面視で前記移動体の進行方向に対して傾斜して配置され、且つ、互いに略平行に配置されているように構成してもよい。
本態様によれば、表示面の位置によらず、表示素子から第1のミラーまでの光路長を略等しくすることができるので、画像歪が抑制された高画質な表示システムを実現することができる。
例えば、前記光学素子は、さらに、入射した光を透過させる透過モード、及び、入射した光を反射する反射モードの一方から他方に切り替えるための液晶光学素子を有するように構成してもよい。
本態様によれば、例えば、移動体の後方を画像により確認する電子ミラーモードと、移動体の後方を光学的な反射により確認する光学ミラーモードとを容易に切り替えることができる。
例えば、前記表示システムは、さらに、前記移動体に配置され、前記表示素子及び前記光学反射部を保持することにより、前記表示素子と前記光学反射部との位置関係を保つための保持部材を備えるように構成してもよい。
本態様によれば、保持部材により表示システムをユニット化することができる。これにより、表示システムを移動体に搭載する前(例えば工場出荷時等)であっても、表示システムの光学性能に関する検査等を行うことができる。
例えば、前記表示素子の前記表示面は、前記画像を表す第1の直線偏光を出射し、前記第1のミラーは、前記表示素子の前記表示面に対向して配置され、前記偏光素子は、前記表示素子と前記第1のミラーとの間に配置され、前記第1の直線偏光を透過し、前記第1の直線偏光とは偏光方向の異なる第2の直線偏光を反射する反射型偏光板であり、前記位相差板は、前記反射型偏光板と前記第1のミラーとの間に配置され、前記表示素子の前記表示面から出射した前記第1の直線偏光は、(a)前記反射型偏光板を透過して前記位相
差板に向かい、(b)前記位相差板により第1の円偏光に変換されて前記第1のミラーに向かい、(c)前記第1のミラーで反射して前記位相差板に向かい、(d)前記位相差板により前記第2の直線偏光に変換されて前記反射型偏光板に向かい、(e)前記反射型偏光板で反射して前記位相差板に向かい、(f)前記位相差板により前記第1の円偏光とは偏光方向の異なる第2の円偏光に変換されて前記第1のミラーに向かい、(g)前記第1のミラーで再度反射して前記ユーザの目に入射するように構成してもよい。
本態様によれば、表示素子の表示面から出射した光は、(i)第1のミラーで反射し、(ii)反射型偏光板で反射し、(iii)第1のミラーで再度反射した後に、ユーザの目に入射する。すなわち、表示素子の表示面から出射した光は、反射型偏光板と第1のミラーとの間を少なくとも2往復した後に、ユーザの目に入射する。これにより、表示素子の表示面から出射した光が反射型偏光板を経由して第1のミラーで再度反射するまでの光路長を所定の長さに設定する場合に、各構成要素(表示素子、反射型偏光板、位相差板及び第1のミラー)間の距離を短く抑えることができる。その結果、視距離を確保しながら、表示システムの小型化を図ることができる。
例えば、前記第1のミラーで再度反射した前記第2の円偏光は、さらに、(h)前記位相差板に向かい、(i)前記位相差板により前記第1の直線偏光に変換されて前記反射型偏光板に向かい、(j)前記反射型偏光板を透過して前記ユーザの目に入射するように構成してもよい。
本態様によれば、第1のミラーで再度反射した光は、反射型偏光板を透過した後に、ユーザの目に入射する。これにより、第1のミラーで再度反射した第1の直線偏光のみが反射型偏光板を透過し、当該第1の直線偏光以外の不要光(太陽光等の外光を含む)は、反射型偏光板で遮断される。その結果、画像の表示精度を高めることができる。
例えば、前記表示システムは、さらに、前記表示素子を挟んで前記第1のミラーと反対側に配置され、開口部を有する枠体を備え、前記第1のミラーで再度反射した前記第2の円偏光は、前記開口部を介して前記ユーザの目に入射するように構成してもよい。
本態様によれば、ユーザにとって、第1のミラーの少なくとも一部が開口部の周縁部よりも前方に見えるため、ユーザは、表示された画像に奥行き感を感じることができる。
例えば、前記開口部の大きさは、前記ユーザから見て前記第1のミラーの所定方向における幅全体を視認可能な大きさであるように構成してもよい。
本態様によれば、第1のミラーの小型化を図ることができる。
例えば、前記表示システムは、さらに、前記表示素子、前記反射型偏光板、前記位相差板及び前記第1のミラーを内部に収納する筐体を備え、前記枠体は、前記筐体の前記ユーザに対向する側の側面を構成するように構成してもよい。
本態様によれば、表示システムの各構成要素(表示素子、反射型偏光板、位相差板及び第1のミラー)を筐体の内部にコンパクトに収納することができる。
例えば、前記表示システムは、さらに、前記表示素子と前記開口部との間に配置された遮光部材を備えるように構成してもよい。
本態様によれば、表示素子の表示面から出射した光の大部分(以下、「表示光」という)は反射型偏光板を透過するが、表示素子の表示面から出射した光の一部(以下、「表面
反射光」という)は反射型偏光板で反射する。遮光部材が表示素子と開口部との間に配置されているので、表面反射光が開口部に到達するのを抑制することができる。その結果、表面反射光が表示光と重畳されることに起因する、表示素子の表示面に表示された画像における映り込みを抑制することができる。
例えば、前記第1の直線偏光の偏光方向と前記第2の直線偏光の偏光方向とは、互いに直交するように構成してもよい。
本態様によれば、表示光の強度を高めることができる。
例えば、前記位相差板はλ/4板であり、前記λ/4板の遅相軸は、前記反射型偏光板の反射軸に対して45°傾斜しているように構成してもよい。
本態様によれば、表示光の強度を高めることができる。
例えば、前記第1のミラー及び前記反射型偏光板は、互いに非平行に配置されているように構成してもよい。
本態様によれば、第1のミラーと反射型偏光板との間における光の多重反射を回避することができる。
例えば、前記第1のミラーは、凹面ミラー又はフレネルミラーであるように構成してもよい。
本態様によれば、第1のミラーの焦点位置の設計の自由度を高めることができるとともに、第1のミラーの小型化を図ることができる。
例えば、前記反射型偏光板は、シリンドリカル状に形成されているように構成してもよい。
本態様によれば、反射型偏光板の小型化を図ることができる。
例えば、前記表示システムは、さらに、前記表示素子と前記反射型偏光板との間に配置され、前記第1の直線偏光を透過し、前記第2の直線偏光を吸収する透過型偏光板を備えるように構成してもよい。
本態様によれば、透過型偏光板が表示素子と反射型偏光板との間に配置されているので、画像の表示に寄与しない不要光が透過型偏光板に入射した際に、当該不要光を透過型偏光板で吸収することができる。これにより、表示素子の表示面に表示された画像における映り込みを抑制することができる。
例えば、前記透過型偏光板は、前記反射型偏光板の前記表示素子に対向する側の面のうち、前記表示素子の前記表示面から出射した前記第1の直線偏光が入射する領域を覆うように配置されているように構成してもよい。
本態様によれば、表示素子の表示面から出射した光の一部が反射型偏光板で反射するのを抑制することができる。その結果、表示素子の表示面に表示された後方画像における映り込みを抑制することができる。
例えば、前記表示素子の前記表示面の中心と前記第1のミラーの反射面の中心とを結ぶ
直線上において、前記表示素子と前記反射型偏光板との距離は、前記位相差板と前記第1のミラーとの距離よりも短いように構成してもよい。
本態様によれば、表示素子の表示面から出射した光が反射型偏光板を経由して第1のミラーで再度反射するまでの光路長を、より長く確保することができる。
例えば、前記第1のミラーは、前記位相差板からの前記第1の円偏光が反射する第1の反射領域と、前記位相差板からの前記第2の円偏光が反射する第2の反射領域と、を有し、前記第1の反射領域の一部は、前記第2の反射領域の一部と重なっているように構成してもよい。
本態様によれば、第1のミラーの小型化を図ることができる。
例えば、前記表示システムは、さらに、前記反射型偏光板の前記表示素子に対向する側の面に対向して配置された第2のミラーを備え、前記反射型偏光板を透過した前記第1の直線偏光は、さらに、(k)前記第2のミラーに向かい、(l)前記第2のミラーで反射して前記ユーザの目に入射するように構成してもよい。
本態様によれば、反射型偏光板と第1のミラーとの間における光の往復反射が、例えば鉛直方向となるように表示システムを配置することにより、表示システムの薄型化を図ることができ、ユーザの視界を確保することができる。
例えば、前記表示システムは、さらに、前記反射型偏光板と前記位相差板との間に積層された透光性基板を備えるように構成してもよい。
本態様によれば、反射型偏光板及び位相差板の各々がフィルム状に形成されている場合に、反射型偏光板と位相差板とが直接重ね合わされることに起因する色ムラ(モアレ)の発生を抑制することができる。
例えば、前記表示素子の前記表示面は、前記反射型偏光板の前記表示素子に対向する側の面に接触しているように構成してもよい。
本態様によれば、表示システムの小型化を図ることができる。
例えば、前記第1のミラーは、凹面ミラーであり、前記表示システムを側面視した際に、前記第1のミラー反射面の中心を通る法線ベクトルは、前記表示素子の前記表示面の中心と前記第1のミラーの前記反射面の前記中心と前記ユーザの目とを結んでなす角度を二等分する半角ベクトルよりも前記表示面の前記中心側を向くように配置されている。
本態様によれば、表示素子の表示面から出射して第1のミラーで1回のみ反射した光の一部は、光学素子を透過して表示素子の表示面に向けて進むようになる。これにより、第1のミラーで1回のみ反射した光がユーザの目に到達するのを抑制することができ、表示素子の表示面に表示された画像における映り込みを抑制することができる。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載さ
れていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態1)
[1-1.表示システムの概要]
まず、図1を参照しながら、実施の形態1に係る表示システム2の概要について説明する。図1は、実施の形態1に係る表示システム2が搭載された車両4の一例を示す図である。
以下の説明において、車両4の前進方向を「前方」とし、車両4の後退方向を「後方」とする。図1において、車両4の前後方向をX軸方向、車両4の左右方向をY軸方向、車両4の上下方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。また、図1において、「前方」をX軸のマイナス側、「後方」をX軸のプラス側、「上方」をZ軸のプラス側、「下方」をZ軸のマイナス側とする。
図1に示すように、表示システム2は、例えば車両4のオーバーヘッドコンソール6(収納部の一例)に搭載されている。これにより、表示システム2は、運転席8に着座した運転者10(ユーザの一例)が前方を向いた状態で、運転者10の視界に入る位置に配置される。
車両4は、例えば普通乗用車、バス又はトラック等の自動車である。車両4のリアバンパー又はトランクフード等には、当該車両4の後方を撮影するためのカメラ(図示せず)が搭載されている。なお、本実施の形態では、表示システム2が移動体としての車両4に搭載される場合について説明するが、これに限定されず、例えば建機、農機、船舶又は航空機等の各種移動体に搭載されてもよい。
本実施の形態では、表示システム2は、カメラにより撮影された後方画像(画像の一例)を表示するための、いわゆる電子ミラーである。運転者10は、表示システム2に表示された後方画像を見ることにより、後方画像に映った車両4の後方を確認することができる。すなわち、表示システム2は、光の反射を利用して車両4の後方を映す従来の物理的なルームミラーの代用として用いられる。
[1-2.表示システムの構成]
次に、図2及び図3を参照しながら、実施の形態1に係る表示システム2の構成について説明する。図2は、実施の形態1に係る表示システム2の断面図である。図3は、実施の形態1に係る表示システム2の表示素子12、凹面ミラー26及び光学素子28の上面視における位置関係を示す図である。
図2に示すように、表示システム2は、表示素子12と、光学反射部14とを備えている。光学反射部14は、表示素子12よりも車両4の前方側に配置されている。
表示素子12は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)であり、車両4のカメラにより撮影された後方画像を表示するための表示面16を有している。表示素子12は、オーバーヘッドコンソール6に形成された凹部18に収納され、オーバーヘッドコンソール6に対して固定されている。表示素子12は、表示面16が車両4の前方を向くように配置されている。表示面16は、横長の矩形状に形成されており、後方画像を形成するための光を出射する。表示面16から出射する光は、第1の偏光方向d1(図2の紙面垂直方向であって、Y軸方向)を有する第1の直線偏光である。
また、表示素子12の表示面16の最表面には、位相差板20が配置されている。位相
