JP7111641B2 - 建設機械 - Google Patents

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Description

本発明は、建設機械に関する。
建設土木施工業界における油圧ショベルなどの建設機械においては、作業を行うフロント作業機と作業員などとの接触を予防するものとして、例えば、特許文献1に記載のようにフロント作業機の作業速度を制御する技術がある。
特許文献1には、走行体(基体)に対して旋回可能に取り付けられたアタッチメントと、アタッチメントを旋回させる旋回機構と、旋回機構を制御する制御装置と、作業領域内へ進入した進入物の位置を検出する進入物検出装置とを有し、制御装置は、アタッチメントの現時点の角速度及びアタッチメントの現時点の慣性モーメントの少なくとも一方に関わる第1の物理量、及び進入物検出装置で検出された進入物の位置に基づいて、アタッチメントの旋回動作を制御する旋回作業機械が開示されている。
特開2012-21290号公報
しかしながら、上記従来技術においては、検出した物体の死角に移動体が存在する可能性を考慮していないため、死角から移動体が出現した場合には十分に対応することができない。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、物体の死角の移動体にも対応することができ、確実にフロント作業機と移動体との接触をより確実に予防することができる建設機械を提供することを目的とする。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、回動可能に連結された複数のフロント部材からなる多関節型のフロント作業機と、前記フロント作業機の複数のフロント部材をそれぞれ駆動する複数のアクチュエータとを備えた建設機械において、前記フロント作業機のフロント部材に設けられ、前記フロント部材の姿勢情報を検出する姿勢検出装置と、前記本体の周囲の物体を検出する外環境認識装置と、前記外環境認識装置で認識された物体によって前記外環境認識装置の認識範囲から死角となる範囲である死角範囲を演算し、前記死角に存在すると仮定した移動体が予め定めた時間で移動可能な範囲である想定移動範囲を演算するとともに、前記姿勢検出装置で検出した姿勢情報に基づいて前記フロント作業機が予め定めた時間で移動可能な範囲である移動可能範囲を演算し、前記移動体の想定移動範囲と前記フロント作業機の移動可能範囲とに基づいて、前記移動体と前記フロント作業機との接触を予防する予防制御を行う制御装置とを備えたものとする。
本発明によれば、物体の死角の移動体にも十分に対応することができ、確実にフロント作業機と移動体との接触をより確実に予防することができる。
第1の実施の形態に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す図である。 油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。 第1の実施の形態に係る油圧ショベルに搭載される制御装置の処理機能の一部を模式的に示す機能ブロック図である。 図3における機能の一部を詳細に示す機能ブロック図である。 xy平面での死角算出方法について説明する図である。 xy平面での死角算出方法について説明する図である。 xy平面での死角算出方法について説明する図である。 xy平面での死角算出方法について説明する図である。 自車両のバケットが死角になる場合について説明する図である。 自車両のバケットが死角になる場合について説明する図である。 自車両のバケットが死角になる場合について説明する図である。 速度制限領域や想定移動範囲の演算手法について説明する図である。 予防制御の処理内容を示すフローチャートである。 第2の実施の形態における油圧ショベルに搭載される制御装置の処理機能の一部を模式的に示す機能ブロック図である。 第2の実施の形態における死角の演算について説明する図である。 第3の実施の形態における油圧ショベルに搭載される制御装置の処理機能の一部を模式的に示す機能ブロック図である。 第3の実施の形態における死角の演算について説明する図である。 第3の実施の形態における移動体の想定異動範囲について説明する図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の実施の形態では、建設機械の一例として、フロント作業機を備える油圧ショベルを例示して説明するが、ホイールローダやクレーンのような作業機を備える他の建設機械にも本発明を適用することが可能である。
