(実施形態)
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、以下の説明では、図1及び図3におけるX軸方向を移動体(例えば自動車)の前後方向、Z軸方向を移動体の上下方向と規定し、図5におけるY軸方向を移動体の左右方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを前側、Y軸方向の正の向きを右側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、表示システム1及び電子ミラーシステム4の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
また、本開示において、「平行」とは、完全に平行であることの他、略平行であることを含み得る。具体的には、「平行」とは、その対象である2つの直線のなす角度(鋭角)が0度以上10度以下であることを言う。なお、「平行」とは、その対象である2つの直線のなす角度(鋭角)が0度以上5度以下であることを言うのが、より好ましい。
本実施形態の表示システム1は、図1に示すように、表示デバイス2と、第1ミラー10と、第2ミラー20と、を備える。表示デバイス2は、第1画像を表示する表示面2Aを有する。第1ミラー10は、表示デバイス2が出射した光が直接的又は間接的に入射し、入射した光を反射する。第2ミラー20には、第1ミラー10で反射された光が直接的又は間接的に入射し、第2ミラー20は、入射した光をアイボックスE1に向かって反射する。第2ミラー20で反射された光がアイボックスE1内に存在する観察者200の目201に入射することで、観察者200の目201に第1画像に基づく第2画像が表示される。第1ミラー10は、フレネルミラーである。
ここで、光が間接的に入射するとは、例えば他の光学部品(他のミラー又はレンズ)を介して光が入射することをいう。
なお、アイボックスE1とは、表示システム1の筐体60から所定の距離だけ離れた位置において、観察者200から第2ミラー20を介して両眼視で虚像(第2ミラー20の反射光)を見た時に、表示面2Aの縁部に対応する虚像が見えない視点領域のことである。図1におけるアイボックスE1は、筐体60から所定の距離だけ離れた位置でのアイボックスであり、光路A13の出射方向D2に対して、垂直な面内にある。これは、後述する図8,9,10においても同様である。
図1では、表示デバイス2の表示面2Aの前後方向及び左右方向の中心付近から出射された光が、第1ミラー10と第2ミラー20とでそれぞれ反射されて、筐体60の外部に出射するまでの光路A11〜A13を点線でそれぞれ示している。なお、図1等において、光の光路A11〜A13を示す線は説明のために図示しているに過ぎず、実際には表示されない。
第1ミラー10は、表示デバイス2から出射した光を、第2ミラー20に向かって反射する。したがって、第1ミラー10が平面鏡140で構成されている場合、図1に想像線で図示するように、表示デバイス2からの光の入射方向D1(光路A11に沿う方向)に対して平面鏡140を斜めに傾けて配置する必要がある。そのため、入射方向D1と平行な方向において、表示デバイス2の全体の大きさが大型化する可能性がある。それに対して、本実施形態では第1ミラー10がフレネルミラーであり、平面鏡140の反射面を複数に分割した複数の小反射面14を第1ミラー10に形成することで、入射方向D1と平行な方向において第1ミラー10の厚みを薄くできる。したがって、入射方向D1と平行な方向において、第1ミラー10の厚み寸法W1を、平面鏡140の両端間の寸法W2に比べて小さくして、小型化を図ることが可能な表示システム1を実現できる。
また、本実施形態の電子ミラーシステム4は、図3に示すように、上記の表示システム1と、移動体100に搭載されて移動体100の後方を撮影するカメラ3と、を備える。表示デバイス2は、カメラ3によって撮影される画像に基づく第1画像を表示面2Aに表示する。なお、移動体100の「後方」とは、移動体本体110の左右方向における中央部から後方を見た領域(いわゆる、ルームミラーで視認可能な領域)でもよいし、移動体本体110の側方から後方を見た領域(いわゆる、サイドミラーで視認可能な領域)でもよい。また、移動体100の「後方」は、移動体本体110の左右方向における中央部から後方を見た領域と、移動体本体110の側方から後方を見た領域と、の両方を含んでいてもよい。
上述のように表示システム1は第1ミラー10をフレネルミラーで構成することによって、全体として小型化が図られているので、小型化を図ることが可能な表示システム1を備える電子ミラーシステム4を実現することができる。
(2)詳細
(2.1)構成
本実施形態の表示システム1は、上述したように、表示デバイス2と、第1ミラー10と、第2ミラー20とを備える。また、表示システム1は、液晶ミラー40と、筐体60と、を更に備えている。また、表示システム1は、表示デバイス2の表示状態を制御する表示制御部70(図4参照)を、更に備えている。
また、本実施形態の電子ミラーシステム4は、表示システム1とカメラ3(図3参照)とを備えている。つまり、本実施形態の表示システム1は、電子ミラーシステム4に用いられる。なお、本実施形態の電子ミラーシステム4は、自動車のような移動体100の移動体本体110に搭載される。すなわち、移動体100は、電子ミラーシステム4と、電子ミラーシステム4を搭載する移動体本体110と、を含んでいる。
以下、表示システム1及び電子ミラーシステム4の各部の構成を図1〜図7A、及び、図7Bに基づいて詳しく説明する。
表示システム1の筐体60は例えば合成樹脂の成型品である。筐体60は、内部に収容室61を有する直方体状に形成されている。筐体60は、移動体本体110に取り付けられた状態において、移動体本体110の左右方向(車幅方向)における寸法が、上下方向における寸法及び前後方向における寸法よりもそれぞれ大きくなるような形状に形成されている。筐体60の収容室61には、表示デバイス2と、第1ミラー10と、第2ミラー20と、液晶ミラー40と、が収容されている。なお、図1等では図示を省略しているが、筐体60には表示制御部70が更に収容されている。
筐体60は、移動体本体110の天井部分101においてウィンドシールド102(フロントガラス)に近い前側部分に、前部座席に着座する観察者200の視界に入る位置に取り付けられている(図1参照)。筐体60は、ボールジョイントなどの支持部材62を介して移動体本体110の天井部分101から吊り下げられた状態で天井部分101に取り付けられており、観察者200の前方視界を邪魔しない位置に配置されている。支持部材62は筐体60の向きを調整するための調整機構(例えばボールジョイントなど)を有している。なお、図1及び図2では、筐体60の上部に支持部材62が配置され、天井部分101から吊り下げられているが、筐体60の背面側(車両前方側)に支持部材を配置し、ウィンドシールド102に取り付けられている構造であってもよい。
