以下、本発明の実施の形態によるサスペンション装置を、4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、左,右の液圧シリンダ(以下、前輪側の左油圧シリンダ1,前輪側の右油圧シリンダ2という)は、車両の車体と左,右の前輪(いずれも図示せず)との間にそれぞれ介装されている。後側の左,右の液圧シリンダ(以下、後輪側の左油圧シリンダ3,後輪側の右油圧シリンダ4という)は、車両の車体と左,右の後輪(いずれも図示せず)との間にそれぞれ介装されている。
これらの油圧シリンダ1~4は、車両の車体(バネ上)と各車輪(バネ下)の間を繋ぎ、車体と各車輪の相対的な動きに応じて伸縮するシリンダ装置であり、前記車両の振動を緩衝する緩衝器を構成している。例えば、前輪側の左油圧シリンダ1は、有底筒状のチューブからなるシリンダ1Aと、該シリンダ1A内に摺動可能に挿嵌されたピストン1Bと、一端側がピストン1Bに固定され他端側がシリンダ1A外に突出したピストンロッド1Cを含んで構成されている。シリンダ1A内は、ピストン1Bにより上,下の2室(即ち、上部室Aと下部室B)に画成されている。
これと同様に、他の油圧シリンダ2,3,4も、シリンダ2A,3A,4A、ピストン2B,3B,4Bおよびピストンロッド2C,3C,4Cを含んで構成されている。そして、各シリンダ2A,3A,4A内は、ピストン2B,3B,4Bによりそれぞれ上,下の2室(即ち、上部室Aと下部室B)に画成されている。
第1,第2の接続管路5,6は、前輪側の左油圧シリンダ1と右油圧シリンダ2との間にクロス配管として設けられ、両者の間をクロスで接続している。このうち第1の接続管路5は、シリンダ1A内の上部室Aとシリンダ2A内の下部室Bとの間を連通させるように、シリンダ1A,2A間を左,右方向に延びて配置されている。第2の接続管路6は、シリンダ1A内の下部室Bとシリンダ2A内の上部室Aとの間を連通させるように、シリンダ1A,2A間を左,右方向に延びて配置されている。
前輪側の左油圧シリンダ1には、上部室Aと第1の接続管路5との接続部位に減衰力制御弁7が設けられている。この減衰力制御弁7は、上部室Aから第1の接続管路5に向けて流出する圧油の減衰力制御を行い、上部室Aからの流れを減衰する減衰弁を有している。また、減衰力制御弁7は、第1の接続管路5から上部室Aに向けて圧油が流入するのを許し、逆向きの流れを阻止するチェック弁7Aを有している。
前輪側の左油圧シリンダ1には、下部室Bと第2の接続管路6との接続部位に減衰力制御弁8が設けられている。この減衰力制御弁8は、下部室Bから第2の接続管路6に向けて流出する圧油の減衰力制御を行い、下部室Bからの流れを減衰する減衰弁を有している。また、減衰力制御弁8は、第2の接続管路6から下部室Bに向けて圧油が流入するのを許し、逆向きの流れを阻止するチェック弁8Aを有している。
前輪側の右油圧シリンダ2には、上部室Aと第2の接続管路6との接続部位に減衰力制御弁9が設けられ、下部室Bと第1の接続管路5との接続部位には減衰力制御弁10が設けられている。これらの減衰力制御弁9,10は、前述した減衰力制御弁7,8と同様に上部室A,下部室Bからの流れを減衰する減衰弁を有している。また、減衰力制御弁9,10は、減衰力制御弁7,8と同様にチェック弁9A,10Aを有している。
後輪側の左油圧シリンダ3と右油圧シリンダ4との間は、クロス配管としての第1,第2の接続管路11,12によりクロスで接続されている。即ち、第1の接続管路11は、シリンダ3A内の上部室Aとシリンダ4A内の下部室Bとの間を連通させるように、シリンダ3A,4A間を左,右方向に延びて配置されている。第2の接続管路12は、シリンダ3A内の下部室Bとシリンダ4A内の上部室Aとの間を連通させるように、シリンダ3A,4A間を左,右方向に延びて配置されている。
後輪側の左油圧シリンダ3には、上部室Aと第1の接続管路11との接続部位に減衰力制御弁13が設けられ、下部室Bと第2の接続管路12との接続部位には減衰力制御弁14が設けられている。これらの減衰力制御弁13,14は、前述した減衰力制御弁7,8と同様に上部室A,下部室Bからの流れを減衰する減衰弁を有している。また、減衰力制御弁13,14は、減衰力制御弁7,8と同様にチェック弁13A,14Aを有している。
後輪側の右油圧シリンダ4には、上部室Aと第2の接続管路12との接続部位に減衰力制御弁15が設けられ、下部室Bと第1の接続管路11との接続部位には減衰力制御弁16が設けられている。これらの減衰力制御弁15,16は、前述した減衰力制御弁7,8と同様に上部室A,下部室Bからの流れを減衰する減衰弁を有している。また、減衰力制御弁15,16は、減衰力制御弁7,8と同様にチェック弁15A,16Aを有している。
次に、前側連絡路17は、第1,第2の接続管路5,6間を前輪側のブリッジバルブ18を介して連通,遮断させる管路である。前輪側のブリッジバルブ18は、図3に示すように、複数個(例えば、5個)のバルブ(即ち、常閉型の電磁弁18A,18B,18C,18D,18E)により構成されている。これらの電磁弁18A~18Eは、常時は前側連絡路17に沿って圧油(液体)が流れるのを遮断するように閉弁位置(a)に保持される。しかし、後述するコントローラ43からの通電により閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換えられると、ブリッジバルブ18(電磁弁18A~18E)は、圧油が第1,第2の接続管路5,6間で前側連絡路17を介して流通するのを許す。
このため、ブリッジバルブ18の電磁弁18A~18Eが開弁位置(b)に切換わっている間、油圧シリンダ1,2は、上部室Aと下部室Bとが減衰力制御弁7,8,9,10を介して連通した状態となる。ブリッジバルブ18は、第1,第2の接続管路5,6の間に急激な圧力変化が発生するのを抑えるため、コントローラ43からの指令信号(例えば、図6に示す特性線51A~51E)に従って、電磁弁18A,18B,18C,18D,18Eが閉弁位置(a)と開弁位置(b)とに段階的に切換えられる。