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を図1~図13を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す図である。また、図2は、油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。
図1及び図2において、油圧ショベル100は、油圧ショベル100は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム8、アーム9、バケット(作業具)10)を連結して構成された多関節型のフロント作業機24と、ショベル本体(以下、単に「本体」という)を構成する上部旋回体22及び下部走行体20とを備え、上部旋回体22は旋回機構21を介して下部走行体20に対して旋回可能に設けられている。旋回機構21は、旋回モータ23と旋回角度検出装置27とを有しており、旋回モータ23によって上部旋回体22が下部走行体20に対して旋回駆動され、旋回角度検出装置27によって下部走行体20に対する旋回角度が検出される。
フロント作業機24のブーム8の基端は上部旋回体22の前部に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム9の一端はブーム8の基端とは異なる端部(先端)に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム9の他端にはバケット10が垂直方向に回動可能に支持されている。ブーム8、アーム9、バケット10、上部旋回体22、及び下部走行体20は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、旋回モータ23、及び左右の走行モータ3(ただし、一方の走行モータのみを図示する)によりそれぞれ駆動される。
ここで、上部旋回体22の旋回中心軸25と上部旋回体22の下面との交点を原点とし、旋回中心軸25に沿って上方を正とするz軸を、原点からz軸に垂直となる前後方向に前方を正とするx軸を、原点からz軸およびx軸に垂直となる左右方向に右方向を正とするy軸を有する本体座標系を設定する。
上部旋回体22の前方左側には、オペレータが搭乗するキャブ2が搭載されている。また、上部旋回体22には、油圧ショベル100の全体の動作を制御する制御装置44が配置されている。キャブ2には、油圧アクチュエータ5~7,23を操作するための操作信号を出力する操作レバー(操作装置)2a,2bが設けられている。図示はしないが操作レバー2a,2bはそれぞれ前後左右に傾倒可能であり、操作信号であるレバーの傾倒量、すなわちレバー操作量を電気的に検知する図示しない検出装置を含み、検出装置が検出したレバー操作量を制御装置44(後述)に電気配線を介して出力する。つまり、操作レバー2a,2bの前後方向または左右方向に、油圧アクチュエータ5~7,23の操作がそれぞれ割り当てられている。
ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、旋回モータ23及び左右の走行モータ3の動作制御は、図示しないエンジンや電動モータなどの原動機によって駆動される油圧ポンプ装置から各油圧アクチュエータ3,5~7,23に供給される作動油の方向及び流量をコントロールバルブなどで制御することにより行う。コントロールバルブは、操作レバー2a,2bからの操作信号に基づいて制御装置44により動作制御され、これによって各油圧アクチュエータ5~7,23の動作が制御される。
ブーム8の基部、ブーム8とアーム9との接続部、及びアーム9とバケット10との接続部には、それぞれ、姿勢センサ34A,34B,34Cが取り付けられている。姿勢センサ34A,34B,34Cは、例えば、ポテンショメータのような機械式の角度センサである。図3に示すように、姿勢センサ34Aは、ブーム8の長手方向(両端の回動中心を結ぶ直線)とx-y平面とのなす角度β1を測定して制御装置44へ送信する。また、姿勢センサ34Bは、ブーム8の長手方向(両端の回動中心を結ぶ直線)とアーム9の長手方向(両端の回動中心を結ぶ直線)とのなす角度β2を測定して制御装置44へ送信する。また、姿勢センサ34Cは、アーム9の長手方向(両端の回動中心を結ぶ直線)とバケット10の長手方向(回動中心と爪先を結ぶ直線)とのなす角度β3を測定して制御装置44へ送信する。ここで、旋回角度検出装置27及び姿勢センサ34A~34Cは、上部旋回体22及びフロント作業機24の姿勢情報を検出する姿勢検出装置60を構成する。