差板20は、当該位相差板20に入射した直線偏光を円偏光に変換し、且つ、当該位相差板20に入射した円偏光を直線偏光に変換するためのλ/4板である。位相差板20の遅相軸は、透過型反射板52(偏光素子の一例)の透過軸(後述する)に対して45°傾斜している。これにより、位相差板20は、当該位相差板20に入射した光のうち、互いに直交する直線偏光間に波長λの1/4の位相差(すなわち、90°の位相差)を生じさせる機能を有する。なお、本実施の形態では、表示素子12の表示面16の最表面に位相差板20を配置したが、このような構成に代えて、防塵用カバー24(後述する)に位相差板20を配置してもよい。
光学反射部14は、筐体22と、防塵用カバー24(透光カバーの一例)と、凹面ミラー26(第1のミラーの一例)と、光学素子28とを有している。凹面ミラー26及び光学素子28は、表示素子12とは別体で配置されている。また、光学反射部14は、表示素子12の表示面16から出射した光が入射する入射部30と、入射部30に入射した当該光が運転者10の目32に向けて出射する出射部34とを有している。
筐体22は、例えば合成樹脂等で形成されており、内部に収納空間36を有している。筐体22の収納空間36には、凹面ミラー26及び光学素子28が収納されている。筐体22は、ボールジョイント38を介してオーバーヘッドコンソール6に回動可能に支持されている。筐体22をボールジョイント38に対して回動させることにより、オーバーヘッドコンソール6に対する筐体22の姿勢を変更可能である。
筐体22の表示素子12の表示面16に対向する側の側面には、収納空間36と連通する開口部40が形成されている。開口部40は、光学反射部14の入射部30に配置されており、オーバーヘッドコンソール6の凹部18に収納されている。開口部40は、横長の矩形状に形成されている。また、筐体22の運転者10に対向する側の側面には、収納空間36と連通する開口部42が形成されている。開口部42は、光学反射部14の出射部34に配置されており、オーバーヘッドコンソール6の凹部18の外部に露出されている。開口部42は、横長の矩形状に形成されている。
防塵用カバー24は、筐体22の開口部40を覆うように配置されている。すなわち、防塵用カバー24は、光学反射部14の入射部30に配置されている。防塵用カバー24は、透光性を有する材料、例えば透明の樹脂又はガラス等で形成されている。これにより、外部の塵埃等が、開口部40を通して筐体22の収納空間36に侵入するのを抑制することができる。
凹面ミラー26は、防塵用カバー24に対向して配置され、表示素子12及び光学素子28よりも車両4の前方側に配置されている。すなわち、凹面ミラー26は、表示素子12の表示面16に対向して配置されている。凹面ミラー26は、自由曲面である凹面状の反射面44を有している。凹面ミラー26は、例えば樹脂成型された部材の表面に、アルミニウム等の反射金属膜を蒸着することにより形成される。凹面ミラー26は、反射面44が光学素子28の位相差板46(後述する)に対向するように、すなわち、車両4の後方を向くように配置されている。
なお、図3に示すXY上面視において、表示素子12及び凹面ミラー26は、車両4の前後方向(X軸方向)に対して傾斜して配置され、且つ、互いに略平行に配置されている。具体的には、図3に示すXY側面視において、凹面ミラー26の反射面44の中心における接線と、表示素子12の表示面16の中心における接線とは、互いに略平行である。本明細書において、「略平行」とは、完全に平行であることを意味するだけではなく、実質的に平行である場合、例えば筐体22の回動範囲において、表示素子12及び凹面ミラー26は「略平行」であると定義する。これにより、表示面16の位置によらず、表示素
子12から凹面ミラー26までの光路長を略等しくすることができるので、画像歪が抑制され、高画質化が可能となる。また、図3に示すXY上面視において、表示素子12及び凹面ミラー26が略平行である限りにおいて、表示素子12、凹面ミラー26及び光学素子28は、左右対称に配置されていてもよいし、左右非対称に配置されていてもよい。
光学素子28は、筐体22の開口部42を覆うように配置され、凹面ミラー26の反射面44に対向して配置されている。すなわち、光学素子28は、光学反射部14の出射部34に配置されている。光学素子28は、位相差板46と、ガラス基板48と、透過型偏光板52と、位相差板54とを有している。なお、本明細書において、「板」とは、板だけでなく、フィルム又はシート等と呼ばれるような部材も含む概念である。
光学素子28は、全体として矩形状の平板状に形成されている。光学素子28は、位相差板46、ガラス基板48、透過型偏光板52及び位相差板54を、凹面ミラー26に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されている。光学素子28は、運転者10に対向する側の面が斜め下方を向くように、鉛直方向に対して傾斜して配置されている。
ガラス基板48は、位相差板46、透過型偏光板52及び位相差板54を支持するための基板であり、透光性を有する材料、例えば透明のガラスで形成されている。ガラス基板48の凹面ミラー26の反射面44に対向する側の面には、位相差板46が重ね合わされている。また、ガラス基板48の運転者10に対向する側の面には、透過型偏光板52及び位相差板54が重ね合わされている。
位相差板46は、当該位相差板46に入射した直線偏光を円偏光に変換し、且つ、当該位相差板46に入射した円偏光を直線偏光に変換するためのλ/4板である。位相差板46の遅相軸は、透過型偏光板52の透過軸に対して45°傾斜している。これにより、位相差板46は、当該位相差板46に入射した光のうち、互いに直交する直線偏光間に波長λの1/4の位相差を生じさせる機能を有する。
透過型偏光板52は、当該透過型偏光板52に入射した光のうち、第1の偏光方向d1を有する第1の直線偏光を吸収し、第2の偏光方向d2(図2の紙面内方向であって、XZ平面内の方向)を有する第2の直線偏光を透過する。すなわち、透過型偏光板52の吸収軸は第1の偏光方向d1、透過型偏光板の透過軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交している。なお、本明細書において、「直交」とは、完全に直角に交わることを意味するだけではなく、実質的に直角に交わる場合、例えば数°程度の誤差を含むことをも意味する。
位相差板54は、当該位相差板54に入射した直線偏光を円偏光に変換し、且つ、当該位相差板54に入射した円偏光を直線偏光に変換するためのλ/4板である。位相差板54の遅相軸は、透過型偏光板52の透過軸に対して45°傾斜している。これにより、位相差板54は、当該位相差板54に入射した光のうち、互いに直交する直線偏光間に波長λの1/4の位相差を生じさせる機能を有する。
[1-3.表示システムの動作]
次に、図1、図2及び図4を参照しながら、実施の形態1に係る表示システム2の動作について説明する。図4は、実施の形態1に係る表示システム2の動作を説明するための模式図である。なお、図4では、表示システム2の各構成要素の配置及び形状等を模式的に図示してある。
図4に示すように、表示素子12の表示面16からの第1の直線偏光は、位相差板20
に入射する。位相差板20に入射した第1の直線偏光は、位相差板20により右回りの第1の円偏光に変換され、出射する。位相差板20から出射した第1の円偏光は、防塵用カバー24を透過して凹面ミラー26に向かい、凹面ミラー26の反射面44で反射する。
凹面ミラー26の反射面44で反射した第1の円偏光は、光学素子28の位相差板46に向かう。位相差板46を透過した第1の円偏光は、位相差板46により第2の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第2の直線偏光は、ガラス基板48を透過して透過型偏光板52に入射する。この時、透過型偏光板52に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、透過型偏光板52の透過軸と同方向である。そのため、透過型偏光板52に入射した第2の直線偏光は、透過型偏光板52を透過する。
透過型偏光板52を透過した第2の直線偏光は、位相差板54に入射し、位相差板54により第1の円偏光とは偏光方向の異なる左回りの第2の円偏光に変換される。図2に示すように、位相差板54から出射した第2の円偏光は、運転者10の目32に入射する。
以上のようにして、表示素子12の表示面16から出射した光は、凹面ミラー26の反射面44で反射した後に、光学素子28を透過して運転者10の目32に入射する。
運転者10が凹面ミラー26の反射面44で反射された後方画像を見ることにより、図1に示すように、運転者10には、表示システム2よりも車両4の前方の表示位置に後方画像の虚像56が表示されているように見える。これにより、運転者10がウインドシールド58(フロントガラス)を通して車両4の前方を見ている状態で、後方画像の虚像56に視線を移す場合における目のピント調節量が比較的少なくて済む。
[1-4.効果]
本実施の形態では、光学素子28は、透過型偏光板52等を有し、光学反射部14の出射部34に配置されている。これにより、図2に示すように、車両4の後方からの外光(例えば、後続車のヘッドライト又は太陽光等)が光学素子28の上記第2の円偏光が出射する側から入射した場合であっても、外光の概ね半分は光学素子28の透過型偏光板52で吸収される。また、光学素子28を透過した外光は、直線偏光(第2の偏光方向)となり、位相差板46で円偏光に変換され、凹面ミラー26の反射面44で反射する。凹面ミラー26の反射面44で反射した外光の一部は、光学素子28の凹面ミラー26と対向する面で反射する。また、凹面ミラー26の反射面44で反射した外光の残りの一部は、光学素子28を再度透過し、その際に、光学素子28の位相差板46によって直線偏光(第1の偏光方向)に変換される。光学素子28の透過型偏光板52は、第1の偏光方向の直線偏光を吸収するので、外光が大幅に減衰されるようになる。その結果、外光が凹面ミラー26に映り込むのを抑制することができる。
このように、光学素子28を透過して筐体22の内部に入り込んだ外光は、凹面ミラー26で反射しても、再度光学素子28に至る際に、大幅に減衰される。したがって、外光が凹面ミラー26により集光する可能性が大きく抑制される。その結果、外光の凹面ミラー26での集光に起因した高温部分の発生を抑制することができる。
また、表示素子12及び光学反射部14の入射部30は、オーバーヘッドコンソール6の凹部18に収納されている。これにより、表示素子12の表示面16から出射した光が、光学反射部14の外部に漏れるのを抑制することができる。
また、光学素子28の最表面には位相差板54が配置されているので、光学素子28から出射した光は、位相差板54により第2の円偏光となり、運転者10の目32に入射する。これにより、例えば運転者10が偏光サングラス等を着用している場合であっても、
位相差板54を透過した光を運転者10の目32に入射させることができる。
なお、光学反射部14の出射部34には、近赤外線を反射し、且つ、可視光を透過するフィルム状の近赤外反射部を配置してもよい。この場合、近赤外反射部は、光学素子28の運転者10に対向する側の面を覆うように配置される。これにより、車両4の後方からの外光が光学素子28に入射した場合であっても、当該外光に含まれる近赤外線を近赤外反射部により遮断することができ、近赤外線に起因する表示素子12の表示面16の温度上昇や、凹面ミラー26の焦点近傍の温度上昇を抑制することができる。
(実施の形態2)
[2-1.表示システムの構成]
図5を参照しながら、実施の形態2に係る表示システム2Aの構成について説明する。図5は、実施の形態2に係る表示システム2Aの断面図である。なお、以下に示す各実施の形態において、上記実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5に示すように、実施の形態2に係る表示システム2Aでは、光学反射部14Aの筐体22Aの構成、すなわち、筐体22Aの開口部40と開口部42との位置関係が上記実施の形態1と異なっている。具体的には、XZ側面視において、上記実施の形態1では、防塵用カバー24と光学素子28とのなす角度が鋭角であるのに対して、本実施の形態では、防塵用カバー24と光学素子28Aとのなす角度は鈍角である。
また、実施の形態2に係る表示システム2Aでは、光学素子28Aの構成が上記実施の形態1と異なっている。具体的には、光学素子28Aは、位相差板46と、ガラス基板48と、反射型偏光板50(偏光素子の一例)と、位相差板54とを有しており、上記実施の形態1で説明した透過型偏光板52(図2参照)を有していない。光学素子28Aは、位相差板46、ガラス基板48、反射型偏光板50及び位相差板54を、凹面ミラー26に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されている。
反射型偏光板50は、当該反射型偏光板50に入射した光のうち、第1の偏光方向d1を有する第1の直線偏光を反射し、且つ、第1の偏光方向d1に対して直交する第2の偏光方向d2を有する第2の直線偏光を透過する。すなわち、反射型偏光板50の反射軸は第1の偏光方向d1、透過軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交している。