筐体60の後壁には貫通孔63が設けられている。貫通孔63は、液晶ミラー40を取付可能な大きさに形成されている。貫通孔63は、上下方向の寸法に比べて左右方向(上下方向及び前後方向と直交する方向)の寸法が大きく、左右方向の寸法(長辺寸法)と上下方向の寸法(短辺寸法)との比率は約3〜6:1である。
表示デバイス2は、収容室61の上部に収容されている。表示デバイス2は第1画像を表示する表示面2Aを有しており、表示デバイス2は表示面2Aを下側に向けた状態で収容室61に収容されている。表示デバイス2は表示面2Aから第1画像を形成する光を出力する。表示デバイス2は、例えば光源装置と液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)とを備えている。液晶パネルは、光源装置の前方に配置されている。光源装置は、液晶パネルのバックライトとして用いられる。光源装置は、いわゆる面光源である。光源装置は、発光ダイオード又はレーザダイオード等の固体発光素子を用いた、サイドライト方式の光源装置である。光源装置からの光は液晶パネルを透過して表示デバイス2の表示面2Aから出力されており、表示デバイス2の表示面2Aから出力される光で第1画像が形成される。本実施形態では、表示デバイス2は、表示面2Aから表示面2Aと直交する方向に第1画像を形成する光を出射している。ここにおいて、ある面と「直交」する方向とは、ある面に対して厳密に90度の角度で交差していることに限定されず、人の目で見て直交していると見なせるのであれば、ある面と直交する方向から数度程度ずれていてもよい。
本実施形態の表示システム1は、表示デバイス2の表示面2Aから出射する光を反射する2以上の反射部材として、第1ミラー10と、第2ミラー20とを備えている。すなわち、表示システム1は、第1ミラー10と、第2ミラー20とで構成される反射光学系B1を有している。
第1ミラー10には、図2に示すように、表示デバイス2との対向面(第1面11)に、複数の短冊状の小反射面14が並べて形成されている。複数の小反射面14は、それぞれが第1方向(光路A11と平行な方向)から入射した光を、第1方向と斜めに交差する第2方向(光路A12と平行な方向)に向かって反射する。ここでは、図1に示すように、第1方向は、複数の小反射面14の配列方向(DR1)と直交する方向としているが、直交方向に限定されるものではない。複数の小反射面14は、例えば平面鏡140のような反射面を複数に分割して第1面11に配列した複数の部分的な反射面の集まりであり、全体として1つの反射面として機能する。この第1ミラー10は、複数の小反射面14が形成された第1面11を上側に向け、第1面11を表示デバイス2の表示面2Aと対向させた状態で、収容室61の下部に収容されている。ここで、2つの面又は部品が「対向」するとは、互いに平行な状態で配置されていることに限定されず、互いに平行ではない状態、つまり一方が他方に対して傾斜している状態で配置されている状態も含みうる。また、複数の小反射面14の配列方向DR1とは、基板13において第1面11と反対側の第2面12と平行な方向である。
ここで、複数の小反射面14は、第2面12に対して斜めに傾斜するような反射面(平面鏡140の反射面)を短冊状に複数に分割して、第1面11に並べたような形状に形成されている。筐体60の内部に、上記の平面鏡140が収容されている場合、平面鏡140の反射面は光の入射方向D1に対して斜めに傾斜しているので、光の入射方向D1と平行な方向において平面鏡140の両端間の寸法W2が大きくなる。それに対して、本実施形態では第1ミラー10がフレネルミラーで構成されているので、光の入射方向D1と平行な方向において第1ミラー10の厚み寸法W1を平面鏡140の両端間の寸法W2よりも短くすることができる。したがって、小型化を図ることが可能な表示システム1及び電子ミラーシステム4を提供することができる。
なお、複数の小反射面14は、平面鏡140を複数に分割したような形状にそれぞれ形成されているが、凹面鏡を複数に分割したような形状にそれぞれ形成されていてもよいし、凸面鏡を複数に分割したような形状にそれぞれ形成されていてもよい。つまり、第1ミラー10は、表示面2Aに表示される第1画像を拡大又は縮小して反射するように構成されていてもよい。ここで、反射光学系B1を構成する第1ミラー10と第2ミラー20との両方で、表示デバイス2の表示面2Aに表示される第1画像を拡大可能なように、第1ミラー10の複数の小反射面14と第2ミラー20の反射面21との形状等が設定されているのが好ましい。
また、本実施形態では、表示デバイス2が出射した光を第1ミラー10及び第2ミラー20で反射し、第2ミラー20での反射光を液晶ミラー40に入射させており、液晶ミラー40を透過した光がアイボックスE1に入射する。本実施形態では、液晶ミラー40は第2ミラー20での反射光を筐体60の外部に透過しているだけなので、液晶ミラー40は、第2ミラー20での反射光が外部に出射する出射方向D2(光路A13と平行な方向)と、直交するように筐体60に保持されている。したがって、液晶ミラー40が、出射方向D2に対して斜めに傾斜する向きに配置されている場合に比べて、出射方向D2において、表示システム1及び電子ミラーシステム4の小型化を図ることができる。
第2ミラー20は、例えば凹面鏡である。第2ミラー20は、反射面21を後側に向けた状態で収容室61の前側に収容されている。換言すれば、第2ミラー20は、収容室61の内部において、液晶ミラー40の内側面と対向する位置に配置されている。第2ミラー20の反射面21は、例えばガラスの表面に、アルミニウム等の反射金属膜を蒸着することで形成される。なお、第2ミラー20は凹面鏡に限定されず、平面鏡でもよい。
液晶ミラー40は、反射型の偏光素子と透過型の偏光素子とで液晶を封止した光学素子であり、液晶ミラー40への電圧の印加時に透過状態に、電圧オフ時に反射状態に切り替えることができる。液晶ミラー40は、筐体60の貫通孔63を塞ぐように筐体60に取り付けられている。ここにおいて、液晶ミラー40が、第2ミラー20で反射された光がアイボックスE1に至る光路A13上に設けられた偏光部材となる。液晶ミラー40は、表示制御部70から入力される切替信号に応じて、反射状態と透過状態とのいずれかに切替可能なように構成されている。ここで、筐体60の貫通孔63が液晶ミラー40で塞がれているので、外部から収容室61内に塵や埃などが入る可能性を抑制できる。なお、本実施形態では筐体60の貫通孔63に液晶ミラー40が取り付けられているが、液晶ミラー40の代わりに、可視光に対して光透過性を有する防塵カバーが貫通孔63に取り付けられてもよい。観察者は貫通孔63に取り付けられた防塵カバーを通して、第2ミラー20に表示される第2画像を視認することができる。