なお、本実施の形態においては、フロント作業機24の揺動中心38(ブーム8の上部旋回体22との接続部)は、旋回中心軸25とは異なる位置に配置されている場合を例示して説明するが、旋回中心軸25と揺動中心38とが交差するように配置しても良い。
また、本実施の形態においては、姿勢検出装置60として角度センサなどを用いる場合を例示して説明したが、旋回角度検出装置27及び姿勢センサ34A~34Cとして、慣性計測装置(IMU: Inertial Measurement Unit)を用いても良い。また、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、及びバケットシリンダ7にそれぞれストロークセンサを配置し、ストローク変化量から上部旋回体22やブーム8、アーム9、及びバケット10の各接続部分における相対的な向き(姿勢情報)を算出し、その結果から各角度を求めるように構成してもよい。
上部旋回体22には、ショベル本体(上部旋回体22、下部走行体20)の周囲の物体を検出する複数(例えば4つ)の外環境認識装置26が配置されている。外環境認識装置26の設置位置や数は特に本実施の形態の例に限定されるものではなく、本体の全方向(すなわち、油圧ショベル100の周囲360度)の視野を確保できれば良い。本実施の形態においては、4つの外環境認識装置26が、キャブ2の上部、上部旋回体22の左側方、右側方前部、及び、右側方後部にそれぞれ設置され、本体の周囲360度の視野を網羅している場合を例示して説明する。外環境認識装置26は、例えば、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging、レーザー画像検出と測距)技術を用いたセンサであり、油圧ショベル100の周囲にある物体(例えば、後述する障害物14)を検出し、その座標データを制御装置44に送信する。
図3は、油圧ショベルに搭載される制御装置の処理機能の一部を模式的に示す機能ブロック図である。また、図4は、図3における機能の一部を詳細に示す機能ブロック図である。
図3及び図4において、制御装置44は、判定部31、動作範囲演算部35、死角演算部37、及び、移動体進路予測部45を備えている。また、動作範囲演算部35は、姿勢演算部43、旋回角度演算部48、速度制限領域演算部50、フロント作業機速度演算部51、及び、角速度演算部52を備えている。さらに、速度制限領域演算部50は、制動距離演算部30、及び、制動時間演算部49を備えている。
図3において、死角演算部37は、外環境認識装置26から得た上部旋回体22に対する相対的な位置関係から、死角を演算する。動作範囲演算部35は、姿勢検出装置60から得た情報をもとに制動時間を演算し、移動体進路予測部45へ制動時間を送信し、判定部31へ本体の動作範囲を送信する。動作範囲演算部35で行う演算は後に詳述する。移動体進路予測部45は、得られた死角16の位置、および形状から作業員などの移動体が潜んでいる可能性があるか否かを判断し、また、得られたフロント作業機24の制動時間から、フロント作業機24が制動するまでの間に移動体が移動し得る範囲、想定移動範囲41を演算し、判定部31へ送信する。判定部31は、移動体進路予測部45と動作範囲演算部35で得られた情報をもとに作業装置33の速度を制限する、もしくは警報装置59を作動させるか否かを判定する。判定部31の演算についての詳細は後述する。
図4において、姿勢演算部43は、姿勢センサ34で得られるブーム8、アーム9、バケット10それぞれの角度情報をもとにフロント作業機24の長さを演算し、速度制限領域演算部50へ送信する。また、フロント作業機速度演算部51では、姿勢センサ34で得られるブーム8、アーム9、バケット10それぞれの角度の変動をもとにフロント作業機24が移動する速度(フロント作業機速度)を演算し、速度制限領域演算部50へ送信する。また、旋回角度演算部48では、下部走行体20の前方向を0°とし、上部旋回体22の左旋回方向を正として自車両13の旋回角度を演算し、速度制限領域演算部50へ送信する。また、角速度演算部52は、旋回角度検出装置27から入力された旋回角の変化速度に基づいて、フロント作業機24の角速度を演算し、速度制限領域演算部50へ送信する。速度制限領域演算部50は制動距離演算部30と制動時間演算部49から成る。制動距離演算部30は、姿勢演算部43で得られたフロント作業機長とフロント作業機速度演算部51より得られたフロント作業機24の移動速度と、旋回角度演算部48より得られた旋回角度と、角速度演算部52より得られた角速度から、フロント作業機24の制動距離を演算し、判定部31へ送信する。また、制動時間演算部49は、姿勢演算部43で得られたフロント作業機長とフロント作業機速度演算部51より得られたフロント作業機24の移動速度と、旋回角度演算部48より得られた旋回角度と、角速度演算部52より得られた角速度から、フロント作業機24の制動時間を演算し、移動体進路予測部45へ送信する。