前側連絡路17には、ブリッジバルブ18を迂回してバイパス路19が設けられ、このバイパス路19には圧油の流れを制限する絞り20が設けられている。この絞り20は、ブリッジバルブ18の前,後で前側連絡路17(即ち、第1,第2の接続管路5,6間)に圧力差が生じたときに、バイパス路19を介して圧油が圧力の高い方から低い方へと徐々に流通するのを許す。このため、第1,第2の接続管路5,6間の圧力差は、絞り20によりじわじわと無くされ、両者の圧力は遅延時間をもって均一化される。
一方、後側連絡路21は、第1,第2の接続管路11,12間を後輪側のブリッジバルブ22を介して連通,遮断させる管路である。後輪側のブリッジバルブ22についても、前輪側のブリッジバルブ18と同様に複数個(例えば、5個)のバルブ(即ち、常閉型の電磁弁22A,22B,22C,22D,22E)により構成されている。これらの電磁弁22A~22Eは、常時は後側連絡路21に沿って圧油(液体)が流れるのを遮断するように閉弁位置(a)に保持される。しかし、後述するコントローラ43からの通電により閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換えられると、ブリッジバルブ22の電磁弁22A~22Eは、圧油が第1,第2の接続管路11,12間で後側連絡路21を介して流通するのを許す。
このため、ブリッジバルブ22の電磁弁22A~22Eが開弁位置(b)に切換わっている間、後輪側の油圧シリンダ3,4は、上部室Aと下部室Bとが減衰力制御弁13,14,15,16を介して連通した状態となる。ブリッジバルブ22は、第1,第2の接続管路11,12の間に急激な圧力変化が発生するのを抑えるため、コントローラ43からの指令信号(例えば、図6に示す特性線51A~51E)に従って、電磁弁22A,22B,22C,22D,22Eが閉弁位置(a)と開弁位置(b)とに段階的に切換えられる。
右側連通路23は、前輪側の右油圧シリンダ2と後輪側の右油圧シリンダ4とに近い位置で前側の第1の接続管路5と後側の第1の接続管路11とを常時連通させる管路である。左側連通路24は、前輪側の左油圧シリンダ1と後輪側の左油圧シリンダ3とに近い位置で前側の第2の接続管路6と後側の第2の接続管路12とを常時連通させる管路である。
次に、右側連通路23と左側連通路24の途中にそれぞれ設けられる左,右のアキュムレータ装置25について説明する。なお、左,右のアキュムレータ装置25は、右側連通路23側と左側連通路24側とで同様に構成されているので、以下の説明では、右側連通路23に接続して設けられるアキュムレータ装置25について説明し、左側連通路24に接続して設けられるアキュムレータ装置25については、その説明を省略するものとする。
アキュムレータ装置25は、右側連通路23を介して前側の第1の接続管路5と後側の第1の接続管路11とに接続して設けられている。ここで、アキュムレータ装置25は、右側連通路23の途中から分岐した第1管路26と、該第1管路26に接続して設けられた蓄圧器としての第1アキュムレータ27と、第1管路26の途中に設けられた減衰バルブ28(減衰力発生機構)と、該減衰バルブ28と第1アキュムレータ27との間で第1管路26の途中部位から分岐した第2管路29と、該第2管路29の先端(下流)側に接続して設けられた2個の第2アキュムレータ30,31(即ち、一のアキュムレータ)と、該第2アキュムレータ30,31の上流側に位置して第2管路29の途中に設けられた第1制御弁32(即ち、一の制御弁)とを含んで構成されている。
図2に示すように、減衰バルブ28は、例えば固定絞りにより構成され、第1管路26内を流通する圧油の流れを制限して減衰力を発生させる減衰力発生機構である。即ち、減衰バルブ28は、例えば右側連通路23と第1アキュムレータ27との間で外部から第1管路26内に向けて圧油が流入するときに、この圧油に対して絞り抵抗を与え所定の減衰力を発生させる。また、第1管路26(例えば、第1アキュムレータ27)から右側連通路23に向けて圧油が流出するときにも、この圧油に対し絞り抵抗を与えて所定の減衰力を発生させる。
一の制御弁としての第1制御弁32は、ノーマルクローズ型の弁(即ち、常閉型の電磁弁)により構成され、常時は第2アキュムレータ30,31(即ち、一のアキュムレータ)を第2管路29の上流側(即ち、右側連通路23)に対して遮断するように閉弁状態に保持される。しかし、後述するコントローラ43からの通電により、第1制御弁32は励磁されると、第2管路29内を右側連通路23から第2アキュムレータ30,31に向けて圧油が流通するのを許す。このため、第1制御弁32が開弁している間は、第2アキュムレータ30,31が第2管路29の上流側(即ち、右側連通路23)に対して連通した状態となる。
第2アキュムレータ30,31のガス容積は、第1アキュムレータ27と圧力が同圧状態において、合計のガス容量(容積)が第1アキュムレータ27よりも大きく、約2倍の体積(容積)を有している。なお、本実施の形態では、第1制御弁32としてノーマルクローズ弁を用いたが、ノーマルオープン弁を用い、ロール剛性を高くしたいときに通電することにより閉弁状態としてもよい。しかし、通常時に電力を用いるため、消費電力が高くなる。よって、第1制御弁32はノーマルクローズ型の制御弁を用いることが好ましい。
第2管路29には、第1制御弁32を迂回してバイパス路33が設けられ、このバイパス路33には固定オリフィス34が設けられている。この固定オリフィス34は、第1制御弁32の前,後で第2管路29に大きな圧力差が生じたときに、圧油がバイパス路33を介して圧力の高い方から低い方へと徐々に流通するのを許す。固定オリフィス34は、例えば油圧シリンダ1~4の伸縮動作(ストローク)により接続管路5,11内に生じる圧油(作動液)の流れを制限するために、固定オリフィス34の流路面積が充分に小さく形成されている。この流路面積が十分に小さいとは、液圧シリンダのストロークによって生じる接続管路内の作動液の流れを減衰力発生機構としての減衰バルブ28で発生する減衰力に影響しない程度に流れを制限するために、必要な大きさである。つまり、減衰バルブ28との関係で、減衰力の影響を受けない、さらにはロール剛性に影響を与えない程度であって、誤差の範囲であることを意味する。