なお、光学素子28Aの各構成要素の積層順はこれに限定されず、光学素子28Aは、例えば位相差板46、反射型偏光板50、ガラス基板48及び位相差板54を、凹面ミラー26に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されてもよい。
[2-2.表示システムの動作]
次に、図5を参照しながら、実施の形態2に係る表示システム2Aの動作について説明する。
実施の形態2に係る表示システム2Aでは、光学素子28Aは透過型偏光板を有していないため、車両4(図1参照)の後方を後方画像により確認する電子ミラーモードと、車両4の後方を光学的な反射により確認する光学ミラーモードとを切り替え可能である。なお、表示システム2Aを、電子ミラーモードと光学ミラーモードとを切り替えない構成とする場合には、光学素子28Aを、上記実施の形態1で説明した光学素子28と同様に、反射型偏光板50に代えて透過型偏光板52(図2参照)を有する構成とすればよい。
電子ミラーモードでは、表示素子12における後方画像の表示がオンとなる。また、図5に示すように、運転者10は、筐体22Aをボールジョイント38に対して回動させることにより、光学素子28Aの運転者10に対向する側の面が斜め上方を向くように(すなわち、車両4の天井が光学素子28Aに映り込むように)、筐体22Aの向きを調節する。これにより、光学素子28Aにおける外光の映り込みを抑制することができる。電子ミラーモードでは、表示素子12の表示面16から出射した光の経路は、上記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
一方、光学ミラーモードでは、表示素子12における後方画像の表示がオフとなる。また、図示しないが、運転者10は、筐体22Aをボールジョイント38に対して回動させることにより、光学素子28Aの運転者10に対向する側の面が車両4の後方を向くように、筐体22Aの向きを調節する。車両4の後方からの外光(車両4の後方を表す光)は、光学素子28Aの反射型偏光板50で反射する。これにより、光学素子28Aは、物理的な光学ミラーとして機能するようになる。
[2-3.効果]
本実施の形態では、運転者10は、車両4の運転状況等に応じて、表示システム2Aを電子ミラーモード及び光学ミラーモードのいずれかに切り替えることができる。また、XZ側面視において防塵用カバー24と光学素子28Aとのなす角度は鈍角であるので、電子ミラーモード及び光学ミラーモードの一方から他方に切り替える際に、筐体22Aの回動量が少なくて済む。
[2-4.変形例]
上述した光学素子28Aに代えて、図6に示すような液晶ミラー60を光学素子として用いてもよい。図6は、実施の形態2の変形例に係る液晶ミラー60の断面図である。
図6に示すように、液晶ミラー60は、位相差板46、反射型偏光板50、ガラス基板48a、TN(Twisted Nematic)液晶62(液晶光学素子の一例)、ガラス基板48b及び透過型偏光板52がこの順に積層されることにより構成されている。
電子ミラーモードでは、TN液晶62への電圧印加がオンされることにより、液晶ミラー60は、入射した光を透過させる透過モードに切り替えられる。凹面ミラー26(図5参照)の反射面44で反射した第1の円偏光は、液晶ミラー60の位相差板46に向かう。位相差板46を透過した第1の円偏光は、位相差板46により第2の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第2の直線偏光は、反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、反射型偏光板50の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光板50を透過する。
反射型偏光板50を透過した第2の直線偏光は、ガラス基板48aを透過してTN液晶62に入射し、第2の直線偏光のままTN液晶62を透過する。TN液晶62を透過した第2の直線偏光は、ガラス基板48bを透過して透過型偏光板52に入射する。この時、透過型偏光板52に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、透過型偏光板52の透過軸と同方向である。そのため、透過型偏光板52に入射した第2の直線偏光は、透過型偏光板52を透過する。
一方、光学ミラーモードでは、TN液晶62への電圧印加がオフされることにより、液晶ミラー60は、入射した光を反射する反射モードに切り替えられる。車両4の後方からの外光(車両4の後方を表す光)は、透過型偏光板52に入射し、透過型偏光板52を透過する際に第2の直線偏光に変換される。透過型偏光板52から出射した第2の直線偏光
は、ガラス基板48bを透過してTN液晶62に入射し、TN液晶62を透過する際に第1の直線偏光に変換される。TN液晶62から出射した第1の直線偏光は、ガラス基板48aを透過して反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板50の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板50で反射する。
反射型偏光板50で反射した第1の直線偏光は、ガラス基板48aを透過してTN液晶62に入射し、TN液晶62を透過する際に第2の直線偏光に変換される。TN液晶62から出射した第2の直線偏光は、ガラス基板48bを透過して透過型偏光板52に入射し、透過型偏光板52を透過する。
以上のように、液晶ミラー60をハーフミラーとして用いることより、電子ミラーモードと光学ミラーモードとを容易に切り替えることができるとともに、電子ミラーモードにおける映り込みを抑制することができる。また、後方画像のコントラストを向上させることができる。
(実施の形態3)
[3-1.表示システムの構成]
図7及び図8を参照しながら、実施の形態3に係る表示システム2Bの構成について説明する。図7は、電子ミラーモードにおける、実施の形態3に係る表示システム2Bの断面図である。図8は、光学ミラーモードにおける、実施の形態3に係る表示システム2Bの断面図である。
図7及び図8に示すように、実施の形態3に係る表示システム2Bでは、光学反射部14Bは、筐体22Bと、防塵用カバー24と、凹面ミラー26と、光学素子28Aと、平面ミラー64(第2のミラーの一例)とを有している。防塵用カバー24は、表示素子12に対向する側の面が斜め上方を向くように配置されている。これにより、防塵用カバー24における映り込みを抑制することができる。
平面ミラー64は、平面状の反射面66を有している。平面ミラー64は、例えば樹脂成型された部材の表面に、アルミニウム等の反射金属膜を蒸着することにより形成される。平面ミラー64は、表示素子12の表示面16と凹面ミラー26との間の光路上に配置されている。具体的には、平面ミラー64は、反射面66が表示素子12の表示面16及び光学素子28Aの位相差板46の各々に対向するように配置されている。なお、本実施の形態では、光学反射部14Bは平面ミラー64を有するようにしたが、平面ミラー64に代えて、凹面ミラー26とは異なる凹面ミラーを用いてもよい。
また、本実施の形態では、光学反射部14Bが平面ミラー64を有することに起因して、筐体22Bの形状が上記実施の形態1と異なっている。
また、本実施の形態では、光学素子28Aの構成は、基本的には、上記実施の形態2と同様である。但し、本実施の形態では、反射型偏光板50の透過軸は第1の偏光方向d1、反射軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交しているものとする。
[3-2.表示システムの動作]
次に、図7~図9を参照しながら、実施の形態3に係る表示システム2Bの動作について説明する。図9は、実施の形態3に係る表示システム2Bの動作を説明するための模式図である。なお、図9では、表示システム2Bの各構成要素の配置及び形状等を模式的に図示してある。
実施の形態3に係る表示システム2Bでは、上記実施の形態2と同様に、電子ミラーモードと光学ミラーモードとを切り替え可能である。
図7に示すように、電子ミラーモードでは、表示素子12における後方画像の表示がオンとなる。また、運転者10は、筐体22Bをボールジョイント38に対して回動させることにより、光学素子28Aの運転者10に対向する側の面が斜め下方を向くように、筐体22Bの向きを調節する。
図9に示すように、表示素子12の表示面16からの第1の直線偏光は、位相差板20に入射する。位相差板20を透過した第1の直線偏光は、位相差板20により右回りの第1の円偏光に変換される。位相差板20から出射した第1の円偏光は、防塵用カバー24を透過して平面ミラー64に向かい、平面ミラー64の反射面66で反射する。
平面ミラー64の反射面66で反射した第1の円偏光は、光学素子28Aの位相差板46に向かう。位相差板46を透過した第1の円偏光は、位相差板46により第2の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第2の直線偏光は、ガラス基板48を透過して反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、反射型偏光板50の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光板50で反射する。
反射型偏光板50で反射した第2の直線偏光は、ガラス基板48を透過して位相差板46に入射する。位相差板46を透過した第2の直線偏光は、位相差板46により左回りの第2の円偏光に変換される。位相差板46から出射した第2の円偏光は、凹面ミラー26に向かい、凹面ミラー26の反射面44で反射する。
凹面ミラー26の反射面44で反射した第2の円偏光は、光学素子28Aの位相差板46に向かう。位相差板46を透過した第2の円偏光は、位相差板46により第1の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第1の直線偏光は、ガラス基板48を透過して反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板50の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板50を透過する。
反射型偏光板50を透過した第1の直線偏光は、位相差板54により第1の円偏光に変換される。図7に示すように、位相差板54から出射した第1の円偏光は、運転者10の目32に入射する。
一方、図8に示すように、光学ミラーモードでは、表示素子12における後方画像の表示がオフとなる。また、運転者10は、筐体22Bをボールジョイント38に対して回動させることにより、光学素子28Aの運転者10に対向する側の面が車両4(図1参照)の後方を向くように、筐体22Bの向きを調節する。車両4の後方からの外光(車両4の後方を表す光)は、光学素子28Aの反射型偏光板50で反射する。
[3-3.効果]
運転者10の目32から後方画像の虚像56(図1参照)の表示位置までの視距離は、表示素子12の表示面16から出射した光が凹面ミラー26の反射面44で反射するまでの光路長によって決定される。
そのため、本実施の形態では、電子ミラーモードにおいて、表示素子12の表示面16から出射した光は、(i)平面ミラー64の反射面66で反射し、(ii)光学素子28
Aの反射型偏光板50で反射し、(iii)凹面ミラー26の反射面44で反射した後に、光学素子28Aを透過して運転者10の目32に入射する。
これにより、表示素子12の表示面16から出射した光が凹面ミラー26の反射面44で反射するまでの光路長を確保することができ、視距離を延ばすことができる。
(実施の形態4)
[4-1.表示システムの構成]
図10及び図11を参照しながら、実施の形態4に係る表示システム2Cの構成について説明する。図10は、電子ミラーモードにおける、実施の形態4に係る表示システム2Cの断面図である。図11は、光学ミラーモードにおける、実施の形態4に係る表示システム2Cの断面図である。
図10及び図11に示すように、実施の形態4に係る表示システム2Cでは、光学反射部14Cは、筐体22Cと、凹面ミラー26と、光学素子28Cと、平面ミラー64とを有しており、上記実施の形態1で説明した防塵用カバー24を有していない。
筐体22Cの表示素子12及び運転者10の各々に対向する側の側面には、収納空間36と連通する開口部68が形成されている。筐体22Cの開口部68は、光学反射部14Cの入射部30と出射部34とに亘って配置されている。
光学素子28Cは、筐体22Cの開口部68を覆うように配置され、凹面ミラー26の反射面44及び平面ミラー64の反射面66の各々に対向して配置されている。すなわち、光学素子28Cは、光学反射部14Cの入射部30と出射部34とに亘って配置されている。
光学素子28Cは、位相差板46と、ガラス基板48と、反射型偏光板50と、位相差板54Cとを有している。光学素子28Cは、位相差板46、ガラス基板48、反射型偏光板50及び位相差板54Cを、凹面ミラー26及び平面ミラー64に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されている。なお、光学素子28Cの各構成要素の積層順はこれに限定されず、光学素子28Cは、例えば位相差板46、反射型偏光板50、ガラス基板48及び位相差板54Cを、凹面ミラー26及び平面ミラー64に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されてもよい。