以上のように構成した制御装置44は、外環境認識装置26で認識された物体によって外環境認識装置の認識範囲から死角となる範囲である死角範囲(死角16)を演算し、死角に存在すると仮定した移動体39が予め定めた時間で移動可能な範囲である想定移動範囲41を演算するとともに、姿勢検出装置60で検出した姿勢情報に基づいてフロント作業機24が予め定めた時間で移動可能な範囲である移動可能範囲を演算し、移動体39の想定移動範囲41とフロント作業機24の移動可能範囲とに基づいて、移動体39とフロント作業機24との接触を予防する予防制御を行う。
図13は、予防制御の処理内容を示すフローチャートである。
図13において、制御装置44は、まず、障害物があるかどうかを判定し(ステップS101)、判定結果がYESの場合には、油圧ショベル本体の姿勢を検出し(ステップS102)、障害物により生じる死角を演算する死角範囲演算を行う(ステップS103)。
続いて、移動体が死角に潜む可能性があるかどうかを判定し(ステップS104)、判定結果がYESの場合には、フロント作業機24の制動時間を演算する制動時間演算を行い(ステップS105)、フロント作業機24の移動範囲を演算する動作範囲演算処理を行い(ステップS106)、移動体の相対移動範囲を演算する想定移動範囲演算を行う(ステップS107)。
続いて、移動体とフロント作業機24とが接触する可能性があるかどうかを判定し(ステップS108)、判定結果がYESの場合には、フロント作業機24の駆動に係る制限速度を決定し(ステップS109)、警報装置59の作動や作業速度の制御作動を行う(ステップS110)。
続いて、本体は停止したかどうかを判定し(ステップS111)、判定結果がNOの場合には、判定結果がYESになるまで、ステップS110の処理を繰り返す。また、ステップS111での判定結果がYESの場合には、処理を終了する。
また、ステップS101,S104,S108の何れかの判定結果がNOの場合には、処理を終了する。
以上のような予防制御についてさらに詳細に説明する。
まず、図2に示したフロント作業機長Rとバケット高さZbの算出方法について説明する。フロント作業機長Rは、旋回中心軸25からフロント作業機24の先端までの距離Rである。ブーム8、アーム9、及びバケット10の長さを、それぞれL1,L2,L3とする。x-y面と、ブーム8の長手方向とのなす角度β1が、姿勢センサ34Aにより測定される。ブーム8とアーム9とのなす角度β2、及びアーム9とバケット10とのなす角度β3が、それぞれ姿勢センサ34B、34Cにより測定される。x-y面から揺動中心38までの高さZ0は、予め求められている。また、旋回中心軸25から揺動中心38までの距離L0も予め求められている。
角度β1及び角度β2から、xy面とアーム9の長手方向とのなす角度β2aを計算することができる。角度β1、角度β2、β3から、xy面とバケット10の長手方向とのなす角度β3bを計算することができる。バケット高さZb、及びフロント作業機長Rは、以下の(式1)及び(式2)により計算することができる。
Zb=Z0+L1sinβ1+L2sinβ2+L3sinβ3 ・・・(式1)
R=L0+L1cosβ1+ L2cosβ2+L3cosβ3 ・・・(式2)
次に、図5~図11を用いて本発明による第1の実施例の制御装置44で行われる死角16の演算手法について説明する。まず、図5を用いてxy平面での死角算出方法について説明する。外環境認識装置26で得られた障害物14の座標をもとに、制御装置44内の障害物位置演算部36にてxy平面での自車両13と、障害物14の左右両端部14Aおよび14Bそれぞれの相対角度θxya、θxybと相対距離XA、XBを演算する。これらの情報をもとに、死角演算部37で障害物14により死角16が存在するか否かを演算する。この場合、死角16は斜線で示した範囲をさし、検出した障害物14の表面側を前方とした場合、障害物14を検出した位置より後方の領域を死角16として認識する。すなわち、外環境認識装置26から障害物14の両端部14A、14Bまでの距離をそれぞれXA、XBとした場合、外環境認識装置26から障害物14の端部までの距離XAとXBの角度θxyの範囲よりも後方を死角16として認識する。なお、死角16の大きさが、一般的な移動体(作業員)39よりも小さい場合、死角16がないものとしてもよい。こうすることにより、過剰な制御介入を避けることができる。