なお、第1アキュムレータ27は、ロール剛性を高い値とするため、容積が非常に小さく、積載重量や油圧変化による管路(システム)内の体積変化に対しては許容できない。そこで、第1アキュムレータ27よりも容積が大きい第2アキュムレータ30,31に固定オリフィス34を設け、積載重量や油圧変化による管路(システム)内の体積変化に対しては、固定オリフィス34が、体積変化補償用のオリフィスとして機能する。なお、固定オリフィス34は、直径0.1mmの穴を直列に複数、例えば2つ設けて構成している。
第2アキュムレータ30,31は、例えば車両の積載重量、作動液の温度変化(油温変化)による作動液の体積変化分を補償する体積変化補償用のアキュムレータであり、第1制御弁32の閉弁時にも流路面積が充分に小さい体積変化補償用の固定オリフィス34を介して第2管路29、バイパス路33の先端側に接続されている。
第1制御弁32の閉弁時に固定オリフィス34は、車体の姿勢変化および振動等による圧油(作動液)の過渡的な流れ、即ち第2アキュムレータ30,31に向けた圧油の流れに対して大きな抵抗を与え、この場合の圧油の流れを遮断するように制限する。しかし、積載重量や油温変化による管路(システム)内の体積変化に対しては、固定オリフィス34が第2アキュムレータ30,31に向けた圧油の流れを許容し、体積変化補償用のオリフィス、アキュムレータとして機能する。
また、バイパス路33の途中には、第1制御弁32および固定オリフィス34と並列にリリーフ弁35が設けられている。このリリーフ弁35は、例えば第2管路29の上流側(即ち、右側連通路23)に過剰圧が発生したときに開弁し、このときの過剰圧を第2アキュムレータ30,31に向けて逃す(リリーフさせる)ものである。リリーフ弁35は、例えば過大なサスペンション入力でシステム内圧が過剰に上昇するようなときに開弁され、システムの保護を図る機能を有している。
さらに、アキュムレータ装置25は、第1アキュムレータ27および第2アキュムレータ30,31と並列に接続される第3アキュムレータ36(即ち、他のアキュムレータ)を備えている。第3アキュムレータ36は、第3管路37を介して第1管路26の途中部位(例えば、第1アキュムレータ27と減衰バルブ28との間)に接続されている。他のアキュムレータとしての第3アキュムレータ36の容量(容積)は、第1アキュムレータ27と同等または第1アキュムレータ27よりも大きく、第2アキュムレータ30,31よりも小さい容量となっている。
第3管路37の途中には、第3アキュムレータ36の上流側にノーマルクローズ型の第2制御弁38(即ち、他の制御弁)が設けられている。他の制御弁としての第2制御弁38は、ノーマルクローズ型の電磁弁により構成され、常時は第3アキュムレータ36を第1管路26に対して遮断するように閉弁状態に保持される。しかし、後述するコントローラ43からの通電により、第2制御弁38は励磁されると、第1管路26内の圧油が第3アキュムレータ36に向けて流通するのを許す。このため、第2制御弁38が開弁している間は、第3アキュムレータ36が第3管路37の上流側(例えば、第1アキュムレータ27と減衰バルブ28との間で第1管路26の途中部位)に対し連通した状態となる。
第1管路26には、例えば第1アキュムレータ27と減衰バルブ28との間に位置してフィルタ39とシャット弁40とが設けられている。このシャット弁40は、システム内への注油及び分解時の油抜き作業に用いられる。シャット弁40は、例えば開弁時に作動液の注油口となり、外部から第1管路26に向けて作動液(圧油)を充填するように注入することができる。フィルタ39は、シャット弁40から第1管路26に向けて注入される作動液中の異物を濾過し、作動液の清浄化を図るものである。
温度センサ41と圧力センサ42は、例えば右側連通路23の途中に接続して設けられている。温度センサ41は、例えば接続管路5,11内の圧油(作動液)の温度を検出してコントローラ43に出力する温度出力手段を構成している。圧力センサ42は、例えば第1管路26と第2管路29との接続部位(分岐位置)に近い位置で右側連通路23(即ち、接続管路5,11)内の圧力をシステム圧として検出し、このシステム圧をコントローラ43に出力する圧力出力手段を構成している。
左側連通路24の途中にも、右側連通路23と同様に、第1管路26、第1アキュムレータ27、減衰バルブ28、第2管路29、第2アキュムレータ30,31、第1制御弁32、バイパス路33、固定オリフィス34、リリーフ弁35、第3アキュムレータ36、第3管路37、第2制御弁38、フィルタ39およびシャット弁40からなるアキュムレータ装置25が設けられている。また、左側連通路24の途中にも、右側連通路23と同様に温度センサ41と圧力センサ42とが設けられている。
図4に示すコントローラ43は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成され、ブリッジバルブ18,22および第1,第2制御弁32,38等を切換制御する制御装置である。コントローラ43は、入力側が温度センサ41、圧力センサ42、ロール剛性選択スイッチ44、操舵角センサ45、車速センサ46および横加速度センサ47等に接続され、出力側がブリッジバルブ18,22および第1,第2制御弁32,38等に接続されている。コントローラ43は、例えばROM、RAM、不揮発性メモリ等からなるメモリ43Aを有している。
コントローラ43のメモリ43Aには、ブリッジバルブ18,22の切換制御を行うための処理プログラム(図示せず)と、第1,第2制御弁32,38の切換制御を行うための処理プログラム(図示せず)等とが格納されている。コントローラ43は、車両のロール剛性を可変に調整するため前記車両の運転状態に応じてブリッジバルブ18,22および/または第1,第2制御弁32,38を個別に切換制御する。例えば、車両の旋回時に操舵(転舵)状態に応じた横加速度(横G)に基づいて、コントローラ43はブリッジバルブ18,22および/または第1,第2制御弁32,38を切換制御することができる。