また、本実施の形態では、反射型偏光板50の透過軸は第1の偏光方向d1、反射軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交しているものとする。位相差板54Cは、光学反射部14Cの出射部34にのみ配置され、光学反射部14Cの入射部30には配置されていない。すなわち、光学反射部14Cの運転者10に対向する側の面において、光学反射部14Cの入射部30には反射型偏光板50が配置され、光学反射部14Cの出射部34には位相差板54Cが配置されている。
また、本実施の形態では、表示素子12の表示面16には、上記実施の形態1で説明した位相差板20(図2参照)は配置されていない。
[4-2.表示システムの動作]
次に、図10及び図11を参照しながら、実施の形態4に係る表示システム2Cの動作について説明する。
実施の形態4に係る表示システム2Cでは、上記実施の形態2と同様に、電子ミラーモードと光学ミラーモードとを切り替え可能である。
図10に示すように、電子ミラーモードでは、表示素子12における後方画像の表示がオンとなる。また、運転者10は、筐体22Cをボールジョイント38に対して回動させることにより、光学素子28Cの運転者10に対向する側の面が斜め下方を向くように、筐体22Cの向きを調節する。
図10に示すように、表示素子12の表示面16からの第1の直線偏光は、光学反射部14Cの入射部30、すなわち、光学素子28Cの反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板50の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板50を透過する。反射型偏光板50を透過した第1の直線偏光は、ガラス基板48を透過して位相差板46に入射する。
位相差板46を透過した第1の直線偏光は、位相差板46により右回りの第1の円偏光に変換される。位相差板46から出射した第1の円偏光は、平面ミラー64に向かい、平面ミラー64の反射面66で反射する。
平面ミラー64の反射面66で反射した第1の円偏光は、光学素子28Cの位相差板46に向かう。位相差板46を透過した第1の円偏光は、位相差板46により第2の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第2の直線偏光は、ガラス基板48を透過して反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、反射型偏光板50の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光板50で反射する。
反射型偏光板50で反射した第2の直線偏光は、ガラス基板48を透過して位相差板46に入射する。位相差板46を透過した第2の直線偏光は、位相差板46により左回りの第2の円偏光に変換される。位相差板46から出射した第2の円偏光は、凹面ミラー26に向かい、凹面ミラー26の反射面44で反射する。
凹面ミラー26の反射面44で反射した第2の円偏光は、光学素子28Cの位相差板46に向かう。位相差板46を透過した第2の円偏光は、位相差板46により第1の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第1の直線偏光は、ガラス基板48を透過して反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板50の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板50を透過する。
反射型偏光板50を透過した第1の直線偏光は、位相差板54Cに入射する。位相差板54Cを透過した第1の直線偏光は、位相差板54Cにより第1の円偏光に変換される。光学反射部14Cの出射部34、すなわち、位相差板54Cから出射した第1の円偏光は、運転者10の目32に入射する。
一方、図11に示すように、光学ミラーモードでは、表示素子12における後方画像の表示がオフとなる。また、運転者10は、筐体22Cをボールジョイント38に対して回動させることにより、光学素子28Cの運転者10に対向する側の面が車両4(図1参照)の後方を向くように、筐体22Cの向きを調節する。車両4の後方からの外光(車両4の後方を表す光)は、光学素子28Cの反射型偏光板50で反射する。
[4-3.効果]
本実施の形態では、電子ミラーモードにおいて、表示素子12の表示面16から出射した光は、(i)平面ミラー64の反射面66で反射し、(ii)光学素子28Cの反射型
偏光板50で反射し、(iii)凹面ミラー26の反射面44で反射した後に、光学素子28Cを透過して運転者10の目32に入射する。
これにより、表示素子12の表示面16から出射した光が凹面ミラー26の反射面44で反射するまでの光路長を確保することができ、視距離を延ばすことができる。
(実施の形態5)
[5-1.表示システムの構成]
図12を参照しながら、実施の形態5に係る表示システム2Dの構成について説明する。図12は、実施の形態5に係る表示システム2Dの断面図である。
図12に示すように、実施の形態5に係る表示システム2Dでは、光学反射部14Dは、筐体22Dと、凹面ミラー26と、光学素子28と、平面ミラー64と、ハーフミラー70とを有しており、上記実施の形態1で説明した防塵用カバー24を有していない。
ハーフミラー70は、筐体22Dの開口部40を覆うように配置され、表示素子12と平面ミラー64との間に配置されている。すなわち、ハーフミラー70は、光学反射部14Dの入射部30に配置されている。ハーフミラー70は、位相差板72と、ガラス基板74と、反射型偏光板76とを有している。ハーフミラー70は、位相差板72、ガラス基板74及び反射型偏光板76を、平面ミラー64に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されている。なお、ハーフミラー70の各構成要素の積層順はこれに限定されず、ハーフミラー70は、例えば位相差板72、反射型偏光板76及びガラス基板74を、平面ミラー64に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されてもよい。
ハーフミラー70の位相差板72、ガラス基板74及び反射型偏光板76はそれぞれ、光学素子28の位相差板46、ガラス基板48及び反射型偏光板50と同様の機能を有している。本実施の形態では、ハーフミラー70の反射型偏光板76の透過軸は第1の偏光方向d1、反射軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交しているものとする。
また、本実施の形態では、光学素子28の反射型偏光板50の反射軸は第1の偏光方向d1、透過軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交しているものとする。
また、本実施の形態では、表示素子12の表示面16には、上記実施の形態1で説明した位相差板20(図2参照)は配置されていない。
[5-2.表示システムの動作]
次に、図12を参照しながら、実施の形態5に係る表示システム2Dの動作について説明する。
図12に示すように、表示素子12の表示面16からの第1の直線偏光は、ハーフミラー70の反射型偏光板76に入射する。この時、反射型偏光板76に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板76の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板76に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板76を透過する。反射型偏光板76を透過した第1の直線偏光は、ガラス基板74を透過して位相差板72に入射する。
位相差板72を透過した第1の直線偏光は、位相差板72により右回りの第1の円偏光
に変換される。位相差板72から出射した第1の円偏光は、平面ミラー64に向かい、平面ミラー64の反射面66で反射する。
平面ミラー64の反射面66で反射した第1の円偏光は、ハーフミラー70の位相差板72に向かう。位相差板72を透過した第1の円偏光は、位相差板72により第2の直線偏光に変換される。位相差板72から出射した第2の直線偏光は、ガラス基板74を透過して反射型偏光板76に入射する。この時、反射型偏光板76に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、反射型偏光板76の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光板76に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光板76で反射する。
反射型偏光板76で反射した第2の直線偏光は、ガラス基板74を透過して位相差板72に入射する。位相差板72を透過した第2の直線偏光は、位相差板72により左回りの第2の円偏光に変換される。位相差板72から出射した第2の円偏光は、光学素子28の位相差板46に向かう。
位相差板46を透過した第2の円偏光は、位相差板46により第1の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第1の直線偏光は、ガラス基板48を透過して反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板50の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板50で反射する。
反射型偏光板50で反射した第1の直線偏光は、ガラス基板48を透過して位相差板46に入射する。位相差板46を透過した第2の直線偏光は、位相差板46により第1の円偏光に変換される。位相差板46を透過した第1の円偏光は、凹面ミラー26に向かい、凹面ミラー26の反射面44で反射する。
凹面ミラー26の反射面44で反射した第1の円偏光は、光学素子28の位相差板46に向かう。位相差板46を透過した第1の円偏光は、位相差板46により第2の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第2の直線偏光は、ガラス基板48を透過して反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、反射型偏光板50の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光板50を透過する。
反射型偏光板50を透過した第2の直線偏光は、透過型偏光板52に入射する。この時、透過型偏光板52に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、透過型偏光板52の透過軸と同方向である。そのため、透過型偏光板52に入射した第2の直線偏光は、透過型偏光板52を透過する。
透過型偏光板52を透過した第2の直線偏光は、位相差板54に入射し、位相差板54により第2の円偏光に変換される。位相差板54から出射した第2の円偏光は、運転者10の目32に入射する。
[5-3.効果]
本実施の形態では、表示素子12の表示面16から出射した光は、(i)平面ミラー64の反射面66で反射し、(ii)ハーフミラー70の反射型偏光板76で反射し、(iii)光学素子28の反射型偏光板50で反射し、(iv)凹面ミラー26の反射面44で反射した後に、光学素子28を透過して運転者10の目32に入射する。
これにより、表示素子12の表示面16から出射した光が凹面ミラー26の反射面44で反射するまでの光路長を確保することができ、視距離を延ばすことができる。
(実施の形態6)
[6-1.表示システムの構成]
図13~図15を参照しながら、実施の形態6に係る表示システム2Eの構成について説明する。図13は、電子ミラーモードにおける、実施の形態6に係る表示システム2Eの断面図である。図14は、光学ミラーモードにおける、実施の形態6に係る表示システム2Eの断面図である。図15は、実施の形態6に係る表示システム2Eの凹面ミラー26、光学素子28A及びハーフミラー78を示す正面図である。
図13及び図14に示すように、実施の形態6に係る表示システム2Eでは、光学反射部14Eは、筐体22Eと、防塵用カバー24と、凹面ミラー26と、光学素子28Aと、平面ミラー64と、ハーフミラー78とを有している。
ハーフミラー78は、筐体22Eの収納空間36において、平面ミラー64と凹面ミラー26との間に配置されている。ハーフミラー78は、反射型偏光板80と、ガラス基板82と、位相差板84とを有している。ハーフミラー78は、反射型偏光板80、ガラス基板82及び位相差板84を、平面ミラー64に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されている。なお、ハーフミラー78の各構成要素の積層順はこれに限定されず、ハーフミラー78は、例えばガラス基板82、反射型偏光板80及び位相差板84を、平面ミラー64に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されてもよい。ハーフミラー78の反射型偏光板80、ガラス基板82及び位相差板84はそれぞれ、光学素子28の反射型偏光板50、ガラス基板48及び位相差板46と同様の機能を有している。本実施の形態では、ハーフミラー78の反射型偏光板80の透過軸は第1の偏光方向d1、反射軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交しているものとする。