カメラ3は、例えば、自動車のような移動体100の後部に取り付けられ、移動体100の後方の画像を撮影する。カメラ3は、撮像素子301と、撮像エリア(移動体100の後方)からの光を撮像素子301に集光させる光学系302とを有する。撮像素子301は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであるが、CCD(ChargeCoupledDevice)イメージセンサ等のイメージセンサでもよい。
カメラ3は、自動車のような移動体100の後方を撮影した画像データを例えば車内ネットワークを介して表示制御部70に出力する。カメラ3は例えば自動車のような移動体100の後部において左右方向の中央に配置され、従来のルームミラーで視認できる範囲を撮影しており、電子ミラーシステム4は従来のルームミラーのような後方確認ミラーとして用いられる。カメラ3は移動体100の後部に取り付けられているので、カメラ3によって撮影される画像には、後部座席やピラー等が映り込むことはない。なお、カメラ3は自動車のような移動体100の後側方を撮影してもよい。カメラ3は、従来のドアミラー、フェンダーミラーで視認できる範囲を撮影してもよく、電子ミラーシステム4を従来のドアミラー、フェンダーミラーの代わりの後方確認ミラーとして用いてもよい。カメラ3は移動体本体110の後部であって移動体本体110の上部位置に取り付けられているが、カメラ3の取付位置は一例であり、カメラ3は所望の範囲を撮影可能な位置に取り付けられていればよい。
表示制御部70は、表示デバイス2の表示面2Aに、カメラ3によって撮像された画像に基づく第1画像を表示させる。表示制御部70は例えば移動体(自動車)100の車内ネットワークを介してカメラ3と通信(有線通信又は無線通信)を行う。表示制御部70には、カメラ3から移動体本体110の後方を撮影した画像の画像データが入力される。表示制御部70は、カメラ3が撮影した画像に基づく第1画像を表示デバイス2の表示面2Aに表示させる。
ここにおいて、カメラ3の画像に基づく第1画像とは、カメラ3の画像そのものでもよいし、カメラ3の画像に所定の補正処理を施した画像でもよい。本実施形態では、表示制御部70は、表示デバイス2の表示面2Aに表示させる第1画像を補正する画像補正部71を有している。画像補正部71は、例えば、観察者200によって視認される第2画像G2に発生する画像歪みを低減するような歪み補正を表示面2Aに表示される第1画像に加えるような画像処理を行う。
本実施形態の表示システム1では、第1ミラー10としてフレネルミラーを用い、表示デバイス2を第1ミラー10と平行に配置しているので、表示デバイス2の前端と後端とで第2ミラー20までの光路長の差が大きくなる。そのため、観察者200によって視認される第2画像G2には、第2画像G2中の上側では下側に比べて左右方向に引き伸ばされたような台形歪みが発生する。したがって、画像補正部71は、第2画像G2における台形歪みを低減する歪み補正を加えた画像を表示させるように、表示面2Aに表示させる第1画像を補正する。なお、画像補正部71は、第2画像G2に発生する台形歪みを低減するための歪み補正を行うものに限定されず、カメラ3で撮影された画像の明るさ補正などを行ってもよい。例えば、夜間にはカメラ3で撮影された画像は暗くなるので、画像補正部71は、カメラ3で撮影された画像の明るさ補正を行ってもよい。
また、表示制御部70は、カメラ3で撮影された画像をもとに、画像中に映っている障害物等を示すCG画像又はマーカー等を作成し、カメラ3の撮像画像にCG画像又はマーカー等を重畳した画像を表示デバイス2の表示面2Aに表示させてもよい。また、カメラ3の画像に運転支援情報(例えば、車速情報、ナビゲーション情報、歩行者情報、前方車両情報、車線逸脱情報、及び車両コンディション情報等)を示すマーカーを重畳した第1画像を表示デバイス2の表示面2Aに表示させてもよい。
本実施形態の表示システム1では、表示デバイス2が表示する第1画像、つまり表示デバイス2の表示面2Aから出射される光を第1ミラー10と第2ミラー20とで複数回(本実施形態では例えば2回)反射している。ここで、観察者200の目201(視点)から第2画像G2に映る物体までの見かけの距離(視距離)は、表示デバイス2の表示面2Aから第2ミラー20までの光路長、及び、反射光学系B1の焦点距離等で決定される。本実施形態では、表示デバイス2の表示面2Aから出射される光を2回反射することで、第2画像G2に映る物体の視距離を所望の距離に保ちながら、筐体60(収容室61)の大きさを小さくできる。したがって、観察者200が液晶ミラー40を通して第2ミラー20を見る方向(光路A13と平行な方向)において筐体60の小型化を図ることができる。
(2.2)動作
本実施形態の表示システム1を備える電子ミラーシステム4の動作について説明する。
例えば、移動体100のバッテリから電子ミラーシステム4に電力が供給され、移動体100が備えるECU(Electronic Control Unit)から電子ミラーシステム4に起動命令が入力されると、電子ミラーシステム4が動作を開始する。
このとき、表示制御部70は、カメラ3を起動し、カメラ3に所定のフレームレートで移動体100の後方を撮影させ、カメラ3から画像データを取得する。表示制御部70は、カメラ3から画像データを取得すると、この画像データに基づく第1画像を表示デバイス2の表示面2Aに表示させる。また、表示制御部70は、表示デバイス2の表示面2Aに第1画像を表示させる間は、液晶ミラー40の状態を透過状態に制御する。
このとき、表示デバイス2の表示面2Aから出射された光は第1ミラー10と第2ミラー20とで反射された後、液晶ミラー40を透過して観察者200のアイボックスE1に入射する。第2ミラー20で反射された光が、観察者200の目201に入射することによって、表示デバイス2の表示面2Aに表示される第1画像を拡大した第2画像G2が観察者200によって視認される。
表示制御部70は、表示デバイス2の表示面2Aに第1画像を表示させない場合、液晶ミラー40を反射状態に制御しているので、液晶ミラー40を通常の外光反射鏡として利用できる。また、移動体100のバッテリから電子ミラーシステム4に電力が供給されていない状態では、液晶ミラー40は、透過状態から反射状態に切り替わっている。ここで、液晶ミラー40が反射状態であれば、観察者200は、反射状態の液晶ミラー40を用いて移動体本体110の後方を確認することができ、液晶ミラー40を通常の鏡として利用することができる。