次に、図6~図8を用いて、xz平面での死角検出方法について説明する。
図6に示すように、検出した障害物14の高さZが外環境認識装置26が設置されている高さZsと同じ場合においては、死角16高さは高さZと規定される。外環境認識装置26から障害物14の上下端部14C、14Dまでの距離XCとXDの角度θxzの範囲より後方を死角16として認識する。
一方、図7に示したように、外環境認識装置26が設置されている高さZsより障害物14の高さZが低い場合は、障害物14の奥行きは障害物14の端部14C、14D、14Eより計算することができる。ここで、障害物14の両端は14Dと14Eとなるため、死角16は障害物14の端部14Dと14Eまでの距離XDとXEの角度となる。外環境認識装置26を障害物14より高い位置に配置することで、障害物14の奥行きを検出することが可能となるため、なるべく高い位置に外環境認識装置26を設置することが望ましい。また、高い位置に外環境認識装置26を設置することが困難な場合においても、検出した高さZの高さが移動体(作業員)39が潜むことができる高さでない場合は、制御を実施しなくてもよい。
また、図8に示した通り、検出した障害物14の高さZが外環境認識装置26が設置されている高さZsよりも高い場合は、障害物14の上端部14Cと外環境認識装置26の高さZsとの角度をθxzaとし、障害物14の下端部14Dと外環境認識装置26の高さZsとの角度をθxzbとし、θxzaとθxzbの和であるθxzsの角度の範囲において、障害物14より後方の領域を死角16として認識する。
次に、図9~図11を用いて自車両13のバケット10が死角16になる場合について説明する。
図9に示したように、外環境認識装置26の設置場所によっては、自車両13のバケット10が死角16になる場合がある。図9に示したように、油圧ショベル100の姿勢によってはバケット10が外環境認識装置26の視野を遮り、死角16を形成する。この場合、外環境認識装置26がバケット10越しに部分的に障害物14を認識できる場合は死角16と判断しない。
また、図10に示したように、外環境認識装置26をキャブ2の上部に設置した場合、xy平面においても死角16を形成する。そのため、図11に示す通り、例えば外環境認識装置26をキャブ2側からみてフロント作業機24の反対側の上部旋回体22に設置することで、死角16の範囲を狭めることができる。この場合、死角16は、外環境認識装置26aと26bの両死角線15が交差する点、死角線交差点58から角度θbの範囲をバケットの先端端部57Aと57Bの距離までを死角として認識する。ここで、角度θbはθAbとθBbの和である。
次に、図12を用いて速度制限領域40、移動体(作業員)39が存在し得る位置、想定移動範囲41の演算手法、バケット10による死角の対処法および作業装置33の制御方法について説明する。
図12に示すように、現時点のフロント作業機24の角速度がωであり、フロント作業機長がRであるとする。その場合、旋回を停止させるためのブレーキを作動させた時点から、フロント作業機24が停止するまでに旋回する角度θt(制動角度)は、最大制動力をかけた場合に制動までかかる時間をtθ(旋回制動時間)、旋回加速度をα、初期角度をθt0とした場合、以下の(式3)により計算することができる。
θt=θt0+ω×tθ+(α×tθ^2)/2 ・・・(式3)
また、前進方向の移動を停止させるためのブレーキを作動させた時点から、フロント作業機24が停止するまでに前進する距離xt(前進制動距離)は、前進速度vと前後方向の移動を停止させるためのブレーキを作動させた時点から、フロント作業機24が停止するまでにかかる時間(前後進制動時間)をtx、減速加速度をaとした場合、以下の(式4)により計算することができる。
xt=v×tx+(a×tx^2)/2 ・・・(式4)
そのため、速度制限領域40は、前進制動距離をxt、フロント作業機の長さをR、旋回中心軸25から揺動中心38までの距離L0の和の値をRxtとした場合、このRxtの半径をθt旋回させた範囲とする。また、フロント作業機24が後進している場合における速度制限領域40は、フロント作業機長Rの半径をθt旋回させた範囲とする。