また、本実施の形態では、光学素子28Aの反射型偏光板50の透過軸は第1の偏光方向d1、反射軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交しているものとする。
また、図15に示すように、凹面ミラー26は、反射面44が車両4(図1参照)の上方を向くように配置されている。光学素子28A及びハーフミラー78の各々の下端部(凹面ミラー26側における端部)は、凹面ミラー26の反射面44側の形状に対応して、凸状に湾曲した形状に形成されている。なお、光学素子28A及びハーフミラー78の各々の上端部(平面ミラー64側における端部)は、直線状に形成されている。これにより、光学素子28A及びハーフミラー78の各々の下端部を凹面ミラー26の反射面44に近接して配置することができ、筐体22Eの小型化を図ることができる。
また、本実施の形態では、表示素子12の表示面16には、上記実施の形態1で説明した位相差板20(図2参照)は配置されていない。
[6-2.表示システムの動作]
次に、図13及び図14を参照しながら、実施の形態6に係る表示システム2Eの動作について説明する。
実施の形態6に係る表示システム2Eでは、上記実施の形態2と同様に、電子ミラーモードと光学ミラーモードとを切り替え可能である。
図13に示すように、電子ミラーモードでは、表示素子12における後方画像の表示がオンとなる。また、運転者10は、筐体22Eをボールジョイント38に対して回動させ
ることにより、光学素子28Aの運転者10に対向する側の面が斜め上方を向くように(すなわち、車両4の天井が光学素子28Aに映り込むように)、筐体22Eの向きを調節する。これにより、光学素子28Aにおける外光の映り込みを抑制することができる。また、後述するように電子ミラーモードから光学ミラーモードに切り替える際に、筐体22Eの回動量が少なくて済む。
図13に示すように、表示素子12の表示面16からの第1の直線偏光は、防塵用カバー24を透過して平面ミラー64に向かい、平面ミラー64の反射面66で反射する。
平面ミラー64の反射面66で反射した第1の直線偏光は、ハーフミラー78の反射型偏光板80に向かい、反射型偏光板80に入射する。この時、反射型偏光板80に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板80の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板80に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板80を透過する。
反射型偏光板80を透過した第1の直線偏光は、ガラス基板82を透過して位相差板84に入射する。位相差板84を透過した第1の直線偏光は、位相差板84により第1の円偏光に変換される。位相差板84から出射した第1の円偏光は、凹面ミラー26に向かい、凹面ミラー26の反射面44で反射する。
凹面ミラー26の反射面44で反射した第1の円偏光は、ハーフミラー78の位相差板84に向かう。位相差板84を透過した第1の円偏光は、位相差板84により第2の直線偏光に変換される。位相差板84から出射した第2の直線偏光は、ガラス基板82を透過して反射型偏光板80に入射する。この時、反射型偏光板80に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、反射型偏光板80の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光板80に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光板80で反射する。
反射型偏光板80で反射した第2の直線偏光は、ガラス基板82を透過して位相差板84に入射する。位相差板84を透過した第2の直線偏光は、位相差板84により第2の円偏光に変換される。位相差板84から出射した第2の円偏光は、光学素子28Aの位相差板46に向かう。
位相差板46を透過した第2の円偏光は、位相差板46により第1の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第1の直線偏光は、ガラス基板48を透過して反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板50の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板50を透過する。
反射型偏光板50を透過した第1の直線偏光は、位相差板54により第1の円偏光に変換される。位相差板54から出射した第1の円偏光は、運転者10の目32に入射する。
一方、図14に示すように、光学ミラーモードでは、表示素子12における後方画像の表示がオフとなる。また、運転者10は、筐体22Eをボールジョイント38に対して回動させることにより、光学素子28Aの運転者10に対向する側の面が車両4の後方を向くように、筐体22Eの向きを調節する。車両4の後方からの外光は、光学素子28Aの反射型偏光板50で反射する。
[6-3.効果]
本実施の形態では、表示素子12の表示面16から出射した光は、(i)平面ミラー64の反射面66で反射し、(ii)凹面ミラー26の反射面44で反射し、(iii)ハ
ーフミラー78の反射型偏光板80で反射した後に、光学素子28Aを透過して運転者10の目32に入射する。
これにより、表示素子12の表示面16から出射した光が凹面ミラー26の反射面44で反射するまでの光路長を確保することができ、視距離を延ばすことができる。
[6-4.変形例]
図16を参照しながら、実施の形態6の変形例に係る表示システム2Fの構成について説明する。図16は、電子ミラーモードにおける、実施の形態6の変形例に係る表示システム2Fの断面図である。
図16に示すように、実施の形態6の変形例に係る表示システム2Fでは、光学反射部14Fの筐体22Fの開口部40の位置と平面ミラー64の位置とが前後逆になっている。これに伴い、表示素子12は、光学反射部14Fよりも車両4の前方側に配置されている。このような構成であっても、上述した効果を得ることができる。
(実施の形態7)
[7-1.表示システムの構成]
図17及び図18を参照しながら、実施の形態7に係る表示システム2Gの構成について説明する。図17は、電子ミラーモードにおける、実施の形態7に係る表示システム2Gの断面図である。図18は、光学ミラーモードにおける、実施の形態7に係る表示システム2Gの断面図である。
図17及び図18に示すように、実施の形態7に係る表示システム2Gでは、光学反射部14Gは、筐体22Gと、防塵用カバー24と、凹面ミラー26と、光学素子28Gとを有している。
筐体22Gの表示素子12及び運転者10の各々に対向する側の側面には、収納空間36と連通する開口部86が形成されている。筐体22Gの開口部86は、光学反射部14Gの入射部30と出射部34とに亘って配置されている。防塵用カバー24は、筐体22Gの開口部86を覆うように配置されている。
光学素子28Gは、筐体22Gの収納空間36において、防塵用カバー24と凹面ミラー26との間に配置されている。光学素子28Gは、位相差板46と、ガラス基板48と、反射型偏光板50とを有している。光学素子28Gは、位相差板46、ガラス基板48及び反射型偏光板50を、凹面ミラー26に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されている。なお、光学素子28Gの各構成要素の積層順はこれに限定されず、光学素子28Gは、例えば位相差板46、反射型偏光板50及びガラス基板48を、凹面ミラー26に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されてもよい。また、本実施の形態では、光学素子28Gを平板状に形成したが、これに限定されず、例えばシリンドリカル状に形成してもよい。
反射型偏光板50は、防塵用カバー24に対向して配置されている。すなわち、反射型偏光板50は、光学反射部14Gの入射部30と出射部34とに亘って配置されている。本実施の形態では、反射型偏光板50の透過軸は第1の偏光方向d1、反射軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交しているものとする。
また、表示素子12と防塵用カバー24との間には、オーバーヘッドコンソール6の凹部18の開口部を覆う遮光部材88が配置されている。遮光部材88は、遮光性を有する材料で形成され、例えば左右方向に長い横長の平板状に形成されている。
また、本実施の形態では、表示素子12の表示面16には、上記実施の形態1で説明した位相差板20(図2参照)は配置されていない。
[7-2.表示システムの動作]
次に、図17及び図18を参照しながら、実施の形態7に係る表示システム2Gの動作について説明する。
実施の形態7に係る表示システム2Gでは、上記実施の形態2と同様に、電子ミラーモードと光学ミラーモードとを切り替え可能である。
図17に示すように、電子ミラーモードでは、表示素子12における後方画像の表示がオンとなる。また、運転者10は、筐体22Gをボールジョイント38に対して回動させることにより、防塵用カバー24の運転者10に対向する側の面が斜め上方を向くように、筐体22Gの向きを調節する。
図17に示すように、表示素子12の表示面16からの第1の直線偏光は、防塵用カバー24を透過して、光学素子28Gの反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板50の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板50を透過する。
反射型偏光板50を透過した第1の直線偏光は、ガラス基板48を透過して位相差板46に入射する。位相差板46を透過した第1の直線偏光は、位相差板46により右回りの第1の円偏光に変換される。位相差板46から出射した第1の円偏光は、凹面ミラー26に向かい、凹面ミラー26の反射面44で反射する。
凹面ミラー26の反射面44で反射した第1の円偏光は、光学素子28Gの位相差板46に向かう。位相差板46を透過した第1の円偏光は、位相差板46により第2の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第2の直線偏光は、ガラス基板48を透過して反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、反射型偏光板50の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光板50で反射する。
反射型偏光板50で反射した第2の直線偏光は、ガラス基板48を透過して位相差板46に入射する。位相差板46を透過した第2の直線偏光は、位相差板46により左回りの第2の円偏光に変換される。位相差板46から出射した第2の円偏光は、凹面ミラー26に向かい、凹面ミラー26の反射面44で反射する。
凹面ミラー26の反射面44で反射した第2の円偏光は、光学素子28Gの位相差板46に向かう。位相差板46を透過した第2の円偏光は、位相差板46により第1の直線偏光に変換される。位相差板46から出射した第1の直線偏光は、ガラス基板48を透過して反射型偏光板50に入射する。この時、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板50の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板50に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板50を透過する。反射型偏光板50を透過した第1の直線偏光は、防塵用カバー24を透過して、運転者10の目32に入射する。
一方、図18に示すように、光学ミラーモードでは、表示素子12における後方画像の表示がオフとなる。また、運転者10は、筐体22Gをボールジョイント38に対して回
動させることにより、光学素子28Gの運転者10に対向する側の面が車両4(図1参照)の後方を向くように、筐体22Gの向きを調節する。車両4の後方からの外光は、光学素子28Gの反射型偏光板50で反射する。
[7-3.効果]
本実施の形態では、表示素子12の表示面16から出射した光は、(i)凹面ミラー26の反射面44で反射し、(ii)光学素子28Gの反射型偏光板50で反射し、(iii)凹面ミラー26の反射面44で再度反射した後に、光学素子28Gを透過して運転者10の目32に入射する。すなわち、表示素子12の表示面16から出射した光は、光学素子28Gと凹面ミラー26との間を2往復した後に、運転者10の目32に入射する。