ところで、第1ミラー10の第1面11には複数の小反射面14が並べて配列されているので、図6に示すように、隣り合う小反射面14の間にできる段差部分142で反射光の一部(図6のF1部の光)がケラレてしまう可能性がある。ここで、複数の小反射面14の配列方向(図6の左右方向)は、観察者200によって視認される第2画像G2の上下方向に対応している。段差部分142で反射光の一部が遮られると、第2画像G2の上下方向において段差部分142の間隔に対応した間隔で第1ミラー10での反射光が届かないため、第2画像G2は上下方向において圧縮されたような画像になる可能性がある。つまり、第2画像G2の縦横比が現実の縦横比に比べて縦の割合が小さい縦横比となる可能性がある。
そこで、本実施形態の表示システム1では、画像補正部71が、フレネルミラーの段差部分142で光がケラレることによって発生する第2画像G2の上下方向での潰れを補正するように、カメラ3の画像の縦横比を調整する。画像補正部71は、図7Aに示すように、カメラ3の画像の縦横比を縦Y1の割合が補正前に比べて大きくなるような縦横比(X1:Y1)に補正する画像処理を行い、画像処理後の第1画像G1を表示デバイス2の表示面2Aに表示させる。表示デバイス2の表示面2Aから出射された光は第1ミラー10に入射し、第1ミラー10の小反射面14で第2ミラー20に向かって反射するのであるが、小反射面14の段差部分142で反射光の一部が遮られてしまう。しかしながら、第1画像G1の縦横比(X1:Y1)は縦Y1の割合が大きくなるように補正されているので、図7Bに示すように、第2画像G2において縦Y2の割合が第1画像G1に比べて小さくなることで、その縦横比(X2:Y2)は現実の縦横比に近付くように調整される。したがって、第2画像G2を見た観察者200が違和感を覚える可能性を低減できる。
なお、画像補正部71が表示デバイス2の表示面2Aに表示させる第1画像G1の縦横比を調整する代わりに、カメラ3の光学系302にアナモルフィックレンズ(Anamorphic Lens)を含めてもよい。アナモルフィックレンズは、左右方向の拡大率に比べて上下方向の拡大率が大きくなるようなレンズである。カメラ3の光学系302がアナモルフィックレンズを含むことで、カメラ3で撮影される画像は、実際の画像を縦方向に引き伸ばしたような画像となる。これにより、観察者200によって視認される第2画像G2の縦横比は、現実の縦横比に近付くように調整されるので、第2画像G2を見た観察者200が違和感を覚える可能性を低減できる。
つまり、本実施形態の電子ミラーシステム4は、観察者200によって視認される第2画像G2での縦横比を補正する補正部を更に備えている。補正部は、画像補正部71と、アナモルフィックレンズとの少なくとも一方を含む。画像補正部71は、第2画像G2での縦横比を補正するために、表示面2Aに表示される第1画像G1の縦横比を調整する。光学系302に含まれるアナモルフィックレンズは、カメラ3に搭載されて撮影エリアからの光をカメラ3の撮像素子301に集光させる。ここで、カメラ3によって撮影される画像の上下方向でのアナモルフィックレンズの拡大率と、カメラ3によって撮影される画像の左右方向でのアナモルフィックレンズの拡大率とが互いに異なっている。このように、光学系302に含まれるアナモルフィックレンズと画像補正部71との少なくとも一方を含む補正部が、第2画像G2での縦横比を調整しているので、第2画像G2での縦横比が現実の縦横比に近付くように補正することができる。したがって、第2画像G2を見た観察者200が違和感を覚える可能性を低減することができる。
なお、画像補正部71は、第2画像G2に発生する画像歪みを低減するような歪み補正を第1画像G1に加える画像処理を更に行ってもよい。例えば、第2画像G2に、第2画像G2の下側に比べて第2画像G2の上側の方が左右方向に大きく引き延ばされるような台形歪みが発生する場合、画像補正部71が、予め第1画像G1の上側に比べて第1画像G1の下側の方が左右方向に引き延ばされるような歪み補正を加えることで、第2画像G2に発生する台形歪みを低減することができる。
ここで、第2画像G2の上下方向での第2ミラー20の倍率と、第2画像G2の左右方向での第2ミラー20の倍率とが互いに異なっていてもよい。第2ミラー20が、上下方向において左右方向とは異なる倍率で画像を拡大又は縮小することによって、第2画像G2での上下方向の歪みを補正することができる。
なお、本実施形態では、第1ミラー10は、図6における段差部分142が第1ミラー10に入射する光の方向(光路A11)と平行になるように配置される。そして、段差部分142は暗色となるように構成されている。具体的には、段差部分142のみ、黒色に着色されている。このような構成とすることにより、ケラレてしまう反射光の一部(図6のF1部の光)が段差部分142で反射して、収容室61の内部で迷光となり第2画像G2の画質が低下してしまう可能性を低減することができる。
なお、暗色とは、迷光による第2画像G2の画質への影響を視認できない程度に、図6のF1部の光を吸収するような反射率の特性を有している色のことであり、黒色に限定されるものではない。
また、段差部分142は、図6に示す第1ミラー10のように、第1ミラー10に入射する光の方向(光路A11)と平行であることに限定されるものではなく、図8に示す構成であってもよい。図8に示すように、段差部分142は、第1ミラー10で反射された光の方向(光路A12)と平行になるように配置されてもよい。そして、段差部分142は暗色(例えば黒色)に着色されている。このような構成とすることで、図6で説明した反射光の一部がケラレてしまうことを抑制できる。しかし、第1ミラー10に入射する光(光路A11)の一部は段差部分142で吸収されるので、図8の第1ミラー10によっても迷光の発生を抑制できるものの、図6の第1ミラー10と同様に、第2画像G2の上下方向において段差部分142の間隔に対応した間隔で第1ミラー10での反射光が届かない。このため、第2画像G2は上下方向において圧縮されたような画像になる可能性がある。そのため、図8の第1ミラー10であっても、図7A及び図7Bで説明したように、画像補正部71が、フレネルミラーの段差部分142で光がケラレることによって発生する第2画像G2の上下方向での潰れを補正するように、カメラ3の画像の縦横比を調整してもよい。
なお、図6及び図8の構成をまとめると、第1ミラー10は、隣り合う小反射面14の間の段差部分142が、第1ミラー10に入射する光の方向、または、第1ミラー10で反射された光の方向と平行になるように配置され、段差部分142は暗色である。ここで、段差部分142が第1ミラー10に入射する光の方向にも、第1ミラー10で反射された光の方向にも平行でなかった場合、段差部分142では、第1ミラー10に入射する光(光路A11)の一部と、第1ミラー10で反射する光(光路A12)の一部との両方がケラレてしまうことになる。そのため、図7A及び図7Bで説明したような、単純な縦横比の画像補正ができなくなる可能性がある。したがって、段差部分142が、第1ミラー10に入射する光の方向、または、第1ミラー10で反射された光の方向と平行になるように配置される構成が望ましい。