次に、移動体(作業員)39の想定移動範囲41の演算方法について説明する。死角16内に存在する移動体(作業員)39は、障害物14の両端14Aと14Bを結んだ表面線42と死角線15の両線に接する位置に存在すると仮定する。その場合、移動体(作業員)39の想定移動範囲41は、移動体(作業員)39の歩行時間と移動体(作業員)39が移動し得る距離rによって決まる。移動体(作業員)39の歩行時間はフロント作業機24が前後方向および旋回方向に制動するまでの時間の大きい値を選択する。また、移動体(作業員)39が移動し得る距離rは、移動体(作業員)39の歩行速度を大人の平均歩行速度とした場合、移動体(作業員)39が移動時間分歩行した距離と規定される。そのため、想定移動範囲41は作業員が移動し得る距離rを移動体(作業員)39の表面から360°回転させた範囲である。
また、バケット10による死角の対処法について説明する。仮にバケット10によって死角16が形成された場合は、外環境認識装置26で得た死角を形成する前の情報を用いて死角範囲を補完し、過剰に制御をかけることを抑制することができる。
判定部31は移動体進路予測部45で演算した想定移動範囲41と動作範囲演算部35で演算した速度制限領域40が重なるか否かを判定し、想定移動範囲41と動作範囲演算部35で演算した速度制限領域40が重なりそうな場合において作業装置33へ速度制限を送信、もしくは警報装置59を作動させる。このような判定部31を設けることによって死角16から出現する移動体との接触確率を低減することができる。さらに、速度制限領域40にマージンをもたせ、マージン内に想定移動範囲41が重なった場合に警報装置59を作動させ、速度制限領域40と想定移動範囲41が重なりそうな場合において作業装置33へ速度制限を実施することも可能である。
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
建設土木施工業界における油圧ショベルなどの建設機械においては、作業を行うフロント作業機と作業員などとの接触を予防するものとして、フロント作業機の作業速度を制御する従来技術があった。しかしながら、従来技術においては、検出した物体の死角に移動体が存在する可能性を考慮していないため、死角から移動体が出現した場合には十分に対応することができなかった。
これに対して本実施の形態においては、下部走行体と、下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体とからなる本体と、本体に取り付けられ、回動可能に連結された複数のフロント部材からなる多関節型のフロント作業機と、フロント作業機の複数のフロント部材をそれぞれ駆動する複数のアクチュエータとを備えた建設機械において、フロント作業機のフロント部材に設けられ、フロント部材の姿勢情報を検出する姿勢検出装置と、本体の周囲の物体を検出する外環境認識装置と、外環境認識装置で認識された物体によって外環境認識装置の認識範囲から死角となる範囲である死角範囲を演算し、死角に存在すると仮定した移動体が予め定めた時間で移動可能な範囲である想定移動範囲を演算するとともに、姿勢検出装置で検出した姿勢情報に基づいてフロント作業機が予め定めた時間で移動可能な範囲である移動可能範囲を演算し、移動体の想定移動範囲とフロント作業機の移動可能範囲とに基づいて、移動体とフロント作業機との接触を予防する予防制御を行う制御装置とを備えて構成したので、物体の死角の移動体にも十分に対応することができ、確実にフロント作業機と移動体との接触をより確実に予防することができる。
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図14及び図15を参照しつつ説明する。
第1の実施の形態では、外環境認識装置26を用いて障害物14との相対距離および相対角度から死角16を演算していたが、本実施の形態は、例えばGPS信号などをもとに自車両13の位置を測定する位置測定装置46と、他車両18で検出した障害物14の位置、他車両18の位置、本体の向きの情報を受信する無線通信装置47を備え、無線通信装置47は他車両18から得られた情報を死角演算部37に送信し、死角演算部37は外環境認識装置26、位置測定装置46と無線通信装置47の情報をもとに死角16、移動体が存在し得る位置、移動体(作業員)39の想定移動範囲41を演算するものである。