ロール剛性選択スイッチ44は、車両の運転者(操作者)が手動操作するモード選択スイッチであり、ロール剛性が高い「スポーツ」、ロール剛性が標準となる「スタンダード」、ロール剛性が低い「コンフォート」のいずれかのモードを選択する。即ち、第1,第2制御弁32,38は、ロール剛性選択スイッチ44を車両の運転者(操作者)がスイッチ操作することにより、下記のように切換制御されて開,閉が切換えられる。
アキュムレータ装置25の第1,第2制御弁32,38(即ち、一の制御弁と他の制御弁)は、例えば「スポーツ」モードを選択している場合に、共に閉弁状態に保持される。ロール剛性選択スイッチ44により「スタンダード」モードを選択した場合、第1制御弁32(即ち、一の制御弁)は開弁状態に切換えられ、第2制御弁38(即ち、他の制御弁)は閉弁状態に保持される。ロール剛性選択スイッチ44により「コンフォート」モードを選択した場合、第1,第2制御弁32,38は共に開弁状態に切換えられる。
これにより、「スポーツ」モードでは、第1アキュムレータ27のみによってロール剛性が高い値に設定される。このとき、アキュムレータ装置25のガスボリュームは、図5に示すボリュームS1となり、前輪側のロール剛性(図5に示す特性線48)と後輪側のロール剛性(図5に示す特性線49)を、大きな値に設定することができる。
「スタンダード」モードでは、第1アキュムレータ27と第2アキュムレータ30,31とによってロール剛性が標準な値に設定される。このとき、アキュムレータ装置25のガスボリュームは、図5に示すボリュームS2となり、前輪側,後輪側のロール剛性(図5に示す特性線48,49)を標準的な剛性に設定することができる。一方、「コンフォート」モードでは、第1アキュムレータ27と第2アキュムレータ30,31と第3アキュムレータ36とによってロール剛性は低い値に設定される。このとき、アキュムレータ装置25のガスボリュームは、図5に示すボリュームS3となり、前輪側,後輪側のロール剛性を特性線48,49のように低い剛性に設定することができる。
操舵角センサ45は、車両のステアリング操作(旋回操作)時に操舵ハンドル(図示せず)の操作角を操舵角として検出し、その検出信号をコントローラ43に出力する。車速センサ46は、車両の走行速度を車速として検出し、その検出信号をコントローラ43に出力する。横加速度センサ47は、例えば車両の旋回操作時に働く横加速度(横G)を検出し、その検出信号をコントローラ43に出力する。なお、車両の横加速度(横G)は、操舵角センサ45および車速センサ46等からの検出信号に基づいて演算により求めることもできる。
図6に示す特性線51A~51Eは、コントローラ43からブリッジバルブ18,22の電磁弁18A~18E,22A~22Eに出力する切換制御用の指令信号の特性を示している。このように、各バルブ(電磁弁18A~18E,22A~22E)が同時に開かないように、それぞれの指令信号をずらして段階的に開,閉する制御とする。そして、特性線52は、ブリッジバルブ18,22の電磁弁18A~18E,22A~22Eを、閉弁位置(a)と開弁位置(b)とに段階的に切換えたときに、第1,第2の接続管路5,6の間と、第1,第2の接続管路11,12の間とに生じる差圧の特性を示している。
即ち、ブリッジバルブ18の電磁弁18A~18Eをコントローラ43からの指令信号(特性線51A~51E)に従って開弁位置(b)から閉弁位置(a)へと段階的に切換え、その後は閉弁位置(a)から開弁位置(b)へと段階的に切換えることにより、第1,第2の接続管路5,6の間に生じる圧力差(差圧)の特性は、特性線52のように、急激な変化を抑えることができる。また、第1,第2の接続管路11,12の間に生じる圧力差(差圧)の特性も、ブリッジバルブ22の電磁弁22A~22Eをコントローラ43からの指令信号(特性線51A~51E)に従って開弁位置(b)から閉弁位置(a)へと段階的に切換え、その後は閉弁位置(a)から開弁位置(b)へと段階的に切換えることにより、特性線52のように、急激な変化を抑えることができる。
第1の実施の形態によるサスペンション装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、油圧シリンダ1~4は、シリンダ1A~4Aの上端側(底部側)が車両の車体側に取付けられ、ピストンロッド1C~4Cの突出端側が車輪側に取付けられる。車両の走行時には、路面の凹凸等により上,下方向の振動が発生したり、ピッチングやローリング等の揺れ振動が発生したりすると、ピストンロッド1C~4Cがシリンダ1A~4Aから伸長、縮小するように変位し、シリンダ1A~4A内をピストン1B~4Bが上,下に摺動変位する。
このため、右側連通路23、左側連通路24と左,右のアキュムレータ装置25との間を圧油が流入,出(流通)し、このときに各アキュムレータ装置25の減衰バルブ28は、内部を流通する圧油に対して絞り抵抗による減衰力を発生させ、油圧シリンダ1~4の伸縮動作を緩衝する。
ここで、アキュムレータ装置25の第1~第3アキュムレータ27,30,31,36は、ロール剛性選択スイッチ44の手動操作によりモード選択される。車両の運転者(操作者)が、例えば「スポーツ」モードを選択した場合、アキュムレータ装置25のガスボリュームは図5に示すボリュームS1となって、前輪側のロール剛性(特性線48)と後輪側のロール剛性(特性線49)を、大きな値に設定することができる。
「スタンダード」モードを選択した場合は、アキュムレータ装置25のガスボリュームが図5に示すボリュームS2となり、前輪側,後輪側のロール剛性を標準的な剛性に設定することができる。一方、「コンフォート」モードを選択した場合は、アキュムレータ装置25のガスボリュームが図5に示すボリュームS3となり、前輪側,後輪側のロール剛性を特性線48,49のように、ボリュームS3で低い剛性に設定することができる。