また、本実施形態では、図1に示すように、収容室61の上部に表示デバイス2が配置され、収容室61の下部に第1ミラー10が配置されているが、表示デバイス2と第1ミラー10の配置は上下逆でもよい。
(3)変形例上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
本開示における表示システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における表示システム1としての機能(例えば表示制御部70又は画像補正部71等の機能)が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
(3.1)変形例1
変形例1の表示システム1は、図9に示すように、アイボックスE1内にある観察者200の目201から第1面11が見えないように、第1ミラー10が斜めに配置されている点で上記の実施形態と相違する。具体的には、観察者200の目201からの観察方向(線L1に沿う方向)と、第1ミラー10の第1面11に沿う線L2が延びる方向とが、ゼロより大きい所定の角度θ1で交差するように、第1ミラー10は配置されている。なお、第1ミラー10の配置以外は上記実施形態と同様であるので、上記実施形態の表示システム1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
アイボックスE1内にある観察者200の目201から第1面11が見えないように、第1ミラー10が収容室61内に配置されているので、筐体60の後方から第2ミラー20に入射した光が第2ミラー20と第1ミラー10とで反射されて、観察者200の目201に入射する可能性を低減できる。
ところで、変形例1の電子ミラーシステム4において、図10に示すように、表示デバイス2が、表示面2Aの法線方向(線L3と平行な方向)と所定の角度θ2で交差する出射方向(光路A11と平行な方向)に光を出射してもよい。
表示デバイス2は、例えば、液晶パネルと、液晶パネルのバックライトとして用いられる光源装置とを含む。ここで、光源装置からの光の出射方向を、光源装置が備えるプリズム等によって表示面2Aの法線方向に対して斜めに傾けることで、表示デバイス2からの光の出射方向を表示面2Aの法線方向に対して斜めに傾けている。
このように、第1ミラー10を斜めに傾けることで、表示面2Aの後端から第1ミラー10を経由して第2ミラー20の上端に至る光路長と、表示面2Aの前端から第1ミラー10を経由して第2ミラー20の下端に至る光路長との差を小さくできる。したがって、第2ミラー20の反射面21に形成される第2画像G2の上下で光路長の差を小さくでき、それによって第2画像G2に発生する台形歪みを抑制できる。
また、図10に示す表示システム1においても、アイボックスE1内にある観察者200の目201から第1面11が見えないように、第1ミラー10が斜めに配置されているので、観察者200の目201に不要な外光が視認される可能性を低減できる。
なお、図10に示す表示システム1において、図11に示すように、表示デバイス2の表示面2Aが、アイボックスE1内にある観察者200の目201から見えないように、観察者200の目201からの観察方向に対して斜めに傾斜していてもよい。すなわち、観察者200の目201からの観察方向(線L4に沿う方向)と、表示デバイス2の表示面2Aに沿う線L4が延びる方向とが、ゼロより大きい所定の角度θ3で交差するように、表示デバイス2が配置されていてもよい。このように、表示デバイス2が配置されることで、観察者200の目201から表示デバイス2の表示面2Aに表示される第1画像が直接視認される可能性を低減できる。なお、アイボックスE1において、表示面2A及び第1面11を見えないようにするためには、角度θ1と角度θ3を略等しくする構成が望ましい。
以上のように、第1ミラー10における表示デバイス2との対向面(第1面11)及び表示デバイス2の表示面2Aの少なくとも一方が、アイボックスE1内にある観察者200の目201から見えないように、観察者200の目201からの観察方向に対して傾斜していることも好ましい。これにより、観察者200の目201に、第2画像G2以外の余計なものが見えてしまう可能性を低減できる。
なお、本変形例では、図9に示すように、収容室61の上部に表示デバイス2が配置され、収容室61の下部に第1ミラー10が配置されているが、表示デバイス2と第1ミラー10の配置は上下逆でもよい。
(3.2)変形例2
変形例2の表示システム1は、図12に示すように、表示デバイス2が出射した光が直接的に入射し、入射した光を第1ミラー10に向かって反射する第3ミラー30を、更に備え、第1ミラー10の、第3ミラー30との対向面に、複数の短冊状の小反射面14が並べて形成されている点で上記の実施形態及び変形例1と相違する。なお、第3ミラー30以外は上記実施形態と同様であるので、上記実施形態の表示システム1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
第3ミラー30は、反射面を上側に向けた状態で、表示デバイス2の表示面2Aと対向するように、収容室61の下部に配置されている。
第1ミラー10は、第1面11を下側に向けた状態で、収容室61の上部に配置されている。ここで、第1ミラー10は、表示デバイス2と液晶ミラー40との間に配置されており、第1ミラー10の第1面11は、第3ミラー30の反射面(上面)及び第2ミラー20の反射面21にそれぞれ対向している。第1面11に設けられた複数の小反射面14は、それぞれが第1方向(後述する光路A22と平行な方向)から入射した光を、第1方向と斜めに交差する第2方向(後述する光路A23と平行な方向)に向かって反射する。
この表示システム1では、表示デバイス2が、表示面2Aの法線L3と所定の角度θ2で交差する方向に向かって光を照射する。表示デバイス2は、例えば液晶パネルのバックライトである光源装置が光を出射する方向を、光源装置が備えるプリズムで調整することによって、表示デバイス2からの光の出射方向が調整されている。
表示デバイス2の表示面2Aから出射された光は第3ミラー30に入射し、第3ミラー30での反射光が第1ミラー10に入射する。第1ミラー10は、第3ミラー30から入射した光を、第2ミラー20に向かって反射する。第2ミラー20での反射光は、液晶ミラー40を透過して筐体60の外部に出射する。図12では、表示デバイス2の表示面2Aの中心付近から出射された光が、第1ミラー10と第3ミラー30と第2ミラー20とでそれぞれ反射された後、液晶ミラー40を透過して筐体60の外部に出射するまでの光路A21〜A24を点線で図示している。なお、図12において、光の光路A21〜A24を示す線は説明のために図示しているに過ぎず、実際には表示されない。