これにより、表示素子12の表示面16から出射した光が凹面ミラー26の反射面44で反射するまでの光路長を確保することができ、視距離を延ばすことができる。
また、光学反射部14Gは、凹面ミラー26と光学素子28Gとが互いに対向して配置される構成であるので、筐体22Gの前後方向における大きさを薄型化することができる。なお、本実施の形態では、光学素子28Gと防塵用カバー24とを別体としたが、実施の形態4のように光学素子28G自体を防塵用カバーとする構成としてもよい。また、実施の形態4のように、光学素子28Gの出射領域のみに位相差板34(図10参照)を配置した構成としてもよい。
[7-4.変形例]
図19を参照しながら、実施の形態7の変形例に係る表示システム2Hの構成について説明する。図19は、電子ミラーモードにおける、実施の形態7の変形例に係る表示システム2Hの断面図である。
図19に示すように、実施の形態7の変形例に係る表示システム2Hでは、表示素子12は、表示面16が車両4の下方を向くように配置されている。また、表示素子12と遮光部材88との間には、平面ミラー90が配置されている。平面ミラー90は、平面状の反射面91を有している。平面ミラー90は、反射面91が表示素子12及び防塵用カバー24の各々に対向するように、鉛直方向に対して傾斜して配置されている。
表示素子12の表示面16から出射した光は、平面ミラー90の反射面91で反射した後に、防塵用カバー24に入射する。
本変形例では、表示素子12の表示面16から出射した光が凹面ミラー26で反射するまでの光路長をより長く確保することができ、視距離をより効果的に延ばすことができる。
(実施の形態8)
[8-1.表示システムの構成]
図20を参照しながら、実施の形態8に係る表示システム2Jの構成について説明する。図20は、実施の形態8に係る表示システム2Jの断面図である。
図20に示すように、実施の形態8に係る表示システム2Jは、上記実施の形態1で説明した構成要素に加えて、保持部材92を備えている。
保持部材92は、オーバーヘッドコンソール6の凹部18に配置され、表示素子12と光学反射部14との位置関係を保つための部材である。保持部材92は、表示素子12を保持する第1の保持部92aと、ボールジョイント38を介して光学反射部14を保持す
る第2の保持部92bと、第1の保持部92aと第2の保持部92bとを連結する連結部92cとを有している。これにより、表示素子12は、保持部材92を介してオーバーヘッドコンソール6に固定されるようになる。
[8-2.効果]
本実施の形態では、保持部材92により、表示システム2Jをユニット化することができる。これにより、表示システム2Jを車両4(図1参照)に搭載する前(例えば工場出荷時等)であっても、表示システム2Jの光学性能に関する検査等を行うことができる。なお、上記実施の形態2~7についても、保持部材92を適用することができる。
(実施の形態9)
[9-1.表示システムの概要]
図21を参照しながら、実施の形態9に係る表示システム2Kの概要について説明する。図21は、実施の形態9に係る表示システム2Kが搭載された車両4の一例を示す図である。
図21に示すように、表示システム2は、例えば車両4のウインドシールド58における天井94に近い側の部分に、ボールジョイント38を介して取り付けられている。これにより、表示システム2Kは、運転席8に着座した運転者10が前方を向いた状態で、運転者10の視界に入る位置に配置される。なお、本実施の形態では、表示システム2Kがウインドシールド58に取り付けられる場合について説明するが、これに限定されず、例えばオーバーヘッドコンソール等に取り付けられてもよい。
以下の説明において、座標系を次のように定義する。
まず、図21に示すように、表示システム2Kから出射した光が運転者10の目に至る光路(図21の一点鎖線に含まれる)を有する平面をXZ面と定義する。したがって、図21は、車両4をXZ面で切断した断面に相当する。次に、XZ面において、車両4の上下方向(鉛直方向)をZ軸方向と定義する。次に、XZ面と垂直な方向をY軸方向と定義する。したがって、Y軸方向、及び、Z軸方向と直交するX軸方向は、車両4の前進方向(以下、「前方」とも言う)と、車両4の後退方向(以下、「後方」とも言う)とを結ぶ直線に対して、ややY軸方向に傾く方向となる。また、図21において、「前方」側をX軸のマイナス側、「後方」側をX軸のプラス側、「上方」をZ軸のプラス側、「下方」をZ軸のマイナス側とする。
車両4は、例えば普通乗用車、バス又はトラック等の自動車である。車両4のリアバンパー又はトランクフード等には、当該車両4の後方を撮影するためのカメラ(図示せず)が搭載されている。なお、本実施の形態では、表示システム2Kが移動体としての車両4に搭載される場合について説明するが、これに限定されず、例えば建機、農機、船舶又は航空機等の各種移動体に搭載されてもよい。
本実施の形態では、表示システム2Kは、カメラにより撮影された後方画像(画像の一例)を表示するための、いわゆる電子ミラーである。運転者10は、表示システム2Kに表示された後方画像を見ることにより、後方画像に映った車両4の後方を確認することができる。すなわち、表示システム2Kは、光の反射を利用して車両4の後方を映す従来の物理的なルームミラーの代用として用いられる。
[9-2.表示システムの構成]
次に、図21~図23を参照しながら、実施の形態9に係る表示システム2Kの構成について説明する。図22は、実施の形態9に係る表示システム2Kの断面図である。図2
3は、実施の形態9に係る表示システム2Kの内部構造を示す斜視図である。
図22に示すように、表示システム2Kは、筐体116と、表示素子118と、光学素子120と、ミラー122(第1のミラーの一例)とを備えている。
筐体116は、例えば合成樹脂等で形成されており、内部に収納空間124を有している。筐体116の収納空間124には、表示素子118、光学素子120及びミラー122が収納されている。図21に示すように、筐体116は、ボールジョイント38を介して車両4のウインドシールド58から吊り下げられている。筐体116をボールジョイント38に対して回動させることにより、車両4のウインドシールド58に対する筐体116の姿勢を変更可能である。
筐体116の運転者10に対向する側の側面116a(枠体の一例)には、収納空間124と連通する開口部126が形成されている。開口部126は、横長の矩形状に形成されている。すなわち、開口部126の左右方向(Y軸方向)における大きさは、上下方向(Z軸方向)における大きさよりも大きい。図23に示すように、開口部126の大きさは、運転者10から見てミラー122の反射面138(後述する)の左右方向における幅の一部を視認可能な大きさである。
筐体116の開口部126は、例えば透明の樹脂又はガラス等で形成された板状の防塵用カバー128により閉塞されている。これにより、外部の塵埃等が、開口部126を通して筐体116の収納空間124に侵入するのを抑制することができる。なお、防塵用カバー128は、当該防塵用カバー128の運転者10に対向する側の面が斜め上方を向くように、鉛直方向に対して傾斜して配置されている。これにより、防塵用カバー128における外光の映り込みを抑制することができる。
表示素子118は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal
Display)である。表示素子118は、車両4のカメラにより撮影された後方画像を表示するための表示面130を有しており、筐体116の開口部126の斜め上方に配置されている。表示面130は、横長の矩形状に形成されており、例えば斜め下方を向くように、鉛直方向に対して傾斜して配置されている。表示面130は、後方画像を形成するための光を出射する。表示面130から出射する光は、第1の偏光方向d1(図22の紙面垂直方向であって、Y軸方向)を有する第1の直線偏光である。
光学素子120は、表示素子118とミラー122との間に配置されている。すなわち、光学素子120は、表示素子118の前方において、表示素子118の表示面130に対向して配置されている。光学素子120は、ガラス基板132(透光性基板の一例)と、反射型偏光板134(偏光素子の一例)と、位相差板136とを有している。なお、本明細書において、「板」とは、板だけでなく、フィルム又はシート等と呼ばれるような部材も含む概念である。
光学素子120は、全体として平板状に形成されており、上述した第1の偏光方向d1に対して平行な軸線周り(Y軸周り)に、表示面130に対して傾斜して配置されている。なお、本明細書において、「平行」とは、完全に平行であることを意味するだけではなく、実質的に平行である場合、例えば数°程度の誤差を含むことをも意味する。ここで、光学素子120の上端部120a(Z軸のプラス側の端部)は、ミラー122に近い側に配置され、光学素子120の下端部120b(Z軸のマイナス側の端部)は、ミラー122から遠い側に配置される。光学素子120は、反射型偏光板134、ガラス基板132及び位相差板136を、表示素子118の表示面130に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されている。
ガラス基板132は、反射型偏光板134及び位相差板136を支持するための基板であり、透光性を有する材料、例えば透明のガラスで形成されている。ガラス基板132の表示素子118に対向する側の面には、反射型偏光板134が重ね合わされている。また、ガラス基板132のミラー122に対向する側の面には、位相差板136が重ね合わされている。すなわち、ガラス基板132は、反射型偏光板134と位相差板136との間に積層されている。これにより、反射型偏光板134及び位相差板136の各々がフィルム状に形成されている場合に、反射型偏光板134と位相差板136とが直接重ね合わされることに起因する色ムラ(モアレ)の発生を抑制することができる。
反射型偏光板134は、当該反射型偏光板134に入射した光のうち、第1の偏光方向d1を有する第1の直線偏光を透過し、且つ、第1の偏光方向d1に対して直交する第2の偏光方向d2(図22の紙面内方向であって、XZ平面内の方向)を有する第2の直線偏光を反射する。すなわち、反射型偏光板134の透過軸は第1の偏光方向d1、反射軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交している。なお、本明細書において、「直交」とは、完全に直角に交わることを意味するだけではなく、実質的に直角に交わる場合、例えば数°程度の誤差を含むことをも意味する。
位相差板136は、当該位相差板136に入射した直線偏光を円偏光に変換し、且つ、当該位相差板136に入射した円偏光を直線偏光に変換するためのλ/4板である。位相差板136の遅相軸は、反射型偏光板134の反射軸に対して45°傾斜している。これにより、位相差板136は、当該位相差板136に入射した光のうち、互いに直交する直線偏光間に波長λの1/4の位相差(すなわち、90°の位相差)を生じさせる機能を有する。
ミラー122は、光学素子120の前方において、光学素子120の位相差板136に対向して配置されている。すなわち、ミラー122は、表示素子118の表示面130に対向して配置されている。ミラー122は凹面ミラーであり、自由曲面である凹面状の反射面38を有している。ミラー122は、例えば樹脂成型された部材の表面に、アルミニウム等の反射金属膜を蒸着することにより形成される。ミラー122は、反射面138が光学素子120の位相差板136に対向するように配置されている。
なお、ミラー122及び反射型偏光板134は、互いに非平行に配置されている。具体的には、図22に示すXZ側面視において、ミラー122の反射面138の中心における接線と、反射型偏光板134の表示素子118に対向する側の面の中心における接線とは、互いに非平行である。
[9-3.表示システムの動作]
次に、図21、図22及び図24を参照しながら、実施の形態9に係る表示システム2Kの動作について説明する。図24は、実施の形態9に係る表示システム2Kの動作を説明するための模式図である。なお、図24では、表示システム2Kの各構成要素の配置及び形状等を模式的に図示してある。
図24に示すように、表示素子118の表示面130からの第1の直線偏光は、光学素子120の反射型偏光板134に入射する。この時、反射型偏光板134に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板134の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板134に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板134を透過する。
反射型偏光板134を透過した第1の直線偏光は、ガラス基板132を透過して位相差
板136に向かう。位相差板136を透過した第1の直線偏光は、位相差板136により右回りの第1の円偏光に変換される。位相差板136から出射した第1の円偏光は、ミラー122に向かい、ミラー122の反射面138で反射する。ここで、位相差板136から出射した第1の円偏光は、必ずしも厳密な円偏光でなくてもよく、例えば楕円率(=短軸/長軸)が70%以下の楕円偏光であってもよい。この時、後述するように、位相差板136を透過した第1の円偏光が第2の直線偏光に変換された際に、厳密な直線偏光からのずれに伴う光量損失は1/3以下であることが望ましい。この場合、所望光が66%以上となり、視認性を得ることができる。