次に、コントローラ43によるブリッジバルブ18,22の切換制御処理について説明する。
コントローラ43は、例えば図4に示すロール剛性選択スイッチ44、操舵角センサ45、車速センサ46および横加速度センサ47からの信号により、車両は実質的に直進走行していると判定した場合、ブリッジバルブ18,22に通電を行って、ブリッジバルブ18,22を閉弁状態から開弁状態に切換える。これにより、ブリッジバルブ18は、第1,第2の接続管路5,6間で圧油が前側連絡路17を介して流通するのを許す。
このため、前輪側の油圧シリンダ1,2は、上部室Aと下部室Bとが連通した状態となる。また、後輪側でも第1,第2の接続管路11,12間は、後側連絡路21とブリッジバルブ22を介して連通状態となる。これにより、各輪の油圧シリンダ1~4は、その上部室Aと下部室Bとが連通することで、路面からの入力に対し、各輪が独立して、小さな抵抗でスムーズに上,下動し、良好な乗り心地が得られる。
一方、車両の高速走行時は、例えばロール剛性を急激に下げると、操縦安定性に悪影響を与える可能性があるので、例えばブリッジバルブ18,22を閉弁状態とする。これにより、ブリッジバルブ18は、第1,第2の接続管路5,6の間を遮断し、圧油が前側連絡路17を介して流通するのを抑える。また、後輪側でも第1,第2の接続管路11,12間は、ブリッジバルブ22によって遮断され、後側連絡路21を圧油が流通するのが抑えられる。
また、車両の車速が中間の速度でも、操舵角が所定角度(閾値)を超えると、車速が速くなっている分だけロール剛性を下げると、操縦安定性に悪影響を与える可能性がある。このため、この場合もブリッジバルブ18,22を閉弁状態とする。また、車両に働く横Gが所定の加速度(閾値)まで大きくなった場合でも、ロール剛性を下げると操縦安定性に悪影響を与える可能性があるので、この場合もブリッジバルブ18,22を閉弁状態とする。
一方、ロール剛性選択スイッチ44により「スポーツ」モードまたは「スタンダード」モードが選択されている場合は、それぞれに適した車速、操舵角、角速度および横Gの閾値を別々に設定し、夫々の場合に応じてブリッジバルブ18,22の切換制御を行う構成とする。また、ロール剛性選択スイッチ44により「コンフォート」モードが選択されている場合は、走行シーンに拘わらず、ブリッジバルブ18,22を閉弁状態とするのがよい。
従来のサスペンション装置は、車両直進時の悪路走行で乗り心地が悪いという課題があった。しかし、本実施の形態では、直進時は乗り心地優先でブリッジバルブ18,22を開弁状態に切換えることで、乗り心地の改善を図ることができる。但し、ロール剛性選択スイッチ44により「コンフォート」モードを選択した場合は、ロール剛性が十分に低く、乗り心地への悪影響がないため、ブリッジバルブ18,22を開弁状態にする必要がない。よって、「コンフォート」モードでは、走行シーンによらず、ブリッジバルブ18,22は閉弁状態とする。
ところで、ブリッジバルブ18,22は、車両の操舵時に閉弁してロールを抑制し、悪路走行時に開弁して乗り心地を改善(良く)するという目的で設けられている。しかし、ブリッジバルブ18,22は、車両操舵の有無に従って開,閉弁されるので、ブリッジバルブ18,22の切換時には、油圧急変によるショック(振動、異音)が発生する虞れがある。図7の特性線53,54は、例えば1個の電磁弁でブリッジバルブを構成している比較例の特性である。比較例のブリッジバルブは、指令信号(図7に示す特性線53)に従って開,閉弁されるときに、第1,第2の接続管路間で特性線54のように、油圧急変によるハンチング(振動、異音)が発生している。
そこで、第1の実施の形態では、ブリッジバルブ18,22を、図3に示す如く、複数個(例えば、5個)のバルブ(即ち、常閉型の電磁弁18A~18E,22A~22E)により構成している。そして、ブリッジバルブ18,22をコントローラ43からの指令信号に従って開,閉(切換制御)するときには、ブリッジバルブ18,22の電磁弁18A~18E,22A~22Eを、指令信号(図6に示す特性線51A~51E)に従って開弁位置(b)と閉弁位置(a)とに段階的に切換える構成としている。換言すると、ブリッジバルブ18,22は、複数のバルブ(電磁弁18A~18E,22A~22E)の開弁および/または閉弁が段階的に切換えられる。
これにより、第1,第2の接続管路5,6の間に生じる圧力差(差圧)を、特性線52で示す特性のように、段階的に滑らかに変化させることができ、急激な圧力変化を抑えることができる。また、第1,第2の接続管路11,12の間に生じる圧力差(差圧)も、同様に滑らかな変化に抑えることができる。
このように、第1の実施の形態によれば、ブリッジバルブ18,22の電磁弁18A~18E,22A~22Eをコントローラ43からの指令信号(特性線51A~51E)に従って開弁位置(b)から閉弁位置(a)へと段階的に切換え、その後は閉弁位置(a)から開弁位置(b)へと段階的に切換えることにより、ブリッジバルブ18,22の切換時の油圧の急変を、特性線52のように緩和することができ、振動や異音の発生を抑えることができる。
また、第1の実施の形態によれば、パッシブロール制御システムを備えたサスペンション装置を電子制御する構成とし、2系統の油圧ライン(例えば、第1の接続管路5,11と第2の接続管路6,12)間を連通,遮断するブリッジバルブ18,22に加えて、アキュムレータ装置25には複数のアキュムレータ27,30,31,36を配し、第1,第2制御弁32,38により第2,第3アキュムレータ30,31,36を第1,第2,第3管路26,29,37に対して選択的に連通,遮断する構成としている。このため、ブリッジバルブ18,22の閉弁時のロール剛性を、複数のアキュムレータ27,30,31,36により多段階で切換えることができ、例えばロール剛性のモード切替を可能にできる。