表示デバイス2から出射した光は、第3ミラー30と第1ミラー10と第2ミラー20とで3回反射された後、液晶ミラー40を通して外部に出射している。変形例2の表示システム1では、視距離が長い構成においては光路長も長くする必要があることから、図1、図9、図10及び図11の構成と光路長が同じであれば、筐体60の大きさを小型化することができる。よって、小型化を図ることが可能な表示システム1及び電子ミラーシステム4を実現することができる。
また、第1ミラー10をフレネルミラーで構成することによって第2画像G2に台形歪みが発生するが、表示デバイス2が表示面2Aに対して斜め方向に光を出射することによって、第2画像G2に発生する台形歪みを低減できる。つまり、表示デバイス2が表示面2Aに対して斜め方向に光を出射することで第2画像G2に発生する台形歪みと、フレネルミラーである第1ミラー10で光を反射することによって第2画像G2に発生する逆方向の台形歪みとが相殺されるので、第2画像G2に発生する台形歪みを低減することができる。
なお、第3ミラー30の反射面は平面に限定されず、自由曲面(凹面又は凸面)でもよい。
また、液晶ミラー40の外側面は、観察者からの観察方向(光路A24と平行な方向)に対して、液晶ミラー40の外側面の法線が上側を向くように、斜めに配置されている。このように、液晶ミラー40の外側面は、観察者からの観察方向に対して斜めに配置されているので、観察者の後方から液晶ミラー40の外側面に入射する外光等が観察者の目に入射するのを抑制できる。したがって、液晶ミラー40の外側面に、後方からの光が映り込む可能性を低減できる。
なお、本変形例では、図12に示すように、収容室61の上部に表示デバイス2と第1ミラー10とが配置され、収容室61の下部に第3ミラー30が配置されているが、表示デバイス2及び第1ミラー10と第3ミラー30の配置は上下逆でもよい。収容室61の下部に表示デバイス2と第1ミラー10とが配置され、収容室61の上部に第3ミラー30が配置される場合、液晶ミラー40の外側面は、観察者からの観察方向に対して液晶ミラー40の外側面の法線が上側を向くように、斜めに配置されればよい。
(3.3)変形例3
変形例3の表示システム1は、図13に示すように、液晶ミラー40の代わりにハーフミラー80を備える点で上記の実施形態と相違する。なお、ハーフミラー80以外は上記実施形態と同様であるので、上記実施形態の表示システム1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
変形例3の表示システムは、第1ミラー10で反射された光が入射するハーフミラー80を更に備えている。ハーフミラー80で反射された光は第2ミラー20に入射する。第2ミラー20で反射された光は、ハーフミラー80を透過して観察者200の目201に入射する。
すなわち、変形例3では、表示デバイス2から出射された光を第1ミラー10とハーフミラー80と第2ミラー20とで3回反射させた後、ハーフミラー80を透過させて筐体60の外部に出射させている。図13では、表示デバイス2の表示面2Aの中心付近から出射された光が、第1ミラー10とハーフミラー80と第2ミラー20とでそれぞれ反射された後、ハーフミラー80を透過して筐体60の外部に出射するまでの光路A31〜A34を点線で図示している。なお、図13において、光の光路A31〜A34を示す線は説明のために図示しているに過ぎず、実際には表示されない。
ハーフミラー80は、筐体60の後壁に設けられた貫通孔63に取り付けられている。ハーフミラー80は可視光に対して光透過性を有している。ハーフミラー80は、入射光の一部を透過し、入射光の別の一部を反射する機能を有している。本変形例では、ハーフミラー80は、光の透過率と反射率とが約50%である平板状のビームスプリッタで構成されている。ハーフミラー80は、ハーフミラー80の下端に比べて上端の方が前側に突出するように、上下方向に対して斜めに配置されている。
ハーフミラー80における収容室61側の面(以下、内側面ともいう)81は、第1ミラー10の第1面11と、第2ミラー20の反射面21とにそれぞれ対向している。本変形例では、ハーフミラー80は、第1ミラー10からの光の入射方向(光路A32に沿う方向)、及び、第2ミラー20に向かって光を反射する反射方向(光路A33に沿う方向)に対して内側面81の法線方向がそれぞれ斜めに交差するように配置されている。
第1ミラー10は、表示デバイス2の表示面2Aから出射された光を斜め前方(図13中の斜め上向き)に反射する。ハーフミラー80は、第1ミラー10から入射した光を第2ミラー20に向かって反射し、第2ミラー20は、ハーフミラー80から入射した光をハーフミラー80に向かって反射する。第2ミラー20で反射された光は、ハーフミラー80に入射し、ハーフミラー80を透過して筐体60の外部に出射する。
このように、変形例3の表示システム1では、表示デバイス2から出射された光を第1ミラー10とハーフミラー80と第2ミラー20とで3回反射した後に、筐体60の外部に出射させている。したがって、変形例3の表示システム1は、上記の実施形態に比べて反射回数が多いので、光路長が同程度であれば、上記の実施形態に比べて筐体60の小型化を図ることができる。
また、変形例3の表示システム1では、ハーフミラー80から第2ミラー20に光が入射する方向(光路A33に沿う方向)と、第2ミラー20がハーフミラー80に向かって光を反射する方向(光路A34に沿う方向)とが所定の角度θ4で交差している。換言すれば、第2ミラー20は、ハーフミラー80から光が入射する方向とは異なる方向に光を反射している。
ここで、第2ミラー20が、ハーフミラー80から入射する光を入射方向とは異なる方向に反射することで、第2ミラー20の反射面21に表示される第2画像を左右方向の中央部に比べて左右方向の両端部が上側に若干湾曲したような画像とすることができる。これにより、第2ミラー20の反射面21に形成される第2画像に台形歪みが発生したとしても、第2画像に発生する台形歪みを低減できる。
本変形例において、ハーフミラー80の内側面81は平面に形成されているが、ハーフミラー80の内側面81(反射面)が凹面に形成されていてもよく、ハーフミラー80が画像を拡大する機能を有していてもよい。
なお、本変形例においてハーフミラー80が、入射光の一部を透過し、入射光の別の一部を反射するようなフレネルミラーで構成されていてもよく、前後方向において筐体60の小型化を図ることができる。
なお、本変形例では、図13に示すように、収容室61の上部に表示デバイス2が配置され、収容室61の下部に第1ミラー10が配置されているが、表示デバイス2と第1ミラー10の配置は上下逆でもよい。収容室61の下部に表示デバイス2が配置され、収容室61の上部に第1ミラー10が配置される場合、液晶ミラー40の外側面は、観察者からの観察方向に対して液晶ミラー40の外側面の法線が上側を向くように、斜めに配置されればよい。