ミラー122の反射面138で反射した第1の円偏光は、位相差板136に向かう。位相差板136を透過した第1の円偏光は、位相差板136により第2の直線偏光に変換される。位相差板136から出射した第2の直線偏光は、ガラス基板132を透過して反射型偏光板134に入射する。この時、反射型偏光板134に入射した第2の直線偏光の第2の偏光方向d2は、反射型偏光板134の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光板134に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光板134で反射する。
反射型偏光板134で反射した第2の直線偏光は、ガラス基板132を透過して位相差板136に向かう。位相差板136を透過した第2の直線偏光は、位相差板136により第1の円偏光とは偏光方向の異なる左回りの第2の円偏光に変換される。位相差板136から出射した第2の円偏光は、ミラー122に向かい、ミラー122の反射面138で反射する。
図22に示すように、ミラー122の反射面138で反射した第2の円偏光は、光学素子120を透過することなく防塵用カバー128に向かい、防塵用カバー128を透過して(すなわち、開口部126を介して)運転者10の目32に入射する。
以上のようにして、表示素子118の表示面130から出射した光は、(i)ミラー122の反射面138で反射し、(ii)反射型偏光板134で反射し、(iii)ミラー122の反射面138で再度反射した後に、運転者10の目に入射する。すなわち、表示素子118の表示面130から出射した光は、反射型偏光板134とミラー122との間を2往復した後に、運転者10の目に入射する。
運転者114がミラー122の反射面138で反射された後方画像を見ることにより、図21に示すように、運転者10には、表示システム2Kよりも車両4の前方の表示位置に後方画像の虚像56が表示されているように見える。これにより、運転者10がウインドシールド58通して車両4の前方を見ている状態で、後方画像の虚像56に視線を移す場合における目のピント調節量が比較的少なくて済む。
なお、図24に示すように、ミラー122の反射面138は、位相差板136からの第1の円偏光が反射する第1の反射領域144と、位相差板136からの第2の円偏光が反射する第2の反射領域146とを有する。第1の反射領域144は、反射面138の上側寄りに配置され、第2の反射領域146は、反射面138の下側寄りに配置されている。この時、第1の反射領域144の一部(下端部)は、第2の反射領域146の一部(上端部)と重なっている。これにより、ミラー122の上下方向における大きさをコンパクトにすることができる。
[9-4.効果]
以下、図25を参照しながら、実施の形態9に係る表示システム2Kと比較例に係る表示システム200とを比較することにより、実施の形態9に係る表示システム2Kにより得られる効果について説明する。図25は、実施の形態9に係る表示システム2Kと比較
例に係る表示システム200とを比較するための図である。
図25の(a)に示すように、比較例に係る表示システム200は、筐体202と、液晶ディスプレイ等で構成された表示素子204と、光学素子206と、凹面ミラー208とを備えている。
筐体202の内部には、表示素子204、光学素子206及び凹面ミラー208が収納されている。筐体202の開口部210には、防塵用カバー212が配置されている。表示素子204は、後方画像を表示するための表示面214を有し、最表面にはλ/4板(図示せず)が配置されている。
光学素子206は、表示素子204の表示面214に対向するように配置され、表示面214に対して傾斜して配置されている。図示しないが、光学素子206は、反射型偏光板とλ/4板とが互いに重ね合わされることにより構成されている。
凹面ミラー208は、自由曲面を有する凹面ミラーであり、光学素子206に対向するように配置されている。
表示素子204の表示面214から出射した光は、光学素子206で反射した後に、凹面ミラー208に入射する。凹面ミラー208で反射した出射光は、光学素子206を透過した後に、防塵用カバー212を透過して運転者の目に入射する。
以上のようにして、表示素子204の表示面214から出射した光は、(i)光学素子206で反射し、(ii)凹面ミラー208で反射した後に、運転者の目に入射する。すなわち、表示素子204の表示面214から出射した光は、光学素子206と凹面ミラー208との間を1往復した後に、運転者の目に入射する。
ここで、運転者の目から後方画像の虚像の表示位置までの視距離は、表示素子204の表示面214からの出射光が光学素子206を経由して凹面ミラー208に到達するまでの光路長(図25の(a)において二点鎖線で示す距離)によって決定される。そのため、視距離を確保するためには、光路長を所定の長さに設定する必要があるが、その分だけ各構成要素(表示素子204、光学素子206及び凹面ミラー208)間の距離が長くなり、筐体202が大型化してしまうという課題が生じる。
これに対して、図25の(b)に示すように、実施の形態9に係る表示システム2Kでは、表示素子118の表示面130から出射した光は、(i)ミラー122の反射面138で反射し、(ii)反射型偏光板134で反射し、(iii)ミラー122の反射面138で再度反射した後に、運転者10の目に入射する。すなわち、表示素子118の表示面130から出射した光は、反射型偏光板134とミラー122との間を2往復した後に、運転者10の目に入射する。
これにより、表示素子118の表示面130からの出射光が光学素子120を経由してミラー122で再度反射するまでの光路長(図25の(b)において二点鎖線で示す距離)を上記所定の長さに設定する場合に、各構成要素(表示素子118、光学素子120及びミラー122)間の距離を短く抑えることができ、筐体116の小型化を図ることができる。
すなわち、図25の(a)における光路長は、図25の(b)における光路長と同じ長さであるが、実施の形態9に係る表示システム2Kの筐体116の前後方向における大きさD1は、比較例に係る表示システム200の筐体202の前後方向における大きさD2
よりも小さくなる。したがって、実施の形態9に係る表示システム2Kでは、視距離を確保しながら、小型化を図ることができるという効果を得ることができる。
なお、図22に示すように、表示素子118の表示面130の中心とミラー122の反射面138の中心とを結ぶ直線(図22において一点鎖線で示す)上において、表示素子118と反射型偏光板134との距離L1は、位相差板136とミラー122との距離L2よりも短くなるようにしてもよい。これにより、上述した光路長をより長く確保することができる。これとは反対に、図示しないが、表示素子118と反射型偏光板134との距離L1は、位相差板136とミラー122との距離L2よりも長くなるようにしてもよい。これにより、光学素子120とミラー122とを1つの筐体に収納した場合に、当該筐体の薄型化を図ることができる。
また、上述したように、筐体116の開口部126の大きさは、運転者10から見てミラー122の反射面138の左右方向における幅の一部を視認可能な大きさである。これにより、運転者10にとって、ミラー122の反射面138の一部が開口部126の周縁部よりも前方に見えるため、運転者10は、後方画像に奥行き感を感じることができる。
なお、筐体116の開口部126の大きさは、運転者10から見てミラー122の反射面138の左右方向における幅全体を視認可能な大きさであってもよい。これにより、ミラー122の左右方向における幅を、筐体116の開口部126の左右方向における幅よりも大きくする必要が無いため、ミラー122の小型化を図ることができる。
また、上述したように、図22に示すXZ側面視において、ミラー122及び反射型偏光板134は、互いに非平行に配置されている。これにより、ミラー122と反射型偏光板134との間における光の多重反射を回避することができる。
なお、本実施の形態では、図22に示す各構成要素の配置をXZ側面視における配置としたが、これに限定されず、図22に示す各構成要素の配置をXY上面視における配置としてもよい。この場合、表示システム2Kは、例えば電子アウターミラーとして用いることができ、XY上面視において、ミラー122及び反射型偏光板134は互いに非平行に配置されるようになる。これにより、ミラー122に対する表示素子118の配置を左右方向(Y軸方向)にずらすことができ、表示素子118の配置の自由度を高めることができる。なお、この場合、表示素子118は、例えばフロントドア又はAピラー等に配置される。
(実施の形態10)
[10-1.表示システムの構成]
図26を参照しながら、実施の形態10に係る表示システム2Lの構成について説明する。図26は、実施の形態10に係る表示システム2Lの断面図である。なお、以下に示す各実施の形態において、上記実施の形態9と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図26に示すように、実施の形態10に係る表示システム2Lでは、光学素子120Lの大きさが上記実施の形態9と異なっている。具体的には、光学素子120Lは、ミラー122の反射面138で反射した光をほぼ全てカバーできる大きさとなっている。すなわち、光学素子120Lの下端部120bの筐体116の底面からの高さ位置は、上記実施の形態9よりも低い高さ位置となっている。なお、光学素子120Lの上端部120aの筐体116の底面からの高さ位置は、上記実施の形態9と同一である。
[10-2.表示システムの動作]
次に、図26及び図27を参照しながら、実施の形態10に係る表示システム2Lの動作について説明する。図27は、実施の形態10に係る表示システム2Lの動作を説明するための模式図である。なお、図27では、表示システム2Lの各構成要素の配置及び形状等を模式的に図示してある。
図27に示すように、表示素子118の表示面30から出射した光は、上記実施の形態9と同様に、(i)ミラー122の反射面138で反射し、(ii)反射型偏光板134で反射し、(iii)ミラー122の反射面138で再度反射する。
その後、ミラー122の反射面138で再度反射した光(第2の円偏光)は、位相差板136に向かう。位相差板136を透過した第2の円偏光は、位相差板136により第1の直線偏光に変換される。位相差板136から出射した第1の直線偏光は、ガラス基板132を透過して反射型偏光板134に入射する。この時、反射型偏光板134に入射した第1の直線偏光の第1の偏光方向d1は、反射型偏光板134の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光板134に入射した第1の直線偏光は、反射型偏光板134を透過する。
図26に示すように、反射型偏光板134を透過した第1の直線偏光は、防塵用カバー128を透過して、運転者10の目32(図22参照)に入射する。
[10-3.効果]
上述したように、本実施の形態では、ミラー122の反射面138で再度反射した光は、反射型偏光板134を透過した後に、運転者10の目32に入射する。これにより、ミラー122の反射面138で再度反射した第1の直線偏光のみが反射型偏光板134を透過し、当該第1の直線偏光以外の不要光(後方画像の表示に寄与しない光)は、反射型偏光板134で遮断される。この不要光には、車両4(図21参照)の後方から開口部126の防塵用カバー128を経由して入射する太陽光も含まれる。その結果、後方画像の表示精度を高めることができる。さらに、太陽光がミラー122で集光することに起因する温度上昇を抑制することができる。
(実施の形態11)
[11-1.表示システムの構成]
図28を参照しながら、実施の形態11に係る表示システム2Mの構成について説明する。図28は、実施の形態11に係る表示システム2Mの断面図である。
図28に示すように、実施の形態11に係る表示システム2Mは、上記実施の形態10で説明した構成要件に加えて、遮光部材148を備えている。遮光部材148は、遮光性を有する材料で形成され、例えば左右方向に長い横長の平板状に形成されている。遮光部材148は、筐体116の収納空間124に収納され、表示素子118と筐体116の開口部126との間に配置されている。
[11-2.効果]
表示素子118の表示面130から出射した光の大部分(以下、「表示光」という)は、光学素子120Lの反射型偏光板134を透過する。また、表示素子118の表示面130から出射した光の一部(以下、「表面反射光」という)は、光学素子120Lの反射型偏光板134で反射する。
上述したように、本実施の形態では、遮光部材148が表示素子118と筐体116の開口部126との間に配置されているので、光学素子120Lの反射型偏光板134で反射した表面反射光が筐体116の開口部126に到達するのを抑制することができる。そ
の結果、表面反射光が表示光と重畳されることに起因する、後方画像における映り込みを抑制することができる。
(実施の形態12)
[12-1.表示システムの構成]
図29を参照しながら、実施の形態12に係る表示システム2Nの構成について説明する。図29は、実施の形態12に係る表示システム2Nの断面図である。