図14は、本実施の形態における油圧ショベルに搭載される制御装置の処理機能の一部を模式的に示す機能ブロック図である。また、図15は、本実施の形態における死角の演算について説明する図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
図14に示すように、位置測定装置46では、例えばGPS信号などをもとに自車両13の座標位置を死角演算部37へ送信する。また、無線通信装置47は他車両18が得た外環境認識装置26の情報と、他車両18の座標位置と、他車両18の本体の向きを受信し、死角演算部37に送信する。死角演算部37は位置測定装置46、無線通信装置47、自車両13の外環境認識装置26の情報をもとに、死角16を演算し、移動体進路予測部45へ送信する。
図15に示す通り、例えば、他車両18が作業範囲17内外から障害物14の側方を検出することができる位置に存在する場合、他車両18は車両の座標位置と本体の向き、および外環境認識装置26の情報を無線通信装置47を介して送信する。自車両13は他車両18で得た情報を無線通信装置47を介して受信し、死角演算部37にて、自車両13と他車両18の座標位置から、自車両13との位置関係を演算する。また、他車両18の本体の向きから、他車両18が検知している障害物14の位置と死角16を演算する。ここで、自車両13で検出した障害物14の死角16は死角線15aの範囲で表され、他車両18で検出した障害物14の死角16は死角線15bの範囲で表される。
さらに、死角演算部37は自車両13で得た情報をもとに演算した死角16と他車両18の情報をもとに演算した死角16を比較し、自車両13で死角16として判断した範囲を他車両18が検出できていれば、その範囲を死角16として認識しない。その結果、他車両18が検出している方面への作業および旋回動作については速度制限を実施する必要がなくなる。
その他の構成については第1の実施の形態と同様である。
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図16~図18を参照しつつ説明する。
第2の実施の形態では、外環境認識装置26においてLiDAR等の座標データを取得する技術を使用し、障害物14との相対距離と相対角度を求め、さらに、自車両13の位置を測定する位置測定装置46と、無線通信装置47から得られる他車両18の位置情報や障害物14までの相対距離と相対角度から死角16を演算していたが、本実施の形態は、自車両13の位置を測定する位置推定装置と、カメラ等を用いて対象物14を撮影する画像判別装置53と、無線通信を介して他車両18より情報を受信する無線通信装置47と、障害物14との相対距離と相対角度を障害物判別部54へ送信する外環境認識装置26と、それらの情報をもとに障害物14を判別する障害物判別部54をそなえ、それらの情報をもとに障害物判別部54は障害物14を他車両18と認識し、車種を判断する機能を追加実装したものである。
図16は、本実施の形態における油圧ショベルに搭載される制御装置の処理機能の一部を模式的に示す機能ブロック図である。また、図17は本実施の形態における死角の演算について説明する図であり、図18は本実施の形態における移動体の想定異動範囲について説明する図である。図中、第1及び第2の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
図16に示した通り、位置測定装置46は自車両13の座標を障害物判別部54へ送信する。また、画像判別装置53は障害物14を撮影し、障害物判別部54へ送信する。無線通信装置47は位置測定装置46を搭載した他車両18の位置情報と車種情報を障害物判別部54へ送信する。障害物判別部54では、あらかじめ記憶した建設機械の画像と画像判別装置53から得られた画像を照らし合わせ、障害物14が他車両18か否かを判別する。また、障害物判別部54では、位置測定装置46から得られる自車両13の位置と、無線通信装置47から得られる他車両18の位置情報から自車両13と他車両18の位置関係を演算し、外環境認識装置26から得られた障害物14の位置が演算した他車両18の位置と一致する場合は、障害物14を他車両18として認識する。
図17に示すように、画像判別装置53と障害物判別部54を用いることで、障害物14の種類を判別することができるため、後方の一定距離を障害物14とみなし、死角16を狭めることができる。その結果移動体(作業員)39が存在する可能性がある位置を狭めることができ、移動体(作業員)39の想定移動範囲41が速度制限領域40と重なる確率を低減することができる。