(3.4)その他の変形例
上記の実施形態及び変形例において、第2ミラー20は、凹面鏡を複数に分割した複数の反射面を有するフレネルミラーで構成されてもよく、第2ミラー20を板状に形成することで、前後方向において筐体60の小型化を図ることができる。
上記の実施形態及び変形例において、貫通孔63に配置する液晶ミラー40の代わりに、平板に偏光フィルタ―を設けた偏光板を偏光部材として配置してもよい。これにより、以下の効果が得られる。
第1ミラー10(フレネルミラー)にヘッドライトのような強い外光が直接的または間接的に入射した場合、外光が第1ミラー10と第2ミラー20とで反射されて観察者200の目201に入射する可能性がある。このとき、第1ミラー10のフレネルミラー面での反射によって、第2ミラー20に線状の輝線が映り込む場合がある。線状の輝線は、第1ミラー10に設けられた複数の小反射面14の段差部分142(図2参照)によって一部の光線が正反射以外の方向に反射することによって発生する。液晶ミラー40を備える構成では、液晶ミラー40自体に偏光素子が設けられており、偏光素子には外光の入射光を低減する効果があるので、フレネルミラー面での反射に起因して発生する線状の輝線を低減することができる。
一方、液晶ミラー40によるミラー切替機能が不要な場合には、液晶ミラー40の代わりに偏光板を配置してもよく、偏光板の作用により、フレネルミラー面での反射に起因して発生する線状の輝線を低減することができる。
なお、フレネルミラー面での反射に起因して発生する線状の輝線は、条件によって特定方向の偏光(例えばP偏光)が相対的に多くなるため、線状の輝線が低減される方向に、偏光板もしくは液晶ミラー40が備える偏光素子の透過軸が設定されていればよい。偏光部材(偏光板、又は、液晶ミラー40が備える偏光素子)の透過軸の向きを、フレネルミラー面での反射に起因して発生する線状の輝線が低減される方向に設定することで、第2ミラー20に線状の輝線が映り込むのを抑制できる。
また、表示デバイス2が液晶ディスプレイの場合は、表示面2Aに偏光フィルタが設けられているため、表示面2Aから出射する光線における偏光の透過軸の方向と、貫通孔63に配置する偏光板の偏光の透過軸の方向とを揃えておけば、表示面2Aから出射する光線の減衰を抑制することができる。
また、図14に示すように、液晶ミラー40における筐体60の内部側の面にλ/4位相差板(第1のλ/4位相差板)91を配置してもよい。この場合、液晶ミラー40が備える偏光素子の透過軸に対してλ/4位相差板91の遅相軸を45°傾けて配置するのが好ましい。これにより、液晶ミラー40が備える偏光素子を介して筐体60内に入射した光線はP偏光となり、λ/4位相差板91を透過後に円偏光となる。その後、第1ミラー10に直接もしくは間接的に光線が入射した後、再びλ/4位相差板91に入射すると、λ/4位相差板91を透過した後にはS偏光となるので、液晶ミラー40の偏光素子によってほとんどが吸収される。このような光路を辿ることにより、フレネルミラー面によって発生する線状の輝線を低減することができる。
なお、貫通孔63に液晶ミラー40に代えて偏光板が配置されている場合は、偏光板における筐体60の内部側にλ/4位相差板(第1のλ/4位相差板)91が配置されていればよく、フレネルミラー面によって発生する線状の輝線を低減することができる。
さらに、上記構成の場合は、図15に示すように、表示デバイス2の表示面2Aの偏光フィルタ上にも、λ/4位相差板(第2のλ/4位相差板)92を設けることが好ましい。この場合、液晶ミラー40が備える偏光素子の透過軸に対して第2のλ/4位相差板92の遅相軸を45°傾けて配置するのが好ましい。これにより、表示面2Aから出射した光線をS偏光とした場合、第2のλ/4位相差板92を透過した光線は円偏光となり、その後第1ミラー10、第2ミラー20の順に反射光路を辿る。その後、反射光は液晶ミラー40上の第1のλ/4位相差板91に入射し、透過後にP偏光となって、液晶ミラー40を透過する。このような光路を辿ることにより、表示面2Aから出射した光線を効率よく観察者200の目201に導くことができる。
なお、図15に示す表示システム1において、貫通孔63に液晶ミラー40に代えて偏光板が配置されている場合は、偏光板における筐体60の内部側にλ/4位相差板(第1のλ/4位相差板)91が配置されていればよく、上述と同様、フレネルミラー面によって発生する線状の輝線を低減することができる。
上記の実施形態及び変形例では、表示システム1は電子ミラーシステム4に用いられているが、表示システム1は電子ミラーシステム4以外の用途に用いられてもよい。
上記実施形態の表示システム1及び電子ミラーシステム4は、自動車のような移動体100に適用されるものに限らず、例えば、二輪車、電車、航空機、建設機械、及び船舶等、自動車以外の移動体にも適用可能である。
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の表示システム(1)は、表示デバイス(2)と、第1ミラー(10)と、第2ミラー(20)と、を備える。表示デバイス(2)は、第1画像(G1)を表示する表示面(2A)を有する。第1ミラー(10)は、表示デバイス(2)が出射した光が直接的又は間接的に入射し、入射した光を反射する。第2ミラー(20)は、第1ミラー(10)で反射された光が直接的又は間接的に入射し、入射した光をアイボックス(E1)に向かって反射する。第2ミラー(20)で反射された光がアイボックス(E1)内に存在する観察者(200)の目(201)に入射することで、観察者(200)の目(201)に第1画像(G1)に基づく第2画像(G2)が表示される。第1ミラー(10)が、フレネルミラーである。
この態様によれば、第1ミラー(10)をフレネルレンズとすることで、第1ミラー(10)を小型化することができ、小型化を図ることが可能な表示システム(1)を実現することができる。
第2の態様の表示システム(1)では、第1の態様において、第1ミラー(10)には、表示デバイス(2)との対向面(11)に、複数の短冊状の小反射面(14)が並べて形成されている。複数の小反射面(14)は、それぞれが第1方向から入射した光を、第1方向と斜めに交差する第2方向に向かって反射する。
この態様によれば、フレネルミラーからなる第1ミラー(10)の小型化を図ることができる。
第3の態様の表示システム(1)は、第2の態様において、第1ミラー(10)は、隣り合う小反射面(14)の間の段差部分(142)が、第1ミラー(10)に入射する光の方向(A11)、または、第1ミラー(10)で反射された光の方向(A12)と平行になるように配置される。