しかも、急激な温度変化(油温上昇)に伴うシステム内圧の変化を、例えば第1制御弁32を開弁させて第2アキュムレータ30,31により吸収でき、システム内圧補償を実現することができる。また、緩やかな温度変化(圧力上昇)に対しては、第1制御弁32の閉弁時でも、固定オリフィス34が第2アキュムレータ30,31に向けた圧油の流れを許容し、システム内圧を補償することができる。さらに、第2管路29の上流(右側連通路23)側に過剰圧が発生したときには、リリーフ弁35を開弁させることにより、過大なサスペンション入力でシステム内圧が過剰に上昇するのを防ぐことができ、当該サスペンション装置(即ち、パッシブロール制御システム)の保護を図ることができる。
また、ブリッジバルブ18,22および第1,第2制御弁32,38は、ノーマルクローズ(常閉型)の電磁弁により構成しているので、例えばシステム失陥(電力失陥)時には、ブリッジバルブ18,22および第1,第2制御弁32,38を閉弁状態に保持し、大きなロール剛性が得られ、高い操縦安定性を確保することができる。
一方、コントローラ43からの通電が可能なときには、車両の直進時にブリッジバルブ18,22を開弁でき、2系統の油圧ラインを連通することで、路面入力に対し、4輪のサスペンションが独立に作動して乗り心地を向上することができる。しかも、第1,第2制御弁32,38を選択的に開,閉制御することによって、アキュムレータ装置25によるロール剛性を多段階で可変に切替え、車両の乗り心地を向上できる。また、緩やかな温度変化(圧力上昇)に対する補償機構として、固定オリフィス34をアキュムレータ装置25に設けたので、別途補償機構を設ける必要がない。さらに、固定オリフィス34は、十分小さい大きさとしたので、ロール剛性に影響を与えることなく、必要なときにだけ、圧油の流れを許容することができる。
なお、前記第1の実施の形態では、ブリッジバルブ18,22の切換制御時に各バルブ(電磁弁18A~18E,22A~22E)の開,閉のタイミング(例えば、位相)をずらして多段階に切換える場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばコンデンサ等を用いて時定数を替え、各バルブの開,閉のタイミングを段階的に遅らせる構成としてもよく、メカ的にコイル仕様を変更して位相をずらす構成としてもよい。
次に、図8および図9は第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、アキュムレータ装置の第1制御弁(一の制御弁)をノーマルオープン型(常開型)の電磁弁により構成したことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態で採用したアキュムレータ装置61は、右側連通路23の途中から分岐した第1管路62と、該第1管路62の先端(下流)側に接続して設けられた蓄圧器としての第1アキュムレータ63と、右側連通路23の途中から第1管路62と一緒(または並列)に分岐した第2管路64と、該第2管路64の途中に設けられた減衰力発生機構としての減衰バルブ65と、該減衰バルブ65よりも下流側に位置して第2管路64の途中に設けられた第1制御弁66(即ち、一の制御弁)とを含んで構成されている。第2管路64の先端(下流)側には、前記第1の実施の形態で述べた2個の第2アキュムレータ30,31(即ち、一のアキュムレータ)が設けられている。
ここで、第1管路62と第1アキュムレータ63とは、第1の実施の形態で述べた第1管路26と第1アキュムレータ27と実質的に同様に構成されている。しかし、第1管路62の途中には、第1アキュムレータ63の上流側に位置して流入制御バルブ67Aと流出制御バルブ67Bとが設けられ、これらの制御バルブ67A、67B(減衰力発生機構)は互いに並列に接続されている。
流入制御バルブ67Aは、第1管路62内を第1アキュムレータ63に向けて流通する圧油の減衰力制御を行い、右側連通路23からの圧油の流れを減衰する減衰力発生機構である。流出制御バルブ67Bは、第1アキュムレータ63から第1管路62内を右側連通路23に向けて流通する圧油の減衰力制御を行い、第1アキュムレータ63からの圧油の流れを減衰する減衰力発生機構である。
図8に示すように、減衰バルブ65は、第2管路64内を第2アキュムレータ30,31に向けて流通する圧油の減衰力制御を行い、右側連通路23からの流れを減衰する減衰力発生機構としての流入制御バルブ65Aと、第2アキュムレータ30,31から第2管路64内を右側連通路23に向けて流通する圧油の減衰力制御を行い、第2アキュムレータ30,31からの圧油の流れを減衰する流出制御バルブ65Bと、流入制御バルブ65Aおよび流出制御バルブ65Bと並列に接続して設けられ第2管路64内を流通する圧油の流れを制限して減衰力を発生させるオリフィス65Cと、を含んで構成されている。
減衰バルブ65は、流入制御バルブ65Aと流出制御バルブ65Bとオリフィス65Cとが互いに並列接続された弁装置として構成されている。そして、減衰バルブ65は、例えば右側連通路23と第2アキュムレータ30,31との間で外部から第2管路64内に向けて圧油が流入するときに、この圧油に対してオリフィス65Cと流入制御バルブ65Aとで絞り抵抗を与え所定の減衰力を発生させる。また、第2管路64(例えば、第2アキュムレータ30,31)から右側連通路23に向けて圧油が流出するときには、オリフィス65Cと流出制御バルブ65Bとにより圧油に絞り抵抗を与えて所定の減衰力を発生させる。
しかも、この場合のアキュムレータ装置61には、第2管路64の途中位置で第2アキュムレータ30,31の上流側に常開型の第1制御弁66(即ち、一の制御弁)が設けられている。この第1制御弁66は、ノーマルオープン型(常開型)の電磁弁により構成され、常時は第2アキュムレータ30,31を第2管路64に対して連通するように開弁状態に保持される。即ち、第1制御弁66は、コントローラ43からの通電が停止され消磁されているときに開弁し、この間は第2アキュムレータ30,31が第2管路64の上流側(例えば、減衰バルブ65を介して右側連通路23)に対し連通した状態となる。