ここで、死角16内に存在する移動体(作業員)39の位置は、図18に示すように、障害物14の側面56と死角線15に接する、最も自車両13に接近している位置に存在すると仮定する。また、障害物14を判別することが困難な場合や登録されていない障害物14については、実施例1の死角検知手法にのっとり、死角の範囲を判断する。
その他の構成は第1及び第2の実施の形態と同様である。
以上のように構成した本実施の形態においても第1及び第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
2…キャブ、2a,2b…操作レバー(操作装置)、3…走行モータ、5…ブームシリンダ、6…アームシリンダ、7…バケットシリンダ、8…ブーム、9…アーム、10…バケット、13…自車両、14…障害物(対象物)、15…死角線、15…両死角線、16…死角、17…作業範囲、18…他車両、20…下部走行体、21…旋回機構、22…上部旋回体、23…旋回モータ、24…フロント作業機、25…旋回中心軸、26…外環境認識装置、27…旋回角度検出装置、30…制動距離演算部、31…判定部、34…姿勢センサ、35…動作範囲演算部、36…障害物位置演算部、37…死角演算部、38…揺動中心、39…移動体(作業員)、40…速度制限領域、41…想定移動範囲、42…表面線、43…姿勢演算部、44…制御装置、45…移動体進路予測部、46…位置測定装置、47…無線通信装置、48…旋回角度演算部、49…制動時間演算部、50…速度制限領域演算部、51…フロント作業機速度演算部、52…角速度演算部、53…画像判別装置、54…障害物判別部、59…警報装置、60…姿勢検出装置、100…油圧ショベル

Claims (5)

  1. 下部走行体と、
    前記下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体と、
    前記上部旋回体に取り付けられ、回動可能に連結された複数のフロント部材からなる多関節型のフロント作業機と、
    前記フロント作業機の複数のフロント部材をそれぞれ駆動する複数のアクチュエータとを備えた建設機械において、
    前記フロント作業機のフロント部材に設けられ、前記フロント部材の姿勢情報を検出する姿勢検出装置と、
    前記本体の周囲の物体を検出する外環境認識装置と、
    前記外環境認識装置で認識された物体によって前記外環境認識装置の認識範囲から死角となる範囲である死角範囲を演算し、前記死角に存在すると仮定した移動体が予め定めた時間で移動可能な範囲である想定移動範囲を演算するとともに、前記姿勢検出装置で検出した姿勢情報に基づいて前記フロント作業機が予め定めた時間で移動可能な範囲である移動可能範囲を演算し、前記移動体の想定移動範囲と前記フロント作業機の移動可能範囲とに基づいて、前記移動体と前記フロント作業機との接触を予防する予防制御を行う制御装置と
    を備えたことを特徴とする建設機械。
  2. 請求項1記載の建設機械において、
    前記制御装置は、前記予防制御として、前記フロント作業機の移動可能範囲と前記移動体の想定移動範囲とが重複しないように、前記フロント作業機のアクチュエータを制御することを特徴とする建設機械。
  3. 請求項1記載の建設機械において、
    前記制御装置は、前記フロント作業機の移動可能範囲と前記移動体の想定移動範囲とが予め定めた距離よりも近づいた場合に、警報装置によってオペレータにそのことを報知することを特徴とする建設機械。
  4. 請求項1記載の建設機械において、
    作業現場における前記建設機械の位置を計測する位置測定装置と、
    前記作業現場における他の建設機械で得られた前記他の建設機械の位置、及び、前記他の建設機械に設けられた外環境認識装置の検出結果を取得する無線通信装置とを備え、
    前記制御装置は、前記外環境認識装置の死角範囲と前記他の建設機械の外環境認識装置の検出結果とが重複する場合には、前記死角範囲の少なくとも一部を前記他の建設機械の外環境認識装置の検出結果に置き換えることを特徴とする建設機械。
  5. 請求項1記載の建設機械において、
    前記制御装置は、前記外環境認識装置で検出された物体の種類を判別し、判別した物体の種類に応じて前記死角範囲を演算することを特徴とする建設機械。
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