この態様によれば、ケラレてしまう反射光の一部(図6のF1部の光)、あるいは入射光の一部が段差部分(142)で反射して、収容室(61)の内部で迷光となり第2画像(G2)の画質が低下してしまう可能性を低減することができる。
第4の態様の表示システム(1)は、第3の態様において、隣り合う小反射面(14)の間の段差部分(142)は暗色である。
この態様によれば、段差部分(142)において入射光の一部が反射して、収容室(61)の内部で迷光となり第2画像(G2)の画質が低下してしまう可能性を低減することができる。
第5の態様の表示システム(1)は、第1〜第4の態様において、第1ミラー(10)で反射された光が入射するハーフミラー(80)を更に備える。ハーフミラー(80)で反射された光は第2ミラー(20)に入射し、第2ミラー(20)で反射された光は、ハーフミラー(80)を透過して観察者(200)の目(201)に入射する。
この態様によれば、第1ミラー(10)とハーフミラー(80)と第2ミラー(20)とで3回反射することで、表示デバイス(2)から第2ミラー(20)までの光路長を確保しつつ、表示システム(1)の小型化を図ることができる。
第6の態様の表示システム(1)は、第1の態様において、第3ミラー(30)を、更に備える。第3ミラー(30)は、表示デバイス(2)が出射した光が直接的に入射し、入射した光を第1ミラー(10)に向かって反射する。第1ミラー(10)には、第3ミラー(30)との対向面に、複数の短冊状の小反射面(14)が並べて形成されている。複数の小反射面(14)は、それぞれが第1方向から入射した光を、第1方向と斜めに交差する第2方向に向かって反射する。
この態様によれば、第3ミラー(30)と第1ミラー(10)と第2ミラー(20)とで3回反射することで、表示デバイス(2)から第2ミラー(20)までの光路長を確保しつつ、表示システム(1)の小型化を図ることができる。
第7の態様の表示システム(1)では、第1〜第6のいずれかの態様において、第1ミラー(10)は、表示面(2A)に表示される第1画像(G1)を拡大又は縮小して反射する。
この態様によれば、第1ミラー(10)が第1画像(G1)を拡大又は縮小することで、第2画像(G2)のサイズを調整することができる。
第8の態様の表示システム(1)では、第1〜第7のいずれかの態様において、第1ミラー(10)における表示デバイス(2)との対向面(11)及び表示デバイス(2)の表示面(2A)の少なくとも一方が、アイボックス(E1)内にある観察者(200)の目(201)から見えないように、観察者(200)の目(201)からの観察方向に対して傾斜している。
この態様によれば、観察者(200)の目(201)に不必要なものが視認される可能性を低減できる。
第9の態様の表示システム(1)では、第1〜第8のいずれかの態様において、第2画像(G2)の上下方向での第2ミラー(20)の倍率と、第2画像(G2)の左右方向での第2ミラー(20)の倍率とが互いに異なる。
この態様によれば、第2ミラー(20)によって、左右方向の倍率と上下方向の倍率とをそれぞれ調整することができる。
第10の態様の表示システム(1)では、第1〜第9のいずれかの態様において、第2ミラー(20)で反射された光がアイボックス(E1)に至る光路上に偏光部材を更に備える。
この態様によれば、フレネルミラーでの反射によって発生する線状の輝線を低減できる。
第11の態様の表示システム(1)では、第10の態様において、偏光部材の透過軸は、フレネルミラーでの反射によって発生する線状の輝線が低減される方向に設定される。
この態様によれば、フレネルミラーでの反射によって発生する線状の輝線を低減できる。
第12の態様の表示システム(1)では、第10の態様において、偏光部材の、第2ミラー(20)と対向する面に、λ/4位相差板(91)を、更に備える。λ/4位相差板(91)の遅相軸は、偏光部材の透過軸に対して45°傾けて配置される。
この態様によれば、フレネルミラーでの反射によって発生する線状の輝線を低減できる。
第13の態様の表示システム(1)は、第10の態様において、第1のλ/4位相差板(91)と、第2のλ/4位相差板(92)と、を更に備える。第1のλ/4位相差板(91)は、偏光部材の、第2ミラー(20)と対向する面(21)に配置される。第2のλ/4位相差板(92)は、表示デバイス(2)の表示面(2A)に配置される。第1のλ/4位相差板(91)の遅相軸は、偏光部材の透過軸に対して45°傾けて配置され、第2のλ/4位相差板(92)の遅相軸は、偏光部材の透過軸に対して45°傾けて配置される。
この態様によれば、表示デバイス(2)からの出射光を効率よく観察者(200)の目(201)に導くことができる。
第14の態様の表示システム(1)は、第10〜第13のいずれかの態様において、偏光部材は、液晶ミラー(40)に設けられている偏光素子、又は、偏光板である。
この態様によれば、フレネルミラーでの反射によって発生する線状の輝線を低減できる。
第15の態様の電子ミラーシステム(4)は、第1〜第14のいずれかの態様の表示システム(1)と、移動体(100)に搭載されて移動体(100)の後方を撮影するカメラ(3)と、を備える。表示デバイス(2)が、カメラ(3)によって撮影される画像に基づく第1画像(G1)を表示面(2A)に表示する。
この態様によれば、小型化を図ることが可能な電子ミラーシステム(4)を実現することができる。
第16の態様の電子ミラーシステム(4)は、第15の態様において、第2画像(G2)での縦横比を補正する補正部を更に備える。補正部は、画像補正部(71)と、光学系(302)との少なくとも一方を含む。画像補正部(71)は、第2画像(G2)での縦横比を補正するために、表示面(2A)に表示される第1画像(G1)の縦横比を調整する。光学系(302)は、カメラ(3)に搭載されて撮影エリアからの光をカメラ(3)の撮像素子(301)に集光させる。カメラ(3)によって撮影される画像の上下方向での光学系(302)の拡大率と、カメラ(3)によって撮影される画像の左右方向での光学系(302)の拡大率とが互いに異なる。
この態様によれば、第2画像(G2)の縦横比を補正することができる。
第17の態様の電子ミラーシステム(4)では、第16の態様において、画像補正部(71)は、第2画像(G2)に発生する画像歪みを相殺するような歪み補正を第1画像(G1)に加える画像処理を更に行う。
この態様によれば、第2画像(G2)に発生する画像歪みを低減することができる。
第2〜第14の態様に係る構成については、表示システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
第15〜第17の態様に係る構成については、電子ミラーシステム(4)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。