一方、コントローラ43からの通電により、第1制御弁66(即ち、一の制御弁)は励磁されると閉弁位置に切換わり、第2管路64内の圧油は、第2アキュムレータ30,31に向けて流通するのが遮断される。このため、第1制御弁66の閉弁時に、第2アキュムレータ30,31は、第2管路64の上流(即ち、右側連通路23)に対して遮断され、蓄圧器としての作動が禁止される。
また、アキュムレータ装置25は、第2管路64の途中(例えば、減衰バルブ65と第1制御弁66との間となる位置)から分岐した第3管路68を備えている。この第3管路68の先端(下流)側には、第1の実施の形態で述べた第3アキュムレータ36(即ち、他のアキュムレータ)が設けられ、この第3アキュムレータ36は、第1アキュムレータ63および第2アキュムレータ30,31と並列に接続されている。第3アキュムレータ36は、第3管路68を介して第2管路64の途中部位(例えば、第2アキュムレータ30,31と減衰バルブ65との間)に接続されている。他のアキュムレータとしての第3アキュムレータ36の容量(容積)は、第1アキュムレータ63と同等または第1アキュムレータ63よりも大きく、第2アキュムレータ30,31よりも小さい容量となっている。
第3管路68の途中には、第3アキュムレータ36の上流側にノーマルクローズ型の第2制御弁38(即ち、他の制御弁)が設けられている。他の制御弁としての第2制御弁38は、ノーマルクローズ型の電磁弁により構成され、常時は第3アキュムレータ36を第2管路64に対して遮断するように閉弁状態に保持される。しかし、コントローラ43からの通電により、第2制御弁38は励磁されると、第2管路64内の圧油が第3アキュムレータ36に向けて流通するのを許す。このため、第2制御弁38が開弁している間は、第3アキュムレータ36が第3管路68の上流側(例えば、第2アキュムレータ30,31と減衰バルブ65との間で第2管路64の途中部位)に対し連通した状態となる。
一方、第1管路62には、減衰力発生機構(制御バルブ67A、67B)を迂回してバイパス路69が設けられ、このバイパス路69には固定オリフィス70が設けられている。この固定オリフィス70は、減衰力発生機構(制御バルブ67A、67B)の前,後で第1管路62に大きな圧力差が生じたときに、圧油がバイパス路69を介して圧力の高い方から低い方へと徐々に流通するのを許す。固定オリフィス70は、第1の実施の形態で述べた固定オリフィス34と同様に構成され、例えば油圧シリンダ1~4の伸縮動作(ストローク)により接続管路5,11内に生じる圧油(作動液)の流れを制限するために、固定オリフィス70の流路面積が充分に小さく形成されている。
この流路面積が十分に小さいとは、液圧シリンダのストロークによって生じる接続管路内の作動液の流れを減衰力発生機構(制御バルブ67A、67B)で発生する減衰力に影響しない程度に流れを制限するために、必要な大きさである。つまり、制御バルブ67A、67Bとの関係で、減衰力の影響を受けない、さらにはロール剛性に影響を与えない程度であって、誤差の範囲であることを意味する。
第1管路62には、例えば第1アキュムレータ63と減衰力発生機構(制御バルブ67A、67B)との間に位置してフィルタ71とシャット弁72とが設けられている。このシャット弁72は、第1の実施の形態で述べたシャット弁40と同様に、システム内への注油及び分解時の油抜き作業に用いられる。シャット弁72は、例えば開弁時に作動液の注油口となり、外部から第1管路62に向けて作動液(圧油)を充填するように注入することができる。
フィルタ71は、シャット弁72から第1管路62に向けて注入される作動液中の異物を濾過し、作動液の清浄化を図るものである。また、第1管路62には、固定オリフィス70の前,後を迂回する位置に仕切弁73が設けられ、この仕切弁73は、例えばシャット弁72によるシステム内への注油、油抜き作業時に手動で開弁され、これ以外のときには閉弁状態に保持される。
図9に示す制御マップ74は、ロール制御モードに従って第1,第2制御弁66,38とブリッジバルブ18,22とを切換制御するための一覧表を表し、例えば図4に示したコントローラ43のメモリ43Aに格納されている。
ここで、アキュムレータ装置61の第2,第3アキュムレータ30,31,36は、第1の実施の形態と同様に、ロール剛性選択スイッチ44の手動操作によりモード選択される。車両の運転者が、例えば「スポーツ」モードを選択した場合、アキュムレータ装置61の第1制御弁66(即ち、一の制御弁)は開弁位置から閉弁位置に切換えられ、第2制御弁38(即ち、他の制御弁)は閉弁位置に保持される。このように、第1,第2制御弁66,38(即ち、一の制御弁と他の制御弁)は共に閉弁状態にあるため、アキュムレータ装置61のガスボリュームは図5に例示したボリュームS1となって、前輪側のロール剛性(特性線48)と後輪側のロール剛性(特性線49)を、大きな値に設定することができる。
「スポーツ」モードを選択した場合、ブリッジバルブ18,22の電磁弁18A~18E,22A~22Eは、車両の走行シーンに応じてコントローラ43からの指令信号により、閉弁位置(a)と開弁位置(b)とに段階的に切換えられる。これにより、ブリッジバルブ18,22の切換時の油圧の急変を、図6に示す特性線52のように緩和することができ、振動や異音の発生を抑えることができる。
ロール剛性選択スイッチ44により「スタンダード」モードを選択した場合、アキュムレータ装置61の第1制御弁66(即ち、一の制御弁)は、開弁位置に戻され、第2制御弁38(即ち、他の制御弁)は閉弁位置に保持される。このときに、アキュムレータ装置61のガスボリュームは、図5に例示したボリュームS2となり、前輪側,後輪側のロール剛性を標準的な剛性に設定することができる。
このように、「スタンダード」モードを選択した場合も、ブリッジバルブ18,22の電磁弁18A~18E,22A~22Eは、車両の走行シーンに応じてコントローラ43からの指令信号により、閉弁位置(a)と開弁位置(b)とに段階的に切換えられる。これにより、ブリッジバルブ18,22の切換時の油圧の急変を、図6に示す特性線52のように緩和することができ、振動や異音の発生を抑えることができる。