図29に示すように、実施の形態12に係る表示システム2Nでは、光学素子120Nの構成が上記実施の形態10と異なっている。具体的には、光学素子120Nは、ガラス基板132、反射型偏光板134及び位相差板136に加えて、透過型偏光板150を有している。光学素子120Nは、透過型偏光板150、反射型偏光板134、ガラス基板132及び位相差板136を、表示素子118の表示面130に近い側からこの順に互いに積層することにより構成されている。すなわち、透過型偏光板150は、表示素子118と反射型偏光板134との間に配置されている。また、透過型偏光板150は、反射型偏光板134の表示素子118に対向する側の面の全領域を覆うように配置されている。
透過型偏光板150は、当該透過型偏光板150に入射した光のうち、第1の偏光方向d1を有する第1の直線偏光を透過し、第2の偏光方向d2を有する第2の直線偏光を吸収する。すなわち、透過型偏光板150の透過軸は第1の偏光方向d1、透過型偏光板150の吸収軸は第2の偏光方向d2とそれぞれ同方向であり、両者は互いに直交している。
[12-2.表示システムの動作]
次に、図29を参照しながら、実施の形態12に係る表示システム2Nの動作について説明する。
図29に示すように、表示素子118の表示面130から出射した第1の直線偏光は、透過型偏光板150を透過して反射型偏光板134に向かう。その後、透過型偏光板150を透過した光は、上記実施の形態9と同様に、(i)ミラー122の反射面138で反射し、(ii)反射型偏光板134で反射し、(iii)ミラー122の反射面138で再度反射する。
その後、ミラー122の反射面138で再度反射した光(第2の円偏光)は、上記実施の形態10と同様に、位相差板136により第1の直線偏光に変換され、ガラス基板132及び反射型偏光板134を透過する。その後、本実施の形態では、反射型偏光板134を透過した第1の直線偏光は、透過型偏光板150を透過して防塵用カバー128に向かい、防塵用カバー128を透過して運転者10の目32(図22参照)に入射する。
[12-3.効果]
本実施の形態では、透過型偏光板150が、反射型偏光板134の表示素子118に対向する側の面の全領域を覆うように配置されているので、画像の表示に寄与しない不要光が透過型偏光板150に入射した際に、当該不要光を透過型偏光板150で吸収することができる。その結果、表示素子118の表示面130に表示された後方画像における映り込みを抑制することができる。
(実施の形態13)
[13-1.表示システムの構成]
図30を参照しながら、実施の形態13に係る表示システム2Pの構成について説明する。図30は、実施の形態13に係る表示システム2Pの断面図である。
図30に示すように、実施の形態13に係る表示システム2Pでは、光学素子120Pの透過型偏光板150Pの大きさが上記実施の形態12と異なっている。具体的には、透過型偏光板150Pは、反射型偏光板134の表示素子118に対向する側の面のうち、表示素子118の表示面130から出射した光が入射する領域のみを覆うように配置されている。
[13-2.効果]
本実施の形態では、透過型偏光板150Pが、反射型偏光板134の表示素子118に対向する側の面のうち、表示素子118の表示面130から出射した光が入射する領域のみを覆うように配置されているので、上述した表面反射光が反射型偏光板134で反射するのを抑制することができる。その結果、表示素子118の表示面130に表示された後方画像における映り込みを抑制することができる。
(実施の形態14)
[14-1.表示システムの構成]
図31を参照しながら、実施の形態14に係る表示システム2Qの構成について説明する。図31は、実施の形態14に係る表示システム2Qの断面図である。
図31に示すように、実施の形態14に係る表示システム2Qでは、表示素子118の表示面130は、反射型偏光板134の表示素子118に対向する側の面に接触している。表示システム2Qの他の構成は、上記実施の形態10と同様である。
[14-2.効果]
本実施の形態では、表示素子118の表示面130は、反射型偏光板134の表示素子118に対向する側の面に接触しているので、表示素子118と反射型偏光板134との距離を短く抑えることができ、表示システム2Qの小型化を図ることができる。
(実施の形態15)
[15-1.表示システムの構成]
図32を参照しながら、実施の形態15に係る表示システム2Rの構成について説明する。図32は、実施の形態15に係る表示システム2Rの断面図である。
図32に示すように、実施の形態15に係る表示システム2Rでは、表示素子118、光学素子120L及びミラー122は、車両4(図21参照)のオーバーヘッドコンソール156に配置されている。表示素子118は、車両4の天井94側に配置され、ミラー122も、車両4の天井94側に配置されている。
また、表示システム2Rは、表示素子118、光学素子120L及びミラー122に加えて、ミラー152(第2のミラーの一例)を備えている。ミラー152は平面ミラーであり、平面状の反射面154を有している。ミラー152は、例えば樹脂成型された部材の表面に、アルミニウム等の反射金属膜を蒸着することにより形成される。ミラー152は、反射面154が反射型偏光板134の表示素子118に対向する側の面に対向するように配置されている。なお、ミラー152は、例えばオーバーヘッドコンソール156の下方に配置された支持部材(図示せず)に支持されている。
[15-2.表示システムの動作]
次に、図32を参照しながら、実施の形態15に係る表示システム2Rの動作について説明する。
図32に示すように、表示素子118の表示面130から出射した光は、上記実施の形態9と同様に、(i)ミラー122の反射面138で反射し、(ii)反射型偏光板134で反射し、(iii)ミラー122の反射面138で再度反射する。
その後、ミラー122の反射面138で再度反射した光(第2の円偏光)は、上記実施の形態10と同様に、位相差板136により第1の直線偏光に変換され、ガラス基板132及び反射型偏光板134を透過する。その後、本実施の形態では、反射型偏光板134を透過した第1の直線偏光は、ミラー152に向かい、ミラー152の反射面154で反射して運転者10の目32に入射する。
[15-3.効果]
本実施の形態では、反射型偏光板134とミラー122との間における光の往復反射が、鉛直方向となるように表示システム2Rを配置することにより、表示システム2Rの上下方向における厚みの薄型化を図ることができる。その結果、運転者10の視界を確保することができる。また、ミラー152は平面ミラーであるので、車両4の後方から入射する太陽光が集光することがほとんど無い。したがって、集光に起因した温度上昇を抑制することができる。
なお、表示システム2Rは、上述したミラー152に代えて、ハーフミラーを備えてもよい。これにより、運転者10は、ハーフミラーを透過して見える車両4の前方の景色上に、ミラー152で反射した光により形成される画像を重ね合わせて見ることができる。すなわち、表示システム2Rは、車両用のヘッドアップディスプレイ(HUD)として用いられる。
(実施の形態16)
[16-1.表示システムの構成]
図33を参照しながら、実施の形態16に係る表示システム2Sの構成について説明する。図33は、実施の形態16に係る表示システム2Sを示す模式図である。
図33に示すように、実施の形態16に係る表示システム2Sでは、表示システム2SをXZ側面視した際に、ミラー122の反射面138の中心を通る法線ベクトルNは、表示素子118の表示面130の中心とミラー122の反射面138の中心と運転者10の目32とを結んでなす角度θ(例えば、35°)を二等分する半角ベクトルAよりも表示面130の中心側を向くように配置されている。ミラー122と光学素子120Lの上端部120aとの間の距離は、ミラー122と光学素子120Lの下端部120bとの間の距離よりも短い。
なお、表示システム2SをXZ側面視した際に、光学素子120Lは、鉛直方向(Z軸方向)に対して、表示素子118の表示面130から出射した光が、反射型偏光板134とミラー122との間を2往復した後に運転者10の目32に入射するような角度に設定されている。また、表示システム2Sがボールジョイント38(図21参照)に対して回動した場合であっても、法線ベクトルNと半角ベクトルAとの位置関係は一定である。
これにより、図33の破線の矢印で示すように、表示素子118の表示面130から出射した光のうち、ミラー122の反射面138で1回反射した光の一部は、光学素子120Lを透過して表示素子118の表示面130に向けて進むようになる。その結果、ミラー122で1回のみ反射した光が、運転者10の目32に到達するのを抑制することができ、表示素子118の表示面130に表示された画像における映り込みを抑制することができる。
また、表示素子118の表示面130から出射した光のうち、ミラー122の反射面138で3回以上反射した光は、光学素子120Lを透過して運転者10の目32よりも下方に向けて進むようになる。その結果、ミラー122で3回以上反射した光が、運転者10の目32に到達するのを抑制することができ、表示素子118の表示面130に表示された画像における映り込みを抑制することができる。
さらに、車両4の後方からの外光が光学素子120Lに入射した場合には、当該外光は、光学素子120Lを透過した後にミラー122の反射面138で反射する。この時、ミラー122の反射面138で反射した外光は、光学素子120Lを透過して表示素子118の表示面130に向けて進むようになる。その結果、外光が運転者10の目32に到達するのを抑制することができる。
図34及び図35は、比較例に係る表示システム200Sを示す模式図である。図34に示すように、比較例に係る表示システム200Sでは、表示システム200SをXZ側面視した際に、法線ベクトルNは、半角ベクトルAと重なるように配置されている。ミラー122と光学素子120Lの上端部120aとの間の距離は、ミラー122と光学素子120Lの下端部120bとの間の距離と略等しい。この場合、ミラー122で1回以上反射した光が運転者10の目32に到達するため、表示素子118の表示面130に表示された画像における映り込みが発生する。
一方、図35に示すように、他の比較例に係る表示システム200Sでは、表示システム200SをXZ側面視した際に、法線ベクトルNは、半角ベクトルAよりも表示面130と反対側に配置されている。ミラー122と光学素子120Lの上端部120aとの間の距離は、ミラー122と光学素子120Lの下端部120bとの間の距離よりも長い。この場合、ミラー122で1回以上反射した光が運転者10の目32に到達するため、表示素子118の表示面130に表示された画像における映り込みが発生する。また、車両4の後方からの外光が光学素子120Lに入射した場合には、当該外光は、光学素子120Lを透過した後にミラー122の反射面138で反射する。この時、ミラー122の反射面138で反射した外光は、光学素子120Lを透過して運転者10の目32に到達するようになる。
これらより、図33の構成とすることで、映り込みの抑制と、運転者10の目32への外光の到達の抑制とを両立することが可能となる。
[16-2.変形例]
図36は、変形例に係るミラー122Sを示す正面図である。図36に示すように、変形例に係るミラー122Sは、凹面ミラーである。ミラー122SをYZ正面視した際に、ミラー122Sの上辺122a及び下辺122bの各々は、上方に凸となる曲線状に形成されている。また、ミラー122Sの左辺122c及び右辺122dの各々は直線状に形成され、左辺122c(運転者10から遠い側の縦の辺)の長さは、右辺122d(運転者10に近い側の縦の辺)の長さよりも長い。すなわち、ミラー122Sは、全体として弓なり状に形成されている。但し、車両4は右ハンドルの車両であるとする。
なお、車両4が左ハンドルの車両である場合には、左辺122c(運転者10に近い側の縦の辺)の長さは、右辺122d(運転者10から遠い側の縦の辺)の長さよりも短くなる。
これにより、運転者10が運転席8からミラー122Sを斜め下方から見上げた場合に、運転者10から見て、ミラー122Sの反射面138で反射した後方画像の形状を長方形に近付けることができる。
(他の変形例)
以上、一つ又は複数の態様に係る表示システムについて、上記各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記各実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を上記各実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
上記実施の形態9~16では、ミラー122を凹面ミラーとしたが、これに限定されず、例えばフレネル状の反射面を有するフレネルミラーとしてもよい。
また、上記各実施の形態における凹面ミラー26及びミラー122等の光学系構成要素、表示素子12(118)、並びに、目32の配置は、いずれも一例であり、それらの配置に限定されるものではない。
また、上記各実施の形態では、光学素子28(28A,28C,28G,120,120L,120N,120P)を平板状に形成したが、これに限定されず、例えばシリンドリカル状に形成してもよい。