一方、ロール剛性選択スイッチ44により「コンフォート」モードを選択した場合は、アキュムレータ装置61の第1,第2制御弁66,38は共に開弁位置となる。このため、アキュムレータ装置61のガスボリュームは、図5に示すボリュームS3となり、前輪側,後輪側のロール剛性を特性線48,49の如く、ボリュームS3で低い剛性に設定することができる。「コンフォート」モードを選択した場合は、ロール剛性が十分に低く、乗り心地への悪影響がないため、ブリッジバルブ18,22は、開弁状態にする必要がない。よって、「コンフォート」モードでは、走行シーンに拘わらず、ブリッジバルブ18,22を閉弁状態とする。
かくして、このように構成される第2の実施の形態では、例えばブリッジバルブ18,22の閉弁時におけるロール剛性を、複数のアキュムレータ30,31,36,63により、多段階で切換えることができ、第1の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、一の制御弁である第1制御弁66を常開型の電磁弁により構成している。
これにより、例えば電力失陥等のシステム失陥時には、第1制御弁66が開弁状態となって、第2アキュムレータ30,31は第2管路64に対して連通した状態に保持される。このため、アキュムレータ装置61によるロール剛性は、前述した「スタンダード」モードと同様に設定され、アキュムレータ装置61のガスボリュームは、第1アキュムレータ63と第2アキュムレータ30,31とに依存して図5に示すボリュームS2となり、前輪側,後輪側のロール剛性は標準的な剛性に設定できる。
この結果、ロール剛性過大による車両転倒のリスクを低減(例えば、車両旋回中に内輪側が大きな突起を乗り越した場合や、危険回避の急転舵等の場合に転倒リスクを軽減)することができ、システム失陥時の安全性を確保できる。また、アキュムレータ装置61のガスボリュームを、第1アキュムレータ63と第2アキュムレータ30,31とにより、ある程度大きく取れるので、バネ定数、ロール剛性の過大による乗り心地の悪化が低減できる。
システム失陥時には、ブリッジバルブ18,22も閉弁位置(a)に戻っているから、直進時を含めて乗り心地は悪化傾向になるが、アキュムレータ装置61のガスボリュームを、ある程度大きく取れるので、乗り心地の悪化を低減することができる。しかも、システム制御時には、アキュムレータ装置61によるロール剛性は、「スタンダード」モードの使用頻度が最も高く、この間は第1,第2制御弁66,38が共に消磁され、ソレノイドへの通電が不要となり、消費電力を低減することができる。
なお、前記各実施の形態では、例えば第1,第2の接続管路5,6(11,12)内の油温を温度センサ41により検出する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば車両の走行状態や周囲温度等から第1,第2の接続管路内の油温を推定演算して出力する温度出力手段を用いてもよい。
また、前記第1の実施の形態では、アキュムレータ装置25を、第1アキュムレータ27、第2アキュムレータ30,31および第3アキュムレータ36により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば2つのアキュムレータまたは4つ以上のアキュムレータを用いてアキュムレータ装置を構成してもよい。この点は、第2の実施の形態についても同様である。
また、前記各実施の形態では、油圧シリンダ1~4のシリンダ1A~4Aからピストンロッド1C~4Cが下向きに突出する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明のサスペンション装置はこれに限るものではなく、例えば各液圧シリンダのピストンロッドはシリンダから上向きに突出する構成としたものでもよい。
さらに、前記各実施の形態では、油圧シリンダ1~4のシリンダ1A~4A内にピストン1B~4Bを設け、シリンダ1A~4A内を上,下の2室(上部室Aと下部室B)に画成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は図示のものに限られるものではなく、例えばピストン1B~4Bにそれぞれ絞りを設け、この絞りを介して上部室Aと下部室Bとの間を流通する圧油(液体)により減衰力を発生させる構成としてもよい。
次に、上記実施の形態に含まれるサスペンション装置として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様としては、左,右の車輪と車体との間にそれぞれ介装され、シリンダ内がピストンにより上部室と下部室とに画成された左,右の液圧シリンダと、該左,右の液圧シリンダ間を、一方の液圧シリンダの上部室が他方の液圧シリンダの下部室に連通し前記他方の液圧シリンダの上部室が前記一方の液圧シリンダの下部室に連通するようにクロスで接続してなる第1,第2の接続管路と、該第1,第2接続管路を連通,遮断するブリッジバルブと、前記第1,第2の接続管路のうち少なくとも一方の接続管路に減衰力発生機構を介して接続して設けられるアキュムレータ装置と、を有するサスペンション装置であって、前記アキュムレータ装置は、一のアキュムレータと、該一のアキュムレータと並列に接続される他のアキュムレータと、を有し、前記ブリッジバルブは、複数のバルブにより構成され、これらのバルブは、開弁および/または閉弁が段階的に切換えられることを特徴としている。
サスペンション装置の第2の態様としては、前記第1の態様において、前記一のアキュムレータの上流側に設けられる一の制御弁と、前記他のアキュムレータの上流側に設けられる他の制御弁と、を備え、スポーツモードのときは、前記一の制御弁と他の制御弁とが閉弁され、スタンダードモードのときは、前記一の制御弁が開弁され、前記他の制御弁が閉弁され、コンフォートモードのときは、前記一の制御弁と他の制御弁とが開弁され、さらに前記ブリッジバルブは遮断されることを特徴としている。